説明

二フッ化カルボニルの精製方法

【課題】二フッ化カルボニルに混入した金属を除去する。
【解決手段】供給側容器に液状で貯蔵された金属成分を含む二フッ化カルボニルを密度0.7g/cm3以下の流体として別の容器に移送することを特徴とする金属含量が低減された二フッ化カルボニルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含量が低減された二フッ化カルボニルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二フッ化カルボニル(COF2)は、有機フッ素化合物の原料、半導体製造時のクリーニングガスなどの用途があり、有用な物質である。
【0003】
二フッ化カルボニルの製造方法としては、炭酸ガスとフッ素ガスとを気相で反応させる方法(特許文献1)、一酸化炭素の電解フッ素化による方法(特許文献2)、溶媒存在化ホスゲンをフッ化水素によりフッ素化する方法或いは溶媒およびトリエチルアミン存在下フッ化水素によりホスゲンをフッ素化する方法(特許文献3)、溶媒中でフッ化ナトリウムによりフッ素化する方法(特許文献4)、ホスゲンを気相で活性炭触媒にてフッ化水素によりフッ素化する方法(特許文献5)、一酸化炭素をフッ素ガスにより直接フッ素化する方法(非特許文献1)、ホスゲンを気相で無機フッ化物と接触させ、その後気相で活性炭と接触させてホスゲンと塩化フッ化カルボニルを得た後これを気相で活性炭と接触させ、二フッ化カルボニルを得る方法(特許文献6)、テトラフルオロエチレンと酸素とを反応させ二フッ化カルボニルを得る方法(特許文献7)などが報告されている。しかし、何れの報告にも金属分の含有量や低減方法への言及は一切無い。
【0004】
特許文献8、特許文献9および特許文献10にはCOF2やCOF2を含むガスをクリーニングガスとして利用することが開示されている。しかし、金属分の含有量やその低減方法についての言及は一切無い。
【0005】
二フッ化カルボニルは、従来のクリーニングガス(C26、CF4、NF3)とは異なり、非常に反応性や腐食性が高く、特に水分が微量でも存在した場合は、簡単にCO2とHFに分解し、金属を侵すことがある。一般的に、二フッ化カルボニルの製造設備は、耐圧性と耐腐食性が要求されるため、金属製の材質を用いる。用いられる金属としては、鉄、銅の他ステンレス、ハステロイ、インコネル、モネル等の合金がある。ハステロイ、モネル、インコネルといったNi系合金は、耐食性が高いといわれているが、設備の運転条件によっては微量の金属分が溶け出し、二フッ化カルボニルの不純物の原因となり得る。鉄やステンレスは、その可能性がより高くなる。二フッ化カルボニルに含まれる金属分は、設備の材質や原料中の金属分にも依るが、例えば材質がステンレスであれば、鉄、ニッケル、クロムが多いと考えられ、微量混入する金属としてあらゆる金属が考えられる。一方で、ナトリウム、銅などは、半導体においては最も混入を防がなければならない金属の一つである。にもかかわらず、これらの特許文献には、金属成分についての記述はなされていない。これらの金属分は、半導体製造時などでは、製品の歩留まりや信頼性の低下に繋がるため、低減される必要がある。
【特許文献1】特開平11−116216号公報
【特許文献2】特公昭45−26611号公報
【特許文献3】特開昭54−158396号公報
【特許文献4】米国特許3088975
【特許文献5】米国特許2836622
【特許文献6】EP0253527
【特許文献7】米国特許3639429
【特許文献8】特開平10−223614
【特許文献9】特開2002−184765
【特許文献10】特開2002−158181
【非特許文献1】J.Amer.Chem.Soc.,91,4432 (1969)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら金属の除去方法としては、蒸留やより簡便な方法としては、液化したCOF2を一旦気化させ、別の容器に移送する方法が可能である。
【0007】
しかし、蒸留は設備や設備の運転に多額の費用が必要となる。また、蒸留したCOF2を貯槽に貯蔵している間にも金属分が混入する可能性があり、その様な場合は再度蒸留する必要がある。また、液化したCOF2を一旦気化させ、別の容器に移送する方法では、通常、液化ガスを一旦気化させ別の容器に移送しようとすると、まず、圧力調節弁などで一旦圧力を低下させ気化させた後、別の容器に圧縮機などで昇圧する方法、或いは移送先の圧力容器を冷却する方法などが採られている。しかし、これらの方法では、圧縮機や冷凍機などの設備が必要で、これらの運転に費用がかかる。また、圧縮機を用いると、COF2が摺動部と接触するため金属分やパーティクルなどの不純物が混入する可能性が極めて高い。一方、冷凍機で移送先の容器を冷却する場合、移送先の容器がボンベなどであると、ボンベを冷却しながらCOF2を計量し充填することになるため、その設備に多大なコストがかかる。
【0008】
この様に、金属分の少ない二フッ化カルボニルはこれまで言及されたことが無く、従って、その金属分の除去に関する精製方法についても開示された技術は無い。また、一般的な精製方法では、コストがかかるため、より簡便な方法での精製方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、液状で貯蔵された二フッ化カルボニルを密度0.7g/cm3以下の流体にして移送することにより二フッ化カルボニル中の金属分を低減できることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の金属含量が低減された二フッ化カルボニルの製造方法に関する。
1. 供給側容器に液状で貯蔵された金属成分を含む二フッ化カルボニルを密度0.7g/cm3以下の流体として別の容器に移送することを特徴とする金属含量が低減された二フッ化カルボニルの製造方法。
2. 密度0.7g/cm3以下の前記流体の移送をフィルターを通過させながら行うことを特徴とする項1に記載の方法。
3. 供給側容器の温度を室温より高い温度にしながら前記流体の移送を行う項1または2に記載の方法。
4. 二フッ化カルボニルを充填する別の容器を冷却しながら前記流体の移送を行う項1〜3のいずれかに記載の方法。
5. 移送前の二フッ化カルボニルの金属含量が1000ppb以上であり、移送後の二フッ化カルボニルの金属含量が500ppb以下である項1〜4のいずれかに記載の方法。
6.移送された二フッ化カルボニル中のナトリウムが検出限界以下である半導体製造用の項1〜5のいずれかに記載の二フッ化カルボニルの製造方法。
7.移送された二フッ化カルボニル中の銅が5ppb以下である半導体製造用の請求項1〜5のいずれかに記載の二フッ化カルボニルの製造方法。
8. 別の容器がボンベである項1〜7のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二フッ化カルボニル中に含まれる金属含有量を簡便な方法で除去することができる。特にナトリウム、銅などの半導体製造時に問題となる金属を悪影響を与えないレベル以下に低減することができ、得られた二フッ化カルボニルは半導体製造装置のプラズマクリーニングガスとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、様々な形態で実施できる。例えば、既知の方法で得られた二フッ化カルボニルを、供給側の容器(例えば貯槽)から別の容器(貯槽)に移送する際や、供給側容器からボンベに充填する際などに、本発明の方法を利用することが出来る。特に、供給側容器からCOF2を使用する容器(例えばボンベ)に移送する際には、当該ボンベは製品として出荷される場合が多く、製品中の金属分を除去できる本発明の移送方法が好ましく利用できる。
【0013】
供給側容器(貯蔵容器)中の二フッ化カルボニルは金属成分を含むものである。二フッ化カルボニル中に溶解した金属成分は、総含有量で通常1000ppb以上、特に1500ppb以上である。半導体製造に悪影響を及ぼす金属、例えば、ナトリウムや銅の含有量は、ナトリウムに関しては5ppb程度以上、銅に関しては10ppb程度以上二フッ化カルボニルに含まれ得る。金属含有量の上限は特に設定されないが、金属含有量が特に多い場合には二フッ化カルボニルの移送速度を低下させる、密度を下げる、圧力下げるなどにより流体中の金属溶解量を低下させ、金属除去をより効率的に行う。
【0014】
移送後の二フッ化カルボニルの金属は、総含有量で通常500ppb以下、好ましくは 450ppb以下、更に好ましくは400ppb以下である。半導体製造に悪影響を及ぼす金属、例えば、ナトリウムや銅の金属除去後の含有量は、銅に関しては5ppb以下が特に好ましく、ナトリウムに関しては検出限界(1ppb)以下が特に好ましい。このようなCOF2ガスは、半導体製造用チャンバのクリーニングガスとして好適に使用できる。
【0015】
なお、本明細書において、二フッ化カルボニル中に含まれる金属は、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Na、Ni、Zn、Ag、Au、Ba、Bi、Cd、Co、Ga、Ge、K、Li、Ni、Pb、Sb、Sn、SrおよびTlからなり、金属の総量(金属含量、金属分など)とはこれらの金属の合計量を意味する。また、検出限界以下の金属量は0として計算する。上記以外の金属は、二フッ化カルボニルに含まれ得るが、本明細書における金属総含有量にはカウントないし考慮されない。
【0016】
供給側容器の材質は、通常鉄、銅の他、ステンレス(SUS)、ハステロイ、インコネル、モネル等などの耐圧性の金属容器であり、この金属容器の表面から、金属が二フッ化カルボニルに溶解するため、二フッ化カルボニル中に金属が混入することになる。
【0017】
また、二フッ化カルボニルが移送される別の容器(例えば貯槽II)の材質は、通常ステンレス(SUS)、ハステロイ、鉄などの耐圧性の金属容器あるいはフッ素樹脂であり、別の容器がステンレス等の金属製の容器の場合には、移送・充填後、1週間以内に使用するか、上記方法で再び移送されるのが好ましい。
【0018】
移送される流体の密度は0.7g/cm3以下であれば金属分の除去が可能である。それ以上だと金属分がCOF2に溶解するため金属分除去の効果はない。流体の状態は、液状態、ガス状態、臨界状態、超臨界状態の何れの状態でも良く、密度に依存する。流体の密度は0.003〜0.7g/cm3好ましくは0.03〜0.7g/cm3より好ましくは0.1〜0.7g/cm3である。密度0.7g/cm3以下の流体の温度は、特に限定されないが、供給側容器(例えば後述の貯槽I)から別の容器(例えば後述の貯槽II)に移送する様な場合は、流体の温度(貯槽Iの温度)は通常−30℃〜200℃が採用され、好ましくは−20℃〜180℃、より好ましくは−10℃〜160℃がよい。これより低い温度だと貯槽IIの冷却にコストがかかり、これより高い温度だと、貯槽や配管の腐食の恐れが生じる。
【0019】
圧力は、1.2MPa〜10MPaが好ましい。ただし、密度は0.7g/cm3以下であることが必要である。これより低い圧力でも金属分の除去効果は得られるが、生産性を考えると1.2MPa以上が好ましく、また貯槽等圧力容器の耐圧を考えると10MPa以下が適当である。好ましい圧力範囲は、1.2〜10MPa、より好ましくは1.5〜8MPaである。
【0020】
本発明の詳細な実施方法としては、次のような方法があるが、これに限られるものではない。例えば、蒸留等により得られた二フッ化カルボニルが貯蔵された貯槽I(例えば蒸留等の受器)から次の貯槽II(例えば計量槽、製品貯槽)に移送する際に次のような方法が可能である。即ち、図1に示すように、貯槽Iの気相部から、圧力調整弁や流量調整弁等を介して密度0.7g/cm3以下の流体を必要に応じてフィルターを通過させながら貯槽IIに移送する方法がある。
【0021】
この時の、貯槽Iの温度は臨界温度以下であれば良いが、一般的には−40℃〜20℃程度、好ましくは−30℃〜20℃程度である。貯槽IIの温度は、貯槽Iの温度と同じか低ければ良いが、一般的には、−60℃〜20℃程度、好ましくは−50℃〜15℃程度が適当である。また、貯槽Iと貯槽IIの温度差は、0〜80℃程度、特に5〜30℃程度、例えば10〜25℃程度である。
【0022】
流体の密度は0.7g/cm3以下、好ましくは0.003〜0.7g/cm3、より好ましくは0.03〜0.7g/cm3更に好ましくは0.1〜0.7g/cm3である。流体の密度が高すぎると二フッ化カルボニル中の金属の除去が困難になり、流体の密度が低すぎると、流体を供給する別の容器(例えば貯槽II)に十分な量の二フッ化カルボニルを充填することが困難になるか、二フッ化カルボニルを圧縮機等を用いて圧縮するか、別の容器の温度を供給側容器の温度よりも大きく低下させる必要が生じることになる。
【0023】
或いは図2に示す様に、貯槽Iの液相部から圧力調整弁や流量調整弁を介して密度0.7g/cm3以下の流体を必要に応じてフィルターを通過させながら貯槽IIに移送する方法がある。この時の貯槽Iの温度は、15℃以上から臨界温度までであれば液体の密度は0.7g/cm3以下(GAS DATA HANDBOOK MATHESON)となり、必要に応じ圧力調整弁や流量調整弁、フィルターを介して貯槽IIに移送される。15℃より低い場合、圧力によっては液体の密度が0.7g/cm3より高くなることがあるため、圧力調整弁や流量調整弁で圧力を低下させ密度を0.7g/cm3以下にした後必要に応じてフィルターを通して貯槽IIに移送する方法がある。この時の貯槽IIの温度は、貯槽Iの温度が15℃以上であるかそれより低いかには依存せず、貯槽Iより低い温度であれば良い。或いは、図3に示すように、予め流体の密度が0.7g/cm3以下になるように貯槽IのCOF2の重量を調整した後、貯槽Iを臨界温度以上にして、圧力調整弁や流量調整弁を介し、必要に応じてフィルターを通して貯槽IIに移送する方法がある。この時の貯槽IIの温度は、必ずしも貯槽Iより低い温度である必要は無く、貯槽Iより高い
温度でも良い場合もある。この時の貯槽Iと貯槽IIの温度差は0〜50℃、好ましくは0〜40℃、更に好ましくは0〜30℃である。また、貯槽Iより低い温度にする場合は、
貯槽Iと貯槽IIの温度差は0より大きく50℃以下好ましくは0より大きく30℃以下、更に好ましくは0より大きく25℃以下である。
【0024】
また、例えば、貯槽IIIから製品用ボンベに充填する際は次のような方法がある。即ち、図1から図3に示す方法で、貯槽Iを貯槽IIIに貯槽IIをボンベに読みかえれば概ね同じ方法であるが、次のような違いがある場合もある。例えば、ボンベに充填する場合は、図1から図3に示す方法では、パーティクルの除去を目的に、フィルターを通す事が望まれる。また、図1および図2に示す方法では、ボンベを貯槽IIIより低い温度にしなければ、ボンベへの充填量が少なくなる。一方でボンベを冷却しながら充填するには、経済的とは言えないが、ボンベを恒温槽に入れたり、冷却用のジャケットを取りつけたり、充填場を冷凍庫内に設ける等の方法で冷却することができる。図3に示す方法では、貯槽IIIの温度を室温より高くする事により、ボンベの冷却の必要がなくなり、室温での充填が可能となる。より具体的な方法を示すと、例えば、貯槽IIIの容量が10m3であれば二フッ化カルボニルを7000kg貯槽IIIに溜め、貯槽の温度を例えば30℃に上げれば密度0.7g/cm3の流体が得られ、ボンベを室温の約20℃にしておけば、少なくとも0.7g/cm3の密度で二フッ化カルボニルを充填する事ができる。更に、充填を重ねる事により貯槽IIIの流体の密度が低下するが、貯槽IIIの温度を上げる事により、ボンベへの充填量を保つ事ができる。また貯槽IIIの密度の低下は金属分の低減効果には影響が無く温度の上昇も金属分の低減効果には影響が無いが、貯槽の温度は、貯槽の耐圧等を考えると一般的には150℃以下が望ましい。
【0025】
フィルターは、通常200μm〜0.1μmのものが使われるが、除去後の金属含量の目標値、フィルターの品質、流体の密度や供給側容器の温度などの移送条件に応じて適宜変更することができる。
【0026】
また、ここで言うボンベとは、5L、10L、47Lなどの小型の耐圧容器以外に、500Lや1000Lなどの大型の耐圧容器も指す。
【0027】
除去される金属分としては、周期律表で言うところの遷移金属のほか、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、砒素、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、ポロニウムがある。より具体的には、遷移金属は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、およびランタノイド、アクチノイドを示す。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、アルカリ土類金属はベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムを示す。本明細書では、上記の除去される金属のうち、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Na、Ni、Zn、Ag、Au、Ba、Bi、Cd、Co、Ga、Ge、K、Li、Ni、Pb、Sb、Sn、SrおよびTlの含量を計算することで、金属除去の程度を評価する。
【0028】
上記の金属のうち、実施例で分析された金属は、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Na、Ni、Zn、Ag、Au、Ba、Bi、Cd、Co、Ga、Ge、K、Li、Ni、Pb、Sb、Sn、SrおよびTlのみであり、インジウム、砒素、セレン、テルル、ポロニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、ランタノイド、アクチノイド、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、ラジウムは、上記の金属で例示はされているが、金属含量計算の基礎とはされていない。
【0029】
例えば、アルカリ金属(特にナトリウム)や銅は、半導体装置の製造時に悪影響を及ぼす金属であるので5ppb以下好ましくは検出限界以下に低減するのが好ましい。
【0030】
また、鉄、ニッケル、クロムなどは、ステンレス容器から二フッ化カルボニル中に溶け出す金属であり、これらを低減することも重要である。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0032】
比較例1
COF2を貯蔵してあるステンレス製の耐圧容器の低部にバルブを介して超純水の入ったPFA製ボトルを真直ぐ繋いだ。ステンレス製の耐圧容器を0℃に冷却した後、容器低部のバルブを開け、液相よりCOF2(34g)を勢い良く超純水(111g)にバブリングした。
【0033】
この時の液の密度は0.8g/cm3であった。
【0034】
実施例1
COF2を貯蔵してあるステンレス製の耐圧容器の上部にバルブを介して超純水の入ったPFA製ボトルに繋いだ。ステンレス製の耐圧容器を0℃に冷却した後、容器上部のバルブを開け、気相よりCOF2(49g)を勢い良く超純水(104g)にバブリングした。
【0035】
この時のガスの密度は0.14g/cm3と予想される。
【0036】
実施例2
COF2を貯蔵してあるステンレス製の耐圧容器の上部にバルブを介して超純水の入ったPFA製ボトルに繋いだ。ステンレス製の耐圧容器を25℃に加温し超臨界状態にした後、容器上部のバルブを開け、COF2(31g)を勢い良く超純水(104g)にバブリングした。
【0037】
この時の流体の密度は0.5g/cm3であった。
【金属分析】
【0038】
比較例、実施例でのバブリングした水溶液は、濃塩酸で洗浄した白金皿に入れ、ホットプレートで約二時間かけて蒸発乾固した。これを0.1Nの塩酸で再び溶かした後同様にホットプレートで濃縮し、超純水を加えて等倍に希釈し試料を調製した。また、バブリングをしていない水も同様の操作を行い、ブランクの試料を調製した。ここで得られた試料を、ICPにより金属分析を行った。比較例と実施例の結果を表1に示した。これらの結果は、得られた値が検出限界以上であれば、ブランク値を引いた値を示し、検出限界以下であれば、N.D.とした。
【0039】
【表1】

【0040】
Ag、Au、Ba、Bi、Cd、Co、Ga、Ge、K、Li、Ni、Pb、Sb、Sn、Sr、Tlは検出限界以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の二フッ化カルボニルの移送システムの1実施形態を示す。
【図2】本発明の二フッ化カルボニルの移送システムの1実施形態を示す。
【図3】本発明の二フッ化カルボニルの移送システムの1実施形態を示す。
【符号の説明】
【0042】
A:気相
B:液相
C:臨界又は超臨界流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給側容器に液状で貯蔵された金属成分を含む二フッ化カルボニルを密度0.7g/cm3以下の流体として別の容器に移送することを特徴とする金属含量が低減された二フッ化カルボニルの製造方法。
【請求項2】
密度0.7g/cm3以下の前記流体の移送をフィルターを通過させながら行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給側容器の温度を室温より高い温度にしながら前記流体の移送を行う請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
二フッ化カルボニルを充填する別の容器を冷却しながら前記流体の移送を行う請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
移送前の二フッ化カルボニルの金属含量が1000ppb以上であり、移送後の二フッ化カルボニルの金属含量が500ppb以下である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
移送された二フッ化カルボニル中のナトリウムが検出限界以下である半導体製造用の請求項1〜5のいずれかに記載の二フッ化カルボニルの製造方法。
【請求項7】
移送された二フッ化カルボニル中の銅が5ppb以下である半導体製造用の請求項1〜5のいずれかに記載の二フッ化カルボニルの製造方法。
【請求項8】
別の容器がボンベである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−282398(P2006−282398A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−16612(P2004−16612)
【出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】