説明

予熱電極を有する脈管密封器具

【課題】使用者が組織を選択的に密封および/または切断することを可能にする、予熱電極を有する電極アセンブリを備える鉗子を提供すること。
【解決手段】電極アセンブリ105であって、以下:1対の対向する第一の顎部材110および第二の顎部材120であって、顎部材の少なくとも一方は、第一の位置から第二の位置へと他方に対して可動であり、各顎部材はその長さに沿って延びる少なくとも1つの導電性組織密封表面を備え、各組織密封表面は電気外科エネルギーの供給源に接続されて、組織密封表面の間の組織に通して電気外科エネルギーを伝導させて、密封を実施し得る、顎部材;ならびに顎部材の少なくとも一方の内部に配置された少なくとも1つの加熱要素であって、電気エネルギーが印加される前に少なくとも1つの導電性組織密封表面を予熱するように構成される、加熱要素、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡外科手術手順と開胸外科手術手順との両方のために使用される鉗子に関し、この鉗子は、使用者が組織を選択的に密封および/または切断することを可能にする、電極アセンブリを備える。より特定すると、本開示は、組織を効果的に密封し、そして密封された組織領域の間で組織を効果的に切断する目的で、予熱電極を備える鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
開胸電気外科用鉗子または内視鏡電気外科用鉗子は、止血を行うために、機械的なクランプ作用と電気エネルギーとの両方を利用する。各対向する顎部材の電極は、異なる電位に荷電され、その結果、これらの顎部材が組織を把持すると、電気エネルギーが、この組織を通して選択的に移動させられ得る。外科医は、電極の間で組織に通して印加される電気外科エネルギーの強度、周波数および持続時間を制御することによって、焼灼、凝固/乾燥および/または単なる止血の減少もしくは遅延のいずれかを行い得る。
【0003】
特定の外科手術手順は、単に組織を焼灼することのみを必要とするのではなく、組織、脈管および特定の脈管束を「密封」するために、クランプ圧力、電気外科エネルギーおよびギャップ距離の組み合わせに依存する。より具体的には、脈管の密封または組織の密封は、最近開発された技術であり、この技術は、2つの対向する顎部材または密封プレートの間の組織を効果的に密封するかまたは癒合させるために、無線周波数エネルギー、クランプ圧力、およびギャップ距離(すなわち、組織の周りで閉じた場合の対向する顎部材の間の距離)の正確な制御の独特の組み合わせを利用する。脈管または組織の密封は、単なる「焼灼」(これは、組織を破壊するための熱の使用を包含し、「ジアテルミー」または「エレクトロジアテルミー」ともまた呼ばれる)ではない。脈管の密封はまた、単なる「凝固」(これは、組織を乾燥させるプロセスであり、このプロセスにおいて、組織細胞は破壊され、そして乾燥される)でもない。「脈管の密封」とは、組織内のコラーゲン、エラスチンおよび基質を液化させ、これによって、組織が対向する組織構造体の間でかなり減少した分界を有する融合塊に再形成されるプロセスと定義される。
【0004】
組織または脈管(特に、厚い組織および大きい脈管)を効果的に密封するためには、2つの優勢な機械的パラメータが、正確に制御されなければならない。これらのパラメータは、1)脈管に付与される圧力;および2)導電性組織接触表面(電極)間のギャップ距離である。理解され得るように、これらのパラメータの両方が、密封される脈管または組織の厚さによって影響を受ける。圧力の正確な付与は、数個の理由のために重要である。これらの理由は、脈管の壁を向かい合わせるため;組織インピーダンスを、充分な電気外科エネルギーがこの組織を通ることを可能にするために充分に低い値まで低下させるため;組織の加熱の間の膨張の力に打ち勝つため;および良好な密封の指標である最終的な組織の厚さに寄与するためである。癒合される代表的な脈管の厚さは、約0.001インチ(約0.025mm)と約0.006インチ(約0.15mm)との間が最適であることが示されている。この範囲より小さい場合、密封箇所が切れ得るかまたは裂け得、そしてこの範囲より大きい場合、この組織は、適切または効果的に密封されないかもしれない。
【0005】
より小さい脈管に関して、密封を行うために、付与される圧力は、さほど重要ではなくなり、そして導電性表面の間のギャップ距離が、より重要になる。換言すれば、2つの導電性表面が作動の間に接触する機会は、組織の厚さおよび脈管がより小さくなるにつれて、増加する。
【0006】
代表的に、そして特に内視鏡電気外科手順に関して、一旦、脈管が密封されると、外科医は、この密封器具を手術部位から取り出し、カニューレを通して新たな器具と交換し、そしてこの脈管を、新たに形成された組織密封箇所に沿って注意深く切断しなければならない。理解され得るように、このさらなる工程は、時間を浪費し得(特に、かなり多くの数の脈管を密封する場合)、かつ切断器具を組織密封箇所の中心に沿って整列または配置することの失敗に起因して、密封線に沿った組織の不正確な分離に寄与し得る。
【0007】
同じ器具での密封および電気的切断は、最近開発された技術であり、この技術は、組織を機械的に切断することより優れた異なる利点を提供する。しかし、組織の電気的切断は、切断電極間の寸法が比較的小さいことに起因して、製造の目的で困難であることが示されている。さらに、密封電極は、密封サイクルの間に熱生成および荷電を生じ得、このことは、切断性能に有害な影響を与え得る。例えば、この組織反応は、密封サイクルの間、切断ゾーン内の組織を損傷し、そして伝導性流体を意図された切断領域から追い出すことにより水和を最小にすることによって、明らかであり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、組織を効果的に密封し、そして密封された組織領域の間で組織を効果的に切断する目的で予熱電極を備え、使用者が組織を選択的に密封および/または切断することを可能にする、電極アセンブリを備える鉗子を提供することが、本発明の1つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
電極アセンブリであって、この電極アセンブリは、
1対の対向する第一の顎部材および第二の顎部材であって、この顎部材のうちの少なくとも一方は、第一の位置から第二の位置へと他方に対して可動であり、この第一の位置において、この顎部材は、互いに対して間隔を空けた関係で配置され、そしてこの第二の位置において、この顎部材は、この顎部材の間に組織を把持するように協働し、
各顎部材は、この顎部材の長さに沿って延びる少なくとも1つの導電性組織密封表面を備え、各組織密封表面は、電気外科エネルギーの供給源に接続されるように適合されており、その結果、少なくとも1つの導電性組織密封表面は、この組織密封表面の間の組織に通して電気外科エネルギーを伝導させて、密封を実施することが可能である、1対の対向する第一の顎部材および第二の顎部材;ならびに
この顎部材のうちの少なくとも一方の内部に配置された、少なくとも1つの加熱要素であって、この少なくとも1つの加熱要素は、電気エネルギーが印加される前に、この少なくとも1つの導電性組織密封表面を予熱するように構成されている、少なくとも1つの加熱要素、
を備える、電極アセンブリ。
(項目2)
上記加熱要素が、ニクロム線、ニクロムリボン、CalrodおよびPTCセラミックからなる群より選択される、項目1に記載の電極アセンブリ。
(項目3)
各顎部材上に配置された絶縁材料をさらに備え、この絶縁材料は、ガラス、セラミックおよびポリマー材料からなる群より選択される、項目1に記載の電極アセンブリ。
(項目4)
RFエネルギーを上記加熱要素に供給するように作動可能なRFエネルギー源をさらに備える、項目1に記載の電極アセンブリ。
(項目5)
加熱速度を予測するように作動可能なフィードバック制御機構をさらに備える、項目1に記載の電極アセンブリ。
(項目6)
上記第一の顎部材および上記第二の顎部材のうちの少なくとも一方に配置された、導電性切断要素をさらに備える、項目1に記載の電極アセンブリ。
(項目7)
上記加熱要素が、上記導電性切断要素の内部に配置されている、項目6に記載の電極アセンブリ。
(項目8)
上記加熱要素が、ニクロム線、ニクロムリボン、CalrodおよびPTCセラミックからなる群より選択される、項目7に記載の電極アセンブリ。
(項目9)
上記少なくとも1つの導電性組織密封表面の温度を測定するように構成された、少なくとも1つのセンサをさらに備える、項目1に記載の電極アセンブリ。
(項目10)
上記組織の温度を測定するように構成された、少なくとも1つのセンサをさらに備える、項目1に記載の電極アセンブリ。
(項目11)
組織を密封するためのシステムであって、このシステムは、
1対の対向する第一の顎部材および第二の顎部材であって、この顎部材のうちの少なくとも一方は、第一の位置から第二の位置へと他方に対して可動であり、この第一の位置において、この顎部材は、互いに対して間隔を空けて配置され、そしてこの第二の位置において、この顎部材は、この顎部材の間に組織を把持するように協働し、
各顎部材は、この顎部材の長さに沿って延びる少なくとも1つの導電性組織密封表面を備え、各組織密封表面は、電気外科エネルギーの供給源に接続されるように適合されており、その結果、少なくとも1つの導電性組織密封表面は、この導電性組織密封表面の間の組織に通して電気外科エネルギーを伝導させて、密封を実施することが可能である、1対の対向する第一の顎部材および第二の顎部材;
この顎部材のうちの少なくとも一方の内部に配置された、少なくとも1つの加熱要素であって、この少なくとも1つの加熱要素は、電気外科エネルギーが印加される前に、この少なくとも1つの導電性組織密封表面を予熱するように構成されている、少なくとも1つの加熱要素;ならびに
各顎部材に作動的に接続される、電気エネルギーの供給源であって、この電気エネルギーの供給源は、この顎部材に、電気エネルギーを提供するように構成されている、電気エネルギーの供給源、
を備える、システム。
(項目12)
上記少なくとも1つの加熱要素が、ニクロム線、ニクロムリボン、CalrodおよびPTCセラミックからなる群より選択される、項目11に記載のシステム。
(項目13)
上記第一の顎部材および上記第二の顎部材のうちの少なくとも一方に配置された、導電性切断要素をさらに備える、項目11に記載のシステム。
(項目14)
加熱速度を予測するように作動可能なフィードバック制御機構をさらに備える、項目11に記載のシステム。
(項目15)
上記少なくとも1つの導電性組織密封表面の温度を測定するように構成された、少なくとも1つのセンサをさらに備える、項目11に記載のシステム。
(項目16)
組織内の特定の領域にエネルギーを集束させる方法であって、この方法は、以下の工程:
1対の対向する顎部材を提供する工程であって、各顎部材は、これらの顎部材の長さに沿って延びる導電性組織密封表面を備える、工程;
対向する第一の顎部材および第二の顎部材を、組織の周りで位置決めする工程;
導電性組織密封表面を、加熱要素で予熱する工程;ならびに
電気外科エネルギーを導電性組織密封表面に方向付けて、組織を処置する工程、
を包含する、方法。
(項目17)
フィードバック制御機構を利用して、加熱速度を予測する工程をさらに包含する、項目16に記載の方法。
(項目18)
上記加熱要素が、ニクロム線、ニクロムリボン、CalrodおよびPTCセラミックからなる群より選択される、項目16に記載の方法。
(項目19)
上記第一の顎部材および上記第二の顎部材のうちの少なくとも一方に配置された、導電性切断要素を提供する工程をさらに包含する、項目16に記載の方法。
(項目20)
上記提供する工程の加熱要素が、上記導電性切断要素の内部に配置される、項目19に記載の方法。
【0010】
1対の対向する第一の顎部材および第二の顎部材を有する電極アセンブリが、提供される。各顎部材は、これらの顎部材の長さに沿って延びる導電性組織密封表面を備え、各組織密封表面は、電気外科エネルギーの供給源に接続されるように適合され、その結果、これらの組織密封表面は、これらの表面の間に保持された組織に通して電気外科エネルギーを伝導させ、密封を実施することが可能である。このアセンブリは、これらの顎部材のうちの少なくとも一方の内部に配置された、少なくとも1つの加熱要素を備える。この加熱要素は、電気外科エネルギーが印加される前に、導電性組織密封表面を予熱するように構成される。
【0011】
(要旨)
本開示は、組織を密封および/または切断するための器具とともに使用するための電極アセンブリに関する。この電極アセンブリは、1対の対向する第一の顎部材および第二の顎部材を備え、これらの顎部材のうちの少なくとも一方は、第一の位置から第二の位置へと、他方に対して可動であり、この第一の位置において、これらの顎部材は、互いに対して間隔を空けた関係で配置され、そしてこの第二の位置において、これらの顎部材は、これらの顎部材の間に組織を把持するように協働する。
【0012】
各顎部材は、これらの顎部材の長さに沿って延びる少なくとも1つの導電性組織密封表面を備え、各組織密封表面は、電気外科エネルギーの供給源に接続されるように適合され、その結果、これらの組織密封表面の間の組織に通して電気外科エネルギーを伝導させて、密封を実施することが可能である。これらの顎部材の各々は、これらの顎部材の内部に配置された、導電性加熱要素を備える。これらの導電性加熱要素は、電気外科密封エネルギーが組織に印加される前に、導電性組織密封表面を予熱するように構成される。
【0013】
本開示の別の実施形態は、エネルギーを組織に集束させるための方法に関し、この方法は、1対の対向する顎部材を提供する初期工程を包含し、これらの顎部材の各々は、1対の導電性組織密封表面を有する。少なくとも一方の顎部材は、第一の位置から第二の位置へと他方に対して可動であり、この第一の位置において、これらの顎部材は、互いに対して間隔を空けた関係で配置され、そしてこの第二の位置において、これらの顎部材は、これらの顎部材の間に組織を把持するように協働する。各顎部材は、これらの顎部材の長さに沿って延びる導電性組織密封表面を備える。これらの顎部材は、電気外科エネルギーの供給源に接続されるように適合されており、その結果、これらの導電性組織密封表面は、これらの表面の間に保持された組織に通して電気外科エネルギーを伝導させて、密封を実施することが可能である。この方法は、電気外科エネルギーが印加される前に、少なくとも一方の導電性組織密封表面を予熱する工程をさらに包含する。
【0014】
この方法は、対向する第一の顎部材および第二の顎部材を組織の周りで位置決めし、そしてこの組織に電気外科エネルギーを印加する工程を、さらに包含する。この方法はまた、電気外科エネルギーを、少なくとも一方の導電性組織密封表面に方向付けて、組織を切断および/または密封する工程を包含し得る。
【0015】
本発明はまた、組織を密封するためのシステムに関し、このシステムは、1対の対向する第一の顎部材および第二の顎部材を備え、これらの顎部材のうちの少なくとも一方は、第一の位置から第二の位置へと他方に対して可動であり、この第一の位置において、これらの顎部材は、互いに対して間隔を空けた関係で配置され、そしてこの第二の位置において、これらの顎部材は、これらの顎部材の間に組織を把持するように協働する。各顎部材は、これらの顎部材の長さに沿って延びる、少なくとも1つの導電性組織密封表面を備える。これらの組織密封表面は、電気外科エネルギーの供給源に接続されるように適合されており、その結果、この組織密封表面は、これらの表面の間に保持された組織に通して電気外科エネルギーを伝導させて、密封を実施することが可能である。
【0016】
少なくとも1つの加熱要素が備えられ、この加熱要素は、これらの顎部材のうちの少なくとも一方の内部に配置される。この加熱要素は、電気外科エネルギーが印加される前に、少なくとも一方の組織密封表面を予熱するように構成される。電気エネルギーの供給源は、各顎部材に作動的に接続され、そしてこれらの顎部材に電気エネルギーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、内視鏡双極鉗子の右斜視図を示し、この鉗子は、ハウジング、シャフト、およびこのシャフトの遠位端に固定された1対の顎部材を有し、これらの顎部材は、これらの顎部材の間に配置された電極アセンブリを備える。
【図2】図2は、開胸双極鉗子の左斜視図を示し、この図は、1対の第一のシャフトおよび第二のシャフトを示し、これらのシャフトの各々は、その遠位端に固定された顎部材を有し、電極アセンブリが、これらの顎部材の間に配置されている。
【図3】図3は、開胸双極鉗子の代替の実施形態の右斜視図を示し、1対の第一のシャフトおよび第二のシャフトを示し、これらのシャフトの各々は、その遠位端に固定された顎部材を有し、電極アセンブリが、これらの顎部材の間に配置されている。
【図4】図4は、脈管密封器具の拡大断面図を示し、加熱要素が内部に収容されている電極アセンブリを示す。
【図5】図5は、脈管密封器具の代替の実施形態の拡大断面図を示し、加熱要素が内部に収容されている電極アセンブリを示す。
【図6】図6は、脈管密封器具の側断面図を示し、加熱要素が内部に収容されている電極アセンブリを示す。
【図7】図7は、脈管密封器具の代替の実施形態の側断面図を示し、加熱要素が内部に収容されている電極アセンブリを示す。
【図8】図8は、脈管密封器具の側面図を示し、加熱要素が内部に収容されている電極アセンブリを示す。
【図9】図9は、図8に示される脈管密封器具の分解図を示す。
【図10】図10は、脈管密封器具の代替の実施形態の側断面図を示し、開状態で示される、加熱要素が内部に収容されている電極アセンブリを示す。
【図11】図11は、図10の脈管密封器具の大いに拡大した分解図を示し、加熱要素が内部に収容されている電極アセンブリを示す。
【図12】図12は、部品が分解された、脈管密封器具の上顎の代替の実施形態の大いに拡大した分解図を示す。
【図13】図13は、図12の脈管密封器具の拡大側断面図を示し、顎部材を間隔を空けた配向で示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の種々の実施形態が、図面を参照して、本明細書中に記載される。
【0019】
(詳細な説明)
ここで種々の図を参照すると、図1は、内視鏡外科手術手順に関連して使用するための双極鉗子10を図示し、そして図2は、従来の開胸外科手術手順に関連して使用することを意図された開胸鉗子200を図示する。本明細書中での目的のために、内視鏡器具または開胸器具のいずれかが、本明細書中に記載される種々の電極アセンブリとともに利用され得る。明らかに、異なる電気的接続および電気的考慮事項ならびに機械的接続および機械的考慮事項が、各特定の型の器具に適用されるが、電極アセンブリおよびその作動特徴に関する新規局面は、一般に、開胸設計と内視鏡設計との両方に関して一致するままである。
【0020】
図1は、種々の内視鏡外科手術手順とともに使用するための、双極鉗子10を示し、この双極鉗子は、一般に、ハウジング90、ハンドルアセンブリ30、回転アセンブリ80、トリガアセンブリ70、スイッチアセンブリ60、および電極アセンブリ105を備え、この電極アセンブリは、対向する顎部材110および120を有し、これらの顎部材は、互いに協働して、管状脈管または脈管組織を把持し、密封し、そして分断する。より具体的には、鉗子10は、シャフト12を備え、このシャフトは、電極アセンブリ105を機械的に係合するような寸法にされた遠位端16、およびハウジング90を機械的に係合する近位端14を有する。シャフト12は、機械的に係合する1つ以上の公知の構成要素を備え得、これらの構成要素は、電極アセンブリ105をしっかりと受容して係合するように設計され、その結果、顎部材110および120は、互いに対して旋回して、これらの顎部材の間に組織を係合させ、そして把持する。
【0021】
シャフト12の近位端14は、回転アセンブリ80を機械的に係合して、電極アセンブリ105の回転を容易にする。図面および以下の説明において、用語「近位」とは、伝統的であるように、鉗子10の使用者に近い方の端部をいい、一方で、用語「遠位」とは、使用者から遠い方の端部をいう。シャフト12および回転アセンブリ80の、機械的に協働する種々の構成要素の間の1つの予測される関係に関する詳細は、共有に係る米国特許出願番号10/460,926(発明の名称「VESSEL SEALER AND DIVIDER FOR USE WITH SMALL TROCARS AND CANNULAS」、その全内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載されている。
【0022】
ハンドルアセンブリ30は、固定ハンドル50および可動ハンドル40を備える。固定ハンドル50は、ハウジング90に一体的に付随し、そしてハンドル40は、以下でより詳細に説明されるように、電極アセンブリ105の対向する顎部材110および120を起動するために、固定ハンドル50に対して可動である。可動ハンドル40およびトリガアセンブリ70は、単体構造のものであり、そして組み立てプロセスの間に、ハウジング90および固定ハンドル50に作動的に接続される。ハウジング90は、2つの構成要素半体90aおよび90bから構成され、これらの半体は、組み立ての間、シャフト12の近位端の周りに組み立てられる。トリガアセンブリ70は、組織を切断するために、電極アセンブリ105に電気エネルギーを選択的に提供するように、構成される。スイッチアセンブリ60は、回転アセンブリ80の近位に配置され、そして密封を行うために、顎部材110および120に電気エネルギーを選択的に提供するように構成される。スイッチアセンブリ60またはトリガアセンブリ70は、組織の密封および分断のサイクルの間、密封電極と切断電極との両方を作動させるように構成され得ることが、予測される。発電機551は、種々の電極を、1つ以上のアルゴリズムに従って作動させるように構成され得る。これらの電極は、特定の目的に依存して、連続的に作動されても同時に作動されてもよい。
【0023】
上記のように、電極アセンブリ105は、シャフト12の遠位端16に取り付けられ、そして対向する顎部材110および120を備える。ハンドルアセンブリ30の可動ハンドル40は、顎部材110および120の、開位置からクランプ位置または閉位置への移動を引き起こす。この開位置において、顎部材110および120は、互いに対して間隔を空けた関係で配置され、そしてクランプ位置または閉位置において、顎部材110および120は、これらの顎部材の間に組織を把持するように協働する。
【0024】
ここで図2を参照すると、開胸鉗子200は、1対の細長シャフト部分212aおよび212bを備え、これらのシャフト部分の各々は、それぞれ近位端214aおよび214b、ならびにそれぞれ遠位端216aおよび216bを有する。鉗子200は、顎部材210および220を備え、これらの顎部材は、それぞれシャフト212aの遠位端216aおよびシャフト212bの遠位端216bに取り付けられる。顎部材210および220は、旋回ピン219の周りで接続され、この旋回ピンは、顎部材210および220が、組織を処置するために、第一の位置から第二の位置へと互いに対して旋回することを可能にする。電極アセンブリ205は、対向する顎部材210および220に接続され、そして旋回ピン219を通るかまたは旋回ピン219の周りでの電気接点を備え得る。顎部材への種々の電気接点の例は、共有に係る米国特許出願番号10/474,170、10/116,834、10/284,562、10/472,295、10/116,944、10/179,863、および10/369,894に見られ、これらの全ての内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0025】
各シャフト212aおよび212bは、それらの近位端214aおよび214bに配置されたハンドル217aおよび217bを備え、これらのハンドルの各々は、それぞれ指穴218aおよび218bを規定し、これらの指穴を通して、使用者の指を受容する。理解され得るように、指穴218aおよび218bは、シャフト212aおよび212bの互いに対する移動を容易にし、これらのシャフトは、次に、顎部材210および220を、開位置からクランプ位置または閉位置へと旋回させ、この開位置において、顎部材210および220は、互いに対して間隔を空けた関係で配置され、そしてこのクランプ位置または閉位置において、顎部材210および220は、これらの顎部材の間に組織を把持するように協働する。顎部材210および220を旋回の間に互いに対して種々の位置で選択的にロックするために、ラチェット231が備えられる。
【0026】
より具体的には、ラチェット231は、シャフト212aに付随する第一の機械的インターフェース231a、およびシャフト212bに付随する第二の嵌合機械的インターフェース231bを備える。協働するラチェットインターフェース231aおよび231bに付随する各位置は、シャフト部材212aおよび212bにおける特定の(すなわち、一定の)ひずみエネルギーを保持し、このひずみエネルギーは、次に、特定の閉鎖力を、顎部材210および220に伝達する。ラチェット231は、使用者が、顎部材210と220との間の望ましい閉鎖力の量を容易にかつ迅速に確認および制御することを可能にする、目盛または他の視覚的な印を備え得ることが予測される。
【0027】
図2に最もよく見られるように、鉗子200はまた、電気的インターフェースまたはプラグ201を備え得、この電気的インターフェースまたはプラグは、鉗子200を、電気外科エネルギーの供給源(例えば、電気外科発電機551(図1を参照のこと))に接続する。プラグ201は、少なくとも2つのプロング部材203aおよび203bを備え、これらのプロング部材は、鉗子200を電気外科発電機551に機械的かつ電気的に接続するための寸法にされる。電気ケーブル211が、プラグ201から延び、そしてケーブル211は、鉗子200にしっかりと接続される。ケーブル211は、シャフト212bの内部で分割されて、種々の電気供給経路を通して電極アセンブリ205へと電気外科エネルギーを伝達する。
【0028】
シャフトのうちの1つ(例えば、212b)は、近位シャフトコネクタ/フランジ221を備え、この近位シャフトコネクタ/フランジは、鉗子200を電気外科発電機551に接続するように設計される。より具体的には、フランジ221は、電気外科ケーブル211を鉗子200に機械的に固定し、その結果、使用者は、必要とされる場合に、電気外科エネルギーを選択的に印加し得る。
【0029】
ここで図3を参照すると、開胸外科手術手順とともに使用するための、別の開胸鉗子300が示され、この開胸鉗子は、細長シャフト部分312aおよび312bを備え、これらのシャフト部分の各々は、それぞれ、近位端314aおよび314b、ならびに遠位端316aおよび316bを有する。鉗子300は、電極アセンブリ305を備え、この電極アセンブリは、それぞれ、シャフト312aの遠位端316aおよびシャフト312bの遠位端316bに取り付けられる。以下でより詳細に説明されるように、電極アセンブリ305は、1対の対向する顎部材310および320を備え、これらの顎部材は、旋回ピン319の周りに旋回可能に接続され、そして組織を把持するために、互いに対して可動である。
【0030】
ここで図4を参照すると、電極アセンブリ405の断面図が示される。電極アセンブリ405は、対向する第一の顎部材410および第二の顎部材420を備える。顎部材410および420は、導電性組織密封表面422および432を備える。組織密封表面422および432は、電気外科エネルギーの供給源(すなわち、発電機551)に接続されるように適合され、そして密封を行うために、これらの表面の間に保持された組織に通して電気外科エネルギーを伝導することが可能である。図4に示されるように、組織密封表面422および432は、導電性加熱要素424および434をさらに備え、これらの加熱要素は、組織密封表面422および432に包埋されている。加熱要素424および434は、電気外科エネルギーが組織に印加される前に、導電性組織密封表面422および432を予熱するように構成される。このことは、電極質量の増加、より安定な温度プロフィールおよびより予測可能な密封を可能にする。加熱要素424および434は、種々の異なる材料から構成され得、これらの材料としては、ニクロム線、ニクロムリボン、CalrodおよびPTCセラミックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
図5は、本開示によるなお別の実施形態を開示し、この実施形態は、密封表面522a、522bおよび532a、532b、絶縁体513および523、ならびに切断要素527aおよび527bを備える。絶縁体513および523は、種々の異なる材料から構成され得、これらの材料としては、ガラス、セラミックおよびポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されない。この特定の実施形態を用いて、切断段階の間、対向する密封表面522a、532aおよび522a、532bは、第二の電位「−」でエネルギー付与され、そして切断要素527aおよび527bは、第一の電位「+」でエネルギー付与される。この電極アセンブリ505は、組織を通して電位「+」と「−」との間に集中した電気的経路を作製して、予め形成された組織密封箇所の間の組織を切断すると考えられる。加熱要素524a、524bおよび534a、534bは、組織密封表面522a、532aおよび522b、532bの内部に配置されて示され、そして密封表面522a、532aおよび522b、532bを予熱するように働く。作動の前に切断電極を予熱するために、さらなる加熱要素が、切断要素527aおよび527bの内部に備えられ得ることが予測される。
【0032】
図6を参照すると、本開示による鉗子600の代替の実施形態が示される。鉗子600は、対向する第一の顎部材610および第二の顎部材620を備え、これらの顎部材は、これらの顎部材上に配置された組織密封表面622および632を有する。上記のように、加熱要素624および634が、組織密封表面622および632の内部に収容される。顎部材620は、密封表面632の内部に配置されたナイフチャネル615aを備え、このナイフチャネルは、ナイフ627が顎部材620を通って並進移動することを可能にする。顎部材610はまた、ナイフチャネル615aと垂直方向に位置合わせされて配置されたナイフチャネル615bを備え得る。顎部材610および620が閉位置にある場合、切断要素627は、ナイフチャネル615aおよび615bを通って選択的に延び、顎部材610と620との間に配置された組織「t」を切断し得る。
【0033】
図7は、第二の顎部材620の上斜視図を示す。顎部材620は、組織密封表面632を備え、この組織密封表面の内部に、加熱要素634が配置されている。上述のように、さらなる加熱要素が、切断要素627の内部に配置され得る。顎部材のうちの一方(例えば、620)は、導電性密封表面632(および/または622)の内側に面する表面上に配置された、少なくとも1つの止め部材675を備え得ることが予測される。この実施形態のより詳細な説明は、共有に係る出願番号10/962,166に記載されており、この出願の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0034】
ここで図8〜図9を参照すると、内視鏡鉗子700の代替の実施形態が示されている。鉗子700は、顎部材710、720を備え、これらの顎部材は、導電性組織密封表面722、732を有し、これらの表面は、絶縁基板735aおよび735bによって実質的に囲まれている。鉗子700は、片側性の顎アセンブリとして設計され、ここで、一方のみの顎部材が、他方の顎部材720に対して動く。絶縁体735aおよび735b、導電性密封表面722および732、ならびに外側の非電導性顎ハウジング737は、組織の密封に関連する公知の望ましくない影響(例えば、フラッシュオーバー、熱拡散および迷走電流の消散)の多くを制限し、そして/または減少させるような寸法にされる。顎部材710および720は、セラミック様の材料から製造され得、そして導電性表面722は、セラミック様の顎部材710および720上にコーティングされ得ることもまた、予測される。加熱要素724および734は、上記のように、組織密封表面722および732の内部に収容され得る。
【0035】
図9に最もよく図示されるように、ナイフチャネルは、切断要素727を所定の切断経路に沿って案内するために利用され得る。ナイフチャネル715(上部チャネル715aおよび下部チャネル715bからなる)は、それぞれ顎部材710および720の中心を通って延び、その結果、切断要素727(想像で示される)は、顎部材710および720が閉位置にある場合に、顎部材710と720との間に把持された組織「t」を切断し得る。切断要素727は、顎部材710および720が閉じている場合にのみ、組織「t」を通って進み得、従って、組織「t」を通る切断要素727の不慮または尚早な起動が防止される。加熱要素724および734は、組織密封表面722および732の内部、または切断要素727の内部に収容され得る。
【0036】
別体の電気接続部(例えば、738)が、加熱要素724および734を発電機551または代替のエネルギー供給源(図示せず)に接続するために利用され得ることが、予測される。あるいは、同じ電気接続部が、密封表面722および732と加熱要素724および734との両方、または切断電極(図5を参照のこと)と加熱要素724および734との両方にエネルギー付与するために、使用され得る。さらに、スイッチ機構740が、1つ以上の顎部材710および720(または610および620、510および520、410および420、310および320、210および220もしくは110および120)、あるいは1つ以上のシャフト712(または212a、212bもしくは12)に備えられ得、このスイッチ機構は、さまざまな熱源の間を、発電機の制御に基づいて切り替える。
【0037】
ここで図10〜図11を参照すると、本開示による鉗子800の代替の実施形態が、示されている。電極アセンブリ805は、対向する顎部材810および820を備え、これらの顎部材は、密封の目的で、組織を効果的に把持するように協働する。電極アセンブリ805は、両側性のアセンブリとして設計される。すなわち、両方の顎部材810および820が、これらの顎部材を通して配置された旋回ピン819の周りで、互いに対して旋回する。この配置において、加熱要素824および834は、上に記載された実施形態と同様に、組織密封表面822および832の内部に収容される。ナイフチャネル815aは、上記のように、切断要素827を受容するように構成される。加熱要素は、1つ以上の電気接続部838を介してエネルギー付与され、このエネルギー付与は、発電機551または別の熱源によって、上に記載されたのと類似の様式で、調節され得る。
【0038】
ナイフチャネル815は、顎部材810および820が閉じて2つのナイフチャネル815aと815bとが整列する場合に、形成される。ナイフチャネル815は、屈曲角度を全く有さない真っ直ぐな溝として構成され得、これによって、切断要素827を、実質的に真っ直ぐな様式で、組織を通して移動させる。あるいは、ナイフチャネル815は、いくらかの屈曲角度を有するような寸法にされて、切断要素827を、湾曲した様式で、組織「t」を通して移動させ得る。絶縁プレート839もまた、ナイフチャネル815の一部を形成し、そしてこの絶縁プレートの内部に規定されるチャネル815a’を備え、このチャネル815a’は、絶縁プレート839に沿って延び、そしてナイフチャネル半分815aと垂直方向に位置合わせして整列し、切断要素827がこれらのチャネルを通って移動することを容易にする。この実施形態のより詳細な説明は、2005年9月30日に出願された、共有に係る米国特許仮出願番号60/722,177に記載されており、この仮出願の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0039】
図11に最もよく見られるように、加熱要素824は、その起動の際に、密封表面822を加熱するように構成される。加熱要素824は、示されるように、ナイフチャネルの周囲を巻くように構成され得る。1つ以上の電気クリンプ様のコネクタ841が、電気接続部を加熱要素824に接続するために使用され得る。
【0040】
ここで図12〜図13を参照すると、電極アセンブリ905の別の実施形態が示されており、この電極アセンブリは、対向する顎部材910および920を備え、これらの顎部材は、密封の目的で、組織を効果的に把持するように協働する。電極アセンブリ905は、両側性アセンブリとして設計される。すなわち、両方の顎部材910および920が、これらの顎部材を通して配置された旋回ピン919の周りで互いに対して旋回する。顎部材910および920は、湾曲して、組織の操作を容易にし、そして器官および大きい組織構造体に接近するためにより良好な「視線」を提供する。導電性密封プレート922は、周囲フランジ922aを備え、このフランジは、密封プレート922の周囲を囲む。フランジ922aは、外側の絶縁体937の内側リップ937aと嵌合して係合するように設計される。このことは、公知のプロセス(例えば、オーバーモールディング)によって達成され得る。加熱要素924および934は、それぞれ、導電性組織密封表面922および932の内部に配置される。絶縁体947、導電性密封表面922、および外側の非導電性顎ハウジング937は、組織の密封に関連する公知の望ましくない影響(例えば、フラッシュオーバー、熱拡散および迷走電流の消散)の多くを制限し、そして/または減少させるような寸法にされる。図12に最もよく見られるように、クリンプコネクタ941が、加熱要素924をケーブルまたは電気接続部938を通してエネルギー源に接続するために使用され得る。電気接続部938は、シャフト912を通り、そしてこの器具を通って辿り、エネルギー源に電気的に接続される。
【0041】
導電性加熱要素は、電気外科エネルギーの印加の前に起動されても、電気外科エネルギーの印加とともに起動されても、電気外科エネルギーの印加後に起動されてもよいことが、予測される。さらに、導電性加熱要素が顎部材の一方もしくは両方の内部、および/または導電性切断要素の内部に配置されることは、本開示の範囲内である。
【0042】
理解され得るように、上記電極アセンブリの種々の幾何学的構成および電気的配置は、外科医が、最初に2つの対向する導電性組織接触表面を起動させて組織を密封し、そして引き続いて、並進移動可能なナイフを用いて機械的にか、または上に記載および図示された種々の電極アセンブリ構成を利用して組織を切断するために切断要素および1つ以上の組織接触表面を起動させることにより電気的にかのいずれかで、組織を選択的かつ独立的に分断することを可能にする。従って、組織は、最初に密封され、そしてその後、この組織を再度把持することなく切断される。
【0043】
しかし、切断要素は、1つ以上の組織接触表面を用いる密封もエネルギー付与もなしで、機械的に展開され、最初に密封せずに組織/脈管を単に切断し得ることが予測される。例えば、顎部材が、組織の周りで位置決めされ得、そして切断要素が、選択的に起動されて、組織を分離し得るか、または単に凝固させ得る。この型の代替の実施形態は、特定の内視鏡手順の間に特に有用であり得る。この内視鏡手順において、電気外科ペンシルが、代表的に導入されて、実施中の手順の間に組織を凝固および/または乾燥させる。
【0044】
トリガ70は、外科医が1つ以上の組織接触表面を選択的に起動させ(エネルギー付与し)、要素を予熱し、そして/または切断要素に組織を切断させることを可能にするために、使用され得る。理解され得るように、このことは、外科医が、単にこのトリガを起動させることによって、最初に組織を密封し、次いで切断要素を起動させることを可能にする。あるいは、同じスイッチが、最初に組織を密封し、次いで、発電機のアルゴリズムによって首尾よい密封が確認された後に組織を切断し、次いで、外科医が組織を把持し、1つのスイッチを起動させて組織を密封および分断するように、使用され得る。
【0045】
1つ以上のスイッチが、器具の他の箇所に配置され得るか、または遠隔スイッチ(例えば、ハンドスイッチもしくはフットスイッチ)として構成され得る。スイッチは、スマートセンサ(またはスマート回路、コンピュータ、フィードバックループなど)と協働し得ることもまた予測され、このスマートセンサなどは、このスイッチの、「予熱モード」と、「密封」モードと、「切断」モードとの間での変更を、特定のパラメータの満足に基づいて自動的に誘発する。例えば、スマートセンサは、フィードバックループを備え得、このフィードバックループは、組織の密封が完了したときを、以下のパラメータのうちの1つ以上に基づいて示す:組織の温度、密封箇所での組織のインピーダンス、組織の型、水和、組織のインピーダンスの経時的変化、および/または組織に印加される電力もしくは電流の経時的変化。聴覚的フィードバックモニタまたは視覚的フィードバックモニタが、密封の全体的な質または効果的な組織の密封の完了に関する情報を、外科医に運ぶために使用され得る。別体のリード線が、視覚的および/または聴覚的フィードバックの目的で、スマートセンサと発電機との間に接続され得る。スマートセンサは、種々の異なる配置(導電性組織密封表面、切断要素の内部または表面、あるいはこれらの間の任意の箇所が挙げられるが、これらに限定されない)で配置され得る。
【0046】
1つの実施形態において、発電機551は、パルス様の波形で、組織にエネルギーを送達する。パルスとしてエネルギーを送達することにより、組織に効果的に送達され得る密封エネルギーの量が増加し得、そして望ましくない組織への影響(例えば、炭化)が減少し得る。さらに、スマートセンサのフィードバックループは、密封の間、種々の組織パラメータ(すなわち、組織の温度、組織のインピーダンス、水和、加熱速度、組織の型、組織を通る電流)を自動的に測定し、そして種々の組織への影響(例えば、炭化および熱拡散)を減少させるためにエネルギー強度およびパルスの数を自動的に調節するように、構成され得る。
【0047】
電極アセンブリ105(または205、305など)は、電極の温度変化または加熱速度の変化を検出し得る、センサを備え得ることがまた予測される。このセンサは、電極105の内部に収容され得、そして電気外科発電機551の内部または他の箇所に収容されたフィードバック制御機構と通信し得る。種々の形態のフィードバック制御が周知であり、そして本開示において利用され得る。現代のフィードバック制御システムの詳細な説明については、G.Franklinら、Prentice−Hall,Upper Saddle River,NJ,2002による「FEEDBACK CONTROL OF DYNAMIC SYSTEMS」を参照のこと。
【0048】
RFのパルス化は、組織をより効果的に切断するために使用され得ることもまた、決定された。例えば、切断要素から組織を通る(または組織接触表面から組織を通る)初期のパルスは、組織密封に対する影響を最小にしながらある量または型の組織を効果的かつ一貫して切断するために理想的な、引き続くパルスの数および引き続くパルスの強度の選択のためのフィードバックをスマートセンサに提供するために、送達され得る。このエネルギーがパルス化されない場合、組織は、最初に切断されず、乾燥され得る。なぜなら、組織のインピーダンスが、切断の初期段階の間に高いままであるからである。エネルギーを短い高エネルギーのパルスとして提供することによって、組織は、より切断されやすくなることが見出された。
【0049】
あるいは、スイッチが、望ましい切断パラメータに基づいて、そして/または効果的な密封が作製されたかもしくは確認された後に、起動するように構成され得る。例えば、組織を効果的に密封した後に、切断要素は、この密封箇所における組織の最終的な望ましい厚さに基づいて、自動的に起動され得る。
【0050】
上記実施形態の多くにおいて記載されたように、組織の圧縮の際に、切断要素は、止め部材として働き得、そして対向する導電性組織接触表面の間に、ギャップ「G」を作製し得る。特に脈管の密封に関して、このギャップ距離は、約0.001インチ(約0.025mm)〜約0.006インチ(約0.15mm)の範囲である。上述のように、導電性表面の間のギャップ距離「G」とクランプ圧力との両方を制御することは、一貫した効果的な組織の密封を保証するために適切に制御される必要がある、2つの重要な機械的パラメータである。外科医は、発電機を起動させて、電気外科エネルギーを組織接触表面に伝達し、そして組織に通して、密封を行う。クランプ圧力と、ギャップ距離「G」と、電気外科エネルギーとの独特な組み合わせの結果として、組織コラーゲンが融解して、融合塊になり、対向する脈管壁の間の分界が制限される。
【0051】
一旦、予熱および密封されると、外科医は、ナイフを前進させるか、または切断要素を起動させて、組織を切断する。上述のように、外科医は、必ずしも、切断のために組織を再度把持する必要がない。すなわち、切断要素が、すでに密封箇所の理想的な中心切断線の近くに位置決めされている。電気切断段階の間、非常に集中した電気外科エネルギーが、切断要素から組織を通って移動し、組織を2つの不連続な半体に切断する。上述のように、組織を効果的に切断するために必要とされるパルスの数、および切断エネルギーの強度は、密封箇所の厚さおよび/または組織のインピーダンスを測定することによって、ならびに/あるいは類似のパラメータを測定する初期の較正エネルギーパルスに基づいて、決定され得る。スマートセンサ(図示せず)またはフィードバックループが、この目的で使用され得る。
【0052】
理解され得るように、鉗子は、一旦密封されたら組織を自動的に切断するように構成され得るか、またはこの器具は、一旦密封されたら外科医が組織を選択的に分断することを可能にするように構成され得る。さらに、聴覚的指標または視覚的指標(図示せず)が、センサ(図示せず)によって誘発されて、効果的な密封が作製された場合に外科医に警告を出し得ることが予測される。例えば、センサは、組織のインピーダンス、組織の不透明性、および/または組織の温度のうちの1つを測定することによって、密封が完了したか否かを決定し得る。共有に係る米国出願番号10/427,832(これは、本明細書中に参考として援用される)は、数種の電気システムを記載しており、これらのシステムは、密封の間および密封後に組織パラメータを決定するため、または組織の密封箇所の全体的な有効性を決定するために、外科医にポジティブなフィードバックを提供するために使用され得る。
【0053】
加熱要素424および434(または本明細書中で図示および記載されるような他の予測される加熱要素524、534、624、634、724、734、824、834、924および/または934のいずれか)は、種々の異なる配置で構成され得ることが予測される。例えば、加熱要素424および434は、固定抵抗、可変抵抗、バリスター、センシスターまたはサーミスターであり得る。要素424および434は、電極アセンブリ405の内部の種々の異なる領域に位置し得る。さらに、加熱要素424および434は、固定された抵抗層(例えば、シリコンウエハの製造の間に使用されるもの)であり得ることが、予測される。
【0054】
操作において、顎部材110および120(または210および220、310および320、410および420など)が提供され、これらの顎部材の各々は、1対の導電性組織密封表面422および432(または522および532など)を有する。一方の顎部材(110または120のいずれか、あるいは210または220のいずれかなど)は、第一の位置(ここで、これらの顎部材は、互いに間隔を空けた関係で配置される)から第二の位置(ここで、これらの顎部材は、これらの顎部材の間に組織「t」を把持するように協働する)へと、他方に対して可動である(図6および図10を参照のこと)。各顎部材(110または120のいずれか、あるいは210または220のいずれか)は、電気外科エネルギーの供給源(例えば、電気外科発電機551)に接続されるように適合されており、その結果、導電性組織密封表面422および432(または522および532など)は、これらの表面の間に保持された組織「t」に通して電気外科エネルギーを伝導させ、密封を行うことが可能である。導電性組織密封表面422および432(または522および532など)は、内部に配置された加熱要素424および434(または524および534など)を備える。導電性加熱要素424および434(または524および534など)は、電気外科エネルギーが印加される前に、少なくとも1つの導電性組織密封表面422および432(または522および532など)を予熱するように構成される。
【0055】
対向する顎部材(110および120、または210および220のいずれかなど)は、組織「t」の周りで位置決めされ、そして電気外科エネルギーが、電気外科発電機551から導電性加熱要素424および434(または524および534など)へと印加され、少なくとも1つの導電性組織密封表面422および432を予熱する。一旦、密封表面422および432(または522および532など)が予熱されると、電気外科発電機511からの電気外科エネルギーは、導電性組織密封表面422および432(または522および532など)に方向付けられて、組織「t」を切断および/または密封する。
【0056】
導電性表面、予熱要素および切断要素の各々からの電気外科エネルギーの強度は、組織の型および/または組織の厚さの固有の変動を考慮して、組織の中心線に沿って一貫した正確な切断を保証するために、選択的にかまたは自動的に制御可能であり得る。さらに、外科手術手順全体が、自動的に制御され得、その結果、組織が最初に把持された後に、外科医は、単に鉗子を起動させて、組織を密封し、引き続いて切断し得ることが、企図される。この例において、発電機は、予熱、密封および切断の間、ポジティブなフィードバックを発電機に提供して、組織の正確な一貫した密封および分断を確実にするために、1つ以上のセンサ(図示せず)と通信するように構成され得る。共有に係る米国特許出願番号10/427,832は、この目的で使用され得る種々のフィードバック機構を開示している。
【0057】
上記のことから、種々の図面を参照して、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の改変が本開示に対してなされ得ることを理解する。例えば、切断要素は、切断ワイヤとしての寸法にされ得、この切断ワイヤは、密封の後に組織を分断するために、外科医によって選択的に起動可能であることが企図される。より具体的には、ワイヤが、顎部材の間の絶縁体の内部に設置され、そしてスイッチの起動の際に、選択的にエネルギー付与可能である。
【0058】
鉗子は、特定の目的に依存して、または特定の結果を達成するために、完全にかまたは部分的に使い捨てであるように設計され得る。例えば、電極アセンブリは、シャフトの遠位端と選択的に取り外し可能に係合可能であり得、そして/またはシャフトの遠位端は、ハウジングおよびハンドルアセンブリと選択的に取り外し可能に係合可能であり得る。これらの2つの例のいずれにおいても、鉗子は、「部分的に使い捨て」または「休止可能」であるとみなされる。すなわち、新たな電極アセンブリまたは異なる電極アセンブリ(または電極アセンブリおよびシャフト)が、必要に応じて、古い電極アセンブリの代わりに選択的に使用される。
【0059】
電極アセンブリは、特定の目的に依存して、シャフトから選択的に取り外し可能(すなわち、休止可能)であり得ることが、予測される。例えば、特定の鉗子が、異なる組織の型または厚さのために構成され得ることが、企図される。さらに、再使用可能な鉗子が、異なる組織の型のための異なる電極アセンブリを有するキットとして販売され得ることが予測される。外科医は、特定の組織の型のために適切な電極アセンブリを選択するのみである。
【0060】
鉗子は、機械的ノックアウト機構または電気的ノックアウト機構を備え得ることもまた予測され、この機構は、顎部材が開構成に配置されている場合に、予熱要素、密封表面および/または切断要素が、意図されずに起動されることを防止する。
【0061】
本発明の鉗子および電極アセンブリは、特定の実施形態に関して記載されたが、本発明が属する分野の当業者には、変更および改変が、本発明のデバイスの精神または範囲から逸脱することなく本発明に対してなされ得ることが、容易に明らかになる。例えば、明細書および図面は、本明細書中に記載される多くの方法のうちの1つにおいて、組織を電気的に切断する前に、導電性表面が組織を最初に密封するために使用され得ることを開示するが、導電性表面は、組織を処置するために、一方または両方の顎部材を利用して、任意の公知の双極機能または単極機能(例えば、電気メス、止血、および/または乾燥)を実施するように構成または電気的に設計され得ることもまた、予測される。さらに、本明細書中に記載および図示される形態の顎部材は、最初に組織を密封せずに、単に組織を切断するためにエネルギー付与され得る。このことは、特定の外科手術手順の間に有利であることがわかり得る。さらに、顎部材、切断要素、絶縁体および半導体材料の種々の幾何学的形状、ならびにこれらに関連する種々の電気的構成が、特定の目的に依存して、他の外科手術器具(例えば、切断器具、凝固器具、電気外科用はさみなど)のために利用され得ることが、企図される。
【0062】
電気外科発電機551は、種々の異なる供給源から、ある範囲の作動周波数を有するエネルギーを供給し得ることが、予測される。これらのいくつかとしては、RFエネルギー、マイクロ波、赤外線、紫外線、X線、および超音波(例えば、組織に超音波を提供し得る超音波ヒータ)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、電気外科発電機551は、交流を供給しても直流を供給してもよく、そして種々の周期、周波数および波長の、連続的な波形を発生させてもパルス様の波形を発生させてもよい。
【0063】
電極の幾何学的形状は、電極の間の表面積比が、電気エネルギーを組織に収束させるように構成され得ることもまた、予測される。さらに、電極および絶縁体の幾何学的構成は、密封プロセスまたは切断プロセスの間、これらが電気だめまたは絶縁体のように働き、組織の内部および周囲での熱効果に影響を与えるように設計され得ることが、予測される。
【0064】
本開示の数個の実施形態が、図面に示されるが、本開示は、これらの実施形態に限定されることが意図されない。なぜなら、本開示は、当該分野が許容するのと同程度に広いこと、および本明細書がそのように読まれることが意図されるからである。従って、上記説明は、限定とみなされるべきではなく、単に、好ましい実施形態の例示とみなされるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲の範囲および精神の範囲内での、他の改変を予測する。
【符号の説明】
【0065】
10 鉗子
12 シャフト
14 近位端
16 遠位端
30 ハンドルアセンブリ
60 スイッチアセンブリ
70 トリガアセンブリ
80 回転アセンブリ
90 ハウジング
105 電極アセンブリ
110、120 顎部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−254324(P2012−254324A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183981(P2012−183981)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【分割の表示】特願2007−185042(P2007−185042)の分割
【原出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(507364377)コヴィディエン・アクチェンゲゼルシャフト (62)
【Fターム(参考)】