説明

乳酸菌共生培養抽出液

【課題】インフルエンザの抑制や前記疾患の抑制に寄与できる乳酸菌群を培養して抽出した乳酸菌共生培養抽出液の提供。
【解決手段】乳酸菌群を培養して抽出した抽出液中に、ビオチン(ビタミンH)を、前記抽出液1ml中に3.3〜4.1ng(ng/ml)、スフィンゴミエリンを、前記抽出液1ml中に0.18〜0.22mg(mg/ml)、ビタミンB12を、前記抽出液1ml中に140.0〜171.6pg(pg/ml)をそれぞれ含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌群を培養して抽出した乳酸菌共生培養抽出液に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば甘藷茎葉から加工した健康食品(特開2006−306851号公報)、葛花から加工した健康食品(特開2006−262888号公報)、樹皮から抽出した腸内菌改善剤(特開2007−308373号公報)、スフィンゴミエリンを含有した飲料品(特開2007−112793号公報)、アセロラ果実を発酵させたアセロラ発酵物(特開2005−253463号公報)、或いはスフィンゴミエリンを有効成分として含有したインタフェロン産生増強用薬剤(特許第3519749号公報)などが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306851号公報
【特許文献2】特開2006−262888号公報
【特許文献3】特開2007−308373号公報
【特許文献4】特開2007−112793号公報
【特許文献5】特開2005−253463号公報
【特許文献6】特許第3519749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2006年9月に文部科学省で決定された「新型インフルエンザ対策行動計画」では、「大学等の閉鎖を行い、極力外出を控えることと併せて、閉鎖期間中の各大学等と学生との連絡方法を明確にし、閉鎖期間中の学生生活について十分な指導を行う」ことなどが定められていた。
【0005】
最近、メキシコで鳥インフルエンザではなく、インフルエンザが新型インフルエンザに変異して、日本を含む世界中に猛威をふるっており、WHOでは最盛期のフェーズ6として認定することにより警戒を呼びかけている。
【0006】
また、情報の過多などにより、ストレスが蓄積しやすい状況にあり、過敏性大腸炎や旅行者下痢などの消化器系の疾患、或いはアレルギー皮膚炎などの疾患が多発していることも事実である。
【0007】
以上のようなことを考えると、栄養補助食品であっても、インフルエンザの抑制や前記疾患の抑制などに寄与して健康増進の手助けになればと考えるものである。
【0008】
本発明の目的は、乳酸菌群を培養して抽出した乳酸菌共生培養抽出液であって、インフルエンザの抑制や前記疾患の抑制などに寄与できる乳酸菌共生培養抽出液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係る乳酸菌共生培養抽出液は、乳酸菌群を培養して抽出した乳酸菌共生培養抽出液であって、
抽出液中に、ビオチン(ビタミンH)を、前記抽出液1ml中に3.3〜4.1ng(ng/ml)、スフィンゴミエリンを、前記抽出液1ml中に0.18〜0.22mg(mg/ml)、ビタミンB12を、前記抽出液1ml中に140.0〜171.6pg(pg/ml)をそれぞれ含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、治験の結果、アレルギー反応の抑制の効果やNK細胞の活性化、免疫機能,過敏性大腸炎や旅行者下痢症,旅行者下痢症,潰瘍性大腸炎,食中毒などの消化器系の改善,アレルギー皮膚炎,免疫機能,抗加齢効果(アンチエイジング)などの効能の発揮,食品の食感向上,日持ち(防腐効果),糖尿病の予防等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いた治験1の結果を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いた治験2の結果を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いた治験3の結果を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いた治験4の結果を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いた治験6の結果を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いた治験7の結果を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いた治験8の結果を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いた治験8の結果を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いた治験8の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液は、乳酸菌群を培養して抽出した乳酸菌共生培養抽出液を対象とするものであり、抽出液中に、ビオチン(ビタミンH)を、前記抽出液1ml中に3.3〜4.1ng(ng/ml)、スフィンゴミエリンを、前記抽出液1ml中に0.18〜0.22mg(mg/ml)、ビタミンB12を、前記抽出液1ml中に140.0〜171.6pg(pg/ml)をそれぞれ含むことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の実施形態では、乳酸菌群を培養して抽出した抽出液中に含まれる主要含有成分を調べた。その測定をするにあたって、サンプルとして複数の前記抽出液を用意した。任意に1つのサンプルの抽出液を選択して、その成分を調べた結果、次のような結果を得た。
ビタミンH(ビオチン) 3.7 ng/ml
スフィンゴミエリン 0.2 mg/ml
ビタミンB12 156 pg/ml
が主要含有成分として検出できた。
この成分の他に、
葉酸 0.3 ng/ml
が含まれていた。また、微量ながら、Na(ナトリウム)、Cl(塩分)、K(カリウム)、IP(無機リン)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、エタノールも含まれていた。これらの含有成分が抽出液中に含有されている含有量の一例を示すと、次のような含有量であった。
Na(ナトリウム) 5 mEq/l
Cl(塩化物) 21 mEq/l
K(カリウム) 1.0 mEq/l
IP(無機リン) 0.3 mEq/l
Ca(カルシウム) 0.3 mEq/l
Mg(マグネシウム) 0.5 μg/g
Fe(鉄) 5 μg/g
Cu(銅) 0.1未満 μg/l
Zn(亜鉛) 1未満 μg/g
エタノール 0.2 %v/v
乳酸 2.58%
【0015】
次に、残りの複数のサンプル用抽出液に含有する前記主要含有成分の含有量を同様に調べた。その結果に基づくと、本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液に含まれる主成分であるビタミンH(ビオチン),スフィンゴミエリン,ビタミンB12のそれぞれの含有量は、次の様な範囲に含まれるものであった。なお、前記主成分の含有量が範囲をもつ現象は、乳酸菌を培養する環境及び抽出液を抽出する過程などにおいて条件が微妙に変化することに起因しているものと考えている。
ビタミンH(ビオチン) 最小値3.3ng/ml〜最大値4.1ng/ml
スフィンゴミエリン 最小値0.18mg/ml〜最大値0.22mg/ml
ビタミンB12 最小値140.0pg/ml〜最大値171.6pg/ml
葉酸については、最大値で0.3ng/ml含まれており、サンプルの抽出液によっては、微量である場合もあり、葉酸の含有量は、0.3ng/ml〜0.03ng/mlの範囲が望ましいものである。
【0016】
発明者は、次のような主要成分を含有する抽出液を抽出し、これらの乳酸菌共生培養抽出液を用いて各種の治験を行い、本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液の有効性、効能を調べた。
(サンプル1)
ビタミンH(ビオチン) 3.3ng/ml
スフィンゴミエリン 0.18mg/ml
ビタミンB12 140.0pg/ml
(サンプル2)
ビタミンH(ビオチン) 3.7ng/ml
スフィンゴミエリン 0.2mg/ml
ビタミンB12 156pg/ml
(サンプル3)
ビタミンH(ビオチン) 4.1ng/ml
スフィンゴミエリン 0.22mg/ml
ビタミンB12 171.6pg/ml
【0017】
なお、葉酸については、厚生労働省も「妊婦さんは積極的に1日400μgの葉酸を摂るように」と推奨している。本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液には、ビタミンH(ビオチン)、ビタミンB12を主要成分としており、これらとともに葉酸を摂取することになるから、葉酸の含有による有効性及び効能は十分に予測できるものと考える。
【0018】
以下、上述したサンプル1〜3の乳酸菌共生培養抽出液を用いて次の治験1〜8をそれぞれ行った結果について説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液は、乳酸菌群を培養して抽出したものであり、過敏性大腸炎,旅行者下痢症,潰瘍性大腸炎,食中毒などの消化器系の改善、アレルギー皮膚炎,免疫機能,抗加齢効果(アンチエイジング)などの種々の効能の発揮,食品の食感向上,日持ち(防腐効果),糖尿病の予防などへの効果が期待されているばかりでなく、動物に適用しても、整腸作用,食欲増進作用,免疫増強による感染症改善作用・抗炎症作用の効果があると期待されている。
【0020】
(治験1)
そこで、乳酸菌共生培養抽出液の飲用が免疫バランスにどのように作用しているかを血液中のIFN−γとIL−4とを測定することにより調べた。
【0021】
また、乳酸菌共生培養抽出液を飲用する組と、擬似薬を飲用する組とに分類し、プラセボ効果についても調べた。
【0022】
(治験方法)
事前に被験者(22歳 男性1名 女性 5名の計6名)に対し、実験の趣旨及び方法について説明し被験者の同意を得て治験を行った。
被験者6名のうち3名は乳酸菌共生培養抽出液を、他の3名は擬似薬を、それぞれ1日5mlを1週間、毎朝飲用してもらった。そして、毎日午前10時に採血を行い、血清を得た。被験者には、プラセボ効果を観察するため、どちらを飲用したかについては事前に告知しなかった。
【0023】
免疫バランスを調べるために、血液中のサイトカインIFN−γとIL−4との測定を行い、プラセボ効果の有無について治験を行った。前記測定は、採血を行い、その後に血清分離を行い、その分離した血清を−20°Cで保存し、サイトカイン測定キットFlow Cytomix(BECKMAN COULTER)を使用し、フローサイトメトリ法によりサイトカインIFN−γとIL−4を測定した。
【0024】
(効果)
図1は、治験の結果である飲用日数とTh1/Th2の変化量(%)との関係を示している。図1の横軸は飲用日数、縦軸はTh1/Th2の変化量(%)を表している。また、図1の実線は前記乳酸菌共生培養抽出液を飲用した場合、点線は擬似薬を飲用した場合をそれぞれ示している。
【0025】
図1に示す治験結果から明らかなように、前記乳酸菌共生培養抽出液を飲用すると、IFN−γ/IL−4(Th1/Th2)の変化率が日毎に増加していることが分かる。これに対して、擬似薬を飲用した場合、IFN−γ/IL−4(Th1/Th2)の変化量の値に大きな変化が見られなかった。図1の治験結果からすると、前記乳酸菌共生培養抽出液を飲用すると、Th1/Th2を上昇させる効果があること、プラセボ効果はなかったことが分かる。
【0026】
(考察)
ヘルパーT細胞(Th細胞)は、サイトカインの分泌のパターンからTh1細胞とTh2細胞とに分けられる。今回測定したIFN−γは、Th1細胞が産生する主なサイトカインであり、強力なマクロファージ活性化作用を有しており、病原体を排除するのに効能がある。
これに対して、IL−4は、Th2細胞を産生するサイトカインであり、IgE抗体の産生を促す効能がある。また、IL−4は、マクロファージの活性化を抑制してTh1細胞の機能を抑制している。
このように、免疫機能はTh1とTh2との作用バランスによって調整されている。
【0027】
図1に示す様に、前記乳酸菌共生培養抽出液を飲用するという治験の結果、IFN−γ/IL−4が日毎に上昇していることは、IFN−γ(Th1細胞)の活性化、或いはIL−4(Th2細胞)の抑制が行われていると考えられる。
以上の治験結果からすると、前記乳酸菌共生培養抽出液を飲用することにより、乳酸菌共生培養抽出液によるアレルギー反応抑制に効能があることが裏付けられた。
【0028】
(治験2)
次に、前記乳酸菌共生培養抽出液のマウスへの経口投与による病原性大腸菌、サルモネラ菌の感染、防御(防衛)実験を行った。この実験では、濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液をマウスに経口投与して、病原性大腸菌(O−18)、サルモネラ菌(S.typhimurium ATCC14028)の感染に対する前記乳酸菌共生培養抽出液の効能について、マウスを用いて観察を行った。
【0029】
(実験方法)
6匹のマウスを1つのグループとして、4つのグループを作り、それぞれのグループに、以下のスケジュールで濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を自由吸水させ、その上でマウスにサルモネラ菌を投与した。ただし、サルモネラ菌は同一日に投与した。
(1)グループ1 サルモネラ菌を投与する7日前から濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を投与。
(2)グループ2 サルモネラ菌と濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液とを投与。
(3)グループ3 サルモネラ菌を投与する7日後から濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を投与。
(4)グループ4 サルモネラ菌だけを投与。
【0030】
以上の実験結果を図2に示す。
グループ1では、6匹のマウスがサルモネラ菌の投与にも関わらず、濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液の投与によってサルモネラ菌で死亡しなかった。
グループ2では、6匹のマウスのうち、1匹のマウスがサルモネラ菌に感染して死亡した。
グループ3では、6匹のマウスのうち、2匹のマウスがサルモネラ菌に感染して死亡した。
グループ4では、6匹のマウスのうち、3匹のマウスがサルモネラ菌に感染して死亡した。
なお、死亡したマウスは全例BW(体重)が20%以下に落ちたマウスであった。また、グループ1のマウスの1匹もBW(体重)が20%以下となったが、そこから生還した。
【0031】
(考察)
以上の結果により、グループ4のサルモネラ菌のみの投与ではマウスの死亡率が50%であった。しかし、濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を投与したグループでは、サルモネラ菌の投与によるマウスの死亡率はグループ1が0%、グループ2が16.7%、グループ3が33.3%であり、濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を投与する時期が早いほど、死亡率が低かった。
この結果からすると、食中毒の原因となる病原性大腸菌(O−18)、サルモネラ菌の消化器における作用に対して、前記乳酸菌共生培養抽出液の投与は予防的、治療的な効能があるものと考えられる。
前記乳酸菌共生培養抽出液の検討を行った結果、前記乳酸菌共生培養抽出液は消化器系をはじめとした諸種の症状の予防、改善に効能があると考えられる、また、その機序の1つに腸内の善玉菌の増加によるものが考えられる。
【0032】
(治験3)
次に、腫瘍による被験者に前記乳酸菌共生培養抽出液を投与してもらい、画像診断による結果を得た。
【0033】
(方法)
2008年3月20日 前記乳酸菌共生培養抽出液を20ml/d投与開始
2008年3月24日 前記乳酸菌共生培養抽出液を50ml/d投与
2008年4月20日 前記乳酸菌共生培養抽出液を50ml/d投与
2008年5月 3日 前記乳酸菌共生培養抽出液を75ml/d投与
【0034】
(結果)
なお、疼痛スコアーは、投与開始(2008年3月20日)以前で、疼痛をスコアー0〜10で示すものとし、健康で無傷であった時を0とし、最も疼痛のあった時を10とし、患者の主観で記載した。
2008年3月 6日 左腸骨部疼痛スコアー 8
2008年3月20日 左腸骨部疼痛スコアー 10
2008年3月24日 左腸骨部疼痛スコアー 8
2008年4月20日 左腸骨部疼痛スコアー 6
2008年5月 3日 左腸骨部疼痛スコアー 3
2008年5月14日 左腸骨部疼痛スコアー 1〜2
【0035】
以上のように、前記乳酸菌共生培養抽出液を投与することにより、左腸骨部疼痛が日毎に抑制され、ついには左腸骨部疼痛が「8」から「1〜2」に鎮まった。図3に示す骨シンチグラフィーの画像診断の結果、矢印で示す様に左腸骨部の腫瘍巣に縮小傾向が見られた。
【0036】
(治験4)
次に、前記乳酸菌共生培養抽出液の投与によるNK細胞活性の経時変動について治験を行った。この治験は、体温39度,頭痛,咽頭痛,関節痛,筋肉痛を訴えている被験者に前記乳酸菌共生培養抽出液を10ml飲用してもらい、時間経過に伴うNK細胞の活性度を測定した。その結果を図4に示す。
【0037】
図4の横軸は時間を、縦軸はNK細胞の活性(%)を示している。比較のため、健常時のNK細胞の活性を点線で示している。
【0038】
被験者の体温が39度になり、その被験者が頭痛,咽頭痛,関節痛,筋肉痛を訴えた時点で、その被験者に前記乳酸菌共生培養抽出液を10ml投与して、時間経過に伴うNK細胞の活性度合いを測定した。
【0039】
図4から明らかなように、被験者がインフルエンザに感染して前記乳酸菌共生培養抽出液を飲用した後、2時間経過した時点でNK細胞の活性が60%まで上昇したが、その後、時間の経過と共にNK細胞の活性度合いが低下する傾向を示し、6時間後に被験者のNK細胞の活性度合いが健常者のものと同様の値になった。
この治験結果からすると、インフルエンザに感染した際に即座に前記乳酸菌共生培養抽出液を投与することにより、短時間の内(飲用2時間後)にNK細胞の活性度合いを上昇させ、その後(6時間後)、健常状態に戻ることが分かる。したがって、前記乳酸菌共生培養抽出液は、インフルエンザの予防に効能があるものと考えられる。
【0040】
(治験5)
被験者である22歳女性の医学部学生に前記乳酸菌共生培養抽出液を1日5ml投与して、投与前後の便秘と腸内細菌叢の変化を調べた。前記被験者は、便秘で排便が週に1回であった。
その結果を次に示す。
投与前 投与後(2ヶ月後)
便秘の状況 1回/週 → 1回/日
[腸内細菌叢]
嫌気菌 71.4% → 46.5%
乳酸菌 0.0% → 0.6%
ビフィグス菌 無検出 → 2.0%
【0041】
以上の結果から明らかなように、腸内での嫌気性菌が71.4%から46.5%まで下がり、乳酸菌が0.0%から0.6%まで上昇し、ビフィグス菌が2.0%まで上昇した。この結果、投与前は、排便が週に1回の便秘の状態であったのに、投与後は、排便が日に1回に改善された。
この事からしても、前記乳酸菌共生培養抽出液を投与することにより、便秘が改善されていることが分かる。
【0042】
(治験6)
次に、同日齢,1歳のマウスを各5匹,2グループに分け、グループ1のマウスに濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を投与し、グループ2のマウスに前記乳酸共生培養抽出液を投与せずに、その経過を観察した。
【0043】
前記乳酸菌共生培養抽出液を投与せずに飼育したグループ2のマウスの状態、前記乳酸共生培養抽出液を投与したマウスの状態を図5に示す。
【0044】
図5の左上に示したグループ2のマウスの皮膚を観察すると、その一部に禿げた箇所が見られる。しかし、図5の右下に示したグループ1のマウスの皮膚を観察すると、前記濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を投与して経過を観察したマウスには禿の部分が見あたらず、皮膚は健康なままである。
この現象は、医学(生物学)的には不明であるが、マウスの寿命が約24ヶ月であり、特に今回使用したマウスは、死期が近づくと、全身性に禿げることが認められている(加齢現象)。
グループ1のマウスに濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を投与した結果、グループ1のマウスには、前記乳酸共生培養抽出液に含まれる葉酸の相乗効果によって抗加齢効果が発揮されているように考えられる。
【0045】
また、濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を投与した群のマウスのうち、最後に生き残った1匹は、濃度5%の乳酸菌共生培養抽出液を投与せずに生き残ったマウスの死後、3ヶ月健康な状態で生き延びた。マウスの3ヶ月は人の年齢に換算すると、約10年に相当する。このことからも、前記乳酸菌共生培養抽出液を投与することは、抗加齢効果(アンチエイジング)の効能があることが分かった。
【0046】
また、治験6で確かめられた抗加齢効果からすると、葉酸を含む場合にも有効性及び効能があるものと考えられる。その場合、前記葉酸の含有量は、前記抽出液1ml中に0.3ng以下(ng/ml)であることが望ましい。
【0047】
(治験7)
次に、血糖値調整物質として本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を用いたことにより糖尿病の予防を発揮するかどうかの治験を行った。治験方法は、被験者として21〜22歳の健常者を5名選び、75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を行った(トレーランG75g負荷試験)。その結果を図6(a),(b),(c)にそれぞれ示す。
【0048】
治験方法は、21〜22歳の健常者を被験者として5名選び、75g経口ブドウ糖負荷試験に血糖調整物質としての乳酸菌共生培養抽出液を同時に摂取し、時間の経過に伴う血糖値を測定した。その際、前記乳酸菌共生培養抽出液の摂取量を変えて75g経口ブドウ糖負荷試験を行った。図6において、横軸は時間を示しており、縦軸は血糖値(mg/dl)を示している。さらに、図6において、◆を結んだ棒線はトレーランG75gのみを摂取した場合の血糖値の変化を示しており、■を結んだ棒線は、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値の変化を示している。
【0049】
図6(a)は、75g経口ブドウ糖負荷試験に血糖調整物質として乳酸菌共生培養抽出液を2ml同時に摂取した場合における血糖値の変化を測定した結果を示している。
図6(a)から明らかなように、30分〜60分経過した際には、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値は、トレーランG75g単体を摂取した場合の血糖値より低くなっている。60分から80分経過した際には、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値に変化が見られず、トレーランG75gのみを摂取した場合の血糖値よりも高くなる傾向にあった。80分を過ぎて150分経過した際には、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値は、トレーランG75g単体を摂取した場合の血糖値より低くなるという傾向を示した。そして、180分経過した際には、その血糖値は摂取する前の値に戻っていた。
【0050】
図6(b)は、75g経口ブドウ糖負荷試験に血糖調整物質として乳酸菌共生培養抽出液を5ml同時に摂取した場合における血糖値の変化を測定した結果を示している。
図6(b)から明らかなように、30分〜60分経過した際には、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値は、トレーランG75g単体を摂取した場合の血糖値より低くなっている。60分から80分経過した際には、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値に変化が見られないが、トレーランG75gのみを摂取した場合の血糖値よりも低い値を示している。80分を過ぎて150分経過した際には、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値は、トレーランG75g単体を摂取した場合の血糖値より低くなるという傾向を示した。そして、180分経過した際には、その血糖値は摂取する前の値に戻っていた。
図6(b)から明らかなことは、トレーランG75gと5mlの乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値は、トレーランG75g単体を摂取した場合の血糖値より時間の経過に拘わらず低くなっていることが分かる。
【0051】
図6(c)は、75g経口ブドウ糖負荷試験に血糖調整物質として乳酸菌共生培養抽出液を10ml同時に摂取した場合における血糖値の変化を測定した結果を示している。
図6(c)から明らかなように、30分〜60分経過した際には、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値は、トレーランG75g単体を摂取した場合の血糖値より低くなっている。60分から80分経過した際には、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値に変化が見られないが、トレーランG75gのみを摂取した場合の血糖値よりも低い値を示している。80分を過ぎて150分経過した際には、トレーランG75gと乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値は、トレーランG75g単体を摂取した場合の血糖値より低くなるという傾向を示した。そして、180分経過した際には、その血糖値は摂取する前の値に戻っていた。
図6(c)から明らかなことは、トレーランG75gと10mlの乳酸菌共生培養抽出液とを同時に摂取した場合の血糖値は、トレーランG75g単体を摂取した場合の血糖値より時間の経過に拘わらず低くなっていることが分かる。この血糖値の変化の傾向は図6(b)と同様であった。
【0052】
(考察)
図6に示す結果からすると、乳酸菌共生培養抽出液は血糖値を低下させる働きがあることが示された。さらに、乳酸菌共生培養抽出液5ml以上を投与することにより血糖値抑制作用が強く認められた。以上の治験の結果からして、本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液は糖尿病予防の効果を発揮することが分かった。
【0053】
(治験8)
次に、本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を食パンの添加剤として用いた場合の食感と日持ち(カビの発生;防腐効果)について治験を行った。その結果を図7〜図9に示す。
【0054】
治験方法として、本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を添加した食パンと、無添加の食パンとを家庭用食パン製造器を用いて製造した。そして、それぞれの食パンを半分に切り、半分を味見し、残りの半分をビニール袋に入れて比較を行った。
図7〜図9の右側の写真は、前記家庭用食パン製造器に添付されていた説明書に基づいて製造した食パンを示している。図7〜図9の左側の写真は、水を本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液10%水にして、前記説明書に基づいて製造した食パンを示している。
また、図7〜図9の写真に添え書きした数字は、製造した日からの経過日を示している。
【0055】
治験のために2010年1月19日のパンを製造し、製造直後に無菌操作で、それぞれビニール袋に入れ、20°Cにて保存して経過を観察した。
2010年1月25日の段階において、図6の最上段右側の写真から明らかなように、無添加食パンに○で示す位置に2箇所カビが発見された。
これに対して、図6の左側の写真に示す乳酸菌共生培養抽出液を添加した食パンの場合、図8に示す様に2010年1月28日の段階において、○で示す位置に2箇所カビが発見された。
図9に示す様に、2010年2月1日の段階において、図9の右側の写真で示す無添加食パンでは、カビは約1/3の面積に拡大していた。これに対して、図9の左側の写真で示す乳酸菌共生培養抽出液を添加した食パンでは、カビがほとんど拡大していなかった。
図9に示す様に、2010年2月2日の段階において、図9の右側の写真で示す無添加食パンでは、カビはほぼ全面に明瞭に拡大していた。これに対して、図9の左側の写真で示す乳酸菌共生培養抽出液を添加した食パンでは、カビが約1/2に薄く拡大していた。
【0056】
(考察)
2010年1月19日に製造した無添加食パンと、本実施形態の乳酸菌共生培養抽出液を添加した食パンとの食感を比較した。本実施形態の乳酸菌共生培養抽出液を添加した食パンの場合、無添加食パンにはない、もちもち感・しっとり感があり、風味があった。
さらに、図7〜図9に示す結果から明らかなように、製造後にカビが発生したのは、本実施形態の乳酸菌共生培養抽出液を添加した食パンの場合、製造後9日目であるのに対して、無添加食パンの場合、製造後6日目であり、本実施形態の乳酸菌共生培養抽出液を添加した食パンの方が無添加食パンより日持ちが約50%延長した。
【0057】
(結論)
本実施形態の乳酸菌共生培養抽出液は食パンに添加することにより、食感,日持ち(防腐効果)を明確に向上させた。これは、本実施形態の乳酸菌共生培養抽出液は天然食品添加物として、他の食品の添加物としても同様な効果を期待できることを示唆している。
【0058】
以上の治験の結果からして、本発明の実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液は、ビオチン(ビタミンH)、スフィンゴミエリン、ビタミンB12を主成分とし、ビオチン(ビタミンH)を、前記抽出液1ml中に3.3〜4.1ng(ng/ml)、スフィンゴミエリンを、前記抽出液1ml中に0.18〜0.22mg(mg/ml)、ビタミンB12を、前記抽出液1ml中に140.0〜171.6pg(pg/ml)をそれぞれ含むことにより、治験の結果、栄養補助食品に該当するにも関わらず、過敏性大腸炎や旅行者下痢症,旅行者下痢症,潰瘍性大腸炎,食中毒などの消化器系の改善、アレルギー皮膚炎,免疫機能,抗加齢効果(アンチエイジング)などの種々の効能の発揮,食品の食感向上,日持ち(防腐効果),糖尿病の予防などの効能を発揮することができるものである。
【0059】
次に、本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を動物のサプリメントとして用いて、症状の改善に寄与した例を列挙する。
(1)ネコAIDSで口内炎ができ、食欲廃絶した例
食欲が廃絶し、獣医医院に行ったところ、どのような治療をしても効果がなく、あきらめるように言われた飼い主から依頼があった。
症例の6歳、日本ネコに本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を2ml経口投与したところ、約1時間後から食欲がではじめ、全ての所見が正常時と同様になり、行動も3,4歳若返ったようになった。
その後も毎日1mlを経口投与することで良好な状態をまる2年維持しつづけている。
(2)難治性慢性下痢の秋田犬への使用
1年以上続く、難治性の慢性下痢の秋田県で、微生物学的検査(細菌・真菌・寄生虫)では何も検出されず、対症療法を行うも改善は認められなかった。
本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を1日2ml経口で与えたところ、数日で下痢が止まった。
(3)難治性外聴道炎のネコへの使用(局所的)
5歳、日本ネコで、長年獣医医院に通っていたが、耳から悪臭を伴い、疼痛もあり、ほとんど改善が認められない状況であった。本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を約50倍に希釈し、局部を綿棒等で清拭したところ、数日で改善し、症状が消失した。
(4)難治性外聴道炎のネコへの使用(全身的)
6歳、日本ネコで、症例3と同様な状況であった。本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を1ml経口投与したところ、数日で改善し、症状が消失した。
(5)感冒のネコへの使用
5歳、日本ネコで、体温が約39℃で、くしゃみをし、食欲がなく感冒と考えられた。
本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液を2ml経口投与したところ、約30分後に食欲がでて通常どおりに食べ、その後順調に回復した。
【0060】
本実施形態に係る乳酸菌共生培養抽出液は、人と同様に動物に適用しても、整腸作用,食欲増進作用,免疫増強による感染症改善作用・抗炎症作用があると考えられ、多くの疾患に役立つことが期待される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、栄養補助食品でありながら、今期流行している新型インフルエンザ等の病原性疾患などの予防、改善に貢献できるばかりでなく、過敏性大腸炎や旅行者下痢症,旅行者下痢症,潰瘍性大腸炎,食中毒などの消化器系の改善、アレルギー皮膚炎,免疫機能,抗加齢効果(アンチエイジング)などの効能の発揮,食品の食感向上,日持ち(防腐効果),糖尿病の予防などの効能を発揮するばかりでなく、動物に適用しても、整腸作用,食欲増進作用,免疫増強による感染症改善作用・抗炎症作用があると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌群を培養して抽出した乳酸菌共生培養抽出液であって、
抽出液中に、
ビオチン(ビタミンH)を、前記抽出液1ml中に3.3〜4.1ng(ng/ml)、
スフィンゴミエリンを、前記抽出液1ml中に0.18〜0.22mg(mg/ml)、
ビタミンB12を、前記抽出液1ml中に140.0〜171.6pg(pg/ml)をそれぞれ含むことを特徴とする乳酸菌共生培養抽出液。
【請求項2】
前記抽出液中に、葉酸を含む請求項1に記載の乳酸菌共生培養抽出液。
【請求項3】
前記葉酸を、前記抽出液1ml中に0.3ng/ml〜0.03ng/ml含む請求項2に記載の乳酸菌共生培養抽出液。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−20974(P2012−20974A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160842(P2010−160842)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(510195560)
【Fターム(参考)】