説明

乾燥剤

【課題】吸湿性能に優れ、潮解性無機塩の液状化を十分に防止でき、環境への悪影響が少なく、かつ無臭の乾燥剤を提供する。
【解決手段】本発明は、以下の(1)〜(3)に記載の乾燥剤を提供する。
(1)潮解性無機塩とムカゴこんにゃく粉末を含み、潮解性無機塩/ムカゴこんにゃく粉末=6/4〜9/1(重量比)である乾燥剤。
(2)前ムカゴこんにゃく粉末に対し、消石灰および/または生石灰を外割で10%(重量)以下含む前記(1)に記載の乾燥剤。
(3)前記潮解性無機塩が塩化カルシウムである前記(1)または(2)に記載の乾燥剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機器、機械部品、電子部品、衣服、ガラス製品等の保管・梱包輸送中において湿気による錆び、カビ、結露の発生を防ぐための乾燥剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家庭用および産業用の乾燥剤として、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の潮解性無機塩が使用されている。しかし、潮解性無機塩は吸湿後液状化し易く、乾燥剤の容器から漏出して周囲を汚す等取扱上問題があった。そこで、潮解性無機塩の液状化を防止してその漏出を防ぐために、ゲル化剤と併用する方法が提案されている。例えば、特許文献1では、潮解性無機化合物の粉末または粒状物とカルボキシメチルセルロース等の親水性ポリマーの粉末または粒状物とを機械的に混合してなる除湿剤が開示されている。
また、特許文献2では、潮解性塩類とアクリルアミド系重合体との混合物を主剤とする乾燥剤が開示されている。
更に、特許文献3では、こんにゃく芋の粉末と塩化カルシウムからなる除湿剤(請求項4等)が開示されている。
【0003】
しかし、カルボキシメチルセルロースはゲル化速度が遅く、吸湿の初期には保水できない場合があり、包材からの漏水により被乾燥物が汚損する虞がある。また、ポリアクリルアミドが光や熱により分解して生成するアクリルアミドは発ガン性物質として知られており、ポリアクリルアミドによる環境への悪影響が懸念される。また、安全性の高いゲル化剤として澱粉、ペクチン、カラギーナン、こんにゃく芋等の増粘多糖類が知られているが、澱粉、ペクチンおよびカラギーナンではゲル化性能が低く、またこんにゃく芋を含む乾燥剤を梱包やタンス等の密閉した状態で長時間使用した場合、こんにゃく芋特有の臭いが被乾燥物に移るという問題があった。したがって、これらのゲル化剤は、潮解性無機塩の液状化の防止には不十分または不適切であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−28531号公報
【特許文献2】特開平3−30814号公報
【特許文献3】特開2006−326502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、吸湿性能に優れ、潮解性無機塩の液状化を十分に防止でき、環境への悪影響が少なく、かつ無臭の乾燥剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の増粘多糖類を特定量含む乾燥剤は、吸湿性能に優れ、潮解性無機塩の液状化を十分に防止でき、環境への影響も少なく、かつ無臭であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る乾燥剤は以下の通りである。
(1)潮解性無機塩とムカゴこんにゃく粉末を含み、潮解性無機塩/ムカゴこんにゃく粉末=6/4〜9/1(重量比)である乾燥剤。
(2)前ムカゴこんにゃく粉末に対し、消石灰および/または生石灰を外割で10%(重量)以下含む前記(1)に記載の乾燥剤。
(3)前記潮解性無機塩が塩化カルシウムである前記(1)または(2)に記載の乾燥剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、、吸湿性能に優れ、潮解性無機塩の液状化を十分に防止でき、環境への影響が少なく、かつ無臭の乾燥剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明について詳しく説明する。
本発明に用いる潮解性無機塩は、塩化カルシウム、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化マグネシウム、五酸化リン等が挙げられるが、特に塩化カルシウムは安価で無害かつ吸湿性能が高いため好ましい。また、潮解性無機塩は微粉、細粒または顆粒の何れの形態でも用いることができる。
【0009】
本発明に用いるゲル化剤は、ムカゴこんにゃく粉末である。ムカゴこんにゃくは、その繊維成分であるグルコマンナンが架橋しているため大量の水を保持する性質に優れ、かつ無臭であるため、本発明に用いるゲル化剤として好適である。
【0010】
本発明の乾燥剤は、潮解性無機塩とムカゴこんにゃく粉末を含み、潮解性無機塩/ムカゴこんにゃく粉末=6/4〜9/1(重量比)が好ましく、6/4〜8/2がより好ましく、6/4〜7/3が更に好ましい。当該重量比が6/4未満では、乾燥剤に占める潮解性無機塩類の含有量が相対的に少なくなって吸湿量が低下し、当該重量比が9/1を超えるとムカゴこんにゃく粉末の含有量が少なくなって保水能力が不足し液状化の防止に十分でない。
【0011】
吸湿後の乾燥剤のゲル化を促進するために、更に本発明の乾燥剤に、消石灰および/または生石灰を含有させてもよい。この場合、消石灰および/または生石灰の含有量は、ムカゴこんにゃく粉末に対し外割で消石灰および/または生石灰を10%(重量)以下が好ましく、5%以下がより好ましい。消石灰および/または生石灰の含有量が10%を超えると、未溶解の消石灰が残存して、ゲル化を阻害する場合がある。
【0012】
本発明の乾燥剤は、潮解性無機塩類とムカゴこんにゃく粉末、または、潮解性無機塩類、ムカゴこんにゃく粉末並びに消石灰および/または生石灰を機械的に混合して製造する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
1.潮解性無機塩
塩化カルシウム:中国製工業製品
2.ゲル化剤
ムカゴこんにゃく粉末:インドネシア産(Ambico社製、アイレス社輸入)
こんにゃく:こんにゃく清粉(日本こんにゃく協会販売)
3.消石灰
こんにゃく用凝固剤(日本こんにゃく協会販売)
【0014】
[貫入抵抗試験]
30℃の恒温室内で、表1に示す配合に従い各材料を混合した後に、塩化カルシウム100重量部に対し蒸留水を300重量部混合して得た混合液を型枠に入れて、そのまま24時間静置した。次に、生成したゲルの表面から垂直に1cmの深さまでの貫入抵抗値をデジタルフォースゲージ(イマダ社製)を用いて測定した。貫入抵抗値の測定結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

注)消石灰の含有量(重量)は、ムカゴこんにゃくまたはこんにゃく粉末に対する外割りで%表示した。
【0016】
表1から分かるように、塩化カルシウムとゲル化剤を同じ比率で含有するムカゴこんにゃく含有乾燥剤とこんにゃく含有乾燥剤の貫入抵抗値を比べると(例えば、試験例1と試験例13等)、ムカゴこんにゃく含有乾燥剤の貫入抵抗値は、試験例8と試験例20、試験例11と試験例23の2組を除き、他の全ての試験例においてこんにゃく含有乾燥剤の貫入抵抗値よりも高い。従って、ムカゴこんにゃく含有乾燥剤は塩化カルシウムの液状化を十分に防止し得る。
また、吸湿後の乾燥剤のゲル化促進剤である消石灰の添加量は、試験例11から分かるように、ムカゴこんにゃく粉末に対し外割で10%(重量)が上限である。これ以上ゲル化促進剤を添加するとゲル化しない場合がある。
また、表1から分かるように、ムカゴこんにゃく含有乾燥剤は臭気が無いため、梱包やタンス等の密閉した状態で長時間使用した場合でも、臭いが被乾燥物に移るという問題は生じない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮解性無機塩とムカゴこんにゃく粉末を含み、潮解性無機塩/ムカゴこんにゃく粉末=6/4〜9/1(重量比)であることを特徴とする乾燥剤。
【請求項2】
前記ムカゴこんにゃく粉末に対し、消石灰および/または生石灰を外割で10%(重量)以下含むことを特徴とする請求項1に記載の乾燥剤。
【請求項3】
前記潮解性無機塩が塩化カルシウムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乾燥剤。

【公開番号】特開2010−194494(P2010−194494A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44692(P2009−44692)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】