説明

乳清タンパク・ココア食品

【課題】 乳清タンパクのもつミルク臭、渋み、収れん味を低減させ、よりおいしく、摂りやすいように風味と吸水性の改善された乳清タンパク食品を提供する。
【解決手段】 乳清タンパクと、乳清タンパク100質量部に対して1〜10000質量部のココアパウダーを含有する乳清タンパク・ココア食品。乳清タンパク・ココア食品を顆粒状とすることにより、吸水性のさらに向上したものとなり、牛乳等の液状食品と容易に混和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳清タンパク・ココア食品に関し、さらに詳しくは、乳清タンパクの風味と吸水性が改善され、ココアの色調を活かした乳清タンパク・ココア食品に関する。
【背景技術】
【0002】
乳清タンパクはアミノ酸の配列が人乳に近く栄養価に富み、必須アミノ酸をすべて含み、吸収率が非常によく、また、分岐鎖アミノ酸の含有率も高いため、たんぱく質を補給するための栄養補助食品として、主にスポーツ選手や運動負荷の高い人向けに商品化されている。しかし、乳清タンパクは風味上に問題があるとされ(特許文献1)、これらの商品にも乳清タンパクに起因するミルク臭や渋み、収れん味が多く残っている。そのため、バニラ等で風味付けを行って風味を改善して摂り易くした商品もあるが、これらにも強い風味に隠れているだけで、乳清タンパクの持つミルク臭や渋み、収れん味は残っている。また、乳清タンパクは水、牛乳等に添加すると吸水性が悪いため、「ままこ」状態になりやすい。
【0003】
ところで、乳清タンパクには原料の生乳に由来する抗体が残存しているものもある。抗体は、消化管において疾病の原因となる細菌やウイルスによる病気の治療と予防に有効であることや、消化管内の微生物バランスを健常に保ち、健康増進に役立つことが報告されている(非特許文献1参照)。成人は毎日1000mgを超える免疫抗体を消化管に分泌しているが、中年を過ぎると加齢とともに抗体の分泌量が減るため、高齢者にとって抗体の含まれた乳清タンパクを摂取して抗体を補給することは健康維持に非常に有益である。しかし、高齢者でも毎日おいしく摂れるような乳清タンパクを用いた食品は未だ商品化されていない。
【0004】
ミルク臭の低減化については、例えば、特許文献2においては、粉乳類或いは粉乳類から調製される飲食物の風味改良のためにジヒドロカルコン類を添加する方法、特許文献3、4においてはリン酸化糖、リン酸化オリゴ糖或いはそれらのミネラル化合物を添加して乳、粉乳を含む食品の乳感を向上させる方法、特許文献5においては乳類を含む飲食物の味質改善のためにβ−グルコオリゴ糖を添加する方法、特許文献6においては乳又は動物性タンパク質の臭気抑制のためにクロロゲン酸を添加する方法が提案されているが、これらはミルク臭を低減させたり、牛乳に近い香りの改善に終わっている。
【0005】
また、渋味を低減する方法としては、α−結合ガラクトオリゴ糖を添加することが提案されている(特許文献7)が、これは果汁、コーヒー、ビールの渋味、苦味の低減を主としたものであり、乳清タンパク由来の渋味については触れられていない。
【非特許文献1】Korhonen H. et al. Bovine milk antibodies for health, British J. Nutrition,84,suppl.1,S135-S146 (2000)
【特許文献1】特開2003−23963号公報
【特許文献2】特開平11−178506号公報
【特許文献3】特開2002−253141号公報
【特許文献4】特開2002−253164号公報
【特許文献5】特開2002−335903号公報
【特許文献6】特開2003−210119号公報
【特許文献7】特開2003−250486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、若年層から高齢者までが受入れられるように乳清タンパクの持つミルク臭や渋み、収れん味を低減させて風味を改善し、また吸水性を改善して食品に混和したときの「ままこ」状態を短時間で解消して混ざりやすくし、しかも見た目にもおいしい乳清タンパク食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために種々の食品素材をスクリーニングした結果、ココアパウダーを乳清タンパクに添加することにより、乳清タンパクの持つミルク臭や渋み、収れん味が低減するとともに、吸水性が改善され、水、牛乳、豆乳等の液状食品に混和したときの「ままこ」状態を短時間で解消し、しかもココアパウダーによる着色により見た目にもおいしさと楽しさを感じさせることができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
1)乳清タンパクと、乳清タンパク100質量部に対して1〜10000質量部のココアパウダーを含有することを特徴とする乳清タンパク・ココア食品、
2)形状が顆粒状である請求項1に記載の乳清タンパク・ココア食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ココアパウダーを所定量添加することにより、乳清タンパクの持つミルク臭や渋み、収れん味が低減して風味が改善され、また吸水性が改善されることにより水、牛乳、豆乳等の液状食品に混和したとき、ままこ状態を解消して混和されやすくすることができる。また、ココアパウダーの褐色の色調は喫食する人の視覚に訴え、食欲をそそり、楽しさと変化を与えることができる。顆粒状にすることにより吸水性が一段と向上し、他の液状食品と混和することがさらに容易となり、食べやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、乳清タンパクは通常の市販されているもの、すなわち、ホエータンパク濃縮物(WPC)、ホエータンパク単離物(WPI)、脱塩ホエー粉等が使用できる。生乳からの分離法についても、マイクロフィルタレーション法、クロスフローマイクロフィルタレーション法、イオン交換法、その他いずれの方法によるものでも使用できる。
【0011】
本発明において用いる乳清タンパクの原料となる乳は牛、ヤギ、ヒツジ、馬等いずれの哺乳動物の乳でもよい。また、その乳はワクチン接種を受けた哺乳動物から採取された乳でも、ワクチン接種を受けていない哺乳動物から採取された乳でもよい。
【0012】
本発明において、ココアパウダーとしては通常のものを用いることができる。ココアパウダーは、例えば、クリーナーでカカオ豆を選別し、セパレータで豆を砕いて皮などを取り除き、リアクターでアルカリ剤を加えて反応させた後、ロースターで焙炒し、磨砕機で磨砕して得られたカカオマスをココアプレスで搾油して、ココアバターの一部を分離し、ココアミルで粉砕して細かい粒子にすることによって製造されるが、その製造法は限定されない。また、ココアパウダーはポリフェノールや食物繊維等の機能性成分を豊富に含み、秀れた機能性食品である。これらの機能性成分の含量を高めたココアパウダーを用いることもできる。
【0013】
ココアパウダーを乳清タンパクに添加することにより、ココアパウダーの持つ苦味が乳清タンパクの持つミルク臭と渋み、収れん味を消すとともに、ココアパウダーの持つ風味と褐色の色調が乳清タンパク・ココア食品によりおいしい感じを与える。また、ココアパウダーの添加で吸水性が向上し、液状食品と混ざりやすくなる。
【0014】
本発明の乳清タンパク・ココア食品は、ココアパウダーを乳清タンパク100質量部に対し1〜10000質量部含有する。ココアパウダーの含有量が1質量部未満では乳清タンパクの持つミルク臭や渋み、収れん味の低減効果および吸水性の改善効果が不十分であり、着色も不十分である。一方、10000質量部を超えると、乳清タンパクの含量が低くなってしまい、乳清タンパクを摂取する意義が薄れてくる。
【0015】
また、本発明の乳清タンパク・ココア食品の形状を顆粒状とすると、乳清タンパク・ココア食品の吸水性をさらに向上させることができ、液状食品との混和が容易となる。乳清タンパクは吸水性が悪いため、単独で水、牛乳、豆乳等に添加すると「ままこ」状態になりやすい。しかし、ココアパウダーを含有する乳清タンパク・ココア食品は吸水性が改善され、さらに、顆粒状にすると吸水性がさらに改善され、他の食品に添加しても「ままこ」にならず、容易に混和することのできるものとなる。
【0016】
ココアパウダーには糖質、繊維質が含まれており、顆粒化に際してはこれらの成分がバインダーになると考えられるが、バインダーとしてCMC(カルボキシメチルセルロース)や糖質等を添加してもよい。また、顆粒化は、噴霧造粒法、押出し造粒法等の通常の方法で行うことができる。
【0017】
本発明の乳清タンパク・ココア食品は、脱脂粉乳、全粉乳、クリームパウダー等の乳製品、ショ糖、乳糖、エリスリトール、ステビア抽出物等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸等の酸味料、食塩、炭酸カルシウム、香料、増粘多糖類等の通常、食品に添加される原料を含有することもできる。
【0018】
以上のとおり、本発明の乳清タンパク・ココア食品は、乳清タンパクの持つミルク臭と渋み、収れん味を消し去り、よりおいしく、摂りやすいものとなる。また、他の食品に添加するとき、乳清タンパク単独の粉末に比べ、吸水性のよいものとなる。さらには、ココアパウダーで着色されて見た目にもおいしさを感じさせるものである。また、その形状を顆粒状とすると、吸水性がさらに向上し、液状食品との混和が容易となる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0020】
[実施例1〜5、比較例1]
下記表1に示す配合(数値は質量比)で5種類の乳清タンパク・ココア食品と、比較のためココアパウダーを含有しない乳清タンパク食品(比較例1)を作製した。表1中、Proliant(登録商標)8000は乳清タンパク(WPC,James Farrell & Co.製)である。
【0021】
(表1)
比較例1 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5
Proliant 8000 100 100 90 50 10 1
ココアパウダー − 1 10 50 90 100
【0022】
(風味改善の評価)
作製した各乳清タンパク・ココア食品20gとショ糖6gを、65℃に加温した市販の超高温殺菌牛乳(以下、「牛乳」と略記する)100mlに添加し、均一混和したものについて、10名の専門パネラーにより5点法で官能による評価を行った。また、各乳清タンパク・ココア食品20gとショ糖6gを、冷水100mlに添加し、均一混和したものについても、同様に評価を行った。それらの平均点を表2に示す。点数の高いほうが風味は良好である。実施例は比較例と比べていずれも高得点で、すなわち、5種類の乳清タンパク・ココア食品はいずれも乳清タンパクの風味の改善されたものであった。
【0023】
(表2)
比較例1 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5
牛乳での評価 1.6 3.9 4.0 4.2 4.6 4.4
冷水での評価 1.4 3.8 3.9 4.1 4.3 4.2
【0024】
なお、本実施例1〜5において、ココアパウダーが添加された乳清タンパク・ココア食品は、食するためにショ糖とともに65℃の牛乳および冷水に加えたところ、いずれも乳清タンパク単独の粉末に比べて「ままこ」ができにくく、吸水性が改善されていた。
【0025】
[実施例6]
実施例5で示した配合の乳清タンパク・ココア食品40gとショ糖12gを65℃の牛乳200mlに加えたところ、「ままこ」ができにくく、簡単に分散混和させることができ、また、全量をおいしく飲むことができた。
【0026】
[実施例7]
実施例1で示した配合の乳清タンパク・ココア食品を、噴霧造粒法により顆粒化した。この顆粒状乳清タンパク・ココア食品は、その40gを冷たい牛乳200mlに加えたところ、速やかに吸水して、分散混和させることができた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳清タンパクと、乳清タンパク100質量部に対して1〜10000質量部のココアパウダーを含有することを特徴とする乳清タンパク・ココア食品。
【請求項2】
形状が顆粒状である請求項1に記載の乳清タンパク・ココア食品。

【公開番号】特開2006−94739(P2006−94739A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283388(P2004−283388)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000101215)アサマ化成株式会社 (37)
【Fターム(参考)】