説明

乳酸エステルの製造方法

【課題】 安全で入手容易なバイオマス誘導体から、煩雑な後処理を必要とせず、反応生成物と触媒とを簡単に分離でき、しかも回収した触媒の再利用が容易な、乳酸エステルの工業的に効率よく製造できる方法を提供する。
【解決手段】 本発明の乳酸エステルの製造方法は、モンモリロナイト固体酸触媒の存在下、ジヒドロキシアセトン又はそのダイマーをアルコールと反応させて乳酸エステルを得ることを特徴とする。モンモリロナイト固体酸触媒としては、プロトン型モンモリロナイト又は周期表3族〜15族金属カチオン型モンモリロナイトであるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸エステルの製造方法、より詳しくは、固体酸触媒であるモンモリロナイト触媒を用いて、バイオマス誘導体であるジヒドロキシアセトン又はその二量体とヒドロキシル基含有化合物から乳酸エステルを製造する方法に関する。乳酸エステルは、溶剤、香料、乳化剤、保湿剤、医薬品等の中間原料などとして用いられており、最近では特にレジストや塗料の溶剤、洗浄剤として注目されている。
【背景技術】
【0002】
従来、乳酸エステルの製造方法として、乳酸ニトリルを酸で加水分解し、次いでアルコールと反応させてエステル化する方法(特許文献1)、α−アセトキシプロピオンアルデヒドをルテニウム錯化合物の存在下にアルコールと反応させてα−アセトキシプロピオン酸エステルとし、次いでこれを含水アルコール中、酸触媒の存在下で加熱する方法(特許文献2)、ラクチドを酸触媒の存在下、アルコールと反応させる方法(特許文献3)、プロピレングリコールをルテニウム錯化合物及び水素受容体存在下にアルコールと反応させる方法(特許文献4)、メチルグリオキザールをルテニウム錯化合物存在下にアルコールと反応させる方法(特許文献5)、触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸のイットリウム塩又はランタン塩を用い、乳酸と炭素数1〜4の脂肪族アルコールとを、生成する水を反応系外に取り出しながら反応させる方法(特許文献6)、発酵で得られた乳酸アンモニウムとアルコールとを反応させる方法(特許文献7)、塩化スズ触媒の存在下、アルコール溶液中で、トリオース(ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド)を乳酸エステルに変換する方法(非特許文献1)などが知られている。
【0003】
しかし、これらの方法は、原料の調製に毒性の強い物質を使用する必要がある、反応生成物の単離に煩雑な後処理を行う必要がある、投入するエネルギーが多い、反応生成物と触媒との分離が困難である等の問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−140039号公報
【特許文献2】特開平7−206773号公報
【特許文献3】特開平8−40983号公報
【特許文献4】特開平8−119903号公報
【特許文献5】特開平8−119904号公報
【特許文献6】特開2003−73330号公報
【特許文献7】特開2007−31361号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chem Comm., 2005, 2716
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、安全で入手容易なバイオマス誘導体から、煩雑な後処理を必要とせず、反応生成物と触媒とを簡単に分離でき、しかも回収した触媒の再利用が容易な、乳酸エステルの工業的に効率よく製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、モンモリロナイト固体酸触媒の存在下で、バイオマス誘導体であるジヒドロキシアセトン又はその二量体とアルコール等のヒドロキシル基含有化合物とを反応させると、前記ヒドロキシル基含有化合物に対応した乳酸エステルが良好な収率で生成すること、反応終了後、触媒と反応生成物を簡単な操作で分離できること、及び回収した触媒を再利用できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、モンモリロナイト固体酸触媒の存在下、ジヒドロキシアセトン又はそのダイマーをヒドロキシル基含有化合物と反応させて乳酸エステルを得ることを特徴とする乳酸エステルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全で入手容易なバイオマス誘導体及びヒドロキシル基含有化合物を原料として用いることができ、安価な触媒で且つ比較的温和な条件下で反応が進行し、目的化合物を簡易な手段で大量に製造することができる。また、反応後、煩雑な後処理を必要とせず、反応生成物と触媒とを簡単に分離でき、しかも触媒の再利用が容易である。したがって、乳酸エステルの大量生産に適しており、またグリーンケミストリー上、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、モンモリロナイト固体酸触媒の存在下、ジヒドロキシアセトン又はそのダイマー(二量体)をヒドロキシル基含有化合物と反応させて乳酸エステルを生成させる。
【0011】
本発明で触媒として用いるモンモリロナイト固体酸触媒としては、固体酸性を示すモンモリロナイトであればよく、例えば、プロトン型モンモリロナイト(H−モンモリロナイト)、周期表3族〜15族金属カチオン型モンモリロナイト(周期表3族〜15族金属カチオンで交換されたモンモリロナイト)が挙げられる。プロトン型モンモリロナイトは、モンモリロナイトの陽イオンをプロトンと交換したものであり、例えば、ナトリウム型モンモリロナイト等のモンモリロナイト(通常、粉末状のモンモリロナイト)を酸で処理することにより容易に調製できる。また、周期表3族〜15族金属カチオン型モンモリロナイトは、モンモリロナイトの陽イオンを周期表3族〜15族の金属カチオンと交換したものであり、例えば、ナトリウム型モンモリロナイト等のモンモリロナイト(通常、粉末状のモンモリロナイト)を、周期表3族〜15族金属化合物で処理することにより調製できる。なお、ナトリウム型モンモリロナイトは固体酸触媒として作用しない。
【0012】
なお、モンモリロナイトは層状ケイ酸塩鉱物の一種であるスメクタイトに分類される粘土鉱物(ベントナイトの主成分)であり、モンモリロナイトの結晶は、ケイ酸四面体層−アルミナ八面体層−ケイ酸四面体層の3層構造を有している。モンモリロナイトのカチオン交換能は、通常0.5〜3meq/g程度である。
【0013】
モンモリロナイトを酸で処理する場合の酸としては、強酸が好ましく、特に塩酸が好ましい。酸は、通常水溶液で使用され、その濃度は特に制限はないが、例えば0.1〜10重量%程度である。処理温度は、例えば20〜150℃、好ましくは50〜110℃程度である。処理時間は処理温度によっても異なるが、通常1時間〜4日、好ましくは10時間〜2日程度である。酸処理の後、濾過、水洗、乾燥することにより、プロトン型モンモリロナイトを得ることができる。
【0014】
プロトン型モンモリロナイトとしては、モンモリロナイトの金属陽イオン(ナトリウムイオン等)が、プロトンで30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは90%以上交換されたものが望ましい。プロトン型モンモリロナイトの酸量(Amount of Acid Site)は、通常0.15〜3mmol/g、好ましくは0.5〜3mmol/g程度である。
【0015】
モンモリロナイトを周期表3族〜15族金属化合物で処理する際に用いる周期表3族〜15族金属化合物としては、周期表3族〜15族金属のハロゲン化物や、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、酢酸塩等の塩などが挙げられる。周期表3族金属には、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウムなどが含まれる。周期表4族金属には、チタン、ジルコニウム、ハフニウムが含まれる。周期表5族金属には、バナジウム、ニオブ、タンタルが含まれる。周期表6族金属には、クロム、モリブデン、タングステンが含まれる。周期表7族金属には、マンガン、レニウムなどが含まれる。周期表8族金属には、鉄、ルテニウム、オスミウムが含まれる。周期表9族元素には、コバルト、ロジウム、イリジウムが含まれる。周期表10族金属には、ニッケル、パラジウム、白金が含まれる。周期表11族金属には、銅、銀、金が含まれる。周期表12族金属には、亜鉛、カドミウム、水銀が含まれる。周期表13族金属には、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムが含まれる。周期表14族金属には、スズ、鉛が含まれる。周期表15族金属には、アンチモン、ビスマスが含まれる。周期表3族〜15族化合物は、通常水溶液で使用される。処理温度は、例えば20〜150℃、好ましくは30〜110℃程度である。処理時間は処理温度によっても異なるが、通常1時間〜4日、好ましくは5時間〜2日程度である。ナトリウム型モンモリロナイト等のモンモリロナイトを周期表3族〜15族金属化合物で処理の後、濾過、水洗、乾燥することにより、周期表3族〜15族金属カチオン型モンモリロナイトを得ることができる。
【0016】
モンモリロナイト固体酸触媒としては、上記の中でも、プロトン型モンモリロナイト、周期表3族金属カチオン型モンモリロナイト(スカンジウムイオン型モンモリロナイト、セリウムイオン型モンモリロナイト等)、周期表4族金属カチオン型モンモリロナイト(チタンイオン型モンモリロナイト、ジルコニウムイオン型モンモリロナイト等)、周期表8族金属カチオン型モンモリロナイト(鉄イオン型モンモリロナイト等)、周期表11族金属カチオン型モンモリロナイト(銅イオン型モンモリロナイト等)、周期表13族金属カチオン型モンモリロナイト(アルミニウムイオン型モンモリロナイト等)、周期表14族金属カチオンモンモリロナイト(スズイオン型モンモリロナイト等)が好ましく、特に、プロトン型モンモリロナイト、周期表3族金属カチオン型モンモリロナイト、周期表11族金属カチオン型モンモリロナイト、周期表13族金属カチオン型モンモリロナイト、周期表14族金属カチオンモンモリロナイトが好ましく、とりわけ、プロトン型モンモリロナイト、アルミニウムイオン型モンモリロナイト、スズイオン型モンモリロナイトが好ましい。
【0017】
モンモリロナイト固体酸触媒は粉末状で、あるいは粉末状のものを打錠、成形することにより使用に供される。
【0018】
本発明において、原料として用いるジヒドロキシアセトン又はそのダイマーは、サトウキビやサトウダイコン等のバイオマスから得られるものであってもよく、化学的に合成されたものであってもよい。
【0019】
また、他方の原料として用いられるヒドロキシル基含有化合物としては、特に限定されず、用途、入手容易性等に応じて適宜選択できる。ヒドロキシル基含有化合物にはアルコール及びフェノールが含まれる。アルコールは、一価アルコール、多価アルコールの何れであってもよく、また、第1級、第2級、第3級アルコールの何れであってもよい。ヒドロキシル基含有化合物の炭素数は、例えば1〜20程度である。
【0020】
アルコールの代表的な例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−デカノール、アリルアルコール等の脂肪族アルコール;シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロペンタンメタノール、シクロヘキサンメタノール等の脂環式アルコール;ベンジルアルコール、2−エチルフェニルアルコール、1−エチルフェニルアルコール、トリチルアルコール等の芳香族アルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。原料として多価アルコールを用いた場合には、反応により、多価アルコールのジエステル体が生成しうる。
【0021】
また、フェノールの代表的な例として、フェノール、クレゾール、4−メトキシフェノール、4−クロロフェノール、4−t−ブチルフェノール、ヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。
【0022】
ジヒドロキシアセトン又はそのダイマーとヒドロキシル基含有化合物との反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。溶媒としては、反応を阻害しないような溶媒であればよく、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル;アセトンなどのケトン;アセトニトリルなどのニトリル;酢酸t−ブチルなどのエステル;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒などを用いることもできるが、反応速度、反応収率の点から、ヒドロキシル基含有化合物を大過剰量用いて溶媒としての機能を持たせて反応させるのが好ましい。
【0023】
反応に用いるジヒドロキシアセトン又はそのダイマーとヒドロキシル基含有化合物との比率は適宜選択できるが、一般に、ヒドロキシル基含有化合物の使用量は、ジヒドロキシアセトン又はそのダイマー1モル(ジヒドロキシアセトン換算)に対して、例えば0.5モル以上、好ましくは1モル以上、さらに好ましくは1.2モル以上である。前記のように、ヒドロキシル基含有化合物を大過剰量用いて溶媒としての機能を持たせてもよい。モンモリロナイト固体酸触媒の使用量は、原料の種類によっても異なるが、ジヒドロキシアセトン又はそのダイマー1モル(ジヒドロキシアセトン換算)に対して、例えば1〜1000g、好ましくは5〜500g程度である。反応温度は原料の種類等に応じて適宜選択でき、例えば20〜250℃、好ましくは50〜200℃程度である。反応は、回分式、半回分式、連続式等の慣用の方式で行うことができる。反応は常圧で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。反応器は混合撹拌型の反応器、固定床方式の反応器等の何れであってもよい。
【0024】
ジヒドロキシアセトン又はそのダイマーとヒドロキシル基含有化合物との反応により、対応する乳酸エステルが生成する。これを式で表すと以下のように表される。すなわち、式(1a)で表されるジヒドロキシアセトン又は式(1b)で表されるジヒドロキシアセトンのダイマー(二量体)と式(2)で表されるヒドロキシル基含有化合物(ROH)とが反応して、式(3)で表される対応する乳酸エステルと水が生成する。式(3)における「OR」は反応に用いたヒドロキシル基含有化合物(ROH)のアルコール若しくはフェノール残基である。
【0025】
【化1】

【0026】
この反応では、副生成物として下記式(5)で表されるピルビックアルデヒドアセタールが生成する場合があるが、この化合物は、系内で加水分解され、さらにアルコールと反応して、目的物である乳酸エステルに転化する。
【0027】
【化2】

【0028】
モンモリロナイト固体酸触媒を用いることにより得られる高い収率及び良好な選択性は、モンモリロナイトの層間に存在するブレンステッド酸点とルイス酸点との協同触媒作用によるものと考えられる。
【0029】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、生成物の同定は、ガスクロマトグラフィー、1H-NMR等により行った。
【0031】
製造例1(プロトン型モンモリロナイトの調製)
ナトリウム型モンモリロナイト[クニミネ工業(株)製、商品名「クニピアF」、元素分析値:Na, 2.69;Mg, 1.97;Al, 11.8;Fe, 1.46 %]3.0g、1.1重量%塩酸200mLの混合物を90℃で24時間撹拌した。反応混合液(スラリー)を濾過し、1Lの蒸留水で水洗し、空気中110℃の温度で乾燥することにより、白っぽい灰色の粉末状のプロトン型モンモリロナイトを得た。プロトン型モンモリロナイトの酸量(Amount of Acid Site)を測定したところ0.86mmol/gであった。ナトリウムイオンのプロトンへの変換率は98.9%であった。
元素分析値:Na, 0.03;Mg, 1.73;Al, 10.0;Fe, 1.34 %。
【0032】
製造例2[アルミニウムイオン型モンモリロナイト(Al3+交換モンモリロナイト)の調製]
ナトリウム型モンモリロナイト(元素分析値:Na, 2.73;Mg, 1.97;Al, 10.3;Fe, 1.35 %)1.0g、AlCl3・6H2O水溶液(5mM)100mLの混合物を50℃で12時間撹拌した。反応混合液(スラリー)を濾過し、1Lの蒸留水で水洗し、空気中110℃の温度で乾燥することにより、白っぽい灰色の粉末状のアルミニウムイオン型モンモリロナイトを得た。ナトリウムイオンのアルミニウムイオンへの変換率は98.5%であった。
元素分析値:Na, 0.04;Mg, 1.76;Al, 10.2;Fe, 1.22 %。
各金属の塩化物、硝酸塩又はトリフルオロメタンスルホン酸塩の水溶液を用い、上記と同様の操作により、ナトリウム型モンモリロナイトから、スズイオン型モンモリロナイト(Sn4+交換モンモリロナイト)、セリウムイオン型モンモリロナイト(Ce4+交換モンモリロナイト)、スカンジウムイオン型モンモリロナイト(Sc3+交換モンモリロナイト)、銅イオン型モンモリロナイト(Cu2+交換モンモリロナイト)を調製した。
【0033】
実施例1
耐圧管に、アルミニウムイオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが76%の収率で生成していた。なお、ピルビックアルデヒドジメチルアセタールが15%の収率で副生していた。
【0034】
実施例2
耐圧管に、アルミニウムイオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、120℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが64%の収率で生成していた。なお、ピルビックアルデヒドジメチルアセタールが8%の収率で副生していた。
【0035】
実施例3
耐圧管に、スズイオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが75%の収率で生成していた。なお、ピルビックアルデヒドジメチルアセタールが25%の収率で副生していた。
【0036】
実施例4
耐圧管に、スズイオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、120℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが55%の収率で生成していた。なお、ピルビックアルデヒドジメチルアセタールが18%の収率で副生していた。
【0037】
実施例5
耐圧管に、プロトン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが72%の収率で生成していた。なお、ピルビックアルデヒドジメチルアセタールが18%の収率で副生していた。
【0038】
実施例6
耐圧管に、プロトン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、120℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが52%の収率で生成していた。なお、ピルビックアルデヒドジメチルアセタールが25%の収率で副生していた。
【0039】
実施例7
耐圧管に、セリウムイオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが27%の収率で生成していた。なお、ピルビックアルデヒドジメチルアセタールが31%の収率で副生していた。
【0040】
実施例8
耐圧管に、銅イオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが61%の収率で生成していた。なお、ピルビックアルデヒドジメチルアセタールが24%の収率で副生していた。
【0041】
実施例9
耐圧管に、スカンジウムイオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが50%の収率で生成していた。なお、ピルビックアルデヒドジメチルアセタールが26%の収率で副生していた。
【0042】
比較例1
耐圧管に、ナトリウム型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。1時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチル及びピルビックアルデヒドジメチルアセタールはいずれも生成していなかった。
【0043】
比較例2
触媒を全く用いなかった点以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、乳酸メチル及びピルビックアルデヒドジメチルアセタールはいずれも生成していなかった。
【0044】
実施例10(触媒の再利用)
耐圧管に、アルミニウムイオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、メタノール5mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。17時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが97%の収率で生成していた。
濾別した触媒を用い、上記と同様の操作を行った。これを繰り返し行い、触媒の再利用性について確認した。その結果、再利用1回目の乳酸メチルの収率は94%、再利用2回目の乳酸メチルの収率は92%、再利用3回目の乳酸メチルの収率は93%、再利用4回目の乳酸メチルの収率は96%、再利用5回目の乳酸メチルの収率は95%であった。
【0045】
参考例1
耐圧管に、アルミニウムイオン型モンモリロナイト0.05g、ピルビックアルデヒドジメチルアセタール1.25mmol、メタノール5mL、水0.2mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。17時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが92%の収率で生成していた。
【0046】
実施例11
耐圧管に、アルミニウムイオン型モンモリロナイト0.8g、ジヒドロキシアセトンダイマー20mmol(ジヒドロキシアセトンとして40mmol)、メタノール80mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。17時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸メチルが92%の収率で生成していた。
【0047】
実施例12
耐圧管に、アルミニウムイオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、エタノール5mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。24時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸エチルが89%の収率で生成していた。
【0048】
実施例13
耐圧管に、アルミニウムイオン型モンモリロナイト0.05g、ジヒドロキシアセトンダイマー0.625mmol(ジヒドロキシアセトンとして1.25mmol)、1−ブタノール5mL、水0.2mLを入れ、150℃で激しく撹拌した。24時間後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、乳酸ブチルが87%の収率で生成していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モンモリロナイト固体酸触媒の存在下、ジヒドロキシアセトン又はそのダイマーをアルコールと反応させて乳酸エステルを得ることを特徴とする乳酸エステルの製造方法。

【公開番号】特開2011−116694(P2011−116694A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275054(P2009−275054)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】