説明

乳酸および乳酸エステルの製造方法

【目的】 微生物による乳酸発酵において、該発酵時の培地pH調整をアンモニアで行い、発酵終了後に該アンモニアを回収再利用により発酵に関するコストを低減し、副生成物の発酵量が少なく、簡単な装置による安価な乳酸エステルの製造方法を提供する。
【構成】 微生物による乳酸発酵を含むプロセスにおいて、乳酸発酵時の培地のpH調整をアンモニアによって行い、該発酵により得られる乳酸アンモニウムの溶液、該乳酸アンモニウムの濃縮液およびそれらから発酵に用いた微生物を含む固形分を除去した液よりなる群から選ばれた少なくとも1種の液に炭素数が4または5であるアルコールを添加し、加熱することにより脱水および乳酸と該アルコールのエステル化反応を行わしめると同時にアンモニアを遊離、回収し、該エステル化反応によって得られる溶液に鉱酸を添加して酸性下に加熱、脱水を行い、該乳酸と該アルコールのエステル化を促進、完了させることを特徴とする乳酸エステルの製造方法による。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な乳酸または乳酸エステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】現在、乳酸は食品添加物として清酒、清涼飲料、漬物、醤油、製パンまたはビールなどの製造に使用され、また、工業用として皮革、繊維、プラスチック、医薬品または農薬などの製造に使用されている。
【0003】また、最近では乳酸の誘導体または合成中間体である乳酸エチルまたは乳酸ブチルなどのエステル類は安全性の高い溶剤、洗浄剤としての用途が広がっている。さらに乳酸のポリマーであるポリ乳酸は、生分解性ポリマーとしての用途が拡大するものとして期待されている。
【0004】また、今日得られる乳酸としては、石油化学製品から化学合成によって製造される乳酸と発酵により製造される乳酸がある。このうち石油化学製品から化学合成によって製造される乳酸は、一般に乳酸エステルの形で精製されるため高純度であるが、ラセミ体であり、光学活性を有しない。一方、発酵により製造される乳酸は、L体またはD体の光学活性体およびラセミ体が存在し、発酵に使用する微生物の種類により自由に必要とする光学活性体を調製できるが、一般に精製が容易でなく、その品質は合成品より劣っており、医薬または農薬に用いるには充分なものでなかった。すなわち、食品、一般工業用としては、上記化学合成によって製造されるラセミ体の乳酸またはそのエステルで全く差し支えないが、医薬、農薬の原料として利用される場合あるいは分解性高分子材料としてのポリ乳酸の原料とする場合には高い光学活性を持つ高純度の乳酸またはそのエステルが必要とされる。
【0005】しかしながら、こうした光学活性を持つ乳酸は、現在のところ発酵法でしか生産することができないのが現状であり、発酵により製造される光学活性を持つ乳酸としては、現在、糖質や澱粉などを原料として乳酸菌を用いる発酵法により製造されているが、その製造方法は、原料に乳酸菌の栄養源としてホエー、コーンスチープリカーまたは酵母エキスなどを用い、また生成する乳酸の中和剤として炭酸カルシウムを添加し、乳酸菌を接種して乳酸発酵を行い、発酵が終了した時点で乳酸カルシウムを含む発酵液に硫酸を添加して石膏を沈澱させることによって乳酸を遊離させ、次いで石膏、菌体などの固形分を濾別して粗精製の乳酸とした後に、エーテル抽出、活性炭処理などを経て精製するのが一般的であり、医薬および農薬の原料あるいは分解性高分子材料としてのポリ乳酸の原料として要求される高純度の光学活性を有する乳酸またはそのエステルを容易に精製することはできていない。
【0006】そのため、高純度の光学活性を有する乳酸を容易に製造する方法の開発が医薬、農薬分野において強く求められている。
【0007】こうした、高純度の光学活性を有する乳酸を容易に製造する方法として、生成する乳酸の中和剤として炭酸カルシウムの代わりにアンモニアまたは水酸化ナトリウムを用いて発酵を進め、乳酸アンモニウムまたは乳酸ナトリウムとし、限外濾過により、これらの乳酸塩を他の培地成分と分離した後にイオン交換により遊離の乳酸を得る方法(特開昭63−38号)、さらに粗精製の乳酸を乳酸亜鉛などの比較的溶解度の低い塩の形にして晶析により高純度としてから遊離の乳酸とする方法(特開昭63−188632号)などが記載されている。
【0008】しかしながら上記記載の方法では、新たに以下の(1)〜(3)に示すような問題点を有している。
【0009】(1)発酵中のpH調整のためには、生成する乳酸とほぼ等量のアルカリを必要とするが、上記記載の方法では、さらに生成した乳酸塩より乳酸を遊離させるために当量の酸を必要とする。また、この際に副生する石膏、硫安および硫酸ナトリウムなどの無機塩を適切に処分しなければならず、精製が充分には容易なものでない。
【0010】(2)上記記載の膜分離やイオン交換による方法では高純度精製された乳酸は、なお得ることができず、高純度で異臭もなく充分に熱安定性を持つような乳酸を得るには粗精製の乳酸をエタノールまたはメタノールなどのアルコールによりエステル化し、さらに蒸留により精製された乳酸エステルを得た後、これを加水分解する必要があるなど多くの操作を要する。
【0011】しかも、高純度の乳酸を得るためのエステル化や蒸留を行うためには、あらかじめ粗精製を行うことが必要であり、経済的でない上に、特開昭58−56690号に記載されているように、通常の発酵法で得られた不純物を含む乳酸をエステル化する際と同様に、粗精製後の乳酸に含まれる糖、菌体およびその他栄養源由来の不純物のため蒸留塔および反応釜などに付着物が多く、これらが反応釜壁に固着することにより、運転上のトラブルの原因となるなどの問題も生じ、高純度の乳酸を得ることは困難となる。
【0012】(3)乳酸カルシウム、乳酸亜鉛などの形で晶析分離により精製する方法では、乳酸の母液中へのロスが多くなるため、乳酸の収率が低下するなど経済的とはいえない。
【0013】また、上記記載の方法とは別に、乳酸アンモニウムがアルコールにより直接にエステル化されることは以前より知られている(INDUSTRIAL AND ENGINEERING CHEMISTRY VOL.44,No.9 2189-2191 Sept.1952) 。
【0014】しかしながら、こうしたアルコールによるエステル化を、実際に乳酸発酵液からの乳酸エステルの合成または乳酸の精製に応用するには、後述するように本発明者らが見出だしてなるアルコールを使用することに伴う多くの課題を解決する必要があり、さもなければ、単にアルコールを加えてエステル化しただけでは乳酸エステルの収率は低く、工業的に満足のゆく収率は達成できないものである。
【0015】さらに、WO93/00440には、コックリーム(COCKREM) らにより、乳酸アンモニウムを含む発酵液にブタノールおよび硫酸を加え、脱水、エステル化を行いつつ、硫安を晶析させて、これを濾過により分離して上澄液を蒸留する方法が提案されている。
【0016】なお、当該文献中において、炭素数4以上のアルコール(例えば、ブタノール)による乳酸のエステル化については、該アルコールと水の共沸を利用して脱水を進めることができるため、より低級なアルコールよりもプロセス上有利にできることはすでに公知のこととして記載されている。同様に、乳酸のエステル化を、硫酸、酸性硫安、パラトルエンスルホン酸などの酸性触媒下で行うことも、従来より広く行われている。
【0017】したがって、上記方法による特徴としては、ブタノール、乳酸ブチルの有機溶媒中で、硫安が、比較的大きな結晶として析出するために、従来の石膏を沈殿濾過する方法よりも、濾過性が良好となることおよび硫安の晶析と同時にエステル化ができるため、充分に満足な収率で、高純度の乳酸エステルを得ることができるとする点にあるといえる。
【0018】しかしながら、上記方法では、発酵に使用するアンモニアは、すべて硫安として回収する必要があるために、アンモニアの発酵へのリサイクルができず、また廃棄物の量が多いという欠点を有している。
【0019】また、エステル化の後に培地を再度中和し、多量の硫安などの固形分を濾過しなければならず、さらに該固形分を廃棄物処理するか、あるいは他の用途に使用するには、そこに含まれるブタノールなどを除去する必要があるため、工程が多くなる欠点も有している。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】上記の諸問題に鑑み、本発明の目的は、新規な乳酸および乳酸のエステルの製造方法を提供することにある。
【0021】また本発明の他の目的は、微生物による乳酸発酵を用いる乳酸または乳酸エステルの製造において、簡単な装置および操作により、精製に関わるコストを低減すると同時に、副生成物の発生量が少なく高収率で、かつ高純度の光学活性を有する乳酸を容易に精製することのできる方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記諸目的を達成するために、本発明者らは新規な乳酸および乳酸のエステルの製造方法について鋭意検討した結果、乳酸菌などによる乳酸発酵において、乳酸発酵時の培地のpH調整をアンモニアを用いて行い、(1)乳酸アンモニウムを含む発酵液に炭素数が4または5のアルコールを直接添加して加熱すると乳酸と該アルコールとのエステル化反応が行なわれ、(2)この際に過剰分のアルコールと水が共沸するが、この共沸組成蒸気は冷却すると容易に二層分離するためにアルコールを反応部へ還流し易く、(3)また、乳酸と該アルコールのエステル化反応と同時に、アンモニアの大部分が遊離して容易に回収することができ、(4)さらにアンモニアの遊離が終わった後で残存するアンモニアに対して僅かに過剰な量の鉱酸を添加して酸触媒とし、加熱を続けることにより乳酸エステルの合成収率を上げることができ、また、ここで生成する副生塩の量も少なくてすみ、(5)この反応液からは容易に乳酸エステルを蒸留分離することができ、その際に反応器内壁への不純物の付着がほとんどなく、該乳酸エステルは蒸留によって容易に高純度精製することができ、また乳酸は該乳酸エステルを加水分解することによって容易に得ることができることを知り、この知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。
【0023】すなわち、本発明の目的は、(1) 微生物による乳酸発酵を含むプロセスにおいて、■乳酸発酵時の培地のpH調整をアンモニアによって行い、■該発酵により得られる乳酸アンモニウムの溶液、該乳酸アンモニウムの濃縮液およびそれらから発酵に用いた微生物を含む固形分を除去した液よりなる群から選ばれた少なくとも1種の液に炭素数が4または5であるアルコールを添加し、加熱することにより脱水および乳酸と該アルコールのエステル化反応を行わしめると同時にアンモニアを遊離、回収し、■上記■のエステル化反応によって得られた溶液に鉱酸を添加して酸性下に加熱、脱水を行い、該乳酸と該アルコールのエステル化を促進、完了させることを特徴とする乳酸エステルの製造方法により達成される。また、このエステル化反応液からは、蒸留により簡単に乳酸エステルを分離精製することができる。
【0024】また本発明の目的は、(2) アルコールの添加量が、乳酸に対して1.5〜4倍モルである上記(1)に示す乳酸エステルの製造方法によっても達成される。
【0025】さらに本発明の目的は、(3) アルコールが、n−ブタノールである上記(1)または(2)に示す乳酸エステルの製造方法によっても達成される。
【0026】さらにまた本発明の目的は、(4) 上記(1)ないし(3)のいずれかに示す方法によって製造した乳酸エステルを加水分解する乳酸の製造方法によっても達成される。
【0027】
【作用】以下、本発明について詳しく説明する。
【0028】本発明に用いられる微生物による乳酸発酵としては、特に限定されることなく、いかなる乳酸発酵法をも用いることができ、例えば、シュークロース、ラクトース、グルコースおよび/または澱粉などを主原料とし、さらに酵母エキス、コーンスチープリカーなどの乳酸菌の栄養源や培養に必要な無機塩などを添加した培地に、ラクトバシラス(Lactobacillus) またはラクトコッカス(Lactococcus)などのいわゆる乳酸菌、またはリゾプス オリザエ(Rhizopus oryzae) など乳酸発酵能を持つ菌体などを接種して発酵を行わせるような方法などを用いることができる。
【0029】本発明に用いられる微生物による乳酸発酵を含むプロセスにおいては、まず第1工程として、生成する乳酸量に応じて乳酸発酵時の培地のpH調整をアンモニア水によって行う、いわゆる発酵工程が行われる。
【0030】該発酵工程で用いられるアンモニアとしては、アンモニアガスやアンモニア水など気体、液体などの状態を問わず用いることができるが、操作の簡単なアンモニア水を用いることが望ましい。該アンモニア水の場合には、該濃度は特に限定されるものでないが、通常、20〜30%の範囲である。また、リゾプス オリザエ(Rhizopus oryzae) など乳酸発酵能を持つ菌体では、好気性であるため液体培地を用いる際に、該培地を通気する必要があり、この際に併せてアンモニアガスも該培地中に吹き込むことでpHを調節することも可能である。
【0031】また、該発酵工程での乳酸発酵時の培地のpHは、用いる微生物の種類および発酵条件などにより異なるため各条件に応じて任意に決定されるものであるが、通常4〜7、好ましくは5.5〜6.5の範囲に調整される。該pHが4未満の場合には、発酵速度が低下し、最終的には用いる微生物が死滅するなど好ましくない。また、該pH値は、常に一定値を保持する必要はなく、例えば、リゾプスオリザエ(Rhizopus oryzae) など乳酸発酵能を持つ菌体の培地pHでは、該菌体の培養における最適pHにコントロールしても良いが、該菌体がペレットを形成する一定期間については菌糸の生育をおさえることによって、全体的に均一な形状、大きさのペレットを形成させることが好ましいことから、該培地pHをやや低く保つなどしてpHを任意に調整することも可能である。
【0032】次に、本発明に用いられる微生物による乳酸発酵を含むプロセスにおいては、第2工程として、発酵により得られる乳酸アンモニウムの溶液、該乳酸アンモニウムの濃縮液、またはそれらから発酵に用いた微生物を含む固形分を除去した液より選ばれた少なくとも1種の液に炭素数が4または5であるアルコールを添加し、加熱することにより脱水および乳酸と該アルコールのエステル化反応を行わしめると同時にアンモニアを遊離、回収する、いわゆる脱アンモニア工程が行われる。
【0033】該脱アンモニア工程での発酵により得られる乳酸アンモニウムの溶液には、発酵が終了した培地に乳酸アンモニウムのほかに、発酵に用いた微生物(菌体)、栄養源あるいは無機塩の残査および発酵に使用されなかった糖、澱粉などの原料が含まれているが、これらは、例えば、リゾプス オリザエ(Rhizopus oryzae)などの菌体のように特に大量に菌体が生成するもの以外には、次の工程に進む前に培地と分離する必要はなく、乳酸アンモニウムの溶液としてそのまま用いることができる。
【0034】ただし、好ましくは、乳酸アンモニウムの溶液の代わりに乳酸アンモニウムの濃縮液を用いることが望ましい。これは該脱アンモニア工程での発酵により得られる乳酸アンモニウムの溶液では、発酵終了液中の該乳酸アンモニウム濃度が、一般に15重量%以下と低いためであり、通常は、アルコールを添加してエステル化する前に濃縮される。該乳酸アンモニウムの溶液の濃縮の程度は、任意であるが、乳酸換算で濃縮液中に通常60〜75重量%、好ましくは65〜70重量%とするのが適当である。また、該濃縮条件としては、特に制限されるものでないが、水の蒸発のほかに少量のアンモニアも遊離してくるため、これを簡単に冷却捕集するために、通常常圧下で、105〜140℃、好ましくは120〜125℃で加熱して濃縮することが望ましい。
【0035】この濃縮操作で蒸発する水とアンモニアは捕集して、それぞれ発酵培地の調整用水および発酵時のpH調整用のアンモニアとして循環して再使用することができる。
【0036】さらに必要に応じて、乳酸アンモニウムの溶液の代わりに乳酸アンモニウムの溶液または乳酸アンモニウムの濃縮液から発酵に用いた微生物を含む固形分を除去した液を用いることが望ましい。これは、後の工程においてエステル化反応器内壁などへの発酵残査の付着が問題となる場合においては、微生物の精密濾過による分離やその他の高分子残査の限外濾過による分離の操作を必要とし、またコーンスチープリカーなどの副原料を用いた場合においては、副原料に含まれる不必要な固形分を発酵培地にアルコールを添加してエステル化する前に取り除くなどの操作が必要とされるためである。
【0037】これら発酵に用いた微生物を含む固形分の分離は、上記に記述する発酵液の濃縮の前後いずれでも差し支えない。
【0038】次に脱アンモニア工程では、上記発酵により得られる乳酸アンモニウムの溶液、該乳酸アンモニウムの濃縮液、またはそれらから発酵に用いた微生物を含む固形分を除去した液より選ばれた少なくとも1種の液(以下、これらを単に乳酸アンモニウム溶液ともいう)に炭素数が4または5であるアルコール(以下、単にC4 〜C5 アルコールともいう)を添加し、加熱することにより脱水および乳酸と該アルコールのエステル化反応を行わしめると同時にアンモニアを遊離、回収するものである。
【0039】該C4 〜C5 アルコールとしては、例えば、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、t−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−イソアミルアルコール、活性アミルアルコール、ジエチルカルビノール、t−ブチルカルビノールなどを用いることができるが、より好ましくは、n−ブチルアルコールである。該n−ブチルアルコールを使用する場合には、後述するアルコールの添加量として、上記乳酸アンモニウム溶液に含まれる乳酸(乳酸塩および乳酸の重合体を含む)に対して1〜10倍、好ましくは1.5〜4倍のモル数を添加する。次に加熱条件としては、通常常圧下で、100〜170℃、好ましくは120〜150℃である。該加熱により、エステル化反応と同時にアンモニアを遊離、回収することにより、後述する実施例に示すように、アンモニアの回収率は、前記乳酸アンモニウムの濃縮液を用いる場合に、該濃縮時に遊離するアンモニア量も含めて容易に90%以上に達し得る。また、この場合には、n−ブチルアルコールと水が共沸することになるが、この共沸組成物は適当に冷却捕集することによりn−ブチルアルコールと水が2相に分離するため、エステル化反応系へのn−ブチルアルコールの還流が簡単に達成することができるなど極めて好ましいアルコールといえる。
【0040】一方、炭素数が5を越えるアルコールの場合には、エステル化によるアンモニアの遊離は可能であるが、生成する乳酸エステルが高沸点のため、後の乳酸エステルの蒸留による生成が困難となる。また、エタノールやメタノールのように沸点の低いアルコールでは、反応温度が上昇せず、満足にアンモニアを遊離することができない。さらに炭素数が3のアルコールでは、水との相分離が不十分であるために効率のよい運転ができず好ましくない。
【0041】次に本発明に用いられるアルコールの添加量としては、上記乳酸アンモニウム溶液に含まれる乳酸(乳酸塩および乳酸の重合体を含む)に対してモル数で1〜10倍が好ましく、より好ましくは1.5〜4倍の範囲である。
【0042】さらに該脱アンモニア工程での該エステル化反応を行わしめる反応条件としては、使用するアルコールの種類などによっても変わるが、反応圧力としては、何ら制限されることなく、常圧下で充分であり、反応温度としては、後述する回分式または連続式によっても温度条件は異なるが、通常100〜170℃、好ましくは120〜150℃の範囲で行うことが望ましい。該温度が120℃未満ではエステル化、アンモニアの遊離の速度が遅いため生産性が低く、さらに100℃未満では、工業的に満足な程度の反応速度が得られない。また、該温度が150℃を越える場合には、乳酸が一部分解したり、アルコール2分子よりなる対応したエーテルを生じるなどの現象が現れ、また、170℃を越える場合には、より乳酸が分解し、アルコール2分子よりエーテルを生じる現象が顕著となるため好ましくない。
【0043】また、上記エステル化反応と同時にアンモニアを遊離、回収する方法としては、例えば、反応に伴い発生する蒸気にアンモニア、水およびアルコールが含まれるため、一般には、撹拌翼付きのエステル化反応器を用い、該反応器上部に数段の蒸留塔を設けて乳酸エステルの溜出を防ぎ、該蒸留塔出口に設けられたコンデンサーなどで水とアルコールを冷却捕集し、該コンデンサー下部に水、アルコールを相分離するためのタンクを設けてアルコール相を該反応器に還流し、一方、上記コンデンサーで冷却捕集されなかったアンモニアガスについては、別に捕集用の水に冷却下で吸収して回収する方法などを利用することができる。なお、本発明は、上述の方法に限定されるものでなく、適当な方法を適宜選択して利用することができる。
【0044】また上述の脱アンモニア工程において、該工程を回分式で行うときは、初めに乳酸アンモニウム溶液中に水が多量に存在しており、この状態で発酵培地を高温に保つと用いるエステル化反応器内壁にスケールが若干発生するなど好ましくない。これに対して該工程を連続化し、該反応器内の乳酸アンモニウム溶液中に水分がほとんど存在しない状態に保てば、該乳酸アンモニウム溶液中に固形分は析出するが、該反応器内壁へのスケールなどの付着はほとんどない状態で運転できるため、回分式よりもむしろ連続式で脱アンモニア工程を行うのが好ましい。
【0045】さらに上記回分式では、脱アンモニア工程での脱アンモニアおよび脱水の進行に伴なって徐々に反応温度が上昇するが、連続式では反応温度が常に高温に保たれるので、平均の滞留時間が短くなり、装置の小型化が期待できる。
【0046】次に、本発明に用いられる微生物による乳酸発酵を含むプロセスにおいては、第3工程として、所望の乳酸エステルを得るために、上記脱アンモニア工程によって得られた溶液に鉱酸を添加して酸性下に加熱、脱水を行い、該乳酸と該アルコールのエステル化を促進、完了させる、いわゆるエステル化促進工程が行われる。
【0047】該エステル化促進工程では、上記脱アンモニア工程において乳酸の一部が自己縮合するので、アンモニアの回収率が90%以上にも達するにも拘らず、乳酸エステルの生成率は、上記乳酸アンモニウム溶液に含まれる乳酸(乳酸塩および乳酸の重合体を含む)に対して50〜80重量%にとどまり、直接蒸留により精製して乳酸エステルを得るには充分なものではない。
【0048】したがって本発明では、該エステル化促進工程として、乳酸エステルの収率を上げるため、残存するアンモニアの化学当量以上、好ましくは等モル以上の鉱酸を添加して酸触媒とし、加熱脱水を続けることにより残存する乳酸のエステル化を促進するものである。なお、酸触媒としての鉱酸の添加量の上限は特に制限されるものではないが、経済性の面から考慮すれば、添加量が少ないほうが望ましく、残存アンモニア量および培地成分の緩衝作用のため発酵培地の成分によって添加量を変える必要があるが、一般の培地ではアンモニアの中和量以外に、さらに乳酸の0.2倍等量以下の鉱酸で充分である。
【0049】該エステル化促進工程において用いられる鉱酸としては、特に限定されるものでないが、硫酸が工業的に最も有利である点で好ましいといえる。
【0050】また該エステル化促進工程では、アンモニアの大部分が、前工程の脱アンモニア工程で回収されているので、本工程で副生する塩の量は従来法の場合より遥かに少なくてすむ。
【0051】該エステル化促進工程では、前述の脱アンモニア工程と比較して低温でもエステル化反応が充分に進行するため、最終的な乳酸エステルの収率を上げるために、さらにアルコールを添加し、該エステル化反応の平衡を乳酸エステルの生成側に移動させることも可能である。ここで添加する該アルコールとしては、前述の炭素数が4または5であるアルコールであればよく、該アルコールをそのまま使用することができ、好ましくはn−ブタノールである。
【0052】また、該エステル化促進工程での反応条件としては、使用するアルコールの種類などによっても変わるが、反応圧力としては、何ら制限されることなく、通常常圧下で充分であるが、下記に説明する理由から100mmHg以上で760mmHg未満、好ましくは、200〜350mmHgとする減圧下で反応を進めることも可能である。すなわち、常圧下でエステル化の促進を行うと、反応温度は後述するように130℃程度になるので、添加するC4 〜C5 アルコール2分子から、これに対応したエーテルを多量に生成する(例えば、n−ブタノールを用いる場合には、ジブチルエーテルを生成する)現象が現れ、このエーテルは分解しにくいので、そのままC4 〜C5 アルコールの減少になる。さらに該アルコールのリサイクル使用において、該エーテルの蓄積が生じるために、かかるエーテルの分離のための手間もかかることになる。したがって、こうしたエーテルの発生を防ぐために上記減圧の範囲で、かつ以下に示すような比較的低温でエステル化の促進を行うこともできる。次に反応温度としては、上記の如く反応圧力により異なり、常圧下で行う場合には、通常100〜160℃、好ましくは120〜130℃の範囲であり、上記減圧下で行う場合には、通常60〜120℃、好ましくは90〜110℃の範囲で行うことが望ましい。
【0053】また、該エステル化促進工程では、脱水にともなって、アルコールも共沸して溜出してくるが、前述の脱アンモニア工程の場合と同様に該アルコールと水を分離して該アルコールを該エステル化促進工程内のエステル化反応部へ還流することが望ましい。これにより該アルコールを有効に再利用することができ、経済的にも優れたものとなる。
【0054】さらに、該エステル化促進工程では、エステル化が充分促進されたエステル化液は、水をほとんど含まず、アルコール、該アルコールの乳酸エステル、アンモニアの鉱酸塩、乳酸菌などの微生物、その他の不純物を含んでいるが、アンモニウム塩、高分子の不純物または乳酸菌などは固形分として存在し、スラリー状になっている。
【0055】該エステル化液から乳酸エステルおよび余剰のアルコールを分離する方法としては、特に制限されるものでなく、通常の蒸留技術により回分式または連続式で容易に行い得るものであり、例えば、エステル化液をそのままで減圧下に蒸留してもよいし、また蒸留時のエステル化反応器内の残留物が高粘度であったり、該反応器内壁にスケールの付着が著しい場合には、膜濾過あるいはデカンテターなどであらかじめ上記固形分を除去した後に蒸留してもよい。好ましくは、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウムなどの塩の結晶固形分のみを通常の方法により濾過分離することにより除去した後に蒸留するものである。この場合には乳酸菌などの微生物、その他の微細な粒子を濾過分離することなく含んでいてもまったく問題はなく、蒸留後の反応器内壁の残留物の流動性も良好であり、さらに回分式または連続式にかかわらず、該反応器内壁への付着も全く見られない状態となるなど好ましいものである。
【0056】さらに、発酵に比較的清澄な培地を使用する方法、膜分離などによる培地の前処理で、あらかじめ固形分を除去する方法、発酵中に膜分離によって培地と菌体を分離して発酵する方法、あるいは発酵後に菌体、その他の固形分を除去するなどの方法を利用する場合には、エステル化液から乳酸エステルおよび余剰のアルコールを分離する方法として、エステル化促進工程内のエステル化反応部までにおいて発生する硫安または酸性硫安、その他の沈澱物の分離をすることなく直接蒸留することもできる。
【0057】また、エステル化液から乳酸エステルおよび余剰のアルコールを分離する蒸留部では、酸性硫安などの液相成分の残分は、その一部を該エステル化促進工程内のエステル化反応部にリサイクルすることも可能であり、これにより、さらに乳酸エステルの収率を向上させることができる。
【0058】こうして得られた乳酸エステルは、必要に応じて、通常の蒸留操作を繰り返し用いることにより、さらに高純度の乳酸エステルに精製することが可能である。
【0059】次に、本発明の乳酸の製造方法は、上述の乳酸エステルの製造方法によって得られた乳酸エステルを通常は酸触媒を用いて加水分解することにより成されるものである。これにより、乳酸エステルに残留しているアルコールを除去することができ、高度に精製された乳酸を得ることができるものである。
【0060】上記酸触媒としては、例えば、イオン交換樹脂、鉱酸などを用いることができる。
【0061】次に本発明の乳酸エステルの製造方法を図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0062】図1は、本発明の乳酸エステルの製造方法の一実施態様として、微生物による発酵により得られた乳酸アンモニウムの濃縮液にn−ブタノールを添加して乳酸ブチルを製造するために用いた乳酸ブチルの製造装置を示す概略図である。
【0063】図1より、乳酸ブチルの製造装置101 の構成としては、まず、発酵槽102 、濃縮器103 、脱アンモニア缶104 、エステル化促進缶105 およびフラッシュ蒸留器106 がそれぞれ配管107 、108 、109 および110 で連結されている。
【0064】上記発酵槽102 には、原料塔(図示せず)およびアンモニア貯蔵槽(図示せず)が配管111 および112 で連結されている。
【0065】次に上記濃縮器103 には、水・アンモニア捕集塔(図示せず)が配管113 で連結されている。
【0066】また、上記脱アンモニア缶104 には、蒸留塔114 およびアルコール貯蔵槽(図示せず)が配管115 および116 で連結されている。また該蒸留塔114 には、冷却器117 が配管118 で連結されている。また冷却器117 は、アンモニア吸収器(図示せず)および二液相分離缶119 に配管120 および121 で連結されている。また、二液相分離缶119 は、該二液相分離缶119 の上相成分を還流すべく配管122 により蒸留塔114 塔頂部に連結され、該二液相分離缶119 の下相成分を回収すべく水回収槽(図示せず)に配管121 で連結されている。
【0067】さらに、上記エステル化促進缶105 には、蒸留塔123 および鉱酸貯蔵槽(図示せず)が配管124 および125 で連結されている。また該蒸留塔123 には、冷却器126 が配管127 で連結されている。また冷却器126 には、二液相分離缶128 が配管129 で連結され、さらに冷却器126 には、大気放出用の排気筒130 が設置されている。また、該二液相分離缶128 は、該二液相分離缶128 の上相成分を還流すべく配管131 により蒸留塔123 塔頂部に連結され、該二液相分離缶128 の下相成分を回収すべく水回収槽(図示せず)に配管132 で連結されている。
【0068】また、上記フラッシュ蒸留器106 には、乳酸ブチル回収塔(図示せず)および残査回収槽(図示せず)にそれぞれ配管133 および134 で連結されている。
【0069】さらに、各配管経路上には、必要に応じて、バルブ(図示せず)が、反応器(例えば、発酵槽102 、濃縮器103 、脱アンモニア缶104 、エステル化促進缶105 およびフラッシュ蒸留器106 )などへの原料や反応液などをコントロールできるように配置されている。
【0070】上記構成を有する乳酸ブチルの製造装置101 を用いて乳酸ブチルの製造を行うには、発酵に供する微生物として乳酸菌を選択した場合には、まず、発酵槽102に原料塔より配管111 を通じて、グルコースおよびコーンスチープリカーなどの栄養源から成る発酵培地組成に乳酸菌を接種してなる原料を供給し、乳酸発酵に最適な30〜50℃の温度に保ち、また用いる微生物の発酵に適した雰囲気、乳酸菌では嫌気性雰囲気中で、適当に撹拌しながらアンモニア貯蔵槽より配管112を通じて、20〜30%アンモニア水でpH5.5〜6.5にコントロールしつつ発酵を行う。使用する微生物種などにより異なるが、乳酸菌では、発酵工程でのグルコースに対する乳酸の収率は94〜97%程度となる。
【0071】続いて、上記発酵槽102 で生成された発酵液は、配管107 を通じて濃縮器103に送り込まれ、該濃縮器103 中で、常圧下で煮沸脱水され、通常、乳酸濃度65〜70%まで濃縮される。溜出する水と一部遊離するアンモニアは、配管113 を介して水・アンモニア捕集塔で捕集した水からは煮沸によりアンモニアを完全に除去し、アンモニアは別に用意した捕集用水に冷却下に吸収することによりそれぞれ回収を行う。
【0072】次に、上記濃縮器103 で乳酸濃度65〜70%まで濃縮された濃縮液が、配管108 を通じて脱アンモニア缶104 に送り込まれる。これにアルコール貯蔵槽より配管116 を通じてn−ブタノールを乳酸に対して通常、1.5〜4倍モルの範囲で添加して反応液とし、該脱アンモニア缶104 中に備えられた撹拌翼による撹拌下に120〜150℃の範囲で加熱しエステル化の反応を進行させる。この加熱反応により生じる水とn−ブタノールの共沸組成物は、脱アンモニア缶104 の上方の蒸留塔114 を経て該蒸留塔114 塔頂の上方の冷却器117 で捕集され、該冷却器117 の下方の二液相分離缶119 で水相とブタノール相に分離される。上相成分のn−ブタノール(少量の水を含む)は配管121 を通じて蒸留塔114 上部に還流され、下相成分の水(少量のn−ブタノールおよびアンモニアを含む)は随時配管122 を通じて抜き出され水回収槽に回収される。また蒸留塔114 を通過したアンモニアガスは、冷却器117 では捕集されず、さらに配管120 を経て氷冷水式のアンモニア吸収器によって捕集される。
【0073】続いて、上記脱アンモニア缶104 内の反応済み液(エステル、塩などを含む全乳酸成分)は、配管109 を通じてエステル化促進缶105 に送り込まれる。これに鉱酸貯蔵槽より配管125 を通じて濃硫酸を乳酸に対して通常、0.05〜0.2倍モルの範囲で添加して反応液とし、該エステル化促進缶105 中に備えられた撹拌翼による撹拌下に120〜130℃の範囲で加熱を続けてエステル化の促進を行う。この加熱反応により生じる水とn−ブタノールの共沸組成物は、該エステル化促進缶105 の上方の蒸留塔123 を経て該蒸留塔123 塔頂の上方の冷却器126で捕集され、該冷却器126 の下方の二液相分離缶128 で水相とブタノール相に分離される。上相成分のn−ブタノール(少量の水を含む)は配管131 を通じて蒸留塔123 上部に還流され、下相成分の水(少量のn−ブタノールを含む)は随時配管132 を通じて抜き出され水回収槽に回収される。また極微量のアンモニアガスは、冷却器126 では捕集されず、排気筒130 より大気中に放出される。
【0074】最後に、上記エステル化促進缶105 内の反応済み液は、配管110 を通じてフラッシュ蒸留器106 に送り込まれる。続いて該フラッシュ蒸留器106 内を100〜150℃で10〜100torrで該反応済み液を平行状態に保って液相と気相に分離した後、液相成分の酸性硫安など他の残分は配管134 を通じて残査回収槽に回収し、気相成分の乳酸ブチルおよびn−ブタノールは配管133 を通じて乳酸ブチル回収塔に捕集することにより、所望の乳酸ブチルを得るものである。また、上記液相成分の酸性硫安などの固形成分は、配管110 の経路上に固形分を分離できる濾過器などを設置し、フラッシュ蒸留器106 に送り込む前に除去することもある。
【0075】
【実施例】以下、本発明の実施例を示す。
【0076】なお、以下の実施例での発酵液中の乳酸およびグルコースの定量はすべて高速液体クロマトグラフィー(示差屈折率検出器)により行った。同様に反応液中の乳酸ブチルおよびジブチルエーテルの分析はガスクロマトグラフィーでおこない、アンモニアの分析は高速液体クロマトグラフィー(蛍光検出器)でおこなった。
【0077】実施例1■発酵培地の濃縮グルコース100gおよびコーンスチープリカー40gに水道水を加えて1リットルとした発酵培地組成をジャーファーメンターに仕込み121℃で15分間滅菌し、あらかじめ前培養したラクトバシラス カセイ 亜種 ラムノサス(Lactobacillus casei subsp. rhamnosus)IFO 3863の菌体40mlを接種して、42℃に保ち、少量の窒素を流しつつ50rpmで撹拌しながら10モル%アンモニア水でPH6.0にコントロールした。
【0078】発酵は55時間で終了し、グルコースに対する乳酸の収率は96.2%であった。
【0079】発酵液の一部(乳酸換算で1.02モル)を丸底フラスコに移し、常圧下で煮沸脱水して乳酸濃度62.0%まで濃縮し、溜出する水(一部遊離するアンモニアを含む)を捕集し、捕集した水からは煮沸によりアンモニアを完全に除去し、アンモニアは別に用意された捕集用の水に冷却下に吸収した。捕集水の量は822g、アンモニアの捕集量は0.135モルであった。
【0080】■回分式による脱アンモニア次に、図2に本実施例に用いた脱アンモニア装置の概略図を示す。
【0081】図2より脱アンモニア装置201 は、オイルバス202 のオイル浴中に攪拌翼を備えてなる反応器203 が設置され、該反応器203 には蒸留塔204 が配管205 により連結され、該蒸留塔204 は、冷却器206 および二相分離器207 に二股配管208 により連結されている。また、冷却器206 は、アンモニア吸収器(図示せず)に配管209 で連結されている。また、二相分離器207 は、該二相分離器207 の上相成分を還流すべく配管210 により二股配管208 に連結され、該二相分離器207 の下相成分を回収すべく水回収槽(図示せず)に配管211 で連結されている。
【0082】上記構成を有する脱アンモニア装置201 を用いて上記■発酵培地の濃縮操作により乳酸濃度62.0%まで濃縮された濃縮液によりエステル化反応を行いつつ脱アンモニアを行った。
【0083】まず、反応器203 中に上記濃縮液(乳酸1.02モル)およびn−ブタノール2.55(乳酸に対して2.5倍モル)を加えて反応液とし、該反応器203 中に備えられた撹拌翼による撹拌下に加熱反応させた。この際の加熱温度(オイルバス202 のオイル浴温度)は、150〜160℃の範囲とした。加熱により、水と共沸するn−ブタノールは、反応器203 の上方に位置する蒸留塔204 塔頂の上方の冷却器206 で捕集され、冷却器206 の下方の二相分離器207 で水相とブタノール相に分離され、上相成分のブタノール(少量の水を含む)は配管210 を通じて蒸留塔204 上部の二股配管208 に還流され、下相成分の水(少量のn−ブタノールを含む)は随時配管211 を通じて抜き出され、水回収槽に回収された。また蒸発したアンモニアガスは、冷却器206 で捕集されないため、アンモニア吸収器(氷冷水)を用いて捕集をおこなった。
【0084】反応器203 内の反応液温度は、反応開始後徐々に上昇し、10時間後に132℃となり、蒸留塔204 の塔頂からの水の溜出がほとんど止まったため、反応を停止させた。反応後の反応器203 内の反応液中には乳酸ブチル0.784モル、アンモニア0.0612モルが存在していた。
【0085】また、エステル反応後の反応器203 内には、反応液の液面付近に固形物が多く付着していたが、反応液の液面下部にもやや付着が見られた。
【0086】■エステル化の促進分析のためのサンプリングをした後の上記反応器203 内の反応液(エステル、塩などを含む全乳酸として1.00モル)に濃硫酸0.08モル、n−ブタノール0.5モルを添加して、さらに上記■回分式による脱アンモニアと同じ加熱条件により加熱脱水をつづけてエステル化の促進を行ったところ、3時間後に蒸留塔204 の塔頂から水はほとんど溜出しなくなったため、反応を停止させた。反応後の反応器203 内の反応液中には、細かい固形物が含まれているが、反応器203の内壁への付着はまったくなくなっていた。該反応液中には乳酸ブチル0.987モルが含まれていた。
【0087】■乳酸ブチルの蒸留次に、上記エステル化の反応液(分析用のサンプリングの後、全乳酸0.96モル)から固形分を濾過して除き濾液を得た。さらに該固形分をn−ブタノールで洗浄した洗液を上記濾液と合わせて乳酸ブチルの蒸留反応液とした。
【0088】次に、図3に本実施例に用いた乳酸ブチルの蒸留装置の概略図を示す。
【0089】図3より乳酸ブチルの蒸留装置301 は、オイルバス302 のオイル浴中に攪拌翼を備えてなる蒸留缶303 が設置され、該蒸留缶303 には冷却器304 が配管305 により連結され、該冷却器304 に、受器306 に配管307 により連結されている。また、該受器306 は、真空ポンプ(図示せず)にフレキシチューブ308 で接続されている。また、該蒸留缶303 には、上記乳酸ブチルの蒸留反応液を徐々に供給することができるように配管309 により該蒸留反応液貯蔵槽(図示せず)と連結されている。
【0090】上記構成を有する乳酸ブチルの蒸留装置301 を用いて上記エステル化の反応液より乳酸ブチルの蒸留を行った。
【0091】まず、真空ポンプを運転して蒸留装置301 全体を約20mmHgに減圧すると共に、オイルバス302 のオイル浴温度を調整することにより、蒸留缶303 内の反応液温度を約120℃に保持しつつ、貯蔵槽より蒸留缶303 中に配管309 を通じて蒸留反応液(n−ブタノールと乳酸ブチル)を徐々に送り込みながら、該反応液を該蒸留装置301 を用いて流加的に単蒸留した。当該蒸留操作により該受器306 に捕集される精製乳酸ブチルの蒸留収量は0.938モルで、蒸留収率は99.0%であった。
【0092】また、蒸留缶303 内の残留物は、室温まで冷却すると高粘度となったが60℃以上では充分に流動性があり、蒸留缶303 の内壁への固形分の析出および付着は全く見られなかった。
【0093】上記実験結果より、乳酸ブチルとn−ブタノールの分離および乳酸ブチルの精製は、本実施例で用いたような通常の蒸留操作により簡単に行えることが確認できた。
【0094】この際の蒸留缶303 内の残留物である高沸点成分、例えば、乳酸の重合体などは上記■のエステル化の促進工程などへ戻すことにより、該重合体成分が加熱により分解し反応することで、所望の乳酸エステルの生成に利用でき、乳酸エステルの収率を向上させることができることも確認できた。
【0095】実施例2乳酸ブチルの加水分解図4に本実施例に用いた乳酸ブチルの加水分解装置の概略図を示す。
【0096】図4より乳酸ブチルの加水分解装置401 は、マントルヒーター402 上に加水分解缶403 が設置され、該加水分解缶403 には蒸留塔404 が配管405 により連結され、該蒸留塔404 は、冷却器406 および二相分離装置407 に二股配管408 により連結されている。また、二相分離器407 には、該二相分離器407 の上相成分を回収すべくブタノール捕集槽(図示せず)と配管409 で連結され、該二相分離器407 の下相成分を還流すべく配管410 により加水分解缶403 に連結されている。さらに該冷却器406 には、大気放出用の排気筒411 が連結されている。
【0097】上記構成を有する乳酸ブチルの加水分解装置401 を用いて上記乳酸ブチルの加水分解を行い乳酸の生成を行った。
【0098】上記実施例1で得られた乳酸ブチルおよび水を加水分解缶403 中に加え、これに酸触媒として、強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライト200C、オルガノ株式会社製)を添加した後、マントルヒーター402 で95〜110℃の範囲で加熱し、加水分解して生成したn−ブタノールは、水と共沸して加水分解缶403 の上方に位置する蒸留塔404 塔頂の上方に位置する冷却器406 で捕集され、冷却器406 の下方に位置する二相分離器407 で水相とn−ブタノール相に分離され、上相成分のn−ブタノール(少量の水を含む)は随時配管409 を通じて抜き出され、ブタノール捕集槽に回収された。また、下相成分の水(少量のn−ブタノールを含む)は配管410 を通じて加水分解缶403 に還流された。n−ブタノールがほとんど加水分解缶403 中になくなった時点で、該n−ブタノールを完全に溜去するために該二相分離器407 より水の還流を止めた後、加水分解缶403 中よりさらに共沸組成物中の水の量が約20mlとなるまで該共沸組成物を溜出させ加水分解を止めた。加水分解缶403 中に得られた乳酸は着色、異臭なく、熱安定性も良好であった。
【0099】実施例3培地の前処理コーンスチープリカーをアンモニアによりpH7に調整し、1時間煮沸後、遠心分離して上澄み液を取り、実施例1と同様に乳酸発酵を行った。
【0100】発酵液を実施例1の■発酵培地の濃縮と同様にして乳酸65%まで濃縮し、乳酸の2.5倍モルのn−ブタノールを加えて実施例1の■回分式による脱アンモニアと同様にして脱アンモニアを行った。反応器203 内の最終温度は131℃であった。反応後の該反応器203 中に存在する反応液中のアンモニア量は乳酸に対して0.064倍モルであり、該反応器203 内の液面付近に黒い固形物が付着していたが、液面下での付着はわずかしか見られなかった。
【0101】実施例4脱アンモニアの連続化実施例3と同様の培地、乳酸菌を用いて発酵した乳酸発酵培地を、実施例1の■発酵培地の濃縮と同様にして乳酸濃度63.6%まで濃縮した。
【0102】次に、図5に本実施例に用いた連続式脱アンモニア装置の概略図を示す。
【0103】図5より連続式脱アンモニア装置501 は、オイルバス502 のオイル浴中に攪拌翼を備えてなる反応器503 が設置され、該反応器503 には蒸留塔504 が配管505により連結され、該蒸留塔504 は、冷却器506 および二相分離器507 に二股配管508 により連結されている。また、冷却器506 は、アンモニア吸収器(図示せず)に配管509 で連結されている。また、二相分離器507 は、該二相分離器507 の上相成分を還流すべく配管510 により二股配管508 に連結され、該二相分離器507 の下相成分を回収すべく水回収槽(図示せず)に配管511 で連結されている。さらに該反応器503 には上記濃縮液およびn−ブタノールを連続的に供給することができるようにそれぞれ配管512 、513 により該濃縮液およびn−ブタノールの各貯蔵槽(図示せず)と連結されている。また、該該反応器503 には、上記反応液の液面がほぼ一定の高さを保つように該反応液を連続的に抜き出せるように該反応液中にまで達する配管514 が取り付けられ、該配管514 の他端は、反応液回収槽(図示せず)に連結されている(該反応液は、本発明の方法をすべて連続的に行う場合には、該反応液回収槽を設けることなく、次工程に送られる)。
【0104】初めに、反応器503 中に実施例1の■回分式による脱アンモニアの操作を行って得られた反応液300mlを仕込んだ後、オイルバス502 のオイル浴温度を調節して該反応液の温度を約130℃に昇温した。その後、上記乳酸濃度63.6%まで濃縮した濃縮液とn−ブタノールをそれぞれ全乳酸0.247モル/hr、n−ブタノール0.520モル/hrで配管512 、513 を通じて連続的に反応器503 に供給することにより、該反応器203 内の反応液は、加熱により、水と共沸するn−ブタノールが、反応器503 の上方に位置する蒸留塔504 塔頂の上方の冷却器506 で捕集され、冷却器506 の下方の二相分離器507 で水相とブタノール相に分離され、上相成分のn−ブタノール(少量の水を含む)は配管510 を通じて蒸留塔504 上部の二股配管508 に還流され、下相成分の水(少量のn−ブタノールを含む)は随時配管511 を通じて抜き出され、水回収槽に回収された。また微量のアンモニアガスは、冷却器506 で捕集されることなく配管509 を通じてアンモニア吸収器(氷冷水)に捕集された。さらに、該反応器503 内の反応液の液面が常に一定となるように配管514 を通じて反応液を抜き出し反応液回収槽に回収した。10、20および30時間後に配管514 を通じて抜き出される反応液中のアンモニア量は乳酸に対しそれぞれ順に0.072、0.088および0.076倍モルであった。
【0105】また、実験中に反応器503 の内壁の液面付近には固形分がわずかに付着するが、一定量以上には成長せず、また、液面下には全く付着はなかった。
【0106】本実施例に示すように初めから反応液中に水がほとんどない状態では、先の実施例1の■回分式による脱アンモニアの操作よりも反応器503 の内壁への固形分の付着がかなり軽減されることが確認された。
【0107】実施例5水とアンモニアの発酵への再使用実施例1と同様の方法で10リッターの培地を仕込み、発酵を行った。発酵は62時間で終了し、発酵収率は97.9%であった。この発酵液を乳酸濃度64%まで濃縮後、2.5倍モルのn−ブタノールを加えて実施例1の■回分式による脱アンモニアの操作と同様にして脱アンモニアを行った。アンモニアはアンモニア吸収器で氷冷下に蒸留水に吸収させて捕集した。エステル反応後の反応器203 内の反応液中に残存するアンモニアは乳酸に対して0.048倍モルであり、アンモニア吸収器で捕集されたアンモニアは6.826モルであった。発酵液濃縮時に回収した水からアンモニアを加熱により除去した回収水を実施例1で用いた水道水の替わりとし、脱アンモニア時に捕集した回収アンモニア水を実施例1で用いた10モル%アンモニア水の替わりに中和剤として用いて実施例1と同様に1リッターの培地を仕込んで乳酸発酵を行ったところ、約72時間で発酵が終了し、発酵収率は98.0%となった。このことから回収水、回収アンモニア水を再度発酵に使用することによって発酵速度が若干遅くはなるが、収率には問題なく再利用できることが確認された。
【0108】実施例6実施例1と同様にして常圧でエステル化促進の反応を行ったところ、3時間で蒸留缶303 内の温度は最終的に130.1℃となり、このときジブチルエーテルの生産量は、仕込みのn−ブタノールに対して0.56%であった。
【0109】これに対して、同様の操作を圧力250mmHgの減圧下で行ったところ、反応時間10時間、最終の蒸留缶303 内の温度は101.1℃であり、このときジブチルエーテルの生産量は仕込みのn−ブタノールに対してわずかに0.02%であった。
【0110】実施例7発酵培地の組成を、グルコース100g、コーンスチープリカー20gおよび酵母エキス2gに水道水を加えて1リットルとした以外は、実施例1と全く同じ条件で発酵を行った。すなわち、この実施例では、実施例1に比較して、不純物を多く含むコーンスチープリカーを半分に減らしているため、発酵終了液中の乳酸に対する不純物の量が少なくなっている。
【0111】発酵は60時間で終了し、グルコースに対する乳酸の収率は96.1%であった。以下、実施例1と同様に、回分式で濃縮し、脱アンモニアし、エステル化の促進を行った。
【0112】脱アンモニアは、乳酸換算で1.00モルの仕込みで行い、反応後の反応液中には乳酸ブチル0.722モル、アンモニア0.0653モルが存在していた。
【0113】エステル化の促進では、乳酸換算で0.97モルの仕込みに対して、反応後の反応液中には、乳酸ブチル0.949モルが含まれていた。
【0114】次に、実施例1では、エステル化の促進の後で固形分を濾過して除去しているが、この実施例では、発酵培地の組成が異なり、不純物が少ないために、固形分を含んだ液を直接蒸留した。
【0115】乳酸ブチルの蒸留は、実施例1と同様の操作で行った。乳酸ブチルの蒸留では、乳酸換算で0.92モルのエステル化促進終了液に対して、乳酸ブチルの蒸留終了は0.888モルで、蒸留収率は98.7%であった。
【0116】蒸留缶303 内の残留物は、50〜60℃でも充分な流動性があり、内壁への固形分の析出および付着は全く見られなかった。
【0117】比較例1アンモニアの除去をしない場合上記実施例7と同様の発酵液を用いて、以下の実験を行った。
【0118】発酵濃縮液204.20g(乳酸1.224モル)、n−ブタノール272.3g(3.672モル)を図2の反応器203 に仕込み、撹拌しつつ、濃硫酸66.83g(0.667モル)を徐々に添加し、pH1.0とした後、加熱脱水しつつ、エステル化を進めた。3時間で液温は132℃となり、反応液中には乳酸ブチル1.137モルが生成していた。
【0119】このエステル化液を濾紙上で濾過し、固形分(主に硫安)をn−ブタノールで洗浄後、乾燥したところ、乾燥重量は83.96g(乳酸1に対して重量比0.802)であった。
【0120】上記固形分を分離除去した後のエステル化液(乳酸換算1.03モル)を、実施例1の乳酸ブチルの蒸留と同時に、図3の蒸留装置により蒸留し、0.912モルの乳酸ブチルを得た。乳酸ブチルの蒸留収率は98.2%であった。
【0121】また、蒸留缶303 内の残留物は、蒸留中は流動性を保っていたが、原料送りを停止すると、撹拌が困難な程度の粘性を示し、蒸留缶303 内壁への付着が見られた。
【0122】
【発明の効果】本発明の乳酸および乳酸エステルの製造方法により、炭素数が4または5であるアルコールを使用することにより、エステル化の時に発生する水とアルコールの混合蒸気を冷却して得られる溜出液が水相とアルコール相の二層に分離して、しかも相互溶解度が充分に低いため、アルコール相をそのまま反応部に効率的に還流できること、および生成する乳酸エステルが通常の蒸留により簡単に精製できることから、工業的に有利となる。
【0123】さらに乳酸アンモニウム溶液にアルコールを加えてエステル化したのみでは乳酸エステルの収率が低いため、硫酸または塩酸などの鉱酸を添加してエステル化を進めることが可能であり、工業的に満足できる収率を達成することができる。
【0124】また、本発明により、従来法に比較して以下に挙げる特有の効果を奏するものである。
【0125】(1)エステル化に先だって乳酸塩から乳酸を遊離させ、分離して粗製乳酸とする工程を必要としない。
【0126】(2)乳酸発酵の中和剤として用いるアンモニアの大部分を分離回収でき、発酵に再利用できる。
【0127】(3)上記(2)に伴い、副生塩の量を従来法に比較して大幅に減少させることができる。
【0128】(4)アンモニアの分離と同時に乳酸のエステル化が進むが、上記のように溜出分離したアルコールを反応系に還流することによって反応系をアルコール過剰に保ちエステル化反応とアンモニアの回収を促進することが容易である。
【0129】(5)さらに鉱酸を添加してアルコリシスを進めれば、高収率で乳酸エステルが生成し、蒸留することにより培地の成分との分離ができ、高度に精製された乳酸エステルを簡単な装置で得ることが可能である。
【0130】(6)また、発酵に比較的清澄な培地を使用する方法、膜分離などによる培地の前処理で、あらかじめ固形分を除去する方法、発酵中に膜分離によって培地と菌体を分離して発酵する方法、あるいは発酵後に菌体、その他の固形分を除去するなどの方法によって、エステル化促進工程内のエステル化反応部までにおいて発生する硫安または酸性硫安、その他の沈澱物の分離をせずに直接蒸留することが可能である。
【0131】(7)さらに、エステル化液から乳酸エステルおよび余剰のアルコールを蒸留分離する際に酸性硫安などの液相成分の残分は、その一部をエステル化促進工程内のエステル化反応部にリサイクルすることも可能であり、これにより、さらに乳酸エステルの収率向上が可能である。
【0132】(8)上記(1)〜(7)で得られた乳酸エステルを加水分解して容易に高純度の乳酸が得られる。
【0133】(9)プロセスの連続化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の乳酸エステルの製造方法の一実施態様として、発酵により得られた乳酸アンモニウムの濃縮液にn−ブタノールを添加した場合の乳酸ブチルの製造方法に用いた乳酸ブチルの製造装置を示す概略図である。
【図2】 本発明の実施例における脱アンモニア装置を示す概略図である。
【図3】 本発明の実施例における乳酸ブチルの蒸留分離装置を示す概略図である。
【図4】 本発明の実施例における乳酸ブチルの加水分解装置を示す概略図である。
【図5】 本発明の実施例における連続式脱アンモニア装置を示す概略図である。
【符号の説明】
101 …乳酸ブチルの製造装置、 102 …発酵槽、103 …濃縮器、 104 …脱アンモニア缶、105 …エステル化促進缶、 106 …フラッシュ蒸留器、107 〜113,115,116,118,120 〜122,124,125,127,129,131,132,205,209 〜211,305,307,309,405,409,410,505,509 〜514 …配管、114,123,204,404,504 …蒸留塔、 117,126,206,304,406,506 …冷却器、119,128 …二液相分離缶、 130,411 …気放出用の排気筒、201 …脱アンモニア装置、 202,302,502 …オイルバス、203,503 …反応器、 207,407,507 …二相分離器、208,408,508 …二股配管、 301 …乳酸ブチルの蒸留装置、303 …蒸留缶、 306 …受器、308 …フレキシチューブ、 401 …乳酸ブチルの加水分解装置、402 …マントルヒーター、 403 …加水分解缶、501 …連続式脱アンモニア装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 微生物による乳酸発酵を含むプロセスにおいて、(1)乳酸発酵時の培地のpH調整をアンモニアによって行い、(2)該発酵により得られる乳酸アンモニウムの溶液、該乳酸アンモニウムの濃縮液およびそれらから発酵に用いた微生物を含む固形分を除去した液よりなる群から選ばれた少なくとも1種の液に炭素数が4または5であるアルコールを添加し、加熱することにより脱水および乳酸と該アルコールのエステル化反応を行わしめると同時にアンモニアを遊離、回収し、(3)(2)のエステル化反応によって得られる溶液に鉱酸を添加して酸性下に加熱、脱水を行い、該乳酸と該アルコールのエステル化を促進、完了させることを特徴とする乳酸エステルの製造方法。
【請求項2】 前記アルコールの添加量が、乳酸に対して1〜10倍モルである請求項1に記載の乳酸エステルの製造方法。
【請求項3】 前記アルコールが、n−ブタノールである請求項1または2に記載の乳酸エステルの製造方法。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法によって製造した乳酸エステルを加水分解する乳酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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