説明

乾燥食品の酵素処理法

【課題】乾燥食品素材の酵素処理による含有成分の酵素変換を、効果的、かつ極めて効率的に行なう方法を提供すること、及び、該酵素処理方法を用いて、乾燥食品素材含有成分を変換し、香味の増強や物性の改善された食品素材を提供すること。
【解決手段】乾燥食品素材に対して、酵素溶液を1:0.2〜1:5の重量比という非常に水分含量の制限された状態で混合して反応を行なうことにより、飛躍的に進行した酵素反応を達成する。この方法による乾燥食品素材の特定条件での酵素処理を用いることにより、従来の方法では得られなかった、乾燥食品中の香味成分の効果的な変換が可能となり、該方法を用いて、食品素材の香味を大幅に増強した食品素材を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥食品素材を酵素溶液と反応させ、該乾燥食品素材の含有成分の酵素変換を行なう乾燥食品素材の酵素処理において、原料となる乾燥食品素材を制限された特定量の酵素溶液と反応させることにより、効果的、かつ極めて効率的に乾燥食品素材含有成分を変換し、乾燥食品素材の香味の増強や物性の改善された食品素材に加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や食品素材において、保存性等を向上させるために各種食品、食品素材を乾燥することは通常良く行われている手法である。しかし、例えば、製造の際の乾燥処理工程で風味が低下することで香味のメリハリがなくなり、食品素材としての魅力が低下する等の問題が生じることは否めない事実である。そのため、乾燥工程を工夫したり、味付けのために調味素材を添加したりすることで対応することが多い。
【0003】
例えば、乾燥工程の工夫としては乾燥方法の選択等が行なわれる。乾燥方法として、例えばフリーズドライ法は、香味変化の少ない方法の代表的なものであるが、それでも香味の低下は認められる。更に、フリーズドライ法は、処理コストが高いため汎用的な食品素材に対して用いるには、必ずしも実用的とは考えられないという面もある。一方、味付けのために調味素材を添加したりする工夫においても、当該食品素材以外の原料を使用して調味することについては、消費者の受容性の面では少なからず問題がある。
【0004】
そこで、食品原料に対して酵素処理を行うことで香味を増強することはよく行なわれている。代表的な例として、タンパク系素材に対してプロテアーゼで反応を行い、アミノ酸を生成させて調味素材を製造する例があげられる。ただし、このような場合は、あくまでも酵素処理によって食品原料を新たな食品に変換、加工するという目的のためにおこなわれており、食品素材の香味の増強のために行なわれているわけではない。したがって、従来は、酵素処理後の原料自体は利用されることなく、酵素処理残渣として廃棄されることがほとんどであった。したがって、従来乾燥食品に対して酵素処理を行って、乾燥食品自体の香味を改良しようとする技術も、あまり知られていなかった。
【0005】
茶類等においては、乾燥茶葉に対して酵素処理を行う例が知られている。例えば、特開2003−153651号公報には、茶類の渋みの多い生葉原料又は乾燥茶葉に、タンニン分解、多糖類分解、蛋白質分解を行なう少なくとも一種以上の分解酵素を添加して、酵素処理し、茶葉原料中の成分を変換する方法が記載されている。具体的には、緑茶等の生茶葉を蒸煮し、冷却したもの、或いは、烏龍茶原料茶葉を萎凋処理を施したものに、タンニン分解酵素であるタンナーゼ、多糖類分解酵素であるガマナーゼ、蛋白質分解酵素であるコクラーゼを添加して、酵素処理を施し、これを通常の製茶工程に付して、茶葉の原料成分を変え、茶の渋味を調整して、甘味と旨味のある茶製品を製造することが開示されている。しかしながら、この製茶工程における酵素処理も、分解酵素を茶葉に噴霧、混合攪拌して、原料成分中のタンニンや、多糖類、及び蛋白質を分解処理するにとどまるものであり、茶葉中の香味成分を変換して、高香味の茶抽出液を製造し得るような酵素処理を行なっているものではない。
【0006】
他方、乾燥食品の酵素処理として、凍結乾燥処理したインスタント米の製造において、セルラーゼやペクチナーゼのような植物細胞組織崩壊酵素を作用させて、復元性を改善したり(特開平8−294365号公報)、とろろ昆布に、アルギン酸類を分解する酵素で処理して、昆布固形乾燥食品の熱湯による復元性を改善したり(特開平9−224号公報)、植物性タンパク質を有する食材にペクチン分解酵素を作用させて、冷凍変性による食感の低下を抑制したりするもの(特開2006−320209号公報)が開示されている。これらは、乾燥食品の製造に際して、酵素処理を行なって、乾燥食品の復元性や、食感を改善するものであるが、その酵素処理は、酵素液に浸漬したり、加水、膨潤させたりして、酵素処理自体を特別に工夫したというものでもない。
【0007】
【特許文献1】特開平8−294365号公報。
【特許文献2】特開平9−224号公報。
【特許文献3】特開2003−153651号公報。
【特許文献4】特開2006−320209号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、乾燥食品素材を酵素溶液と反応させ、該乾燥食品素材の含有成分の酵素変換を行なう乾燥食品素材の酵素処理において、該乾燥食品素材の酵素処理による含有成分の酵素変換を、効果的、かつ極めて効率的に行なう方法を提供すること、及び、該乾燥食品素材の酵素処理方法を用いて、乾燥食品素材含有成分を変換し、乾燥食品素材の香味の増強や物性の改善された食品素材に加工する方法、更には、該酵素処理後の食品素材を用いて香味に特徴付けられた食品或いは抽出液を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、先に乾燥緑茶葉を粉砕した或いは緑茶葉製造工程で粉砕された粉砕緑茶葉と酵素溶液を、1:0.2〜1:5の重量比で混合して反応を行なったのち、水もしくは温水で抽出することにより、香味の優れた緑茶抽出液を製造する方法を開発し、特許出願をした(特願2006−182420号)。本発明者は、更に研究を進める中で、乾燥食品素材に対して、酵素溶液を1:0.2〜1:5の重量比という非常に水分含量の制限された状態で混合して、反応を行なうことにより、反応が、飛躍的に進行することを見い出した。この方法による乾燥食品素材の特定条件での酵素処理を用いることにより、従来の方法では得られなかった、乾燥食品中の香味成分の効果的な変換が可能となり、該方法を用いて、食品素材の香味を大幅に増強した食品素材を提供できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、乾燥食品素材(乾燥茶葉を除く)を酵素溶液と反応させ、該乾燥食品素材の含有成分の酵素変換を行なう乾燥食品素材の酵素処理において、乾燥食品素材と、酵素溶液を1:0.2〜1:5の重量比で混合して反応を行なうことにより、乾燥食品素材の酵素処理による含有成分の酵素変換を、効果的、かつ極めて効率的に行なう乾燥食品素材の酵素処理方法からなる。本発明における乾燥食品素材の酵素反応は、乾燥食品素材と酵素溶液の重量比を、1:0.2〜1:3の重量比に設定することが特に好ましい。
【0011】
本発明の乾燥食品素材の酵素処理方法を用いて、乾燥食品の香味成分の変換を有効に行うことができる。例えば、本発明の方法により、乾燥食品素材と酵素溶液との反応を行い、反応終了後、一旦乾燥するか、若しくは湿潤状態のまま密封容器に充填した後殺菌することにより、処理後の香味成分の変換された加工食品素材を流通、保存の便に供することができる。本発明において、乾燥食品の香味成分の変換のために、乾燥食品と、酵素溶液との反応に使用する特に優れた酵素として、リパーゼ、プロテアーゼ、インベルターゼ、β−グルコシダーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、グルタミナーゼ、ペクチナーゼ、クロロゲナーゼを挙げることができる。本発明の香味成分の変換された加工食品素材は、該素材を用いて、香味が増強された食品を創出することができる。
【0012】
すなわち具体的には本発明は、(1)乾燥食品素材(乾燥茶葉を除く)を酵素溶液と反応させ、該乾燥食品素材の含有成分の酵素変換を行なう乾燥食品素材の酵素処理において、乾燥食品素材と、酵素溶液を1:0.2〜1:5の重量比で混合して反応を行なうことを特徴とする乾燥食品素材の酵素処理方法や、(2)乾燥食品素材と、酵素溶液の重量比が、1:0.2〜1:3の重量比であることを特徴とする乾燥食品素材の酵素処理方法や、(3)乾燥食品素材の酵素処理が、乾燥食品の香味成分の変換であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の乾燥食品素材の酵素処理方法からなる。
【0013】
また本発明は、(4)乾燥食品素材と、酵素溶液との反応に使用する酵素が、リパーゼ、プロテアーゼ、インベルターゼ、β−グルコシダーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、グルタミナーゼ、ペクチナーゼ、クロロゲナーゼから選択される1又は2以上の酵素であることを特徴とする上記(3)記載の乾燥食品素材の酵素処理方法や、(5)上記(1)〜(4)のいずれか記載の乾燥食品素材の酵素処理方法によって製造された食品素材の含有成分が酵素変換された乾燥食品素材からなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の乾燥食品の酵素処理法は、乾燥食品素材を酵素溶液と反応させ、該乾燥食品素材の含有成分の酵素変換を行なう乾燥食品素材の酵素処理において、原料となる乾燥食品素材の含有成分と、酵素溶液との反応を飛躍的に促進して、効果的に乾燥食品素材の含有成分の変換を可能とする方法を提供する。そして、従来の方法では難しかった、乾燥食品の含有成分の変換を可能として、乾燥食品素材の含有成分を変換して香味を増強した食品素材の提供を可能とする。更には、該酵素処理後の食品素材から香味に特徴付けられた抽出液を製造したり、或いは香味に特徴付けられた食品を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、乾燥食品素材を酵素溶液と反応させ、該乾燥食品素材の含有成分の酵素変換を行なう乾燥食品素材の酵素処理において、乾燥食品素材と酵素溶液を1:0.2〜1:5好ましくは1:0.2〜1:3の重量比で混合して反応を行なう香味の増強された食品素材の製造方法からなる。
【0016】
本発明に用いられる乾燥食品素材は、通常、食経験のある植物、動物、微生物などであればよく、具体的には、米、大麦、小麦、コーン、そばなどの穀類、さつまいも、ジャガイモなどのイモ類、大豆、小豆などの豆類、栗、ごまなどの種実類、かぼちゃ、たまねぎ、大根、人参などの野菜類、いちご、みかん、りんごなどの果実類、えのきだけ、しいたけなどのキノコ類、昆布、わかめ、海苔などの藻類、いわし、ししゃも、えび、あさりなどの魚介類、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類、卵類、乳類、酵母や乳酸菌などの微生物などが例としてあげられる。また、それらから一部を抽出したあるいは分画して製造した食品素材や微生物の発酵生産物などであってもよい。さらに、これらの素材を一次加工して製造した素材、たとえば玄米や麦茶やそば茶などであってもよい。ただし、これらの水分量が、約5重量%以下であることは必要である。
【0017】
本発明においては、該乾燥食品素材を、粉砕して粉砕乾燥食品の状態で、酵素溶液と反応させてもよい。粉砕乾燥食品を調製するには、乾燥食品素材を通常の粉砕機を用いて粉砕すればよい。また、その乾燥食品素材の製造工程で得られた副産物があればそれを用いてもよい。
【0018】
本発明に用いられる酵素溶液としては、基本的には、乾燥食品に対して反応して該食品の香味変化が確認できるものであって、食品衛生法上使用が認められている酵素であれば、何れの酵素でも用いることができる。具体的には、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、CGTase、デキストラナーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、グルコースイソメラーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、インベルターゼなどの糖質に作用する酵素、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、デアミナーゼ、トランスグルタミナーゼなどのタンパク質・ペプチドに作用する酵素、リパーゼ、エステラーゼなどの脂質に作用する酵素、そのほかのカタラーゼ、オキシダーゼ、ヌクレアーゼなどを、挙げることができる。
【0019】
その中でも特徴ある香味の付与という観点ではβ−グルコシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、リパーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、ラクターゼ、インベルターゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ及びデアミナーゼが好ましい。これらは必ずしも単一で使用する必要はなく、効果を見て、2種以上を組み合わせて使用することができる。また、数種の酵素が混ざった複合酵素の形で使用しても良い。酵素の使用量は、反応による効果が生じれば特に限定はない。その具体的範囲は、その活性の強さや製剤中の賦形剤の含量で大きく変わってくるので一概には決めかねるが、一般には乾燥食品素材に対して0.01重量%〜50重量%、好ましくは0.1重量%〜10重量%程度である。
【0020】
本発明において酵素溶液との反応は、水分含量を制限した状態でおこなわれる。すなわち、本発明における酵素溶液との反応に際しての水分量は、乾燥食品中に酵素が分散して反応が十分に進行するのに必要な量であり、かつ反応中に呈味成分が水分に移行しない量、具体的には乾燥食品重量(乾燥食品素材のうち水分を除いた重量)の0.2倍から5倍程度(粉砕食品素材に対して酵素溶液を1:0.2〜1:3の重量比)である。なお、本発明でいう「酵素溶液」は予め水に酵素を溶解したもののみならず、乾燥食品素材と水とを混合したのちに酵素を添加、混合することもでき、該方法により、結果として乾燥食品重量(乾燥食品素材のうち水分を除いた重量)の0.2〜5倍量の酵素溶液を添加するものでもよい。
【0021】
酵素反応において、該水分量を保持するために、反応中変化がないように密封した環境で行なうことが好ましい。また、反応速度の制御の目的で、適宜攪拌等の物理操作を組み入れることができる。
【0022】
本発明における酵素処理に際しては、用いる酵素により、酵素液のpHの調節を行なうことが好ましい。なお、至適pHが酸性の酵素の場合には、アスコルビン酸やクエン酸、乳酸などを加えて、酸性下で反応させるのが望ましい。酵素処理に際しての、反応温度、反応時間、用いる酵素量等のその他の酵素処理条件については、用いる酵素に応じて、適宜、最適の条件を定めることができる。ただし、反応温度は、微生物管理上45℃以上、更には50℃以上が望ましい。なお、酵素処理終了後は、加熱、マイクロ波照射など、公知の方法により酵素を失活させた方が、香味の安定化という点で望ましい。加熱処理の好適例としては100℃で10分から60分間相当があげられる。好ましくは100℃で20分から40分間相当である。
【0023】
本発明において酵素処理した食品素材を抽出する場合は、酵素処理した食品素材の10倍〜50倍程度の抽出水を用いておこなう。その温度は常温から沸騰水まで適宜使用できる。時間も数分から数時間まで選択できる。短時間の場合には、ろ過、遠心分離などの固液分離工程を経て、そのまま飲料の調合液に使用できるし、比較的長時間かけて抽出する場合にはいわゆる食品エキスになる。飲料にする場合には、通常の方法に則り、必要な原材料を混合して、調合液を製造した後、殺菌を行い、PET、缶等の容器に充填し、製品化する。一方、食品エキスにする場合には、通常の後処理工程を経た後に、そのまま、或いは、濃縮した後に、殺菌し、缶などの容器に充填し、製品化する。場合によっては、スプレードライ、フリーズドライなどの公知の乾燥手段を用いて、乾燥、粉末化することも可能である。
【0024】
酵素溶液と反応した食品素材は通常の方法、すなわち、加熱乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの方法により、水分を5重量%以下程度まで減らすことにより、再度乾燥食品素材として取り扱うことが可能である。また、湿潤状態のままレトルトパウチや金属缶のような密封容器に充填したのちに殺菌することでも同様に流通等可能になる。これらの場合には、それぞれ酵素処理した複数の酵素処理食品素材を混合したものを抽出に供することもできるし、また、酵素処理した食品素材を、お茶やコーヒーなどに適量混合して同時に抽出に供することで新たな香味の抽出液、さらには飲料を製造可能になる。
【0025】
本発明においては、酵素溶液との反応が、飛躍的に進行するため、香味成分の変換に充分な反応が達成でき、その結果、香味の増強された食品素材を得ることができる。
【0026】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
[実施例1〜7、比較例1〜7]
(実施例):各種食品素材各10gに対し、各種酵素と必要に応じてビタミンCを添加したイオン交換水とをよく混合したあと、密閉容器に入れて、一定時間放置して酵素反応させた。反応条件を表1に示す(*β−グリコシダーゼ「アマノ」:WO2003/056930参照)。
(比較例):酵素を添加しない以外は全く同様に調製して比較例1〜7を得た。
【0028】
【表1】

【0029】
これらの処理をおこなった実施例、比較例の食品素材を100℃のオーブンで30分間加熱処理を行ない、パネリスト4名による官能評価に供した。結果を表1に示した。実施例の素材は、比較例に比べて香味が大きく変化していた。
【0030】
[実施例8〜13、比較例8〜13]
各種食品素材各10gに対し、表2に示す反応条件で実施例1〜7同様に反応を行ない、実施例8〜13を得た。酵素を添加しないこと以外は実施例8〜13と同様にして比較例8〜13を得た。
【0031】
【表2】

【0032】
これらの処理をおこなった実施例,比較例の食品素材を100℃のオーブンで30分間加熱処理して酵素を失活させると同時に殺菌をおこなって加工原料を得た。実施例8、9、比較例8、9は80℃の熱水1000gで溶解した。実施例10〜12、比較例10〜12は90℃の熱水500mlに入れて時々攪拌しながら6分間抽出後に固液分離して抽出液を得た。実施例13、比較例13は80℃の熱水100gで溶解した。それぞれ適宜希釈して比較例を対照としてパネリスト7名による官能評価をおこなった。結果を表2に示した。
【0033】
[実施例14、比較例14]
10メッシュパス成分が50%以上になるように粉砕した国産乾燥大豆100gに対し、酵素(プロテアーゼM「アマノ」G)1.5gとビタミンC 3gを溶解した酵素溶液100gを混合し、50℃で15時間反応させた。反応終了後、120℃に設定した真空乾燥機で乾燥させて乾燥加工大豆を得た。この大豆10gを300gの沸騰水にいれ、時々攪拌しながら10分間抽出した。固液分離処理して、冷却後、遠心分離処理して大豆抽出液を得た。別途、緑茶(煎茶)50gを70℃の温水2000gに入れて時々攪拌しながら4分間抽出した。固液分離処理して、冷却後、遠心分離処理して緑茶抽出液を得た。
【0034】
緑茶抽出液1200g、大豆抽出液180g、ビタミンC1.2gを混合し、重曹でpHを6.4に調整しながら水を加えて3000gの混合茶飲料を調合した。これを180gの透明レトルト瓶に熱時充填し、レトルト殺菌処理して実施例14の混合茶飲料を調製した。酵素を添加しないこと以外は実施例14と同様に処理した大豆抽出液を用いて比較例14の飲料を調整した。熟練したパネリスト4名による官能評価を行なったところ、実施例14は比較例14に比べて旨みが強く、深みのある混合茶飲料であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥食品素材(乾燥茶葉を除く)を酵素溶液と反応させ、該乾燥食品素材の含有成分の酵素変換を行なう乾燥食品素材の酵素処理において、乾燥食品素材と、酵素溶液を1:0.2〜1:5の重量比で混合して反応を行なうことを特徴とする乾燥食品素材の酵素処理方法。
【請求項2】
乾燥食品素材と、酵素溶液の重量比が、1:0.2〜1:3の重量比であることを特徴とする乾燥食品素材の酵素処理方法。
【請求項3】
乾燥食品素材の酵素処理が、乾燥食品の香味成分の変換であることを特徴とする請求項1又は2記載の乾燥食品素材の酵素処理方法。
【請求項4】
乾燥食品素材と、酵素溶液との反応に使用する酵素が、リパーゼ、プロテアーゼ、インベルターゼ、β−グルコシダーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、グルタミナーゼ、ペクチナーゼ、クロロゲナーゼから選択される1又は2以上の酵素であることを特徴とする請求項3記載の乾燥食品素材の酵素処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の乾燥食品素材の酵素処理方法によって製造された食品素材の含有成分が酵素変換された乾燥食品素材。


【公開番号】特開2009−153480(P2009−153480A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337124(P2007−337124)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】