説明

予圧可変式軸受ユニット

【目的】 主軸を支持する軸受にラジアル方向の予圧を均一に与え、主軸の低速高剛性と高速運転を実現する。
【構成】 主軸2を支持する円筒ころ軸受3の外輪5とハウジング1の間に予圧調整リング9を縮径及び拡径自在となるよう設け、このリング9の拡径方向の位置決めをハウジング1で行ない、かつ縮径方向の位置決めを間座8、8の肩部で行ない、前記予圧調整リング9の外周に溝を設け、供給部11から油圧又は空気圧を給排することにより、円筒ころ軸受3に対して重予圧と軽予圧の定位置予圧の切換えが可能となり、油圧又は空気圧は溝の全周に作用し、予圧調整リングと外輪5を均一に縮径させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、回転主軸を支持するころがり軸受に対してラジアル方向の予圧量の調整を可能とし、主軸の高剛性と高速化を得るようにした予圧可変式軸受ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、工作機械のスピンドルは、主軸の回転精度と剛性を得るため、主軸を支持する軸受に所要の予圧を加えて運転されている。
【0003】このような工作機械において、初期予圧を大きくした状態で主軸を高速回転させた場合、軸受に過負荷がかかり、大きな発熱の発生により不具合が生じる恐れがある。
【0004】逆に、主軸が高速回転できるように初期予圧を小さく設定すると、低速回転時の予圧が不足し、低速回転で高い剛性が得られない問題がある。
【0005】上記のような問題に対処するため、スピンドルの軸受に円筒ころ軸受又はアンギュラ玉軸受を用い、この軸受のラジアル方向に加える予圧量を可変とし、低速回転域で重予圧、高速回転域では軽予圧に切り替えることができる予圧可変式の軸受ユニットを、本出願人は、特願平5−174018号により提案している。
【0006】図3(A)、(B)は、上記軸受ユニットの円筒ころ軸受を用いた例を示し、ハウジング1内に収納されて主軸2を回動自在に支持する円筒ころ軸受3は、内輪5が主軸2を支持し、この内輪5の外側に多数のころ6を介して外輪7が外嵌した構造になっている。
【0007】上記ハウンジング1内で円筒ころ軸受3の両側には、外輪7の側面に当接して該軸受3をスラスト方向に位置決め保持するための間座8、8が設けられ、更に、外輪7の外周面とハウジング1の内周面との間に縮径可能な予圧調整リング9が配置されている。
【0008】この予圧調整リング9は、外輪7よりも広幅で外周面の両側にハウジング1へ圧接するOリング10、10が設けられ、その内周面が外輪7に対して常に接触するよう外嵌し、かつ縮径及び拡径が自在となり、ハウジング1内でラジアル方向に移動可能になっている。
【0009】なお、図中11は油圧の如き加圧流体を供給する供給部、13は間座8に設けたエアオイル潤滑用の通路である。
【0010】図3(A)は加圧流体供給部11に圧力流体を供給した重予圧の状態を示し、予圧調整リング9を外輪7が間座8の肩部12に当たるまで縮径し、この状態で軸受すきまが小さく、主軸剛性が必要な低速に向く。
【0011】一方、図3(B)は、圧力流体がオフの状態であり、予圧調整リング9は外周面がハウジング1の内周面に当接し、この状態で軸受すきまが大きく、円筒ころ軸受3に軽予圧を与え、主軸2の高速運転に向くことになる。
【0012】上記のように、圧力流体の給排により、ラジアル方向の重予圧と軽予圧の2段の定位置予圧の切換えが可能となり、運転中に圧力流体のオン、オフを切換えることにより、図4に示すようなすきま又は予圧特性を持つ予圧可変式軸受ユニットができる。
【0013】ところで、上記予圧可変式軸受ユニットは、ハウジング1と予圧調整リング9の嵌合部に圧力流体の圧力をかけ、予圧調整リング9と外輪7を縮径させて軸受すきまを調整するため、予圧調整リング9の外径面全周に確実に圧力流体を作用させる必要がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記予圧可変式軸受ユニットは、軸受組込み後の主軸回転精度等の確保などにより、ハウジングと予圧調整リングの嵌合部すきまをゼロ狙いとする必要があり、このため、圧力流体供給部の上記嵌合部に臨む開口端部は予圧調整リングの外径面で閉鎖された状態となり、重予圧の導入時に供給部から圧力流体を供給すると、圧力流体は予圧調整リングの外径面で供給部に臨む部分に局部的に作用し、外径面全周に対して不均一になる。
【0015】そこで、この発明の課題は、予圧調整リングの外径面全周に対して圧力流体を均一に作用させることができ、軸受の重予圧導入が確実に行なえる予圧可変式軸受ユニットを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記のような課題を解決するため、この発明は、ハウジングと予圧調整リングの嵌合部分に、供給部からの圧力流体を予圧調整リングに均等に作用させるための溝を設けた構成を採用したものである。
【0017】
【作用】ころがり軸受に重予圧を導入するとき、供給部から圧力流体を供給すると、圧力流体は溝を通り、予圧調整リングの外径面全周に作用し、予圧調整リングところがり軸受の外輪を均一に縮径させることができる。
【0018】
【実施例】以下、この発明の実施例を図1と図2に基づいて説明する。なお、予圧可変軸受ユニットの基本的な構造は、図3(A)、(B)に示した従来の技術の項で述べたものと同一であるので、同一部分に同一符号を付すことによって説明に代える。
【0019】図1(A)、(B)に示す第1の実施例において、ハウジング1内に嵌合する予圧調整リング9の外径面に、この外径面の両端部に位置する同心円の溝21、21と、両溝21、21の間に位置し、両溝21、21を連通する螺旋溝22を設けたものであり、圧力流体の供給部11は一方の溝21と連通している。
【0020】この発明の第1の実施例は上記のような構成であり、重予圧の導入時に供給部11からの圧力流体は、最初一方の溝21から螺旋溝22及び他方の溝21に流入し、両溝21、21と螺旋溝22の全体に作用し、予圧調整リング9を僅かだけ収縮させる。そして、予圧調整リング9が収縮すると、ハウジング1の内周面と溝形成突部23との間にすきまができ、このすきまに圧力流体が作用することで、予圧調整リング9は外径面全体が均一に収縮し、外輪7を均等に縮径させて円筒ころ軸受3に重予圧を与えることになる。
【0021】また、圧力流体の供給を解いた時は、図1(A)の如く、予圧調整リング9の溝形成突部23がハウジング1の内周面に当接し、実質的に嵌合すきまがゼロ狙いとなる。
【0022】次に、図2(A)、(B)に示す第2の実施例は、予圧調整リング9の外周面に浅く幅の広い溝24を全周にわたって周設し、両端部の外周面に溝形成突部25、25を形成したものである。
【0023】上記溝24の幅は、外輪7の収縮を均一にするため、内周面に嵌合される外輪7の幅寸法よりも大き目になっている。
【0024】この第2の実施例においても、供給した圧力流体が溝24の全周に作用し、外輪7を均一に縮径させることができると共に、圧力流体のオフ時は図2(A)の如く、両側の溝形成突部25、25がハウジング1の内周面に当接する。
【0025】なお、両実施例は、例れの場合も、予圧調整リングの外径面に溝を設けたが、ハウジング1の内周面に、第1実施例及び第2実施例で示したものと同様の溝を設けてもよい。また、軸受は円筒ころ軸受に代えてアンギュラ玉軸受を用いてもよい。
【0026】
【発明の効果】以上のように、この発明によると、ハウジングと予圧調整リングの嵌合部分に溝を設けたので、予圧調整リングの外径面全体に圧力流体を均一に作用させることができ、ころがり軸受に対する予圧が確実に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の予圧可変式軸受ユニットの第1実施例を示す軽予圧の状態の要部縦断面図、(B)は同上の予圧調整リングを示す正面図
【図2】(A)は第2実施例を示す軽予圧の状態の要部縦断面図、(B)は同上の予圧調整リングを示す正面図
【図3】(A)は従来の予圧可変式軸受ユニットの重予圧の状態を示す縦断面図、(B)は同軽予圧状態を示す縦断面図
【図4】円筒ころ軸受の場合の予圧特性線図
【符号の説明】
1 ハウジング
2 主軸
3 円筒ころ軸受
5 内輪
6 ころ
7 外輪
8 間座
9 予圧調整リング
11 加圧洗体供給部
21 溝
22 螺旋溝
23、25 溝形成突部
24 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ころがり軸受の外輪とこの軸受を保持するハウジングの間に径の変化が可能な予圧調整リングを設け、この予圧調整リングの拡径方向の位置決めをハウジングで行ない、縮径方向の位置決めに外輪の両側に配置した間座を用い、前記ハウジングの予圧調整リング外径面と対応する位置に、予圧調整リングの縮径手段となる圧力流体の供給部を設けた予圧可変式軸受ユニットにおいて、ハウジングと予圧調整リングの嵌合部分に、供給部からの圧力流体を予圧調整リングに均等に作用させるための溝を設けたことを特徴とする予圧可変式軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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