説明

乱層構造を持つ黒鉛性構造体からのグラフェンシートの製造方法およびその方法により製造されたグラフェンシート

【課題】 本発明は、カーボン繊維のように乱層構造を持つ黒鉛性構造体から強酸化剤を使用することなく、より高い収率でグラフェンシートを製造できるグラフェンシートの製造方法および前記方法により製造されたグラフェンシートを提供する。
【解決手段】 本発明は、乱層構造を持つ黒鉛性構造体を酸化させる酸化段階と、酸化された黒鉛性構造体に対してマイクロ波照射を行うことにより、数個の層からなるグラフェン層結合体を得るマイクロ波照射段階と、グラフェン層結合体を超音波分解処理する超音波処理段階と、を含むグラフェンシートの製造方法で、マイクロ波照射により数個の層からなるグラフェン層結合体を容易に得ることができ、マイクロ波照射段階は、マイクロウエーブオーブンを用いて50〜100秒間、150〜550Wで行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの製造方法に関し、より具体的にはカーボン繊維のように乱層構造(turbostratic structure)を持つ黒鉛性構造体から、強酸化剤を使用することなくより高い収率でグラフェンシートを製造できるグラフェンシートの製造方法およびその方法により製造されたグラフェンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(Graphene)は、炭素原子がベンゼン環構造に稠密に圧縮された単層であって、カーボンブラック、カーボン繊維、ナノチューブおよびフラーレン(fullerene)のような様々な構造のブロックを作る。
【0003】
このようにグラフェンは、単層の炭素原子から構成された興味深い2Dフラット物質であって、遊離されて固定された個別的なグラフェンシートは独特の特性を有し、ナノスケールのエンジニアリングおよびナノスケールの装備の製作に有望な物質である。
【0004】
即ち、グラフェンの独特の特性は、高性能の高分子複合材料などで充填剤を強化することにより、電界効果トランジスタ、リチウムイオンバッテリ、水素ストレージ、分子センサ、アクチュエータに非常に有望な適用可能性を有しているためである。
【0005】
機械的剥離(ピーリング方法)によりグラフェンを生産するという最初の報告以来、多くの技術が広い範囲にトップダウン工法およびボトムアップ工法下で分類されて開発されてきた。
【0006】
熱化学的蒸気蒸着法(thermal chemical vapor deposition:CVD)のようなボトムアップ工法において、グラフェンは、原子又は分子種(species)からプレカーサー粒子のサイズが徐々に大きくなるように、即ち、基板上でグラフェンのエピタキシャル成長(epitaxial growth)又はCVDによる小板(platelets)状のグラフェンを成長させることによって合成される。理論的にボトムアップ工法は、サイズ、形状、サイズ分布、凝集(agglomeration)等を制御できる能力を有するが、実質的にはこれは非常に実現し難い。また、CVDにより高品質のグラフェンを生産できるものの、PAH(ポリアロマティクヒドロカーボン)(カリフォルニアの環境保護エージェンシー(EPA)命令参照)の放出に対する環境的な心配がある。
【0007】
より普遍的なトップダウン工法は、膨張したグラファイトおよびカーボンナノチューブのような黒鉛性構造から個別的なグラフェンシートのストリッピング(stripping)を含む。個別的なグラフェン層をセロハンテープ(Scotchtape)を用いて手でストリッピングする物理的な方法、溶剤としてイオン性液体を用いる電気化学的方法および膨張したグラファイト酸化物の熱的および化学的剥離を含む多くのテクニックがグラフェン単層を得るために開発されてきた。
【0008】
このように、トップタウン工法ではグラファイト、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどのような黒鉛性(graphitic)微細構造が開始物質であり、個別的なグラフェン層が物理的、電気化学的又は化学的ルートにより切り出したり剥離される。
【0009】
特に、グラフェン酸化物から個別的なグラフェンシートを剥離することは最も普遍的な方法であり、単層グラフェンを成功的に得ることができる多くのテクニックが報告されているが、グラファイトから小板状のグラフェンを製造するためのこのような方法は、硫酸/過マンガン酸カリウム(KMnO)のような酸化剤を使用して行い、ヒドラジン又はアルカリのうちいずれか1つによる還元又は溶剤エッチングが要求される。
【0010】
最も最近知られたグラフェン生産のため非常に優れた方法は、物理的又は化学的方法によって複数個の壁を有するカーボンナノチューブ(MWCNTs)の長軸アンジッピング(unzipping)に基づく。これらの新規な技術は、簡易性のために魅力的であり、既に定義された形状を有したグラフェンシートを得ることができるが、このような工程は過度で且つ部分的な酸化によりグラフェン層に多くのナノホールが生じる恐れがあるという問題点がある。
【0011】
このように今まで知られていた大部分の化学的方法は、硫酸/過マンガン酸カリウム(KMnO)又はカルボン酸、ギ酸(formic acid)のような強酸化剤の使用及び追加的な剥離作用のために環境に有害な有機溶媒の過多使用に大きく依存する。
【0012】
また、前記長軸アンジッピングに基づいた技術はカーボン構造からグラフェンの抽出に基づいたものであるが、この際、前記グラフェン層は完ぺきなABスタッキング(ABstacking)に配列される。ところが、グラフェン層のパッキング(packing)が完ぺきなABスタックキングでないその他のスタックキングを有する多くのカーボン構造がある。かえって、前記構造は基本的なグラフェンクリスタライト(crystallites)から構成され、前記クリスタライトはそれらの普遍的な垂直軸に対してほぼ完ぺきな方向性なく若干ランダムに圧縮される。
【0013】
ビスコエ(Biscoe)およびウォーレン(Warren)は、カーボンの配列のための乱層構造という用語を提案した。カーボンブラック、カーボン繊維および気相成長のカーボンナノ繊維(Vapor-grown carbon nanofiber、VGCNF)は、全て乱層構造を持つ。このような乱層構造を持つ黒鉛性構造体で前記グラファイトクリスタライト層はある程度のC-方向の方向性を依然と有しているにもかかわらず、互いにランダムに回転することになる。
【0014】
したがって、乱層構造を持つ黒鉛性構造体を構成するグラフェン層からグラフェンシートを製造する新しい方法が要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、前記のような問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、強酸化剤を使用することなく、より高い収率で乱層構造を持つ黒鉛性構造体からグラフェンシートを製造する方法を開発して本発明を完成した。
【0016】
これにより、本発明の目的は、硫酸/過マンガン酸カリウム(KMnO)又はカルボン酸、ギ酸のような強酸化剤の使用および追加的な剥離作用のために環境に有害な有機溶媒を過多に使用することなく、隣接の黒鉛性層間の増加したギャラリー間の間隔(inter-gallery spacing)を有する乱層構造を用いてグラフェンシートを製造する方法およびその方法により製造されたグラフェンシートを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、低いコストおよび短い製造時間で大規模の合成に適したグラフェンシートの製造方法およびその方法により製造されたグラフェンシートを提供することにある。
【0018】
本発明のまた他の目的は、過度な酸化と関連する問題を最小化でき、高品質のグラフェンシートを得ることができるのみでなく、より高い収率を有するグラフェンシートの製造方法およびその方法により製造されたグラフェンシートを提供することにある。
【0019】
本発明の目的は、上述した目的に制限されなく、言及していない他の目的は以下の記載により当業者が明確に理解できると考える。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の目的を達成するために本発明は、乱層構造を持つ黒鉛性構造体を酸化させる酸化段階と、前記酸化された黒鉛性構造体に対してマイクロ波照射を行うマイクロ波照射段階と、前記照射段階後に得られる数個の層からなるグラフェン層結合体を超音波分解処理する超音波処理段階と、を含むグラフェンシートの製造方法を提供する。
【0021】
望ましい実施例において、前記酸化段階は前記黒鉛性構造体を過酸化水素に浸漬させて超音波処理する。
【0022】
望ましい実施例において、前記超音波処理は20〜40分間行う。
【0023】
望ましい実施例において、前記マイクロ波照射段階は、マイクロウエーブオーブンに前記酸化された黒鉛性構造体を位置させた後、50〜100秒間、150〜550Wで行われる。
【0024】
望ましい実施例において、前記超音波処理段階は、前記グラフェン層結合体をアルコール溶媒に分散させて60〜240分間強い超音波処理が行われる。
【0025】
望ましい実施例において、前記超音波処理段階は、分離されたグラフェンシートからの残余酸化物グループを除去する除去段階をさらに含む。
【0026】
望ましい実施例において、前記除去段階は、前記グラフェンシートをヒドラジン溶液に分散させて行われる。
【0027】
望ましい実施例において、前記黒鉛性構造体は、カーボンブラック、カーボン繊維、気相成長のカーボンナノ繊維(VGCNF)から構成された群より選択される。
【0028】
望ましい実施例において、前記グラフェン層結合体は屈曲又はカーリングされた構造を持つ。
【0029】
また、本発明は、請求項1〜11に記載のいずれか1項のグラフェンシートの製造方法により製造されることを特徴とするグラフェンシートを提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明は次のような優れた効果を有する。
【0031】
先ず、本発明のグラフェンシートの製造方法およびその方法により製造されたグラフェンシートによると、硫酸/過マンガン酸カリウム(KMnO)又はカルボン酸、ギ酸のような強酸化剤の使用および追加的な剥離作用のために環境に有害な有機溶媒を過多に使用することなく、隣接の黒鉛性層間の増加したギャラリー間の間隔を有する乱層構造を用いてグラフェンシートを製造できるので環境に優しい。
【0032】
本発明のグラフェンシートの製造方法およびその方法により製造されたグラフェンシートによると、低いコストおよび短い製造時間で大規模のグラフェンシートの合成に適する。
【0033】
本発明のグラフェンシートの製造方法およびその方法により製造されたグラフェンシートによると、過度な酸化と関連された問題を最小化でき、高品質のグラフェンシートを得ることができるのみでなく、より高い収率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】カーボン繊維および本発明の一実施例の酸化段階後に得られたカーボン繊維(すなわち、膨張したカーボン繊維)をSEMで観察した結果写真である。
【図2】本発明の一実施例で得られた膨張したカーボン繊維に対するXRDスペクトル結果を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施例でマイクロ波照射後に得られた膨張したカーボン繊維をSEMで観察して得られた結果写真である。
【図4】本発明の一実施例でマイクロ波照射後に得られた膨張したカーボン繊維をTEMで観察して得られた結果写真である。
【図5】本発明の一実施例で得られたグラフェンシートをSEMおよびTEMで観察して得られた結果写真である。
【図6】本発明の一実施例で得られたグラフェンシートをラマンスペクトロメーターにより分析して得られたスペクトル結果を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施例で得られたグラフェンシートのXPSスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明で使用される用語は現在広く使われる一般的な用語を選択したが、特定の場合は出願人が任意に選定した用語もあり、この場合には単純な用語の名称でない発明の詳細な説明部分に記載されたり、使用された意味を考慮して把握しなければならない。
【0036】
以下、添付図面および望ましい実施例を参照して本発明の技術的構成を詳細に説明する。
【0037】
しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、明細書全体に亘って同一の符号は同一の構成要素を示す。
【0038】
先ず、本発明は、乱層構造(turbostratic structure)を持つ黒鉛性構造体を酸化させる酸化段階と、前記酸化された黒鉛性構造体に対してマイクロ波照射を行うことにより、数個の層からなるグラフェン層結合体を得るマイクロ波照射段階と、前記グラフェン層結合体を超音波分解処理する超音波処理段階と、を含むグラフェンシートの製造方法に関するものであって、その技術的特徴は、特に、マイクロ波照射により数個の層からなるグラフェン層結合体を容易に得ることにある。ここで、マイクロ波照射段階は、マイクロウエーブオーブンを用いて50〜100秒間、150〜550Wで行うが、望ましくは50〜70秒間、150〜250Wで行うことが良い。
【0039】
このように、本発明は、非常に単純で、且つ簡易なマイクロ波照射段階を導入することにより、酸化段階で硫酸/過マンガン酸カリウム(KMnO)又はカルボン酸、ギ酸のような強酸化剤を使用する必要がなく、追加的な剥離作用のために環境に有害な有機溶媒の過多使用を回避でき、隣接の黒鉛性層間の増加したギャラリー間の間隔を有する乱層構造を用いることができる。
【0040】
また、低いコストと短い製造時間で大規模の高品質グラフェンシートを合成することが可能となる。
【0041】
本発明で黒鉛性構造体は、その構成元素が炭素のみからなる全ての物質を意味するが、グラファイト(黒鉛)、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノチューブなどを含み、本発明は、特に、黒鉛性構造体を構成するグラフェン層の積層構造が完璧なAB積層構造(AB stacking)の配列を有さない乱層構造を持つ黒鉛性構造体からグラフェンシートを製造するための最適の製造条件を提供することができる。
【0042】
(実施例)
炭素ナノ繊維からのグラフェンシートの製造
グラフェン層が完ぺきなAB積層構造に配列されない乱層構造を持つ炭素ナノ繊維からグラフェンシートを下記のような方法で得た。
【0043】
1.酸化段階
微細に粉砕したカーボン繊維を過酸化水素に浸漬した後、30分間超音波処理した。その結果、前記カーボン繊維の外皮(outer sheath)が酸化され、前記外皮の除去および前記グラフェン層の部分的な膨張が誘発された。この際、過酸化水素の濃度は30〜40%であることが望ましく、カーボン繊維と過酸化水素の重量比は1:10が適切である。
【0044】
2.マイクロ波処理段階
その後、前記膨張したカーボン繊維は、マイクロウエーブオーブンに位置させ、1分間200Wでマイクロ波照射を行った。この際、カーボン繊維のグラフェン層は直ぐ膨張したが、この膨張はグラフェン層の貼り付けを弱くする。また、マイクロ波照射は、前記小板に位置した過酸化物が急速に沸騰するようにする。このように急速に沸騰することで部分的に残余酸化物を除去し、前記グラフェン性構造がさらに膨張するように誘導する。
【0045】
3.超音波処理段階
前記マイクロ波処理段階後に得られた数個の層からなるグラフェン層結合体をアルコール溶媒に分散させ120分間強い超音波分解処理させて、個別的なグラフェンシートにさらに分離させることにより、グラフェンシートを得た。この際、強い超音波ホーン(ultrasonic horn)等を用いると超音波処理時間を低減することができる。
【0046】
場合によっては、強い超音波分解処理下で5重量%のヒドラジン溶液に分散させることにより、前記マイクロ波照射段階でほとんど除去されることと予測されたにもかかわらず、グラフェンシートに跡として残って残留する酸化物グループを完全に除去すると同時に、個別的なグラフェンシートの分離を促進させることもできる。
【0047】
その後、グラフェンシートの特性を分析するためにAAOアノディスク膜(anodisc membrane)上に収集した。
【0048】
(実験例1)
カーボン繊維、前記実施例の酸化段階後に得られたカーボン繊維(すなわち、膨張したカーボン繊維)をSEMで観察し、その結果写真を図1に示し、前記膨張したカーボン繊維に対するXRDスペクトルの結果グラフを図2に示した。
【0049】
図1(a)はカーボン繊維のSEM写真であり、(b)および(c)は前記実施例で酸化段階を行った後に得られたカーボン繊維のSEM写真である。図1から実施例の酸化段階がカーボン繊維を構成するグラフェン層の部分的な膨張を誘発したことが分かる。
【0050】
また、図2は、これらの膨張したカーボン繊維が26゜での前記普通の黒鉛性ピークに加えて12゜で非常に尖鋭なピークを示しており、前記黒鉛性層、つまり、グラフェン層の実質的な膨張があったことが分かる。
【0051】
(実験例2)
実施例でマイクロ波照射後に得られた膨張したカーボン繊維をSEMで観察して得られた結果写真を図3に示し、TEMで観察して得られた結果写真を図4に示した。
【0052】
図3は、特に、数個の層又は単層グラフェンが観察され、グラフェン層結合体がマイクロ波照射によって形成されたことを示しているが、特に前記グラフェン層結合体および単層グラフェンシートが巻き上げた(curled up)又は玉ネギのような構造であることを示す。バンハートなどはこのカーリングアップ現象をグラフェン性構造の角安定性の面で説明した。すなわち、上述したように鋭い角と各面(facets)が緩慢な屈曲およびカーリングを有した構造よりは安定しなく、又は球の形成が表面積を最小化するための必要性によって誘発されるので、マイクロ波照射によるグラフェンシートの屈曲は、弱く貼り付けられた貼り付けグラフェンシートから構成された楕円体形状の構造の形成を誘導する表面ストレス誘発圧力現象によるものである。
【0053】
図4は前記グラフェン層結合体のTEM結果写真を示す。
【0054】
(実験例3)
実施例で得られたグラフェンシートをSEMおよびTEMで観察してその結果写真を図12に示す。
【0055】
(実験例4)
実施例で得られたグラフェンシートをラマンスペクトロメーターによってその特性を分析し、その分析されたスペクトルの結果グラフを図6に示し、XPSスペクトルの結果を図7に示す。
【0056】
一般に、カーボン物質の典型的なラマンスペクトルは、800〜2000cm−1の領域で普遍的な特徴を示す。即ち、これはGおよびDピークであるが、これらはそれぞれ1560および1360cm−1付近に位置する。前記Gピークはブリユアン領域の中心(Brillouin zone center)でEgフォノン(phonon)振動と相応する。前記Dピークはsp原子のブリーシングモード(breathing mode)のためであり、それの活性化のために欠陥(defect)を要求する。準備されたままの(as-prepared)グラフェンは、ラマン活性が可能なだけのDピークのための十分な構造的な欠陥を有していないということが普遍的である。その結果、それは単に角部分においてのみ見られた。しかし、グラフェンにおいて最も顕著な特徴は2次Dピーク(前記2Dピーク)である。これは〜2700cm−1付近で起きる。その形状は単一および多層サンプルを区別する。
【0057】
図6に示されたように、グラフェンシートは、グラファイトおよび数個の層からなるグラフェン層結合体とは対照的に尖鋭で且つ単一な2Dピークを有する。また、ラマンスペクトルで前記Gバンドの形状はグラフェンで層の数を指示する。
【0058】
多孔性のAAO上に分散したグラフェンシートの前記GバンドスペクトルはFWHM(afull-width at half-maximum)で36cm−1の値を有する単一の尖鋭なピークを見せる。フェラーリ(Ferrari)などは、4個のロレントジアンピーク(Lorentzian peak)がAB層間スタッキングを有した2つのグラフェン層のあるサンプルのためのGバンドを合わせるために要求されると報告されている。2つピークが非常に小さい強度を有したものの、スペクトルでフィッティングしたロレントジアンピークは4個のピークが得られた。
【0059】
図7に示されたように、グラフェンシート2のXPSスペクトルは284.5eVで単一で且つ尖鋭な強いピークを見せた。他の非常に弱いピークが観察される可能性があるが、それらはグラフェン層のスタッキングに起因する。
【0060】
前記実験例は、カーボンナノ繊維、カーボンブラックなどを含む乱層カーボン構造を持つ黒鉛性構造体から迅速であり、環境に優しく、単純で、大量生産が可能な本発明の実施例のような製造方法により高品質のグラフェン(ナノ)シートを得ることができることを示している。
【0061】
また、上述した実験例でラマンスペクトルは、0.1mWで作動して514.5nmのクリスタルレーザ励起を有したインビアレフレックスマイクロラマンスペクトロメーター(inVia Reflex micro-Raman spectrometer)(Renishaw社製)を使用して得られた。SEMの結果写真は冷電界放出型走査電子顕微鏡(S-4700、日立社製)を使用して記録した。
【0062】
TEMは、穴のある炭素コーティングされた銅グリッドを使用して200kVで動作されるJEOL JEM 2010顕微鏡で行った。TEMおよびSEMの実験は、全て沈殿後に非常に薄く分散した一滴を相対的な基板の上に位置させ、大気圧条件下で乾燥させた。ナノプロフィロメトリー(nanoprofilometry)は、ナノシストメズ(韓国)により製造された3個の干渉対物レンズ(interfero metric objective lens)および0.5nmの垂直解像度(vertical resolution)を有するナノビュNV200を使用して行った。
【図1(a)】

【図1(b)】

【図1(c)】

【図3(a)】

【図3(b)】

【図3(c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱層構造を持つ黒鉛性構造体を酸化させる酸化段階と、
前記酸化された黒鉛性構造体に対してマイクロ波照射を行うマイクロ波照射段階と、
前記照射段階後に得られる数個の層からなるグラフェン層結合体を超音波分解処理する超音波処理段階と、を含むグラフェンシートの製造方法。
【請求項2】
前記酸化段階は、前記黒鉛性構造体を過酸化水素に浸漬させて超音波処理することを特徴とする請求項1に記載のグラフェンシートの製造方法。
【請求項3】
前記超音波処理は20〜40分間行われることを特徴とする請求項2に記載のグラフェンシートの製造方法。
【請求項4】
前記マイクロ波照射段階は、マイクロウエーブオーブンに前記酸化された黒鉛性構造体を位置させた後、50〜100秒間、150〜550Wで行われることを特徴とする 請求項1に記載のグラフェンシートの製造方法。
【請求項5】
前記超音波処理段階は、前記グラフェン層結合体をアルコール溶液に分散させて60〜240分間強い超音波処理されることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンシートの製造方法。
【請求項6】
前記超音波処理段階は、分離されたグラフェンシートからの残余酸化物グループを除去する除去段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項7】
前記除去段階は、前記グラフェンシートをヒドラジン溶液に分散させて行われることを特徴とする請求項6に記載のグラフェンシートの製造方法。
【請求項8】
前記黒鉛性構造体は、カーボンブラック、カーボン繊維、気相成長のカーボンナノ繊維(Vapor-grown carbon nanofiber、VGCNF)から構成された群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンシートの製造方法。
【請求項9】
前記グラフェン層結合体は、屈曲又はカーリングされた構造を持つことを特徴とする請求項1に記載のグラフェンシートの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のグラフェンシートの製造方法によって製造されることを特徴とするグラフェンシート。

【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−509248(P2012−509248A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549082(P2011−549082)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002551
【国際公開番号】WO2011/083895
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510194839)インダストリー ファウンデェイション オブ チョンナム ナショナル ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】