説明

乾燥装置、および処理装置

【課題】基材上に塗布された塗布液を乾燥させる乾燥装置において、基材を非接触にて下面より支持する浮上支持装置は複雑な構造が必要であり、コスト高の原因となっていた。
【解決手段】浮上支持装置5を、中空の本体51と、本体51の上面に配置される第1プレート52および第2プレート53により形成する。第1プレート52には第1開口56が、第2プレート53には第2開口57がそれぞれ形成されており、その一部を重複させて開口部を形成する。基材の高さ変化が中空の本体51の内部に与える影響を少なくする事ができるため、簡便な構造により、基材を安定的に下面から支持することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔やフィルム状物を連続的に搬送しつつ、塗布液を塗布した後、乾燥処理を行う乾燥装置、および、乾燥装置を含む処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属箔やフィルム状物など、可撓性を有する薄板を連続的に搬送しつつ、複数の工程を経て製品を製造する技術がある。例えば、リチウムイオン電池などの化学電池の製造においては、基材としての金属箔の上に電極材料を含む塗布膜を形成し、その金属箔を連続的に搬送しつつ、加熱乾燥を行う処理が行われている。このような箔の連続搬送においては、巻き取りロール、および巻き出しロールの間を、テンションローラなどを用いる事により一定のテンションを与えつつ処理を行う、所謂ロールトゥロール法が一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、このようなロールトゥロール法において、フィルム状物の搬送方向を変換するため、円筒面に形成された開口部から流体を噴出することにより、フィルム状物を非接触にて支持する浮揚装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−46272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、薄板2の表面に開口部10、11、12が形成されている。開口部10、11、12はそれぞれ、薄板2の表面から裏面側に突出する突状部13、14、15、および、突状部の突設の際に形成されるスリット状の吐出孔を備えている。浮揚装置1の内部に供給されたエアは、この吐出孔を通じて突状部にから外部に放出される。これにより、フィルム状物を非接触にて支持する。
【0006】
しかしながら、上述するように金属の薄板に対して一定の突状部を形成し、さらに同時にスリット状の吐出孔を一定の精度にて形成するということは、非常に複雑な加工を必要とする。その結果、コストが増大し、また、製品の歩留まりも低くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、薄板を搬送しつつ連続的に処理を行う処理装置において、薄板を非接触にて支持しつつ乾燥処理を行う乾燥装置、および、乾燥装置を含む処理装置を、簡便な構造にて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、基材の上に形成された塗布膜の乾燥処理を行う乾燥装置であって、連続的に搬送される基材に対して、下方向から気体を噴出し、前記基材を非接触にて支持する支持手段と、前記支持手段に対向配置され、前記基材に対して上方向から熱風を噴出する熱風噴出部と、を備え、前記支持手段は、中空の本体部と、前記本体部の上面を形成するように配置される第1プレートと、前記第1プレートの上面に当接配置される第2プレートと、前記本体部の内部空間に連通するように気体を供給する配管部と、を有し、前記第1プレートおよび第2プレートには、それぞれ複数の開口が形成され、第1プレートに形成される開口および第2プレートに形成される開口は、それぞれ一部分が重複する位置に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本願の第2発明は、請求項1に記載の乾燥装置であって、前記第2プレートの開口は矩形形状であり、前記第2プレートの一対の対向する辺は、前記第1プレートに形成された開口のうち、隣接する2つの異なる開口に対して、重複する位置に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本願の第3発明は、請求項1または2に記載の乾燥装置であって、前記支持手段は、前記配管部から前記本体部の内部空間に流入する気流の方向を変化させるための気流制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
本願の第4発明は、請求項3に記載の乾燥装置であって、前記気流制御手段は、前記本体部の底面に配置され、前記配管部から前記本体部の内部空間に流入する気流を上方に導く傾斜面をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
本願の第5発明は、請求項3に記載の乾燥装置であって、前記気流制御手段は、前記本体部の内部空間における、前記配管部から流入する気流に沿った方向の流路断面積を、前記気流の下流側に向けて漸次減少させる流路制限手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本願の第6発明は、基材の上に塗布膜を形成する処理装置であって、基材として、長尺状の金属箔を巻設し、予め設定された速度にて巻き取りおよび巻き出しを行う搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される基材の上に電池材料を塗布する塗布装置と、前記塗布装置によって基材の上に塗布された電極材料に対して乾燥処理を行う、請求項1から請求項5のいずれかに記載の乾燥装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願の第1発明〜第6発明によれば、基材を乾燥する乾燥装置において、基材を非接触にて支持する支持装置を、簡便な構造にて形成することが可能となる。
特に、本願の第2発明によれば、矩形状の開口に対して両側から気流が流入することにより、基材を安定して支持することが可能となる。
特に、本願の第3〜第5発明によれば、支持装置の長さが長くなった場合においても、基材を安定して支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る、処理装置の概要図である。
【図2】本発明の実施形態に係る、乾燥機構の概要図である。
【図3】本発明の実施形態に係る、浮上支持装置の上視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、浮上支持装置の斜視図である。
【図5】浮上支持装置における、開口部の詳細を説明する上視図、および横断面図である。
【図6】開口部からの気流の流れを説明する図である。
【図7】その他の実施形態に係る、浮上支持装置の開口部の横断面図である。
【図8】その他の実施形態に係る、浮上支持装置の横断面図である。
【図9】その他の実施形態に係る、浮上支持装置の開口部の上視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明を行う。図1は、本発明の実施形態に係る処理装置1の概要図である。なお、図面にはZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また図面においては理解を容易にするため、必要に応じて各部の寸法などを誇張または簡略化して描いている。
【0017】
この処理装置1は、基材としての金属箔の上に電極材料である活物質の塗布膜を形成し、その塗布膜の乾燥処理を行ってリチウムイオン二次電池の電極製造を行う装置である。処理装置1は、搬送機構2、塗布機構3、乾燥機構4を備える。
【0018】
基材9は、リチウムイオン二次電池の集電体として機能する金属箔である。処理装置1にてリチウムイオン二次電池の正極を製造する場合には、基材9として例えばアルミニウム箔(Al)を用いることができる。また、処理装置1にて負極を製造する場合には、基材9として例えば銅箔(Cu)を用いることができる。基材9は長尺のシート状の金属箔であり、その幅および厚さについては特に限定されるものではないが、例えば幅500mm〜800mm、厚さ10μm〜20μmのものが一般的に用いられる。
【0019】
長尺の基材9は、巻き出しローラ21から送り出されて、巻き取りローラ23によって巻き取られることにより、塗布機構3、乾燥機構4の順に搬送される。搬送機構2は、これらの巻き出しローラ21、巻き取りローラ23、およびその中間にて基材9を支持する複数の補助ローラ22、とを備えて構成されている。なお、補助ローラ22の個数および配置については図1の例に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に増減することができる。また搬送機構2は図示しない制御部によってその搬送速度を制御することが可能となっており、予め設定された一定の速度にて、基材9を搬送する。
【0020】
塗布機構3は、タンク31、ポンプ32、およびノズル33を備える。塗布機構3は、タンク31に貯留された電極材料である活物質の溶液(以降、単に塗布液、と称する)をポンプ32によってノズル33に向けて送出し、ノズル33の先端に形成されたスリットから基材9上に塗布する機構である。
【0021】
処理装置1にて正極を製造する場合には、タンク31に正極材料として、例えば正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO)、導電助剤であるカーボン(C)、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の混合液を貯留し、ノズル33から基材9に吐出する。コバルト酸リチウムに代えて、正極活物質としてニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、燐酸鉄リチウム(LiFePO)などを用いることもできる。
【0022】
一方、処理装置1にて負極を製造する場合には、タンク31に負極材料として、例えば負極活物質である黒鉛(グラファイト)、結着剤であるPVDF、溶剤であるNMPの混合液を貯留し、ノズル33から基材9に吐出する。黒鉛に代えて、負極活物質としてハードカーボン、チタン酸リチウム(LiTi12)、シリコン合金、スズ合金などを用いることもできる。また、正極材料および負極材料の双方において、結着剤としてPVDFに代えてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)などを使用することができる。さらに、結着剤としてSBR、溶剤として水を用いる場合には、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を併用することもできる。
【0023】
ポンプ32は、タンク31に貯留された塗布液をノズル33に向けて送給するポンプであり、具体的には定圧ポンプや定容積ポンプなどを用いることができる。またノズル33は、基材9の幅方向に沿ってスリット状の吐出口を設けたスリットノズルを用いることができる。ポンプ32から送給された塗布液を吐出口から吐出しつつ、基材9を搬送することにより、基材9の表面に塗布し、塗布膜を形成する。
【0024】
塗布機構3において基材9の表面に形成される塗布膜の厚さは数百ミクロンであり、基材9の厚さの10倍以上である。このような比較的厚い塗布膜を形成したとしても、塗布液は1Pa・s(パスカル秒)以上の粘度を有する高粘度のスラリーであるため、直ちに液ダレ等が生じることは無い。塗布機構3にて塗布膜が形成された基材9は搬送機構2によって乾燥機構に搬送されて塗布膜の乾燥処理が行われる。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る乾燥機構4の概要図である。乾燥機構は、両端に開口が形成された筐体40の内側に熱風噴出部41、排気部43、および浮上支持装置5を備えている。
【0026】
筐体40は、搬送機構2によって基材9が搬送される搬送経路を囲むように設けられている。筐体40の両端には基材9が通過するための開口が形成されている。筐体40の内側において、基材9の下側には、複数の浮上支持装置5(本実施形態では4個)が基材9の搬送方向(Y方向)に沿って設けられる。また、筐体40の内側において、基材9の上側には、複数の熱風噴出部41(本実施形態では4個)が基材9の搬送方向(Y方向)に沿って設けられる。また、各熱風噴出部41の間には、排気部43が設けられる。
【0027】
浮上支持装置5は、筐体40の外部に設けられた熱風供給源から供給される熱風を筐体40内部に導き、基材9の下面に噴出することにより、基材9を一定の高さに保持する機構であり、詳細は後述する。熱風供給源は、図示を省略するヒータおよび送風機からなり、空気やN2等の気体を加熱して圧送する機構である。なお、本実施形態では、浮上支持装置5に対して熱風を供給しているが、これに限定されるわけではなく、加熱しない(常温の)気体を供給してもよい。
【0028】
熱風噴出部41は、前述の浮上支持装置5に基材9を介して対向配置されている。各熱風噴出部41の下面には図示を省略するスリットが形成されており、筐体40の外部に設けられた熱風供給源から供給される熱風を筐体40内部に導き、基材9の上面に噴出し、塗布膜を乾燥する。各熱風噴出部41の下面には整流板42が基材9に沿った方向に配置されている。
【0029】
整流板42は、熱風噴出部41から噴出した熱風を基材9の表面に沿った方向に整流する役割を持っている。また整流板42の表面にはセラミックが使用されており、熱風によって加熱されることにより赤外線を放出し、基材9の表面の塗布液を効率よく加熱することで、乾燥を促進することが可能となる。整流板42は金属の板材に対してセラミックを溶射することによって形成されているが、整流板42自体がセラミックプレートであってもよい。セラミック材料としては、アルミナ系、チタニア系、ジルコニア系、またはこれらの混合物など、加熱することにより赤外線を放出する材料であればよい。
【0030】
排気部43は、熱風噴出部41、および、浮上支持装置5から噴出された熱風を、筐体40の外部に排出する。図では、整流板42の間隙に対応する位置に3箇所の排気部3が設けられているが、これに限定されず、筐体40に対して少なくとも一箇所の排気があればよい。排気部43から排出された熱風は、図示しない配管を経由して処理装置1の外部に排出される。
【0031】
なお、図2では、基材9は水平方向(Y方向)に搬送される実施形態を示しているが、基材9は傾斜姿勢で搬送されてもよく、また、勾配をもって搬送されてもよい。勾配をもって搬送される場合は、熱風噴出部41は、勾配姿勢の基材9に対して垂直な方向から噴出される。また、浮上支持装置5も同様に、勾配姿勢の基材9に対して垂直な方向から基材9を支持する。
【0032】
図3は、筐体40の内部に配置された浮上支持装置5を、図示+Z方向から見た上視図である。説明の簡略化のため、筐体40、および基材9を仮想線にて描いている。図4は、浮上支持装置5の内部構造を説明するため、図3のA−A断面から浮上支持装置5を見た図である。さらに、説明のために後述の第2プレート53を切断した状態で記載している。
【0033】
図3に示すように、浮上支持装置5はX方向に基材9の幅よりも長い直方体形状に形成された部材である。この浮上支持装置5が、筐体40の内側にて前述の熱風噴出部に対向する位置に、Y方向に複数配列されている。浮上支持装置5は、本体51、第1プレート52、第2プレート53、配管54を備えて構成されている。
【0034】
本体51は、X方向に長い直方体状であり、上面が開放された箱形状である。具体的にはステンレス等の金属板材を製缶構造にて形成されている。第1プレート52と第2プレート53は、図4に断面で示すように、本体51の上面に重なるように配置され、締結部55によって本体部51と固定されている。また第1プレート52には第1開口56が、第2プレート53には第2開口57がそれぞれ形成されており、図3で示すように一部が重なるように形成されている。第1開口56、および第2開口57(以後、第1開口56と第2開口57を合わせて、開口部と呼ぶ場合がある)は、浮上支持装置5の上面に、Y方向X方向それぞれに複数形成され、基材9の幅方向と略同じ幅に均等に配置されている。第1プレート52および第2プレート53は、本体51と同様にステンレス等の金属板材によって形成され、開口56および開口57はレーザ加工や打ち抜き加工などの一般的な加工方法によって形成されている。
【0035】
本体51の内部空間は、図示X方向にて配管54と連通しており、また上面は第1プレート52および第2プレート53にて囲まれている。そのため、配管54を経由して図2に示すように熱風が供給されると、本体51の内部空間が加圧され、第1開口56および第2開口57を経由して熱風を噴出させる。締結部材55は、上記のような気密構造を満足させるべく、固定方法が適宜選択される。具体的には、本体51にタップ穴を形成し、第1プレート52および第2プレート53をネジ部材によって締結すればよい。また、本体51、第1プレート52、第2プレート53をそれぞれ溶接や接着などの構造により締結してもよい。さらには、必要に応じて本体51と第1プレートとの間にパッキンなどのシール部材を設けてもよい。
【0036】
図5は、第1開口56および第2開口57について詳細に説明する図である。図5aは、開口部をZ方向から見た上視図である。また図5bは、開口部を図5aのB−B断面から見た断面図である。図5aに示すように、第1開口56はX方向に長い矩形状の開口であり、第2開口57に対してその一部が重なるように、Y方向に沿って2箇所形成されている。第1開口56は、Y方向長さが1mm〜4mm、X方向長さが6mm〜9mmの開口である。なお、本実施例では図3に示すように、浮上支持装置5の上面に、全て同一形状の開口が形成されているが、流速分布などにより開口形状が変化してもよい。
【0037】
また第2開口57は、略正方形状の開口であり、その開口面積の大半は第1開口56が形成されていない領域575(図5aにてハッチングを付した部分)によって、本体51の内部に対して閉じられている。本実施形態では、第2開口57は、一辺が5mm〜8mmの略正方形状の開口である。
【0038】
なお、本実施形態では、第2開口57の端面571−571間の距離をL1、第2開口57の端面571と、第1開口56の端面561との間の距離をL2、とすると、
0.05 ≦ 2 × L2 / L1 ≦ 0.3
となるように開口部が形成されている。
【0039】
図6は、第1開口56、および第2開口57から噴出する熱風の気流を説明する図である。図6に示すように、基材9は第2プレート53の上面から若干の間隙を有するように、図示しない補助ローラ22によって支持されている。また、基材9には巻き出しローラ21および巻き取りローラ23によって張力が付与されている。しかし、基材9の上方からは、熱風噴出部41から熱風が噴出するため、基材9には下向きの力が発生している。この合成された下向きの力は、様々な要因で変動するため、第2プレート53の上面に対する基材9のZ方向の位置(高さ)は、状況により上下する場合がある。
【0040】
一方、浮上支持装置5において、本体51の内部空間に供給された熱風は、第1プレート52の第1開口56を経由して、第2プレート53の第2開口57に向けて噴出する。このとき、第1開口56と第2開口57は、その一部が重なるように配置されているため、結果として、第2開口57には、Z方向に対して斜め方向の気流Tが発生する。斜め方向から第2開口57に流入した気流Tは、第2開口57の中で拡散しつつ、第2プレート53と基材9との間隙を含めた領域に対して、略Z方向に沿った緩やかな気流Sを発生させる。
【0041】
図6に示すように、第2開口57から気流Sが発生している状態で、基材9の高さが低くなる(第2プレート53に近づく)場合、気流Sの流量が制限されることにより、第2開口57付近の圧力が上昇する。そのため、基材9を押し上げる力が強くなり、結果的に基材9の高さが低くなることを防止する。このとき、第2開口57からの圧力変動は本体51の内部空間にほとんど影響を与えないため、本体51の内部空間を介して連通する他の開口部には影響が無い。逆に、基材9の高さが高くなる(第2プレート57から遠ざかる)場合、第2開口57付近の圧力が低下する。そのため、基材9を押し上げる力が弱くなる。
【0042】
このように、基材9を下面より押し上げる力が基材9の高さに応じて変化するため、バネのように基材9を一定の高さにて支持することが可能となる。また、第2開口57における圧力変化は、本体51の内部空間の圧力に対して、ほとんど影響を与えない。そのため、基材9の高さが局部的に変動した場合であっても、本体51の内部空間を介して連通する他の開口部には影響が無く、浮上支持装置5全体として、基材9を一定の高さに支持することが可能となる。
【0043】
<その他の実施形態について>
以上、本発明の実施形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述した以外にも種々の変更を行うことが可能である。例えば、上述の実施形態では、2枚のプレートにて開口部を形成していたが、これに限定される訳ではない。
【0044】
例えば、図7に示すように、三枚のプレート61、62、63を用い、開口64、65、66によって開口部を形成してもよい。この場合、プレート61に形成された開口64を通過した気流は、プレート62に形成された開口65内で略水平に近い角度まで傾斜され、その後、プレート63に形成された開口66を通過して気流Sを形成する。そのため、基材9の高さ変化による圧力変動を、より多くの空間によって吸収することが可能となるが、プレートの枚数が増えることにより、コストが増加してしまう。
【0045】
また、上述の実施形態では、本体51は中空の単純な箱形状であったが、これに限定される訳ではない。例えば図8に示すように、本体51の内部に気流制御板511、および512を設けてもよい。図8は、本発明のその他の実施形態である浮上支持装置5aをY方向から見た断面図である。
【0046】
浮上支持装置5が支持すべき基材9の幅が長くなると、それに応じて浮上支持装置5の長さも長くなる。このような場合において、浮上支持装置5の一方側面から熱風を供給すると、長手方向における熱風の噴出量に差が生じるおそれがある。例えば、本体51の+X側から熱風を供給する場合、吐出される流速は、−X側が高く、+X側が低くなる傾向がある。そのため、浮上支持装置5aでは、本体51の内部に気流制御板511および512を設けて内部空間から噴出する気流の流速を均一化する。
【0047】
気流制御板511は、本体51の底面に固定され、配管54から流入する気流に対して斜め上方に向かうように傾斜して配置されている。また気流制御板512は、気流制御板511の上部に配置され、本体51の内部の、−X側端に向けて、若干の傾斜を有するように固定されている。これにより、浮上支持装置5aの+X方向側の開口に対して積極的に上方向の気流を与え、浮上支持装置5aから噴出する熱風の流速を均一化することができる。
【0048】
また、上述の実施形態では、いずれも、開口は矩形形状であったが、これに限定される訳ではなく、図9aに示すような円形であってもよい。また、上述の実施形態では、開口57に対して2つの開口56が重複することで、開口部を形成していたが、これに限定されるわけでない。図9bに示すように、1つの開口57に対して1つの開口56が、その一部を重複させて配置されることにより、開口部を形成してもよい。また、本体51に対して配管54は一方側面に配置されていたが、両側面から熱風を供給しても良いし、下面など、他の面から供給してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 処理装置
2 搬送機構
3 塗布機構
4 乾燥機構
5 浮上支持装置
9 基材
21 巻き出しローラ
22 補助ローラ
23 巻き取りローラ
31 タンク
32 ポンプ
33 ノズル
40 筐体
41 熱風噴出部
42 整流板
43 排気部
51 本体
52 第1プレート
53 第2プレート
54 配管
55 締結部
56 第1開口
57 第2開口
61、62、63 プレート
64、65、66 開口
511、512 気流制御板
561、571 開口の端面
L1、L2 開口部の端面間の距離
S、T 気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に形成された塗布膜の乾燥処理を行う乾燥装置であって、
連続的に搬送される基材に対して、下方向から気体を噴出し、前記基材を非接触にて支持する支持手段と、
前記支持手段に対向配置され、前記基材に対して上方向から熱風を噴出する熱風噴出部と、を備え、
前記支持手段は、
中空の本体部と、
前記本体部の上面を形成するように配置される第1プレートと、
前記第1プレートの上面に当接配置される第2プレートと、
前記本体部の内部空間に連通するように気体を供給する配管部と、を有し、
前記第1プレートおよび第2プレートには、それぞれ複数の開口が形成され、第1プレートに形成される開口および第2プレートに形成される開口は、それぞれ一部分が重複する位置に形成されていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥装置であって、
前記第2プレートの開口は矩形形状であり、前記第2プレートの一対の対向する辺は、前記第1プレートに形成された開口のうち、隣接する2つの異なる開口に対して、重複する位置に形成されていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乾燥装置であって、
前記支持手段は、前記配管部から前記本体部の内部空間に流入する気流の方向を変化させるための気流制御手段をさらに備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項4】
請求項3に記載の乾燥装置であって、
前記気流制御手段は、前記本体部の底面に配置され、前記配管部から前記本体部の内部空間に流入する気流を上方に導く傾斜面をさらに備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項5】
請求項3に記載の乾燥装置であって、
前記気流制御手段は、前記本体部の内部空間における、前記配管部から流入する気流に沿った方向の流路断面積を、前記気流の下流側に向けて漸次減少させる流路制限手段を備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項6】
基材の上に塗布膜を形成する処理装置であって、
基材として、長尺状の金属箔を巻設し、予め設定された速度にて巻き取りおよび巻き出しを行う搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される基材の上に電池材料を塗布する塗布装置と、
前記塗布装置によって基材の上に塗布された電極材料に対して乾燥処理を行う、請求項1から請求項5のいずれかに記載の乾燥装置と、を備えることを特徴とする処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−202650(P2012−202650A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69385(P2011−69385)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】