説明

乾燥コークス製造方法および乾燥コークス製造装置

【課題】乾式消火コークスに近い性状のコークスを、安価に製造できる乾燥コークス製造方法および乾燥コークス製造装置を提供すること。
【解決手段】湿式消火後のコークスを、当該コークスの顕熱によって当該コークスが含む水分を気化させることが可能な400℃以下の温度で、容器5の上部から供給し、容器5の内部に前記コークスを堆積させて充填層53を形成しつつ前記縦型容器の下部から外部へ切り出すと共に、容器5の下部から上部に向かって空気を送入して充填層53の前記コークス間を通過させ、このコークス間を通過させた空気を容器5の外部へ排出することを特徴とする乾燥コークス製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥コークス製造方法および乾燥コークス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室炉式コークス炉にて生産された高温の赤熱コークスを冷却するには、大きく分けて2通りの方法がある。一つは、コークス湿式消火設備を用いて水を赤熱コークスに直接散布することでコークスを冷却する湿式消火である。もう一つは、コークス乾式消火設備を用いて水を使わず、不活性ガスで冷却する乾式消火である。湿式消火で冷却されたコークスは、湿式消火コークスと呼ばれ、乾式消火で冷却されたコークスは、乾式消火コークスと呼ばれる。
コークス乾式消火設備では、赤熱コークスを冷却チャンバーへ投入し、不活性の冷却ガスを用いて熱交換を行うことでコークスを冷却する。この乾式消火コークスは、湿式消火コークスに比べて含水率が非常に小さいため、高炉においてコークスや微粉炭等のエネルギー消費量を削減することが出来る。また、冷却チャンバー内でコークスどうしの摩擦によってコークス表層の脆弱な組織が剥離および粉化するため、コークス強度が向上する。コークス強度の向上は、高炉内での還元効率向上につながるため、コークスや微粉炭等の使用量をさらに低減できる。
コークス乾式消火設備の定期補修などにより乾式消火が行えない際は、湿式消火コークスを使用せざるを得ないのが一般的である。湿式消火コークス使用時は、乾式消火コークスに比べて含水率が大きく、高炉内に投入されたコークスから水分が蒸発する際にエネルギーが消費され、高炉での還元剤(コークスや微粉炭等)の使用量が増加する。また、含水率が大きいと、湿式消火コークス粒子に付着した粉化コークスが、高炉内で水分の蒸発によって離脱して、高炉内の通気性を悪化させる原因となる。
そのため、コスト削減および二酸化炭素排出量削減の観点からは、コークス乾式消火設備の補修工事期間を極力短くすることが好ましい。ところが、コークス乾式消火設備の老朽化が進むにつれて補修期間が長期化する傾向にある。我が国において、コークス乾式消火設備の設置は、ほぼ一巡しており、今後老朽化した設備が増加していくことが予測される中、補修工事期間中においても乾式消火コークスに近い強度および含水率のコークスを供給することが求められている。
【0003】
そこで、湿式消火コークスを乾燥するための装置や方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、回転ドラム内に入れたコークスを熱風で乾燥するとともに脆弱部の粉化を行う装置が記載されている。
また、特許文献2には、湿潤コークスを貯蔵するコークス貯蔵用サイロ内に熱風炉の排ガスを供給し、排ガスの顕熱でコークスの乾燥および付着粉の除去を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−291353号公報
【特許文献2】特開昭51−62110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された装置は、回転ドラム駆動機器等、大がかりな装置が必要になり、装置規模およびコストの点で課題となる。
【0006】
また、特許文献2に記載された方法では、熱風炉の排ガスを乾燥ガスとして利用するため、コークス貯蔵用サイロと熱風炉とが遠く離れた位置に設置されている場合には、両者を繋ぐ配管の敷設が必要となり、コストの点で課題となる。
さらに、特許文献2に記載された方法では、コークス貯蔵用サイロ内でのコークスの粒度分布は不均一であるため、乾燥ガスの流れに偏りが生じる。
また、コークス貯蔵用サイロ内でのコークスの荷下がりが安定せず、当該サイロ内でのコークスの滞留時間も不均一となる。
これらの結果、コークスの乾燥度合いも不均一となり、高炉へ供給されるコークス性状が安定しない。
加えて、特許文献2に記載されたコークス貯蔵用サイロは、密閉が不十分であり、当該サイロ周辺の労働環境を悪化させる恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、乾式消火コークスに近い性状のコークスを、安価に製造できる乾燥コークス製造方法および乾燥コークス製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乾燥コークス製造方法は、湿式消火後のコークスを、当該コークスの顕熱によって当該コークスが含む水分を気化させることが可能な400℃以下の温度で、縦型容器の上部から供給し、前記縦型容器の内部に前記コークスを堆積させて充填層を形成しつつ前記縦型容器の下部から外部へ切り出すと共に、前記縦型容器の下部から上部に向かって空気を送入して前記充填層の前記コークス間を通過させ、このコークス間を通過させたガスを前記縦型容器の外部へ排出することを特徴とする。
【0009】
このような本発明では、縦型容器に供給される際の湿式消火後のコークスは、当該コークスの顕熱によって当該コークスが含む水分を気化させることが可能な400℃以下の温度である。そして、充填層のコークス間に空気を通過させて、当該空気を縦型容器外部へと排出する。そのため、コークスが効率的に乾燥され、含水率が低減する。つまり、従来技術の回転ドラムのような大がかりな装置や熱風炉から排ガス供給するための配管が不要であり、設備費を下げることができる。
さらに、縦型容器内の充填層では、効率的に乾燥されたコークス同士の摩擦によって表面の脆弱な組織が剥離および粉化するため、コークス強度が向上する。
つまり、本発明によれば、湿式消火で冷却された場合であっても、含水率が低く、強度も高いコークスを安価に製造できる。
その結果、乾式消火設備を使用できない期間においても、乾式消火コークスに近い性状のコークスを高炉に安価かつ安定的に供給できる。また、含水率が低いので、高炉において水分を蒸発させるためのコークスおよび微粉炭の使用量を低減でき、コスト削減や二酸化炭素排出量削減を図ることができる。
本発明において、上記縦型容器内で乾燥された後のコークスを、乾燥コークスと称する。
【0010】
本発明の乾燥コークス製造方法では、前記縦型容器内の上部および下部の少なくともいずれかに、上部から下部に向かうにしたがって径寸法が大きくなる円錐状のコーンを設置し、前記コーンの外形に沿ってコークスを移動させることが好ましい。
【0011】
このような本発明では、縦型容器内の上部、及び下部の少なくともいずれかに、上部から下部に向かうにしたがって径寸法が大きくなる円錐状のコーンを設置する。つまり円錐の頂点を縦型容器の上部に向けて設置し、コーンの外形に沿ってコークスを移動させるので、安定した性状のコークスを製造できる。
縦型容器内の上部にコーンを設置した場合、上部から供給されたコークスは、コーンの外形に沿って堆積されるので、縦型容器内でコークスの円周方向の粒度分布をほぼ均一にすることができる。その結果、縦型容器内での空気の流れの偏りが抑制される。
縦型容器内の下部にコーンを設置した場合、縦型容器内でのコークスの荷下がりが安定し、滞留時間も均一にできる。
【0012】
本発明の乾燥コークス製造方法では、前記縦型容器に供給される際の前記湿式消火後のコークスの温度を、前記湿式消火する際に散水する水量で調整することが好ましい。
【0013】
このような本発明では、縦型容器に供給される際の湿式消火後のコークスの温度を、前工程である湿式消火の散水量で調整するので、別途、コークスを加熱する装置が不要であり、安価にコークスを製造できる。
【0014】
本発明の乾燥コークス製造方法では、前記縦型容器には、除塵手段およびロータリシール弁が接続され、前記除塵手段により、前記充填層のコークス間を通過した前記空気を除塵して前記縦型容器の外部へ排出し、前記ロータリシール弁により、前記縦型容器で乾燥されたコークスを前記縦型容器の下部から排出することが好ましい。
【0015】
このような本発明では、コークスの充填層を通過した空気に含まれるコークスの微粉等が、除塵手段で除塵されるとともに、乾燥後のコークスがロータリシール弁を用いて排出されるので、縦型容器周辺の労働環境の悪化を防止できる。
【0016】
本発明の乾燥コークス製造装置は、湿式消火後のコークスを乾燥させる乾燥コークス製造装置であって、前記コークスを収容する筒状の縦型容器と、前記縦型容器の上部へ前記コークスを供給するコークス供給手段と、前記縦型容器の下部から上部に向かって空気を送入して、前記縦型容器の内部に前記コークスが堆積することで形成された充填層のコークス間を通過させる送風手段と、前記縦型容器の下部から乾燥されたコークスを外部へ切り出すコークス排出手段と、前記コークス間を通過させた空気を前記縦型容器の外部へ排出する空気排出手段と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
このような本発明では、コークス供給手段によって縦型容器内に湿式消火後のコークスが供給され、縦型容器内に湿式消火後のコークスで充填層が形成され、送風手段によって充填層のコークス間に空気を通過させるので、当該コークスから気化した水分を、充填層のコークス間を通過する空気とともに縦型容器外部へと排出される。
つまり、本発明の乾燥コークス製造装置によれば、上記乾燥コークス製造方法と同様の作用効果を奏する。
【0018】
本発明の乾燥コークス製造装置では、前記縦型容器に供給される際の前記湿式消火後のコークスの温度を、当該コークスが含む水分を気化させることが可能な400℃以下の温度に調整する温度調整手段を備えていることが好ましい。
【0019】
このような本発明では、縦型容器に供給される際の湿式消火後のコークスの温度が、温度調整手段により当該コークスが含む水分を気化させることが可能な温度に調整されるので、当該コークスが持つ顕熱を利用して縦型容器内での湿式消火後のコークス乾燥を効率的に行うことができる。また、コークス温度が、400℃以下であるので、縦型容器に比較的安価な材質のものを使用できる。
【0020】
本発明の乾燥コークス製造装置では、コークス炉より排出される赤熱コークスを湿式消火する湿式消火装置から前記縦型容器までの前記湿式消火後のコークスを搬送する経路に設けられ、当該コークスの温度を検出する温度検出手段を備え、前記温度調整手段は、前記温度検出手段にて検出した情報に基づいて、前記湿式消火装置での散水条件の調整により前記湿式消火後のコークスの温度を調整することが好ましい。
【0021】
このような本発明では、温度検出手段で検出した情報に基づいて、湿式消火装置での散水条件が調整される。散水条件としては、水量、水温、散水時間等が挙げられる。散水条件によって、縦型容器に供給される際の湿式消火後のコークスの温度が調整される。その結果、当該湿式消火後のコークスが持つ顕熱を利用して縦型容器内での乾燥を効率的に行うことができる。
【0022】
本発明の乾燥コークス製造装置では、コークス炉より排出される赤熱コークスを湿式消火する湿式消火装置から前記縦型容器までの前記湿式消火後のコークスを搬送する経路に設けられ、当該コークスの含水率を検出する含水率検出手段と、前記含水率検出手段にて検出した情報に基づいて、前記送風手段から送入される前記空気の送風条件を調整する送風調整手段と、を備えていることが好ましい。
【0023】
このような本発明では、含水率検出手段で検出した情報に基づいて、送風手段での送風条件が調整される。送風条件としては、空気風量、空気温度、送風時間等が挙げられる。送風条件によって、乾燥コークスの含水率が調整される。その結果、含水率が低く、強度も高い乾燥コークスをより効率的に製造できる。
【0024】
本発明の乾燥コークス製造装置では、前記縦型容器内の上部および下部の少なくともいずれかに、上部から下部に向かうにしたがって径寸法が大きくなる円錐状のコーンが設置されていることが好ましい。
【0025】
このような本発明では、上記乾燥コークス製造方法と同様に円錐状のコーンによる作用効果を奏する。
【0026】
本発明の乾燥コークス製造装置では、前記排出手段に接続され、前記充填層のコークス間を通過した前記空気を除塵する除塵手段と、前記縦型容器に接続され、前記縦型容器で乾燥されたコークスを前記縦型容器の下部から排出するロータリシール弁と、を備えていることが好ましい。
【0027】
このような本発明では、除塵手段が、コークスの充填層を通過した空気に含まれるコークスの微粉等を除塵し、乾燥後のコークスを縦型容器の下部からロータリシール弁を介して排出するので、コークス乾燥装置周辺の労働環境の悪化を防止できる。
【0028】
本発明の乾燥コークス製造装置では、移動可能な台車上に載置されていることが好ましい。
【0029】
このような本発明では、乾燥コークス製造装置が、移動可能な台車上に載置されているので、縦型容器を湿式消火装置毎に設置する必要が無い。その結果、設備投資を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る乾燥コークス製造装置の概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る乾燥コークス製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る乾燥コークス製造装置1は、湿式消火装置2と、コークス供給手段3と、コークス性状検出手段4と、縦型容器としての容器5と、送風手段6と、コークス排出手段7と、空気排出手段8と、除塵手段9と、制御手段10とを備える。乾燥コークス製造装置1は、湿式消火装置2で冷却されたコークスの含水率を低減させるとともに、コークスの温度を低下させる。
なお、図1において、実線の矢印はコークスの流れを示し、破線の矢印は送風手段6から供給される空気の流れを示す。
【0032】
(湿式消火装置)
湿式消火装置2は、コークス炉より排出される赤熱コークスの湿式消火を行う。コークス炉より排出される赤熱コークスは、900℃〜1100℃と高温であるので、排出後に湿式消火と乾式消火の二種類のいずれかによって冷却される。本発明では、湿式消火で赤熱コークスを冷却する。
湿式消火において、赤熱コークスは、図示していない消火車に排出された後、湿式消火装置2に搬送される。湿式消火装置2の塔内に位置する赤熱コークスは、図示していない上部より散水される水によって冷却される(湿式消火)。散水条件は、湿式消火装置2に接続されている制御手段10によって調整される。例えば、散水量が制御手段10によって制御される。
湿式消火されたコークスは、コークス供給手段3へと搬送される。
【0033】
(コークス供給手段)
コークス供給手段3は、湿式消火後のコークスを容器5へ供給する。
コークス供給手段3は、コークワーフ31とコンベア32とを備える。
コークワーフ31は、傾斜面を有する。湿式消火後のコークスは、図示していない消火車によってコークワーフ31の当該傾斜面の上部に移動させる。その後、消火車の側壁を開くか、あるいは底板を傾けることによって、湿式消火後のコークスをコークワーフ31に排出する。排出された湿式消火後のコークスは、その傾斜面に沿って、下方に滑落する。コークワーフ31の下端には、図示しないゲートが設けられ、コークスは、ゲートによって堰き止められる。コークワーフ31からのコークス切り出し時には、ゲートを開放してコンベア32上に湿式消火後のコークスを順次切り出す。
コンベア32は、湿式消火後のコークスを容器5へと搬送する。本実施形態では、湿式消火後のコークスを、当該コークスの顕熱によって当該コークスが含む水分を気化させることが可能な温度で、すなわち高温で、容器5へと供給する。供給する時のコークス温度としては、400℃以下である。そのため、コンベア32は、耐熱性のものであることが好ましい。例えば、耐熱性のバケットを備えたバケットコンベアが好ましい。
【0034】
(コークス性状検出手段)
コークス性状検出手段4は、湿式消火後のコークスをコークス供給手段3で容器5へ搬送する経路の途中に、当該コークスの性状を検出するために設けられている。
コークス性状検出手段4は、本実施形態では、コンベア32の近傍に、温度を検出するための温度検出手段41および含水率検出手段42が設置されている。温度検出手段41としては、例えば、放射温度計が挙げられる。含水率検出手段42としては、例えば、赤外線式水分計が挙げられる。
温度検出手段41が検出した温度に関する情報および含水率検出手段42が検出した含水率に関する情報は、制御手段10へと出力される。温度検出手段41および含水率検出手段42は、有線または無線で制御手段10に接続されている。
【0035】
(容器)
容器5は、湿式消火装置2で冷却された湿式消火後のコークスを収容するとともに乾燥させる。
容器5は、縦長で筒状の形を有する。容器寸法としては、直径5m〜10m、高さ10m程度である。
容器5の上部には、コークス供給口51が形成されている。コークス供給手段3によって搬送されてきた湿式消火後のコークスが、コークス供給口51を通って容器5の内部に収容される。
容器5の下部には、コークス排出口52が形成され、このコークス排出口52にコークス排出手段が接続されている。容器5で乾燥されたコークスが、コークス排出口52から排出される。
コークス供給口51およびコークス排出口52は、いずれも開閉自在に形成されており、容器5内を密閉空間とすることが可能である。
【0036】
容器5には、湿式消火後のコークスを乾燥させる空気を導入するための空気導入口56が形成され、この空気導入口56に送風手段6が配管を介して接続される。本実施形態では、送入される空気が容器5の下方から上方に向かって流れるように、空気導入口56は、容器5の下部側面に形成されている。
また、容器5には、充填層53を通過した空気を外部へ排出するための空気排出口57が形成され、この空気排出口57に除塵手段9が空気排出手段8を介して接続される。本実施形態では、充填層53を通過した空気を容器5の上部から排出できるように、空気排出口57は、容器5の上部側面に形成されている。
【0037】
(充填層)
コークス供給手段3で搬送されてきた湿式消火後のコークスは、コークス供給口51から、容器5の内部へと供給される。容器5は、筒状に形成されているので、その内部には湿式消火後のコークスが堆積して充填層53が形成されている。
【0038】
(コーン)
本実施形態において、容器5内の上部には、円錐状のコーン54が設置され、下部には、円錐状のコーン55が設置されている。以下、上部のコーンを上部コーン54と称し、下部のコーンを下部コーン55と称する。
上部コーン54および下部コーン55は、上部から下部に向かうにしたがって径寸法が大きくなるように形成されている。つまり、上部コーン54および下部コーン55は、円錐の頂点を容器5の上方に向けて設置されている。ここで、円錐状とは、略円錐状でもよく、例えば、底面が円であるものに限定されず、楕円状のものも含みうる。
上部コーン54は、容器5に供給された湿式消火後のコークスの粒度分布および温度を容器5内の円周方向に均一にできる。
下部コーン55は、容器5内でのコークスの荷下がりが安定し、滞留時間も均一にできる。
【0039】
(送風手段)
送風手段6は、容器5内に空気を送入し、湿式消火後のコークスを乾燥する。
送風手段6から供給される空気は、配管内を通り、空気導入口56を介して容器5の下部に送入される。
送入された空気は、容器5の下部から上部に向かいながら、充填層53のコークス間を通過する。その後、空気は、容器5の空気排出口57を通じて外部へ排出される。
空気の送風条件は、送風手段6に接続されている制御手段10によって調整される。送風条件としては、空気風量、空気温度、送風時間等が挙げられる。
本実施形態では、湿式消火後のコークスが自己の顕熱を利用して水分を蒸発させることができる温度で容器5に供給されるので、送風手段6は、従来技術のように熱風炉の排ガスのような高温のガスではなく、常温の空気を利用できる。常温の空気を利用することで、加熱ガスを利用する場合に比べて、イニシャルコストを低減できる。
上述のように容器5に供給される湿式消火後のコークス温度を400℃以下とすることにより、空気を用いて乾燥する場合であっても、容器5内のコークスを発火、及び燃焼させることなく安全かつ安定的に乾燥させることができる。
【0040】
(コークス排出手段)
コークス排出手段7は、容器5から乾燥コークスを排出する。
コークス排出手段7は、フィーダ71と、ロータリシール弁72と、搬出手段73と、を備えている。
フィーダ71は、容器5のコークス排出口52に接続され、容器5から排出された乾燥コークスをロータリシール弁72に供給する。
ロータリシール弁72は、ロータとロータから放射状に取付けられた羽根とを有し、供給された乾燥コークスは、羽根と羽根との間の空間に装入され、ロータの回転により排出口から搬出手段73上に排出される。
本実施形態では、フィーダ71およびロータリシール弁72は、容器5の下部に気密性を保った状態で取り付けられている。
【0041】
(空気排出手段)
空気排出手段8は、充填層53を通過した空気を空気排出口57から排出する。
空気排出手段8は、空気排出口57に接続されるとともに、除塵手段9にも接続されている。そのため、容器5から排出される空気は、空気排出手段8によって除塵手段9へ供給される。
空気排出手段8としては、排気ダクトなどが挙げられる。さらに、この排気ダクトに排気ポンプを接続して空気の排出を促進させる構成としてもよい。
【0042】
(除塵手段)
除塵手段9は、空気排出手段8によって排出された空気を除塵する。
除塵手段9は、空気排出手段8を介して容器5の空気排出口57に接続されている。
除塵手段9による除塵方式としては、例えば、水洗式、遠心分離式、電気捕集式、濾過方式などが挙げられる。より具体的には、除塵手段9としてスクラバーを用いて、充填層53を通過した空気に含まれるコークスの微粉等を洗浄液で吸収しても良いし、除塵手段9内部にフィルターを配置し、当該コークスの微粉等をこのフィルターで除去してもよい。また、空気中の水分を低減させるために除湿剤を配置しておいてもよい。
除塵手段9で除塵され、清浄化された空気は、例えば、図示しないボイラーへと供給して空気の顕熱を回収してもよい。また、除湿剤で乾燥された空気を送風手段6へ送って再利用してもよい。
【0043】
(制御手段)
制御手段10は、湿式消火装置2による散水および送風手段6による送風を制御する。
制御手段10は、温度検出手段41、含水率検出手段42、湿式消火装置2、送風手段6に接続されている。
制御手段10は、温度調整手段11および送風調整手段12を備える
温度調整手段11および送風調整手段12は、予め入力される条件に基づいて、湿式消火装置2における散水条件および送風手段6における送風条件を設定する。この予め入力される条件としては、例えば、容器5へ供給される湿式消火後のコークス温度や含水率、乾燥後のコークス温度や含水率が挙げられる。
【0044】
また、温度調整手段11は、温度検出手段41にて検出された情報を受信して湿式消火装置2における散水条件を調整し、湿式消火装置2へ送信する。例えば、コークス供給手段3で搬送途中のコークス温度が下がり始めている場合、温度調整手段11は、散水量を減らすように散水条件を調整し、調整後の散水条件を湿式消火装置2へと送信する。
また、送風調整手段12は、含水率検出手段42にて検出された情報を受信して送風手段6における送風条件を調整し、送風手段6へ送信する。例えば、コークス供給手段3で搬送途中のコークスの含水率が上昇し始めている場合、送風調整手段12は、送風量を増やすように送風条件を調整し、調整後の送風条件を送風手段6へと送信する。
【0045】
(乾燥コークス製造方法)
本実施形態に係る乾燥コークス製造装置1による乾燥コークス製造方法を説明する。
まず、湿式消火装置2にて冷却された湿式消火後のコークスは、コークワーフ31を経てコンベア32によって搬送された後、容器5へと供給される。この際、容器5のコークス排出口52を閉じておき、未乾燥のままフィーダ71へと排出されないようにする。また、搬送途中に設置された、温度検出手段41および含水率検出手段42にて検出した情報が制御手段10へと送信され、制御手段10にて必要に応じて散水条件および送風条件が調整される。
湿式消火後のコークスを粒度分布が容器5内の円周方向に均一になるように上部コーン54を利用して供給および堆積させ、充填層53を形成する。容器5内へ供給された直後の湿式消火後のコークス温度は、湿式消火装置2での散水条件により、当該コークスの顕熱によって当該コークスが含む水分を気化させることが可能な温度に調整されている。
【0046】
充填層53を形成後、充填層53に対して送風手段6から常温の空気を送入し、充填層53のコークス間に当該空気を通過させる。充填層53の各コークス粒子が含有する水分を、各コークス粒子が持つ顕熱を利用して気化させる。
気化した水分は、送風手段6から送入された空気とともに容器5内を上昇し、除塵手段9へと導かれる。除塵手段9は、充填層53を通過した空気に含まれるコークスの微粉等を除塵する。
容器5で乾燥させた後の乾燥コークスの付着水分率は、0質量%であることが好ましい。(付着水分率[質量%]=付着水分量[g]/コークス質量[g]×100)
【0047】
顕熱を利用して得た乾燥コークスを、コークス排出口52から連続的に排出させることで、充填層53のコークスが荷下がりする。容器5の内部に設置された下部コーン55によって、コークスの荷下がりが安定し、滞留時間も均一にできる。その結果、含水率のばらつきが抑制された乾燥コークスを得ることができる。さらに、充填層53では、乾燥コークス同士の摩擦によってコークス表面の脆弱な組織が剥離および粉化するため、コークス強度が向上する。
なお、湿式消火後のコークスは、コークス排出口52から連続的に排出される乾燥コークスの量と対応させて、容器5のコークス供給口51から連続的に供給することもできる。
【0048】
フィーダ71によってコークス排出口52から排出された乾燥コークスをロータリシール弁72へ供給する。ロータリシール弁72から排出された乾燥コークスは、搬出手段73上に排出され、その後、高炉へと搬送される。
【0049】
(第1実施形態の作用効果)
以上の第1実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
容器5に供給される際の湿式消火後のコークスは、当該コークスの顕熱によって当該コークスが含む水分を気化させることが可能な温度である。そして、充填層53のコークス間に空気を通過させて、当該空気は、空気排出手段8によって容器5外部へ排出される。そのため、コークスが効率的に乾燥され、含水率が低減する。乾燥コークス製造装置1によれば、従来技術の回転ドラムのような大がかりな装置や熱風炉から排ガス供給するための配管が不要であり、設備費を下げることができる。
さらに、容器5内の充填層53では、乾燥コークス同士の摩擦によって表面の脆弱な組織が剥離および粉化するため、コークス強度が向上する。
つまり、乾燥コークス製造装置1によれば、湿式消火装置2で冷却された場合であっても、含水率が低く、強度も高いコークスを安価に製造できる。
その結果、乾式消火設備を使用できない期間においても、乾式消火コークスに近い性状の乾燥コークスを高炉に安価かつ安定的に供給できる。また、含水率が低いので、高炉におけるコークスおよび微粉炭の使用量を低減でき、コスト削減や二酸化炭素排出量削減を図ることができる。
【0050】
充填層53を通過した空気に含まれるコークスの微粉等が、除塵手段9で除塵されるとともに、ロータリシール弁72およびフィーダ71は、容器5の下部に気密性を保った状態で取り付けられ、乾燥コークスがロータリシール弁72を介して排出されるので、乾燥コークス製造装置1周辺の労働環境の悪化を防止できる。
【0051】
乾燥コークス製造装置1では、温度検出手段41および含水率検出手段42を備える。そのため、操業環境、例えば、気温、湿度等の変化に応じて湿式消火後のコークスの性状が経時的に変わってきた場合に、温度調整手段11および送風調整手段12は、温度検出手段41および含水率検出手段42からの情報に基づいて、散水条件および送風条件を調整できる。したがって、容器5が効率的にコークスの乾燥を行えるように湿式消火後のコークスを適切な状態で供給できるようになり、その結果、含水率が低く、強度も高いコークスをより効率的に製造できる。
【0052】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る乾燥コークス製造装置100は、図2に示すように台車110上に載置されている。台車110は、乾燥コークス製造装置100を載置させて移動可能である。台車110上に載置される乾燥コークス製造装置100は、第1実施形態の容器5、送風手段6、コークス排出手段7、空気排出手段8、除塵手段9で構成され、これらは台車110上に適宜フレーム等で支持および固定される。
複数の湿式消火装置2がある場合には、湿式消火を実施する湿式消火装置2の傍まで乾燥コークス製造装置100を移動させ、コークス供給手段3、コークス性状検出手段4、制御手段10を適宜設置して、湿式消火後のコークスの乾燥を行う。
【0053】
(第2実施形態の作用効果)
以上の第2実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
乾燥コークス製造装置100が、移動可能な台車110上に載置されているので、乾燥コークス製造装置100を湿式消火装置毎に設置する必要が無い。その結果、設備投資を削減できる。
【0054】
<参考形態>
本発明の参考形態として、上記実施形態とは異なり、昇温させた空気を縦型容器の内部に送入する形態も挙げられる。例えば、空気にコークス炉排ガスの一部を混入して空気を昇温させ、この空気とコークス炉排ガスとを含む混合ガスを容器5に送入する形態が挙げられる。
すなわち、湿式消火後のコークスを、当該コークスの顕熱によって当該コークスが含む水分を気化させることが可能な400℃以下の温度で、縦型容器の上部から供給し、前記縦型容器の内部に前記コークスを堆積させて充填層を形成しつつ前記縦型容器の下部から外部へ切り出すと共に、空気とコークス炉からの排ガスの一部と混合して昇温させて混合ガスを生成し、前記縦型容器の下部から上部に向かって当該混合ガスを送入して前記充填層の前記コークス間を通過させ、このコークス間を通過させた前記混合ガスを前記縦型容器の外部へ排出することを特徴とする乾燥コークス製造方法が挙げられる。
【0055】
このような乾燥コークス製造方法によれば、容器5内の充填層に高温の混合ガスを挿入できるので、乾燥前のコークスの含水率が大きい場合であっても、より確実に乾燥を行うことができる。例えば、湿式消火装置における散水量が多くなりすぎて湿式消火後のコークス温度が低下し、含水量が増加した場合でも、このような乾燥コークス製造方法によれば、確実にコークスを乾燥できる。
また、特許文献1に記載されたような回転ドラム駆動機器等、大がかりな装置が不要になり、装置をコンパクトにし、コストも低減できる。
【0056】
本参考形態の場合、混合ガスを生成するには、例えば、コークス炉と送風手段6とをつなぐ排ガス管を配設し、コークス炉排ガスを送風手段6まで供給して空気と混合する方法が挙げられる。
また、送風手段6にて送風される混合ガスの送風量、混合ガス温度、送風時間等が、制御手段10で調整されるように構成することもできる。
【0057】
<変形例>
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等をも含むものである。
【0058】
送風手段6から容器5へと送入される空気について、上記実施形態では、常温でよいとしたが、加熱してから容器5へ送入してもよい。
【0059】
上記実施形態では、上部コーン54および下部コーン55を設置する例を示したが、どちらか一方だけを配置してもよい。
【0060】
上記実施形態では、湿式消火後のコークスの温度を、湿式消火する際に散水する水量で調整する場合で説明したがこれに限られない。例えば、散水する水の温度で調整する方法でもよいし、水量と水温との条件を組み合わせて調整してもよい。
また、上記実施形態では、容器5内でのコークスの含水率を低減させるために送風量で調整する場合で説明したがこれに限られない。例えば、送入する空気の温度をより高温に調整してもよいし、送風量と空気温度との条件を組み合わせて調整してもよい。
【0061】
また、空気導入口56は、送入される空気が容器5の下方から上方に向かって流れるように形成されていればよく、例えば、容器5の下面に形成されていてもよい。
また、空気排出口57は、充填層53を通過した空気を容器5の上部から排出できるように形成されていればよく、例えば、容器5の上面に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,100…乾燥コークス製造装置、2…湿式消火装置、3…コークス供給手段、5…容器、6…送風手段、7…コークス排出手段、8…空気排出手段、9…除塵手段、11…温度調整手段、12…送風調整手段、41…温度検出手段、42…含水率検出手段、53…充填層、54,55…コーン、72…ロータリシール弁、110…台車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式消火後のコークスを、当該コークスの顕熱によって当該コークスが含む水分を気化させることが可能な400℃以下の温度で、縦型容器の上部から供給し、
前記縦型容器の内部に前記コークスを堆積させて充填層を形成しつつ前記縦型容器の下部から外部へ切り出すと共に、
前記縦型容器の下部から上部に向かって空気を送入して前記充填層の前記コークス間を通過させ、
このコークス間を通過させた空気を前記縦型容器の外部へ排出する
ことを特徴とする乾燥コークス製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥コークス製造方法において、
前記縦型容器内の上部および下部の少なくともいずれかに、上部から下部に向かうにしたがって径寸法が大きくなる円錐状のコーンを設置し、
前記コーンの外形に沿ってコークスを移動させる
ことを特徴とする乾燥コークス製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乾燥コークス製造方法において、
前記縦型容器に供給される際の前記湿式消火後のコークスの温度を、前記湿式消火する際に散水する水量で調整する
ことを特徴とする乾燥コークス製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の乾燥コークス製造方法において、
前記縦型容器には、除塵手段およびロータリシール弁が接続され、
前記除塵手段により、前記充填層のコークス間を通過した前記空気を除塵して前記縦型容器の外部へ排出し、
前記ロータリシール弁により、前記縦型容器で乾燥されたコークスを前記縦型容器の下部から排出する
ことを特徴とする乾燥コークス製造方法。
【請求項5】
湿式消火後のコークスを乾燥させる乾燥コークス製造装置であって、
前記コークスを収容する縦型容器と、
前記縦型容器の上部へ前記コークスを供給するコークス供給手段と、
前記縦型容器の下部から上部に向かって空気を送入して、前記縦型容器の内部に前記コークスが堆積することで形成された充填層のコークス間を通過させる送風手段と、
前記縦型容器の下部から乾燥されたコークスを外部へ切り出すコークス排出手段と、
前記コークス間を通過させた空気を前記縦型容器の外部へ排出する空気排出手段と、を備えている
ことを特徴とする乾燥コークス製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の乾燥コークス製造装置において、
前記縦型容器に供給される際の前記湿式消火後のコークスの温度を、当該コークスが含む水分を気化させることが可能な400℃以下の温度に調整する温度調整手段を備えている、
ことを特徴とする乾燥コークス製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の乾燥コークス製造装置において、
コークス炉より排出される赤熱コークスを湿式消火する湿式消火装置から前記縦型容器までの前記湿式消火後のコークスを搬送する経路に設けられ、当該コークスの温度を検出する温度検出手段を備え、
前記温度調整手段は、前記温度検出手段にて検出した情報に基づいて、前記湿式消火装置での散水条件の調整により前記湿式消火後のコークスの温度を調整する
ことを特徴とする乾燥コークス製造装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7までのいずれかに記載の乾燥コークス製造装置において、
コークス炉より排出される赤熱コークスを湿式消火する湿式消火装置から前記縦型容器までの前記湿式消火後のコークスを搬送する経路に設けられ、当該コークスの含水率を検出する含水率検出手段と、
前記含水率検出手段にて検出した情報に基づいて、前記送風手段から送入される前記空気の送風条件を調整する送風調整手段と、を備えている
ことを特徴とする乾燥コークス製造装置。
【請求項9】
請求項5から請求項8までのいずれかに記載の乾燥コークス製造装置において、
前記縦型容器内の上部および下部の少なくともいずれかに、上部から下部に向かうにしたがって径寸法が大きくなる円錐状のコーンが設置されている
ことを特徴とする乾燥コークス製造装置。
【請求項10】
請求項5から請求項9までのいずれかに記載の乾燥コークス製造装置において、
前記排出手段に接続され、前記充填層のコークス間を通過した前記空気を除塵する除塵手段と、
前記縦型容器に接続され、前記縦型容器で乾燥されたコークスを前記縦型容器の下部から排出するロータリシール弁と、を備えている
ことを特徴とする乾燥コークス製造装置。
【請求項11】
請求項5から請求項10までのいずれかに記載の乾燥コークス製造装置において、
移動可能な台車上に載置されている
ことを特徴とする乾燥コークス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−241035(P2012−241035A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109478(P2011−109478)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】