説明

予測健全度を利用した施設管理および更新計画システム

【課題】施設の損傷または劣化を将来にわたり把握することにより,最も費用対効果の高い管理および更新を行う。
【解決手段】部品補修および部品交換のタイミングを,予測健全度,部品の耐用年数および資産の耐用年数の少なくともいずれかとの関係によって定めた複数種類のシナリオと,部品ごとに定められた健全度低下関数と,部品ごとに定められた部品補修または部品交換が行われた場合の健全度回復量とにしたがって,現在健全度を基準にして将来の年度ごとの予測健全度が,複数のシナリオについて算出される。算出された年度ごとの予測健全度に基づいて,複数のシナリオのそれぞれについて部品補修または部品交換の実施年度が計画される。複数のシナリオのそれぞれについて将来の所定期間に発生する費用が算出され,最も期間費用が少ないシナリオが最適シナリオと決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は施設管理および更新計画システムに関する。より詳細には,下水道施設,上水道施設,ガス施設,といった既に構築されかつ稼働している施設について,補修,交換等の対処(管理および更新)に関する将来計画を策定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭や工場からの汚水,および道路や住宅地に降った雨水(汚水および雨水を包括して「下水」という)は,下水管(管渠)を通って下水処理場に送られる。下水は下水処理場において浄化された後に,河川,湖等に排水される。下水道は我が国において昭和30年代から普及が始まり,近年の日本の下水道人口普及率は約70%(下水道利用人口/総人口)に達している。
【0003】
下水道は現在においても普及拡大が行われている。しかしながら,下水道施設の整備等の事業費の増加に比べて,下水道利用人口普及率の増加は少なくなってきている。効率的な整備および財源の有効活用が求められている。
【0004】
下水道施設は長年にわたって設置されてきたので,老朽化の問題も生じはじめている。一般には下水道施設について定められている目標耐用年数を経過した時点で,施設単位に交換を行うことが予定されている。もちろん,故障,不具合が生じた場合にその都度,施設を構成する部品を交換したり,故障,不具合は生じていないもののその可能性がある部品を,技術者が経験に基づいて事前に交換するといったことが行われている。
【0005】
従来の下水道施設に対する補修,交換等は,一律に目標耐用年数にしたがって行われたり,技術者の経験に基づいて行われており,費用的または経営的な観点からの考察が一切行われていない。
【0006】
特許文献1には,劣化予測式によって劣化機構ごとに劣化予測値(グレード)を計算し,劣化予測に補修履歴に基づくグレード回復を反映することが記載されている。また,LCC(補修補強費用)が最も安くなるシナリオを採用するとの記載がある。しかしながら,特許文献1では補修補強の対象物が橋梁であるために,橋梁を構成する部品交換,または橋梁ごとの交換等は一切考慮されていない。
【特許文献1】特開2006−177080号公報
【発明の開示】
【0007】
この発明は,複数の部品の組合せによって資産が構成され,複数の資産の組合せによって施設が構成されている,そのような施設を対象にして,部品劣化を将来にわたり把握および評価し,部品を含む資産の中長期的な状態を予測するとともに,予算制約を考慮して施設を計画的かつ効率的に管理および更新することを目的とする。
【0008】
この発明による施設管理および更新計画システムは,複数の部品の組合せによって資産が構成され,複数の資産の組合せによって施設が構成されている,そのような施設についての管理および更新計画を策定するシステムである。施設管理および更新計画システムは,部品補修のタイミングおよび部品交換のタイミングのうちの少なくとも一方が,算出される部品健全度,部品の耐用年数および資産の耐用年数の少なくともいずれかとの関係によって定められた複数種類のシナリオ,部品ごとに定められた健全度低下関数,ならびに部品ごとに定められた部品補修または部品交換が行われた場合の健全度回復量にしたがって,部品についての現在健全度を基準にして将来の年度ごとの予測健全度を,複数のシナリオのそれぞれについて算出する健全度算出手段,上記健全度算出手段によって算出される年度ごとの予測健全度に基づいて,複数のシナリオのそれぞれについて部品補修または部品交換の実施年度を計画する計画手段,上記計画手段によって計画された部品補修または部品交換の実施年度,ならびに部品補修および部品交換に必要とされる費用に基づいて,複数のシナリオのそれぞれについて将来の所定期間に発生する費用を算出する期間費用算出手段,ならびに上記期間費用算出手段によってシナリオごとに算出される期間費用に基づいて,最も期間費用が少ないシナリオを最適シナリオに決定する最適シナリオ決定手段を備えている。
【0009】
この発明による施設管理および更新計画システムは,コンピュータ・システムによって実現することができる。この発明は,コンピュータ・システムを,複数の部品の組合せによって資産が構成され,複数の資産の組合せによって施設が構成されている,そのような施設についての管理および更新計画を策定するシステムであって,部品補修のタイミングおよび部品交換のタイミングのうちの少なくとも一方が,算出される部品健全度,部品の耐用年数および資産の耐用年数の少なくともいずれかとの関係によって定められた複数種類のシナリオ,部品ごとに定められた健全度低下関数,ならびに部品ごとに定められた部品補修または部品交換が行われた場合の健全度回復量にしたがって,部品についての現在健全度を基準にして将来の年度ごとの予測健全度を,複数のシナリオのそれぞれについて算出する健全度算出手段,上記健全度算出手段によって算出される年度ごとの予測健全度に基づいて,複数のシナリオのそれぞれについて部品補修または部品交換の実施年度を計画する計画手段,上記計画手段によって計画された部品補修または部品交換の実施年度,ならびに部品補修および部品交換に必要とされる費用に基づいて,複数のシナリオのそれぞれについて将来の所定期間に発生する費用を算出する期間費用算出手段,ならびに上記期間費用算出手段によってシナリオごとに算出される期間費用に基づいて,最も期間費用が少ないシナリオを最適シナリオに決定する最適シナリオ決定手段として機能させるためのプログラムも提供している。
【0010】
施設管理および更新計画システムが管理および更新計画の対象とする施設は,複数の資産から構成されており,資産は複数の部品から構成されている。この発明において「部品」は,補修または交換が行われる最小単位の物品を意味する。複数の部品から構成されるのが「資産」であり,資産は所定の機能を発揮するための装置として位置づけられる。そして,複数の資産から構成されるのが「施設」である。施設も複数の資産が用いられることによって所定の機能を発揮する。一例を挙げると,施設が「ポンプ棟」であれば,ポンプ棟に含まれる複数の装置(第1主ポンプ,第2主ポンプなど)が資産である。資産,たとえば「第1主ポンプ」を構成する,補修または交換が行われる複数の物品(インペラ,シャフトなど)が,部品である。
【0011】
部品補修(修理,メンテナンス等)または部品交換が行われると,その部品を含む資産,さらにはその資産を含む施設に対して補修が行われることになる。
【0012】
複数のシナリオのそれぞれについて予測健全度が算出される。予測健全度は,現在の健全度を基準して算出される将来の年度ごとの健全度(予測値,推定値)である。健全度は部品の状態を示す値であり,部品が劣化するとこの健全度は小さくなる。部品ごとに定められた健全度低下関数に基づいて,時間(年度)が経過するごとに小さくなる健全度(予測健全度)が算出される。部品についての現在健全度は,部品を実際に点検することによって得られる。点検結果(計測値,設置からの経過年数等)を用いて,所定の計算式にしたがって,現在健全度は算出される。施設管理および更新計画システムには,与えられる点検結果に基づいて,所定の計算式にしたがって現在健全度を算出する現在健全度算出手段(現在健全度の算出プログラム)を部品ごとに設けるようにしてもよい。この場合には現在健全度算出手段によって算出される現在健全度が,健全度算出手段による予測健全度の算出に用いられる。
【0013】
健全度算出手段は,上述の健全度低下関数を用いるのみならず,部品補修のタイミングおよび部品交換のタイミングのうちの少なくとも一方を,算出される予測健全度,部品の耐用年数および資産の耐用年数の少なくともいずれかとの関係によって定めた複数種類のシナリオと,部品ごとに定められた部品補修または部品交換が行われた場合の健全度回復量とを利用して,シナリオごとに健全度を算出する。部品補修が行われた場合(「行われることが計画された場合」を意味する。以下同様。)の健全度回復量と,部品交換が行われた場合の健全度回復量は,一般には異なる量とされる。
【0014】
上述のように,予測健全度,部品の耐用年数および資産の目標耐用年数の少なくともいずれかを利用して,複数種類のシナリオは規定されている。たとえば,部品供給メーカーが推奨している部品の耐用年数を経過した年度に部品交換する,国土交通省が資産の標準的な耐用年数として設定している年数を経過した年度に部品交換する,算出される予測健全度が基準値(交換健全度基準値)を下回る年度に部品交換する,算出される予測健全度が基準値(補修基準値)を下回る年度に部品補修する,といったルール(これらの組合わせも含む)が複数種類のシナリオのそれぞれについて規定される。このシナリオにしたがって予測健全度は算出される。
【0015】
健全度算出手段は,部品補修または部品交換が行われる年度では,部品補修または部品交換のそれぞれについてあらかじめ定められた健全度回復量分,健全度が回復する(健全度を表す値を増加させる)ように,年度ごとの予測健全度を算出する。このようにして,将来の部品の劣化のみならず,将来部品に対して行われる補修または交換についても加味されて,将来の年度ごとの予測健全度が,複数のシナリオのそれぞれについて算出される。
【0016】
一実施態様では,管理および更新計画システムは,少なくとも資産が属する施設を特定する施設コード,資産を特定する資産コード,資産の耐用年数,および資産設置年月日を記憶している資産ごとの資産情報テーブル,ならびに少なくとも部品が属する資産を特定する資産コード,部品を特定する部品コード,部品の耐用年数,部品補修費用,部品交換費用,部品補修健全度回復量,部品交換健全度回復量,および健全度を算出すべきシナリオ種類を特定するシナリオ種別コードを記憶している部品ごとの部品情報テーブルを備えている。資産情報テーブルおよび部品情報テーブルに記憶されている情報が用いられることによって,部品について健全度を算出すべきシナリオの種類が決定され,決定されたシナリオにしたがって将来の年度ごとの予測健全度が算出される。上述したシナリオの内容(シナリオごとの将来健全度算出のためのルール)についても,あらかじめ定められているのは言うまでもない。たとえば,健全度算出手段がプログラムに基づいて動作する装置であれば,そのプログラム中に,シナリオの内容(ルール)(アルゴリズム)が規定(記述)される。
【0017】
上述した予測健全度の算出によって,部品補修または部品交換の実施年度がシナリオごとに計画される。
【0018】
部品補修または部品交換の実施年度が計画されるので,いずれの年度に部品補修または部品交換のための費用が発生するかが把握される。したがって,将来の所定期間に発生する費用を算出することができる。一回分の部品補修または部品交換のための費用は上述のように部品情報テーブルに記憶させておけばよい(もちろん,プログラム中に記述しておいてもよい)。期間費用は複数のシナリオのそれぞれについて算出される。部品補修または交換のための費用のみならず,たとえば,予測健全度が所定値よりも小さい値となっている年度に発生しうる故障等に対処するための費用(リスク費用)を算出して,このリスク費用も期間費用に含めるようにしてもよい。
【0019】
算出された期間費用はシナリオごとに異なる金額となる。算出された期間費用のうち,最も少ない金額が得られたシナリオが,最適シナリオと決定される。
【0020】
この発明によると,経年および使用によって劣化する部品について,複数種類のシナリオにしたがって,将来の健全度推移および管理更新計画(部品補修または部品交換の実施年度計画)が得られる。得られる健全度推移および管理更新計画は,経年および使用によって部品が劣化することを前提としつつも,所定のタイミング(シナリオにしたがうタイミング)に補修または交換を行うことを含めた計画とされる。複数種類のシナリオにしたがう複数の管理更新計画のうち,最も費用の少なくなる管理更新計画を得るためのシナリオが最適シナリオとして決定されるので,その最適シナリオにしたがう管理更新計画に沿って部品の補修または交換を実行することによって,費用対効果の高い維持管理および更新(交換)を施設に対して行うことができる。
【0021】
もちろん,健全度推移および管理更新計画は,表示装置の表示画面上またはプリンタからのプリント出力によって,表示または印字して出力してもよいのは言うまでもない。
【0022】
資産を構成する複数の部品には,一般に資産に含まれる他の部品に対する影響が大きい部品(重要部品)が存在する。一実施態様では,資産を構成する複数の部品のうちの一の部品がトリガ部品として位置づけられており,上記トリガ部品を対象して将来の年度ごとの予測健全度を算出して部品補修または部品交換の実施年度を計画し,その後に上記トリガ部品以外の部品を対象にして将来の年度ごとの予測健全度を算出して部品補修または部品交換の実施年度を計画するように,上記健全度算出手段および上記計画手段を制御する制御手段を備えている。上記健全度算出手段は,先に決定されるトリガ部品の部品交換の実施年度が,そのトリガ部品が属する資産の耐用年数を超えている場合に,トリガ部品を含む資産全体の交換を行うことが計画されるように,トリガ部品以外の部品についての予測健全度を算出する。トリガ部品を交換する年度にそのトリガ部品を含む資産全体が交換される計画(再構築計画)が得られる。古いタイプの資産を新しいタイプの資産に交換するタイミングを計画中に盛り込むことができる。
【0023】
資産を単位にして交換を行う場合(再構築),複数の資産をまとめて交換した方が,費用的,または施設運用の観点から都合がよい場合がある。一実施態様では,上記資産情報テーブルには,その資産と関連する他の資産を特定するコードがさらに記憶されており,上記資産情報テーブルに記憶されている関連コードに基づいて,施設を構成する複数の資産を,関連する資産ごとにまとめてユニットを構築する資産ユニット構築手段を備え,上記資産ユニット構築手段によってまとめられた資産ユニットに含まれる一の資産がトリガ資産として位置づけられており,資産ユニットが複数の資産を含む場合に,上記トリガ資産の交換実施年度に上記資産ユニットに含まれる他の資産が交換されるように,上記計画手段によって計画された部品交換の実施年度(資産を構成する複数の全ての部品についての部品交換の実施年度)を修正する修正手段を備えている。関連コードは,一例では,資産の設置場所を特定する設置場所コードである。この場合には,施設を構成する複数の資産のうち,設置場所が近いもの同士が資産ユニットとしてまとめられる。資産ユニットに含まれるトリガ資産(トリガ資産として位置づけられる資産であること)はあらかじめ資産情報テーブルに記憶しておいてもよいし,システムの操作者が指定する態様であってもよい。上述したトリガ部品と同様に,一般には資産ユニットを構成する資産のうち重要性が高いものがトリガ資産として位置づけられよう。
【0024】
トリガ資産の交換年度に,トリガ資産に関連する資産(トリガ資産と同じ資産ユニットに含まれる他の資産)も交換される。トリガ資産の交換と同時期にそのトリガ資産に関連する資産を交換する管理更新計画が得られるので,複数の資産から構成される施設の運用効率を高めることができ,実際に生じる費用を低く抑えることができる可能性を高めることができる。
【0025】
他の実施態様では,年度ごとの施設に対する予算を記憶した予算記憶手段,および上記修正手段によって部品交換の実施年度が修正された後の施設単位の年度別の予測費用を算出する施設予測費用算出手段,施設予測費用算出手段によって算出された年度別の施設単位の予測費用が,上記予算記憶手段に記憶されている予算を超えている年度が存在する場合に,複数の資産ユニットのうちのいずれかの資産ユニットについての交換実施年度を,次年度以降に先送りする先送り手段を備えている。一時期に多額の費用が発生する計画となることが防止される。
【実施例】
【0026】
I.下水処理場
図1は,下水処理場の処理施設の一般的な構成を示すブロック図である。
【0027】
下水処理場の処理施設は,大きく分けて「水処理系施設」と「汚泥処理系施設」とに大別される。水処理系施設は,流入した下水に含まれる比較的大きなごみを取除くためのポンプ棟1,汚水に含まれる泥等を沈殿させる最初沈殿地2,化学反応によって有害物質等を固形化する反応槽3,反応槽3において固形化された有害物質等を沈殿させる最終沈殿地4,および消毒を行う消毒槽5を含む。汚泥処理系施設は,汚泥を濃縮する濃縮槽6,濃縮された汚泥を消化する消化槽7,汚泥に含まれる水分を取除く脱水機8,および汚泥を焼却する焼却炉10を含む。
【0028】
図2は,下水処理場の処理施設の一つであるポンプ棟1の構成を,詳細に示している。
【0029】
ポンプ棟建物10の1階部分に汚水が流入する汚水処理室11が設けられ,2階部分に各種処理のための装置等が配備されている。汚水処理室11内の壁面には防食塗装12が施されている。
【0030】
ポンプ棟1には,流入する汚水に含まれるゴミを取除くモータ駆動の自動除塵機13,自動除塵機13による除塵後の汚水を汲上げる第1および第2主ポンプ14,15,ならびに汚水処理室11内に発生する悪臭を取除く脱臭ファン16および脱臭装置17が備えられている。自動除塵機13,第1および第2主ポンプ14,15,ならびに脱臭ファン16には,これらを操作するための現場操作盤(自動除塵機現場操作盤18,主ポンプ現場操作盤19および脱臭ファン現場操作盤20)が電気的に接続されている。自動除塵機現場操作盤18,主ポンプ現場操作盤19および脱臭ファン現場操作盤20はポンプ棟動力制御盤21に電気的に接続されており,ポンプ棟動力制御盤21から自動除塵機現場操作盤18,主ポンプ現場操作盤19および脱臭ファン現場操作盤20に電力等が供給される。
【0031】
図3は,ポンプ棟1と,ポンプ棟1を構成する上述した各種装置等と,その一つである第1主ポンプ14を構成する複数の部品との関係を示している。
【0032】
上述したように,下水処理場は,ポンプ棟1,最初沈殿地2等の複数の処理施設を含む。下水処理場のポンプ棟1,最初沈殿地2等の処理施設のそれぞれを,以下,包括的に「施設」と呼ぶ。
【0033】
各施設は,複数の装置等によって構成される。たとえば施設「ポンプ棟」は,第1主ポンプ14,第2主ポンプ15,主ポンプ現場操作盤19等を備えている。「施設」を構成する複数の装置等を,以下,包括的に「資産」と呼ぶ。
【0034】
「資産」は,修繕(補修または交換)可能な複数の部材によって構成される。たとえば,施設「ポンプ棟」に含まれる資産「第1主ポンプ」は,インペラ,シャフト,軸シール,電動機,計器類,フロート・スイッチ,ケーシング,フランジおよび圧力計から構成される。「資産」を構成する修繕可能な部材を,以下,包括的に「部品」と呼ぶ。
【0035】
以下に説明する下水道施設管理更新計画システムは,修繕可能な「部品」のそれぞれについて,修繕タイミング(実施年度)を決定する(計画する)とともに,「資産」の交換(資産を構成する複数の部品の一括交換)(以下,「再構築」ともいう)のタイミング(実施年度)を決定する(計画する)ことを基本とする。決定(計画)される「部品」の修繕タイミング(実施年度),および「資産」の交換(再構築)タイミング(実施年度)は,費用,部品の劣化の程度,目標耐用年数等が考慮されて決定される。この実施例では,下水処理場の複数の処理施設のうちの施設「ポンプ棟」に着目して,下水道施設管理更新計画システムを説明する。
【0036】
II.下水道施設管理更新計画システム
図4は,下水道施設管理更新計画システム(以下,計画システムという)の全体的な構成を示すブロック図である。
【0037】
計画システムは,再構築データベース31を記憶する記憶装置を備えたシステム・サーバ32,再構築データベース31に記憶されるデータのバックアップをとるバックアップ・サーバ33,および各種の計算処理を行うアセット・マネジメント・システム(LCCおよび財政シミュレータ)34を備えている。システム・サーバ32とバックアップ・サーバ33とは,通信回線(LANなど)によって接続されている。システム・サーバ32とアセット・マネジメント・システム34も通信回線によって接続されている。
【0038】
システム・サーバ32,バックアップ・サーバ33,およびアセット・マネジメント・システム34は,いずれもCPU,記憶装置,メモリ,通信装置,表示装置等を備えたコンピュータ・システムである。これらのコンピュータ・システムの記憶装置に記憶されているプログラムが実行されることによって,コンピュータ・システムのそれぞれが,システム・サーバ32,バックアップ・サーバ33およびアセット・マネジメント・システム34として機能する。特に,後述するように,アセット・マネジメント・システム34は,健全度算出手段,計画手段,期間費用算出手段,最適シナリオ決定手段,計画修正手段等として機能する。
【0039】
アセット・マネジメント・システム34は,LCC(ライフ・サイクル・コスト)(Life Cycle Cost )シミュレータおよび財政シミュレータの2つのシミュレータとして位置づけられる。すなわち,アセット・マネジメント・システム34の記憶装置には,LCC(ライフ・サイクル・コスト)(Life Cycle Cost )シミュレータおよび財政シミュレータとして,コンピュータ・システムを動作させるためのプログラムが記憶されている。LCCシミュレータの検討成果品として,中長期計画35およびLCCシミュレーション結果36の2つが得られる(出力される)。財政シミュレータの検討成果品として財務諸表37および経営指標比較38の2つが得られる。
【0040】
上述した4つの検討成果品(中長期計画35,LCCシミュレーション結果36,財務諸表37および経営指標比較38)を出力(生成)するために,アセット・マネジメント・システム34は複数の処理を実行する。アセット・マネジメント・システム34において実行される複数の処理は,再構築データベース31に記憶されているデータ,入力される点検結果等に基づく。
【0041】
はじめに,再構築データベース31に記憶されている各種データ(テーブル)について説明する。
【0042】
III.マスタ・テーブル
図5(A)〜図5(E)は,再構築データベース31に記憶されているマスタ・テーブルを示している。再構築データベース31には,社会適合性マスタ,環境分類マスタ,資産重要度マスタ,部品シナリオ種別マスタ,および部品措置レベル・マスタの5つのマスタ・テーブルが記憶されている。
【0043】
(1) 社会適合性マスタ
資産(たとえば,「第1主ポンプ」)のそれぞれは,その法適合性に基づいて,3つのレベルに分類される。社会適合性マスタには,法適合性のレベルを表すコードが記憶されている。資産ごとに作成される資産情報テーブル(資産情報テーブルは後述する)中に,この社会適合性マスタに記憶されているレベル・コード(社会適合性マスタ・コード)が記憶される。コード1が法適合していることを,コード2が法適合していないが,対応が不要なレベルであることを,コード3が法適合していず,対応が必要なレベルであることを意味する。
【0044】
(2) 環境分類マスタ
資産(「第1主ポンプ」など)は様々な環境下に設置されている。環境分類マスタには,資産が設置されている環境を表すコードが記憶されている。資産ごとに作成される資産情報テーブル中にこの環境分類マスタに記憶されている環境分類コードが記憶される。コード1は資産が硫化水素濃度が0〜10ppmの環境下に設置されていることを,コード2は資産が硫化水素濃度が11〜50ppmの環境下に設置されていることを,コード3は資産が硫化水素濃度が51〜200ppmの環境下に設置されていることを,コード4は資産が硫化水素濃度が201ppmを超える環境下に設置されていることを,それぞれ意味する。
【0045】
(3) 資産重要度マスタ
資産(「第1主ポンプ」など)は,上述のように施設(「ポンプ棟」など)に複数含まれている(図3参照)。施設に含まれる複数の資産の重要性は一律ではない。資産重要度マスタには資産の重要度を表すコードが記憶されている。資産ごとに作成される資産情報テーブル中に,資産重要度マスタに記憶されている資産重要度コードが記憶される。コードSが重要機器であることを,コードAが一般機器であることを,コードBがその他の機器であることを,それぞれ意味する。
【0046】
(4) 部品シナリオ種別マスタ
後述するように,資産(「第1主ポンプ」など)を構成する部品(「インペラ」など)のそれぞれについて,将来の健全度が算出される。健全度とは,部品の劣化の度合いを表す数値である。将来健全度の算出処理では,あらかじめ定められた4つのシナリオ(シナリオ0,1,2および3)の中の複数のシナリオにしたがって算出される(「シナリオ」についての詳細は後述する)。部品シナリオ種別マスタには,健全度を算出する際に用いるシナリオの種類を特定するコードが記憶されている。部品シナリオ種別マスタに記憶されているコードは部品ごとに作成される部品情報テーブル(後述する)に記憶される。コードAはシナリオ0,シナリオ1およびシナリオ2の3種類のシナリオにしたがって健全度を算出することを,コードBはシナリオ0およびシナリオ3の2種類のシナリオにしたがって健全度を算出することを,コードCはシナリオ0およびシナリオ1の2種類のシナリオにしたがって健全度を算出することを,それぞれ意味する。
【0047】
(5) 部品措置レベル・マスタ
部品(「インペラ」など)の修繕(補修または交換)が行われる(修繕が行われることが計画される)と,上述した健全度が回復する。部品措置レベル・マスタには,部品の補修のレベルを表すコードが記憶される。部品ごとに作成される部品情報テーブル中に,部品措置レベル・マスタに記憶されているコードが記憶される。コード10はタッチアップ程度の補修措置を,コード11は軽度の肉盛補修措置を,コード12は表面加工措置を,コード13は50%以上の材料の復旧を,それぞれ意味する。
【0048】
IV.資産情報テーブル
図6は,資産情報テーブルを示している。資産情報テーブルは,施設(「ポンプ棟」など)に含まれる資産(「第1主ポンプ」など)(図3参照)ごとに作成されて,再構築データベース31に記憶される。資産情報テーブルは次のデータ項目を含む。
【0049】
(1) 施設コード
下水処理場は複数の施設(「ポンプ棟」など)を備え,施設のそれぞれに複数の資産(「第1主ポンプ」など)が含まれている。施設コードは,資産が属する施設を特定するコード(数字,アルファベット等の組み合わせ)を表す。
(2) 資産名称
資産に付けられた名称を漢字等によって表すもので,たとえば,「第1主ポンプ」を表す文字列が格納される。
【0050】
(3) 資産コード
資産名称によって特定される資産を,数字,アルファベット等の組み合わせによって表すものである。
【0051】
(4) 社会適合性
資産の法的・社会的な適合性をコード化したものである。上述した社会適合性マスタ(図5(A))に格納されているコード1,コード2またはコード3のいずれかが格納される。
【0052】
(5) 耐用年数
資産の法的な耐用年数である。下水道施設(「ポンプ棟」など)に含まれる資産(「第1主ポンプ」など)のそれぞれに対して,国土交通省が定めた耐用年数,財務省が定めた耐用年数,および地方公営企業法に基づく耐用年数があらかじめ定められいる。この3種類の耐用年数が格納される。
【0053】
(6) (仮の)取得金額
資産を設置したときにかかった費用を表す。
【0054】
(7) 設置年度デフレータ
物価変動を考慮した年度ごとの補正値である。
【0055】
(8) 資産供給期限
資産についてメーカ等からの供給停止の予告があった場合にその供給停止の年および月が格納される。
【0056】
(9) 調査年月日
資産の点検調査が行われた年月日である。
【0057】
(10) 資産設置年月日
資産が設置された年月日である。
【0058】
(11) 環境分類
資産が設置されている環境分類をコード化したものである。上述した環境分類マスタ(図5(B))に格納されているコードa〜コードdのいずれかが格納される。
【0059】
(12) 設置場所コード
資産が設置されてる場所を表すコードが格納される。設置場所コードによって,資産が設置されている建物,その階数,部屋等が特定される。
【0060】
(13) 前資産コード(動力)
動力(モータ等)によって機能する資産について格納されるコードであり,その資産に直接に動力を送る制御盤(資産)のコードを表す。
【0061】
(14) 前資産コード(制御)
電気制御によって機能する資産について格納されるコードであり,その資産に電力等を送る制御盤(資産)のコードを表す。
【0062】
(15) 前資産コード(計装)
計装信号を出力する資産について格納されるコードであり,その資産からの計装信号を受け付ける制御盤(資産)のコードを表す。
【0063】
(16) 資産重要度
資産ごとの重要性を表すコードであり,上述した資産重要度マスタ(図5(C))に格納されているコードS,コードAまたはコードBのいずれかが格納される。
【0064】
(17) 設計金額
設計書に計上されている資産の直接費を表す。
【0065】
(18) 取得年度
資産を取得した年度を表す。
【0066】
(19)取得価格
資産を取得した金額を表す。
【0067】
(20)残存率
資産の残存率を表す。
【0068】
V.部品情報テーブル
図7は部品情報テーブルを示している。部品情報テーブルは,部品(「インペラ」など)ごとに作成されて再構築データベース31に記憶される。部品情報テーブルは次のデータ項目を含む。
【0069】
(1) 資産コード
部品が属する資産の資産コードを表す。
【0070】
(2) 部品名称
部品に付けられた名称を漢字,平仮名,片仮名等によって表すもので,たとえば,「インペラ」を表す文字列が格納される。
【0071】
(3) 部品コード
部品名称によって特定される部品を,数字,アルファベット等の組み合わせによって表すものである。
【0072】
(4) 点検結果
部品ごとにあらかじめ定められている点検項目に対応する点検結果である。たとえば,部品「インペラ」についての点検ではインペラの直径が測定される。部品「インペラ」についての点検結果には,測定されたインペラの直径が格納される。
【0073】
(5) 部品別配点割合
後述するリスク費用の算出に用いられる数値である。
【0074】
(6) 過去の健全度
過去の点検結果に基づいて算出された健全度を表す。
【0075】
(7) 部品供給年限
部品の供給停止予定がある場合にその供給停止年月が格納される。
【0076】
(8) 部品シナリオ種別
部品のそれぞれについて,複数のシナリオに基づいて健全度が算出される。健全度を算出すべきシナリオの種別を表すコードが部品シナリオ種別として格納される。上述した部品シナリオ種別マスタ(図5(D))に格納されているコードA,コードBまたはコードCのいずれかが格納される。
【0077】
(9) 部品トリガ
資産(「第1主ポンプ」など)を構成する複数の部品(「インペラ」など)のうち,いずれかの部品はトリガ部品として位置づけられ,トリガ部品について算出された健全度が,他のトリガ部品以外の部品(「シャフト」など)についての健全度の算出に影響を及ぼす。トリガ部品についてこの「部品トリガ」にフラグが立てられる。
【0078】
(10)措置レベル
部品に対する補修措置のレベルを表す。上述した部品措置レベル・マスタ(図5(E))に格納されているコード10〜コード13のいずれかが格納される。
【0079】
(11) シナリオ0周期
詳細は後述するが,部品をどのようなルールのもとに交換等するかを定めた複数のシナリオのうち,シナリオ0は,所定の周期ごとに,部品を新品に交換するというルールをもつ。シナリオ0周期は,シナリオ0のルールにおける上記の所定周期(部品使用期間)(部品を新品に交換した年度から次に交換する年度までの期間(年数))を表す。
【0080】
(12) 部品交換目標周期
部品の製造メーカによって定められている部品の交換周期(部品使用期間)である。上述のシナリオ0周期は,部品交換目標周期と同一期間であっても,異なる期間であってもよい。
【0081】
(13) 現在健全度算出関数
後述するように,部品の点検結果が得られると,その点検結果に基づいて現在の健全度が算出される。現在健全度算出関数は,点検結果を健全度に置換える(変換する)ときに用いられる関数である。
【0082】
(14) 健全度低下関数
詳細は後述するが,アセット・マネジメント・システムでは,部品のそれぞれについて,将来の年度ごとの健全度(将来健全度)を算出する処理が行われる。健全度は,新品のあるときにその数値が最も大きく,年度が経過するにつれて数値が減少していく。部品健全度関数は,部品健全度の低下率等を定めた関数である。
【0083】
(15) 補修健全度基準値
後述するように,健全度は年度ごと(1年ごと)に算出される。そして,この健全度が所定値を下回ると予想される年度において補修を行うことが計画されることがある。この補修を行うときの基準となる健全度が,補修健全度基準値である。
【0084】
(16) 補修健全度回復量
補修が行われることが計画された年度では,部品の健全度が回復する(数値が大きくなる)。補修健全度回復量は,補修を行うとき(補修が行われることが計画された年度)における健全度の回復量である。
【0085】
(17) 補修費用
補修が行われるとき(年度)に計上すべき費用である。
【0086】
(18) 交換健全度基準値
将来の健全度の算出処理では,健全度が所定値を下回ると予想される年度において交換を行うことが計画されることがある。この交換を行うときの基準値が,交換健全度基準値である。
【0087】
(19) 交換後健全度
部品を交換することが計画された年度では,部品の健全度が回復する(数値が大きくなる)。交換後健全度は,交換を行うとき(交換が行われることが計画された年度)における健全度を表す。
【0088】
(20) 交換費用
交換が行われるとき(年度)に計上すべき費用である。
【0089】
(21) リスク関数
後述するように,所定の健全度を下回っている年度は,部品が故障等する可能性が生じていることを意味する。所定の健全度を下回っている年度では,後述するように,リスク費用が計上される。リスク関数はこのリスク費用を算出するための関数である。
【0090】
VI.処理区情報テーブル
下水処理場は,一般には,都道府県内を複数に区分けした領域ごとに設けられる。都道府県のそれぞれにおける下水処理のための区分け(区分けされた領域)は,「処理区」と呼ばれる。たとえば,静岡県の場合,「西遠処理区」,「磐南処理区」,「静清処理区」,「西部処理区」および「東部処理区」の5つの処理区がある。図8は,処理区ごとに作成されて再構築データベース31に記憶される処理区情報テーブルを示す。処理区情報テーブルは次のデータ項目を含む。
【0091】
(1) 処理水量
過去の年度単位の処理水量である。
【0092】
(2) 有収水量
過去の年度単位の料金徴収された水量である。
【0093】
(3) 管渠費
管渠(下水道管)の埋設(設置)等に必要とされる費用である。この管渠費には,職員給与費,修繕費,材料費,路面復旧費,委託料およびその他について,過去3年分の決算書の数値が格納される。
【0094】
(4) ポンプ場費
家庭等から排出されて汚水は管渠を通ってポンプ場に送られる。ポンプ場費はポンプ場において必要とされる費用である。ポンプ場費には,職員給与費,動力費,修繕費,材料費,薬品費,委託料およびその他について,過去3年分の決算書の数値が格納される。
【0095】
(5) 処理場費
ポンプ場において汲み上げられた汚水は処理場に送られて消毒等された後に排水される。処理場費は処理場において必要とされる費用である。処理場費には,職員給与費,動力費,修繕費,材料費,薬品費,委託料およびその他について,過去3年分の決算書の数値が格納される。
【0096】
(6) その他
上述した管渠費,ポンプ場費および処理場費に含まれない費用が格納される。職員給与費,流域下水道管理運営費負担金,委託料およびその他について,過去の3年分の決算書の数値が格納される。
【0097】
VII.計画システムの処理
図9は,計画システムを構成するアセット・マネジメント・システム34において実行される処理の流れを示すフローチャートを示している。
【0098】
はじめに,アセット・マネジメント・システム34において実行される複数の処理を,簡単にまとめておく。
【0099】
(1)現在健全度の算出処理(ステップ41)
下水処理場を構成する複数の施設は,定期的または不定期に点検者によって点検が行われる。点検は,下水処理場を構成する施設(「ポンプ場」など)を構成する資産(「第1主ポンプ」など)に含まれる部品(「インペラ」など)(図3参照)のそれぞれについて行われ,その点検結果は,部品の劣化の度合いを表す「健全度」に変換(数値化)される。この健全度がアセット・マネジメント・システムの処理において用いられる。この実施例では,健全度は5から1までの数値によって表される。健全度「5」が新品の状態を示し,数値が小さくなるにつれて劣化の度合いが大きいことを表す。
【0100】
(2)健全度の将来予測処理(ステップ42)
部品(「インペラ」など)のそれぞれについて,たとえば,将来50年間にわたって,健全度が年度ごとにどのように推移していくかを予測する処理が行われる。健全度の将来予測では,将来50年間にわたる,年度ごと(1年ごと)の健全度予測値が,部品単位で算出される。この健全度の将来予測の処理では,上述したシナリオ0〜シナリオ3の4種類のシナリオのうち,複数のシナリオにしたがって,年度ごと(1年ごと)の健全度予測値が算出される。詳細は後述するが,シナリオのそれぞれは,部品補修,部品交換,および資産交換(資産に含まれる部品すべての交換)(再構築)のタイミング等を規定する。
【0101】
(3)単独費および補助金の将来予測処理およびリスク費用の将来予測処理(ステップ43,44)
将来50年間にわたる年度ごとの健全度が予測されると,将来50年間にわたって発生する費用(経費)を算出(予測)することができる。下水道施設を管理する地方公共団体が負担する「単独費」,国からの支給される「補助金」,および健全度が低下したときに発生しうる故障等に対処するための「リスク費用」が,年度ごとに算出される。
【0102】
(4)最適シナリオの選択処理(ステップ45)
健全度の将来予測は複数のシナリオにしたがって行われる。複数のシナリオの中から,50年間にわたって必要とされる費用(修繕費,再構築費およびリスク費用)の観点から,最適と考えられるシナリオ(最適シナリオ)が選択される。
【0103】
(5)資産単位の集計処理(ステップ46)
部品ごとの最適シナリオの選択が終わると,複数の部品から構成される資産(たとえば,「第1主ポンプ」)に対する処理に進む。最適シナリオにしたがって算出される部品毎の年度単位の費用(単独費,補助金およびリスク費用)に基づいて,資産ごとの修繕費(資産に含まれる部品の補修および交換にかかる費用),再構築費(資産単位の交換にかかる費用)およびリスク費用が算出される。
【0104】
(6)再構築ユニットの作成処理(ステップ47)
資産(「第1主ポンプ」など)の全体を交換する(再構築する)場合,一般には,一つ一つの資産をそれぞれ交換するよりも,複数の資産を同時期に交換した方が費用的,または下水処理場の運用の観点が都合がよい。一時期にまとめて交換(再構築)する複数の資産のまとまりを「再構築ユニット」と呼ぶ。設置場所等の観点から,施設(「ポンプ棟」など)を構成する複数の資産(「第1主ポンプ」など)が,いくつかのグループ(再構築ユニット)にまとめられる。
【0105】
(7)施設単位の集計処理(ステップ48)
資産単位の集計処理(ステップ46)が行われると,複数の資産(「第1主ポンプ」など)から構成される施設(「ポンプ棟」など)単位の集計が可能になる。たとえば,50年間にわたる年度ごと施設に対する費用(保全費)が集計される。
【0106】
(8)再構築ユニット単位のスケジュール調整(ステップ49)
上述した再構築ユニットを単位にして,再構築(資産単位の交換)時期を修正する処理が行われる。これにより,同時期(同年度)に再構築ユニット単位に再構築を行うスケジュールが決定される。
【0107】
(9)施設単位の予算計画との照合(ステップ50)
施設を単位にして,年度ごとの計画予算と上述した年度ごとのスケジュールに基づく費用とが比較される。
【0108】
(10)再構築ユニット単位の先送り処理(ステップ51)
スケジュールに基づく保全費用(修繕費および再構築費の合計)が計画予算を超えている年度がある場合に,上述した再構築ユニットを単位にして,再構築の年度を先送りする処理が行われる。これにより,スケジュールには計画予算を超える出費が生じる年度が無くなる。
【0109】
(11)維持管理費等算出,中長期計画の出力,LCC集計,LCCシミュレーション結果の出力,財務諸表および経営指標の出力(ステップ52,53)
スケジュールが定まることによって,今後50年間の年度ごとの資産単位の施設管理更新計画(部品単位の補修または交換,および資産単位の交換(再構築)のスケジュール)が決定する。施設管理更新計画は年度ごとに必要とされる費用を含むので,50年間にわたる費用が算出される。算出された費用および再構築データベース31に記憶されている年度ごとの維持管理費等に基づいて,50年間にわたるライフ・サイクル・コスト(LCC)がまとめられる。また,将来の財務諸表および経営指標の推移もグラフ化されてまとめられる。
【0110】
以下,アセット・マネジメント・システム34において実行される上述した複数の処理の詳細を,具体例とともに説明する。
【0111】
VIII.現在健全度の数値化処理(ステップ41)
図10は,資産「第1主ポンプ」についての健全度判定表の一例を示している。
【0112】
健全度判定表は,点検者によって資産(部品)点検が行われる度に,アセット・マネジメント・システム34によって資産単位に作成される。点検は,あらかじめ定められた点検項目にしたがって行われる。点検者が資産が属する処理場名,点検を行った資産名称(または資産コード),点検年月日,点検結果(測定値等)等をアセット・マネジメント・システム34に入力すると,アセット・マネジメント・システム34は,図10に示す健全度判定表を作成する。
【0113】
資産「第1主ポンプ」について言えば,部品「インペラ」,「シャフト」,「軸シール」,「電動機」,「ケーシング」,「計器類」,「フロートスイッチ」,「圧力計」および「フランジ」について,点検者による点検が行われて点検結果が入力される。入力された点検結果は,部品ごとに作成されている部品情報テーブル(図7)の「点検結果」欄に記憶される。
【0114】
たとえば,部品「インペラ」については,その点検項目として「摩耗」と「経過時間」とがある。「摩耗」の点検項目欄(所見欄)には,部品「インペラ」の直径の「基準値」と「測定値」が示されている。「測定値」に表される数値が,点検者によって測定されて入力された部品「インペラ」の直径の測定値(実測値)である。「基準値」にはあらかじめ定められている数値が表示される。「経過時間」の点検項目欄(所見欄)は,部品供給年限,前回交換後経過年数,シナリオ0周期および部品交換目標周期が表示されている。「前回交換後経過年数」は,点検者によって入力された部品「インペラ」の前回交換された後現在に至るまでの経過年数である。部品供給年限,シナリオ0周期および部品交換目標周期の表示には,部品情報テーブル(図7)に記憶されているデータが用いられる。
【0115】
点検項目ごとに「項目健全度」が算出される。たとえば,部品「インペラ」については点検項目「摩耗」と点検項目「経過時間」のそれぞれについての項目健全度が算出される。
【0116】
点検項目「摩耗」の項目健全度は,部品「インペラ」についての部品情報テーブル(図7)に記憶されている健全度算出関数にしたがって,入力された測定値に応じて算出される。すなわち,健全度算出関数は,測定値(部品「インペラ」の場合には,測定されたインペラの直径)を未知数とする関数であり,測定値に所定の係数が乗算等されることによって,健全度算出関数にもとづいて項目健全度が算出される。
【0117】
点検項目「経過時間」の項目健全度は,次式(1)または(2)にしたがって算出される。
【0118】
(1)前回交換後経過年数<部品交換目標周期のとき
1.0+4.0×(部品交換目標周期までの残年数/部品交換目標周期)
(2)経過年数≧部品交換目標周期のとき
1.0
【0119】
たとえば,部品「インペラ」は前回交換後経過年数が3年であり,部品交換目標周期12年よりも短いので,上記(1)式にしたがって点検項目「経過時間」の項目健全度が算出される。部品交換目標周期までの残年数は9年,部品交換目標周期は12年であるから,1.0+4.0×(9/12)=4.00が,部品「インペラ」の点検項目「経過時間」についての項目健全度とされる。
【0120】
点検項目ごとにあらかじめ定められている項目配点割合にしたがって,部品健全度が算出される。部品健全度は次式によって算出される。
【0121】
(測定値に基づく項目健全度×測定値に基づく項目健全度の配点割合)+
(5.0−経過時間に基づく項目健全度)×経過時間に基づく項目健全度の配点割合)
【0122】
たとえば,部品「インペラ」について,測定値(インペラの直径)に基づく項目健全度が4.72であったとする。また,点検項目「測定値」に基づく項目健全度の配点割合は1.00,点検項目「経過時間」に基づく項目健全度は4.00,経過時間に基づく項目健全度の配点割合は−0.75である。したがって,部品「インペラ」についての部品健全度は,4.72×1.00+(5.00−4.00×(−0.75)=3.97となる。100分の一の位が四捨五入された値である4.00が,部品「インペラ」についての現在健全度とされる。
【0123】
同様の処理が,資産「第1主ポンプ」に含まれる他の部品「シャフト」,「軸シール」,「電動機」などについても行われる。資産「第1主ポンプ」を構成する複数の部品のそれぞれについて,現在健全度が算出される。
【0124】
施設「ポンプ棟」に含まれる他の資産(「第2主ポンプ」,「主ポンプ現場操作盤」,「自動除塵機」など)(図3参照)についても,上述の同様の処理を経ることによって,資産を構成する部品のそれぞれについての現在健全度が算出される。
【0125】
算出された部品のそれぞれの現在健全度は,アセット・マネジメント・システム34のメモリに一時的に記憶される。
【0126】
図11(A)は,資産「第1主ポンプ」について作成されている資産情報テーブル(図6)の一部を具体的に示すものである。図11(B)は資産「第1主ポンプ」に含まれる複数の部品(「インペラ」など)のそれぞれについての部品情報テーブル(図7)の一部を具体的に示すテーブルである。図11(B)においては,部品ごとに作成される部品情報テーブルが行ごとに示されている。図11(A),(B)に示すように,点検結果,調査年月日等は,資産ごとに作成される資産情報テーブル,および部品ごとに作成される部品情報テーブルに格納される。以下の説明では,図11(A),(B)に示す具体例を適宜参照して,アセット・マネジメント・システム34において実行される処理を説明する。
【0127】
IX.健全度の将来予測処理(図12および図13)(ステップ42)
上述のようにして算出されてメモリに記憶された部品についての現在健全度は,部品ごとに算出される部品健全度の将来予測処理に用いられる。健全度の将来予測は,たとえば50年間にわたって1年ごとに算出される。図12および図13は,部品「インペラ」についての年次ごとの健全度の予測推移を表している。アセット・マネジメント・システム34は,次に説明するように,部品ごと,かつシナリオ種別ごとに算出される年度ごとの健全度の予測値を順次算出する処理を行う。
【0128】
健全度の予測処理では,第1世代と第2世代以降のそれぞれについて,1年ごとの健全度が予測される。「第1世代」とは現在使用している部品を新品に交換するまでの期間を意味する。「第2世代以降」とは現在使用している部品を新品に交換した後を意味する。第1世代および第2世代以降に分けるのは,現在現実に使用している部品の劣化の程度にはばらつきがあるのに対し,1度新品に交換した後は,シミュレーション(健全度の予測)の特性上,劣化の程度を一律に予測すべきであるからである。
【0129】
健全度予測処理は,シナリオ0〜シナリオ3の4つのシナリオのうち,部品の性質に応じたシナリオが用いられて行われる。健全度予測処理を行うプログラムは,次に説明するシナリオ0〜シナリオ3のそれぞれのルール(共通ルールを含む)にしたがうアルゴリズム(処理フロー)を持つ。
【0130】
各シナリオのそれぞれについて,部品の補修,交換,または複数の部品を含む資産単位の交換(再構築)のタイミング,および計上すべき費用に関するルール(アルゴリズム)が定められている。シナリオ0〜シナリオ3に共通のルールと,シナリオ0,シナリオ1,シナリオ2およびシナリオ3のそれぞれに特有のルールとがある。
【0131】
(1)シナリオ0〜シナリオ3の共通ルール
(i)経過年数に関わらず,健全度が交換健全度基準値を下回る年度に新品に交換する。「交換健全度基準値」は,部品ごとに定められて部品情報テーブル(図7)に記憶されている。この実施例では,分かりやすくするために,すべての部品についての部品交換健全度基準値を「2」とする。
(ii)修繕(部品補修および部品交換)にかかる費用は全額単独費とする。単独費とは地方公共団体が単独で支払う費用である。後述するように,なお,費用の負担の観点から言えば,単独費の他に,国から支払われる国庫補助金(以下,補助金という)がある。
(iii)部品を新品に交換する場合であって,その部品が属する資産の目標耐用年数が経過する以前に交換する場合には,部品単独の交換にとどめ,資産単位の交換(再構築)は行わない。部品単独の交換の費用は全額単独費とする。資産の耐用年数は資産ごとに定められて資産情報テーブル(図6)に記憶されている。この実施例では,国土交通省が定めた耐用年数を利用して,シナリオ0および1についての目標耐用年数(国土交通省)を15年とし,シナリオ2および3についての目標耐用年数は,その1.5倍,すなわち,22.5年とする。
(iv)部品を新品に交換する場合であって,その部品が属する資産の目標耐用年数が経過した後に交換する場合には,その部品がトリガ部品である場合には,部品単位の交換ではなく,その部品が属する資産単位で新品に交換する(再構築)。資産単位の交換(再構築)の費用は国庫補助対象とする。「トリガ部品」とは,資産を構成する複数の部品のうち,その部品を新品に交換するときに,資産全体を交換(再構築)すべき部品を意味する。資産に含まれる複数の部品のうち最も重要とされる部品,または資産に含まれる他の部品に対する影響が大きい部品が,トリガ部品とされる。資産のそれぞれは少なくとも1つのトリガ部品を含む。トリガ部品についての部品情報テーブル(図7)には「部品トリガ」欄にフラグが立てられている。
(v)部品を新品に交換する場合であって,その部品が属する資産の目標耐用年数が経過した後に交換する場合,その部品がトリガ部品でない場合には,部品単位の交換にとどめ,資産単位の交換は行わない。この場合の部品単独の交換費用は全額単独費とする。
【0132】
(2)シナリオ0についてのルール
シナリオ0は,メーカ推奨の使用期間にしたがって部品を交換することを基本とする。以下のルールを持つ。
(i)シナリオ0用周期ごとに健全度に関わりなく新品に交換する。シナリオ0周期は,基本的には部品の製造メーカが推奨する耐用年数であって,耐用年数まで使用しても一般には限界に達しない期間が定められている。シナリオ0周期は,部品ごとに作成される部品情報テーブル(図7)に記憶されている。
(ii)部品が属する資産について,その目標耐用年数が経過する以前に単独費で資産単位の交換(再構築)を行わない場合は,資産が目標耐用年数を経過する年度に,健全度に関わらず新品に交換する。
(iii)部品が属する資産について,その目標耐用年数が経過する以前に単独費で資産単位の交換(再構築)を行う場合は,単独費で資産単位の交換(再構築)行った年度から起算して,資産が目標耐用年数を経過した年度に,健全度に関わりなく新品に交換する。
(iv)健全度が補修健全度基準値を下回っても補修は行わない。補修健全度基準値は,部品ごとに定められて部品情報テーブル(図7)に記憶されている。この実施例では,分かりやすくするために,すべての部品についての補修健全度基準値を「3」とする。
【0133】
(3)シナリオ1についてのルール
シナリオ1は,部品を限界まで使い切って交換することを基本とする。以下のルールを持つ。
(i)健全度が交換健全度基準値を下回る直前年度まで放置し(補修および交換を行わない),交換健全度基準値を下回る年度に新品に交換する。この実施例では,分かりやすくするために,すべての部品についての交換健全度基準値を「2」とする。
(ii)健全度が補修健全度基準値「3」を下回っても補修は行わない。
【0134】
(4)シナリオ2についてのルール
シナリオ2は,少しずつ補修を行い,所定の期間が経過したら補修をせずに限界まで使い切って交換することを基本とする。以下のルールを持つ。
(i)部品が属する資産についての目標耐用年数を経過するまでは,健全度が補修健全度基準値「3」を下回る年度に補修を行い,健全度を補修健全度回復量だけ回復させる。補修健全度回復量は部品情報テーブル(図7)に記憶されている。この実施例において,分かりやすくするために,すべての部品についての補修健全度回復量を「1.5」とする。
(ii)部品が属する資産についての目標耐用年数経過後は,健全度が補修健全度基準値「3」を下回っても補修を行わずに放置し,健全度が交換健全度基準値「2」を下回る年度に新品に交換する。
【0135】
(5)シナリオ3についてのルール
電気系の部品,すなわち劣化の程度を目視することができない部品に適用されるルールであり,所定の期間が経過した時点で交換することを基本とする。以下のルールを持つ。
(i)部品が属する資産についての目標耐用年数が経過した年度に,健全度に関わりなく新品に交換する。
(ii)健全度が補修健全度基準値「3」を下回っても補修は行わない。
【0136】
部品情報テーブル(図7,図11)は「部品シナリオ種別」欄を含み,この部品シナリオ種別欄には,あらかじめ部品シナリオ種別マスタ・コードA〜C(図5(D))のいずれかが記憶されている。部品情報テーブルの「部品シナリオ種別」欄に記憶されているコードにしたがって,シナリオ0〜シナリオ3のうちのいずれのシナリオにしたがって健全度の予測処理を行うかが部品ごとに決定される。
【0137】
たとえば,図11(B)を参照して,資産「第1主ポンプ」に含まれる部品「インペラ」についての部品情報テーブルの「部品シナリオ種別」欄には「コードA」が記憶されている。部品「インペラ」については,シナリオ0,シナリオ1およびシナリオ2の3つのシナリオ種別のそれぞれに基づいて,部品健全度の予測処理が行われる。
【0138】
部品健全度の予測処理は,資産に含まれる複数の部品のうち,トリガ部品について最初に行われる。資産「第1主ポンプ」では部品「インペラ」がトリガ部品である。資産「第1主ポンプ」の場合,そこに含まれる複数の部品のうち,部品「インペラ」についての部品健全度の予測処理が最初に行われる。
【0139】
図12を参照して,シナリオ0,1および2のいずれについても,第1世代の0年次(点検が行われた年度,具体的には平成20年度)には,現在の健全度,すなわち「4.0」(図10参照)が格納される。
【0140】
次年度,すなわち,第1世代の1年次(平成21年度に対応)には,部品「インペラ」についての部品情報テーブル(図7)に記憶されている健全度低下関数にしたがって算出される1年後の健全度が予測(算出)されて格納される。分かりやすくするために,部品「インペラ」の健全度低下関数は,すべてのシナリオについて,前年度の健全度から0.3を減算する関数とすると,すべてのシナリオ0,1および2について,1年次の予測健全度は,前年度の健全度「4.0」から0.3を減算した「3.7」とされる。同様にして,2年次,3年次等の健全度が予測(算出)される。
【0141】
シナリオ0に着目する。シナリオ0は,「シナリオ0用周期ごとに,健全度に関わりなく新品に交換する」ことをルールに持つ(上述のシナリオ0についてのルール(i))。部品「インペラ」についてのシナリオ0周期は,部品「インペラ」についての部品情報テーブル(図7)に格納されており,具体的は「8年」である(図10参照)。前回交換後の経過年数は「3年」であるので,現在(点検が行われた平成20年度)(0年次)は前回交換後4年目に相当する。したがって,第1世代の4年次(平成24年度)が,シナリオ0周期の満了の年度となる。
【0142】
シナリオ0では,シナリオ0周期ごとに新品に交換することをルールとするので,第1世代の4年次の次年度に,部品「インペラ」は新品に交換される(交換する計画がスケジューリングされる)。したがって,シナリオ1の場合,4年次までが第1世代(図12)となり,その次年度からは第2世代(図13)となる。
【0143】
また,上述のように,部品「インペラ」はトリガ部品である。トリガ部品「インペラ」を新品に交換する場合には,部品「インペラ」が属する資産「第1主ポンプ」単位で新品に交換される(再構築)(上述の共通ルールの(iv))。
【0144】
図13を参照して,シナリオ0にしたがうと,第2世代の第0年次(現在から通算すると5年後)(平成25年度に相当)に,部品「インペラ」を含む資産「第1主ポンプ」の全体が新品に交換されるので,第2世代の0年次における部品「インペラ」の健全度は回復する(数値が大きくなる)。部品「インペラ」についての部品情報テーブル中の「交換後健全度」欄に格納されている数値が,第2世代の第「0」年次における部品「インペラ」の健全度(ここでは,健全度の最大値「5」)とされる(再構築による健全度の回復)。
【0145】
次年度,すなわち第2世代の1年次の健全度には,前年度の健全度から0.3を減算した「4.7」が格納される。以下,同様にして,前年度の健全度から0.3を減算した値を次年度の健全度とすることを前提とし,かつシナリオ0周期(8年ごと)に健全度が「5」に回復するように,年次ごとの健全度が算出されて格納される。
【0146】
次にシナリオ1について説明する。シナリオ1は,健全度が交換健全度基準値「2」を下回る直前年度まで放置し(補修および交換を行わない),交換健全度基準値「2」を下回る年度に新品に交換することをルールに持つ(上記シナリオ1についてのルール(i))。図12を参照して,前年度の健全度から順次0.3を減算すると,6年次(平成26年度に相当)の健全度が「2.2」であるので,その次年度に健全度が交換健全度基準値「2」を下回ることになる。したがって,シナリオ1にしたがうと,6年次までが第1世代(図12)となり,その次年度からは第2世代(図13)になる。
【0147】
図13を参照して,シナリオ1にしたがうと,第2世代の第0年次(平成27年度に相当)に,部品「インペラ」が新品に交換される。部品「インペラ」はトリガ部品であるから,第2世代の第0年次(平成27年度に相当)に部品「インペラ」を含む資産「第1主ポンプ」の全体が新品に交換される(再構築による健全度の回復)。第2世代の0年次における部品「インペラ」の健全度は「5」とされる。
【0148】
前年度の健全度から0.3を減算した値を次年度の健全度とすることを前提とし,かつ交換健全度基準値「2」を下回る年次に健全度が「5」に回復するように,年次ごとの健全度が算出されて格納される。
【0149】
次にシナリオ2に着目する。シナリオ2は,「部品が属する資産についての目標耐用年数を経過するまでは,健全度が補修健全度基準値「3」を下回る年度に補修を行い,健全度を補修健全度回復量だけ回復させること」,および「部品が属する資産についての目標耐用年数経過後は,健全度が補修健全度基準値「3」を下回っても補修を行わずに放置し,健全度が交換健全度基準値「2」を下回る年度に新品に交換すること」をルールに持つ(シナリオ2についてのルール(i)および(ii))。また,シナリオ2については,資産の目標耐用年数は,シナリオ0および1についての目標耐用年数の1.5倍である22.5年とされる(共通ルール(iii))。
【0150】
図11(B)を参照して,資産「第1主ポンプ」の設置年月日は平成10年8月1日であり,図11(A)を参照して資産「第1主ポンプ」の耐用年数は15年である。シナリオ2についての目標耐用年数は資産の耐用年数に1.5を乗算した22.5年である。すなわち,平成10年8月1日から22.5年後の平成33年2月1日(平成32年度)が,部品「インペラ」が属する資産「第1主ポンプ」の目標耐用満了年度(年月日)となる。
【0151】
図12を参照して,シナリオ2にしたがうと,12年次(平成32年度)が部品「インペラ」が属する資産「第1主ポンプ」の目標耐用満了年である。11年次(平成31年度)までは,健全度が補修健全度基準値「3」を下回る年度に,補修による健全度の回復が行われる。すなわち,3年次(平成23年度)の健全度は「3.1」であるので,その次年度に補修健全度基準値「3」が下回ることになる。第4年次(平成24年度)に補修が行われることによって,補修健全度回復量分,前年度の健全度が回復することが計画される。補修健全度回復量は,部品「インペラ」の部品情報テーブル(図7)中に格納されている。ここでは,補修健全度回復量を「1.5」としている。したがって,4年次(平成24年度)の健全度は,前年度の健全度「3.1」に「1.5」を加算して得られる「4.6」とされる。10年次(平成30年度)についても同様である。
【0152】
12年次(平成32年度)に資産「第1主ポンプ」の目標耐用年が満了すると,その後は健全度が補修健全度基準値「3」を下回っても補修を行わずに放置され,健全度が交換健全度基準値「2」を下回る年度に新品に交換される。したがって,16年次(平成36年度)に健全度は補修健全度基準値「3」を下回るが補修は行われない。17年次,18年次も同様である。
【0153】
18年次(平成38年度)の健全度が「2.2」である。したがって,その次年度に,健全度が交換健全度基準値「2」を下回る。図13を参照して,シナリオ2にしたがうと,第2世代の0年次(平成39年度)に,部品「インペラ」を含む資産「第1主ポンプ」の全体が新品に交換される(再構築による健全度の回復)。第2世代の0年次(平成39年度)における部品「インペラ」の健全度が「5」とされる。以降の年次についても,前年度の健全度から0.3を減算した値を次年度の健全度とすることを前提とし,資産「第1主ポンプ」の目標耐用年数を経過するまでは補修健全度基準値「3」を下回る年度に補修を行い(「1.5」分健全度回復),目標耐用年数を経過すると健全度が交換健全度基準値「2」を下回る年度に新品に交換する(健全度は「5.0」に回復)という健全度の予測(算出)が行われる。
【0154】
上述したように,部品「インペラ」は,シナリオ0,シナリオ1およびシナリオ2の3つのシナリオに基づく健全度の予測処理が行われる。シナリオ3についての健全度の予測処理は行われない。部品情報テーブル(図6,図11(B))の「部品シナリオ種別」欄に,コードBが格納されている部品(一般には,劣化の度合いを把握しづらい電気系の機器について,コードBが格納される)(図5(D)参照)については,シナリオ0およびシナリオ3にしたがって健全度の予測処理が行われる。シナリオ3では,部品が属する資産についての目標耐用年数が経過した年度に,健全度に関わりなく新品に交換するというルール(上述したシナリオ3についてのルール(i))のもと,年次ごとの健全度が予測(算出)される。
【0155】
以上のようにして,部品「インペラ」について,シナリオ0,1および2のそれぞれについて算出された年度ごとの予測健全度(図12および図13)は,アセット・マネジメント・システム34のメモリまたはハードディスクに記憶される。資産「第1主ポンプ」を構成する他の部品についても,同様にして,予測健全度が算出されてアセット・マネジメント・システム34のメモリまたはハードディスクに記憶される。
【0156】
図20は,部品「インペラ」についてのシナリオ2についての単年度(ここでは平成23年度)のデータのデータ構造を示している。予測された健全度は,年度,部品名称(または部品コード),管理更新内容(交換,補修または再構築),必要経費(単独費および補助金),リスク費用等の他の項目とともに,互いに関連付けられてメモリに記憶される。
【0157】
X.単独費の将来予測処理(図14および図15)(ステップ43)
「単独費」とは下水道施設を管理する地方公共団体が負担する費用である。上述した健全度の年度ごとの予測推移と,部品ごとの部品情報テーブルにそれぞれ格納されている「補修費用」および「交換費用」に基づいて,単独費の将来予測処理が行われる。
【0158】
単独費の将来予測も,シナリオごとに行われる。上述した部品「インペラ」についての健全度推移(図12および図13)を参照して,まず,シナリオ0についての単独費の将来予測処理について説明する。
【0159】
単独費は,部品の修繕(部品補修または部品交換),または部品を含む資産の交換(再構築)が行われる年次に発生する。部品の補修もしくは交換,または部品を含む資産の交換のいずれもが行われない年次に単独費は発生しない。また,上述したように,部品の修繕の場合には全額単独費とされる(共通ルールの(ii),(iii))。部品を新品に交換する場合であって,その部品が属する資産の目標耐用年数が経過した後に交換する場合,その部品がトリガ部品である場合には,部品単位の交換ではなくその部品が属する資産単位で新品に交換され(再構築),その費用(資産単位の交換における,その資産に含まれる複数の部品のそれぞれの交換費用)は国庫補助の対象とされるので,この場合単独費は交換費用のうちの半額となる(共通ルール(iv))。なお,トリガ部品以外であれば,その部品が属する資産の目標耐用年数が経過した後に交換する場合には部品単位の交換が行われ,交換費用は全額単独費とされる(共通ルール(v))。
【0160】
図13を参照して,シナリオ0では,平成25年度,平成33年度,平成41年度・・・に,これらの年度の予測健全度が「5.0」に回復している。健全度が「5.0」に回復する年次は,部品「インペラ」を新品に交換する年次であるので,その年次に単独費が計上されることになる。
【0161】
図14および図15は,部品「インペラ」についての単独費の推移を表している。図14が第1世代(図12に対応)の単独費推移を,図15が第2世代以降(図13に対応)の単独費推移を示している。
【0162】
図14を参照して,第1世代では部品「インペラ」の修繕も再構築も予定されていないので単独費は計上されず,第1世代において各年度の単独費は「0」とされる。
【0163】
図15を参照して,シナリオ0では,平成25年度,平成33年度,平成41年度,平成49年度・・・に,部品「インペラ」が新品に交換されることが予定されているので,これらの年度(年次)に,単独費が計上される。この実施例では,部品「インペラ」を新品に交換するための交換費用を500 万円とする。交換費用は,部品ごとに作成されている部品情報テーブル(図7)の「交換費用」欄にあらかじめ記憶されている金額に基づく。
【0164】
ここで,平成33年度および平成49年度には,単独費として,交換費用の全額である「500 万円」が計上されているのに対し,平成25年度および平成41年度には,単独費として交換費用の半額である「250 万円」が計上されている。これは,上述の共通ルール(iv)にしたがうからである。すなわち,部品「インペラ」は,資産「第1主ポンプ」のトリガ部品であるので,部品「インペラ」を新品に交換する場合には,部品「インペラ」のみならず,部品「インペラ」を含む資産「第1主ポンプ」の全体が新品に交換される(再構築)。そして,トリガ部品を新品に交換する場合,目標耐用年数を超えている資産であれば,交換費用の半額,すなわち,250 万円の補助金を得られるからである。
【0165】
具体的に説明すると,資産「第1主ポンプ」の目標耐用年数は15年(図11(A)参照)であり,設置年月日は平成10年8月1日である。したがって,平成25年度に目標耐用年が到来する。平成25年度は資産「インペラ」の目標耐用年数を超えていると判断されて,部品「インペラ」の交換費用の半額,すなわち,250 万円が単独費として計上される。
【0166】
これに対し,平成33年度は,平成25年度に部品「インペラ」を含む資産「第1主ポンプ」を新品に交換して8年しか経過していない(目標耐用年数の15年に達していない)ので,補助金の交付はない。したがって,平成33年度における部品「インペラ」の単独費は,交換費用の全額である500 万円が計上される。
【0167】
次に,シナリオ1に着目する。図12および図13に示すシナリオ1についての部品健全度推移を参照して,シナリオ1では,平成27年度に部品「インペラ」を含む資産「第1主ポンプ」の再構築が予定されている。また,部品「インペラ」が属する資産「第1主ポンプ」は平成25年度に目標耐用年が到来している。図14および図15を参照して,平成27年度は資産「インペラ」の目標耐用年数を超えていると判断されるので,部品「インペラ」の交換費用の半額,すなわち,250 万円が,平成27年度(第2世代以降の0年次)の単独費として計上される。これに対し,平成38年度(11年次)は,資産「第1主ポンプ」が交換された平成27年度から目標耐用年数である15年を経過していないので,交換費用は全額単独費(500 万円)とされる。
【0168】
シナリオ2に着目する。図12および図13を参照して,シナリオ2では,平成24年度(第1世代の第4年次)および平成30年度(第1世代の第10年次)に,部品「インペラ」の補修が予定されている。図14を参照して,平成24年度および平成30年度には,部品「インペラ」の部品情報テーブルに格納されている補修費用(75万円)が,単独費として計上される。
【0169】
シナリオ2については,上述したように,資産「第1主ポンプ」の目標耐用年数は22.5年であり,平成32年度に,部品「インペラ」が属する資産「第1主ポンプ」の目標耐用年が満了する。図13を参照して,平成39年度(第2世代の0年次)に,部品「インペラ」の交換(部品「インペラ」を含む資産「第1主ポンプ」の交換)が行われる。したがって,平成39年度は資産「第1主ポンプ」の目標耐用年数を超えていると判断される。図15を参照して,平成39年度における部品「インペラ」の交換は,部品「インペラ」の交換費用の半額,すなわち,250 万円が単独費として計上される。シナリオ2についての平成68年度(第2世代以降の29年次)についても,資産「インペラ」の目標耐用年数を超えているので,部品「インペラ」の交換費用の半額(250 万円)が単独費として計上される。
【0170】
以上のようにして,部品「インペラ」について,シナリオ0,1および2のそれぞれについて算出された年度ごとの予測単独費(図14および図15)は,アセット・マネジメント・システム34のメモリまたはハードディスクに記憶される。
【0171】
XI.補助金の将来予測処理(図16および図17)(ステップ43)
図16および図17は部品「インペラ」についての補助金の推移を表している。図16が0世代(図12および図14に対応)の補助金推移を,図17が第2世代以降(図13および図15に対応)の補助金推移を示している。
【0172】
上述のように,部品「インペラ」の交換費用が半額とされた年度に,補助金が計上される。すなわち,図14および図15に示す部品「インペラ」についての単独費の推移において,250 万円が計上されている年度に補助金は計上されることになる。
【0173】
第1世代(図16)では,シナリオ0,シナリオ1およびシナリオ2のいずれについても補助金の計上はない。第2世代以降(図17)では,シナリオ0では平成25年度および平成41年度に補助金250 万円(交換費用が半額)が計上される。シナリオ1では平成27年度および平成49年度に,シナリオ2では平成39年度および平成68年度に,それぞれ補助金250 万円が計上される。
【0174】
部品「インペラ」についてシナリオ0,1および2のそれぞれについて算出された年度ごとの予測補助金(図16および図17)は,アセット・マネジメント・システム34のメモリまたはハードディスクに記憶される。
【0175】
XII.リスク費用の将来予測処理(図18および図19)(ステップ44)
図18および図19は,部品「インペラ」についてのリスク費用の推移を表している。リスク費用は,部品ごとに作成される部品情報テーブル(図7)に格納されているリスク関数に基づいて算出される費用であって,健全度が低下した状態において発生しうる故障等に対応するための費用である。ここでは,健全度「3」を下回ったときにリスク費用が発生し,健全度が低下するにつれてリスク費用が増加するものとする。
【0176】
図12および図13を参照して,シナリオ0では,平成24年度に健全度が2.8となることが予測されている。図18を参照して,シナリオ0の平成24年度にはリスク費用として20万円が計上される。同様にして,シナリオ0では,平成32年度,平成40年度および平成48年度に,それぞれ健全度が2.9となることが予想されている。図19を参照して,シナリオ0の平成32年度,平成40年度および平成48年度にはリスク費用として15万円が計上される。
【0177】
シナリオ1および2についても,上述と同様に,健全度が「3」を下回る年度に,健全度にしたがうリスク費用が計上される。
【0178】
以上のようにして,部品「インペラ」について,シナリオ0,1および2のそれぞれについて算出された年度ごとの予測リスク費用(図18および図19)は,アセット・マネジメント・システム34のメモリまたはハードディスクに記憶される。
【0179】
XIII.最適シナリオの選択処理(図21,ステップ45)
図21は,部品「インペラ」について,今後50年間に必要とされる費用(総額)を,第1世代および第2世代のそれぞれについてのシナリオ種別のすべての組み合わせごとにまとめたものである。上述のように,アセット・マネジメント・システム34のメモリまたはハードディスクには,部品「インペラ」について,シナリオ0,1および2のそれぞれについて算出された年度ごとの予測単独費(図14および図15),予測補助金(図16および図17)および予測リスク費用(図18および図19)が記憶されているので,これらのデータが用いられて,第1世代および第2世代のそれぞれについてのシナリオ種別のすべての組み合わせごとの50年間に必要とされる費用(総額)が算出される。
【0180】
アセット・マネジメント・システム34は,50年間にわたって必要とされる予測費用が最も少ないシナリオの組合わせを,最適シナリオとして選択する。図21に示す例では,第1世代についてシナリオ2を適用し,第2世代以降についてシナリオ2を適用すると,最も費用が少なくなっている。アセット・マネジメント・システム34は,第1世代についてシナリオ2を適用し,かつ第2世代についてシナリオ2を適用する組合わせを,「最適シナリオ」として位置づける処理を行う。
【0181】
なお,第1世代および第2世代のそれぞれについてシナリオ0を適用したものを,特に,基準シナリオと呼ぶ。基準シナリオは,アセット・マネジメント・システム34において選択される最適シナリオとの比較において適宜用いられる。
【0182】
図22は,部品「インペラ」についての最適シナリオ(第1世代についてシナリオ2を適用し,かつ第2世代以降についてシナリオ2を適用したもの)に基づく,健全度予測の結果をグラフにして表すものである。健全度は年数が経過するにしたがって低下していく。健全度「3」を下回らないように補修が行われ(補修を行うことが計画され),補修が行われると健全度が1.5回復する(符号A,符号B,符号D)。資産「第1主ポンプ」の目標耐用年数(平成32年度)を超えると,補修は行われず,健全度「2」を下回ることが予想される年度(平成39年度)に部品「インペラ」の交換が行われる(符号C)。部品「インペラ」はトリガ部品であるから,部品「インペラ」の交換されるときには,資産「第1主ポンプ」に含まれる他のすべての部品も交換される(再構築)。
【0183】
図23は,部品「シャフト」についての最適シナリオに基づく健全度予測の結果をグラフにして表すものである。健全度は年数が経過するにしたがって低下していく。健全度「3」を下回らないように補修が行われるのは,上述の部品「インペラ」と同じである。ただし,平成39年度に,前年度の健全度が比較的高い(4.0以上)であるにも関わらず,健全度が5.0に回復している。これは,上述のように,資産「第1主ポンプ」に含まれるトリガ部品である部品「インペラ」を交換するときに,部品「シャフト」を含む資産「第1主ポンプ」の全体が交換されるからである(再構築)。
【0184】
図24は,上述した部品「インペラ」および「シャフト」を含む,資産「第1主ポンプ」に含まれる複数の部品についての健全度推移のグラフを示すものである。上述のように,平成39年度に,部品「インペラ」の交換に合わせて,資産「第1主ポンプ」を構成するすべての部品が交換され(再構築),その結果,平成39年度では,資産「第1主ポンプ」を構成するすべての部品の健全度が「5」に回復している。
【0185】
このようにして,資産「第1主ポンプ」に含まれる複数の部品のそれぞれについて,健全度が予測され,単独費,補助金およびリスク費用が予測される。そして,資産「第1主ポンプ」に含まれる複数の部品のそれぞれについて,最適シナリオが選択される。
【0186】
施設「ポンプ棟」に含まれる他の資産(「第2主ポンプ」など)(図3参照)についても,上述と同様にして,資産に含まれる複数の部品のそれぞれについて健全度が予測され,単独費,補助金およびリスク費用が予測される。そして,資産に含まれる複数の部品のそれぞれについて,最適シナリオ(第1世代および第2世代以降)が選択される。
【0187】
施設「ポンプ棟」に含まれるすべての資産を構成するすべての部品のそれぞれについて選択される最適シナリオは,アセット・マネジメント・システム34のメモリまたはハードディスクに記憶される。
【0188】
XIV.資産単位の集計処理(図25,図26,図27)(ステップ46)
図25は,最適シナリオに基づく場合の,資産「第1主ポンプ」についての今後50年間の年度ごとの予測される修繕費をまとめたものである。修繕費とは,補修費用および部品単独の交換費用の総額である。
【0189】
図26は最適シナリオに基づく場合の,資産「第1主ポンプ」についての今後50年間の年度ごとの予測される再構築費(資産「第1主ポンプ」単位の交換費用)をまとめたものである。図27は最適シナリオに基づく場合の,資産「第1主ポンプ」についての今後50年間の年度ごとの予測されるリスク費用をまとめたものである。他の資産(第2主ポンプ,主ポンプ現場操作盤,防食塗装など(図3参照))についても,資産単位に,年度ごとの修繕費,再構築費およびリスク費用が集計される。
【0190】
XV.再構築ユニットの作成(図28,ステップ47)
図28は,施設「ポンプ棟」を構成する複数の資産(第1主ポンプ,第2主ポンプなど)(図3参照)を,再構築ユニットA〜再構築ユニットEの5つのユニットにグルーピングした様子を示している。
【0191】
上述したように,施設「ポンプ棟」を構成する複数の資産(第1主ポンプ,第2主ポンプなど)のそれぞれに含まれる部品(インペラ,シャフトなど)のそれぞれについて,補修年度,部品単独交換年度が決定され,かつ資産単位の交換(再構築)の年度が決定される。ここで,再構築を行う場合,資産を独立に再構築するよりも,複数の資産をまとめて再構築した方が工事の期間短縮等の観点から都合がよい。このような観点から,アセット・マネジメント・システム34は,施設(ポンプ棟など)に含まれる複数の資産(第1主ポンプ,第2主ポンプなど)を,いくつかのユニット(再構築ユニット)にグルーピングして,この再構築ユニットを単位として再構築(複数の資産単位の交換)を行うことを計画する。
【0192】
この実施例では,アセット・マネジメント・システム34は,施設に含まれる複数の資産について,設置場所コード(小)を基準にグルーピングして,グルーピングされた複数の資産のそれぞれを,再構築ユニットと位置づける処理を行う。
【0193】
上述したように,資産ごとに作成されている資産情報テーブルには,資産の設置場所を特定する設置場所コードが記憶されている(図11(A))。設置場所コードはアルファベットおよび数字の組合わせによって構成されている。図11(A)を参照して,資産「第1主ポンプ」の設置場所コードは「K0403」である。設置場所コードのうち,最初の3文字(すなわち,「K04」)によって資産が設置されている建物が特定され,設置場所コードの全文字(すなわち,「K0403」)によって,資産が設置されている建物と部屋(または階)が特定される。設置場所コードの最初の3文字を,設置場所コード(大)と呼ぶ。設置場所コードの全文字を設置場所コード(小)と呼ぶ。
【0194】
図28を参照して,この実施例では,各資産に付与されている設置場所コード(小)が同じ資産が,一つの再構築ユニットとしてまとめられる。すなわち,施設「ポンプ棟」に含まれている複数の資産(図2,図3参照)については,第1主ポンプ14,第2主ポンプ15,主ポンプ現場操作盤19および防食塗装12が同じ設置場所コード(小)を持つ。第1主ポンプ14,第2主ポンプ15,主ポンプ現場操作盤19および防食塗装12が,一つの再構築ユニットAとしてまとめられる。
【0195】
同様にして,自動除塵機13および自動除塵機現場操作盤18が一つの再構築ユニットBとしてまとめられ,脱臭ファン現場操作盤20,脱臭ファン16および脱臭装置17が一つの再構築ユニットCとしてまとめられる。ポンプ棟動力制御盤21およびポンプ棟(ポンプ棟建物10を意味する)は,それぞれ単独(一つの資産のみ)で再構築ユニットD,再構築ユニットEをそれぞれ構成する。
【0196】
もちろん,再構築ユニットを規定する上述したグルーピング処理は,設置場所コード(小)に基づく処理に限られることはなく,前資産コード(動力,監視または計装のいずれか)が同じ資産を再構築ユニットとしてグルーピングしてもよい。アセット・マネジメント・システム34によって行われたグルーピング処理の結果を,アセット・マネジメント・システム34の操作者等が修正してもよい。
【0197】
グルーピングされた再構築ユニットのそれぞれにおいて,いずれか一つの資産がトリガ資産として設定される。たとえば,再構築ユニットAを構成する4つの資産,すなわち,第1主ポンプ14,第2主ポンプ15,主ポンプ現場操作盤19および防食塗装12のうち,この実施例では,第1主ポンプ14をトリガ資産とする。トリガ資産は再構築ユニットのグルーピング処理が行われた時点において,アセット・マネジメント・システム34の操作者が指定してもよいし,あらかじめ資産情報テーブル(図6)にトリガ資産であることを記憶させておいてもよい。トリガ資産は,後述するように,再構築のスケジュール(再構築の実施年度)の調整処理において用いられる。
【0198】
XVI.期間費用集計および再構築ユニット単位のスケジュール調整(図29,図30)(ステップ48,49)
図29は,施設「ポンプ棟」に含まれる複数の資産のそれぞれついての年度ごとの保全費の推移を示している。保全費は,修繕費および再構築費の総額である。図28において,各資産について年度ごとの保全費は,上段が単独費を,下段が補助金を,それぞれ示している。
【0199】
健全度予測処理において,施設「ポンプ棟」に含まれる複数の資産(「第1主ポンプ」など)のそれぞれについて,再構築(資産単位の交換)を行うべき年度が決定されている。たとえば,再構築ユニットAに含まれる資産「第1主ポンプ」については,平成39年度が,再構築(資産単位の交換)を実施すべき年度とされている。再構築ユニットAに含まれる他の資産についても再構築を実施すべき年度が決定されている。具体的には,第2主ポンプについては平成40年度が,主ポンプ現場操作盤については平成37年度が,防食塗装については平成41年度が,再構築の年度とされている。
【0200】
再構築ユニットAに含まれる複数の資産のうち,トリガ資産は「第1主ポンプ」である。アセット・マネジメント・システム34は,再構築ユニット単位の保全スケジュール調整処理において,再構築ユニットに含まれる,トリガ資産以外の資産についての再構築の実施年度を,トリガ資産の再構築の実施年度に合わせる処理(保全スケジュール調整処理)を行う。
【0201】
図30は,アセット・マネジメント・システム34によって行われた保全スケジュール調整処理後の施設「ポンプ棟」についての保全費推移を示している。
【0202】
図29および図30において,再構築ユニットAを構成する資産(第1主ポンプ,第2主ポンプ,主ポンプ現場操作盤および防食塗装)に着目する。上述したように,再構築ユニットAに含まれる複数の資産のうち,トリガ資産は第1主ポンプである。アセット・マネジメント・システム34は,再構築ユニットAに含まれる複数の資産のうち,トリガ資産の以外の資産,すなわち,第2主ポンプ,主ポンプ現場操作盤,および防食塗装についての再構築の実施年度を,トリガ資産である第1主ポンプの再構築の実施年度に合わせる処理を行う。すなわち,アセット・マネジメント・システム34は,第2主ポンプ,主ポンプ現場操作盤,および防食塗装についての再構築の実施年度が,いずれも第1主ポンプの再構築の実施年度である平成39年度となるように,第2主ポンプ,主ポンプ現場操作盤および防食塗装についての再構築の実施年度を調整(移動)する。再構築の実施年度が調整された資産を構成する部品についての交換実施年度等(図20参照)も書き換えられるのは言うまでもない。
【0203】
他の再構築ユニットB,再構築ユニットCについても,トリガ資産の再構築年度に,トリガ資産以外の資産の再構築年度を合わせる処理が行われる。再構築ユニットDおよび再構築ユニットEは一つの資産のみによって構成されているので,再構築の実施年度の調整は行われない。
【0204】
さらに,再構築ユニット単位のスケジュール調整処理では,図31に示すように,再構築の実施時期を2年度に分ける処理が行われる。これにより,再構築費のうちの半額(もちろん,6:4等の比率であってもよい)が,前年度に計上される。たとえば,図30および図31を参照して,平成39年度の第1主ポンプに着目すると,1475万円の単独費および1475万の補助金が計上されている。平成39年度の前年度の平成38年度には20万円の単独費が計上されている(補助金は計上されていない)。平成39年度の第1主ポンプについての単独費1475万円の半額である 737万5000円が前年度の平成38年度の単独費に計上される。すなわち,平成38年度の単独費は,737万5000円と20万円の合計である757万5000円とされる。補助金については,1475万円の半額である 737万5000円が,そのまま平成38年度の補助金として計上される。再構築の実施時期を2年間に分けるのは,単年度に必要とされる経費が多額になるのを避けるため,および一般的には複数の資産から構成される再構築ユニットの全体を新品に交換するのに2年程度の期間を必要とするからである。
【0205】
XVIII.予算との照合処理(図32)(ステップ50)
図32は,施設「ポンプ棟」についての,平成20年度から平成50年度までの年度ごとの予算と保全費とを対比したものである。年度ごとの施設についての予算から保全費を減算した金額が差額欄に示されている。また,保全費が予算内に収まっている年度については照合結果欄に○が示され,保全費が予算を超えている年度については照合結果欄に×が示されている。なお,施設「ポンプ棟」についての年度ごとの予算は,再構築データベース31にあらかじめ登録しておくことができる。
【0206】
図32を参照して,この実施例では,平成39年度と平成46年度に,保全費が予算を超えている。保全費が予算を超えている年度がある場合,再構築ユニットを単位にして,事業計画(部品補修,部品交換または再構築)の実施年度を先送りする処理が行われる。
【0207】
XIX.再構築ユニット単位の事業計画の実施年度の先送り処理(図33,図34,図35,図36,図37)(ステップ51)
上述のように,平成39年度および平成46年度のそれぞれについて,再構築ユニット単位に事業計画の実施年度を先送する処理が行われる。まず,複数の再構築ユニットのうちのいずれの再構築ユニットについての事業計画の実施年度を先送りするかが,アセット・マネジメント・システム34によって決定される。
【0208】
複数の再構築ユニットのうちのいずれの再構築ユニットについての事業計画の実施年度を先送りするかは,リスク費用に基づいて決定される。上述したように,施設「ポンプ棟」に含まれる複数の資産について,再構築の実施年度が調整されたので,アセット・マネジメント・システム34は,この実施年度の調整後の施設「ポンプ棟」に含まれる複数の資産(「第1主ポンプ」など)のそれぞれに含まれる複数の部品(「インペラ」など)について,健全度予測(図12,図13)を再度行い,リスク費用の予測(図18,図19)を再度行う。再算出されたリスク費用が資産単位でまとめられ(図33),さらに再構築ユニット単位でまとめられる(図34)。
【0209】
再構築ユニット単位でまとめられたリスク費用に基づいて,アセット・マネジメント・システム34は,管理更新計画(事業計画)の先延ばしを実施すべき優先順位を,年度ごとに,再構築ユニットのそれぞれについて決定する。
【0210】
図34を参照して,平成39年度に着目すると,再構築ユニットA,再構築ユニットC,再構築ユニットD,再構築ユニットBの順番に,リスク費用が大きい(再構築ユニットEは,平成39年度のリスク費用が0円であるので,この場合には優先順位の付与から除外される)。リスク費用が大きいということは,発生しうる故障等に対応するための費用が大きいことを意味する。したがって,リスク費用が小さい再構築ユニットを優先して,事業計画の実施年度を先送りすることが行われる。
【0211】
図35は,年度ごとに,再構築ユニット単位のリスク費用が大きい順番に,1〜5の順位を付したものである。アセット・マネジメント・システム34は,図35に示すように,優先順位を年度ごとに決定する。
【0212】
図36は管理更新計画(事業計画)の実施時期の先送り処理前の年度ごとの保全費を,図37は先送り処理後の年度ごとの保全費を示している。
【0213】
図35に示す優先順位に基づいて,平成39年度および平成46年度のそれぞれについて,再構築ユニットA〜Eのいずれについての事業計画の実施時期を先送りするかが決定される。平成39年度に着目すると,最も優先順位が大きい(すなわち,リスク費用が少ない)のは再構築ユニットBである。このため,再構築ユニットBのついての平成39年度の事業計画が,次年度,すなわち平成40年度に先送りされる。再構築ユニットBのついての平成39年度の保全費が,次年度,すなわち平成40年度に格納される。
【0214】
再構築ユニットBについての平成39年度の事業計画の実施時期を平成40年度に先送りすると,再構築ユニットBについての平成39年度の保全費は0になる。そして,平成39年度の資産「ポンプ棟」についての保全費は少なくなる。未だ平成39年度の資産「ポンプ棟」についての保全費が,平成39年度の予算を超えている場合には,次に優先順位が大きい再構築ユニット,すなわち,再構築ユニットCの事業計画の実施が次年度に先送りされる。
【0215】
図36および図37に示す例では,平成39年度の再構築ユニットBおよび再構築ユニットCについての事業計画が,平成40年度に先送りされている。平成39年度の再構築ユニットBおよび再構築ユニットCについての保全費は0になり,平成40年度における再構築ユニットBおよび再構築ユニットCについての保全費が増額される。同様にして,平成46年度では,再構築ユニットBおよび再構築ユニットDについての事業計画が平成47年度に先送りされる。
【0216】
以上の処理を経ることによって,施設「ポンプ棟」に含まれる複数の資産を構成する部品のそれぞれについて,補修,部品単位の交換,資産単位の交換(再構築)のスケジュールが決定される。図38はアセット・マネジメント・システム34によって作成される施設「ポンプ棟」に含まれる資産「第1主ポンプ」についての中長期計画35の一例を示している。図38に示す中長期計画35には,資産「第1主ポンプ」に含まれる複数の部品(「インペラ」など)のそれぞれについての年度ごとの事業計画(補修,部品単位の交換および資産単位の交換(再構築)の実施年度)と,資産「第1主ポンプ」についての年度ごとの予算計画と,健全度推移とが示されている。中長期計画35がプリンタから出力される,または表示画面上に表示される。
【0217】
施設「ポンプ棟」に含まれる他の資産(「第2主ポンプ」等)についても,図37に示す中長期計画35と同様の中長期計画が,アセット・マネジメント・システム34によって作成されて出力される。もちろん,施設「ポンプ棟」以外の他の施設についても,同様にして,その施設に含まれる資産についての中長期計画35が作成されるのは言うまでもない。
【0218】
XX.維持管理費等の算出,LCC集計(図39,図40,図41)(ステップ52,53)
図39は,将来の年度ごとの決算を予測した財務諸表37(予測決算書)の一例を示している。
【0219】
財務諸表37は地方公共団体の複数の処理区の全体を対象にして作成される。たとえば,静岡県の場合,「西遠処理区」,「磐南処理区」,「静清処理区」,「西部処理区」および「東部処理区」の5つの処理区のすべてが対象とされる。
【0220】
上述した中長期計画35の作成によって,処理区ごとの年度ごとに必要とされる費用が得られる。処理区ごとに年度ごとに必要とされる費用のうち,単独費として計上される費用が,予測決算書では「修繕費」に反映される。また,補助金として計上される費用は予測決算書では「建設費」の「再構築分」に反映される。
【0221】
起債償還額(現有資産分,新規投資分および再構築分)は,次式によって算出される。
【0222】
起債償還額=補助金−(補助金×補助率)
【0223】
資産のすべてについて起債償還額を算出し,年度ごとの合計を算出し,この年度ごとの起債償還額に対して借入条件(借入期間,据置期間,利率)を設定することによって,将来の元利償還額が求められる。これにより将来の年度ごとの利息が得られる。
【0224】
資産のすべてについて,補助金に取得経費率を乗算することによって資産の取得金額を算出し,地方公営企業法に定められている償却方法,耐用年数,残存価格および償却限度額にしたがって将来の減価償却費を算出する。年度ごとの減価償却費が得られる。
【0225】
修繕費,建設費(再構築分),利息,および減価償却費以外の予測決算書中の費用(たとえば,職員給与費など)は,過去の実績,処理場に流入する下水量の予測にしたがって算出される。過去の実績は,処理区情報テーブル(図8)に記憶されているデータに基づく。
【0226】
図40は,上述した利息,減価償却費,維持管理費および使用料収入についてのLCCシミュレーション結果36(損益計算グラフ)を示している。LCCシミュレーション結果36は中長期計画35を反映したものになる。
【0227】
図41は,経営指標比較38を示すグラフである。この経営指標比較38を示すグラフは,図39に示す財務諸表37に基づいて作成される。
【0228】
経営指標比較38には,汚水処理原価と,汚水処理原価に含まれる維持管理費分と,汚水処理原価に含まれる資本費(減価償却費および利息)分と,使用料回収率の4つのグラフを含む。これらは,次のようにして算出される。
【0229】
汚水処理原価=費用(図39の維持管理費と減価償却費と利息の合計額)/有収水量
【0230】
汚水処理原価(うち維持管理費)=維持管理費/有収水量
【0231】
汚水処理原価(うち資本費)=資本費(減価償却費+利息)/有収水量
【0232】
使用料回収率=使用料収入/費用
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】下水処理場の処理施設の一般的な構成を示すブロック図を示す。
【図2】ポンプ棟の構成を示す。
【図3】ポンプ棟と,ポンプ棟を構成する複数の資産と,資産の一つである第1主ポンプを構成する複数の部品との関係を示す。
【図4】下水道施設管理更新計画システムの全体的な構成を示すブロック図である。
【図5】(A)は社会適合性マスタ・テーブルを,(B)は環境分類マスタ・テーブルを,(C)は資産重要度マスタ・テーブルを,(D)は部品シナリオ種別マスタ・テーブルを,(E)は部品措置レベル・マスタ・テーブルをそれぞれ示す。
【図6】資産情報テーブルを示す。
【図7】部品情報テーブルを示す。
【図8】処理区情報テーブルを示す。
【図9】アセット・マネジメント・システムにおいて実行される処理の流れを示すフローチャートを示す。
【図10】健全度判定表の一例を示す。
【図11】(A)資産情報テーブルの一部を,(B)は部品情報テーブルの一部を,それぞれ具体的に示す。
【図12】健全度予測推移を示す。
【図13】健全度予測推移を示す。
【図14】部品単独費予測推移を示す。
【図15】部品単独費予測推移を示す。
【図16】部品補助金予測推移を示す。
【図17】部品補助金予測推移を示す。
【図18】部品リスク費用予測推移を示す。
【図19】部品リスク費用予測推移を示す。
【図20】部品についての単年度のデータについてのデータ構造を示す。
【図21】50年間の予測費用を示す。
【図22】健全度予測の結果をグラフによって示す。
【図23】健全度予測の結果をグラフによって示す。
【図24】健全度予測の結果をグラフによって示す。
【図25】修繕費の予測推移を示す。
【図26】再構築費の予測推移を示す。
【図27】リスク費用の予測推移を示す。
【図28】再構築ユニットのグルーピングの様子を示す。
【図29】保全費の予測推移を示す。
【図30】保全費の予測推移を示す。
【図31】保全費の予測推移を示す。
【図32】予算との照合処理の様子を示す。
【図33】資産ごとのリスク費用の予測推移を示す。
【図34】再構築ユニットごとのリスク費用の予測推移を示す。
【図35】事業計画を先延ばしする場合の優先順位を示す。
【図36】事業計画の先延ばし前の資産ごとの保全費推移を示す。
【図37】事業計画の先延ばした後の資産ごとの保全費推移を示す。
【図38】中長期計画を示す。
【図39】財務諸表の一例を示す。
【図40】LCCシミュレーション結果を示す。
【図41】経営指標比較を示す。
【符号の説明】
【0234】
31 再構築データベース
32 システム・サーバ
34 アセット・マネジメント・システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品によって構成される資産が複数組み合わされて構成される施設についての管理および更新の計画を策定するシステムであって,
部品補修のタイミングおよび部品交換のタイミングのうちの少なくとも一方を,算出される予測健全度,部品の耐用年数および資産の耐用年数の少なくともいずれかとの関係によって定めた複数種類のシナリオ,部品ごとに定められた健全度低下関数,ならびに部品ごとに定められた部品補修または部品交換が行われた場合の健全度回復量にしたがって,部品についての現在健全度を基準にして将来の年度ごとの予測健全度を,複数のシナリオのそれぞれについて算出する健全度算出手段,
上記健全度算出手段によって算出される年度ごとの予測健全度に基づいて,複数のシナリオのそれぞれについて部品補修または部品交換の実施年度を計画する計画手段,
上記計画手段によって計画された部品補修または部品交換の実施年度,ならびに部品補修および部品交換に必要とされる費用に基づいて,複数のシナリオのそれぞれについて将来の所定期間に発生する費用を算出する期間費用算出手段,ならびに
上記期間費用算出手段によってシナリオごとに算出される期間費用に基づいて,最も期間費用が少ないシナリオを最適シナリオに決定する最適シナリオ決定手段,
を備えた施設管理および更新計画システム。
【請求項2】
少なくとも,資産が属する施設を特定する施設コード,資産を特定する資産コード,資産の耐用年数,および資産設置年月日を記憶している資産ごとの資産情報テーブル,ならびに
少なくとも,部品が属する資産を特定する資産コード,部品を特定する部品コード,部品の耐用年数,部品補修費用,部品交換費用,部品補修健全度回復量,部品交換健全度回復量,および健全度を算出すべきシナリオ種類を特定するシナリオ種別コードを記憶している部品ごとの部品情報テーブルを備えている,
請求項1に記載の施設管理および更新計画システム。
【請求項3】
資産を構成する複数の部品のうちの一の部品がトリガ部品として位置づけられており,
上記トリガ部品を対象して将来の年度ごとの予測健全度を算出して部品補修または部品交換の実施年度を計画し,その後に上記トリガ部品以外の部品を対象にして将来の年度ごとの予測健全度を算出して部品補修または部品交換の実施年度を計画するように,上記健全度算出手段および上記計画手段を制御する制御手段を備え,
上記健全度算出手段は,
先に決定されるトリガ部品の部品交換の実施年度が,そのトリガ部品が属する資産の目標耐用年数を超えている場合に,トリガ部品の部品交換の実施年度にトリガ部品を含む資産全体の交換を行うことが計画されるように,トリガ部品以外の部品についての予測健全度を算出する,
請求項1または2に記載の施設管理および更新計画システム。
【請求項4】
上記資産情報テーブルには,その資産と関連する他の資産を特定するコードがさらに記憶されており,
上記資産情報テーブルに記憶されている関連コードに基づいて,施設を構成する複数の資産を,関連する資産ごとにまとめてユニットを構築する資産ユニット構築手段を備え,
上記資産ユニット構築手段によってまとめられた資産ユニットに含まれる一の資産がトリガ資産として位置づけられており,
資産ユニットが複数の資産を含む場合に,上記トリガ資産の交換実施年度に上記資産ユニットに含まれる他の資産が交換されるように,上記計画手段によって計画された部品交換の実施年度を修正する修正手段を備えている,
請求項3に記載の施設管理および更新計画システム。
【請求項5】
年度ごとの施設に対する予算を記憶した予算記憶手段,および
上記修正手段によって部品交換の実施年度が修正された後の施設単位の年度別の予測費用を算出する施設予測費用算出手段,
施設予測費用算出手段によって算出された年度別の施設単位の予測費用が,上記予算記憶手段に記憶されている予算を超えている年度が存在する場合に,複数の資産ユニットのうちのいずれかの資産ユニットについての交換実施年度を,次年度以降に先送りする先送り手段を備えている,
請求項4に記載の施設管理および更新計画システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2009−169737(P2009−169737A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8047(P2008−8047)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000230571)日本下水道事業団 (46)
【Fターム(参考)】