乾式適用のためのフラックス
【課題】乾式適用(乾式フラックス塗布)のために非常に良好に適当なアルカリフルオロアルミネートをベースとするフラックスを提供する。
【解決手段】粒度分布の範囲によって定義されている細粒成分不含のフラックス
【解決手段】粒度分布の範囲によって定義されている細粒成分不含のフラックス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾式適用のために使用可能なフラックス及びはんだ付用フラックスとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長年の間、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる構成部品、特に自動車工業のための熱交換体をアルカリフルオロアルミネートをベースとするフラックスを使用して互いにはんだ付けすることは公知である。更に通常はフラックスを水性懸濁液として熱交換体上に噴霧する。はんだ又ははんだを形成する前駆体、例えばケイ素粉末又はカリウムフルオロシリケートの存在下に、フラックスの融点より高い温度に構成部品を加熱することによって安定な非腐蝕性の結合が形成する。しかもDE−OS19749042号から、このプロセスにおいて生じる排水を循環させることができる方法は公知になっている。しかしながら別のプロセスパラメータが重要である:フラックススラリーの濃度を制御せねばならない、熱交換体を加熱の前に乾燥させねばならない、同様に循環されるフラックススラリーが汚染されることがある。これらの欠点は、フラックスを接合させるべき構成部品に乾式で施与する場合に回避できる。これは“乾式フラックス塗布法”のケースである。更に乾式フラックス粉末を静電的に構成部品に施与する。スラリーを製造する必要がないこと、スラリーの濃度を制御する必要がないこと、構成部品のための別個の乾燥段階を設ける必要がないこと、及び排水が生じないことが有利である。
【特許文献1】DE−OS19749042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題はアルカリフルオロアルミネートをベースとし、気圧的に良好に促すことができ、良好に乾式に噴霧でき、かつ噴霧された構成部品に良好に付着し、ひいては乾式適用のための方法(“乾式フラックス塗布”)のために適当なフラックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、アルカリフルオロアルミネートフラックスの粒度もしくは粒度分布が気圧的操作、噴霧可能性及びフラックス粒子の構成部品への付着可能性に影響を有するという認識に基づくものである。小さい方の粒子及び大きい方の粒子をフラックス中に含有し、その比を規定のように制御することが有利であると判明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明による乾式適用(“環式フラックス塗布”)のために使用可能なアルカリフルオロアルミネートをベースとするフラックスは、粒子の容積分布が実質的に図10の曲線1及び2の範囲内にあることを特徴とする。粒度分布はレーザー回折によって測定した。
【0006】
有利なフラックスにおいて、粒子の容積分布は実質的に図11の曲線1及び2の範囲内にある。
【0007】
図10は、本発明の範囲内の使用可能な粉末の容積分布曲線に関する下限(曲線1)及び上限(曲線2)を示している。これは、粒度に対する累積して施与された粉末の%での容積分布である。累積容積分布が図10の曲線1及び2の上又はその範囲内にあるフラックス粉末は本発明の範囲内の粉末である。
【0008】
図10の曲線1及び2の粒度に対する累積容積分布を以下の表Aにまとめる。
【0009】
表A:図10の曲線1及び2の粒度に対する累積容積分布
【0010】
【表1】
【0011】
読み取り例:容積の40%は12.5μm未満の直径を有する粒子に割り当てられる。
【0012】
図11の曲線1及び2の上又はその範囲内の累積容積分布を有するフラックスは特に有利な乾式フラックス塗布性を有することが確認された。表Bは図11の曲線1及び2の粒度に対する累積容積分布の数値を示している。
【0013】
表B:図11の曲線1及び2の粒度の累積容積分布
【0014】
【表2】
【0015】
本発明による材料は不所望の粒子分の篩い分け、種々の粒度分布を有する材料の混合によって得ることができる。
【0016】
噴霧係数は、有利には25、より有利には35、特に45以上であり、その場合に規定される比H流動:H0は少なくとも1.05である。噴霧係数のための上限は85、有利には83.5である。噴霧係数及びH流動:H0(膨張粉末対未膨張粉末の高さ)の比の調査を更に以下に記載する。
【0017】
本発明による材料は乾式フラックス塗布法におけるフラックスとして使用するために非常に良好に適当である。この場合、粉末は貯蔵容器から圧縮空気又は窒素によって“スプレーキャノン”中にもたらされ、そこで静電的に負荷される。次いで粉末はスプレーキャノンの噴霧ヘッドを通り、はんだ付けされるべき構成部品上に衝突する。次いではんだ付けされるべき構成部品を場合により接合下にはんだ炉中で主に窒素に関する不活性ガス下に、又は火炎はんだ付けによってはんだ付けする。
【0018】
本発明による粉末は、公知のフラックスに対して応用技術的利点を有する。例えば、該粉末は非常に良好な流動性を有する。これは、選択された粒度の分布に起因する。この良好な流動性は、閉塞(“ビルドアップ”)の傾向を減少させることに導く。外材料は非常に良好に荷電できる。該材料ははんだ付けされるべき構成部品上に非常に良好に付着する。材料流は非常に均一である。
【実施例】
【0019】
本発明を以下の実施例をもとに説明するが、それに制限されるものではない。
【0020】
容積分布の規定
システム:シンパテック(Sympatec)HELOS
製造元:シンパテックGmbH、システム−パーティケル−テヒニーク(System-Partikel-Technik)
構成: レーザー回折による固体の粒度分布の規定のための測定装置。
【0021】
該装置は以下の構成要素からなる:
ビーム形成に関するレーザー光源、測定されるべき粒子がレーザー光と相互作用する測定領域、回折されたレーザー光の角分散を光検出器において位置分散に変換する映写レンズ、オートフォーカスユニットを有する多素子光検出器及び測定された強度分布をデジタル化する後接続された電子機器。
【0022】
粒度分布の計算はソフトウェアWINDOXによって実施する。原理は回折パターン(フラウンホッヒャーによる)の測定された強度分布の評価に基づく。本願の場合にはHRLD(高解像度レーザー回折)である。非球形粒子の粒度は回折が同じ球の等価直径分布として示される。測定の前に、凝集物を個々の粒子に分解せねばならない。測定のために必要な粉末のエーロゾルは分散装置、本願ではシステムRODOS中で製造する。分散装置への粉末の均一な供給は振動コンベヤ(VIBRI)によって実施する。
【0023】
測定領域:0.45...87.5μm
評価:HRLD(バージョン3.3 Rel.1)
試料の密度:
設定:1g/cm3
形状係数:1の複素屈折率m=n−ik;n=1;i=0
評価:
xはμmでの粒径である。
【0024】
Q3は記載された直径までの粒子の%での累積容量部である。
【0025】
q3は粒径xの場合の密度分布である。
【0026】
x10は累積容量部10%が達成される粒径である。
【0027】
c_optは測定の場合に生じる光学濃度(エーロゾル密度)である。
【0028】
出発材料:
異なる粒度分布を有するカリウムフルオロアルミネートからなる2種の粉末を乾式フラックス塗布のための特性に関して調査した。これらの粉末は不所望な粒群の篩い分けによって得られる。以下に粒度分布(容積分布)を表にまとめている。粉末1(“大きい方の”材料)の粒度分布は図1に、粉末2(“微細な”材料)の粒度は図2に見られる。
【0029】
【表3】
【0030】
まず粉末1もしくは2及び両者の規定の混合物の流動化流動性並びに流動性を調査した。
【0031】
使用される装置及び実施
粉末流動化流動性及び粉末流動性の調査のための1つの測定装置(ビンクス−ザーメス(Binks-Sames)粉末流動化インジケーターAS100−451195)を振動装置(フリッチュ(Fritsch)L−24)に取り付けた。測定装置は床に多孔質膜を有する流動化シリンダを有する。それぞれ調査されるべき250gの粉末をシリンダ中に導入し、振動ユニットを接続し、乾式窒素の均質な(流量計による制御)流れを多孔質膜を通して粉末中に導入した。粉末を膨張させ;平衡調節のためにガスを1分間作用させた。膨張前及び膨張後の高さの測定によって、それぞれの粉末の流動化流動性を調査できる。
【0032】
それぞれの粉末の流動化流動性及び流動性をいわゆる“噴霧係数”を介して調査した。噴霧係数は膨張係数(流動化流動性)及び粉末の質量流量(流動性)の組合せである。噴霧係数は乾式フラックス塗布使用のために重要な係数を示している。これは以下のように規定した:既に前記のように、それぞれ調査されるべき粉末を流動化シリンダ中で膨張させた。30秒間、シリンダの側部に取り付けられた穴を設け、該穴を通してシリンダを通過する粉末をビーカガラスに受容し、秤量した。受容された粉末の質量の0.5分の単位時間に対する比を以下に“噴霧係数”とする。説明のために、非常に良好に流動化可能な流動性の粉末が140の噴霧係数を有することを言及する。非常に膨張性が悪く流動性が悪い粉末は、例えば噴霧係数7である。以下の第3表においては調査された噴霧係数を純粋な粉末1、純粋な粉末2及び粉末1を90、80、70...10質量%で残りを粉末2で100質量%にしたその間にある混合物に関して示している。
【0033】
【表4】
【0034】
試験において、約45g/0.5分より大きい噴霧係数で良好な流動挙動が生じることが確認された。
【0035】
また噴霧係数は以下のように計算できる:
a)膨張係数(cm/cm)を計算する:
H流動:H流動に関するH0=膨張した粉末の高さ、
H0=流動化されていない粉末の高さ、振動器停止及び窒素供給停止
直径にわたって分配された測定点のそれぞれ5つの測定から平均を決める。
【0036】
b)(g/0.5分)での粉末の流動:
0.5分間で穴から流れる粉末の質量を10つの測定値からメジアン値として規定する。
【0037】
メジアンの計算:
メジアンm=m5<m3<m1<m7<m9<m2<m4<m8<m10<m6での10の個々の測定値に関するm9+m2/2
噴霧係数RmはRm(g/0.5分)=m(g/0.5分)・膨張係数である。
【0038】
驚くべきことに、噴霧係数は粉末混合物の組成に関して非線形に変化するが、該係数は試料1の割合の約80〜90%の範囲で大きな特性の飛躍を有する。これは図3に図示している。g/0.5分での噴霧係数を混合物中の粉末1の百分率に対して提供している。これは粉末中での微細成分の含量が流動性に大きな影響を有することを証明している。
【0039】
粒度分布に依存するアルミニウム構成部品への付着性の調査
付着性を、調査された粉末の乾燥フラックス塗布における技術的使用可能性を良好に推測可能にする非常に簡単な方法によって試験した。
【0040】
0.5m×0.5mの広さの平坦な正方形のアルミニウム板を一方の側に静電的に調査されるべき乾式フラックス粉末を噴霧によって被覆した。フラックスの負荷を秤量し、次いで該板を垂直位置で5cmの高さから床に落下させ、フラックスの損失を最初のフラックス負荷の百分率として記録した。粉末についてそれぞれ10の測定を実施した。付着の悪い粉末は本発明による粉末(粉末3及び粉末4を参照)を使用する場合の低い質量損失と比較して、比較的高い質量損失を示した。
【0041】
実践に近い条件下での調査
2つの異なる装置を使用した。一方の装置はNordson社のフラックス施与装置(“フラクシングブース”)であり、半連続的な実施のために適当である。装置のサイズ:216cmの高さ、143cmの幅、270cmの深さ。重要な構成部品は貯蔵容器、噴霧塔、2つのフィルタカートリッジ及び制御装置である。フラックス塗布されるべき構成部品を手動で前後に動作させることができる火格子に配置した。噴霧塔は自動的に左から右に動き、約21秒の間隔で元に戻る(65cmに対して21秒間、すなわち速度は3.1cm/秒であった)。
【0042】
第2のフラックス塗布装置として、前記システム中でITW/Gemaの容器を噴霧塔及び制御装置と一緒に取り付けた。
【0043】
噴霧ヘッドと火格子との間の距離は34cmであった。
【0044】
作業原理:
Nordson社の容器は、フラックスをベンチュリポンプ及び供給管を介して噴霧塔に導入するために粉末流動化の原理を利用した。容器中の撹拌装置又は振盪装置はフラックスの流動化を補助する。
【0045】
ITW/Gemaのシステムは、粉末を機械的に漏斗に運ぶためにスクリューコンベヤ(ヘリックス スクリュー コンベヤ)を有する容器を有する。ベンチュリポンプはフラックスを管を通してスプレーキャノン中に送る。
【0046】
ITW/Gemaのシステムに振動器を複数の位置に設置して、フラックスによる閉塞を回避した。噴霧塔は粉末の負荷のために100kVで作動した。
【0047】
実施例で生じた粉末をNordsonもしくはITW/Gemaによる装置中で使用して、フラックス輸送及び噴霧プロセスの均一性及び試験体の負荷(4.8m2の表面積を有する熱交換体)を調査した。次いで、制御装置を空気流もしくはスクリュー速度に関して、約5g/m2のフラックス負荷が達成されるように調整した。引き続き実験を30分間、装置の設定を変更せずに継続した。2〜4分の間隔で試験体を火格子上に、フラックスの噴霧の目的のために配置し、次いでフラックス負荷の測定のために秤量した。各試験列は10又は11の測定を含んでいた。これらの結果を第4表にまとめる。
【0048】
第4表:30分試験、熱交換体上のフラックス負荷
【0049】
【表5】
【0050】
図4〜図7において、Nordson装置もしくはITW/Gema装置に関して粉末1もしくは粉末2についての時間に対してフラックス負荷を図示した。粉末2に関しては、Nordson装置中で噴霧ヘッドを定期的に空吹きして、閉塞を回避せねばならなかった。
【0051】
前記のような30分試験調査を他の粉末に関しても調査した。粉末3は以下の特性を有していた:59.25の測定されたRmの値;H流動:H0(mm/mm)=1.11;11.5%の付着損失;及び以下の粒度分布:全ての粒子の90%が<35.15μmのサイズを示し、全ての粒子の50%が<9.76μmのサイズを示し、全ての粒子の10%が<1.35μmのサイズを示した。粒度分布のピーク極大は5μmであり、2番目に大きなピークは20μmであった。粉末の合計された容積分布を図5及び図6に良好に使用可能な粉末のための例として示した。この材料はNordson装置でもITW/Gema装置でも非常に良好な結果を提供した。装置において“スロップ”は認めることができず、噴霧ヘッドの吹き出しも必要としない。形成された層は“非常に美しかった”。時間に対するフラックス負荷を図8に示した。他の材料は粉末4であり、これはRm=82.85の噴霧係数を示し;H流動:H0は1.10であり;付着試験での損失は16.7%であり;粒度分布:全ての粒子の90%が28.6μmの直径を有し;全ての粒子の50%が8.9μmの直径を有し;全ての粒子の10%が1.67μm未満の直径を有し;粒度分布は9.5並びに20μmでピークを示す。またこの材料も優れた結果を提供した。図9は熱交換体上での粉末4でのフラックス負荷の均一性を時間に対して示している。
【0052】
許容できる結果は以下のカリウムフルオロアルミネート−粉末5によっても達成された:Rm=46.99;比H流動:H0=1.05、負荷損失:6.39%、粒度分布:全ての粒子の90% <19.84μm、全ての粒子の50% 7.7μm;全ての粒子の10% <1.16μm、粒度分布の極大ピークは13であった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は粉末1の粒度分布を示している。
【図2】図2は粉末2の粒度分布を示している。
【図3】図3は粉末係数Rmの粉末1もしくは粉末2の割合への依存を示している。
【図4】図4は粉末1の場合のNordson装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図5】図5は粉末2の場合のNordson装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図6】図6は粉末1の場合のITW/Gema装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図7】図7は粉末2の場合のITW/Gema装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図8】図8は粉末3の場合のNordson装置及びITW/Gema装置を使用したフラックス負荷の時間に対する比較を示すグラフである。
【図9】図9は粉末4の場合のITW/Gema装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図10】図10は、本発明の範囲内の使用可能な粉末の容積分布曲線を示している。
【図11】図11は、本発明の範囲内の使用可能な粉末の容積分布曲線を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は乾式適用のために使用可能なフラックス及びはんだ付用フラックスとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長年の間、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる構成部品、特に自動車工業のための熱交換体をアルカリフルオロアルミネートをベースとするフラックスを使用して互いにはんだ付けすることは公知である。更に通常はフラックスを水性懸濁液として熱交換体上に噴霧する。はんだ又ははんだを形成する前駆体、例えばケイ素粉末又はカリウムフルオロシリケートの存在下に、フラックスの融点より高い温度に構成部品を加熱することによって安定な非腐蝕性の結合が形成する。しかもDE−OS19749042号から、このプロセスにおいて生じる排水を循環させることができる方法は公知になっている。しかしながら別のプロセスパラメータが重要である:フラックススラリーの濃度を制御せねばならない、熱交換体を加熱の前に乾燥させねばならない、同様に循環されるフラックススラリーが汚染されることがある。これらの欠点は、フラックスを接合させるべき構成部品に乾式で施与する場合に回避できる。これは“乾式フラックス塗布法”のケースである。更に乾式フラックス粉末を静電的に構成部品に施与する。スラリーを製造する必要がないこと、スラリーの濃度を制御する必要がないこと、構成部品のための別個の乾燥段階を設ける必要がないこと、及び排水が生じないことが有利である。
【特許文献1】DE−OS19749042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題はアルカリフルオロアルミネートをベースとし、気圧的に良好に促すことができ、良好に乾式に噴霧でき、かつ噴霧された構成部品に良好に付着し、ひいては乾式適用のための方法(“乾式フラックス塗布”)のために適当なフラックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、アルカリフルオロアルミネートフラックスの粒度もしくは粒度分布が気圧的操作、噴霧可能性及びフラックス粒子の構成部品への付着可能性に影響を有するという認識に基づくものである。小さい方の粒子及び大きい方の粒子をフラックス中に含有し、その比を規定のように制御することが有利であると判明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明による乾式適用(“環式フラックス塗布”)のために使用可能なアルカリフルオロアルミネートをベースとするフラックスは、粒子の容積分布が実質的に図10の曲線1及び2の範囲内にあることを特徴とする。粒度分布はレーザー回折によって測定した。
【0006】
有利なフラックスにおいて、粒子の容積分布は実質的に図11の曲線1及び2の範囲内にある。
【0007】
図10は、本発明の範囲内の使用可能な粉末の容積分布曲線に関する下限(曲線1)及び上限(曲線2)を示している。これは、粒度に対する累積して施与された粉末の%での容積分布である。累積容積分布が図10の曲線1及び2の上又はその範囲内にあるフラックス粉末は本発明の範囲内の粉末である。
【0008】
図10の曲線1及び2の粒度に対する累積容積分布を以下の表Aにまとめる。
【0009】
表A:図10の曲線1及び2の粒度に対する累積容積分布
【0010】
【表1】
【0011】
読み取り例:容積の40%は12.5μm未満の直径を有する粒子に割り当てられる。
【0012】
図11の曲線1及び2の上又はその範囲内の累積容積分布を有するフラックスは特に有利な乾式フラックス塗布性を有することが確認された。表Bは図11の曲線1及び2の粒度に対する累積容積分布の数値を示している。
【0013】
表B:図11の曲線1及び2の粒度の累積容積分布
【0014】
【表2】
【0015】
本発明による材料は不所望の粒子分の篩い分け、種々の粒度分布を有する材料の混合によって得ることができる。
【0016】
噴霧係数は、有利には25、より有利には35、特に45以上であり、その場合に規定される比H流動:H0は少なくとも1.05である。噴霧係数のための上限は85、有利には83.5である。噴霧係数及びH流動:H0(膨張粉末対未膨張粉末の高さ)の比の調査を更に以下に記載する。
【0017】
本発明による材料は乾式フラックス塗布法におけるフラックスとして使用するために非常に良好に適当である。この場合、粉末は貯蔵容器から圧縮空気又は窒素によって“スプレーキャノン”中にもたらされ、そこで静電的に負荷される。次いで粉末はスプレーキャノンの噴霧ヘッドを通り、はんだ付けされるべき構成部品上に衝突する。次いではんだ付けされるべき構成部品を場合により接合下にはんだ炉中で主に窒素に関する不活性ガス下に、又は火炎はんだ付けによってはんだ付けする。
【0018】
本発明による粉末は、公知のフラックスに対して応用技術的利点を有する。例えば、該粉末は非常に良好な流動性を有する。これは、選択された粒度の分布に起因する。この良好な流動性は、閉塞(“ビルドアップ”)の傾向を減少させることに導く。外材料は非常に良好に荷電できる。該材料ははんだ付けされるべき構成部品上に非常に良好に付着する。材料流は非常に均一である。
【実施例】
【0019】
本発明を以下の実施例をもとに説明するが、それに制限されるものではない。
【0020】
容積分布の規定
システム:シンパテック(Sympatec)HELOS
製造元:シンパテックGmbH、システム−パーティケル−テヒニーク(System-Partikel-Technik)
構成: レーザー回折による固体の粒度分布の規定のための測定装置。
【0021】
該装置は以下の構成要素からなる:
ビーム形成に関するレーザー光源、測定されるべき粒子がレーザー光と相互作用する測定領域、回折されたレーザー光の角分散を光検出器において位置分散に変換する映写レンズ、オートフォーカスユニットを有する多素子光検出器及び測定された強度分布をデジタル化する後接続された電子機器。
【0022】
粒度分布の計算はソフトウェアWINDOXによって実施する。原理は回折パターン(フラウンホッヒャーによる)の測定された強度分布の評価に基づく。本願の場合にはHRLD(高解像度レーザー回折)である。非球形粒子の粒度は回折が同じ球の等価直径分布として示される。測定の前に、凝集物を個々の粒子に分解せねばならない。測定のために必要な粉末のエーロゾルは分散装置、本願ではシステムRODOS中で製造する。分散装置への粉末の均一な供給は振動コンベヤ(VIBRI)によって実施する。
【0023】
測定領域:0.45...87.5μm
評価:HRLD(バージョン3.3 Rel.1)
試料の密度:
設定:1g/cm3
形状係数:1の複素屈折率m=n−ik;n=1;i=0
評価:
xはμmでの粒径である。
【0024】
Q3は記載された直径までの粒子の%での累積容量部である。
【0025】
q3は粒径xの場合の密度分布である。
【0026】
x10は累積容量部10%が達成される粒径である。
【0027】
c_optは測定の場合に生じる光学濃度(エーロゾル密度)である。
【0028】
出発材料:
異なる粒度分布を有するカリウムフルオロアルミネートからなる2種の粉末を乾式フラックス塗布のための特性に関して調査した。これらの粉末は不所望な粒群の篩い分けによって得られる。以下に粒度分布(容積分布)を表にまとめている。粉末1(“大きい方の”材料)の粒度分布は図1に、粉末2(“微細な”材料)の粒度は図2に見られる。
【0029】
【表3】
【0030】
まず粉末1もしくは2及び両者の規定の混合物の流動化流動性並びに流動性を調査した。
【0031】
使用される装置及び実施
粉末流動化流動性及び粉末流動性の調査のための1つの測定装置(ビンクス−ザーメス(Binks-Sames)粉末流動化インジケーターAS100−451195)を振動装置(フリッチュ(Fritsch)L−24)に取り付けた。測定装置は床に多孔質膜を有する流動化シリンダを有する。それぞれ調査されるべき250gの粉末をシリンダ中に導入し、振動ユニットを接続し、乾式窒素の均質な(流量計による制御)流れを多孔質膜を通して粉末中に導入した。粉末を膨張させ;平衡調節のためにガスを1分間作用させた。膨張前及び膨張後の高さの測定によって、それぞれの粉末の流動化流動性を調査できる。
【0032】
それぞれの粉末の流動化流動性及び流動性をいわゆる“噴霧係数”を介して調査した。噴霧係数は膨張係数(流動化流動性)及び粉末の質量流量(流動性)の組合せである。噴霧係数は乾式フラックス塗布使用のために重要な係数を示している。これは以下のように規定した:既に前記のように、それぞれ調査されるべき粉末を流動化シリンダ中で膨張させた。30秒間、シリンダの側部に取り付けられた穴を設け、該穴を通してシリンダを通過する粉末をビーカガラスに受容し、秤量した。受容された粉末の質量の0.5分の単位時間に対する比を以下に“噴霧係数”とする。説明のために、非常に良好に流動化可能な流動性の粉末が140の噴霧係数を有することを言及する。非常に膨張性が悪く流動性が悪い粉末は、例えば噴霧係数7である。以下の第3表においては調査された噴霧係数を純粋な粉末1、純粋な粉末2及び粉末1を90、80、70...10質量%で残りを粉末2で100質量%にしたその間にある混合物に関して示している。
【0033】
【表4】
【0034】
試験において、約45g/0.5分より大きい噴霧係数で良好な流動挙動が生じることが確認された。
【0035】
また噴霧係数は以下のように計算できる:
a)膨張係数(cm/cm)を計算する:
H流動:H流動に関するH0=膨張した粉末の高さ、
H0=流動化されていない粉末の高さ、振動器停止及び窒素供給停止
直径にわたって分配された測定点のそれぞれ5つの測定から平均を決める。
【0036】
b)(g/0.5分)での粉末の流動:
0.5分間で穴から流れる粉末の質量を10つの測定値からメジアン値として規定する。
【0037】
メジアンの計算:
メジアンm=m5<m3<m1<m7<m9<m2<m4<m8<m10<m6での10の個々の測定値に関するm9+m2/2
噴霧係数RmはRm(g/0.5分)=m(g/0.5分)・膨張係数である。
【0038】
驚くべきことに、噴霧係数は粉末混合物の組成に関して非線形に変化するが、該係数は試料1の割合の約80〜90%の範囲で大きな特性の飛躍を有する。これは図3に図示している。g/0.5分での噴霧係数を混合物中の粉末1の百分率に対して提供している。これは粉末中での微細成分の含量が流動性に大きな影響を有することを証明している。
【0039】
粒度分布に依存するアルミニウム構成部品への付着性の調査
付着性を、調査された粉末の乾燥フラックス塗布における技術的使用可能性を良好に推測可能にする非常に簡単な方法によって試験した。
【0040】
0.5m×0.5mの広さの平坦な正方形のアルミニウム板を一方の側に静電的に調査されるべき乾式フラックス粉末を噴霧によって被覆した。フラックスの負荷を秤量し、次いで該板を垂直位置で5cmの高さから床に落下させ、フラックスの損失を最初のフラックス負荷の百分率として記録した。粉末についてそれぞれ10の測定を実施した。付着の悪い粉末は本発明による粉末(粉末3及び粉末4を参照)を使用する場合の低い質量損失と比較して、比較的高い質量損失を示した。
【0041】
実践に近い条件下での調査
2つの異なる装置を使用した。一方の装置はNordson社のフラックス施与装置(“フラクシングブース”)であり、半連続的な実施のために適当である。装置のサイズ:216cmの高さ、143cmの幅、270cmの深さ。重要な構成部品は貯蔵容器、噴霧塔、2つのフィルタカートリッジ及び制御装置である。フラックス塗布されるべき構成部品を手動で前後に動作させることができる火格子に配置した。噴霧塔は自動的に左から右に動き、約21秒の間隔で元に戻る(65cmに対して21秒間、すなわち速度は3.1cm/秒であった)。
【0042】
第2のフラックス塗布装置として、前記システム中でITW/Gemaの容器を噴霧塔及び制御装置と一緒に取り付けた。
【0043】
噴霧ヘッドと火格子との間の距離は34cmであった。
【0044】
作業原理:
Nordson社の容器は、フラックスをベンチュリポンプ及び供給管を介して噴霧塔に導入するために粉末流動化の原理を利用した。容器中の撹拌装置又は振盪装置はフラックスの流動化を補助する。
【0045】
ITW/Gemaのシステムは、粉末を機械的に漏斗に運ぶためにスクリューコンベヤ(ヘリックス スクリュー コンベヤ)を有する容器を有する。ベンチュリポンプはフラックスを管を通してスプレーキャノン中に送る。
【0046】
ITW/Gemaのシステムに振動器を複数の位置に設置して、フラックスによる閉塞を回避した。噴霧塔は粉末の負荷のために100kVで作動した。
【0047】
実施例で生じた粉末をNordsonもしくはITW/Gemaによる装置中で使用して、フラックス輸送及び噴霧プロセスの均一性及び試験体の負荷(4.8m2の表面積を有する熱交換体)を調査した。次いで、制御装置を空気流もしくはスクリュー速度に関して、約5g/m2のフラックス負荷が達成されるように調整した。引き続き実験を30分間、装置の設定を変更せずに継続した。2〜4分の間隔で試験体を火格子上に、フラックスの噴霧の目的のために配置し、次いでフラックス負荷の測定のために秤量した。各試験列は10又は11の測定を含んでいた。これらの結果を第4表にまとめる。
【0048】
第4表:30分試験、熱交換体上のフラックス負荷
【0049】
【表5】
【0050】
図4〜図7において、Nordson装置もしくはITW/Gema装置に関して粉末1もしくは粉末2についての時間に対してフラックス負荷を図示した。粉末2に関しては、Nordson装置中で噴霧ヘッドを定期的に空吹きして、閉塞を回避せねばならなかった。
【0051】
前記のような30分試験調査を他の粉末に関しても調査した。粉末3は以下の特性を有していた:59.25の測定されたRmの値;H流動:H0(mm/mm)=1.11;11.5%の付着損失;及び以下の粒度分布:全ての粒子の90%が<35.15μmのサイズを示し、全ての粒子の50%が<9.76μmのサイズを示し、全ての粒子の10%が<1.35μmのサイズを示した。粒度分布のピーク極大は5μmであり、2番目に大きなピークは20μmであった。粉末の合計された容積分布を図5及び図6に良好に使用可能な粉末のための例として示した。この材料はNordson装置でもITW/Gema装置でも非常に良好な結果を提供した。装置において“スロップ”は認めることができず、噴霧ヘッドの吹き出しも必要としない。形成された層は“非常に美しかった”。時間に対するフラックス負荷を図8に示した。他の材料は粉末4であり、これはRm=82.85の噴霧係数を示し;H流動:H0は1.10であり;付着試験での損失は16.7%であり;粒度分布:全ての粒子の90%が28.6μmの直径を有し;全ての粒子の50%が8.9μmの直径を有し;全ての粒子の10%が1.67μm未満の直径を有し;粒度分布は9.5並びに20μmでピークを示す。またこの材料も優れた結果を提供した。図9は熱交換体上での粉末4でのフラックス負荷の均一性を時間に対して示している。
【0052】
許容できる結果は以下のカリウムフルオロアルミネート−粉末5によっても達成された:Rm=46.99;比H流動:H0=1.05、負荷損失:6.39%、粒度分布:全ての粒子の90% <19.84μm、全ての粒子の50% 7.7μm;全ての粒子の10% <1.16μm、粒度分布の極大ピークは13であった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は粉末1の粒度分布を示している。
【図2】図2は粉末2の粒度分布を示している。
【図3】図3は粉末係数Rmの粉末1もしくは粉末2の割合への依存を示している。
【図4】図4は粉末1の場合のNordson装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図5】図5は粉末2の場合のNordson装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図6】図6は粉末1の場合のITW/Gema装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図7】図7は粉末2の場合のITW/Gema装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図8】図8は粉末3の場合のNordson装置及びITW/Gema装置を使用したフラックス負荷の時間に対する比較を示すグラフである。
【図9】図9は粉末4の場合のITW/Gema装置を使用したフラックス負荷の時間に対するグラフを示している。
【図10】図10は、本発明の範囲内の使用可能な粉末の容積分布曲線を示している。
【図11】図11は、本発明の範囲内の使用可能な粉末の容積分布曲線を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式フラックス塗布用のアルカリフルオロアルミネートをベースとするフラックスであって、25〜85の噴霧係数を有するフラックス。
【請求項2】
45以上の噴霧係数を有する、請求項1記載のフラックス。
【請求項3】
表Aの粒度の累積容積分布を有する、請求項1記載のフラックス。
【請求項4】
粒子の累積分布が図1の曲線1及び曲線2の範囲内にある、請求項1記載のフラックス。
【請求項5】
表Bの粒度の累積容積分布を有する、請求項1記載のフラックス。
【請求項6】
粒子の累積分布が図2の曲線1及び曲線2の範囲内にある、請求項1記載のフラックス。
【請求項7】
カリウムフルオロアルミネートをベースとする、請求項1記載のフラックス。
【請求項8】
アルミニウム又はアルミニウム合金のはんだ付け方法であって、
請求項1から7のいずれか1項に記載のフラックスを、はんだ付けされるべき部品に乾式かつ静電的に塗布し、該部品を加熱下にはんだ付けする方法。
【請求項1】
乾式フラックス塗布用のアルカリフルオロアルミネートをベースとするフラックスであって、25〜85の噴霧係数を有するフラックス。
【請求項2】
45以上の噴霧係数を有する、請求項1記載のフラックス。
【請求項3】
表Aの粒度の累積容積分布を有する、請求項1記載のフラックス。
【請求項4】
粒子の累積分布が図1の曲線1及び曲線2の範囲内にある、請求項1記載のフラックス。
【請求項5】
表Bの粒度の累積容積分布を有する、請求項1記載のフラックス。
【請求項6】
粒子の累積分布が図2の曲線1及び曲線2の範囲内にある、請求項1記載のフラックス。
【請求項7】
カリウムフルオロアルミネートをベースとする、請求項1記載のフラックス。
【請求項8】
アルミニウム又はアルミニウム合金のはんだ付け方法であって、
請求項1から7のいずれか1項に記載のフラックスを、はんだ付けされるべき部品に乾式かつ静電的に塗布し、該部品を加熱下にはんだ付けする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−61507(P2009−61507A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314520(P2008−314520)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【分割の表示】特願2001−532926(P2001−532926)の分割
【原出願日】平成12年10月19日(2000.10.19)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【分割の表示】特願2001−532926(P2001−532926)の分割
【原出願日】平成12年10月19日(2000.10.19)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany
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