説明

乳牛の健康状態判別方法及び判別システム

【課題】 乳牛の健康状態を的確かつ早期に把握可能にする。乳牛に対して無用なストレスを与えることがないとともに、低コスト性に優れる。
【解決手段】 予め、少なくとも、自動給餌機2に設けることにより乳牛C…の牛番を検出する牛番検出センサ3iの検出タイミングに係わる反応データDi…と乳牛C…の存在を検出する牛体検出センサ3pの検出タイミングに係わる反応データDp…の一つ及び/又は組合わせに対する判別条件を設定するとともに、自動給餌機2が任意のストールAcに移動して給餌を行う際に、牛番検出センサ3iの検出タイミングに係わる反応データDi及び牛体検出センサ3pの検出タイミングに係わる反応データDpを検出し、検出した反応データDi,Dpと判別条件に基づいて乳牛Cの健康状態を判別処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストールに繋留された乳牛の健康状態を判別するための乳牛の健康状態判別方法及び判別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストールに繋留される乳牛の健康管理は、疾病や体調不良の早期発見或いは飼養環境の早期改善などを行うことにより、乳牛の良好な健康状態を維持する上で重要である。特に、近年では乳牛の高泌乳化が進み、分娩後の負のエネルギバランスや暑熱などのストレスが乳牛への負担を増大させていることから、各乳牛毎の健康状態に対する的確かつ早期の把握がより重要性を増している。
【0003】
このため、従来より乳牛の健康状態を監視する装置やシステムも提案されており、例えば、特許文献1には、家畜に、その家畜の生体情報となる体温,脈拍,活動度を検出する検出手段と、その検出手段が検出した生体情報を演算処理するとともに、その演算結果を記憶するデータ処理手段と、それら検出手段及びデータ処理手段に電力を供給する電源供給手段とを備えたデータ収集部が取り付けられて構成された家畜の生体情報収集装置が開示され、また、特許文献2には、動物の少なくとも一つの動作状態を感知するためのセンサ手段及びセンサ手段に作動的に接続され、かつ評価ステーションへの情報の送信のための送信手段を含む動物の動作活動を監視するための装置であって、センサ手段は少なくとも一つの強度測定装置を含み、その出力信号は振幅、トランジェント及び/又は上昇時間に関する動物の動きを表し、動物の様々な状態の決定のための処理器を含む評価ステーションに供給されるようにした動物の動作活動を監視するための装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−237668号公報
【特許文献2】特表2002−523066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の装置(システム)は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、基本的には、体温,脈拍,活動度等の生体に係わる情報や動き自体の情報を検出するものであるため、必ずしも健康状態が反映されない場合もある。例えば、暑さや寒さ(風)等の外的なストレスを受けていても、そのストレスが体温や脈拍に反映されない場合、このような生体に係わる情報や動き自体の情報をもっては必ずしも乳牛の体調やストレスを含む健康状態を的確かつ早期に把握できない。
【0007】
第二に、情報を得るには、別途の検出器をベルト等を介して乳牛の首等に吊り下げて使用する必要があるため、却って乳牛に対して無用なストレスを与える要因を作り出してしまう虞れがある。
【0008】
第三に、情報を得るには、温度センサ,脈拍センサ,歩数計等の各種センサを内蔵する検出器を、全ての乳牛にそれぞれ装着する必要があるとともに、検出器の情報を送受信するための専用システムを構築する必要があるなど、大幅なコストアップ要因となる。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した乳牛の健康状態判別方法及び判別システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る乳牛の健康状態判別方法は、上述した課題を解決するため、ストールAc…に繋留された乳牛C…の健康状態を判別するに際し、予め、少なくとも、自動給餌機2に設けることにより乳牛C…の牛番を検出する牛番検出センサ3iの検出タイミングに係わる反応データDi…と乳牛C…の存在を検出する牛体検出センサ3pの検出タイミングに係わる反応データDp…の一つ及び/又は組合わせに対する判別条件を設定するとともに、自動給餌機2が任意のストールAcに移動して給餌を行う際に、牛番検出センサ3iの検出タイミングに係わる反応データDi及び牛体検出センサ3pの検出タイミングに係わる反応データDpを検出し、検出した反応データDi,Dpと判別条件に基づいて乳牛Cの健康状態を判別処理するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る乳牛の健康状態判別システム1は、ストールAc…に繋留された乳牛C…の健康状態を判別するための健康状態判別システムであって、自動給餌機2に設けることにより少なくとも乳牛C…の牛番を検出する牛番検出センサ3iと乳牛C…の存在を検出する牛体検出センサ3pを有する検出手段3と、少なくとも、牛番検出センサ3iの検出タイミングに係わる反応データDiと牛体検出センサ3pの検出タイミングに係わる反応データDpの一つ及び/又は組合わせに対する判別条件を設定するとともに、自動給餌機2が任意のストールAcに移動して給餌を行う際に検出される牛番検出センサ3i及び牛体検出センサ3pより得る反応データDi,Dpと判別条件に基づいて乳牛Cの健康状態を判別処理する健康状態判別手段4を備えることを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、判別条件には、少なくとも、牛番検出センサ3i及び牛体検出センサ3pの双方が検出状態になること,牛体検出センサ3pのみが検出状態になること,牛番検出センサ3i及び牛体検出センサ3pの双方が検出状態にならないこと,の一つ又は二つ以上の判別条件を含ませることができる。なお、判別処理は、異なる時刻に行う複数回の給餌における反応データDi…,Dp…に基づいて行うことが望ましい。また、反応データDi,Dpには、自動給餌機2が任意のストールAcに移動して給餌を行う際における特定の時点から牛番検出センサ3i及び/又は牛体検出センサ3pが検出状態になるまでの時間データを含ませることができる。一方、牛番検出センサ3iには、乳牛Cに設けたIDタグ5を読取ることにより牛番を検出する牛番リーダ3isを用いることができるとともに、牛体検出センサ3pには、動いている生体を検知する焦電型赤外線センサ3psを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係る乳牛の健康状態判別方法及び判別システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 自動給餌機2が任意のストールAcに移動して給餌を行う際に、牛番検出センサ3iの検出タイミングに係わる反応データDi及び牛体検出センサ3pの検出タイミングに係わる反応データDpを検出し、検出した反応データDi,Dpと判別条件に基づいて乳牛Cの健康状態を判別するようにしたため、乳牛Cの健康状態を的確かつ早期に把握することができる。即ち、ストールAc…に繋留される乳牛C…の場合、最も大きな関心事(楽しみ)は給餌時間であり、この給餌時間に示す乳牛Cの採食反応(食欲)は、健康状態の良好な乳牛Cと健康状態の良くない乳牛Cとでは明確な差を生じる。本発明は、このような給餌時における採食反応を検出センサ3i,3pから得る反応データDi,Dpに基づいて判別するようにしたため、乳牛Cの健康状態を的確かつ早期に把握できる。
【0015】
(2) 従来のような、別途の検出器をベルト等を介して乳牛C…の首等に吊り下げて使用するものではないため、乳牛C…に対して無用なストレスを与える要因を作り出してしまう不具合を解消できる。
【0016】
(3) 自動給餌機2に設ける検出手段3を利用するため、温度センサ,脈拍センサ,歩数計等の各種センサを内蔵する検出器を各乳牛C…毎に装着する必要がない。また、自動給餌機2において他の目的で搭載される既設の検出センサ(牛番検出センサ3i及び牛体検出センサ3p)を兼用できるとともに、ソフトウェア処理等により容易に実施できるため、コスト面での負担が僅かとなり、低コスト性に優れる。
【0017】
(4) 好適な態様により、判別条件に、少なくとも、牛番検出センサ3i及び牛体検出センサ3pの双方が検出状態になること,牛体検出センサ3pのみが検出状態になること,牛番検出センサ3i及び牛体検出センサ3pの双方が検出状態にならないこと,の一つ又は二つ以上の判別条件を含ませれば、健康状態の判別に対して実用的となる三段階の判別を容易に行うことができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、判別処理を、異なる時刻に行う複数回の給餌における反応データDi…,Dp…に基づいて行うようにすれば、判別処理の信頼性をより高めることができ、特に、実用上十分な信頼性を確保できる。
【0019】
(6) 好適な態様により、反応データDi,Dpに、自動給餌機2が任意のストールAcに移動して給餌を行う際における特定の時点から牛番検出センサ3i及び/又は牛体検出センサ3pが検出状態になるまでの時間データを含ませれば、乳牛Cにおける採食反応の度合を定量的に検出でき、より緻密で多様性のある判別を行うことができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、牛番検出センサ3iとして、乳牛Cに設けたIDタグ5を読取ることにより牛番を検出(識別)する牛番リーダ3isを用いれば、通常、自動給餌機2により給餌を行う際に使用する牛番を確認するための既設のセンサを兼用できるとともに、特に、検出可能エリアを設定することにより検出タイミングに係わる反応データDiを得るセンシング手段として最適となる。
【0021】
(8) 好適な態様により、牛体検出センサ3pとして、動いている生体を検知する焦電型赤外線センサ3psを用いれば、通常、自動給餌機2により給餌を行う際に使用する乳牛の存在を確認するための既設のセンサを兼用できるとともに、特に、乳牛Cが動いている状態のみを検出できるため、検出タイミングに係わる反応データDpを得るセンシング手段として最適となるとともに、さらに、牛番検出センサ3iと組合わせる観点からも最適となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好適実施形態に係る乳牛の健康状態判別方法を説明するためのフローチャート、
【図2】本発明の好適実施形態に係る乳牛の健康状態判別システムを実施できる繋留牛舎における内部のレイアウト構成を示す平面概略図、
【図3】同繋留牛舎に備える給餌システムにおける自動給餌機の内部構造図、
【図4】同給餌システムにおける自動給餌機に備える検出手段と乳牛の位置関係を示す説明図、
【図5】同繋留牛舎の一部であって給餌システムの一部を示す側面構成図、
【図6】同繋留牛舎の一部であって搾乳システムの一部を示す側面構成図、
【図7】同健康状態判別システムを含む乳牛飼養管理システムの全体構成を示すブロック系統図、
【図8】同健康状態判別方法を実施した際の結果データ表、
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
まず、本発明の理解を容易にするため、繋留牛舎の全体構成について、図2〜図6を参照して説明する。
【0025】
図2は繋留牛舎Mの内部における概要を示す。この繋留牛舎Mには多数のストールAc…が配列するストール群Aが設置され、各ストールAc…に乳牛C…が係留されている。そして、このストール群Aの上方に、ストール群Aに沿った搾乳システムSmが設置されるとともに、このストール群Aの前方に、ストール群Aに沿った給餌システムShが設置される。
【0026】
給餌システムShは、ストール群Aの前上方に配したガイドレール部21と、このガイドレール部21に沿って移動する自動給餌機2を備える。この自動給餌機2は、図3〜図5に示すように、ガイドレール部21に装填した自走式の移動部22と、この移動部22に吊下げられた給餌機本体23を備える。給餌機本体23は、底部に計量器付の飼料排出機構24を有する飼料ケース部25を備える。飼料ケース部25は、粗飼料Baを収容する粗飼料収容部26と配合飼料Bbを収容する配合飼料収容部27を有する。そして、粗飼料収容部26の内部には、粗飼料繰出コンベア機構28及び繰出量を安定化させるビータ機構29を配設するとともに、配合飼料収容部27の内部には、スクリュ式の繰出オーガ機構30を配設する。
【0027】
また、飼料ケース部25の外側面にはコントローラ部31を配設するとともに、飼料ケース部25の下面にはバッテリを収容したバッテリボックス32を配設する。上述した移動部22は駆動モータを用いた駆動部33を搭載し、この駆動部33はコントローラ部31により駆動制御される。なお、移動部22の停止や移動方向の制御は、移動部22に設けた検出部(検出センサ)35が、ガイドレール部21の所定位置に設けた被検出部34…を検出することにより行われる。このような給餌システムShの構成により、各ストールAc…に対して自動給餌機2を自動で移動させて給餌を行うことができる。
【0028】
一方、搾乳システムSmは、ストール群Aの上方に配したガイドレール部41を備える。ガイドレール部41は、ストール群Aに沿って配した主レール41mと、この主レール41mの中途位置から直角方向に分岐し、かつストールAc…間に配した複数の分岐レール41s…を備える。この場合、分岐レール41s…は、配列するストールAc…に対して一つ置き、即ち、相隣る分岐レール41sと41s…間に二つのストールAc…が入るように配する。また、分岐レール41s…の先端前方には、図6に示すミルクライン42及び真空ライン43を配置する。ミルクライン42及び真空ライン43はストール群Aに沿って配し、各分岐レール41s…に対向する位置には、後述するディストリビュータ48が接続するミルクタップ42t…を付設する。
【0029】
さらに、搾乳システムSmには、ガイドレール部41に沿って移動する一台又は二台以上の搾乳機44…を備える。搾乳機44は、ガイドレール部41に装填した自走式の移動部45と、この移動部45に搭載したコントローラ部46と、移動部45の両側に吊下げた左右一対の搾乳ユニット47p,47qと、移動部45の先端に設けたディストリビュータ48を備える。この場合、移動部45には駆動モータを用いた駆動部49を搭載し、この駆動部49はバッテリを内蔵するコントローラ部46により駆動制御される。なお、移動部45の停止や移動方向の制御は、移動部45に設けた検出部(検出センサ)がガイドレール部41の所定位置に配した被検出部を検出することにより行われる。搾乳ユニット47p(47qも同じ)は、パルセータ装置や自動離脱装置等を含むユニット本体50と、乳牛Cの各乳房Cb…に装着する四つのティートカップ51…と、ミルククロー52を備え、ミルクチューブにより、ティートカップ51…とミルククロー52とユニット本体50とディストリビュータ48間を接続するとともに、真空チューブにより、ティートカップ51…とユニット本体50とディストリビュータ48間を接続する。また、ミルククロー52とユニット本体50は離脱用ワイヤ53により接続する。このような搾乳システムSmの構成により、各ストールAc…に対して搾乳機44を自動で移動させて搾乳を行うことができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る乳牛の健康状態判別システム1を備える乳牛飼養管理システムMcの制御系(電気系)の構成について、図2〜図7を参照して説明する。
【0031】
まず、給餌システムShの自動給餌機2には給餌機コントローラ71を搭載する。給餌機コントローラ71は、給餌機コントローラ本体部72を備えるとともに、この給餌機コントローラ本体部72に接続した無線通信部73を備える。給餌機コントローラ本体部72は、コンピュータ機能を備え、メモリに格納した処理プログラムに基づく一連の制御処理(シーケンス制御処理)をはじめ、演算処理,記憶処理,通信処理及び入出力処理等の各種データ処理(コンピューティング処理)を実行する。この場合、給餌機コントローラ本体部72及び無線通信部73は、図3に示すコントローラ部31に内蔵する。
【0032】
また、自動給餌機2には、乳牛C…の牛番を検出する牛番検出センサ3i及び乳牛C…の存在を検出する牛体検出センサ3pを備える。本実施形態では、牛番検出センサ3iとして、各乳牛C…に取付けた電子耳標(IDタグ)5…を読み取ることにより当該IDタグ5…に設定された牛番(ID)を検出(識別)する牛番リーダ3isを使用するとともに、牛体検出センサ3pには、動いている生体を検知する焦電型赤外線センサ3psを使用し、この牛番リーダ3isと焦電型赤外線センサ3psは、給餌機コントローラ本体部72に接続する。牛番リーダ3is(牛番検出センサ3i)と焦電型赤外線センサ3ps(牛体検出センサ3p)は、本実施形態に係る健康状態判別システム1における検出手段3を構成する。
【0033】
ところで、給餌の際には牛番を確認する必要があるとともに、乳牛Cが実際に居るか否かを確認する必要があるため、牛番検出センサ3i(牛番リーダ3is)及び牛体検出センサ3p(焦電型赤外線センサ3ps)は、図3及び図4に示すように、通常、自動給餌機2に付属している。本実施形態に係る健康状態判別システム1は、この牛番検出センサ3iと牛体検出センサ3pを検出手段3に兼用する。
【0034】
即ち、牛番検出センサ3iの場合、自動給餌機2に対しては、牛番(ID)を識別する本来の目的で用いるとともに、健康状態判別システム1に対しては、IDタグ5の検出タイミング(検出時点)に係わる反応データDiを検出する目的で用いる。特に、牛番リーダ3isは、隣りの牛番を誤って読み取ることがないように、検出可能エリアを50〔cm〕程度に設定している。このように、牛番リーダ3isは、健康状態判別システム1に兼用できるとともに、検出可能エリアを設定することにより検出タイミングに係わる反応データDiを得るセンシング手段として最適となる。
【0035】
同様に、牛体検出センサ3pの場合、自動給餌機2に対しては、給餌の際に乳牛Cが実際に居るか否かを確認する本来の目的で用いるとともに、健康状態判別システム1に対しては、生体を検知する検出タイミング(検出時点)に係わる反応データDpを検出する目的で用いる。特に、本実施形態では、牛体検出センサ3pとして、焦電型赤外線センサ3psを用いているため、乳牛(生体)Cが動いている状態のみを検出でき、検出タイミングに係わる反応データDpを得るセンシング手段として最適になるとともに、牛番リーダ3isと組合わせる観点からも最適となる。なお、焦電型赤外線センサ3psは、センサ視野内で生体が動いたときに生じる赤外線エネルギ量の分布変化を検出する機能を有する。したがって、動かない物体であるストールAcのポールやネックレール等の障害物に影響を受けないとともに、動かない生体(乳牛C)も検出しない。例示の焦電型赤外線センサ3psの検出可能エリアは2〔m〕程度である。
【0036】
また、牛番リーダ3isと焦電型赤外線センサ3psは、センサユニット74として一体に構成し、図3及び図4に示すように、飼料ケース部25におけるストールAc…側に対向する外側面であって、その前側下部における飼料排出機構24付近に取付ける。この場合、センサユニット74は、自動給餌機2の給餌時の移動方向に対応させて取付位置を変更することが望ましい。即ち、図2に示すように、自動給餌機2が矢印Xf方向に移動する場合、飼料排出機構24に対して移動方向とは反対側(図2中、飼料排出機構24の右側)に取付ける。他方、自動給餌機2が矢印Xf方向に対して逆方向へ移動する場合には、図2中、飼料排出機構24の右側に取付ける。取付位置を変更するのは、食欲の旺盛な乳牛Cの場合、直前に給餌された隣の餌を食べようとして頭部が隣のストールAc側へ大きく寄ったときなどの誤検出を防止するためである。なお、74fは、センサユニット74に付設することにより、牛番リーダ3isと焦電型赤外線センサ3psの検出範囲(検出角度)を制限するためのフード、Zaはその検出範囲を示している。
【0037】
一方、搾乳システムSmの搾乳機24には搾乳機コントローラ81を搭載する。搾乳機コントローラ81は、搾乳機コントローラ本体部82を備えるとともに、この搾乳機コントローラ本体部82に接続した、無線通信部83,乳量センサ84,乳汁センサ85及び牛床番号リーダ86を備える。搾乳機コントローラ本体部82は、コンピュータ機能を備え、メモリに格納した処理プログラムに基づく一連の制御処理(シーケンス制御処理)をはじめ、演算処理,記憶処理,通信処理及び入出力処理等の各種データ処理(コンピューティング処理)を実行する。この場合、搾乳機コントローラ本体部82及び無線通信部83は、図6に示すコントローラ部46に内蔵するとともに、乳量センサ84…及び乳汁センサ85は、各搾乳ユニット47p…(47q…)におけるユニット本体50…に内蔵する。乳量センサ84は搾乳時の乳量を検出する機能を有するとともに、乳汁センサ85は搾乳した乳汁の品質を検査する機能を有する。なお、この乳汁センサ85には乳汁の品質(特性)が正常か否かを検出する様々なセンサを適用できる。牛床番号リーダ86は、移動部45の先端に配設し、牛床番号を読取る機能を有する。したがって、図6に示すように、各分岐レール41s…の先端部には、各牛床のID(牛床番号)を設定したIDタグ87…を配設する。これにより、牛床番号リーダ86は、IDタグ87…に近接した際に各IDタグ87…に設定した牛床番号を読取ることができる。
【0038】
他方、繋留牛舎Mの内部又は外部には管理室Rcを設け、この管理室Rcの内部に管理コントローラ91を設置する。管理コントローラ91は、図2に示すように、汎用コンピュータシステム92により構成できる。汎用コンピュータシステム92は、コンピュータ本体部93と、このコンピュータ本体部93に接続したディスプレイ94,入出力部95及び無線通信部96を備える。コンピュータ本体部93は、CPU(処理部)93s,データメモリ93d及びプログラムメモリ93p等を含むコンピュータ機能を備え、プログラムメモリ93pに格納した処理プログラムに基づく各種管理処理をはじめ、演算処理,記憶処理,通信処理及び入出力処理等の各種データ処理(コンピューティング処理)を実行する。ディスプレイ94は、カラー液晶ディスプレイ等を利用できるとともに、入出力部95には、外部メディア用ドライブ,キーボードやマウス等の入力部、及びプリンタ等の出力部を含む。また、管理コントローラ91は、無線通信部96及び無線通信部73を介して給餌機コントローラ71と相互通信できるとともに、無線通信部96及び無線通信部83を介して搾乳機コントローラ81と相互通信できる。さらに、管理コントローラ2は、PDA等のモバイルコンピューティング装置や携帯電話等を含むモバイル端末装置Scに対して相互通信できる。したがって、管理コントローラ91は、データ通信機能Ft,データ管理機能Fc及びデータ演算機能Fcpを含む。
【0039】
また、管理コントローラ91は、乳牛Cの健康状態を判別処理する健康状態判別機能Fk(健康状態判別手段4)を備える。この健康状態判別機能Fkには、予め、牛番リーダ3isの検出タイミングに係わる反応データDi…と焦電型赤外線センサ3psの検出タイミングに係わる反応データDp…の一つ及び/又は組合わせに対する判別条件を設定する。これにより、健康状態判別機能Fkは、自動給餌機2が任意のストールAcに移動して給餌を行う際に検出される牛番検出センサ3i及び牛体検出センサ3pより得る反応データDi,Dpと判別条件に基づいて乳牛Cの健康状態を判別処理することができる。したがって、管理コントローラ91のプログラムメモリ93pには判別処理を実行するための処理プログラムが格納されている。
【0040】
次に、本実施形態に係る健康状態判別方法を含む健康状態判別システム1の動作(機能)について、図2〜図7を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0041】
今、給餌システムShにおいて、自動給餌機2はホームポジョンに停止し、待機中にあるものとする(ステップS1)。待機中において、給餌開始時刻になれば、給餌機コントローラ71は、管理コントローラ91から管理データDhを受信し、この管理データDhに基づいて給餌工程を行う。この管理データDhには、全ての乳牛C…の牛番と、各牛番に対応する牛床番号及び給餌量データ等が含まれており、管理データDhを受信したなら給餌機コントローラ71に登録されている前回の給餌時に使用した管理データDhの更新(書替)を行う。
【0042】
管理データDhを更新したなら給餌工程を開始する。給餌工程の開始により自動給餌機2はガイドレール部21に沿って自動で移動する(ステップS2,S3)。自動給餌機2は、移動により検出部35が被検出部34を検出する給餌位置に達すれば、その給餌位置で停止する(ステップS4,S5)。そして、自動給餌機2に備える焦電型赤外線センサ3psにより乳牛Cが居るか否かを検出するとともに、牛番リーダ3isにより乳牛Cの耳に取付けたIDタグ5のID(牛番)を読取ることにより牛番の識別を行う(ステップS6,S7)。また、給餌機コントローラ71は、読取った牛番と管理データDhを照合し、読取った牛番に対応する給餌量データを選択(読出)する。これにより、給餌機コントローラ71は、選択した給餌量データに基づく給餌処理を行う(ステップS8)。即ち、給餌量データに基づいて、粗飼料繰出コンベア機構28及び繰出オーガ機構30を制御するとともに、計量器付の飼料排出機構24を制御する。これにより、給餌量データに設定された粗飼料Baと配合飼料Bbの配合比及び配合量に調合した給餌飼料Bsを得るとともに、この給餌飼料Bsを飼料排出機構24から外部の餌置位置に投与する。なお、この給餌処理は、基本的に給餌量データにより行われる。したがって、焦電型赤外線センサ3ps及び牛番リーダ3isによる検出が無い場合であっても、前回の給餌工程で検出されている場合には所定の給餌処理が行われる。
【0043】
一方、牛番リーダ3isの検出処理と焦電型赤外線センサ3psの検出処理においては、牛番リーダ3isの検出タイミングに係わる反応データDiと焦電型赤外線センサ3psの検出タイミングに係わる反応データDpを検出する。この場合、乳牛Cが良好な健康状態であれば、通常、自動給餌機2がストールAcに到着した時点で焦電型赤外線センサ3psと牛番リーダ3isは共に検出状態となる。しかし、焦電型赤外線センサ3psと牛番リーダ3isの一方又は双方が検出しない場合があるため、この場合には、予め設定したリミット時間Ts(例えば、8〔秒〕間程度)の間は、そのまま停止状態を維持して検出処理を継続する。そして、リミット時間Tsまでに双方が検出すれば、その時点で検出処理を終了させる。これに対して、リミット時間Tsが経過しても焦電型赤外線センサ3psと牛番リーダ3isの一方又は双方が検出しない場合には、リミット時間Tsが経過した時点で検出処理を終了させる(ステップS9,S10)。
【0044】
この際、牛番リーダ3isがリミット時間Ts内に検出すれば、「検出」を示す反応データDiを得るとともに、リミット時間Ts内に検出しなければ、「無検出」を示す反応データDiを得る。また、焦電型赤外線センサ3psがリミット時間Ts内に検出すれば、「検出」を示す反応データDpを得るとともに、リミット時間Ts内に検出しなければ、「無検出」を示す反応データDpを得る。そして、この反応データDi,Dp及び牛番リーダ3isにより読取った牛番データ等は、給餌機コントローラ71に付与されるため、給餌機コントローラ71は給餌時に収集する収集データとして管理データDhに追加する。これにより、管理データDhに対してデータ内容が追加された被管理データDhrが得られるため、この被管理データDhrは管理コントローラ91に送信される。
【0045】
そして、任意のストールAcに対する給餌処理が終了すれば、自動給餌機2は次の給餌位置へ自動で移動するとともに、次の給餌位置においても同様の給餌処理を行う(ステップS11,S3…)。そして、全ての乳牛C…に対する給餌処理が終了すれば、自動給餌機2は、ホームポジションまで自動で戻り、給餌システムShは待機中の状態になる(ステップS11)。
【0046】
他方、管理コントローラ91が、給餌機コントローラ71から被管理データDhrを受信すれば、この被管理データDhrを利用して新たな管理データDhを作成して更新する。また、管理コントローラ91に備える健康状態判別機能Fkにより、各乳牛C…の健康状態を判別し、この判別結果を新たに作成する管理データに反映させる等のデータ処理を行うとともに、さらに、健康管理データ等のデータベースとして記録する。
【0047】
次に、健康状態判別機能Fkによる健康状態判別方法について説明する。前述したように、管理コントローラ91には予め判別条件が設定される。表1に、判別条件の一例を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように、本実施形態では、牛番リーダ3is及び焦電型赤外線センサ3psの双方が検出状態になった乳牛Cは「A(反応)」とし、焦電型赤外線センサ3psのみが検出状態になった乳牛は「X(反応鈍い)」とし、牛番リーダ3is及び焦電型赤外線センサ3psの双方が検出状態にならなかった乳牛は「XX(反応無し)」とし、この三つを判別条件として設定した。この場合、乳牛Cの健康状態が良好であれば、通常、食欲も旺盛のため、自動給餌機2が給餌位置に停止すれば、焦電型赤外線センサ3ps及び牛番リーダ3isは共に検出状態となるため、「A」として判別される。一方、焦電型赤外線センサ3psのみが検出状態になる場合としては、焦電型赤外線センサ3psにより乳牛Cは検出されるが、食欲が無く、給餌飼料Bsに近寄って来ないため、牛番リーダ3isの検出可能エリアに入らない場合が考えられる。したがって、健康状態が良好とはいえない何らかの原因が考えられ、反応が鈍い状態の「X」として判別される。さらに、焦電型赤外線センサ3ps及び牛番リーダ3isの双方が検出状態にならない場合には、健康状態が悪く、横たわって動かないような場合が考えられる。この場合には、焦電型赤外線センサ3ps及び牛番リーダ3isのいずれも検出状態にならない異常な事態と考えられるため、「XX」として判別される。
【0050】
このように、判別条件に、牛番リーダ3is及び焦電型赤外線センサ3psの双方が検出状態になること,焦電型赤外線センサ3psのみが検出状態になること,牛番リーダ3is及び焦電型赤外線センサ3psの双方が検出状態にならないこと,の一つ又は二つ以上、望ましくは三つの判別条件を含ませれば、健康状態の判別に対して実用的となる三段階の判別を容易に行うことができる。
【0051】
一方、表2は、実際に判別処理を行った結果を示している。
【0052】
【表2】

【0053】
この場合、サンプル数(牛数)は全部で73である。また、表2は、4回の給餌時刻(16時00分(前日),10時30分,13時00分,16時00分)における判別結果を示す。表2において、例えば、10:30の検出結果では、73頭中、「A」は41頭、「X」は29頭、「XX」は3頭となる。このように、判別処理を、異なる時刻に行う複数回の給餌における反応データDi…,Dp…に基づいて行うようにすれば、判別処理の信頼性をより高めることができ、特に、実用上十分な信頼性を確保できる。
【0054】
さらに、図8は、表2において「X」及び「XX」が付いた乳牛C…のうちの15頭について、健康状態の推移を観察(分析)したものである。図8において、K1は牛床番号、K2〜K5は表2に対応する給餌時刻、K6は乳牛の状態観察の結果、K7は分娩後日数、K8は最終授精日、K9は妊鑑+又は発情予定日、K10は注意分房数をそれぞれ示している。図8に示すように、「X」及び「XX」と判別した乳牛C…は、何らかの要注意状態にあり、本実施形態に係る健康状態判別方法を用いた場合の判別結果と乳牛C…における実際の健康状態は明確な相関関係を有していることを確認できる。また、給餌時刻の異なる複数回においても、同様の判別結果が継続する傾向があることを確認できる。
【0055】
このように、本実施形態に係る健康状態判別方法(健康状態判別システム1)によれば、自動給餌機2が任意のストールAcに移動して給餌を行う際に、牛番リーダ3isの検出タイミングに係わる反応データDi及び焦電型赤外線センサ3psの検出タイミングに係わる反応データDpを検出し、検出した反応データDi,Dpと判別条件に基づいて乳牛Cの健康状態を判別するようにしたため、乳牛Cの健康状態を的確かつ早期に把握することができる。しかも、従来のような、別途の検出器をベルト等を介して乳牛C…の首等に吊り下げて使用するものではないため、乳牛C…に対して無用なストレスを与える要因を作り出してしまう不具合を解消できる。さらに、自動給餌機2に設ける検出手段3(牛番リーダ3is及び焦電型赤外線センサ3ps)を利用するため、温度センサ,脈拍センサ,歩数計等の各種センサを内蔵する検出器を各乳牛C…毎に装着する必要がない。また、自動給餌機2において他の目的で搭載される既設の牛番リーダ3is及び焦電型赤外線センサ3psを兼用できるとともに、ソフトウェア処理等により容易に実施できるため、コスト面での負担が僅かとなり、低コスト性に優れる。
【0056】
以上、健康状態を判別する判別処理について説明したが、牛番リーダ3isと牛番検出センサ3iの検出結果は、それ自体の内容も管理コントローラ91で利用される。例えば、牛番リーダ3isの読取結果と管理データDhにおける牛番を対比して一致していない場合には、管理コントローラ91に不一致情報の表示を行う。これにより、確認後に正確な牛番に修正できる。
【0057】
他方、搾乳システムSmの動作は次のようになる。今、待機中において、搾乳開始時間になれば、搾乳機コントローラ81は管理コントローラ91からの管理データDmを受信する。これにより、管理データを受信した搾乳システムSmは、この管理データDmを利用した搾乳処理を行う。搾乳機コントローラ81は、この管理データDmを受信することにより、搾乳機コントローラ81に登録されている前回の搾乳時に使用した管理データDmの更新(書替)を行う。この場合、管理データDmには、少なくとも乳牛C…の搾乳禁止に係わる搾乳禁止データ、特に、各乳房Cb…単位の搾乳禁止データが含まれる。そして、搾乳時には、搾乳機44がガイドレール部41に沿って移動する。なお、最初はホームポジションから移動を開始する。搾乳機44が搾乳を行う分岐レール41sに進入し、分岐レール41sの先端まで移動すれば、ディストリビュータ48がミルクタップ42tに自動で接続(装着)される。この際、搾乳機44に備える牛床番号リーダ86は、分岐レール41sの先端に設けたIDタグ87に近接するため、IDタグ87に設定されているID(牛床番号)を読取り、牛床識別を行う。搾乳機コントローラ81は、読取った牛床番号と管理データDmを照合し、牛床番号に対応する搾乳禁止データを選択(読出)して表示部88に表示する。また、搾乳処理を行う場合、作業者は、図6に示すように、各ティートカップ51…を乳房Cb…にそれぞれ装着して搾乳を行うとともに、搾乳が終了すれば、ユニット本体50に内蔵する自動離脱装置によりティートカップ51…の自動離脱処理が行われる。これにより、乳牛C一頭の搾乳処理が終了する。なお、搾乳時に収集される収集データは搾乳機コントローラ81により管理データDmに追加され、被管理データDmrとして管理コントローラ91に送信される。そして、搾乳処理の終了により、搾乳機44は次の分岐レール41sへ自動で移動するとともに、次の分岐レール41sにおいても同様の搾乳処理を行う。全ての乳牛C…に対する搾乳が終了すれば、搾乳機44は、ホームポジションまで自動で戻り、搾乳システムSmは待機中の状態になる。
【0058】
次に、本発明に係る乳牛の健康状態判別方法の変更実施形態について説明する。表3は、判別条件を変更したものであり、前述した表1に対して、乳量センサ84の検出タイミングに係わる反応データDcを含ませたものである。
【0059】
【表3】

【0060】
この場合、判別条件「H」を満たすことにより、特に、「XX」の判別条件を満たす乳牛Cであっても乳が出ないことにより発情期にあることをより明確に判別することができる。このように、必要に応じて判別条件を追加し、任意の判別条件数を適用することができる。即ち、判別条件は、一つであってもよいし、望ましくは二以上の判別条件を設定できる。
【0061】
また、検出タイミングに係わる反応データDi,Dp,Dcとして、上記の例では、リミット時間Tsを設定し、リミット時間Ts内における検出の有無を示すデータであったが、自動給餌機2が任意のストールAcに移動して給餌を行う際における特定の時点、例えば、給餌位置に停止した時点から牛番検出センサ3i及び/又は牛体検出センサ3pが検出状態になるまでの時間データを含ませれば、乳牛Cにおける採食反応の度合を定量的に検出できるため、より緻密で多様性のある判別を行うことができる。この場合、例えば、給餌機コントローラ71にタイマを内蔵させ、給餌位置に停止した時点から計時を開始するとともに、牛番リーダ3is及び焦電型赤外線センサ3psが検出状態になる時点までの時間を計時した時間データを反応データとして用いることができる。
【0062】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0063】
例えば、健康状態判別機能Fk(健康状態判別手段4)を管理コントローラ91に設けた場合を示したが、給餌機コントローラ71に設けてもよい。また、検出手段3として、牛番リーダ3is(牛番検出センサ3i),焦電型赤外線センサ3ps(牛体検出センサ3p),乳量センサ84を挙げたが、判別条件などを考慮して他の各種センシング手段(超音波センサ,光学センサ,イメージセンサ等)を追加して利用することもできる。さらに、健康状態は、疾病,怪我,体調不良,ストレスをはじめ、周産期牛,発情予定牛,乳房炎経験牛等の様々な健康状態を適用することができる。しかも、乳牛C…の個々の健康管理のみならず、検出結果の分析により、例えば、特定のエリアに外部の風が吹き込んだり、何らかの原因により温度が上がっているなどの問題により、特定のエリアに居る乳牛C…のみが体調を崩している分布状況を発見することにより環境改善(居住性改善)にも役立たせることができる。また、反応データDi,Dp,Dcとして、時間に係わるデータを説明したが、距離のデータ、検出回数(検出頻度,動作の大きさ)等に係わるデータを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る乳牛の健康状態判別方法及び判別システム1は、ストールに繋留された乳牛をはじめ、豚や馬等のストールに繋留された各種の動物の健康状態判別方法及び判別システム1として利用することができる。したがって、本発明における乳牛は一般的な牛の概念みならず各種動物を含む概念である。
【符号の説明】
【0065】
1:健康状態判別システム,2:自動給餌機,3:検出手段,3i:牛番検出センサ,3p:牛体検出センサ,3is:牛番リーダ,3ps:焦電型赤外線センサ,4:健康状態判別手段,5:IDタグ,Ac…:ストール,C…:乳牛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストールに繋留された乳牛の健康状態を判別するための乳牛の健康状態判別方法において、予め、少なくとも、自動給餌機に設けることにより乳牛の牛番を検出する牛番検出センサの検出タイミングに係わる反応データと乳牛の存在を検出する牛体検出センサの検出タイミングに係わる反応データの一つ及び/又は組合わせに対する判別条件を設定するとともに、前記自動給餌機が任意のストールに移動して給餌を行う際に、前記牛番検出センサの検出タイミングに係わる反応データ及び前記牛体検出センサの検出タイミングに係わる反応データを検出し、検出した反応データと前記判別条件に基づいて前記乳牛の健康状態を判別処理することを特徴とする乳牛の健康状態判別方法。
【請求項2】
前記判別条件には、少なくとも、前記牛番検出センサ及び前記牛体検出センサの双方が検出状態になること,前記牛体検出センサのみが検出状態になること,前記牛番検出センサ及び前記牛体検出センサの双方が検出状態にならないこと,の一つ又は二つ以上の判別条件を含むことを特徴とする請求項1記載の乳牛の健康状態判別方法。
【請求項3】
前記判別処理は、異なる時刻に行う複数回の給餌における反応データに基づいて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の乳牛の健康状態判別方法。
【請求項4】
前記反応データには、前記自動給餌機が任意のストールに移動して給餌を行う際における特定の時点から前記牛番検出センサ及び/又は前記牛体検出センサが検出状態になるまでの時間データを含むことを特徴とする請求項1,2又は3記載の乳牛の健康状態判別方法。
【請求項5】
ストールに繋留された乳牛の健康状態を判別するための乳牛の健康状態判別システムにおいて、前記自動給餌機に設けることにより少なくとも乳牛の牛番を検出する牛番検出センサと乳牛の存在を検出する牛体検出センサを有する検出手段と、少なくとも、前記牛番検出センサの検出タイミングに係わる反応データと前記牛体検出センサの検出タイミングに係わる反応データの一つ及び/又は組合わせに対する判別条件を設定するとともに、前記自動給餌機が任意のストールに移動して給餌を行う際に検出される前記牛番検出センサ及び前記牛体検出センサより得る前記反応データと前記判別条件に基づいて乳牛の健康状態を判別処理する健康状態判別手段を備えることを特徴とする乳牛の健康状態判別システム。
【請求項6】
前記判別条件には、少なくとも、前記牛番検出センサ及び前記牛体検出センサの双方が検出状態になること,前記牛体検出センサのみが検出状態になること,前記牛番検出センサ及び前記牛体検出センサの双方が検出状態にならないこと,の一つ又は二つ以上の判別条件を含むことを特徴とする請求項5記載の乳牛の健康状態判別システム。
【請求項7】
前記牛番検出センサには、乳牛に設けたIDタグを読取ることにより牛番を検出する牛番リーダを用いることを特徴とする請求項5記載の乳牛の健康状態判別システム。
【請求項8】
前記牛体検出センサには、動いている生体を検知する焦電型赤外線センサを用いることを特徴とする請求項5記載の乳牛の健康状態判別システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−207130(P2010−207130A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56061(P2009−56061)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000237824)富士平工業株式会社 (14)
【出願人】(592231446)北原電牧株式会社 (18)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)