説明

乱用の可能性が低減したオピオイド製剤

【課題】痛みを治療する目的で違法な販売及び流通の可能性を低減したオピオイド製剤を患者に処方/又は投与することにより、薬物乱用の可能性を低減できる方法を提供する。
【解決手段】オピオイド製剤は、少なくとも1種のオピオイドと、徐放性送達システムとを含む。徐放性送達システムは、少なくとも1種の親水性化合物を含み、更に、架橋剤、薬学的希釈剤、疎水性ポリマー、カチオン性架橋化合物から選ばれる特定の組み合せを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乱用の可能性が低減すると共に、違法な販売及び流通の可能性が低減したオピオイド製剤に関する。本発明のオピオイド製剤は、少なくとも1種のオピオイドと徐放性送達システムを含む。
【背景技術】
【0002】
オピオイド(例:OxyContin(登録商標))のような医薬品の使用に関して懸念されることとして、患者による薬物の処方外の乱用、又は患者から別の人(例えば、常用者)への娯楽を目的とする薬物の流用がある。オピオイドなどの医薬品の乱用には多くの要因が関与しており、例えば、以下のものが挙げられる:1種の身体的依存を生み出す能力であって、この場合、薬物の使用を中止すると、薬物希求行動を起こすのに十分な窮迫をもたらす能力;他の薬剤の使用中止によって起こる離脱症状を抑制する能力;多幸感(モルヒネ及びその他のオピオイドによって起こるものと類似している)を引き起こすまでの程度;通常の治療範囲を超えて薬物が投与されたときに起こる毒性のパターン;並びに薬物の物理的特性(例えば、水溶性など)。薬剤の物理的特性によって、薬物が吸入又は非経口経路により乱用されやすいか否かが決定され得る。
【0003】
長時間放出形態の医薬製剤(オピオイドなど)は、即時放出形態の同じ製剤で認められるより高いレベルの活性物質を含んでいることが多いため、薬物常用者又は娯楽目的の薬物使用者にとって特に魅力的である。より高いレベルの薬物は、錠剤を微粉末に破砕又は粉砕して、元の錠剤が提供する複雑な送達系を破壊することにより、使用可能にすることができる。この粉末は、咽頭口部経路を介して吸入するか、又は咽喉鼻部経路を介して鼻から吸入することができる。あるいは、粉末を少量の水で再形成し、皮下注射針を用いて身体内に注射することもできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、当分野では、現在入手可能な製剤と比較して、乱用の可能性を低減した医薬製剤が求められている。本発明は、この重要な目的及びその他の重要な目的に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、痛みを治療する目的で有効量の本発明の乱用の可能性のある薬物製剤又はキットを患者に処方及び/又は投与することにより、薬物乱用の可能性を低減する方法を提供する。本発明の乱用の可能性のある薬物製剤及びキットは、市販の製剤と比較して乱用の可能性が有意に低い。乱用の可能性のある薬物はオピオイド化合物を含む。
【0006】
本発明は、痛みを治療する目的で有効量の本発明の乱用の可能性のある薬物製剤又はキットを患者に処方及び/又は投与することにより、薬物の違法な販売及び/又は流通を低減する方法を提供する。本発明の乱用の可能性のある薬物製剤及びキットは、乱用の可能性が有意に低減しているため、市販の製剤と比較して違法な販売及び/又は流通の可能性が有意に低い。乱用の可能性のある薬物はオピオイド化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】製剤1、製剤2及び製剤3の溶解プロフィールをグラフで示す。
【0008】
前記及びそれ以外の本発明の実施形態を以下に詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、少なくとも1種の乱用の可能性のある薬物と徐放性送達システムとを含む組成物を提供し、その際、上記徐放性送達システムは、(i)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、及び少なくとも1種の薬学的希釈剤;(ii)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の薬学的希釈剤、及び少なくとも1種の疎水性ポリマー;(iii)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の薬学的希釈剤、及び少なくとも1種のカチオン性架橋剤;(iv)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の薬学的希釈剤、少なくとも1種のカチオン性架橋化合物、及び少なくとも1種の疎水性ポリマー;(v)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種のカチオン性架橋化合物、及び少なくとも1種の薬学的希釈剤;又は(vi)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種のカチオン性架橋化合物、少なくとも1種の薬学的希釈剤、及び少なくとも1種の疎水性化合物を含む。
【0010】
本発明の一実施形態において、本発明は、少なくとも1種の乱用の可能性のある薬物と徐放性送達システムとを含み、その際、上記徐放性送達システムは、(i)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、及び少なくとも1種の薬学的希釈剤;(ii)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の薬学的希釈剤、及び少なくとも1種の疎水性ポリマー;(iii)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の薬学的希釈剤、及び少なくとも1種のカチオン性架橋剤;(iv)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の薬学的希釈剤、少なくとも1種のカチオン性架橋化合物、及び少なくとも1種の疎水性ポリマー;(v)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種のカチオン性架橋化合物、及び少なくとも1種の薬学的希釈剤;又は(vi)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種のカチオン性架橋化合物、少なくとも1種の薬学的希釈剤、及び少なくとも1種の疎水性化合物を含む。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1種の乱用の可能性のある薬物と徐放性送達システムとを含む組成物を提供する。上記乱用の可能性のある薬物は、上記徐放性送達システム中に均質に分散させることができる。上記乱用の可能性のある薬物は、上記組成物において、約0.5ミリグラム〜約1000ミリグラム、好ましくは約1ミリグラム〜約800ミリグラム、さらに好ましくは約1ミリグラム〜約200ミリグラム、最も好ましくは約1ミリグラム〜約100ミリグラムの量存在する。
【0012】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1種のオピオイドと徐放性送達システムとを含む組成物を提供する。上記オピオイドは、上記徐放性送達システム中に均質に分散させることができる。上記オピオイドは、上記組成物において、約0.5ミリグラム〜約1000ミリグラム、好ましくは約1ミリグラム〜約800ミリグラム、さらに好ましくは約1ミリグラム〜約200ミリグラム、最も好ましくは約1ミリグラム〜約100ミリグラムの量存在する。
【0013】
「乱用の可能性のある薬物」という用語は、以下に挙げる特徴を有する薬学的に活性の物質を包含する:1種の身体的依存を生み出す能力であって、この場合、薬物の使用を中止すると、薬物希求行動を起こすのに十分な窮迫をもたらす能力;他の薬剤の使用中止によって起こる離脱症状を抑制する能力;多幸感(モルヒネ及びその他のオピオイドによって起こるものと類似している)を引き起こすまでの程度;通常の治療範囲を超えて薬物が投与されたときに起こる毒性のパターン;並びに薬物の物理的特性(例えば、水溶性など)。薬剤の物理的特性によって、薬物が吸入又は非経口経路により乱用されやすいか否かが決定され得る。乱用の可能性のある薬物には、その立体異性体、その代謝物、その塩、そのエーテル、そのエステル及び/又はその誘導体(好ましくは、その薬学的に許容される塩)が含まれる。オピオイドは、乱用の可能性のある薬物の好ましい実施形態である。その他の麻薬は当業者には明らかであり、本発明の範囲に含まれることは理解されよう。
【0014】
「オピオイド」という用語は、その立体異性体、その代謝物、その塩、そのエーテル、そのエステル及び/又はその誘導体(好ましくは、その薬学的に許容される塩)を包含する。オピオイドは、μ−アンタゴニスト及び/又はμ−アゴニスト/アンタゴニストの混合物でもよい。オピオイドの例を以下に挙げる:アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルフィン、エトニタジン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモフィン、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルフォン、6−ヒドロキシオキシモルフォン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロキシフェン、スフェンタニル、トラマドール、チリジン、それらの立体異性体、それらの代謝物、それらの塩、それらのエーテル、それらのエステル及び/又はその誘導体。好ましい実施形態では、前記オピオイドは、モルヒネ、コデイン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、オキシモルフォン、6−ヒドロキシオキシモルフォン(6−α−ヒドロキシオキシモルフォン及び/又は6−β−ヒドロキシオキシモルフォンを含む)、又はトラマドールである。
【0015】
乱用の可能性のある薬物又はオピオイドは、当分野で公知のあらゆる薬学的に許容される塩の形態をしているものでよい。薬学的に許容される塩の例として、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、パモ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリル硫酸、ナフタリンスルホン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。
【0016】
徐放性送達システムは、少なくとも1種の親水性化合物を含む。この親水性化合物は、好ましくは、液体に暴露すると、持続的速度でオピオイドを放出するゲルマトリックスを形成する。本明細書で用いる「液体」とは、例えば、胃腸液、水溶液(in vitro溶解試験で用いるものなど)、及び粘液(例えば、口腔、鼻、肺、食道などの)を包含する。ゲルマトリックスからのオピオイドの放出速度は、ゲルマトリックスの成分と胃腸管内の水相との間の薬物の分配係数に応じて変動する。本発明の組成物では、親水性化合物に対するオピオイドの重量比は、一般に約1:0.5〜約1:25の範囲、好ましくは約1:0.5〜約1:20の範囲にある。徐放性送達システムは、一般に約20重量%〜約80重量%、好ましくは約20重量%〜約60重量%、さらに好ましくは約40重量%〜約60重量%、さらにまた好ましくは約50重量%の量の親水性化合物を含む。
【0017】
親水性化合物は当業者には公知のものでよい。親水性化合物の例として、ガム、セルロースエーテル、アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、タンパク質誘導化合物、並びにそれらの混合物が挙げられる。ガムの例としては、ヘテロ多糖ガム及びホモ多糖ガムがあり、例えば、キサンタン、トラガカント、ペクチン、アカシア、カラヤ、アルギン酸塩、寒天、グアー、ヒドロキシプロピルグアー、カラギーナン、ローカストビーンガム、並びにジェランガムが挙げられる。セルロースエーテルの例として、ヒドロキシアルキルセルロース及びカルボキシアルキルセルロースがある。好ましいセルロースエーテルとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロース、並びにそれらの混合物が挙げられる。アクリル樹脂の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル及びメタクリル酸メチルのポリマー及びコポリマーがある。いくつかの実施形態では、親水性化合物は、好ましくはガム、さらに好ましくはヘテロ多糖ガム、最も好ましくはキサンタンガム若しくはそれらの誘導体である。キサンタンガムの誘導体には、例えば、脱アシル化キサンタンガム、キサンタンガムのカルボキシメチルエステル、並びにキサンタンガムのプロピレングリコールエステルが含まれる。
【0018】
別の実施形態では、徐放性送達システムはさらに、少なくとも1種の架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、液体の存在下で、親水性化合物と架橋して、ゲルマトリックスを形成することができる化合物であるのが好ましい。徐放性送達システムは一般に約0.5重量%〜約80重量%、好ましくは約2重量%〜約54重量%、さらに好ましくは約20重量%〜約30重量%、さらにまた好ましくは約25重量%の量の架橋剤を含む。
【0019】
架橋剤の例としてホモ多糖がある。ホモ多糖の例としては、ガラクトマンナンガム、例えば、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、並びにローカストビーンガムが挙げられる。いくつかの実施形態では、架橋剤はローカストビーンガム又はグアーガムであるのが好ましい。別の実施形態では、架橋剤はアルギン酸誘導体又は親水コロイドでよい。
【0020】
徐放性送達システムが少なくとも1種の親水性化合物と少なくとも1種の架橋剤を含む場合には、親水性化合物と架橋剤の比は約1:9〜約9:1、好ましくは約1:3〜約3:1でよい。
【0021】
本発明の徐放性送達システムはさらに、1種以上のカチオン性架橋化合物を含んでもよい。カチオン性架橋化合物は、上記架橋剤の代わりに、又はそれに加えて用いることができる。カチオン性架橋化合物は、液体の存在下で、親水性化合物と架橋して、ゲルマトリックスを形成するのに十分な量使用する。カチオン性架橋化合物は、徐放性送達システムにおいて約0.5重量%〜約30重量%、好ましくは約5重量%〜約20重量%の量存在する。
【0022】
カチオン性架橋化合物の例として、1価の金属カチオン、多価の金属カチオン、及び無機塩があり、例えば、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、ホウ酸塩、臭化物、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。例えば、カチオン性架橋化合物は、1種以上の硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化リチウム、リン酸トリカリウム、ホウ酸ナトリウム、臭化カリウム、フッ化カリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、フッ化ナトリウム、若しくはそれらの混合物でよい。
【0023】
徐放性送達システムが少なくとも1種の親水性化合物と少なくとも1種のカチオン性架橋化合物を含む場合には、親水性化合物とカチオン性架橋化合物の比は約1:9〜約9:1、好ましくは約1:3〜約3:1でよい。
【0024】
液体への暴露時に、ゲルマトリックスを形成する化合物(例:少なくとも1種の親水性化合物と少なくとも1種の架橋剤;又は少なくとも1種の親水性化合物と少なくとも1種のカチオン性架橋化合物)の2つの特性は、化合物/薬剤の高速の水和と、高いゲル強度を有するゲルマトリックスである。これらの2つの特性は、低速放出ゲルマトリックスを達成するのに必要であり、本発明においては、化合物の特定の組み合わせ(例:少なくとも1種の親水性化合物と少なくとも1種の架橋剤;又は少なくとも1種の親水性化合物と少なくとも1種のカチオン性架橋化合物)により最大化される。例えば、親水性化合物(例:キサンタンガム)は、優れた水分吸上げ特性を有し、これにより高速の水和が達成される。従って、親水性化合物と、該親水性化合物の硬質ならせん状の規則構造と架橋することができる材料(例:架橋剤又はカチオン性架橋化合物)との組み合わせが相乗的に作用して、ゲルマトリックスの予想粘度より高い粘度(すなわち高いゲル強度)を提供する。
【0025】
徐放性送達システムはさらに、当分野では公知の1以上の薬学的希釈剤を含んでもよい。薬学的希釈剤の例として、単糖、二糖、多価アルコール、並びにそれらの混合物が挙げられる。好ましい薬学的希釈剤としては、例えば、デンプン、ラクトース、デキストロース、スクロース、微晶質セルロース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、並びにそれらの混合物が挙げられる。別の実施形態では、薬学的希釈剤は水溶性であり、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、若しくはそれらの混合物などである。薬学的希釈剤と親水性化合物の比は一般に約1:8〜約8:1、好ましくは約1:3〜約3:1である。徐放性送達システムは、一般に約20重量%〜約80重量%、好ましくは約35重量%の量の1種以上の薬学的希釈剤を含む。別の実施形態では、徐放性送達システムは一般に、約40重量%〜約80重量%の量の1種以上の薬学的希釈剤を含む。
【0026】
本発明の徐放性送達システムはさらに、1種以上の疎水性ポリマーを含んでもよい。疎水性ポリマーは、親水性化合物を破壊することなく、該化合物の水和を低速にするのに十分な量使用する。例えば、疎水性ポリマーは、徐放性送達システムにおいて約0.5重量%〜約20重量%、好ましくは約2重量%〜約10重量%、さらに好ましくは約3重量%〜約7重量%、さらにまた好ましくは約5重量%の量存在する。
【0027】
疎水性ポリマーの例として、アルキルセルロース(例:C1−6アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、その他の疎水性セルロース材料若しくは化合物(例:酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリ酢酸ビニルポリマー(例:ポリ酢酸フタル酸ビニル)、アクリル及び/又はメタクリル酸エステルから誘導されたポリマー若しくはコポリマー、ゼイン、蝋、セラック、水素添加植物油、並びにそれらの混合物が挙げられる。疎水性ポリマーは、好ましくは、メチルセルロース、エチルセルロース又はプロピルセルロース、さらに好ましくはエチルセルロースである。
【0028】
本発明の組成物に、1種以上の湿潤剤(ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化水素添加ヒマシ油、ヒマシ油からのポリエトキシル化脂肪酸、水素添加ヒマシ油からのポリエトキシル化脂肪酸)、1種以上の潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムなど)、1種以上の緩衝剤、1種以上の着色剤、及び/又は通常の成分をさらに添加してもよい。
【0029】
1種以上のオピオイドを含む徐放性送達システムは、好ましくは経口投与が可能な固体の製剤であり、例えば、錠剤、多数の顆粒を含むカプセル、舌下錠、粉末若しくは顆粒でよく;錠剤が好ましい。錠剤には腸溶性被膜又は親水性被膜を施すこともできる。
【0030】
本発明の組成物における徐放性送達システムは、オピオイドを添加する前に、乾式顆粒化又は湿式顆粒化により調製することができるが、凝塊形成方法により構成成分を結合させて、許容される製剤を調製することも可能である。湿式顆粒化法では、成分(例:親水性化合物、架橋剤、薬学的希釈剤、カチオン性架橋化合物、疎水性ポリマーなど)を混合した後、1種以上の液体(例:水、プロピレングリコール、グリセロール、アルコール)で湿潤させることにより、湿った素材を形成し、これを後に乾燥させる。次に、乾燥した素材を通常の設備で粉砕して、徐放性送達システムの顆粒にする。それから、徐放性送達システムを所望の量でオピオイド、並びに随意に、1種以上の湿潤剤、1種以上の潤滑剤、1種以上の緩衝剤、1種以上の着色剤、又はその他の通常の成分と混合することにより、顆粒化組成物を調製する。徐放性送達システムとオピオイドを例えば、高せん断ミキサーでブレンドする。このオピオイドは、徐放性送達システム中に微細かつ均質に分散させるのが好ましい。錠剤の均一バッチを形成するのに十分な量の顆粒化組成物を通常の圧縮圧(すなわち、約2,000〜16,000psi)で通常の生産スケールタブレット成形機によるタブレット成形にかける。混合物は、液体への暴露時に水和に支障をきたす点まで圧縮してはならない。徐放性送達システムを調製する方法に関して、米国特許第4,994,276号、第5,128,143号、第5,135,757号、第5,455,046号、第5,512,297号及び第5,554,387号に記載されており、これらの開示内容は、その全文を参照により本明細書に組み込むものとする。
【0031】
顆粒化した組成物の平均粒子サイズは約50ミクロン〜約400ミクロン、好ましくは約185ミクロン〜約265ミクロンである。顆粒化組成物の平均密度は約0.3g/ml〜約0.8g/ml、好ましくは約0.5g/ml〜約0.7g/mlである。顆粒化により形成された錠剤は一般に約6〜約8kgの硬度である。顆粒化の平均流量は約25〜約40g/秒である。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1種のオピオイドを含む内部コアを覆う徐放性被膜を提供する。例えば、オピオイドを含む内部コアを徐放性フィルムで被覆することができ、このフィルムは液体に暴露されると、持続的速度でコアからオピオイドを放出する。
【0033】
一実施形態では、徐放性被膜は少なくとも1種の水不溶性化合物を含む。水不溶性化合物は疎水性ポリマーであるのが好ましい。疎水性ポリマーは、徐放性送達システムで用いられる疎水性ポリマーと同じものでも、異なるものでもよい。疎水性ポリマーの例を以下に挙げる:アルキルセルロース(例:C1−6アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、その他の疎水性セルロース材料又は化合物(例:酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリ酢酸ビニルポリマー(例:ポリ酢酸フタル酸ビニル)、アクリル及び/又はメタクリル酸エステルから誘導されたポリマー又はコポリマー、ゼイン、蝋(単独若しくは脂肪アルコールとの混合物)、セラック、水素添加植物油、並びにそれらの混合物。好ましくは、疎水性ポリマーはメチルセルロース、エチルセルロース若しくはプロピルセルロース、さらに好ましくはエチルセルロースである。本発明の徐放性製剤は、約1〜20重量%の重量増加まで水不溶性化合物で被覆することができる。
【0034】
徐放性被膜はさらに、少なくとも1種の可塑剤、例えば、クエン酸トリエチル、フタル酸ジブチル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、若しくはそれらの混合物を含んでもよい。
【0035】
徐放性被膜はまた、少なくとも1種の水溶性化合物、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、若しくはそれらの混合物を含んでもよい。徐放性被膜は、約1〜約6重量%、好ましくは、約3重量%の量の少なくとも1種の水溶性化合物を含有することができる。
【0036】
オピオイドコアに水不溶性化合物の水性分散液を噴霧することにより、オピオイドコアに徐放性被膜を施すことができる。オピオイドコアは、例えば、オピオイドと少なくとも1種の結合剤との混合粉末の乾式又は湿式顆粒化により;オピオイドと少なくとも1種の結合剤とで不活性ビーズを被覆することにより;あるいは、オピオイドと少なくとも1種の球状化剤との混合粉末を球状化することにより、調製した顆粒化組成物でよい。結合剤の例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。球状化剤の例として微晶質セルロースが挙げられる。内部コアは、顆粒を圧縮することにより、又はオピオイドを含む粉末を圧縮することにより調製された錠剤でよい。
【0037】
別の実施形態では、本明細書に記載した少なくとも1種のオピオイドと徐放性送達システムとを含む組成物を、本明細書に記載した徐放性被膜で被覆する。また別の実施形態では、本明細書に記載した少なくとも1種のオピオイドと徐放性送達システムとを含む組成物を、本明細書に記載した疎水性ポリマーで被覆する。さらに別の実施形態では、本明細書に記載した少なくとも1種のオピオイドと徐放性送達システムとを含む組成物を、腸溶性被膜、例えば、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、メタクリル酸コポリマー、セラック、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、若しくはそれらの混合物で被覆する。さらに別の実施形態では、本明細書に記載した少なくとも1種のオピオイドと徐放性送達システムとを含む組成物を、本明細書に記載した疎水性ポリマーで被覆し、さらに、本明細書に記載した腸溶性被膜を施す。本明細書に記載した実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載した少なくとも1種のオピオイドと徐放性送達システムとを含む組成物は、随意に、親水性被膜を施してもよく、この被膜は、徐放性フィルムの上若しくは下、疎水性被膜の上若しくは下、及び/又は腸溶性被膜の上若しくは下に実施することができる。好ましい親水性被膜は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0038】
本発明の特定の理論に拘束される意図はないが、オピオイド徐放性製剤の経口摂取、並びに該製剤の胃腸液との接触時に、徐放性製剤は膨潤及びゲル化して、親水性ゲルマトリックスを形成し、そこからオピオイドが放出される。ゲルマトリックスの膨潤により、製剤の嵩密度が低下すると共に、ゲルマトリックスが胃内容物上に浮遊するのに必要な浮力が生じ、これにより、オピオイドの低速送達が可能になる。親水性マトリックス(そのサイズは元の製剤のサイズに応じて変動する)はかなり膨潤するため、幽門の開口付近を閉塞すると考えられる。オピオイドは製剤全体に(その結果、ゲルマトリックス全体に)分散しているため、親水性ゲルマトリックスの外側部分の分散又は侵食により単位時間当たり一定量のオピオイドを放出することができる。この現象は、ゼロ次放出プロフィール又はゼロ次運動学と呼ばれる。この過程は、胃の中でゲルマトリックスが浮力を保持したまま、ほぼすべてのオピオイドが放出されるまで続く。
【0039】
本発明の特定の理論に拘束される意図はないが、親水性化合物(例えば、キサンタンガム)など、製剤成分のうち特定成分の化学は、該成分が自己緩衝剤であると考えられるようなものであり、このような自己緩衝剤は、胃腸管の長さに沿ったオピオイドの溶解性及びpH変化に対し実質的に不感受性である。さらに、上記成分の化学は、粘膜付着性物質、例えば、ポリカルボフィルと類似していると考えられる。粘膜付着性は口腔送達系に望ましい。従って、徐放性製剤は、胃腸管のムチンと潜在的に緩く相互作用することができ、これにより、一定のオピオイド送達速度を達成する別の形態を提供する。
【0040】
前述した2つの現象(親水性ゲルマトリックスと粘膜付着性)は、本発明の徐放性製剤が胃腸管のムチン及び液体と相互作用して、一定のオピオイド送達速度の達成を可能にすると考えられる機構である。
【0041】
意外にも、上に述べた2つの現象(親水性ゲルマトリックスと粘膜付着性)を利用して、オピオイドの乱用を低減又は排除する製剤を調製できることがみいだされた。特に、本発明のオピオイド製剤は、通常のオピオイド製剤と比べて乱用の可能性が有意に低い。
【0042】
本発明のオピオイド製剤を破砕又は粉砕して経口摂取/吸入(例:咽頭口部経路)すると、該製剤は膨潤して、親水性ゲルマトリックスを形成し、このマトリックスは、口腔及び/又は食道における粘膜の水分膜(moist lining)との接触時に、粘膜付着性を有する。口腔経路を介した薬物の吸収に使用可能な時間は、口腔及び食道における粘膜の表面被膜の急速なクリアランスのために制限される。従って、万一患者が経口摂取/吸入により本発明のオピオイド製剤を乱用しようとしても、本発明のオピオイド製剤は、吸収が起こるのに十分な時間口腔及び/又は食道内に滞留しない。さらに、オピオイドは、本発明の製剤全体に均質に分布しているため、その徐放特性を実質的に維持し、形成される親水性ゲルマトリックスから低速で放出する。本発明のオピオイド製剤の低速放出及び粘膜付着性により、患者(例:薬物常用者)は、経口摂取/吸入により従来のオピオイド製剤を乱用して即座に得られる多幸感を体験することができない。従って、本発明のオピオイド製剤は、患者により乱用されなくなる、あるいは、(例えば従来のオピオイド製剤と比較して)乱用する可能性が有意に低減する。
【0043】
本発明のオピオイド製剤を粉砕して鼻から吸入(例:咽頭鼻部経路)すると、該製剤は膨潤して、親水性ゲルマトリックスを形成し、このマトリックスは、鼻、食道及び/又は肺における粘膜の水分膜(moist lining)との接触時に、粘膜付着性を有する。鼻経路を介した薬物の吸収に使用可能な時間は、鼻内粘膜の表面被膜の急速なクリアランスのために制限される。従って、万一患者が鼻吸入により本発明のオピオイド製剤を乱用しようとしても、本発明のオピオイド製剤は、吸収が起こるのに十分な時間鼻内に滞留しない。さらに、オピオイドは、本発明の製剤全体に均質に分布しているため、その徐放特性を実質的に維持し、形成された親水性ゲルマトリックスから低速で放出する。本発明のオピオイド製剤の低速放出及び粘膜付着性により、患者(例:薬物常用者)は、鼻からの吸入により従来のオピオイド製剤を乱用して即座に得られる多幸感を体験することができない。従って、本発明のオピオイド製剤は、患者により乱用されなくなるか、あるいは、(例えば従来のオピオイド製剤と比較して)乱用する可能性が有意に低減する。
【0044】
本発明のオピオイド製剤を粉砕して非経口投与(例:皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、筋内注射、胸骨内注射、注入法)すると、該製剤は膨潤して、親水性ゲルマトリックスを形成するが、このマトリックスは、水又はその他の液体との接触時に、粘膜付着性を有する。形成された親水性ゲルマトリックスの高い粘度により、材料を注射器に吸引させる、及び/又は注射器から皮膚内に非経口投与させる能力が有意に低下する。従って、本発明のオピオイド製剤は、乱用されなくなるか、あるいは、(例えば従来のオピオイド製剤と比較して)その乱用の可能性が有意に低減する。
【0045】
さらには、本発明のオピオイド製剤を非経口投与したとしても、製剤全体に均質に分布しているオピオイドはその徐放特性を維持し、形成された親水性ゲルマトリックスから低速で放出される。患者(例:薬物常用者)は、非経口投与により従来のオピオイド製剤を乱用して即座に得られる多幸感を体験することができない。従って、本発明のオピオイド製剤は、乱用されなくなるか、あるいは(例えば従来のオピオイド製剤と比較して)その乱用の可能性が有意に低減する。
【0046】
以上述べた理由で、本発明のオピオイド製剤が乱用される可能性が低減することを考慮すると、本発明のオピオイド製剤は、薬物常用者又は娯楽目的の薬物使用者が求める多幸感を提供しないため、本発明のオピオイド製剤が違法に流通及び/又は販売される可能性は低くなる。
【0047】
本発明は、必要とする患者に有効量のオピオイド徐放性製剤を処方及び/又は投与することにより、痛みを治療する方法を提供する。有効量とは、痛みをすべて排除する、又は痛みを軽減する(すなわち、オピオイド徐放性製剤の投与する前に存在した痛みと比較して、痛みを軽減する)のに十分な量である。
【0048】
「徐放性」とは、オピオイドが製剤から制御された速度で放出され、これにより、治療に有益な血液レベル(しかし、毒性レベルより低い)のオピオイドが長時間にわたり維持されることを意味する。オピオイドの徐放性製剤は、長時間、好ましくは約8〜約24時間、さらに好ましくは約12〜約24時間の間痛みを軽減するのに十分な量投与する。本発明のオピオイド徐放性の経口投与固体製剤は、1日1〜4回、好ましくは1又は2回、さらに好ましくは1日1回投与することができる。
【0049】
痛みは、軽度、中程度から重度までのいずれでもよく、好ましくは、中程度から重度である。痛みは急性又は慢性のいずれでもよい。痛みは、例えば、癌、自己免疫疾患、感染、外科的外傷、若しくは事故による外傷に関連するものが考えられる。患者は動物、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。
【0050】
本発明の組成物は、本明細書に記載した方法において唯一の活性医薬組成物として投与してよいが、該組成物は、痛みに対する治療に有効であることが知られる1種以上の化合物/組成物と組み合わせて用いることも可能である。
【0051】
本発明は、本発明の1種以上の乱用の可能性のある薬物製剤を含む、医薬キットを提供する。本発明は、本発明の1種以上のオピオイド製剤を充填した1以上の容器を含む、医薬キットを提供する。このキットは、痛みに対する治療に有効であることが当分野で知られている別の医薬化合物と、使用のための指示書きをさらに含む。本発明のキットは、本発明のオピオイド製剤を含んでいるため、オピオイド乱用の可能性が低減する。また本発明のキットは、従来のオピオイド製剤と比較して、乱用の可能性を有意に低減した本発明のオピオイド製剤を含んでいるため、オピオイドの違法な販売及び/又は流通の可能性も低減する。本発明のキットは違法な販売及び/又は流通の可能性が低減しているため、製造者、薬局及び医局から、嗜癖を満たすために窃盗を繰り返す薬物常用者により本発明のキットが盗まれる可能性も低くする。
【実施例】
【0052】
以下に挙げる実施例は説明を目的とするにすぎず、添付の請求の範囲を制限しようとするものではない。
【0053】
まず、#30メッシュ篩で硫酸アルブテロール、ラクトース、及びSyloid244を個別にスクリーニングすることにより、本発明の徐放性製剤を調製した(以後「製剤1」と呼ぶ)。硫酸アルブテロール及びTMERxN(登録商標)(Penwest Pharmaceuticals Co.、パターソン、ニューヨーク)をパターソン−ケレイP/KブレンドマスターV−ブレンダー(Patterson-Kelley P/K Blendmaster V-Blender)で10分ブレンドした。ラクトース、Syloid244(合成非晶質シリカ、Grace Davison、コロンビア、メリーランド)及びPru(商標)(ステアリルフマル酸ナトリウム、NF、Penwest Pharmaceuticals Co.、パターソン、ニューヨーク)を上記混合物に順次添加した後、添加毎に5分ブレンドした。ストロークスRB−2 5/16”丸形標準凹面取りエッジを用いたタブレット成形機で、ブレンド済の顆粒物を217.0mg及び10Kp硬度まで圧縮した。最終錠剤の組成を以下に記載する:

【0054】
Eudragit(登録商標)RL30D(Rohm、マルデン、マサチューセッツ)を用いて、対照として、放出改変特性を有する第2の製剤を調製した(以後「製剤2」と呼ぶ)。Eudragit(登録商標)RL30Dは、平均分子量:約150,000の第4アンモニウム基を低含量で含むアクリル及びメタクリル酸エステルのコポリマーの水性分散液である。硫酸アルブテロール及びラクトースを調剤のためニロエアロマチックストリア−1流動層乾燥器(Niro Aeromatic Strea-1 Fluid Bed Dryer)中に導入し、材料を前加熱及び流動化させる。流動化の間、EudragitRL30Dを噴霧により添加する。この組成物を上記流動層乾燥器中で、乾燥減量(LOD)が1%未満になるまで乾燥させる。乾燥した顆粒物を#16メッシュ篩でスクリーニングし、10Lボウルを備えたエアロマチックフィールダーPP−1高せん断グラニュレーター(AeromaticFielder PP-1 High Sher Granulator)中に導入する。その間、ステアリルアルコールを溶融させた。羽根車を低速度で作動させながら、溶融したステアリルアルコールを添加し、混合を続けることにより均質分布を達成した。適正な顆粒が形成されるまで、顆粒化を高速で継続し、得られた顆粒を室温で冷却した。冷却した顆粒を#16メッシュ篩でスクリーニングし、調剤のためパターソン−ケレイP/KブレンドマスターV−ブレンダー中に導入した。ステアリン酸を添加し、混合物を5分ブレンドした。タルクを添加し、混合物をさらに5分ブレンドした。ストロークスRB−2 5/16”丸形標準凹面取りエッジを用いたタブレット成形機で、ブレンド済の顆粒物を281.4mg及び10Kp硬度まで圧縮した。最終錠剤の組成を以下に記載する:

【0055】
対照として水を用いて第3の製剤を調製した(以後「製剤3」と呼ぶ)。硫酸アルブテロールとラクトースをボウルミキサー中で1分混合した。羽根車を低速で作動させながら、混合物に水を1分間添加した。高速のチョッパー及び羽根車を用いて、混合物を1分顆粒化した。追加の水及び顆粒化時間を用いて、適正な顆粒を形成することができる。この組成物をニロエアロマチックストリア−1流動層乾燥器中で、乾燥減量(LOD)が1%未満になるまで乾燥させた。乾燥した顆粒物を#16メッシュ篩でスクリーニングし、10Lボウルを備えたエアロマチックフィールダーPP−1高せん断グラニュレーター中に導入する。その間、ステアリルアルコールを溶融させた。羽根車を低速度で作動させながら、溶融したステアリルアルコールを添加し、混合を続けることにより、均質分布を達成した。適正な顆粒が形成されるまで、顆粒化を高速で継続し、得られた顆粒を室温で冷却した。冷却した顆粒を#16メッシュ篩でスクリーニングし、調剤のためパターソン−ケレイP/KブレンドマスターV−ブレンダー中に導入した。ステアリン酸を添加し、混合物を5分ブレンドした。タルクを添加し、混合物をさらに5分ブレンドした。ストロークスRB−2 5/16”丸形標準凹面取りエッジを用いたタブレット成形機で、ブレンド済の顆粒物を281.4mg及び10Kp硬度まで圧縮した。最終錠剤の組成を以下に記載する:

【0056】
実施例1
鼻粘膜からの薬物の摂取に理想的な粒子サイズは10μm前後である。鼻エーロゾールは、通常、粒子サイズ分布が可能な限り狭い、10μmの平均粒子サイズを目標として製剤化される。10μmより小さい粒子は口から吐き出されると予想される。肺への薬物の最大吸収のためには、2〜5μmの最適な平均粒子サイズ直径が望ましい。
【0057】
前述したように、鼻経路を介した薬物の吸収に使用できる時間は、鼻粘膜の表面被膜の急速なクリアランスのために制限される。従って、本発明のオピオイド製剤中のオピオイドが、鼻粘膜への吸収が起こるのに十分長い時間滞留する可能性は低い。本発明のオピオイド製剤の錠剤粉砕により、広範な粒子サイズの粉末が得られる。しかし、一部は10μm前後、及び10〜250μmの範囲にあると予想することができる。粉砕した粉末が、乾燥粉末吸入器に認められる専用の製剤と同様に最適化される可能性は低い。
【0058】
アルブテロールの代わりに、他の薬物(例:オピオイド、OxyContin(登録商標)、又はニフェジピン)を用いることにより、実験を実施することができる。当業者であれば、本発明が、本発明の徐放性製剤のために、薬物乱用の可能性が低減することが理解できるだろう。何故なら、液体への暴露時に膨潤して、親水性ゲルマトリックスを形成するのが徐放性製剤であり、粘膜付着性を有するのも徐放性製剤だからである。従って、本発明の徐放性製剤と従来の製剤(例えば、OxyContin(登録商標)に用いられているもの)を比べることにより、本発明の意外な結果を証明するのに必要な比較が提供されるであろう。
【0059】
本発明のオピオイド製剤(例:オキシモルフォン製剤)が市販のオピオイド製剤(例:OxyContin(登録商標))と比べて、肺における沈着速度が極めて低いことを証明するために、次の実験を実施した。本発明のオピオイド製剤は市販のオピオイド製剤に比べ、肺における沈着速度が極めて低いため、本発明のオピオイド製剤は、市販のオピオイド製剤により得られる多幸感をもたらさないが、これは、本発明のオピオイド製剤が従来のオピオイド製剤と比較して乱用の可能性が有意に低いことを意味する。
【0060】
制御された放出のエーロゾル製剤(Drug Dev Ind Pharmacy、26(11)、1191〜1198(2000);その開示内容は、その全文を参照により本明細書に組み込む)の評価のために、改変されたツインステージインピンジャー(Twin Stage Impinger)(BP装置A)(以後「TSI」と呼ぶ)を用いることにより、肺に送達するための乾燥粉末吸入器系からの薬物沈着及び放出を推定できることが証明されている。TSI装置は2つの段に区分される。上部、すなわちステージ1フラスコは、英国薬局方(British Pharmacopoeia)で指定された通常のステージ1ジェット直径を用いて、6.8μmより大きい粒子を捕獲する。ステージ2フラスコ形態は、6.8μmより小さいすべての粒子を捕獲する。理論上、これにはミクロン以下の物質も含まれるが、実際には、このような粒子は通常ポンプ排気により吸引される。
【0061】
乳鉢と乳棒を用いて、製剤1の錠剤3錠を微粉末が得られるまで粉砕した。単純な乳棒と乳鉢による粉砕では微粉末の調製を容易にできそうにない。そのためには、通常、高圧のエアジェット微粉砕が必要となる。本発明の徐放性送達システムは、本質的に「ガムのような」性質をしており、これは、力が加えられたときの衝撃時に、粒子は破断するのではなく、相互に跳ね返ることを意味する。それでも小さな粒子が生じるが、粒子サイズの範囲は大きいと予想され、例えば、5〜50μmで、平均直径は約20μmである。
【0062】
約50mgの粉砕済の製剤1をサイズ3のカプセル中に計量して充填した。このカプセルをエーロゾル送達装置、Rotohaler(登録商標)(Glaxo Group Research Ltd.)に挿入した。上記内容物を改変ステージ1TSIに排出した。このステージには、約263mLの脱イオン水を充填し、その水位がスクリーンにちょうど触れるようにした。毎分約60リットルの呼称ポンプ流量を用いて、約Rotohaler(登録商標)の内容物をTSI装置から排出させた。この流量は、TSIの以前の較正に基づく呼称値であって、乾燥粉末吸入器の肺送達又はその鼻送達のいずれかのモデルとして意図したものでは決してない。ステージ1フラスコを取り外し、100rpmの攪拌器上に載せることにより、粉末からの薬物の溶解を開始させる。5分、10分、20分、25分、40分及び60分の時点で、5mLアリコート中のサンプルを注射器により採取した。サンプル採取するたびに、新鮮な溶解媒質(水)を取り替えることにより、実験の全工程中タンクの水位を一定に維持するようにした。使用可能な薬物全部の完全な溶解を促進することができる最大rpmに攪拌器の速度を設定した後、最終サンプルを採取した。この実験を4回繰り返した。
【0063】
製剤2及び製剤3について溶解実験を前記のように繰り返した。
【0064】
226nmでウオターズ・スフェリソーブ(Waters Spherisorb)(登録商標)C18S5ODS2カラム(4.6×150nm)(又は同等物)を用いて、すべての製剤について薬剤放出をRP−HPLCによりモニタリングした。移動相の90%は、1%氷酢酸、9.5%メタノール、0.4%アセトニトリル、及び0.1%トリエチルアミンを含んでいた。カラム温度を37℃に設定し、流量は1.5mL/分であった。各時点で放出された薬剤のパーセンテージを決定するために、その時点で採取した同薬剤の値を、完全な溶解を示す最終サンプルの値と比較した。
【0065】
図1は、製剤1、製剤2、及び製剤3の溶解プロフィールをグラフで表したものである。製剤2及び製剤3は、60分試験で、最初の5分以内の完全(100%)溶解を示し、残りの時間は安定に達した。比較すると、製剤1は、60分試験の過程に及ぶ溶解プロフィールが低速であることがわかり、60分時点で92%の材料が溶解している。
【0066】
製剤2中のアルブテロールは最初の5分以内にすべて放出された。同様に、製剤3中のアルブテロールも最初の5分以内にすべて放出された。製剤1中のアルブテロールは1時間の過程にわたって着実に放出され、60分の時点で92.4%が放出された(表1)。
【表1】

【0067】
実施例2
市販のオピオイド製剤(例:OxyContin(登録商標))と比較して、本発明のオピオイド徐放性製剤(例:オキシモルフォン製剤)が、注射器への取込み及び注射器からの排出が不十分であることを証明するために、以下の実験を実施した。本発明のオピオイド製剤は、市販のオピオイド製剤と比較して、注射器への取込み及び注射器からの排出が極めて不十分であるため、本発明のオピオイド製剤ではオピオイドに容易に到達することができず、市販のオピオイド製剤により得られる多幸感が提供されない。これは、本発明のオピオイド製剤は、従来のオピオイド製剤と比較して、乱用の可能性が有意に低いことを意味する。
【0068】
アルブテロールの代わりに、より容易に入手可能な他の薬物(例:オピオイド、OxyContin(登録商標)、又はニフェジピン)を用いることにより、実験を実施することができる。当業者であれば、本発明が、本発明の徐放性製剤のために、薬物乱用の可能性が低減することが理解できるだろう。何故なら、液体への暴露時に膨潤して、親水性ゲルマトリックスを形成するのは徐放性製剤であり、粘膜付着性を有するのも徐放性製剤だからである。従って、本発明の徐放性製剤と従来の製剤(例えば、OxyContin(登録商標)に用いられているもの)と比べることにより、本発明の意外な結果を証明するのに必要な比較が提供されるであろう。
【0069】
乳鉢と乳棒を用いて、製剤1の錠剤7錠を5分間粉砕した。粉砕済の製剤1の内容物を計量、記録し、140mlの蒸留水に導入し、手で攪拌することにより、凝集塊を減らした。各錠剤の平均重量は215.5mgであり、サンプル重量は1.5085gであった。溶液を室温に5分維持し、時々攪拌して凝集を防止した。
【0070】
乳鉢と乳棒を用いて、製剤2の錠剤7錠を5分間粉砕した。粉砕済の製剤2の内容物を計量、記録し、140mlの蒸留水に導入し、手で攪拌することにより、凝集塊を減らした。各錠剤の平均重量は286.8mgであり、サンプル重量は2.0076gであった。溶液を室温に5分維持し、時々攪拌して凝集を防止した。
【0071】
乳鉢と乳棒を用いて、製剤3の錠剤7錠を5分間粉砕した。粉砕済の製剤3の内容物を計量、記録し、140mlの蒸留水に導入し、手で攪拌することにより、凝集塊を減らした。各錠剤の平均重量は284.1mgであり、サンプル重量は1.9887gであった。溶液を室温に5分維持し、時々攪拌して凝集を防止した。
【0072】
#RV4スピンドルを備えたブルックフィールドモデルRVDV−IIIレオメーター(Brookfield Model RVDV-III Rheometer)回転粘度計(又は同等物)を用いて、前記のように調製した各製剤の粘度を測定した。粘度測定は、3rpm、6rpm、12rpm及び20rpmで実施した。
【0073】
水中の製剤1の粘度は、製剤2または製剤3の粘度より有意に、そして予想外に高い(表2)
【表2】

【0074】
本明細書で引用した特許、特許出願、並びに刊行物は、参照によりその全文を本明細書に組み込むものとする。
【0075】
本明細書に記載したもの以外に、本発明の様々な改変は、以上の説明から当業者には明らかであろう。このような改変も添付の請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシモルフォン又は薬学的に許容されるその塩と、顆粒化した徐放性送達システムを含む、乱用の可能性が低減された徐放性製剤を製造する方法であって、該方法は、
キサンタンガム、ローカストビーンガム、薬学的希釈剤、及び硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化リチウム、リン酸トリカリウム、ホウ酸ナトリウム、臭化カリウム、フッ化カリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、フッ化ナトリウム、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種のカチオン性架橋剤を混合し、ここで、該キサンタンガムと該ローカストビーンガムの比は約1:3〜約3:1であり、該キサンタンガムと該カチオン性架橋剤の比は約1:3〜約3:1であり、
該徐放性送達システムの顆粒をオキシモルフォン又は薬学的に許容されるその塩と混合して顆粒化組成物を形成し、そして
該顆粒化組成物に圧力をかけて徐放性製剤を製造する、
ことを含む、上記方法。
【請求項2】
徐放性製剤の少なくとも一部上に外側被膜を施すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オキシモルフォン又は薬学的に許容されるその塩が、乱用の可能性が低減された徐放性製剤において、約1ミリグラム〜約100ミリグラムの量存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オキシモルフォン又は薬学的に許容されるその塩が、徐放性送達システム中に微細かつ均質に分散している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
薬学的希釈剤がデキストロースであって、キサンタンガムとデキストロースの比が約1:3〜約3:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
徐放性製剤が錠剤である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−195807(P2010−195807A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91222(P2010−91222)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【分割の表示】特願2003−530373(P2003−530373)の分割
【原出願日】平成14年9月25日(2002.9.25)
【出願人】(500175152)ペンウェスト ファーマシューティカルズ カンパニー (9)
【Fターム(参考)】