説明

乾燥粉末細胞および細胞培養試薬およびその生産の方法

【課題】栄養(例えば細胞培養)培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の処方に広く関連する。特に、粉末栄養培地、培地補足物および培地部分群の処方、特に細胞培養培地補足物(粉末ウシ胎児血清(FBS)のような粉末血清を含む)、培地部分群の処方、および、細胞のインビトロの培養を促進する必須栄養素を含む細胞培養培地を提供する。
【解決手段】溶媒による再構成の際に、特定のまたは望ましい最終イオン条件および/またはpH条件を生み出すような粉末処方。これらの処方の生産方法を意図し、これらの処方を用いた原核細胞および真核細胞の培養のためのキットおよび方法。滅菌処方を生産する方法、および、乾燥細胞粉末を生産するための方法。本方法によって生産される、細胞、培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の粉末。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
〔発明の詳細な説明〕
発明の背景
発明の技術分野
本発明は、細胞、栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の処方に広く関連する。 特に、本発明は、乾燥粉末栄養培地の処方、特に、細胞のインビトロの培養を促進する全ての必須栄養素を含む、細胞培養培地の処方、および、これらの培地の処方を生産する方法を提供する。本発明はまた、乾燥粉末血清(例えばウシ胎児血清)のような乾燥粉末培地補足物を生産する方法にも関連する。本発明はまた、再水和の際に、特定のイオン条件およびpH条件を、使用前にそのような条件を調整する必要なく作り出すような、乾燥粉末培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の処方にも関連する。本発明はまた、原核細胞(例えば細菌細胞)および真核細胞(例えば真菌(特に酵母)細胞、動物(特に哺乳動物)細胞および植物細胞)のような、乾燥粉末細胞を生産する方法にも関連する。本発明はまた、滅菌乾燥粉末栄養培地、培地補足物(特に乾燥粉末血清)、培地部分群および緩衝液の処方を調製する方法にも関連する。本発明はまた、これらの方法によって調製される、乾燥粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群、緩衝液の処方および細胞にも関連する。本発明はまた、これらの乾燥粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群、および緩衝液の処方を用いた、原核細胞および真核細胞の培養のためのキットおよび方法にも関連する。
【0002】
関連技術分野
細胞培養培地
細胞培養培地は、調節された、人工の、およびインビトロの環境において細胞を維持および増殖させるために必要な栄養素を提供する。細胞培養培地の特性および組成は、特定の細胞の要求によって異なる。重要なパラメータには、重量オスモル濃度、pHおよび栄養素の処方が含まれる。
【0003】
培地の処方は、動物細胞、植物細胞および細菌細胞を含む、多くの細胞タイプを培養するために用いられてきた。培養培地において培養される細胞は、利用可能な栄養素を異化し、モノクローナル抗体、ホルモン、成長因子、ウイルスおよび同様のもののような、有用な生物学的物質を産生する。そのような産物には、治療的な適用があり、組換えDNA技術の出現によって、これらの産物を大量に生産するために細胞を操作することができる。したがって、インビトロにおいて細胞を培養できることは、細胞生理学の研究にとって重要なだけでなく、さもなければ費用効果的な手段で得ることのできない、有用な物質の生産のためにも必要である。
【0004】
細胞培養培地の処方については、文献において十分に報告されており、数多くの培地が商品として入手可能である。細胞培養の初期の研究においては、培地の処方は、血液の化学的組成および物理化学的特性(例えば、重量オスモル濃度、pH等)に基づいており、「生理学的溶液」と呼ばれていた(Ringer, S., J.Physiol., 3:380〜393(1880)(非特許文献1);Waymouth, C.,「培養における細胞および組織(Cells and Tissues in Culture)」, 第1巻, Academic Press, London, pp.99〜142(1965)(非特許文献2);Waymouth, C., In Vitro 6: 109〜127(1970)(非特許文献3))。しかし、哺乳動物の身体の異なる組織における細胞は、酸素/二酸化炭素分圧、ならびに、栄養素、ビタミン、および微量元素の濃度に関して異なる微小環境に曝露される;したがって、異なる細胞タイプについて好結果を得るようなインビトロの培養には、しばしば、異なる培地の処方の使用が必要となる。細胞培養培地の典型的な成分には、そのタイプおよび量が、与えられた細胞タイプもしくは組織タイプの特定の要求によって異なり得る、アミノ酸、有機塩および無機塩、ビタミン、微量金属、糖類、脂質および核酸が含まれる。特に、複合培地組成物においてはしばしば、安定性の問題によって、毒性産物、および/または、要求される栄養素のより低い有効濃度がもたらされ、それによって、培養培地の機能的な寿命が制限される。例えば、グルタミンは、哺乳動物細胞のインビトロの培養において使用される、ほとんど全ての培地の構成要素である。グルタミンは自然に、カルボン酸ピロリジンとアンモニアに分解する。分解速度は、pH条件およびイオン条件によって影響を受ける可能性があるが、細胞培養培地においては、これらの分解産物の形成は、しばしば避けることができないものである(Tritschら, Exp.Cell Res. 28:360〜364(1962)(非特許文献4))。
【0005】
ワン(Wang)ら(In Vitro 14(8):715〜722(1978))(非特許文献5)は、ダルベッコの改良MEM培地(DMEM)において、細胞にとっては致命的な、過酸化水素のような光分解生成物が産生されることを示した。リボフラビンおよびトリプトファンもしくはチロシンは、光への曝露期間における過酸化水素の形成に必要な成分である。ほとんどの哺乳動物の培養培地はリボフラビン、チロシンおよびトリプトファンを含むため、ほとんどの細胞培養培地において毒性の光分解生成物が産生される可能性が高い。
【0006】
これらの問題を回避するため、研究者らは、「必要に応じて」を基本として培地を作製し、培養培地の長期の保存を避ける。商品として入手可能な培地、典型的には乾燥粉末形態における培地は、全く初めから培地を作製すること、即ち各々の栄養素を個別に加えることに代わる、便利な代替としての役割を担うものであり、また、液体培地に関連する安定性の問題を幾らか回避するものである。しかし、製造業者によって提供される注文処方を例外として、商品としては限られた数の培養培地しか利用可能ではない。
【0007】
乾燥粉末培地の処方は、ある培地の有効期間を増大させ得るが、乾燥粉末培地には、特に大規模適用において、関連する多くの問題がある。大容量の培地の生産では、栄養成分の混合および計量に必要な、特殊化された培地キッチンは言うまでもなく、乾燥粉末培地のための保存設備が必要とされる。乾燥粉末培地の腐食性の性質により、混合タンクは定期的に取り替えなければならない。
【0008】
典型的には、細胞培養培地の処方は、ウシ胎児血清(FBS)(10〜20容量パーセント(% v/v))または動物の胚、器官もしくは腺からの抽出物(0.5〜10% v/v)のような、定義付けられていない成分を含む一連の添加剤によって補足される。動物細胞培養培地においては、FBSが最も一般的に適用される補足物であるが、新生仔ウシ、ウマおよびヒトを含む、他の血清供給源もまた定常的に使用される。培養培地の補足のための抽出物を調製するために使用されてきた器官もしくは腺には、顎下腺(Cohen,S.,J.Biol.Chem. 237:1555〜1565(1961)(非特許文献6))、下垂腺(Peehl, D.M.,およびHam, R.G., In Vitro 16:516〜525(1980)(非特許文献7);米国特許第4,673,649号(特許文献1))、視床下部(Maciag,T.ら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 76:5674〜5678(1979)(非特許文献8);Gilchrest, B.A.ら, J.Cell.Physiol. 120:377〜383(1984)(非特許文献9))、網膜(Barretault, D.ら, Differentiation 18:29〜42(1981)(非特許文献10))および脳(Maciag,T.ら, Science 211:1452〜1454(1981)(非特許文献11))が含まれる。これらのタイプの、化学的に定義付けられていない補足物は、細胞培養培地において幾つか有用な機能を果たす(Lambert, K.J.ら, 「動物細胞バイオテクノロジー(Animal Cell Biotechnology)」, 第1巻, Spier, R.E.ら編, Academic Press New York, pp.85〜122(1985)(非特許文献12))。例えば、これらの補足物は、不安定な、もしくは水不溶性の栄養素のための担体もしくはキレート化剤を提供する;毒性部分に結合し、中和する;ホルモンおよび成長因子、プロテアーゼ阻害剤、および必須の、しばしば同定されていないもしくは定義付けられていない、低分子量の栄養素を提供する;および、物理的ストレスおよび損傷から細胞を保護する。したがって、血清もしくは器官/腺抽出物は、動物細胞の培養のための最適な培養培地を提供するために、比較的低コストの補足物として一般的に使用される。
【0009】
培養培地の生産方法
培養培地は典型的に、液体形態もしくは粉末形態において生産される。これらの形態の各々には、特有の利益および不利益がある。
【0010】
例えば、液体培養培地は、(栄養素もしくは他の成分の補足が必要でない限り)すぐに使用できる状態にて提供されるという利益、および、処方が特定の細胞タイプについて最適化されているという利益がある。しかし、液体培地には、細胞培養において最適な性能を発揮するために補足物(例えば、L-グルタミン、血清、抽出物、サイトカイン、脂質等)の添加をしばしば必要とするという不利益がある。その上、液体培地は、成分の多くが熱不安定であるため(したがって例えばオートクレーブの使用が除かれるため)、および、バルク液体は、γ線照射もしくは紫外線照射のような透過滅菌法を特に行うことができないため、しばしば、経済的に滅菌することが困難である;したがって、液体培養培地は、最も頻繁には、時間および費用のかかる工程となり得るろ過滅菌によって滅菌される。さらに、大バッチサイズ(例えば、1000リットルまたはそれ以上)の液体培養培地の生産および保存は実用的ではなく、液体培養培地の成分はしばしば、比較的短い有効期間を有する。
【0011】
これらの不利益を幾らか克服するため、液体培養培地を濃縮形態において処方することができる;これらの培地の成分は、その後、使用以前に、実用濃度にまで希釈することができる。このアプローチによって、標準の培養培地についてのものよりも大きい、および可変のバッチサイズを作製する可能性が提供される、および、濃縮培地の処方またはその成分は、しばしば、より長い有効期間を有する(培養培地濃縮技術が意図される、米国特許第5,474,931号(特許文献2)を参照のこと)。しかし、これらの利点にも関わらず、濃縮液体培地にはなおも、補足物(例えば、FBS、L-グルタミンもしくは器官/腺抽出物)を添加する必要性があるという不利益があり、経済的に滅菌するのが困難な可能性がある。
【0012】
液体培地の代わりとして、粉末培養培地がしばしば使用される。粉末培地は典型的には、例えばボールミリング(本明細書においては、交換可能なように、「フィッツミリング(Fitzmilling)」とも呼ばれる)のような混合過程を経て、培養培地の乾燥成分を混合することによって、または、事前に作製された液体培養培地を凍結乾燥することによって生産される。このアプローチには、一層大きなバッチサイズを生産できる、粉末培地は典型的に、液体培地より長い有効期間を有する、および、処方後の照射(例えば、γ照射もしくは紫外線照射)または酸化エチレンの浸透によって培地を滅菌できるという利益がある。しかし、粉末培地には、明らかな不利益が幾つかある。例えば、粉末培地の成分の幾つかは、凍結乾燥の際に不溶性になり、または、集塊し、再可溶化が困難または不可能となる。その上、粉末培地は典型的に、微細な粉塵粒子を含み、それによって、材料を幾らか損失せずにそれらを再構成することが著しく困難となる、および、GMP/GLP、USPもしくはISO9000の法規制下において稼動する多くのバイオテクノロジー生産設備における使用のためにそれらがさらに非実用的なものとなる。さらに、例えばL-グルタミンおよびFBSのような、培養培地において使用される補足物の多くは、それらの不安定性、もしくは濃縮の際に集塊する傾向によって、もしくはボールミリングのような工程による剪断へのそれらの感受性によって、凍結乾燥もしくはボールミリング以前には培養培地に添加することができない。その上、これらの補足物の多くは、特にFBSのような血清補足物は、凍結乾燥のような工程による粉末補足物の生産を試みた場合、活性の実質的な低下を示す、または完全に不活性に変えられる。最後に、粉末培地は典型的に、炭酸水素塩の緩衝系を含まず、再構成後のpH調整を要する上、μg/ml量またはそれ以下の量で必要とされる成分は、均質性についての問題のために、典型的には、再構成後に加えられる。
【0013】
したがって、現在、可変バルク量において調製できる、および、特に電離放射線照射もしくは紫外線照射により滅菌できるような、迅速に溶解する、栄養的に複合された安定な乾燥粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液が必要とされている。本発明の使用によって、細胞培養培地は、溶媒の添加および培地成分の溶解以外には、付加的な操作の必要がないように製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,673,649号
【特許文献2】米国特許第5,474,931号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Ringer, S., J.Physiol., 3:380〜393(1880)
【非特許文献2】Waymouth, C.,「培養における細胞および組織(Cells and Tissues in Culture)」, 第1巻, Academic Press, London, pp.99〜142(1965)
【非特許文献3】Waymouth, C., In Vitro 6: 109〜127(1970)
【非特許文献4】Tritschら, Exp.Cell Res. 28:360〜364(1962)
【非特許文献5】ワン(Wang)ら(In Vitro 14(8):715〜722(1978))
【非特許文献6】Cohen,S.,J.Biol.Chem. 237:1555〜1565(1961)
【非特許文献7】Peehl, D.M.,およびHam, R.G., In Vitro 16:516〜525(1980)
【非特許文献8】Maciag,T.ら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 76:5674〜5678(1979)
【非特許文献9】Gilchrest, B.A.ら, J.Cell.Physiol. 120:377〜383(1984)
【非特許文献10】Barretault, D.ら, Differentiation 18:29〜42(1981)
【非特許文献11】Maciag,T.ら, Science 211:1452〜1454(1981)
【非特許文献12】Lambert, K.J.ら, 「動物細胞バイオテクノロジー(Animal Cell Biotechnology)」, 第1巻, Spier, R.E.ら編, Academic Press New York, pp.85〜122(1985)
【発明の概要】
【0016】
発明の簡単な概要
本発明は、乾燥粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液を溶媒を用いて凝集させる段階を含む、栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の粉末の生産のための方法を提供する。本発明はまた、それらの乾燥粉末同等物を生産するために十分な条件下において、液体栄養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液をスプレー乾燥する段階を含む、粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の生産のための方法にも関連する。そのような条件は、例えば、粉末培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液が形成されるまで、熱および湿度を調節する段階を含み得る。本発明に従い、本方法は、粉末を包装する以前または以後に達成することができる、栄養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液の粉末の滅菌段階をさらに含み得る。特に好ましい方法においては、滅菌は粉末の包装後に、包装された粉末をγ線照射することによって達成される。
【0017】
本発明に従って生産することができる特に好ましい栄養培地粉末は、細菌培養培地粉末、酵母培養培地粉末、植物培養培地粉末および動物培養培地粉末からなる群より選択される培養培地粉末を含む。
【0018】
本発明の方法によって生産することができる特に好ましい培地補足物は、以下を含む:ウシ血清(例えばウシ胎児、新生仔ウシもしくは通常の仔ウシの血清)、ヒト血清、ウマ血清、ブタ血清、サル血清、類人猿血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、ヒツジ血清および同様のもののような粉末動物血清;サイトカイン((EGF、aFGF、bFGF、KGF、HGF、IGF-1、IGF-2、NGFおよび同様のもののような)成長因子、インターロイキン、コロニー刺激因子およびインターフェロンを含む);(コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよび同様のもののような)接着因子または細胞外マトリックス成分;(リン脂質、コレステロール、ウシコレステロール濃縮物、脂肪酸、スフィンゴ脂質および同様のもののような)脂質;および(ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物、ウシ胚抽出物、鶏肉抽出物、アキレス腱およびその抽出物のような)動物の組織、器官もしくは腺の抽出物および同様のもの。本方法によって生産することができる他の培地補足物は、(血清アルブミン、特にウシまたはヒトの血清アルブミン;免疫グロブリンおよびその断片もしくは複合体;アプロチニン;ヘモグロビン;ヘミンまたはヘマチン;(トリプシン、コラーゲナーゼ、パンクレアチニンまたはディスパーゼのような)酵素;リポタンパク質;フェリチン;等のような)、天然もしくは組換えであり得る様々なタンパク質;ビタミン(ビタミンA、B1、B2、B3、B6、B12、C、D、E、KおよびH(ビオチン)を含むが限定はしない);アミノ酸およびその変異体(L-グルタミンおよびシスチンを含むが、限定はしない)、酵素補因子;(カルシウム、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、ニッケル、カリウム、スズ、亜鉛、セレン、バナジウムおよび同様のもののような)微量元素、および、当業者にはよく知られる、インビトロの細胞の培養において有用な他の成分を含む。
【0019】
本発明はまた、溶媒による培地の再構成の際に、使用前に培地にいかなる補助的栄養成分をも添加する必要なく、インビトロの細胞の培養を支持するような、乾燥粉末完全培養培地の処方をも提供する。本発明に従い、そのような完全培地は、自動的にpHを調整する培地が可能であり、血清、1つもしくは複数の培養培地補足物、L-グルタミン、インスリン、トランスフェリン、1つもしくは複数のホルモン、1つもしくは複数の脂質、1つもしくは複数の成長因子、1つもしくは複数のサイトカイン、1つもしくは複数の神経伝達物質、1つもしくは複数の動物組織、器官もしくは腺の抽出物、1つもしくは複数の酵素、1つもしくは複数のタンパク質、1つもしくは複数の微量元素、1つもしくは複数の細胞外マトリックス成分、1つもしくは複数の抗生物質、1つもしくは複数のウイルス阻害剤、および/または、1つもしくは複数の緩衝液のような、1つもしくは複数の成分を含み得る。
【0020】
本発明によって調製される栄養培地および培地補足物は、血清(好ましくは上記に説明されるもの)、L-グルタミン、インスリン、トランスフェリン、1つもしくは複数の脂質(好ましくは1つもしくは複数のリン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸もしくはコレステロール)、1つもしくは複数のサイトカイン(好ましくは上記に説明されるもの)、1つもしくは複数の神経伝達物質、1つもしくは複数の動物組織、器官もしくは腺抽出物(好ましくは上記に説明されるもの)、1つもしくは複数のタンパク質(好ましくは上記に説明されるもの)または、1つもしくは複数の緩衝液(好ましくは炭酸水素ナトリウム)、もしくはその任意の組み合わせのような部分群をも含み得る。
【0021】
本発明の方法に従った調製に特に適した緩衝液の粉末は、緩衝塩溶液粉末、とりわけ、リン酸緩衝溶液粉末もしくはトリス(Tris)緩衝塩溶液粉末を含む。特に、本発明は、溶媒によって再水和した際に自動的に望ましいpHとなる、「自動pH」緩衝液粉末を調製する方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、栄養培地粉末、培地補足物粉末(上記に説明される補足物の粉末を含む)および緩衝液粉末、特に、これらの方法に従って調製される、自動pH培地粉末、培地補足物粉末および緩衝液粉末をも提供する。
【0023】
本発明はまた、乾燥させる細胞を得る段階、1つもしくは複数の安定剤(例えばトレハロースのような多糖類)と細胞を接触させる段階、細胞を含む水性懸濁液を形成させる段階、および、乾燥粉末の生産に好都合な条件下において細胞懸濁液をスプレー乾燥する段階を含む、原核細胞(例えば細菌細胞)および真核細胞(例えば真菌(特に酵母)細胞、動物(特にヒトを含む哺乳動物)細胞および植物細胞)を含む乾燥細胞を調製する方法にも関連する。本発明はまた、これらの方法によって生産される乾燥細胞粉末にも関連する。
【0024】
本発明は、滅菌粉末培養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を調製する方法にさらに関連する。そのような方法の1つは、上記に説明される粉末培養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を、粉末中に在留する可能性のある細菌、真菌、胞子およびウイルスが複製不可能に変えられるように、γ照射に曝露する段階を含む。好ましいそのような方法においては、粉末培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、総線量約10〜100キログレイ(kGy)、好ましくは総線量約15〜75 kGy、15〜50 kGy、15〜40 kGyもしくは20〜40 kGyにて、より好ましくは、総線量約20〜30 kGyにて、および最も好ましくは、総線量約25 kGyにて、約1時間〜約7日間、好ましくは約1時間〜約5日間、より好ましくは約1時間〜約3日間、約1時間〜約24時間もしくは約1〜5時間、および最も好ましくは約1〜3時間γ照射される。本発明はまた、これらの方法によって生産される滅菌粉末培養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液にも関連する。
【0025】
本発明は、好ましくは血清もしくは水を含む溶媒によって、本発明の栄養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液を再構成する段階、および、細胞の培養に好都合な条件下において、再構成された栄養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液と細胞を接触させる段階を含む、細胞を培養する方法をさらに提供する。本方法に従って、任意の細胞を、特に細菌細胞、酵母細胞、植物細胞もしくは動物細胞を、培養することができる。本方法によって培養するために好ましい動物細胞には、昆虫細胞(最も好ましくはショウジョウバエ細胞、夜蛾科由来の(Spodoptera)細胞およびTrichoplusa細胞)、ネマトーダ細胞(最も好ましくは線虫細胞)および哺乳動物細胞(最も好ましくはCHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞もしくはヒト細胞)が含まれる。本発明の本局面に従って培養される細胞は、正常な細胞、病気の細胞、形質転換細胞、突然変異細胞、体細胞、生殖細胞、幹細胞、前駆細胞もしくは胚細胞が可能であり、そのいずれも、株化された細胞系、もしくは形質転換された細胞系であり得る、または、天然の供給源から得ることができる。
【0026】
本発明はまた、本発明の1つもしくは複数の培養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液の粉末および少なくとも1つの細胞を含む組成物を提供する。そのような組成物は、例えば、自動的にpHが調整される本発明の培養培地粉末、または本発明の乾燥粉末完全培地、および、1つもしくは複数の細菌細胞、1つもしくは複数の植物細胞、1つもしくは複数の酵母細胞、および1つもしくは複数の動物細胞(1つもしくは複数のヒト細胞のような、1つもしくは複数の哺乳動物細胞を含むが限定はしない)のような、1つもしくは複数の細胞を含み得る。本発明の本局面に従った組成物は、溶媒による再構成の際に、組成物中に含有される1つもしくは複数の細胞の活性培養が作製されるような、粉末形態であってもよい。
【0027】
本発明では、細胞の培養における使用のためのキットがさらに意図される。本発明に従ったキットは、本発明の1つもしくは複数の栄養培地粉末、培地補足物粉末、培地部分群粉末もしくは緩衝液粉末、またはその任意の組み合わせを含有する、1つもしくは複数の容器を含み得る。本キットはまた、本発明の乾燥細胞粉末を含む、1つもしくは複数の細胞もしくは細胞タイプをも含有し得る。
【0028】
本発明の他の好ましい態様は、本発明の以下の図面および説明、および請求項を鑑みて、当業者には明らかとなる。
【0029】
発明の詳細な説明
定義
続いての説明においては、細胞培養培地の技術分野において従来的に用いられる多くの用語が広く利用される。本明細書および請求項、および、そのような用語を与えられる範囲について、明らかな、かつ一貫性のある理解を与えるために、以下の定義が提供される。
【0030】
本明細書において使用されるような「粉末」という用語は、水もしくは血清のような溶媒を用いて複合体化もしくは凝集することができる、またはできない、顆粒状の形態で存在する組成物を指す。「乾燥粉末」という用語は、「粉末」という用語と交換可能なように使用することができる。しかし、本明細書において使用されるような「乾燥粉末」という用語は、単に、顆粒化された材料の総体的な状況を指し、他に示されない限り、その材料が、複合体化または凝集された溶媒を完全に含まないと意味することは意図されない。
【0031】
「原料」という用語は、細胞培養培地において細胞の増殖を維持もしくは促進するために使用することができる、化学的起源もしくは生物学的起源のいずれかに由来する、任意の化合物を指す。「成分」「栄養素」および「原料」という用語は、交換可能なように使用することができ、全てそのような化合物を指すように意図される。細胞培養培地において使用される典型的な原料には、アミノ酸、塩類、金属、糖類、脂質、核酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸、タンパク質および同様のものが含まれる。エクスビボの細胞の培養を促進もしくは維持する他の原料は、特定の必要性に従って、当業者によって選択されることが可能である。
【0032】
「サイトカイン」という用語は、増殖、分化、老化、アポトーシス、細胞毒性もしくは抗体分泌のような、細胞における生理学的反応を誘導する化合物を指す。本定義の「サイトカイン」には、成長因子、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロンおよびリンフォカインが含まれる。
【0033】
「細胞培養」または「培養」によっては、例えばインビトロのような人工の環境における、細胞の維持が意図される。しかし、「細胞培養」という用語は総称的な用語であり、個々の原核細胞(例えば細菌細胞)または真核細胞(例えば動物細胞、植物細胞および真菌細胞)の培養のみならず、「組織培養」、「器官培養」、「器官系培養」または「器官型培養」という用語が、「細胞培養」という用語と交換可能なように時折使用され得る、組織、器官、器官系または全生物体の培養をも含むように使用できることは理解される。
【0034】
「培養」によっては、活性状態または休止状態における、細胞の増殖、分化または連続した生存能に好都合な条件下での、人工の環境におけるその細胞の維持が意図される。したがって、「培養」は、「細胞培養」または上記に説明されるその同義語の任意のものと交換可能なように使用することができる。
【0035】
「培養容器」によっては、細胞を培養するための無菌環境を提供することができる、ガラス、プラスチック、または金属の容器が意図される。
【0036】
「細胞培養培地」、「培養培地」(各々の場合複数形は「培地」)および「培地処方」という表現は、細胞の培養および/または増殖を支持する栄養溶液を指す;これらの表現は、交換可能なように使用することができる。
【0037】
「抽出物」によっては、典型的には物質の機械的処理(例えば圧力処理)または化学的処理(例えば蒸留、沈降反応、酵素的作用または高塩濃度処理)のいずれかによって形成される、物質の部分群の濃縮された調製物を含む組成物が意図される。
【0038】
「酵素的切断産物」によっては、特殊化されたタイプの抽出物、即ち、抽出される物質(例えば、植物成分または酵母細胞)を、物質の成分をより単純な形態に(例えば単糖類もしくは二糖類および/またはモノペプチド、ジペプチドもしくはトリペプチドを含む調製物にまで)分解することができるような酵素の、少なくとも1つを用いて処理することによって調製されるものを含む組成物が意図される。本文脈においては、および、本発明のためには、「加水分解産物」という用語は、「酵素的切断産物」という用語と交換可能なように使用することができる。
【0039】
「接触させる」という用語は、細胞が培養される培地を含む培養容器に、培養される細胞を入れることを指す。「接触させる」という用語は、細胞を培地と混合すること、培養容器中の細胞上に培地をピペットで移すこと、および、細胞を培養培地中に沈めることを含む。
【0040】
「組み合わせる」という用語は、細胞培養培地処方における原料を混ぜる、または混合することを指す。
【0041】
「ピロー形成」という用語は、大気中の水分を含むいずれかの水分が容器に浸透し、そこに含まれる粉末を湿らせた場合に起こるイベントを指す。そのような湿潤は、容器内における酸性条件をもたらし得、それにより粉末からのCO2ガスの遊離(「ガス発生」)が引き起こされる。密封容器中において乾燥粉末が「ピロー形成」する場合、ガス発生は破裂させる程度にまで容器の膨脹を引き起こす可能性がある。
【0042】
「少量」という用語は、μg/ml、μg/Lまたはそれ以下の量で培地中に存在する成分を指す。
【0043】
細胞培養培地は、多くの原料から構成され、これらの原料は培養培地によって異なる。「1×処方」は、細胞培養培地において実用濃度にて認められる原料の幾らかまたは全部を含む任意の水溶液を指すよう意図される。「1×処方」は、例えば、細胞培養培地、または、その培地についての任意の原料の部分群を指し得る。1×溶液におけるある原料の濃度は、インビトロにて細胞を維持または培養するために使用される細胞培養処方において認められるその原料の濃度とほぼ同じである。細胞のインビトロの培養のために使用される細胞培養培地は、定義上1×処方である。多くの原料が存在する場合、1×処方中の各原料は、細胞培養培地における原料の濃度とほぼ等しい濃度を有する。例えば、RPMI-1640培養培地は、原料の中でも特に、0.2 g/LのL-アルギニン、0.05 g/LのL-アスパラギン、および0.02 g/LのL-アスパラギン酸を含む。これらのアミノ酸の「1×処方」は、溶液中にほぼ同じ濃度のこれらの原料を含む。したがって、「1×処方」と言う場合、溶液中の各原料が、説明される細胞培養培地において認められるものと同じまたはほぼ同じ濃度であることが意図される。細胞培養培地の1×処方中における原料の濃度は、当業者にはよく知られている。その全体を参照として本明細書に組み入れられる、リス(Allen R. Liss, N.Y.)(1984)の「血清を含まない動物細胞培養のための培地、補足物および基質の調製のための方法(Methods For Preparation of Media, Supplements and Substrate For Serum-Free Animal Cell Culture)」を参照のこと。しかし、特に、より少数の原料が1×処方に含まれる場合は、1×処方における重量オスモル濃度および/またはpHは、培養培地と比べて異なり得る。
【0044】
「10×処方」は、その溶液中の各原料が、細胞培養培地中における同じ原料よりも約10倍濃縮されているような溶液を指すことを意図される。例えば、RPMI-1640培養培地の10×処方は、原料の中でも特に、2.0 g/LのL-アルギニン、0.5 g/LのL-アスパラギン、および0.2 g/LのL-アスパラギン酸を含み得る(上記の1×処方と比較する)。「10×処方」は、多くの付加的な原料を、1×培養培地において認められるものの約10倍の濃度にて含み得る。容易に明らかとなるように、「20×処方」、「25×処方」、「50×処方」および「100×処方」は各々、1×細胞培養培地と比較して、原料を約20、25、50、または100倍の濃度で含む溶液を指す。再度、培地処方と濃縮溶液の重量オスモル濃度およびpHは異なり得る。培養培地濃縮技術が意図される、米国特許第5,474,931号を参照のこと。
【0045】
本発明の「自動pH」粉末(例えば自動pH培地、培地補足物または緩衝液粉末)は、溶媒による再水和の際に、結果として得られる培地、培地補足物または緩衝溶液が望ましいpHとなり、使用前に酸または塩基を用いたpH調整を必要としないように処方された粉末である。例えば、pH 7.4において使用されるように処方された自動pH培養培地は、溶媒による再水和の際にpH 7.4となるため、pHの調整をせずに、即時の使用の準備ができている。本発明のそのような自動pH粉末は、本明細書においては、交換可能なように、「自動的にpHを調整する」粉末とも呼ばれ得る。
【0046】
概観
本発明は、栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液を生産する方法を意図する。本方法によって生産される栄養培地、培地補足物および培地部分群は、そのいずれも体細胞、生殖細胞、正常な細胞、病気の細胞、形質転換細胞、突然変異細胞、幹細胞、前駆細胞または胚細胞であり得るような、細菌細胞、真菌細胞(特に酵母細胞)、植物細胞または動物細胞(特に昆虫細胞、ネマトーダ細胞または哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞)であり得る細胞の増殖を支持するために使用することができる、(血清を含まない、または血清を含む)任意の培地、培地補足物または培地部分群である。好ましい、そのような栄養培地には、限定はしないが、細胞培養培地、最も好ましくは、細菌細胞培養培地、植物細胞培養培地または動物細胞培養培地が含まれる。好ましい培地補足物には、限定はしないが、細菌、動物または植物の細胞、腺、組織または器官の抽出物(特にウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物およびニワトリ胚抽出物);および生物学的液体(特に動物の血清、および最も好ましくはウシ血清(特にウシ胎児血清、新生仔ウシ血清または通常の仔ウシ血清)、ウマ血清、ブタ血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、サル血清、類人猿血清またはヒト血清、いずれも胎児血清であり得る)およびその抽出物(より好ましくは血清アルブミンおよび最も好ましくはウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)のような、定義付けられていない補足物が含まれる。培地補足物はまた、上記にて説明される、定義付けられていない培地補足物の代用品として使用することができる、LipoMax(登録商標)、OptiMAb(登録商標)、Knock-Out(商標)SR(各々、Invitrogen Corporation, Life Technologies Division, Rockville, Marylandから入手可能)および同様のもののような、定義付けられた代用品をも含み得る。そのような補足物はまた、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、接着因子、タンパク質および同様のものを含むが限定はしない、定義付けられた成分をも含み得る。
【0047】
栄養培地はまた、本発明の方法によって調製することができ、本発明の方法に従って使用することができる、様々な部分群に分けることができる(米国特許第5,474,931号を参照のこと)。そのような部分群は、本発明の栄養培地を作製するために組み合わせることができる。
【0048】
本発明の方法により、任意の栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液を、生物学的活性および生化学的活性の著しい低下をさせずに、生産および長期間保存することができる。「生物学的活性および生化学的活性の著しい低下をさせずに」によっては、新しく作製された同じ処方の栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液と比較した場合、栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の生物学的活性または生化学的活性が約30%未満、好ましくは約25%未満、より好ましくは約20%未満、なおもより好ましくは約15%未満、および最も好ましくは約10%未満減少することが意味される。「長期間」によっては、ボールミリングのような従来法によって調製された場合の、栄養培地、補足物、部分群または緩衝液の保存期間より、長い期間が意味される。したがって、本明細書において使用されるように、「長期間」は、約-70℃〜約25℃、約-20℃〜約25℃、約0℃〜約25℃、約4℃〜約25℃、約10℃〜約25℃、または約20℃〜約25℃の温度における保存を含み得る、一定の保存条件下における、約1ヶ月〜36ヶ月間、約2ヶ月〜30ヶ月間、約3ヶ月〜24ヶ月間、約6ヶ月〜24ヶ月間、約9ヶ月〜18ヶ月間、または約4ヶ月〜12ヶ月間を意味する。栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の生物学的活性または生化学的活性を決定するためのアッセイは、当技術分野においてはよく知られており、当業者には熟知されている。
【0049】
培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の処方
任意の栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液は、本発明の方法によって調製することができる。本発明に従って調製することができる、特に好ましい栄養培地、培地補足物および培地部分群は、動物細胞、植物細胞、細菌細胞または酵母細胞の増殖を支持する細胞培養培地、培地補足物および培地部分群を含む。本発明に従って調製することができる、特に好ましい緩衝液は、動物細胞、植物細胞、細菌細胞または酵母細胞に対して等張であるような均衡塩溶液を含む。
【0050】
本発明に従って調製することができる動物細胞培養培地の例には、限定はしないが、DMEM、RPMI-1640、MCDB 131、MCDB 153、MDEM、IMDM、MEM、M199、McCoy's 5A、Williams'培地E、Leibovitz's L-15培地、Grace's昆虫培地、IPL-41昆虫培地、TC-100昆虫培地、Schneider'sショウジョウバエ培地、WolfおよびQuimby's両生類培養培地、ケラチノサイト、内皮細胞、肝細胞、メラノサイト等の培養を支持するよう設計されたもののような細胞特異的血清フリー培地(SFM)、F10栄養素混合物およびF12栄養素混合物が含まれる。本発明による調製に適した他の培地、培地補足物および培地部分群は、商品として(例えばInvitrogen Corporation, Life Technologies Division, Rockville, Maryland、および、Sigma; St.Louis, Missouriから)入手可能である。これらの培地、培地補足物および培地部分群、および多くの他の一般に使用される動物細胞培養培地、培地補足物および培地部分群についての処方は、当技術分野においてよく知られており、例えばGIBCO/BRLカタログおよび参照ガイド(Invitrogen Corporation, Life Technologies Division, Rockville, Maryland)、およびシグマ(Sigma)動物細胞カタログ(Sigma;St.Louis, Missouri)において見出すことができる。
【0051】
本発明に従って調製することができる植物細胞培養培地の例には、限定はしないが、Anderson's植物培養培地、CLC基礎培地、Gamborg's培地、Guillard's海洋植物培養培地、Provasoli's海洋培地、KaoおよびMichayluk's培地、MurashigeおよびSkoog培地、McCown's木本培地、Knudsonラン培地、Lindemannラン培地、ならびに、VacinおよびWent培地が含まれる。商品として入手可能なこれらの培地、および、多くの他の一般に使用される植物細胞培養培地についての処方は、当技術分野においてはよく知られており、例えば、シグマ(Sigma)植物細胞培養カタログ(Sigma;St.Louis, Missouri)において見出すことができる。
【0052】
本発明に従って調製することができる、細菌細胞培養培地の例には、限定はしないが、トリプチカーゼダイズ培地、脳心臓浸出液培地、酵母抽出物培地、ペプトン酵母抽出物培地、ウシ浸出液培地、チオグリコール酸培地、インドール-硝酸塩培地、MR-VP培地、Simmons'クエン酸培地、CTA培地、胆液エスクリン培地、Bordet-Gengou培地、炭酵母抽出物(CYE)培地、マンニトール-塩培地、MacConkey's培地、エオシン-メチレンブルー(EMB)培地、Thayer-Martin培地、サルモネラ-赤痢菌培地、およびウレアーゼ培地が含まれる。商品として入手可能なこれらの培地、および、多くの他の一般に使用される細菌細胞培養培地についての処方は、当技術分野においてはよく知られており、例えばDIFCOマニュアル(DIFCO;Norwood, Massachusetts)、および、臨床微生物学マニュアル(Manual of Clinical Microbiology)(American Society for Microbiology, Washington, DC)において見出すことができる。
【0053】
本発明に従って調製することができる、真菌細胞培養培地、特に酵母細胞培養培地の例には、限定はしないが、Sabouraud培地および酵母形態学培地(YMA)が含まれる。商品として入手可能なこれらの培地、および、多くの他の一般に使用される酵母細胞培養培地についての処方は、当技術分野においてはよく知られており、例えばDIFCOマニュアル(DIFCO;Norwood, Massachusetts)、および、臨床微生物学マニュアル(Manual of Clinical Microbiology)(American Society for Microbiology, Washington, DC)において見出すことができる。
【0054】
当業者には理解されるように、本発明の上記の培地の任意のものは、指示物質または選択物質(例えば、色素、抗生物質、アミノ酸、酵素、基質および同様のもの)、フィルター(例えば炭)、塩類、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤および同様のもののような、1つもしくは複数の付加的な成分をも含み得る。
【0055】
本発明の特に好ましい態様においては、上記に説明される培養培地は、1つもしくは複数の緩衝塩、好ましくは炭酸水素ナトリウムを、培養培地について最適な緩衝能を提供するために十分な濃度にて含み得る。本発明のある局面に従い、炭酸水素ナトリウムのような緩衝塩を、培地の凝集以前、凝集中、または凝集後に、粉末培地に粉末形態において加えることができる。本発明の本局面のある実施例においては、凝集培地の再構成の際に、培養培地が様々な細胞タイプの培養について最適な、または実質的に最適なpHとなるように、(水、血清、または酸(例えば1〜5 M、好ましくは1 Mの濃度におけるHCl)もしくは塩基 (例えば1〜5 M、好ましくは1 Mの濃度におけるNaOH)などのpH調整物質のような)適切な溶媒による凝集以前、凝集中、または凝集後に、炭酸水素ナトリウムを培養培地に加えることができる。例えば、本方法によって調製される細菌細胞培養培地は、再構成の際に、好ましくは、pHがおよそ4〜10、より好ましくはおよそ5〜9、またはおよそ6〜8.5となる;本方法によって調製される真菌(例えば酵母)細胞培養培地は、再構成の際に、好ましくは、pHがおよそ3〜8、より好ましくはおよそ4〜8、またはおよそ4〜7.5となる;本方法によって調製される動物細胞培養培地は、再構成の際に、好ましくは、pHがおよそ6〜8、または7〜8、より好ましくはおよそ7〜7.5、またはおよそ7.2〜7.4となる;および、本方法によって調製される植物細胞培養培地は、再構成の際に、好ましくは、pHがおよそ4〜8、好ましくは、およそ4.5〜7、5〜6もしくは5.5〜6となる。当然のことながら、特定の細胞タイプについて使用される所定の培養培地についての最適pHは、当業者によって、当技術分野にて既知の方法を用いて、経験的に決定されることも可能である。
【0056】
その他の実施例においては、流動層装置を用いて、緩衝液を培地に凝集させることによって、または、緩衝液を乾燥粉末培地もしくは凝集粉末培地上にてスプレー乾燥する(下記に説明されるようにスプレー乾燥装置を用いる)ことによって、1つもしくは複数の緩衝塩、例えば炭酸水素ナトリウムを、粉末栄養培地に直接加えることができる。関連局面においては、流動層装置における、粉末栄養培地へのpH調整物質の凝集によって、粉末栄養培地もしくは凝集栄養培地上へのpH調整物質のスプレー乾燥によって、またはその組み合わせによって、酸(例えばHCl)または塩基(例えばNaOH)のようなpH調整物質を、(炭酸水素ナトリウムのような)1つもしくは複数の緩衝塩を含み得る、粉末栄養培地に加えることができる;このアプローチは、粉末培地の再構成後に引き続くpH調整物質の添加を不要のものとする。したがって、本発明は、溶媒(例えば水または血清)による再構成の際に、液体培地のpHを調整する必要なく、細胞の培養または増殖の支持のために最適なpHとなる、インビトロにおける細胞の培養または増殖において有用な粉末栄養培養培地を提供する。したがって、本明細書において「自動pH」培地または「自動的にpHを調整する」培地と交換可能なように呼ばれるこのタイプの培地は、再構成後に培地に緩衝液を加えて、緩衝液の溶解後に培地のpHを調整するという、時間のかかる、かつ誤りがちな段階を不要とする。例えば、これらの方法に従って調製される哺乳動物細胞培養培地は、再構成の際に、pHが約7.1〜約7.5の間、より好ましくは約7.1〜約7.4の間、および最も好ましくは約7.2〜約7.4または約7.2〜約7.3となることが可能である。
【0057】
本発明のある方法に従い、自動的にpHを調整する培地は、緩衝系またはpH調整物質を全く加えずに、再構成培地を調製することによって作製することができる(本発明の「自動pH培地」)。好ましい、そのような局面においては、自動pH培地は、培地中に存在する緩衝系を調整することによって提供され得る。例えば、当業者には知られるように、培養培地は典型的に緩衝液または緩衝系を含む。培地においてそのような緩衝液のpH対抗形態(pH-opposing form)を調整することによって、本発明は、培地の再構成以前または再構成の際に、および使用前に、適切なpHレベルに到達させるために付加的な緩衝液またはpH調整物質を加える必要性を回避するような、自動pH培地の生産を提供する。そこで、そのような、本発明のある局面においては、粉末培地の再構成の際に望ましいpHを提供するため、ある培地成分のpH対抗形態(特にリン酸または他の緩衝塩)が、培養培地において使用される。(成分のpH対抗形態は、対の一方が、pHを上げるか、または下げるかによって、溶液の望ましいpHに到達させることができる、共役酸塩基対である。ナトリウムHEPES(pHを上げる)とHEPES-HCl(pHを下げる)は、pH対立成分の例である。)例えば、4.5〜7.2の間のpHを有する再構成培地が調製される場合、第一段階は、望ましいpHを与えるために、一塩基リン酸(pHを下げる)対二塩基リン酸(pHを上げる)の正確な平衡を決定することである。典型的には、一塩基リン酸塩および二塩基リン酸塩は、約0.1〜約10mM、約0.2〜約9mM、約0.3〜約8.5mM、約0.4〜約8mM、約0.5〜約7.5mM、約0.6〜約7mM、または好ましくは約0.7〜約7mMの濃度にて使用される。処方において他の緩衝系が使用される場合、溶媒による再構成の際にその処方が望ましい最終pHとなることを確証するため、塩基性(典型的にはナトリウムまたは一塩基)緩衝塩およびそれに対応する酸性(またはpH対立;典型的にはHClもしくは二塩基)緩衝塩の適切な比率または平衡を、同様に決定する。塩基性(例えばナトリウムまたは一塩基)形態が加えられるにせよ、または酸性(例えばHClまたは二塩基)形態が加えられるにせよ、ある一定のpHにおいては、溶液中に存在する実際のリン酸分子種は同じであるため、この調整は緩衝能には影響を与えないことが予測される。適切な緩衝液のpH対抗形態のある適切な比率が一旦決定されれば、再構成の際および使用前に適切なpHレベルを有するような培養培地(即ち、本発明の自動pH培地)を提供するために、これらの成分を培地(例えば乾燥粉末培地)に加えることができる。そのような、自動的にpHを調整する培養培地のある例の調製については、下記の実施例3、6および17において、より詳細を説明される。
【0058】
関連局面においては、本発明は、培地の安定性、可溶性、構造および/または性能に有害に影響を与える培地成分の相互作用を防ぐようにして培養培地を調製する方法を提供する。そのような好ましいある局面においては、本発明の方法は、培養培地中に存在する緩衝成分間の有害な相互作用を防ぐ。例えば、本発明のそのような方法は、使用前の乾燥形態における培地の保存の際の、1つもしくは複数の培地成分からのガスの放出である、培養培地におけるガス発生を防ぐために使用することができる。特に、本発明のこれらの方法は、典型的には培地中にて使用される炭酸水素塩(特に炭酸水素ナトリウム)緩衝液からの二酸化炭素の遊離から生じる、培地からの二酸化炭素のガス発生を防ぐために使用することができる。培地中にて使用されるリン酸緩衝液のタイプに依存して、著しい量の二酸化炭素ガスが炭酸水素ナトリウムのガス発生によって生じ、培地の密封容器を破裂させる程度にまで膨脹させる可能性があり、それにより、完成された生産物の保存安定性が低下するため、炭酸水素ナトリウムは一般に、粉末培地には含まれない。この望ましくない状態を最小限にするため、炭酸水素ナトリウムを含む処方においては、一塩基リン酸ナトリウム(NaH2PO4)の代わりに、二塩基リン酸ナトリウム(Na2HPO4)を使用することができる。しかし、培地の処方において一塩基リン酸ナトリウムが使用される場合は、一塩基リン酸ナトリウムと同一の緩衝能を有する一方、ガス形成をもたらさないゆえピロー形成を引き起こさない、一塩基リン酸カリウム(KH2PO4)を代わりに用いることができる。本発明の本局面に従い、培養培地において使用される(または存在する)一塩基リン酸塩対二塩基リン酸塩(または他の緩衝塩)の比率が決定され、その後、培地中の炭酸水素ナトリウムからの二酸化炭素のガス発生を防ぐために、一塩基リン酸ナトリウム(または他の一塩基緩衝塩)は等モル量の一塩基リン酸カリウムに置き換えられる。一塩基リン酸ナトリウムの緩衝能は一塩基リン酸カリウムのものと同一であるため、この置き換えは培地中に存在する緩衝系に影響を与えないことが予測される。したがって、本発明は、自動pH形態の培養培地をなおも提供する上に、培地の成分間の有害な相互作用、特にガス発生を防ぐような培養培地を提供する。ガス発生を最小限にする、または防ぐように培地の成分が調整されている、自動的にpHを調製するそのような培養培地のある例の調製については、実施例17においてより詳細が説明される。
【0059】
したがって、本明細書において提供される説明から当業者には認識されるように、本発明は、溶媒による培地の再構成の際に、使用前に培地に補助的栄養成分を全く加える必要なく、インビトロにおける細胞の培養を支持する、乾燥粉末完全培養培地の処方をも提供する。ゆえに、本発明の本局面に従った培地は、好ましくは、付加的な栄養成分を、溶媒中に含む必要がないように、または、再構成の際および使用前に、培地に加える必要がないように、インビトロにおける細胞の培養に必要な栄養成分を含むものである。したがって、本発明のそのような完全培地は、水による、または緩衝塩溶液のような栄養素を含まない代替溶媒による再構成の際に、インビトロの細胞の培養における使用に適したものとなる。本発明に従い、そのような完全培地は自動的にpHを調整する培地であり、1つもしくは複数の培養培地補足物(血清を含むが限定はしない)、1つもしくは複数のアミノ酸(L-グルタミンを含むが限定はしない)、インスリン、トランスフェリン、1つもしくは複数のホルモン、1つもしくは複数の脂質、1つもしくは複数の成長因子、1つもしくは複数のサイトカイン、1つもしくは複数の神経伝達物質、1つもしくは複数の動物組織、器官もしくは腺の抽出物、1つもしくは複数の酵素、1つもしくは複数のタンパク質、1つもしくは複数の微量元素、1つもしくは複数の細胞外マトリックス成分、1つもしくは複数の抗生物質、1つもしくは複数のウイルス阻害剤、および/または、1つもしくは複数の緩衝液のような、1つもしくは複数の成分を含み得る。
【0060】
本方法によって粉末として調製することができる、または本発明の培養培地に含むことができる、培地補足物の例には、限定はしないが、(ウシ血清(例えばウシ胎児血清、新生仔ウシ血清および仔ウシ血清)、ヒト血清、ウマ血清、ブタ血清、サル血清、類人猿血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、ヒツジ血清および同様のもののような)動物血清、LipoMAX(登録商標)、OptiMAb(登録商標)、Knock-Out(商標)SR(各々Invitrogen Corporation, Life Technologies Division, Rockville, Marylandから入手可能)のような定義付けられた代用品、ホルモン(コルチコステロイド、エストロゲン、アンドロゲン(例えばテストステロン)のようなステロイドホルモン、およびインスリンのようなペプチドホルモンを含む)、サイトカイン(成長因子(例えばEGF、aFGF、bFGF、HGF、IGF-1、IGF-2、NGFおよび同様のもの)、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロンおよび同様のものを含む)、神経伝達物質、脂質(リン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸、コレステロールおよび同様のものを含む)、接着因子(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンおよび同様のもののような細胞外マトリックス成分を含む)、および(ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物、ウシ胚抽出物、鶏肉抽出物、アキレス腱およびその抽出物のような)動物組織、器官または腺の抽出物および同様のものが含まれる。本方法によって生産することができる、または、本発明の培養培地に含むことができる他の培地補足物には、天然または組換えであり得る、(血清アルブミン、特にウシまたはヒトの血清アルブミン;免疫グロブリンおよびその断片または複合体;アプロチニン;ヘモグロビン;ヘミンまたはヘマチン;(トリプシン、コラーゲナーゼ、パンクレアチニンまたはディスパーゼのような)酵素;リポタンパク質;フェチュイン;フェリチン;等のような)様々なタンパク質;ビタミン;アミノ酸およびその変異体(L-グルタミンおよびシスチンを含むが限定はしない);酵素補因子;多糖類;塩類またはイオン(モリブデン、バナジウム、コバルト、マンガン、セレンおよび同様のものの塩類またはイオンのような微量元素を含む);および、当業者によく知られる、インビトロにおける細胞の培養において有用な、他の補足物および組成物が含まれる。これらの血清および他の培地補足物は、商品として(例えば、Invitrogen Corporation, Life Technologies Division, Rockville, MarylandおよびSigma Cell Culture, St.Louis, Missouriから)入手可能である;または、上記に説明される血清および他の培地補足物は、それらの天然供給源から単離することができる、または、当業者には常用される当技術分野にて既知の方法(Freshney, R.I., 「動物細胞の培養(Culture of Animal Cells)」, New York: Alan R. Liss, Inc., 74〜78(1983)、およびそこに引用される参照を参照のこと;同様に、Harlow, E.,およびLane, D., 「抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory, 116〜120(1988)を参照のこと)によって、組換え技術により生産することができる。
【0061】
最終処方においてμg/ml量、またはそれどころかμg/L量で存在する成分は、典型的には、均質性および/または安定性の問題によって標準粉末培地からは除かれており、代わりに、典型的には濃縮物として再構成1×培地に加えられ、それによって保存コストは増大し、完成した培養培地の生産が、より費用のかかる、かつ効率が悪いものになってしまう。したがって、本発明のある好ましい局面においては、成分の濃縮物を最初に作製し、その後、濃縮物と共に顆粒化される粉末培地分にそれをスプレーすることによって、そのような低レベルの成分を標準粉末培地に加えることができる(その全体を参照として本明細書に組み入れられる、1998年2月13日に出願された、米国特許出願第09/023,790号を参照のこと)。これはその後、ブレンドのためのバルクのものと同じ一般的なサイズ範囲における粒子サイズにまで(例えばフィッツミリングによって)粉砕される。成分を少量にてスプレー添加できるということは、微量元素、ビタミン、ウイルス阻害剤、成長因子、サイトカインおよび同様のものを含む培地の開発においては、特に有益であり得る。中でも特に粉末培地に加えられる成分は、限定はしないが、カルシウム、コリンクロリド、葉酸、イノシトール、リポ酸、リボフラビン、チアミン塩酸塩、亜セレン酸ナトリウムおよびビタミンA、B1、B2、B3、B6、B12、C、D、E、KおよびH(ビオチン)を含む。本発明の培養培地に低量にて加えられる付加的な成分には、例えば、成長因子(例えばEGF、aFGF、bFGF、KGF、HGF、IGF-1、IGF-2、NGF、インスリンおよび同様のもの)、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロン、接着因子、細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよび同様のもの)、(リン脂質、コレステロール、ウシコレステロール濃縮物、脂肪酸、スフィンゴ脂質および同様のもののような)脂質;動物組織、腺または器官の抽出物;ジェネティシン(登録商標)、カルベニシリン、セフォタキシム、抗PPLO、ファンギゾン(登録商標)、ハイグロマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ナイスタチン、ペニシリン、またはストレプトマイシン等のような抗生物質;およびウイルス阻害剤(例えば、当技術分野においてよく知られる、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、および同様のもの)が含まれ得る。
【0062】
本発明に従って調製することができる、および/または、本発明の培養培地に含むことができる緩衝液の例には、限定はしないが、リン酸緩衝溶液(PBS)処方、トリス緩衝塩溶液(TBS)処方、HEPES緩衝塩溶液(HBS)処方、Hanks均衡塩溶液(HBSS)、ダルベッコのPBS(DPBS)、Earle's均衡塩溶液、Puck's塩溶液、MurashigeおよびSkoog植物基礎塩溶液、Keller's海洋植物基礎塩溶液、Provasoli's海洋植物基礎塩溶液、KaoおよびMichayluk's 基礎塩溶液ならびに同様のもののような緩衝塩溶液が含まれる。商品として得られるこれらの緩衝液についての処方、および、多くの他の一般に使用される緩衝液についての処方は、当技術分野においてはよく知られており、例えばGIBCO/BRLカタログおよび参照ガイド(Invitrogen Corporation, Life Technologies Division, Rockville, Maryland)、DIFCOマニュアル(DIFCO;Norwood, Massachusetts)、およびシグマ(Sigma)動物および植物の細胞培養のための細胞培養カタログ(Sigma; St.Louis, Missouri)において見出すことができる。
【0063】
粉末培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の調製
本発明の方法は、上記に説明される粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の調製を提供する。これらの粉末培地、補足物、部分群および緩衝液は、好ましくは、転動造粒を介した、および/または、スプレー乾燥を介した、流動層技術(即ち「凝集」)を用いて調製される。
【0064】
本発明のある局面においては、粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の溶液を凝集させることによりそれらの乾燥粉末形態を生産するために、流動層技術を用いて調製される。流動層技術は、開始材料から変化させられた特性(特に、例えば可溶性)を有する凝集粉末を生産する工程である。本技術の一般的な適用においては、粉末は上方移動空気カラムにおいて浮遊され、同時に、調節された、および、定義付けられた量の液体が粉末流に注入され、湿った状態の粉末が作製される;その後、材料を乾燥させるために穏やかな熱を使用し、凝集粉末が作製される。
【0065】
流動層技術によって微粒子材料を生産する、および/または加工するための装置は、商品として(例えば、Niro, Inc./Aeromatic-Fielder; Columbia, Marylandから)入手可能であり、例えば、特許および特許出願の全ての開示がその全体を参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第3,771,237号;同第4,885,848号;同第5,133,137号;同第5,357,688号および同第5,392,531号において;および国際公開公報第95/13867号において説明されている。そのような装置は、乳漿(米国特許第5,006,204号)、酸味を加えた肉エマルジョン(米国特許第4,511,592号)、プロテアーゼ(米国特許第4,689,297号)および他のタンパク質(DK167090B1)、および炭酸水素ナトリウム(米国特許第5,325,606号)を含む、様々な材料からなる凝集粉末を調製するために使用されてきた。
【0066】
本発明の本局面に従い、バルク凝集栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を調製するために、流動層技術を使用することができる。本発明の本局面の実施においては、乾燥粉末栄養培地、培地補足物、または緩衝液は、流動層装置に入れられ、そこで凝集される。粉末栄養培地(特に粉末細胞培養培地)、粉末培地補足物(特に粉末動物血清)および粉末緩衝液(特に粉末緩衝塩溶液)は、商業的な供給元(例えばInvitrogen Corporation, Life Technologies Division, Rockville, Maryland)から、事前に作製されたものを得られる。または、粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液は、上記に説明される処方に従って個々の成分もしくは一連の成分を混合することによって作製することができる。そのような処方は、血清、L-グルタミン、シスチン、インスリン、トランスフェリン、脂質(特にリン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸およびコレステロール)、サイトカイン(特に成長因子、インターロイキン、コロニー刺激因子およびインターフェロン)、神経伝達物質および緩衝液(特に炭酸水素ナトリウム)のような、それらの不安定性によって、粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の処方中には典型的には存在しないような成分を含み得る。L-グルタミンが処方に加えられる場合、カルシウムまたはマグネシウムのような二価カチオンとの錯体形態にあることが可能である(米国特許第5,474,931号を参照のこと)。その他の実施例においては、2つまたはそれ以上の粉末成分を混合し、その後、凝集し、複合培地、複合培地補足物、複合培地部分群または複合緩衝液を生産することができる。例えば、粉末栄養培地は、約0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、50%またはそれ以上の血清濃度(粉末培地の重量パーセント(w/w)として)にて、FBSのような粉末血清(例えば、下記にて説明されるようにスプレー乾燥によって生産される)と混合することができる;その結果生じる粉末培地-血清混合物をその後凝集させ、再構成溶媒において容易に溶解するため、さらなる補助をせずに使用する用意ができているような、凝集培地-血清複合体を作製することができる。
【0067】
粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液(またはその混合物)は、流動層装置に一旦入れられると、好ましくは大気または窒素のような不活性ガスであるガスを含む上方移動カラム中において浮遊され、1つもしくは複数の粒子フィルターを通過させられる。ほとんどの乾燥粉末非凝集栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は比較的小さな粒子サイズであるため、本発明において使用されるフィルターは、例えば約1〜100メッシュ、好ましくは約2〜50メッシュ、より好ましくは約2.5〜35メッシュ、なおもより好ましくは約3〜20メッシュまたは約3.5〜15メッシュ、および最も好ましくは約4〜6メッシュのフィルターのような、空気を流すが粉末は保持するメッシュスクリーンであるべきである。
【0068】
乾燥粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液(またはその混合物)は、流動層チェンバー内に入れられた後に、定義付けられた、および調節された量の溶媒の、好ましくは流動層装置上のスプレーノズルを用いた粉末への注入によって凝集され、湿気を含む粉末が作製される。本発明において使用するための好ましい溶媒は、栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の処方と適合性である任意の溶媒である。「適合性である」によっては、栄養培地の栄養成分の分解または集塊のような、栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の物理的特性または性能特性における不可逆的な有害変化、または、緩衝液のイオン特性における変化を、その溶媒が誘導しないことが意味される。本発明において使用するために特に好ましい溶媒は、そのいずれもが1つもしくは複数の付加的な成分(例えば塩類、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤等)を含み得る、水(とりわけ蒸留水および/または脱イオン水)、血清(特にウシ血清またはヒト血清およびとりわけウシ胎児血清または仔ウシ血清)、有機溶媒(特にジメチルスルホキシド、アセトン、エタノールおよび同様のもの)である。
【0069】
上記にて言及されるように、本発明のある局面においては、最終生産物中に存在する成分が低濃度であることにより、ボールミリングのような他の方法では生産物に最適に組み入れることができない、1つもしくは複数の原料を、溶媒中に含むことが望ましい、または好都合である可能性がある。そのようなある局面においては、そのような低濃度の成分は、本発明の粉末培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の凝集における溶媒の使用以前に、望ましい濃度にて溶媒に溶解することができる、懸濁することができる、コロイド化することができる、またはさもなくば、導入することができる。本発明の本局面に従って溶媒に好都合に組み入れることができる成分には、限定はしないが、1つもしくは複数の上記に説明される血清、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、接着因子、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、酵素補因子、多糖類、塩類、イオン、緩衝液および同様のものが含まれる。
【0070】
溶媒は、凝集される粉末培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の質量に依存する容量にて乾燥粉末に導入されるべきである。栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液500 g当たりの、溶媒の好ましい容量は、約5〜100 ml、より好ましくは約10〜50 ml、なおもより好ましくは約25〜50 ml、および最も好ましくは約35 mlである。栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液500 g当たりの好ましい溶媒導入速度は、約1〜10 ml/分、好ましくは約2〜8 ml/分、より好ましくは約4〜8 ml/分、および最も好ましくは約6 ml/分の速度である。ある状況においては、凝集中に粉末が固まることを防ぐように、約1分間溶媒を加えた後、約1分間は溶媒を加えないというサイクルを繰り返す(装置のチェンバー内にて粉末を乾燥させる)ことが望ましい可能性がある。
【0071】
元の非凝集粉末のものより大きな粒子サイズによって、および、凝集粉末中に微細な粉塵粒子が存在しないことによって実証されるように、粉末の凝集が一旦完了すると、粉末は装置中において完全に乾燥される。凝集粉末の乾燥のために好ましい装置の温度は、約50〜80℃、より好ましくは約55〜75℃、および最も好ましくは約60〜65℃である;粉末は好ましくは、装置中において、粉末500 g当たり約3〜10分間、および最も好ましくは約5〜7分間乾燥させられる。
【0072】
代替の局面においては、本発明の粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、上記にて説明されるものに類似する凝集産物を生産する転動造粒によって調製することができる。そのような工程においては、乾燥粉末培地、培地補足物、培地部分群および/または緩衝液、またはその組み合わせは、ゲムコ社(Gemco, Middlesex, NJ)およびパターソンケリー社(Patterson Kelley, East Stroudsburg, PA)から商品として入手可能なもののような、転動造粒装置または回転ブレンダーに導入される。溶媒(例えば、水、緩衝塩溶液、または、本明細書において説明される、もしくは当業者によく知られる他の望ましい溶媒)をその後、転動造粒装置において、製造業者の使用説明書に従った調節条件下にて粉末に導入し、バッチをその後、製造業者の使用説明書に従って乾燥させ、凝集粉末について本明細書にて説明されるように、後に使用することができる顆粒化粉末(即ち、溶媒を含む粉末の顆粒)を形成させる。
【0073】
本発明のその他の局面においては、粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を、スプレー乾燥によって調製することができる。本発明の本局面においては、液体形態にある栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を、スプレー乾燥装置に入れる;これらの液体はその後、粉末が形成されるまで、調節された温度および湿度のような、粉末を生産するために適切な条件下において、溶液を装置中のチェンバーにスプレーすることによって、その対応する粉末に変換される。ある状況においては、上記に説明される培地、培地補足物、培地部分群および/または緩衝液の2つまたはそれ以上の複合混合物をスプレー乾燥するのが望ましい、または好都合である可能性がある。例えば、動物血清を望ましい濃度で含む液体栄養培地、または栄養培地成分を望ましい濃度で含む液体動物血清は、本発明の方法に従って混合し、その後、スプレー乾燥粉末として調製することができる。
【0074】
典型的なスプレー乾燥アプローチにおいては、液体栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、装置に吸引され、回転型またはノズル型の噴霧器を用いてスプレー状に噴霧される。その結果生じる噴霧液体スプレーをその後、ガス(例えば窒素、またはより好ましくは空気)と混合し、粉末産物の生産を促進するために十分な条件下において乾燥チェンバーにスプレーする。本発明の好ましい局面においては、これらの条件は、産物の最終的な乾燥が促進されるような、チェンバー内の温度および湿度の電子的調節を含み得る。これらの条件下においては、液体中の溶媒は、調節された仕方で蒸発し、それにより、本発明の栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の自由流動粒子(即ち粉末)が形成される。粉末はその後、乾燥チェンバーから排出され、(流動層の調製について上記に説明されるメッシュスクリーンのような)1つもしくは複数のフィルターを通過させられ、さらなる処理(例えば、包装、滅菌等)のために収集される。ある適用においては、特に熱感受性処方の栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液から粉末を生産する場合、スプレー乾燥装置は、乾燥チェンバー内に組み込まれた流動層装置と組み合わせることができ、それにより、スプレー乾燥粉末に、上記にて説明されるもののような凝集溶媒が導入され、凝集スプレー乾燥粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液が生産される。
【0075】
スプレー乾燥(組み込まれた流動層技術を含む、または含まない)によって液体材料から微粒子材料を生産するための装置は、商品として(例えばNiro, Inc./Aeromatic-Fielder; Columbia, Marylandから)入手可能である、および、例えば、その開示の全体が参照として本明細書に組み入れられる、ニロ社(Niro, Inc./Aeromatic-Fielder)の、「スプレー乾燥(Spray-Drying)」「スプレー乾燥による粉末薬剤(Powdered Pharmaceuticals by Spray Drying)」および「乾燥における新たな選択(Fresh Options in Drying)」技術パンフレットにおいて説明されている。この製造業者に従い、そのような装置は、乳製品、鎮痛薬、抗生物質、ワクチン、ビタミン、イースト、植物性タンパク質、卵、化学薬品、食品香味料および同様のものを含む、様々な材料からなる粉末を調製するために用いられてきた。本発明においては、スプレー乾燥は、血清、特に上記にて説明される血清、とりわけヒト血清および(ウシ胎児血清および仔ウシ血清のような)ウシ血清のような、粉末培地補足物の調製のために特に有用であることが見出された。
【0076】
本発明の本局面の実施においては、液体栄養培地、培地補足物、培地部分群、緩衝液またはpH調整物質を、およそ25g〜100g/分のスプレー速度にて、好ましくはおよそ30g〜90g/分、35g〜85g/分、40g〜80g/分、45g〜75g/分、50g〜75g/分、55g〜70g/分、または60g〜65g/分のスプレー速度にて、およびより好ましくはおよそ65 g/分のスプレー速度にて、噴霧器を通してチェンバーにスプレーすべきである。噴霧器における入口空気温度は、好ましくは約100℃〜300℃、より好ましくは約150℃〜250℃、および最も好ましくは約200℃に設定され、出口温度は約50℃〜100℃、より好ましくは約60℃〜80℃、および最も好ましくは約70℃に設定される。噴霧器における空気の流動は、好ましくは、ノズル圧約1〜5 バール、より好ましくは約2〜3バール、および最も好ましくは約2.0バールにおいて、約50〜100 kg/時間、より好ましくは約75〜90 kg/時間、および最も好ましくは約80.0 kg/時間に設定される。これらの条件および設定は、本発明において、様々な栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液粉末のスプレー乾燥による生産、特に上記に説明される粉末血清の生産に好ましいことが見出された。乾燥に引き続き、スプレー乾燥された粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液は、1つもしくは複数のフィルター、好ましくは流動層技術について上記に説明されるようなものを通して、乾燥チェンバーにおいて収集することができる。
【0077】
本調製に従い、上記に説明される流動層法またはスプレー乾燥法によって調製される本発明の粉末は、開始粉末から、または対応する液体を凍結乾燥することにより調製された粉末培地、補足物、部分群および緩衝液から、物理的特性を変化させられている。例えば、非処理の粉末、または凍結乾燥粉末はしばしば、用いられる場合に著しい粉塵を生み出し、様々な溶媒に不十分にまたはゆっくりと溶解する一方、凝集粉末またはスプレー乾燥粉末は、実質的に粉塵フリーであり、および/または、迅速に溶解する。典型的に、本発明の粉末培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、ボールミリングのような標準技術によって調製されたそれらの粉末同等物よりも、少ない粉塵形成かつより迅速な溶解の双方を示す。実質的に粉塵フリーであるが増強された溶解は示し得ないようなある粉末においては、機械的羽根車を使用するような粉末の迅速な機械的溶媒和によって、または、スプレー溶媒和によるように、最初に溶媒ミストを粉末上に与えることによって、その粉末を迅速に溶解することができる。
【0078】
本発明のその他の局面においては、上記に説明されるスプレー乾燥および凝集アプローチは、凝集スプレー乾燥栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の粉末を生産するために組み合わせることができる。本局面においては、スプレー乾燥により調製された粉末培地、補足物、部分群または緩衝液は、結果的に生じる培地、補足物、部分群または緩衝液の性能特性および物理的特性をさらに改善するために、スプレー乾燥された後に、(上記にて説明されるもののような)溶媒を用いて凝集されることが可能である。例えば、動物血清粉末は、上記に説明されるように液体動物血清をスプレー乾燥することによって調製することができ、このスプレー乾燥血清粉末はその後、乾燥粉末栄養培地(スプレー乾燥によって、またはボールミリングのような標準技術によって調製される)に混合することができる;この混合粉末はその後、上記にて説明されるように凝集することができる。または、スプレー乾燥栄養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液の粉末は、粉末の溶解特性を改善するために、上記のように凝集することができる。このアプローチは、液体動物血清のような、低量の(約1〜10%)固体含有物を含む液体をスプレー乾燥する場合に特に好都合となり得る。当業者には理解されるように、これらのアプローチは、上記に説明される凝集の便益を同様に得られる上に、粉末培地、補足物、部分群または緩衝液に望ましい濃度にて添加するためのストックとして使用される1つもしくは複数の成分(例えば血清または他の培地補足物)の大バッチでの調製を容易にするものである。その上、このアプローチは、ある培地補足物(特に動物血清)については問題となり得る、ロット間の変動性を減少させることができる。
【0079】
本明細書において説明されるように調製される粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液は、その後、下記にて説明されるような滅菌以前または以後に、例えばバイアル、チューブ、瓶、袋、パウチ、箱、紙箱、ドラム缶および同様のもののような容器に包装することができる。本発明のそのようなある局面においては、粉末培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液は、排出される際に密封される(袋またはパウチのような)フレキシブルコンテナに粉末が包装される、当技術分野においては「ブリックパック」として知られるもののような、圧密真空包装形態に包装することができる。そのような包装は、粉末の迅速な溶解を容易にするために、溶媒(例えば水、血清、培地または他の水性もしくは有機の溶媒もしくは溶液)の包装への直接的な導入をさせる、1つもしくは複数の(バルブ、ルアーロック口等のような)注入口を好都合に含み得る。関連局面においては、包装は、その1つもしくは複数の一方が、本発明の乾燥粉末培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の1つまたは複数を含有し得る、および、その1つもしくは複数の他方が、滅菌状態であり得る水性溶媒または有機溶媒の1つまたは複数を含有し得るような、2つまたはそれ以上の近接小室を含み得る。本局面においては、粉末が溶解して滅菌栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液が望ましい濃度にて作製されるよう、粉末と溶媒を混合させるために、その後、理想的には滅菌状態を損なうことなく、小室間の障壁を単に除去するまたは壊すことによって、乾燥粉末を溶解することができる。
【0080】
本発明の包装された培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、好ましくは、上記に言及される温度において長期間保存される、典型的には、およそ30℃未満の温度で、より好ましくはおよそ20℃〜25℃未満の温度で、約1ヶ月〜24ヶ月間、使用時まで保存される。従来的な粉末培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液とは異なり、本方法によって調製される培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の性能特性の維持のためには、より低い温度(例えば0℃〜4℃)における保存の必要はない。当然のことながら、包装が、1つもしくは複数の溶媒を含有する別個の小室をも含むような本発明の局面については、他の保存温度が必要とされる可能性がある;これらの場合においては、最適な保存条件は、当業者には知られるような、溶媒の保存の必要条件によって決定される。
【0081】
滅菌および包装
本発明はまた、本発明の栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を滅菌するための方法、および、ボールミリングまたは凍結乾燥のような標準法により調製される粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を滅菌するための方法をも提供する。栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は通常、大量の溶液にて調製され、熱不安定な成分を頻繁に含むため、照射または熱によって滅菌することができない。したがって、栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は一般に、そのような培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を製造するために必要とされる費用および時間を著しく増大させる、ろ過滅菌のような混入異物除去法によって滅菌される。
【0082】
しかし、本発明の方法に従って(例えば液体培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液のスプレー乾燥により、または、粉末培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液の凝集により)調製される、または、(粉末成分の)ボールミリングもしくは(液体形態の培地、補足物、部分群もしくは緩衝液の)凍結乾燥のような標準法によって調製される、粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、より費用のかからない、およびより効率のよい方法によって滅菌することができる。例えば、(上記にて説明されるように、培地、補足物、部分群または緩衝液の、液体形態をスプレー乾燥もしくは凍結乾燥することによって、または粉末形態を凝集することによって調製される)粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液は、これらの粉末の滅菌に好都合な条件下において照射することができる。好ましくは、この照射はバルクにおいて(即ち、栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の包装後に)達成される、および最も好ましくは、この照射は、粉末培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液中に在留する可能性のある細菌、真菌、胞子またはウイルスが不活性化されるような(即ち、複製を妨げられるような)条件下における、本発明のバルク包装された培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の、γ線源への曝露によって達成される。または、包装以前に、粉末培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液を、γ線源または紫外光源に曝露することによって、照射を達成することができる。または、本発明の培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、(栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の部分群が熱安定性である場合)、例えば閃光低温殺菌法または加圧滅菌によるような熱処理によって滅菌することができる。当業者には理解されるように、滅菌に必要とされる照射または熱の線量、および曝露する時間は、滅菌される材料のバルクに依存し、本明細書において説明されるもののような、当技術分野にて既知の技術を用いて、不適当な実験をせずに、当業者によって容易に決定されることが可能である。
【0083】
本発明の特に好ましい局面においては、バルク粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液は、総線量およそ10〜100 キログレイ(kGy)、好ましくは総線量およそ15〜75 kGy、15〜50 kGy、15〜40 kGyまたは20〜40 kGy、より好ましくは総線量およそ20〜30 kGy、および最も好ましくは総線量およそ25 kGyで、約1時間〜約7日間、より好ましくは約1時間〜約5日間、1時間〜約3日間、約1〜24時間または約1〜5時間、および最も好ましくは約1〜3時間、γ照射源に曝露される(「通常の線量率」)。または、本発明のバルク粉末は、総線量およそ25〜100 kGyを約1〜5日間に渡って照射する、「低線量率」にて滅菌することができる。照射中、粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液は、好ましくは、およそ-70℃〜およそ室温(約20〜25℃)、最も好ましくはおよそ-70℃の温度にて保存される。当然のことながら、照射される材料のバルクおよび/または質量によって照射線量および曝露時間を調整できることは、当業者には理解される;照射または熱処理によるバルク粉末材料の滅菌に必要とされる典型的な最適照射線量、曝露時間および保存温度は、当技術分野においてはよく知られている。
【0084】
滅菌に続き、例えばその培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液を滅菌チューブ、バイアル、瓶、袋、パウチ、箱、紙箱、ドラム缶および同様のもののような容器に包装することによって、または、上記にて説明される真空包装もしくは統合された粉末/溶媒包装において包装することによって、未包装の栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を、無菌条件下にて包装することができる。滅菌包装された培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液はその後、上記に説明されるように長期間保存することができる。
【0085】
栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の使用
したがって、本発明は、再水和溶媒中にて容易に溶解できる、および実質的に粉塵フリーである、粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液を提供する。使用のためには、溶媒和された培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の特定の使用について必要とされる、望ましい栄養素、電解質、イオンおよびpHの条件を作り出すのに十分なある量の溶媒中において、凝集またはスプレー乾燥された培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液を、水和(または「再構成」)させることができる。凍結乾燥またはボールミルされた栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液とは異なり、本培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、迅速に溶液中に入り、粉塵または不溶性の材料を、生み出したとしてもほとんど生み出さないため、本発明においては、この再構成は特に容易なものになっている。
【0086】
本発明の粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の再構成において使用するための好ましい溶媒は、限定はしないが、そのいずれもが1つもしくは複数の付加的な成分(例えば、塩類、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤等)を含み得る、水(とりわけ蒸留水および/または脱イオン水)、血清(特にウシ血清またはヒト血清、および、とりわけウシ胎児血清または仔ウシ血清)、有機溶媒(特にジメチルスホキシド、アセトン、エタノールおよび同様のもの)、またはその任意の組み合わせを含む。例えば、(動物血清のような)粉末培地補足物および緩衝液は、好ましくは、ストック溶液の調製のために、または保存のために、水において、1×最終濃度に、または選択的に、より高い濃度(例えば、2×、2.5×、5×、10×、20×、25×、50×、100×、500×、1000×等)に再構成される。または、粉末培養培地は、例えば水に対する容量パーセント(v/v)で0.5%、1%、2%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、50%、またはそれ以上の濃度で培地補足物が存在する溶液のような、培地補足物(例えばFBSのような血清)水溶液中において再構成することができる。
【0087】
再水和に続き、再構成された培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液は、好ましくはろ過滅菌、または、当技術分野においてよく知られた他の滅菌法により、代替の仕方で滅菌することができるが、好ましくは、粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の再構成は、再構成された培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の滅菌状態を維持するために、無菌条件下にて達成される。それらの再構成に続き、培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、約10℃未満の温度にて、好ましくは約0〜4℃の温度にて使用時まで保存されるべきである。
【0088】
再構成栄養培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液は、当業者によく知られる標準細胞培養技術に従って細胞を培養するために使用することができる。そのような技術においては、細胞の培養に好都合な(調節された温度、湿度、照明および大気条件のような)条件下において、本発明の再構成培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液と、培養される細胞を接触させる。そのような方法による培養を行うことが特に可能な細胞は、限定はしないが、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞を含む。そのような細菌細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞は、例えばアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection, Rockville, Maryland)、インビトロゲン(Invitrogen, La Jolla, California)および当技術分野における当業者にはよく知られるその他のような、既知の培養保存機関から、商品として入手可能である。これらの方法による培養のために好ましい動物細胞には、限定はしないが、そのいずれも体細胞、生殖細胞、正常な細胞、病気の細胞、形質転換細胞、突然変異細胞、幹細胞、前駆細胞または胚細胞であり得るような、および、そのいずれも足場依存性細胞または足場非依存性(即ち「懸濁」)細胞であり得るような、昆虫細胞(最も好ましくはショウジョウバエ細胞、夜蛾科由来の(Spodoptera)細胞およびTrichoplusa細胞)、ネマトーダ細胞(最も好ましくは線虫細胞)および哺乳動物細胞(限定はしないが、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE-1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞、および最も好ましくは、293細胞、PER-C6細胞およびHeLa細胞のようなヒト細胞を含む)が含まれる。
【0089】
細胞
その他の局面においては、本発明は、1つもしくは複数の細胞を含む乾燥細胞粉末組成物を生産するための方法、および、これらの方法によって生産される乾燥細胞粉末に関連する。したがって、これらの方法では、細胞が保存される、および、使用時まで長期間保存されることが可能な、細胞を含む組成物が生産される。このようにして、本発明の方法は、凍結保存設備の必要性、および、細胞にとって毒性となり得る、ある凍結保存剤の使用のような、細胞の保存の従来的な方法(例えば凍結)の欠点の幾つかを克服する。
【0090】
本発明の本局面に従った方法は、1つもしくは複数の段階を含み得る。例えば、そのような方法の1つは、乾燥させる1つもしくは複数の細胞を得る段階、1つもしくは複数の細胞を水溶液中にて懸濁することによって、水性細胞懸濁液を形成する段階、および、乾燥粉末の生産に好都合な条件下にて細胞懸濁液をスプレー乾燥する段階を含み得る。これらの方法は、1つもしくは複数の細胞を、1つもしくは複数の安定化化合物または保存化合物(例えば、限定はしないが、トレハロースを含む多糖類)と接触させる段階をさらに含み得る。細胞懸濁液を形成するために使用される水溶液は、好ましくは、1つもしくは複数の上記に説明される栄養培地、培地補足物、培地部分群、塩類または緩衝液のような、1つもしくは複数の成分、および特に、1つもしくは複数の、自動的にpHを調整する本発明の培養培地、培地部分群、培地補足物または緩衝液を含む。好ましくは、細胞懸濁液を形成するために使用される水溶液は、乾燥される細胞タイプについて最適または実質的に最適な、張度および重量オスモル濃度に調整される。水溶液は、選択的に、1つもしくは複数の多糖類、イオン、界面活性剤、安定化化合物または保存化合物(トレハロースを含む)および同様のもののような、1つもしくは複数の付加的な成分を含み得る。1つもしくは複数の細胞が1つもしくは複数の安定化化合物または保存化合物と接触させられる、本発明の局面においては、安定化化合物または保存化合物は、水性細胞懸濁液を形成するために使用される水溶液に組み入れることができる。または、安定化化合物もしくは保存化合物は、粉末の形成後、乾燥細胞粉末上にスプレーする、もしくは凝集することができる。
【0091】
上記に説明される方法によって乾燥細胞粉末が一旦形成されれば、粉末は選択的に、乾燥粉末の凝集について上記に説明される方法に従い、溶媒によって凝集することができる。限定はしないが、水、栄養培地溶液、栄養培地補足物溶液(血清、特にウシ血清(とりわけウシ胎児血清および仔ウシ血清)およびヒト血清を含む)、緩衝溶液、塩溶液、およびその組み合わせを含む、乾燥される細胞タイプと適合性である任意の溶媒を、乾燥細胞粉末を凝集させるために使用することが可能である。
【0092】
本発明の方法に従って、原核細胞(例えば細菌細胞)および真核細胞(例えば真菌(特に酵母) 細胞、動物(特に、ヒトを含む哺乳動物)細胞および植物細胞)、特に上記に説明されるような細胞、組織、器官、器官系、および生物体を含む、様々な細胞を乾燥することができる。乾燥細胞が一旦作製されれば、それらを無菌的に包装し、好ましくは約0〜30℃、4〜25℃、10〜25℃、または20〜25℃(即ち「室温」)の温度において、使用時まで長期間(例えば数ヶ月〜数年間)保存することができる。生存能のある細胞の培養の調製において使用するために、乾燥細胞粉末は、水性溶媒(例えば滅菌水、緩衝溶液、培地補足物、培養培地、またはその組み合わせ)を用いて、1つもしくは複数の生存能のある細胞を含む細胞懸濁液に、無菌的に再構成することができ、標準的な、当技術分野において既知のプロトコールに従って培養することができる。または、乾燥細胞粉末は、例えばある動物個体の免疫化に使用されるある免疫原の調製のためのように、細胞生存能が不可欠ではないような細胞懸濁液に再構成することができる。そのような場合は、乾燥細胞粉末は、1つもしくは複数の界面活性剤、アジュバント等を含み得る水性溶媒または有機溶媒のような、標準の免疫化プロトコールと適合性の任意の溶媒を用いて再構成することができる。
【0093】
本発明はまた、そのような方法によって調製される組成物をも提供する。そのような組成物は、例えば、自動的にpHを調整する本発明の培養培地粉末、および、1つもしくは複数の細菌細胞、1つもしくは複数の植物細胞、1つもしくは複数の酵母細胞、および1つもしくは複数の動物細胞(限定はしないが、1つもしくは複数のヒト細胞のような、1つもしくは複数の哺乳動物細胞を含む)のような、1つもしくは複数の細胞を含み得る。本発明の本局面に従った組成物は、溶媒を用いた再構成の際に、組成物中に含まれる1つもしくは複数の細胞の活性な培養が作製されるような、粉末形態にあることが可能である。
【0094】
キット
本発明によって提供される、乾燥粉末培地、培地補足物、培地部分群、緩衝液、細胞および細胞を含む組成物は、理想的には、キットの調製に適したものである。そのようなキットは、バイアル、試験管、瓶、包装、パウチ、ドラム缶および同様のもののような、1つもしくは複数の容器を含み得る。容器の各々は、上記にて説明される本発明の栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液、またはその組み合わせの、 1つまたは複数を含み得る。そのような栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液は、水和または脱水され得るが、典型的には、本発明の方法によって生産される脱水調製物となる。そのような調製物は、本発明に従って滅菌状態であり得る。
【0095】
第一の容器は、例えば、本発明の栄養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液、または、上記に説明される本発明の栄養培地、培地補足物、培地部分群もしくは緩衝液のいずれかのような、その任意の成分もしくは部分群を含み得る。本キットの中の付加的な容器中に、付加的な栄養培地、緩衝液、抽出物、補足物、成分または部分群を含むことができる。本キットはまた、1つもしくは複数の付加的な容器に、上記に説明される細菌細胞、酵母細胞、植物細胞または動物細胞のような、1つもしくは複数の細胞をも含み得る。そのような細胞は、凍結乾燥、乾燥、凍結もしくはさもなければ保存することができる、または、本発明の方法に従ってスプレー乾燥することができる。その上、本発明のキットは、例えばL-グルタミン、選択的に、1つもしくは複数の二価カチオンと錯体化されたL-グルタミン(米国特許第5,474,931号を参照のこと)を含有する、1つもしくは複数の付加的な容器をさらに含み得る。本キットは、乾燥粉末栄養培地、培地補足物、培地部分群および/または緩衝液の再構成において使用される溶媒を含有する、1つもしくは複数の付加的な容器をさらに含み得る;そのような溶媒は、水性溶媒(緩衝溶液、塩溶液、栄養培地溶液、栄養培地補足物溶液(ウシ血清(特にウシ胎児血清または仔ウシ血清)またはヒト血清のような血清を含む)、またはその組み合わせを含む)または有機溶媒であることが可能である。不適合性成分の混合を避けるために、本発明の栄養培地、緩衝液、抽出物、補足物、成分または部分群との混合について適合性ではない他の原料を、1つもしくは複数の付加的な容器に含むことができる。
【0096】
栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液を作製するための所定のキットにおいて含まれる容器の数およびタイプは、調製される培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液のタイプによって異なり得る。典型的には、キットは、特定の培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液を作製するために必要な成分または補足物を含有するそれぞれの容器を含むものである。しかし、異なる培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の処方を作製するために、異なる量の様々な成分、補足物、部分群、緩衝液、溶媒等を混合することによって、異なる培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液を調製できるように、付加的な容器を本発明のキットに含むことができる。
【0097】
利益
意外なことに、本発明は、栄養培地、培地補足物、培地部分群、緩衝液および細胞の、削減されたコストでの調製を提供する。コスト削減は、幾つかの要因によるものである。例えば、本発明の培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の処方は、1×処方に必要な大きな撹拌タンクが必要とされないため、はるかに小さな生産設備を用いて生産することができる。その上、本発明の培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の処方は、在庫品、保存コストおよび労働コストを削減する「丁度間に合う(just in time)」生産技術を用いて、必要性に基づいて調製することができる。培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の処方の調製および輸送に必要とされる時間は、6〜8週間から1日にまでも削減され得る。自動的にpHを調整する本発明の培地は、コストおよび時間の著しい節約をも提供し、および、従来的な乾燥粉末培地またはバルク液体培地を用いての標準法に従ったpH調整工程の間に生じ得る、再構成培地に異物混入が導入される傾向を減少させる。本発明はまた、一般的に使用される他の技術に従って生産される複数のバッチについて行われる複数回の品質管理試験と比較して、ただ1回の品質管理試験のみを必要とするような、非常に大量の1×培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液(例えば100,000リットルまたはそれ以上)を調製するために使用できるような、栄養培地、培地補足物、培地部分群または緩衝液の成分の調製を行わせるものである。重要なのは、個々の成分がより安定であるため、本発明の培地、培地補足物、培地部分群および緩衝液の処方は、バッチ間においてより一貫性があることである。本発明の乾燥細胞粉末はまた、実験室にて典型的に入手可能なもの以外に特殊化した設備の必要はほとんどなく、細胞を低容量にて長期間保存することができるため、技術的におよび経済的に有利である。その上、本方法によって調製される細胞は、細胞にとっては毒性であり得る凍結保存剤に曝露されずに保存される。
【0098】
関連技術分野における当業者には、本明細書において説明される方法および適用への他の適切な改変および適応は明瞭であり、本発明の範囲またはその任意の態様から逸脱することなく行うことができることは容易に明らかとなる。本発明については今や詳細に説明されており、それによって例証するためにのみ含まれ、本発明を限定することは意図されない、以下の実施例を参照することにより、本発明はより明らかに理解される。
【0099】
実施例1:典型的な乾燥粉末培地(DPM)の凝集
1.ベンチトップ実験用流動層装置(Stera-1;Niro, Inc./Aeromatic-Fielder; Columbia, Maryland)を用い:100g〜500gのDPMをチェンバー内に入れる。装置に配置し、レバーを用いてユニットを密封する。
2.DPMを流動化(浮揚)させるために空気流動を開始させる。従来的なDPMは比較的細かい粒子サイズのものであるため、4〜6に設定することが必要となる。上部フィルターを通過する、微細なDPM粒子を捕捉するために、真空装置をオンにする。流動化された粉末が、下部のメッシュスクリーンおよび上部のフィルターに関してチェンバー内のおよそ中央にあることを確認する。
3.最初に圧縮空気ラインを差し込み、その後、水源に連結されたポンプを始動させることにより、注入装置(スプレーユニット)を始動させる。目標は1分間当たり〜6mlの水を許容する(RPMに基づき、与えられたいかなるポンプについても、流速を知らなければならない、および、管の直径を知らなければならない)ものである。DPMの固まりを防ぐため、交互に、水を〜1分間加えた後〜1分間停止し、チェンバー内にて乾燥を起こさせる。
4.作動中にフィルターがDPMで被覆され、逆噴出によって粉末が移動させられなくなった場合、全てのフィルターがきれいに吹き払われるまで、2〜3の設定にまでファン速度を落とす。その後、作動ファンの速度を以前のレベルにまで上げる。
5.各500 gのDPMに〜35 mlの水が加えられた時点で、凝集は完了する。この容量は、DPMの処方によって異なる。作動終了に向かって、比較的大きな凝集顆粒の下向きの流動が、チェンバー(底部)において認められるようになる。明らかにより大きな粒子が認められること、および微細な粉塵がないことによって、工程が完了したことが示される。
6.凝集DPMを5〜7分間完全に乾燥させる。
7.作動終了時に、フィルターを4回吹き払う。
8.ユニットをオフにし、水管の接続を断ち、気密容器に凝集DPMを収集する。
【0100】
これらのアプローチは、ある工程規模または生産規模の流動層装置を使用する場合には調整されるべきである。例えば、MP-1(Niro, Inc./Aeromatic-Fielder; Columbia, Maryland)装置を用いた場合、以下のプロトコールが十分な結果を生み出した:
1.ユニットを密封する(ガスケットを膨脹させる)。
2.予熱のためにファンを始動させる。
3.入口空気温度が設定点と等しくなった時点でファンを停止させる。
4.ガスケットを収縮させ、材料を充填し、ガスケットを膨脹させる。
第5〜8段階は全て、1分間以内に達成されるべきである:
5.バッチを始動させる。
6.ファンを始動させ、フィルター掃除をオンにする。
7.ノズル噴霧空気圧%をアウトプットに設定する(真空についてノズルを確認する)。
8.液体供給ラインを連結する。
9.スクリーン上およびポンプ位置にてポンプを始動させる。
10.バッチ時間を設定し直す。
11.全ての液体を設定速度(26 g/分)にてスプレーする。2 kgの粉末に対し〜250 mlの水を用いる。
12.全ての液体が加えられた時点で、ポンプをポンプ位置およびスクリーン上にて停止させる。
13.乾燥値にまで(例えば100から60にまで)空気流動を減少させる。
14.産物が望ましい温度(〜40℃)に達した時点で、「初期設定」スクリーンに戻り、現在の「バッチ時間」より2〜3分大きな値について「バッチ持続」と設定する。
15.バッチを停止させる。
16.ガスケットを収縮させる。
【0101】
(ベンチ規模、工程規模、および生産規模の装置についての)典型的な機器設定:
乾燥温度:60〜65℃
出口空気温度:〜33℃
噴出圧:5 バール
噴霧圧:1.5〜2.0 バール
逆噴出ドウェル:スプレー後1、スプレー中2
ファン容量:作動開始時5、凝集が明らかとなった後は6
Magnahelics:フィルター抵抗150〜250、多孔調節板の抵抗〜50、空気容量:50未満
【0102】
実施例2:DPMの統合された部分としての炭酸水素ナトリウムの添加
上記にて言及されるように、粉末培地の保存の際に遭遇する、潜在的なガス発生および緩衝能についての困難な問題によって、炭酸水素ナトリウムは典型的には、ボールミリングまたは凍結乾燥による製造中にはDPMに加えられない。したがって、この標準的な生産工程では、培地の再構成の際に、炭酸水素ナトリウムの添加、およびpH調整を必要とする。しかし、本方法を用いると、製造中に、粉末培地に炭酸水素ナトリウム(または任意の緩衝塩)を直接加えることにより、これらの付加的な段階を除くことができる。
【0103】
炭酸水素ナトリウム(または任意の緩衝塩)をDPM中に含むには、2つの方法がある:(a)注入装置を介して含む、および、(b)DPMの部分として含む。
【0104】
(a)注入装置
炭酸水素ナトリウムの可溶性、および、典型的な哺乳動物細胞培養培地に加えることを一般に必要とされる量によって、相当に大容量の液体(上記に言及される35 mlの水より著しく多い)を粉末に注入することが必要となる。これはなおも可能であり、実際、例えば血清についての場合のように、DPMに加えるために比較的大容量の液体を同様に必要とするその他の成分を加える場合には好ましい可能性がある。この場合においては、DPMが装置内にて固まりにならないことを確実にするために、多数回連続的に液体を加え、乾燥させるなどすることに注意を払わねばならない。1分ごとに6 mlを〜1分間使用し、その後、さらに2分間乾燥させるのがほぼ適当である。
【0105】
加える液体の量は、以下のように決定される:炭酸水素ナトリウムを水に溶解し、75 g/Lに調製する。例:チェンバー内の250 gのDPMを凝集させる。1 Lの1×液体培地について、10.0 gのDPMが必要だと仮定する。したがって、250 gは25 Lの1×液体培地に相当する。液体の各リットルについて、(例えば)炭酸水素ナトリウム2 gが必要と仮定する。これは、50 gの炭酸水素塩が必要であることを意味する。ここで、炭酸水素塩溶液は75 g/Lであるため、250 gのDPMには、0.67 Lの炭酸水素塩溶液を加えなければならない。
【0106】
炭酸水素ナトリウム溶液は、炭酸水素ナトリウム溶液のpHが〜8.00であり、培地成分を分解し得るため、サイクル間のより長い乾燥時間が必要とされることを除いては、上記の「典型的なDPMの凝集」のための工程と同様に加えられる。炭酸水素塩溶液をあまりに急速に加えることによって、サイクル間の炭酸水素塩粉末の完全な乾燥に十分な時間を与えずに、粉末を「浸った状態」に決してしないことが重要である。また、水分は二酸化炭素ガスの遊離をもたらし、その結果、緩衝能の低下が生じる、および、粉末がフォイルパケット中にある場合は、「ピロー」形成が生じることから、最終的に可能な限り低い含水率をもたせることが重要であるため、液体のより長い乾燥時間が必要となる。
【0107】
(b)DPMの部分として
炭酸水素ナトリウムは、流動層処理以前に、他の培地成分についてのものと同様の仕方でDPMに粉砕し込むことができる。しかし、粉砕工程においては、炭酸水素塩は、最終成分として加えるべきである。他の培地成分の全ては、通常通りに粉砕し、その後粉砕機を停止し、最後に炭酸水素塩を加え、さらに粉砕して適切なサイズの粒子に至らせるべきである。全ての粉砕後工程(容器に入れること等)は、操作上可能な限り低く(〜20%から40%)設定された、湿度調節環境において行われることが重要である。流動層処理はその後、可能な限り粉砕直後に行われるべきである。(同じ日に処理されない場合、DPMは二重に包装し、湿度吸収剤を含む密封容器内に入れなければならない。)
【0108】
流動層工程自体は、水注入後の乾燥時間(〜6 ml/分)を再度延長すべき点を除いては、上記にて与えられる実施例と同様に(DPM500 g当たり35 mlを使用して)行われる: 1分間水を注入、および2分間乾燥、というサイクル。フェノールレッドの存在により、DPMの色は濃い赤〜薄い紫となることが注目される。DPMは本質的に水分を含まないため、これにより分解状況は示されない。それが、流動層処理が極めて重要である理由である。
【0109】
実施例3:緩衝塩(例えば炭酸水素ナトリウム)を含み、および、使用者がたやすく、再構成(1×)培地のpHが、自動的に望ましいpHとなるように処方される、DPM−酸または塩基スプレー技術
上記に言及されるように、商品として入手可能な全ての哺乳動物細胞培養粉末培地は、1×液体を調製し、その後、溶液が適切なpHとなるようにpHを調整する場合には、1つもしくは複数の緩衝塩(例えば炭酸水素ナトリウム)の添加を必要とする。しかし、本方法は、(上記の実施例2において説明されるように)炭酸水素ナトリウムの添加、および、pH調整の必要性の双方を不要のものとするために、使用することができる。本発明の本局面においては、1つもしくは複数の緩衝塩を含む乾燥粉末培地に、酸または塩基(必要に応じる)を導入するために、流動層技術が使用される。本発明の本局面に従い、最終的に再構成された細胞培養培地において望ましいpHおよび緩衝能に応じて、任意の緩衝塩またはその組み合わせ、および任意の酸または塩基を使用することができる。
【0110】
DPMに炭酸水素ナトリウムが粉末として直接加えられる場合は、末端使用者は、単に水を加え、混合するだけで、既に炭酸水素塩を含む(上記を参照のこと)、適切なpHの溶液を得ることができる。最初に、どれほどのpH調整が必要とされるのかを決定する必要がある。(1)1 Lの水をビーカーに入れる。液体にDPMを加え、混合する。(リットル当たりに添加する量は、その粉末についての使用説明書により与えられる。例えば、10 g/L、13 g/L)。この場合、リットル当たりにどれほどを加えるべきかを決定するために、炭酸水素ナトリウムの重量も考慮に入れねばならない。(2)粉末が溶解された後、溶液を望ましいpHに調整するために、5N HClを加える。その量を記録する。(3)この数を1N HClの量に変換する。凝集される全部の粉末を調整するために、どれほどの1N HClが必要とされるかを計算する。(例:1 L の1×培地Aを未調整のpH 7.9からpH 7.2に調整するためには、5 ml の1N HClが必要とされる。)その1 Lの1×培地は、例えば、DPM 13.0 gに相当する。したがって、DPM各13.0 gについて、5 mlの1N HClが必要とされる。250 gのDPMのpHを調整したい場合、自動的にpH調整させるために、250÷13.0 = 19.2×5 mlまたは96 mlの1N HClを粉末に加えることが必要とされる。
【0111】
ここで、この1N HClをDPMに加えなければならない。その最良の方法は、注入装置を使用し、水の代わりに1N HClを加えるものである。一般には、以下を除いて、プロトコールは上記と同様である:(1)1N HClは、炭酸水素ナトリウムを含む培地にゆっくりと加えなければならない。あまりに急速に加えた場合、二酸化炭素が放出され、その結果、最適以下の緩衝能が生じる可能性がある。一般に必要とされるような1N HClの容量のために、1分間オン、2分間オフするようなサイクルが数回必要となる。DPMが液体過程にあるような特性を有すが、実際には乾燥粉末であるような動的系が存在するように、乾燥粉末状態が各サイクルの最後に得られなければならない。(驚くべきことに、系内の連続的な蒸発によって、粉末は常に本質的に乾燥したままであるにも関わらず、HClが粉末に加えられると、バルクの色は濃い赤紫から薄い黄橙色に変化する。)本質的に中性のpHを生じるように、HClの総量は計算されているため、流動層が適切に調整される限り、粉末は実際には「酸」条件に決して曝露されない(上記;操作中のチェンバー内の粉末粒子の位置を参照のこと)。粉末の全てが系を通って移動する(即ち、連続的に引き上げられ、凝集され、固結される)こと、およびチェンバー内に「デッド」ゾーンがないことを確認することが重要である。
【0112】
実施後に粉末が一旦収集されれば、適切な「乾燥した」包装および場所に保たれる限り、いつでもそれを水に加え、再構成することができる。pHの調整は必要ない。したがって、本発明は、乾燥粉末培地を再構成することにより作製される液体培地のpHがpH調整を必要としない、自動的にpHを調整する乾燥粉末培地を提供する。
【0113】
実施例4:DPM自体の中への、血清、アルブミン、Hy-Soy等のような大きな分子量の補足物の包含
これまで、血清を含む乾燥化粉末培地は、商品として入手可能ではなかった。(流動層技術およびスプレー乾燥技術を介して)本方法を用い、本発明者らは、機能性(細胞培養)が維持されるような仕方で粉末に血清を加えることに成功した。
【0114】
流動層装置の注入装置では、血清、および濃縮アルブミンを用いてミストを形成することができる。本発明者らは、このようにしてDPMに加えられ、乾燥された血清が機能的かどうか調べることを試みた。
【0115】
血清を加えるための手順:(1)凝集される標準DPMの重量を決定する。(2)これから、特定の粉末についてのg/Lに基づき、粉末のg量から作製される1×培地の容量を計算する。(3)与えられたパーセンテージレベルの補足(例えば、10 g/Lにおいて使用される100 gの粉末は、粉末10L当量である)において必要とされる血清の容量を計算する。5%の血清の補足においては、注入装置によって500 mlの血清を加えることが必要とされる。
【0116】
血清を加えるためのプロトコール:血清およびアルブミンは非常に粘性である。小滴サイズおよびパターンについて、ノズルのスプレーパターンを調べなければならない。粉末に加えられる溶液においてサンプル管を用い、厚紙または他の背景に対してスプレーをテストする。均一性および微小な小滴サイズについて確認する。「ミスト」でない場合は、噴霧圧を0.5バール増加し、再度テストする。十分な圧力が微細なミストパターンをもたらすまで、これを行う。
【0117】
細胞培養適用において使用するため、1×培地1 L当たりに用いられる血清-DPMの重量/mlを知ることが必要である。これを行うため、乾燥中血清を保持するバイアルまたは試験管の重さを正確に量る。一定の(既知の)量の血清を各バイアル中に入れる。その後、バイアルをSpeed Vacまたは凍結乾燥機中に置く。乾燥状態になるまで水分を除去する。その後、今度は凍結乾燥血清を含むバイアルの重さを再度量る。血清の重量を計算し、もとの容量のml当たりの重量として表す。そこで、L当たりに使用する血清を含む凝集DPMの重量を、標準DPM「使用」重量に与えられたレベルの血清重量を加えたものとする。
【0118】
例えば、培地A(DPM)が10 g/lにて使用されると仮定する。血清の補足は5% v/vとする。これは、標準DPMの重量に加え、培地1L当たりに加える血清の重量が5% = 50mlと等しくなることを意味する。血清粉末重量が0.06 g/mlであると仮定する。それなら、粉末血清の重量 =50×0.06 g/mL = 3 gである。したがって、1Lの水に加えられる、血清を含むDPMの重量は、血清粉末の重量(3 g)にリットル当たりの標準DPM(10 g)の重量を加えた重量 = 13 g/Lである。
【0119】
実施例5:DPMを製造する場合の、粉砕技術(ミクロンサイズの粒子にまで成分を破砕する高エネルギーインプット系)の削減または排除
上記にて言及されるように、乾燥粉末培地は、典型的には、労力を要し、多くの問題がある、粉砕工程を介して製造される。本発明の方法は、これらの労力的および技術的制限を克服する、流動層技術を用いた乾燥粉末培地の生産を提供する。
【0120】
A.外部装置において最初にブレンドし、その後流動層処理する
通常、粉砕されたDPMは、炭酸水素ナトリウムと(供給者から受け取ったままの状態で、付加的なボールミリングは必要とせずに)ブレンドされる。[炭酸水素ナトリウムを2 g/L当量で含むRPM1640]。この混合物は20分間ブレンドする。粉末をその後、流動層チェンバー内に入れ、炭酸水素塩を含む培地、または、自動pH調節する炭酸水素塩を含む培地についての上記のように流動化させる。
【0121】
B.流動層チェンバー内において直接ブレンドし、その後凝集させる
炭酸水素ナトリウムを、粉砕されたDPMと共にチェンバーに直接入れ、短時間ブレンド(混合)し、その後凝集させる。これにより別々のユニットにおいてブレンドする段階が除かれる。
【0122】
C.ボールミリング工程の完全な排除
DPM化学物質のいずれをも、流動層チェンバーに直接加え、予備的に混合し、引き続き凝集させる、またはよりふさわしくは、より粗い「より粘着性」等の化学物質の幾つかに、回転摩砕機における簡単な摩砕処理を与え、その後、ブレンドおよび最終的な凝集のために流動層内に入れる。
【0123】
実施例6:この前述のDPM内に上記の全ての特性をもたせるための方法
本発明者らは、「在庫があってすぐ手に入る」炭酸水素ナトリウムの添加を、粉砕DPMおよび自動pH調節と組み合わせた。本発明者らはまた、血清をDPMと組み合わせた。
【0124】
炭酸水素ナトリウムを含むDPMと自動pH調節と血清を組み合わせるため、あるプロトコールでは:
1. 炭酸水素ナトリウム(供給者からの粉末)をDPM(粉砕または摩砕されている)に加える。
2. 原料をブレンドする(外部ユニットまたは流動層のいずれかにおいて混合する)。
3. 別個の容器において、1 LのDPM(炭酸水素塩を含む)を、水(1×)によって再構成し、溶液のpHを7.5にまで調整するために必要とされる1N HCl、または1N NaOHの量を決定する。リットルベースにて、凝集される粉末の質量(およびしたがってL-当量)を知り、上記にて計算される量にて凝集される総粉末についての1N HClまたは1N NaOHの量を計算する。流動層装置(注入ノズル)を介してこの量を加える。(DPMは「液体」ではないが、粉末をできる限り中性に近くし、工程に水蒸気が関与するために、血清を加えた際に炭酸水素塩が遊離されるような酸性pHにしないことが重要である。pH 7.6またはそれ以上においては、炭酸水素ナトリウムの濃縮溶液はCO2ガスを放出しないが、より低いpHにおいては、ガスを発生させる。)
4. 補足パーセンテージおよび凝集されるgに基づく、血清の添加(拡大凝集)。
5. 上記の(3)からのものと同じ1×液体1Lを使用し、望ましいpH(例えば7.2)にまでpH調整するために必要とされる、1N HClまたは1 N NaOHの量を決定する。この情報を用い、血清を用いて凝集された粉末の重量について使用される量を計算する(g/Lでの仕様を知る)。流動層装置(注入ノズル)を介してこの量を加える。
6. 粉末培地を滅菌するためにγ照射を使用する。
【0125】
同様の方法において、特定の量のDPMを特定の量の粉末血清(例えば、下記の実施例8において説明されるように、スプレー乾燥によって調製される)と組み合わせ、その後、混合物を凝集させることによって、血清を含むDPMを生産することができる。例えば、10%の粉末FBSを含む培地の調製のためには、55.5 gの粉末FBSを500 gの粉末培養培地に加え、その粉末を撹拌することによって十分に混合することが可能である。この混合物はその後、上記にて説明されるように、水を用いて凝集することができ、再構成の際に、自動pH調整し得るような、10%のFBSを含む培養培地を生じる。
【0126】
実施例7:流動層処理(スプレー乾燥をシミュレートする)による100%血清粉末の生産
方法論
1)本発明者らは、ベンチトップ実験用流動層装置(Strea-1)を使用した。粉末血清の生産のためには、チェンバー内には何も入れない。レバーを用いてユニットを密封する。
2)注入装置(スプレーユニット)により、血清を加えた。粉末がチェンバー内にて直ちに形成されるように、チェンバーに血清が加えられるにつれ、空気流動を十分に増加させ、血清流動を十分遅くし、水分の蒸発が生じて血清が十分に乾燥されるようにした。湿性または液体の被覆物は、チェンバー内のどこにも存在しなかった。
3)ポンプ速度は、チェンバーに〜1 ml/分で流入させるように設定された。
4)空気流動速度は〜8から9に設定された。
5)断続的にフィルターを掃除するため、ファン速度を〜2から3にまで下げた。これは、5分〜10分毎に定期的に行われた。(空気流動速度8〜9の設定は非常に高いため、粉末を吹き払ってフィルター自体の掃除が行われない。)
6)フィルターを1通り吹き払った後、ファン速度を以前のレベルにまで上げ、ポンプをオンにした。(これらのパラメータが一旦設定されれば、指示されるようにフィルターを掃除する場合を除き、ポンプは連続的に作動された。)
7)全ての血清の液体が凝集機に加えられた後、最終的な乾燥を5分間に渡って行った。
8)できる限り多くの粉末を収集するため、フィルターをその後吹き払い、機械を止め、産物を除去した。粉末血清を気密容器に入れ、光から保護した。
【0127】
典型的な機器設定
乾燥温度:60℃〜65℃
出口空気温度:〜33℃
噴出圧:5バール
噴霧圧:2.0バール〜2.5バール
逆噴出ドウェル:スプレー間に2
ファン容量:作動中を通して8〜9
Magnahelics:フィルター抵抗 150〜250、多孔調節板の抵抗 〜50、空気容量 50未満。
【0128】
FBSの凝集が、タンパク質の構造または分布に影響を与えるかどうかを決定するため、凝集FBSおよび液体FBSのサンプルを、SDS-PAGEに供し、タンパク質を染色し、デンシトメーターによってスキャンした。図1において示されるように、本方法に従って調製された凝集FBS(図1A)は、液体FBS(図1B)にて認められるものとほとんど同一のタンパク質プロフィールを示した。これらの結果は、本方法による乾燥粉末FBSの調節された生産は、血清の主な成分の構造または分布に実質的に影響を与えないことを示す。
【0129】
FBSの凝集が、細胞の増殖および継代を支持するその能力に影響を与えるかどうかを決定するため、SP2/0細胞を、2%の凝集(「乾燥」)FBSまたは2%の液体FBSのいずれかを含むDMEMに植付け、増殖速度および継代回収を調べた。図2Aにおいて示されるように、凝集FBSを含む培地に植付けられた細胞は、液体FBSを含む培地に植付けられた細胞と同様の増殖動態を示した。同様に、継代から回収された、凝集FBSを含む培地における細胞は、液体FBSを含む培地における細胞と実質的に同一の増殖速度を有していた(図2B)。これらの結果は、合せて、培養細胞の増殖および継代の支持において、本発明の凝集FBSが、液体FBSとおよそ同等に機能することを示す。
【0130】
実施例8:スプレー乾燥による、100%血清粉末の生産
流動層処理の代替として、スプレー乾燥技術による乾燥粉末血清の生産の実現性を調べた。粉末血清を調製するため、直径3フィートの実験用スプレー乾燥機(Mobile Minor Spray Drier;Niro, Columbia, Maryland)を用いた。液体FBSをスプレー乾燥機に吸引し、空気ディスペンサーの中央に位置するSchlick 940ノズルによって噴霧し、装置の最上部空気ディスペンサーによって噴霧器に乾燥用空気を導入した。以下の条件下において、スプレー乾燥を行った:入口空気温度 = 200℃;出口空気温度 = 70℃;ノズルについての噴霧空気圧 = 2.0バール;空気流動 = 80.0 kg/時間;スプレー速度 = 65 g/分。これらの方法の開発の間、初期出口空気温度60℃を用いた;しかし、この温度は低すぎることが見出され、スプレー速度は、最適であることが見出された約70℃の出口温度に達するレベルにまで逆調整された。スプレー乾燥に続き、粉末血清を装置のサイクロンにおいて収集し、処理用空気を装置内における再循環前に排出フィルターにかけた。
【0131】
生産後、同じロット源に由来する液体FBSと比較して、その物理的特性に関して、粉末血清を特徴付けた。生産ロットの異なる段階から採集されたサンプル(サンプル「A」および「B」)を、エンドトキシンを含まない蒸留水(Invitrogen Corporation, Life Technologies Division, Rockville, Maryland)中において、60.44 g/Lの濃度にて再構成し、カブトガニ変形細胞溶解物試験(Invitrogen Corporation, Life Technologies Division, Rockville, Maryland)を用いて、エンドトキシンレベルについて調べ、(525 nmにおける吸光度を分光測光によって測定することにより、および、UV/可視光分光測光により)ヘモグロビンレベルについて調べた。結果は表1、および、図3Aおよび図3Bにおいて示される。
[表1]粉末血清の物理的特性

【0132】
表1において認められるように、粉末FBSは、粉末FBSの生産のための材料源としての役割を担った液体FBSのものと同様のエンドトキシンレベルおよびヘモグロビンレベルを示した。その上、生産工程の異なる段階から採集されたサンプルは、ほぼ同一のエンドトキシンレベルおよびヘモグロビンレベルを示し、本方法が、生産ロットに渡っておおよそ均一の物理的一貫性を有する物質の生産をもたらすことが示される。粉末FBSおよび液体FBSのサンプルをUV/可視光分光測光によって調べた場合(図3)、粉末FBSについて(図3A)認められる軌跡は、液体FBS源について得られるもの(図3B)と見分けがつかない。これらの結果は合せて、本スプレー乾燥法によって調製された血清粉末は、その粉末が調製されたもとの液体血清のものとほぼ同一の物理的特性を有することを示す。上記の実施例7の結果(例えば図1を参照のこと)と合せると、これらの結果は、本発明によって提供される方法が、液体血清源のものから変化させられていない物理的特性を有するような、粉末血清の生産をもたらすことを示す。
【0133】
実施例9:自動的にpHを調整される粉末培養培地の生産
粉末培地に炭酸水素ナトリウムが決して含まれないある理由は、いかなる水分も、空気中の水分でさえも、パウチ内に酸性条件を生じる可能性があり、それにより、CO2ガスの遊離がもたらされるからである。パウチは膨脹し、「ピロー」と呼ばれてきたものが作製される。流動層処理を用い、工程終了以前に、装置内の湿度は、本質的に無視できるレベルにまで下げられる。本発明者らは、炭酸水素ナトリウムを含むRPMI-1640粉末培地を作製しており、「ピロー」形成の証拠は認められていない。
【0134】
pH調整された粉末培地を作製するには、水に加えた際のpHをおよそ7.0〜7.4にするため、pH調整化学物質(通常HClまたはNaOH)を粉末に加えることが必要である。炭酸水素ナトリウムを粉末に一旦加えると、多くの粉末培地は、水中にて、中性の塩基性側において再構成し、HClの添加が必要となる。炭酸水素ナトリウムを含む粉末にHClを添加することには、問題があることが予測される。しかし、添加される液体(この場合5N HCl)は、流動層装置内に湿った状態または「液体」状態を決してもたらさないことから、炭酸水素ナトリウムはCO2ガスを発せず、その緩衝能は完全に維持される。このことは、本研究において、pH滴定実験により調べられた:2つの別個の実験において(図4Aおよび図4B)、等量の酸が、再構成時に液体に加えられた炭酸水素ナトリウムを含む標準培地についてのものと同一の量によって、凝集培地および自動pH調整される凝集培地のpHを下げることが見出された。これらの結果は、後にpHの調整を行う凝集、および、凝集工程中にpHの調整を伴う凝集の双方が、著しい緩衝能を有する粉末培養培地を作製するために、等しく十分に機能することを示す。
【0135】
実施例10:培養培地の溶解速度に対する凝集の影響
培養培地の凝集の、培地の溶解速度に対する影響を調べるため、Opti-MEM I(商標)またはDMEMのサンプルを、水またはFBS(Opti-MEM I については2%のみ;DMEMについては2%または10%)を用いて凝集した。凝集された培地の水における再構成の際、凝集されたOpti-MEM I の経時的溶解は、標準粉末Opti-MEM Iの溶解よりもはるかに迅速に起こった(図5A);水またはFBSを用いて凝集されたOpti-MEM Iについて、結果は同一であった。しかし、興味深いことに、水を用いて凝集されたDMEMは、標準粉末DMEMよりも、はるかに迅速に水に溶解した一方、FBSを用いて凝集されたDMEMはそうではなかった(図5B)。
【0136】
(従来的な粉末培地とは対照的に)、凝集された粉末培地の隙間のある構造により、毛管作用によって、水が、全ての粉末粒子について密接な近傍にまでもたらされる。これにより、ほとんどの標準粉末培地の再構成の際に認められる困難な問題であり、それによってより長い溶解時間が導かれる、粉末の「球」の出現が妨げられる。より迅速な溶解に加え、凝集された培地は、粉塵形成の減少も示した。これらの結果は、水を用いて凝集された培養培地、およびFBSを用いて凝集された幾つかの培養培地は、従来的な粉末培養培地よりもはるかに迅速に溶解し、より少ない粉塵を生み出すことを示す。
【0137】
実施例11:再構成された凝集培養培地における細胞増殖および継代培養
培養培地の多くの使用では、血清またはアルブミンのような、大きな分子量のタンパク質の添加が必要とされる。これらの分子は、溶液形態、またはアルブミンの場合はそれどころか粉末形態にあることが可能である。しかし、粉末培地の均一性を保証するために、これらのタンパク質は通常、バルク粉末培地の液体培地への再構成後に、粉末としてではなく、液体として加えられる。例えば、長時間に渡って性能を維持するため、血清をフリーザー中に保存しなければならないゆえに、これには幾らか不便がつきまとう。血清は培地に無菌的に加えなければならず、異物混入の機会が増加するため、費用および不便が増す。血清の添加後にろ過滅菌が行われる場合は、その他の処理段階が必要である。したがって、粉末培地の統合された部分として血清を提供できるということには利益がある。
【0138】
したがって、培養培地は、水によって、または様々な濃度のFBSによって凝集された。上記にて一般に概説されるように、空中に浮遊させられた乾燥粉末培地に高い蒸発乾燥速度で注入することによって、FBSは粉末培地に加えられた。血清の補足レベルは、Opti-MEM I 培地において2%、および、DMEMにおいて2%または10%であった。これらの培地における様々な細胞系の増殖および継代の達成についてその後評価した。
【0139】
図6において示されるように、SP2/0細胞は、水またはFBSのいずれかによって凝集されたOpti-MEM Iにおいて増殖させた場合(図6A)、従来的な培養条件下(水によって再構成された粉末培地に液体血清を加えた)において増殖させた細胞と比較して、同様の増殖速度を示した。同様の結果が、2%のFBSを補足された、水およびFBSによって凝集されたDMEMにおいて培養されたSP2/0細胞について(図6B)、および、10%のFBSを補足された、水およびFBSによって凝集されたDMEMにおいて培養された、SP2/0細胞(図7A)、AE-1細胞(図7B)およびL5.1細胞(図7C)について認められた。その上、SP2/0細胞は、2%のFBSを補足された、水またはFBSによって凝集されたOpti-MEM IおよびDMEMにおいて培養された場合(各々図8Aおよび図8B)、10%のFBSを補足された、水およびFBSによって凝集されたDMEMにおいて培養されたSP2/0細胞、AE-1細胞およびL5.1細胞(各々図9A、9Bおよび9C)と、および、5%のFBSを補足された、水によって凝集されたDMEMにおいて培養されたSP2/0細胞(図10)と、およそ同様の、継代からの回収率を示した。その上、SP2/0細胞は、大バッチにおいて生産された、水によって凝集された培地において、および、炭酸水素ナトリウムを含む、自動的にpHを調整する粉末DMEMにおいて、5%のFBSを補足された標準液体DMEMにおいて示したものと同一の継代特性を示した(図10)。
【0140】
合せて、これらの結果は、動物血清(例えばFBS)のような培養培地補足物を培養培地に直接凝集できること、および、このようにした凝集工程中の培養培地の補足によって、様々な培養細胞の増殖および継代の最適な支持を提供する培養培地が生産されることを示す。その上、これらの結果からは、炭酸水素ナトリウムを含有する、自動的にpHを調整する本発明の培地を含む、本培養培地粉末を、大バッチにおいて首尾よく生産できることが示される。
【0141】
実施例12:スプレー乾燥された血清粉末によって補足された培養培地における細胞増殖
実施例7において示される実験に付随して、実施例8において説明されるように調製されたスプレー乾燥FBSを2%もしくは10%のいずれか含む、または、液体FBSを2%もしくは10%含むDMEM に、AE-1細胞およびSP2/0細胞を植付け、細胞の増殖速度および継代回収を調べた。培地10 ml中に1×105細胞数/mlの密度で、3つの25 cm2フラスコに細胞を接種した。3日目〜7日目に、生存能のある細胞の密度を決定し、各細胞系について2回テストした。結果は図11〜13にて示される。
【0142】
図11において示されるように、粉末FBSを含む培地において培養されたAE-1細胞は、標準液体FBSを含む培地において培養された細胞と同様の増殖動態を示した。予測されるように、細胞は、2%のFBSを含む培地におけるものよりも、10%のFBSを含む培養培地において、より高い密度に至るより迅速な増殖を示し、およそ4日目までに増殖のピークを示した。2つの別個の実験について同様の動態が認められ(図11Aおよび図11B)、それにより、これらの結果が再現可能であることが示される。粉末FBSまたは液体FBSを含む培地においてSP2/0細胞の増殖速度が測定された、2つの実験において、類似した結果が得られた(図12Aおよび図12B)。その上、継代から回収された、5%の粉末FBSを含む培地において培養されたAE-1細胞は、液体FBSを含む培地における細胞と同一の増殖速度を有していた(図13)。
【0143】
これらの結果は、本発明のスプレー乾燥法によって調製された粉末FBSが、培養細胞の増殖および継代の支持において、液体FBSとおよそ同等に機能することを示す。実施例7および8の結果を合せて、これらの結果は、流動層技術またはスプレー乾燥技術によって、液体FBSのものとほぼ同一の物理的特性および性能特性を示すような粉末FBSを生産するために、本発明の方法を使用できることを示す。
【0144】
実施例13:凝集培地の性能に対する照射の影響
近年、特にバイオテクノロジー産業において、バイオ生産に使用される培地および培地成分(補足物を含む)の生物学的純度についての問題が生じてきた。γ照射は、熱または毒性ガスへの曝露による滅菌を典型的には行うことができない、ある液体や粉末について、十分に作用することが知られた、1つの滅菌工程である。したがって、水またはFBSによって凝集された培養培地のサンプルを、コバルト源を用いて、25 kGyにて数日間までγ照射し、様々な細胞タイプの増殖速度を調べた。
【0145】
ある一連の実験においては、様々な培地にSP2/0細胞を1×105細胞数/mlで接種し、37℃において培養した。様々な間隔においてサンプルを無菌的に得、コールター・カウンターにより細胞数を計測し、トリパンブルー排除試験により生存率を決定した。水1L中における1×溶液を作製するために、十分な粉末培地を溶解し、撹拌し、0.22μmフィルターを通してろ過することによって培地を調製した。結果は、図14のグラフにおいて示される。グラフ上において「pwdrFBS」と述べられるグラフ上の条件は、粉末FBS(上記の実施例7または実施例8におけるように調製された)の、標準粉末培地または凝集培地(照射、または非照射)のいずれかから調製された再構成1×培地への添加を指す。「Irradia.agglom.DMEM+FBS」と述べられるグラフ上の条件は、流動層を使用し、凝集培地を作製し、粉末培地(標準または凝集)にFBSをスプレーすることにより、FBS-凝集培地を作製したことを指す。
【0146】
図14において示されるように、標準粉末基礎培地および凝集基礎培地のγ照射は、これらの培地の、SP2/0細胞の増殖を支持する能力に有害に影響を与えなかった。その上、照射は、粉末FBSを含む粉末培地、および粉末FBS自体に負の影響を与えはしたが、この影響は血清濃度が上昇するにつれ減少した。
【0147】
これらのγ照射の影響をより広く調べるために、VERO細胞のサンプルを、従来的に再構成された、または上記のように凝集されたVP-SFM(商標)に接種した。しかし、凝集チェンバー内の粉末培地には、この培地にとっては従来的な補足物である、上皮増殖因子(EGF)およびクエン酸第二鉄キレートを、凝集中にスプレーノズルを介して加えた。培地をその後、直接使用した、または、上記にて説明されるようにγ照射した。T-25フラスコに、3×105細胞/フラスコにて細胞を接種し、37℃においてインキュベートした。細胞数および生存率は、上記に説明されるように決定された。結果は図15において示される。
【0148】
図15において認められるように、VERO細胞は、γ照射された凝集培地において培養された場合、γ照射されていない凝集培地におけるものとおよそ同等の増殖および継代の達成を示した。その上、培地の照射は、培地中に存在していた、低レベルの培養補足物であるEGFおよびクエン酸第二鉄キレートには影響を与えなかった。
【0149】
これらの結果は、本方法によって、血清、EGF、または他の補足物を含有するものを含む、多くのバルク凝集培養培地の調製において、γ照射を滅菌技術として使用できることを示す。
【0150】
実施例14:粉末培地補足物の性能に対する照射の影響
滅菌培地補足物の生産における本方法の有効性を示すために、-70℃または室温において、コバルトγ源に25 kGyにて約3日間曝露することによって、凍結乾燥ヒトホロトランスフェリンを照射した。その後、照射したトランスフェリン、または照射していない対照トランスフェリン(-70℃または室温において保存された)を補足された培地において293細胞を培養し、標準のトランスフェリンを含む培養培地またはトランスフェリンを含まない培地のものと、細胞の増殖を比較した。
【0151】
血清を含まない293培地(293 SFM)において増殖している、対数増殖期中の293細胞を採集し、200×gにて5分間、1回洗浄し、細胞数計測および生存率の決定のために、トランスフェリンを含まない293 SFMに再懸濁した。293 SFM(正の対照)、トランスフェリンを含まない293 SFM(負の対照)、-70℃または室温において保存された、非照射トランスフェリンを含む293 SFMにおいて、または、上記に説明されるように調製された、照射トランスフェリンを含む293 SFMにおいて、20 mlの容量中に3×105細胞数/mlの密度で、3つの(triplicate)125 mlのEhrlenmeyerフラスコに細胞を植付けた。フラスコを、8%CO2/92%空気で平衡させた37℃のインキュベーター中において、約125 rpmに設定された回転振とう機内に置いた。コールター粒子カウンターを用いて細胞数を毎日計測し、標準法に従ったトリパンブルー排除試験によって生存率を決定した。細胞密度がフラスコ当たり約1.2〜1.7×106に達した時点で、各サンプルのフラスコのうち1つの含有物を採取し、遠心分離し、新しい培地に再懸濁し、3つの新たなフラスコに継代した。前のおよび次の継代の細胞数および生存率の決定を上記に説明されるように行った。上記の条件下においてインキュベートされた細胞の4回の連続した継代について調べた。
【0152】
図16A〜図16Dにおいて示されるように、-70℃または室温のいずれかにおいてγ照射されたトランスフェリンを含む培地において培養された細胞は、第一継代(図16A)、第二継代(図16B)、第三継代(図16C)および第四継代(図16D)において、標準293 SFM、または、γ照射されていないトランスフェリンを含む293 SFMにおいて培養された細胞と、ほぼ同一の増殖動態および生存率を示した。しかし、トランスフェリンを含まない培地において培養された細胞は、第一継代(図16A)の間は十分に生存したが、継代培養の際には増殖を停止し、生存率の著しい低下を示した(図16B)。
【0153】
これらの結果は、本発明の方法においては、トランスフェリンのようなバルク粉末培養培地補足物の調製における滅菌技術として、γ照射を使用できることを示す。さらに、これらのデータは、トランスフェリンのような培養培地補足物を、室温において、活性を著しく低下させずにγ照射できることを示す。
【0154】
実施例15:粉末血清の生化学的特性に対する照射の影響
γ照射の血清に対する影響をさらに決定するため、スプレー乾燥された粉末FBSのサンプルを、-70℃または室温(RT)において、25 kGyにて照射し、血清中の様々な生化学的構成要素の濃度について商業的に分析した。対照として、非照射のスプレー乾燥FBSおよび液体FBSのサンプルも同様に分析した。結果は、表2において示される。
[表2] スプレー乾燥FBS の化学分析

【0155】
これらの結果は、γ照射工程が、FBSのほとんどの生化学的構成要素の濃度に、著しく影響を与えなかったことを示す。これらの結果はまた、スプレー乾燥の際に、FBSの成分の幾つか(アルカリホスファターゼ、ASTおよびLD、および多分グルコース)の濃度が、開始液体FBSにおけるそれらの濃度と比較して、著しく減少させられることも示す。
【0156】
実施例16:粉末血清の性能に対する照射の影響
乾燥粉末血清の細胞増殖を支持する能力に対するγ照射の影響を調べるため、様々な条件下において照射されたスプレー乾燥FBSのサンプルを、培養培地を補足するために使用し、これらの培地において付着細胞および懸濁細胞を第三継代まで増殖させた。モデル懸濁細胞として、ハイブリドーマ系列SP2/0およびAE-1を用いた一方、典型的な付着細胞として、VEROおよびBHKの培養を用いた。上記の実施例14において概説される一般的手法に従い、被験血清または対照血清(スプレー乾燥されたが照射されていない)を含む培地において、細胞を第三継代まで培養した。各継代の時点において、細胞を採集し、継代培養した一方、生存能のある細胞数/mlについて、上記のようにアリコートを計測した。各時点における結果は、液体FBSを補足された培地において得られた生存能のある細胞数に対するパーセンテージとして表され、図17A、図17B、図17Cおよび図17Dにおいて示される。
【0157】
これらの研究結果から、幾つかの推論を引き出すことができる。第一に、FBSのγ照射は、懸濁細胞および付着細胞の増殖を支持する、スプレー乾燥FBSの能力を低下させないと考えられる(各図において、照射データセットを非照射データセットと比較する)。実際には、BHK細胞(図17D)は、-70℃において照射された粉末FBSを含む培地において、照射されていない血清におけるものよりも優れた増殖を示した。第二に、おそらくVERO細胞を例外として、-70℃において照射された血清は、室温において照射されたものよりも、細胞増殖を支持する能力において、より勝って機能すると考えられる(図17C)。最後に、これらの研究の結果は、非常に細胞タイプ特異的であった:懸濁細胞(図17Aおよび図17B)は、照射スプレー乾燥FBSおよび非照射スプレー乾燥FBSにおいて、付着細胞(図17Cおよび図17D)よりも、より優れた増殖を示した;および、付着細胞の中でも、BHK細胞(図17D)は、VERO細胞(図17C)よりも、スプレー乾燥FBSにおいてより優れた増殖を示した。
【0158】
これらの結果は、本発明の方法において、FBSのようなバルク粉末血清の調製における滅菌技術として、γ照射を使用できることを示す。さらに、上記の実施例14においてトランスフェリンについて報告されたものとは異なり、これらのデータは、細胞の増殖を支持する血清の能力を維持するためには、血清の照射のための最適温度が室温未満である可能性が高いことを示唆する。
【0159】
実施例17:リン酸平衡化により自動的にpHを調整される粉末培養培地の生産
上記にて言及されるように、商品として入手可能な典型的な哺乳動物細胞培養粉末培地は、1×液体を調製する時点で、1つもしくは複数の緩衝塩(例えば炭酸水素ナトリウム)の添加を必要とし、その後pHを調整することによって、溶液が使用のために適切なpHとなる。しかし、本発明の方法は、(上記の実施例2において説明されるように)再構成後の炭酸水素ナトリウムの添加、および、pH調整の必要性のいずれをも除くために使用することができる。本発明の本局面においては、1つもしくは複数の緩衝塩を含む乾燥粉末培地に酸または塩基(必要に応じる)を導入するために、流動層技術を使用することができる。本発明の本局面に従い、任意の緩衝塩またはその組み合わせ、および任意の酸または塩基を、最終的な再構成細胞培養培地において望ましいpHおよび緩衝能に応じて使用することができる。
【0160】
本発明の方法に従って、乾燥粉末培地(DPM)に炭酸水素ナトリウムが粉末として直接加えられる場合、末端使用者は、単に溶媒(例えば水)を加え、混合するだけで、既に炭酸水素塩(上記を参照のこと)を含む、および、即時の使用のために適切なpHである溶液−即ち、本発明の「自動pH」または「自動的にpHを調整する」培養培地を得ることができる。どれほどのpH調整が必要とされるのかを決定するため、幾つかの段階を行うべきである:
(1)〜950 mlの溶媒(例えば水)をビーカー内に入れる。DPMを(製造業者の使用説明書に従った量、または本明細書において言及されるような、当技術分野において知られる処方の仕様に従った量にて)溶媒に加え、十分に混合し1Lとする。この場合、リットル当たりにどれほどのDPMを加えるべきかを決定する上で、炭酸水素ナトリウムの重量も考慮せねばならない。DPMが、滴定にて加えられるようなリン酸ナトリウム緩衝液もHEPES緩衝液も含むべきではないとしても、炭酸水素ナトリウムは含むべきである。
(2)次の段階は、一塩基リン酸または二塩基リン酸が望ましい最終pHを与えるかどうかを決定するものである。これは、必要とされるpHの調整がより塩基性のレベルに向かわせるのか(二塩基リン酸の必要性を示す)、または、より酸性のレベルに向かわせるのか(一塩基リン酸の必要性を示す)による。望ましいpHを得るために、ある量(最終濃度範囲約0.1mM〜約10mM、約0.2mM〜約9mM、約0.3mM〜約8.5mM、約0.4mM〜約8mM、約0.5mM〜約7.5mM、約0.6mM〜約7mM、および好ましくは約0.7mM〜約7mM)の、一塩基リン酸塩または二塩基リン酸塩を連続的に加える。リン酸ナトリウムの総モル量は一定に維持されるべきであるが、溶液中の分子種は、溶液の最終(望ましい)pHにより決定されるものと同じであるため、一塩基または二塩基のいずれによる緩衝作用も、与えられたpHにおいては同様の緩衝作用動態をもたらす(図18を参照のこと)。
(3)培地がHEPES緩衝液系を含む場合、適切な(望ましい)最終pHに到達させるため、酸形態(より酸性のpHのため)またはナトリウム形態(より塩基性のpHのため)のいずれかの、正確なモル量のHEPESを加える。
(4)次の段階は、モル重量ベースにおいて、一塩基リン酸ナトリウムを一塩基リン酸カリウムと交換するものである(リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムのいずれかの使用により、同一の緩衝特性がもたらされる)。この交換を行うために、上記の段階2において計算された一塩基リン酸ナトリウムの量を等量のリン酸カリウムに置き換え、その後、最終培地を処方するために使用する。したがって、本発明の本局面においては、上記の段階2において計算された量の一塩基リン酸ナトリウムは、実際には、pHを調整するために培地に加えられない;その代わりに、この量は単に計算され、その後、最終培地のpHの調整には、計算された量のリン酸カリウムが使用される。これは、その後の二酸化炭素のガス発生が除かれるまたは最小化されるように行われる。(全体として、処方中に同じモル比率のカリウム対ナトリウムを存在させるために、最終1×モル量が同じになるように、処方中の塩化カリウム量を逆調整することが必要である。これによって、同一の重量オスモル濃度に達するように、少量の塩化ナトリウムを用いて調整する必要が生じる可能性もある。)溶液がその最終形態になった時点で、(実施例1において説明されるような)流動層技術を用いた凝集、スプレー乾燥(実施例8を参照のこと)、または当業者に知られる凍結乾燥技術のいずれかによって、それが粉末になるまで乾燥させる。
【0161】
上記は、炭酸水素ナトリウムを粉末培地に含むために推奨される基本的な操作であるが、さらなる考察も心に留めておくべきである:
1.培地成分の無水形態のみを使用すべきである
2.無水形態が入手可能でない場合、「イオン交換」を用いることを考える(例えばZnSO4・7H2Oまたは一水和物;ZnCl2を硫酸ナトリウムと共に用い、処方において示されるように加えられるNaClの量から化学量論的に正確な量のNaClを減じることも考慮に入れる);
3.化学物質の塩酸抱合体は使用しないこと:遊離塩基(例えば塩酸アルギニンの代わりに、真の望ましい重量に修正されたアルギニン)を使用する;
4.ピロー形成を引き起こし得るため、一塩基リン酸ナトリウムは全く用いるべきではない。代わりに、ピロー形成を引き起こさない一塩基リン酸カリウム(KH2PO4)を用いるべきである。これら双方の化学物質の緩衝反応は同一である。他の塩類形態において処方に加えられるカリウムの量は、ここにて加えられるKH2PO4量に対応して減じるべきである。同様に、リン酸ナトリウムを用いた式の重量オスモル濃度が、リン酸カリウムを用いた式の重量オスモル濃度と等しくなるように、余分のNaClが必要とされる可能性もある。
5.二塩基リン酸ナトリウム(Na2HPO4)は、「ピロー形成」させず、処方における使用のために許容できる。
6.炭酸水素塩によって「ピロー形成する」傾向が増加するため、自動調整機構のために、流動層におけるHClの「スプレー添加」を使用しないこと。代わりに、DPMにおけるリン酸平衡によって再構成培地の最終pHを調整する(Na2HPO4はpHを上げる一方、KH2PO4はpHを下げる。上記に示されるように、「イオン平衡」の使用により、同じイオン組成の1×培地がもたらされる。)
7.(CD-CHOのためのシステインのように)流動層のためのスプレー添加物としてアミノ酸を加える必要がある場合、可溶性の問題のため、アミノ酸を溶解するためにpHを下げずに、可溶化に必要とされる最低限までpHを上げる(例えば、システインのためにはpH 10.66)。
8.成分を無水物として得ることができない場合、または「イオン交換」が通用しない場合、化学物質を溶解し、凝集を介して培地にスプレーすることができる:結晶成分中の水分は、凝集中には乾燥しないが、溶解によってその水分が解離されれば、それはスプレー工程および蒸発乾燥工程によってその後DPMから除かれる。
9.加速有効期間試験(コリンクロリドのように湿性または粘性であると考えられる任意の化学物質について、等量の炭酸水素塩を含む、密封パウチにおいて37℃)を用いて調べる。許容される有効期間試験プロトコールの一例は、以下の通りである:
(a)10 gの被験化合物を乳鉢に置き、すり潰す;10 gのNaHCO3を加える;
(b)混合物を摩砕し、粒子サイズを減少させ、約30秒間ブレンドする;
(c)ブレンドされた混合物をフォイルパックに加える;パックの開口端を密封する;
(d)パックを37℃のインキュベーターに入れ、24時間に渡って、「ピロー」形成(即ち、NaHCO3のガス発生によるパックの膨脹)について観察する。
ガスが発せられる場合は、その成分をスプレー添加溶液に溶解および添加する。
10.コリンクロリドを中性可溶性スプレー添加物に入れる。
スプレー乾燥または凝集の実施後に粉末が一旦収集されれば、それが適切な「乾燥」包装および条件に維持されている限り、いつでもそれを溶媒(例えば水)によって再構成することができる。許容されるまたは「適切な」乾燥包装の例には、フォイル包装、ポリエチレン袋、密封プラスチック(特にポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)および同様のもの)のような、保存の際に、包装を通した水の浸透および/または水の蒸発を遅らせる、または防ぐ、任意の包装が含まれる。適切な保存条件の例には、低減された、または弱められた照明下での、約0〜約25℃、好ましくは約2〜約20℃、約2〜約15℃、約2〜約10℃、または約2〜約8℃における保存が含まれる。そのような条件下においては、本発明の培地の最低限の有効期間は、およそ1年間(約2〜約8℃において保存された)、またはおよそ6ヶ月間(約20〜約25℃(室温)において保存された)である。
【0162】
使用のためには、粉末は、適切な溶媒(例えば水)によって簡単に再構成される;再構成の際直ちに、培地は適切なpHとなり、適切な緩衝作用動態を有するため、pHの調整は必要ない(図19Aおよび図19Bを参照のこと)。したがって、本発明は、乾燥粉末培地の再構成により作製される液体培地のpHがpH調整を必要としない、自動的にpHを調整する乾燥粉末培地を提供する。
【0163】
実施例18:μg/mlまたはμg/L量における培地成分のスプレー添加
最初に化学物質の濃縮物を作製し、その後それらを粉末培地造粒にスプレーすることによって(その全体を参照として本明細書に組み入れられる、1998年2月13日に出願された、米国特許出願第09/023,790号を参照のこと)、(カルシウム、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、ニッケル、カリウム、スズ、および亜鉛のような)微量元素、(A、B1、B2、B6、B12、C、D、E、KおよびH(ビオチン)のような)ビタミン、(プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体および同様のもののような)ウイルス阻害剤、(EGF、aFGF、bFGF、HGF、IGF-1、IGF-2およびNGFのような)成長因子等のような化学物質を、標準粉末培地に加えることができる。その結果生じる粉末はその後、(計量およびフィッツミリング後に必要とされる)ブレンドのためにバルクのものと同じ一般サイズ範囲における粒子サイズにまで(例えばフィッツミルを用いて)粉砕することができる。この分は、その後、バルク粉末培地と組み合わせ、共に粉砕し、均質に混合された粉末培地を作製することができる。または、粉末培地の成分は、適合性の化合物または成分の混合物群に部分群化し、それをその後、処方の直前にブレンドすることができる、および、低レベルの成分の濃縮物を、ブレンドされた混合物にスプレーすることができる。このアプローチは、粉末培地処方において混合され、共に長期間保存された場合に、不適合性であり得る成分(例えば、長期間共に保存した際に不溶性の複合体を形成する、システインとグルタミン)を扱う場合に特に好都合である。(培養培地成分の部分群化の利益についてのより詳細な説明については、下記の実施例19、および、その開示の全体が参照として本明細書に組み入れられる、共通して所有される米国特許第5,474,931号および同第5,681,748号を参照のこと)。少量にて化学物質をスプレー添加できることは、少量で存在し、別個に加えることが不都合であるような成分を含む培地の開発において特に役立つ。したがって、本乾燥粉末培地は使用の準備ができているものである。
【0164】
実施例19:凝集中の有害な相互作用を避けるための、成分の部分群化
培地の成分の幾つかは、不適合性である可能性があり、粉砕および凝集以前に、それらが計量され、その後共に保持された場合、互いに有害に相互作用を引き起こし得る。例えば、システイン粉末とグルタミン粉末が混合された場合、リン酸塩がカルシウムまたはマグネシウムイオンを含む塩類と混合された場合、リン酸塩(特にその一塩基形態)がコリンクロリドと混合された場合、およびグルタチオンがアミノ酸と混合された場合に、有害反応が認められた。その上、酸性成分(例えばある緩衝塩、ビタミンおよび同様のものの酸性形態)は、成長因子または血清のようなタンパク質成分を変性させる可能性がある。したがって、これらの特定の成分は、部分群化することができる(培養培地、補足物および緩衝液の成分の部分群化の方法を説明する、およびその特許開示の全体が参照として本明細書に組み入れられる、共通して所有される米国特許第5,474,931号および同第5,681,748号を参照のこと)、および、部分群として共に凝集することができる。特定の部分群には、酸可溶性の部分群、弱酸-塩基可溶性の部分群、グルタミンを含む部分群、アルコール可溶性部分群、アルカリ可溶性部分群、および補足物を含む部分群が含まれる。別個の部分群の凝集後、少量の要素のスプレー添加について実施例18において説明されるように、それらを共に混合することができる。
【0165】
または、濃縮物は、既に粉砕されたバルク粉末に直接スプレーすることができる。このアプローチにおいては、各部分群は(例えばフィッツミリングを介して)粉砕され、その後、他の部分群と同時に流動層装置内に入れられ、その結果、部分群が凝集中に共に混合される;そして、個々の不適合性成分が凝集される前の非常に短い時間のみ混合されるように、濃縮物を、バルク粉末に連続してスプレーすることができる。その後、凝集された粉末を、本明細書にて説明されるように収集し、個々の成分、さもなくば不適合性の成分間において生じる有害反応がないまま、再構成および使用時まで保存することができる。
【0166】
理解を明らかにさせるための例証および実施例によって、本発明については、これまでに幾らかの詳細を完全に説明されており、本発明の範囲またはそのいかなる特定の態様にも影響を与えることなく、条件、処方および他のパラメータの、広いおよび同等な範囲内において本発明を改変または変化させることによって、同じことが実行できること、および、そのような改変または変化が添付の特許請求の範囲内に包含されることが、当業者には明白となる。
【0167】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許および特許出願は、本発明が属する技術分野における当業者の技術のレベルに相当し、各個別の刊行物、特許または特許出願が特定的におよび個々に、参照として組み入れられると示されたかのように、同程度に参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明の方法によって粉末形態に調製されたウシ胎児血清(FBS)サンプル(図A)、および従来的な液体FBSサンプル(図B)の、SDS-PAGEのデンシトメーターによるスキャンのヒストグラムである。
【図2】本発明の凝集法によって粉末形態に調製された2%(w/v)のFBSを補足した、ダルベッコの改良MEM培地(DMEM)における、SP2/0細胞の増殖の折れ線グラフを合わせたもの(図A)、および、継代の達成(図B)である。
【図3】本発明の方法に従ったスプレー乾燥によって調製された粉末ウシ胎児血清(FBS)(図A)、または、標準液体FBS(図B)の、分光測光スキャン(λ= 200〜350 nm)のヒストグラムを合わせたものである。
【図4】炭酸水素ナトリウムを添加して、または添加せずに、本発明の方法によって、またはボールミリングによって調製された、様々な乾燥粉末培地(DPM)の、異なる2日間(図Aおよび図B)における、pH滴定(緩衝能)を示す折れ線グラフを合わせたものである。
【図5】Opti-MEM I(商標)(図A)、またはDMEM(図B)の、(水における)溶解速度に対する凝集の影響を示す棒グラフを合わせたものである。培地は、指示されるように、水またはFBSによって凝集された。
【図6】共に2%のFBSを含む、凝集Opti-MEM I(商標)(図A)またはDMEM(図B)における、SP2/0細胞の7日間に渡る増殖を示す折れ線グラフを合わせたものである。
【図7】10%のFBSを含む、凝集DMEM における、SP2/0細胞(図A)、AE-1細胞(図B)およびL5.1細胞(図C)の7日間に渡る増殖を示す折れ線グラフを合わせたものである。
【図8】2%のFBSを補足した、水またはFBSのいずれかにより凝集されたOpti-MEM I(商標)(図A)またはDMEM(図B)における、SP2/0細胞の継代の達成を示す折れ線グラフを合わせたものである。
【図9】10%のFBSを補足した、FBSによって炭酸水素ナトリウムと共に凝集されたDMEM における、SP2/0細胞(図A)、AE-1細胞(図B)およびL5.1細胞(図C)の継代の達成を示す折れ線グラフを合わせたものである。
【図10】水によって再構成された標準粉末培養培地(対照培地)における、または、本発明の方法に従って大規模量にて調製された凝集粉末培養培地における、4回の継代に渡る、SP2/0細胞の増殖を示す折れ線グラフである。結果は、対照培地(□)、水によって凝集された本発明の粉末培養培地(◆)、および、水によって凝集された本発明の自動pH粉末培養培地(炭酸水素ナトリウムを含む)(黒ぬり四角)について示される。
【図11】2%(黒ぬり三角)または10%(◆)の液体ウシ胎児血清(FBS)を含む培地、または、本発明のスプレー乾燥法によって調製された2%(×)または10%(黒ぬり四角)の粉末FBSを含む培地において、6日間または7日間に渡って培養されたAE-1細胞の増殖を示す折れ線グラフである。重複実験について、図Aおよび図Bにて示される。
【図12】2%(黒ぬり三角)または10%(◆)の液体FBSを含む培地、または、本発明のスプレー乾燥法によって調製された、2%(×)または10%(黒ぬり四角)の粉末FBSを含む培地において、7日間に渡って培養された、SP2/0細胞の増殖を示す折れ線グラフである。重複実験について、図Aおよび図Bにて示される。
【図13】5%の液体FBSを含む培地(◆)、または、本発明のスプレー乾燥法によって調製された5%の粉末FBSを含む培地(黒ぬり四角)における、4回の継代に渡るAE-1細胞の増殖の折れ線グラフである。
【図14】5日間に渡るSP2/0細胞の増殖に対する、γ照射および凝集の影響を示す折れ線グラフである。
【図15】凝集培養培地におけるVERO細胞の増殖に対する、γ照射の影響を示す棒グラフである。
【図16】4回の継代に渡る、293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対する、γ照射の影響を示す一連の折れ線グラフである。各グラフにおいて、標準の血清フリーの293培地(黒塗りひし形)、トランスフェリンを含まない培地(黒ぬり四角)、-70℃(▲)もしくは室温(*)にてγ照射された粉末トランスフェリンを含む培地、または、γ照射されていないが-70℃(×)もしくは室温(●)にて保存されていた粉末トランスフェリンを含む培地において、細胞は培養された。各データ計測点についての結果は重複フラスコの平均である。図A:継代1の細胞;図B:継代2の細胞;図C:継代3の細胞;図D:継代4の細胞。
【図17】第一(P×1)、第二(P×2)および第三(P×3)継代における、足場非依存性細胞(図Aおよび図B)および足場依存性細胞(図Cおよび図D)の増殖を支持するFBSの能力に対する、異なる照射条件下におけるγ照射の影響を示す一連の棒グラフである。図A:SP2/0細胞;図B:AE-1細胞;図C:VERO細胞;図D:BHK細胞。
【図18】様々な容量の5N HClを加えた際の、二塩基形態(x---x)または一塩基形態(o---o)における、5.1mMのリン酸ナトリウム溶液の緩衝作用動態を描く折れ線グラフである。
【図19】NaHCO3を添加した、または添加しない、様々な形態におけるRPMI-1640培養培地についての緩衝作用動態を描く一連の折れ線グラフである。図A:液体培地対粉末培地。
【符号の説明】
【0169】
◆---◆:NaHCO3を含む液体RPMI-1640(この線はNaHCO3を含む粉末RPMI-1640についてのものと重なることに注意する);

NaHCO3を含まない液体RPMI-1640;

NaHCO3を含む粉末RPMI-1640(この線はNaHCO3を含む液体RPMI-1640についてのものと重なることに注意する);
x---x:凝集されたが自動pHではない、NaHCO3を含む粉末RPMI-1640;
*---*:凝集された、自動pHである、NaHCO3を含む粉末RPMI-1640;
図B:粉砕された、または粉砕されていない粉末培地。
◆---◆:粉砕されていないNaHCO3を含む粉砕されたRPMI-1640(この線は、粉砕されたNaHCO3を含む、粉砕されていないRPMI-1640についてのものと重なることに注意する);

NaHCO3を含まない、粉砕されたRPMI-1640;

粉砕されたNaHCO3を含む、粉砕されていないRPMI-1640(この線は、粉砕されていないNaHCO3を含む、粉砕されたRPMI-1640についてのものと重なることに注意する);
x---x:凝集されたが自動pHではない 、粉砕されたNaHCO3を含む粉砕されていないRPMI-1640;
*---*:凝集された、自動pHである、粉砕されたNaHCO3を含む粉砕されていないRPMI-1640。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、自動的にpHを調整する乾燥粉末培養培地を作製するための方法:
(a)溶媒による該粉末の再構成の際に望ましい最終pHを自動的に提供するために、該粉末に加えることを必要とされる、pH対抗形態の緩衝塩の比率を決定する段階;および
(b)ある量のpH対抗形態の緩衝塩を、段階(a)において決定される比率で該粉末に加える段階。
【請求項2】
乾燥粉末培地を包装する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
乾燥粉末培地を滅菌する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
培地が滅菌状態になるまで乾燥粉末培地にγ線を照射することにより、滅菌が達成される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
培地が、少なくとも1つの一塩基および/または二塩基の緩衝塩を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
一塩基および/または二塩基の緩衝塩が、一塩基および/または二塩基のリン酸塩である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
一塩基および/または二塩基のリン酸塩の少なくとも1つがリン酸ナトリウム塩である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
一塩基および/または二塩基のリン酸塩の少なくとも1つがリン酸カリウム塩である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
乾燥粉末培地が炭酸水素ナトリウムを含むが、保存の際にCO2を遊離しない、請求項1記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜3または請求項9のいずれか一項記載の方法によって生産される、自動的にpHを調整する乾燥粉末培養培地。
【請求項11】
いかなる補助的栄養成分も添加せずに、溶媒による培地の再構成の際に、インビトロの細胞の培養を支持する乾燥粉末完全培養培地。
【請求項12】
培地が自動的にpHを調整する培地である、請求項11記載の培地。
【請求項13】
血清、1つもしくは複数の培養培地補足物、L-グルタミン、インスリン、トランスフェリン、1つもしくは複数のホルモン、1つもしくは複数の脂質、1つもしくは複数の成長因子、1つもしくは複数のサイトカイン、1つもしくは複数の神経伝達物質、動物の組織、器官もしくは腺の1つもしくは複数の抽出物、1つもしくは複数の酵素、1つもしくは複数のタンパク質、1つもしくは複数の微量元素、1つもしくは複数の細胞外マトリックス成分、1つもしくは複数の抗生物質、1つもしくは複数のウイルス阻害剤、および/または、1つもしくは複数の緩衝液からなる成分群より選択される、1つもしくは複数の成分を培地が含む、請求項11記載の培地。
【請求項14】
細胞を培養する方法であって、以下の段階を含む方法:
自動的にpHを調整する乾燥粉末培地を溶媒によって再構成し、培養培地溶液を形成する段階;および、
細胞の培養に好都合な条件下にて該液体溶液と細胞を接触させる段階。
【請求項15】
細胞を培養する方法であって、以下の段階を含む方法:
請求項1〜3または請求項9のいずれか一項記載の方法に従って調製される、自動的にpHを調整する乾燥粉末培養培地を調製する段階;
少なくとも1つの溶媒によって培地を再構成し、培養培地溶液を形成する段階、および、
細胞の培養に好都合な条件下にて該溶液と細胞を接触させる段階。
【請求項16】
細胞を培養する方法であって、以下の段階を含む方法:
溶媒によって請求項10記載の培養培地を再構成し、培養培地溶液を形成する段階;および、
細胞の培養に好都合な条件下にて該溶液と細胞を接触させる段階。
【請求項17】
細胞を培養する方法であって、以下の段階を含む方法:
溶媒によって請求項11記載の培養培地を再構成し、培養培地溶液を形成する段階;および、
細胞の培養に好都合な条件下にて該溶液と細胞を接触させる段階。
【請求項18】
細胞が細菌細胞である、請求項14、16または17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
細胞が細菌細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項20】
細胞が真核細胞である、請求項14、16または17のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
細胞が真核細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項22】
真核細胞が、酵母細胞、植物細胞、もしくはそこから由来する細胞系である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
真核細胞が、酵母細胞、植物細胞、もしくはそこから由来する細胞系である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
真核細胞が、動物細胞もしくはそこから由来する細胞系である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
真核細胞が、動物細胞もしくはそこから由来する細胞系である、請求項21記載の方法。
【請求項26】
動物細胞が、哺乳動物細胞もしくはそこから由来する細胞系である、請求項24または請求項25記載の方法。
【請求項27】
哺乳動物細胞が、ヒト細胞もしくはそこから由来する細胞系である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜3または請求項9のいずれか一項記載の方法に従って調製される、自動的にpHを調整する乾燥粉末培養培地を含有する容器を、1つまたは複数含む、細胞を培養するためのキット。
【請求項29】
請求項10記載の、自動的にpHを調整する乾燥粉末培養培地を含有する容器を、1つまたは複数含む、細胞を培養するためのキット。
【請求項30】
請求項11記載の乾燥粉末完全培養培地を含有する容器を、1つまたは複数含む、細胞を培養するためのキット。
【請求項31】
少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つの培養培地補足物、少なくとも1つの動物組織抽出物、少なくとも1つの動物器官抽出物、少なくとも1つの動物腺抽出物、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つのタンパク質、少なくとも1つのビタミン、少なくとも1つのサイトカイン、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの微量元素、少なくとも1つの細胞外マトリックス成分、少なくとも1つの緩衝液、少なくとも1つの抗生物質、および少なくとも1つのウイルス阻害剤からなる群より選択される、少なくとも1つの付加的な成分を含有する付加的な容器を、1つまたは複数さらに含む、請求項28記載のキット。
【請求項32】
少なくとも1つの成長因子、少なくとも1つの培養培地補足物、少なくとも1つの動物組織抽出物、少なくとも1つの動物器官抽出物、少なくとも1つの動物腺抽出物、少なくとも1つの酵素、少なくとも1つのタンパク質、少なくとも1つのビタミン、少なくとも1つのサイトカイン、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの微量元素、少なくとも1つの細胞外マトリックス成分、少なくとも1つの緩衝液、少なくとも1つの抗生物質、および少なくとも1つのウイルス阻害剤からなる群より選択される、少なくとも1つの付加的な成分を含有する付加的な容器を、1つまたは複数さらに含む、請求項29または請求項30記載のキット。
【請求項33】
請求項10記載の、自動的にpHを調整する培養培地、および少なくとも1つの細胞を含む組成物。
【請求項34】
組成物が粉末である、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
請求項11記載の完全培養培地および少なくとも1つの細胞を含む組成物。
【請求項36】
細胞が、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞からなる群より選択される、請求項33または請求項35記載の組成物。
【請求項37】
動物細胞が哺乳動物細胞である、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項37記載の組成物。
【請求項39】
細胞が、株化された細胞系、もしくは形質転換された細胞系である、請求項36記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【公開番号】特開2009−165485(P2009−165485A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66030(P2009−66030)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【分割の表示】特願2002−539481(P2002−539481)の分割
【原出願日】平成13年11月6日(2001.11.6)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】