説明

二共振の位相シフト素子を使用する低損失の可変位相反射アレイ

第1の表面と第2の表面とを有する誘電体基板を含む反射アレイを開示する。第1の表面は、位相シフト素子のアレイを支持し得る。第2の表面は、導電層を支持し得る。位相シフト素子のうちの少なくとも幾つかは、二共振の位相シフト素子であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
著作権及びトレードドレスの通知
この特許文献の開示の一部は、著作権の保護を受けた内容を含んでいる。この特許文献は、所有者のトレードドレスである又は所有者のトレードドレスになり得る内容を記載及び/又は示している場合がある。特許商標庁のファイル又は記録に特許が表示されたときに、著作権及びトレードドレスの所有者は、誰かが当該特許の開示を複写することに反対しないが、さもなければ、どんな著作権及びトレードドレスの権利であっても全てを保有する。
【0002】
この開示は、マイクロ波又はミリメートル波の放射線のための反射器に関する。
【関連技術の説明】
【0003】
無給電反射アレイは、予め定められた波長域内のマイクロ波又はミリメートル波の放射線を反射するように構成された導電性素子のアレイである。一般に、導電性素子のアレイは、薄い誘電層によって連続接地面から離されているので、接地面と導電性素子との組み合わされた効果によって、マイクロ波又はミリメートル波の入射放射線が反射する。入射放射線は、導電性素子のサイズ、形状、又は他の特性に応じた位相シフトを伴って反射し得るので、「位相シフト素子」という用語を使用して、反射アレイの導電性素子を示すことにする。
【0004】
位相シフト素子のサイズ、形状、又は他の特性を変化させると、アレイの全範囲にわたって様々な位相シフトを発生させることができる。様々な位相シフトを使用して、反射放射線を作る又はある方向に向けることができる。一般に、反射アレイを使用して、定められた物理的曲率を有する反射器であって、異なる曲率を有する反射器に匹敵する(emulate)反射器を提供している。例えば、平面の反射アレイを使用して、発散しているマイクロ波又はミリメートル波のビームを平行にすると、放物面反射器に匹敵し得る。
【0005】
クロスダイポールの位相シフト素子を含む反射アレイは、米国特許4,905,014に記載されている。図8は、シミュレーションによって得られたデータのグラフ800を示している。グラフ800は、垂直に入射した放射線に対するダイポールの長さの寸法Ldipoleの関数として、クロスダイポールの反射アレイの性能を示している。グラフ800に概略的に示されているデータは、95GHzの周波数について、基板材料と、基板の厚さと、グリッドの間隔Dgridと、ダイポールの幅Wdipoleとに対する具体的な条件を使用してシミュレートされたものである。図8(及び後述の図3、5、6)において、プロットされている位相シフトは、シミュレートされた入射波面と、反射波面との間における位相差として定義されている。両者は、反射アレイの表面と異なる位置にある基準面で測定されている。従って、基準面から反射アレイに行って、基準面に戻る往復伝搬が原因で、位相シフトのデータは、一定の位相のずれを含んでいる。
【0006】
10ミル(0.010インチ)未満から70ミル(0.070インチ)を超える長さまで、ダイポールの長さを変化させることによって、曲線810によって示されているように、位相シフトは、約+105度から(±180度で折り返した後で)+156度まで変化し得る。しかしながら、基板材料と、基板の厚さと、グリッドの間隔Dgridと、ダイポールの幅Wdipoleとのこの想定上の組み合わせの場合は、+156度と+105度との間の位相シフトを達成できず、約51度の「ギャップ」が残されている。360度の範囲にわたって途切れることなく変えられる位相シフトを達成できないと、反射ビームを正確に方向付けて形成する反射アレイの能力が制限され得る。
【0007】
点線の曲線820によって示されているように、シミュレートされた反射損失も、ダイポールの長さと共に変化する。位相シフト素子内の共振により、反射損失の曲線は、約0.042インチのダイポールの長さにおいて、1つのピークを示している。クロスダイポールの反射アレイの場合は、ダイポールの長さが、反射放射線の波長の2分の1に等しいときに、(基板の誘電率の影響を含む)反射損失のピークが現れ得る。反射アレイから反射した波長でダイポールが共振するような、ダイポールの長さを有する場合に、反射損失のピークが現れ得る。ソリッドの曲線810によって示されているように、位相シフトは、共振の近くにおいて、ダイポールの長さに最も強く左右される。ダイポールの長さが、約0.03インチから約0.05インチに変化するときに、位相シフトはかなり変化するが、ダイポールの長さが、約0.03インチよりも短いか又は約0.05インチよりも長い場合は、比較的に一定である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】マイクロ波エネルギのビームを生成するシステムのブロック図である。
【図2A】可変位相反射アレイの平面図である。
【図2B】可変位相反射アレイの側面図である。
【図3】可変位相反射アレイの性能を示すシミュレーション結果のグラフである。
【図4】位相シフト素子のアレイの平面図である。
【図5】可変位相反射アレイの性能を示すシミュレーション結果のグラフである。
【図6】可変位相反射アレイの性能を示すシミュレーション結果のグラフである。
【図7】可変位相反射アレイを設計するプロセスのフローチャートである。
【図8】先行技術の反射アレイの性能を示すシミュレーション結果のグラフである。
【詳細な説明】
【0009】
本明細書において、「形状」という用語は、特に、二次元の要素の形を説明するために使用されている。「曲率」という用語は、三次元の表面の形を説明するために使用されている。無限の曲率半径を有する曲面と、平面は、数学的に同等であるので、「曲率」という用語を平面又は平らな表面に適切に用いることができることに留意すべきである。形状又は線に対して、「ソリッド(solid)」という用語が用いられている場合は、完全な(unbroken)ことを意味するが、著しい深さを示唆していない。「マイクロ波」という用語は、およそ1GHzを超える無線周波数スペクトル部分を示すために使用されており、従って、一般に、マイクロ波、ミリメートル波、及びテラヘルツ放射と呼ばれるスペクトル部分を含む。「位相シフト」という用語は、マイクロ波ビームが表面又はデバイスから反射したときに生じる位相の変化を説明するために使用されている。位相シフトは、反射ビームと入射ビームとの間における位相の差である。この説明の中では、位相シフトは、度(degree)で測定され、慣例により、−180度乃至+180度の範囲を有すると定義される。
【0010】
装置の説明
ここで、図1を参照すると、マイクロ波エネルギのビームを生成する例示的なシステムは、マイクロ波エネルギ源110と、ビーム導波器120とを含み得る。マイクロ波エネルギ源110は、ソリッドステート源、真空管源、又はマイクロ波エネルギを提供する別の源であり得る。ビーム導波器120は、1つ以上のビーム形成素子、例えば、一次反射器130と二次反射器126とを含み得る。ビーム導波器120は、マイクロ波エネルギ源110からマイクロ波エネルギ112を受け取って、受け取ったマイクロ波エネルギ112から、マイクロ波エネルギのビーム115を形成し得る。マイクロ波エネルギのビーム115は、図1において集束ビームとして示されている。マイクロ波エネルギのビーム115は、平行ビーム、発散ビーム、又は他の何らかの波面の形を有するビームであり得る。
【0011】
入射マイクロ波エネルギ112をマイクロ波エネルギの所望のビーム115に変換するために、一次反射器130は、点線の形状124によって示されているような非球面反射器として機能する必要があり得る。例えば、一次反射器130は、軸外し放物面反射器として機能する必要があり得る。しかしながら、十分にコントロールされた波面を提供するために、一次反射器は、マイクロ波の動作周波数において波長の誤差がほんの僅かになるような形状であることが必要であり得る。例えば、一次反射器130の表面は、95GHzの波長において誤差が千分の数インチ以内になる形であることが必要であり得る。例えば3フィート以上の直径を有し得る湾曲した形状の全体にわたって、この精度が要求され得る。大きな非球面形状の全体にわたって厳しい公差を維持すると、非球面の一次反射器のコストを大幅に増加し得る。
【0012】
要求されている機械公差を維持することは、平面では比較的に容易であり得るので、一次反射器130は、平面基板上の導電性位相シフト素子のアレイから構成されている反射アレイであり得る。アレイの全体にわたって位相シフト素子の幾何学形状を変化させることによって、反射したマイクロ波エネルギの位相を変化させることができる。その結果、平面の一次反射器130から反射した波面は、仮想の曲面反射器124から反射した波面と同じになる。このように、平面の反射アレイ130は、曲面反射器124に匹敵すると言ってもよい。
【0013】
例示的なビーム導波器120において、二次反射器は、第2の平面の反射アレイ126か、又は曲面128によって示されているような曲面反射器であり得る。
【0014】
ここで図2Aを参照すると、例示的な反射アレイ230は、二次元アレイ240又は位相シフト素子のグリッドを含み得る。例示的な反射アレイ230は、一次反射器130として使用するのに適切であり得る。図2Aに示されている位相シフト素子は一様であるが、各位相シフト素子の寸法と形状は、マイクロ波放射が反射アレイから反射したときに引き起こされる電気の位相シフトを決定し得る。位相シフト素子は、三角形のグリッド上に配置され得る。即ち、任意の行の中の位相シフト素子は、隣接する行の中の位相シフト素子から、横方向にオフセットし得る。隣接する行間の距離は、寸法aであり得る。各行の中の隣接する位相シフト素子間の距離は、寸法bであり得る。これは、以下の式によって寸法に関係付けられる。
【数1】

【0015】
この説明において、「行(row)」と「列(column)」という用語は、図に示されているように反射アレイの素子を指しており、反射アレイの絶対的な向き(absolute orientation)を示唆していない。反射アレイ230は、所定の波長域内のマイクロ波の放射線を反射するように構成され得る。寸法aは、所定の周波数帯内のマイクロ波の放射線の1波長未満であり、約0.5波長であり得る。
【0016】
例示的な反射アレイ230に示されているように、各位相シフト素子、例えば位相シフト素子241は、入れ子の六角形の形状を有し得る。位相シフト素子241は、外側の環状の六角形リング241aを含んでいる。外側の環状の六角形リング241aは、中央の六角形の形状241bを囲んでいて、これと同心である。外側の環状の六角形リング241aは、寸法RとRとによって特徴付けることができる。寸法RとRは、それぞれ、外側と内側の六角形の頂点を通して描くことができる円の半径である。中央の六角形の形状241bは、寸法Rによって特徴付けることができる。寸法Rは、形状241bに外接し得る円の半径である。位相シフト素子は、他の形状を有していてもよい。他の形状は、例えば、入れ子の円と、入れ子の正方形と、他の多角形の形状である。
【0017】
ここで図2Bを参照すると、例示的な反射アレイ230は、誘電体基板232を含み得る。誘電体基板232は、第1の表面233と第2の表面234とを有する。誘電体基板は、セラミック材料、(ロジャーズ社(Rogers Corporation)から入手可能な)DUROID(登録商標)のような複合材料、又は目的の周波数で使用するのに適した他の何らかの誘電体材料であり得る。誘電体基板232は、厚さtを有し得る。厚さtは、所定の周波数帯の自由空間波長の約1/16以上であり得る。厚さtは、所定の周波数帯の自由空間波長の約1/4以下であり得る。厚さは、所定の周波数帯の自由空間波長の約0.0805倍であり得る。例えば、95GHzの周波数における動作に対して、厚さtは、0.010インチであり得る。厚さtは、反射アレイ230の範囲にわたって変化してもよく、又は一定であってもよい。
【0018】
第2の表面234は、導電層235を支持し得る。導電層235は、第2の表面234の全て又はほぼ全てにわたって、つながっているかもしれない。導電層235は、接地平面として機能し得る。導電層235は、第2の表面234上に配置された薄い金属フィルムであり得るか、又は第2の表面234にかぶせられた金属箔であり得る。導電層235は、金属要素、例えば金属板であり得る。更に、導電層235は、第2の表面234に接着された又はさもなければ貼り付けられた、構造の支持体及び/又はヒートシンクとして機能し得る。
【0019】
第1の表面233は、導電性位相シフト素子のアレイ240を支持し得る。第1の表面233上に配置された薄い金属フィルムにパターンを付けることによって、第1の表面233上にかぶせられた薄い金属箔にパターンを付けることによって、又は他の何らかの方法によって、位相シフト素子が形成され得る。
【0020】
図2Aと図2Bに示されている位相シフト素子は、一様であるが、位相シフト素子の特徴を示す寸法Rと、Rと、Rとのうちの少なくとも1つを、反射アレイ230の全体にわたって変化させてもよい。位相シフト素子の寸法を変化させると、反射アレイ230の特定の部分から反射したマイクロ波の放射線の位相シフトが変化し得る。反射アレイの範囲の全体にわたって位相シフトを適切に変化させることによって、第1の曲率を有する反射アレイは、第1の曲率と異なる第2の曲率を有する反射器の光学特性に匹敵するように構成され得る。平面の反射アレイは、放物面反射器、球面反射器、円筒形反射器、トロイダル反射器、円錐形反射器、一般的な非球面反射器、又は他の何らかの曲面反射器に匹敵するように構成され得る。円錐形又は球形の曲率のような単純な曲率を有する反射アレイは、放物面反射器、トロイダル反射器、円錐形反射器、又は一般的な非球面反射器のような複雑な曲率を有する反射器に匹敵するように構成され得る。
【0021】
ここで図3を参照すると、グラフ300は、図2に示されている入れ子の六角形の位相シフト素子に類似した位相シフト素子を組み込んだ反射アレイについてのシミュレートされた性能データの概要を示している。グラフ300は、寸法Rに対する反射位相シフトと反射損失との依存関係を示している。寸法Rは、図2に定義されている。位相シフトは、ソリッド線(実線(solid line))310によって、度(degree)で示されている。反射損失は、点線320によって、dBで示されている。
【0022】
グラフ300に示されている性能データは、次の条件を使用したシミュレーションから導き出されている。条件は、垂直入射と、周波数=95GHzと、基板の厚さt=0.010インチと、基板材料=DUROID(登録商標)と、寸法a=0.065インチと、寸法b=0.112インチと、寸法R=R−0.011インチと、寸法R=R−0.004インチである。
【0023】
ソリッド線310によって示されているように、入れ子の六角形の位相シフト素子で構成された可変位相反射アレイは、−180度から+180度までの任意の所望の位相シフト値を生成できる。しかしながら、点線320によって示されているように、六角形の半径Rの値が約0.032インチよりも大きい場合に、シミュレートされた反射損失が急速に増加している。六角形の半径Rが0.034インチよりも大きいときに、反射損失は0.2dBよりも大きい。ソリッド線310によって示されているように、例えば、六角形の半径Rが0.034インチよりも大きいときにのみ、+90度と+60度との間の位相シフト値が達成される。即ち、+90度と+60度との間の位相シフト値は、比較的に高い反射損失を伴う。
【0024】
点線320によって示されているように、シミュレートされた反射損失Rは、
【数2】

【0025】
において局所的ピークを有し、
【数3】

【0026】
において第2の共振ピーク(図3に示されていない)を有する。即ち、六角形の半径Rの2つの異なる値において、共振が発生することを示している。位相シフト素子のサイズを許容範囲にわたって変化させたときに、2つの共振、即ち2つの損失のピークを示す位相シフト素子を、「二共振(dual resonance)」の位相シフト素子と称する。このシミュレーションで想定されている入れ子の六角形の形状は、二共振の位相シフト素子の例である。ソリッド線310によって示されているように、シミュレートされた位相シフトは、両者の共振の近くの六角形の半径Rに大きく左右される。このシミュレーションに示されている広範囲の位相シフトは、二共振の位相シフト素子を使用した結果であり得る。
【0027】
位相シフト素子に電流を流すシミュレーションにより、
【数4】

【0028】
における第1の共振が、主として、各位相シフト素子の環状の六角形部分に流れる電流に関連し得ることが示された。
【数5】

【0029】
における第2の共振は、各位相シフト素子の環状の六角形リングと中央のソリッド(中実(solid))の六角形の形状との両者に流れる電流に関連し得る。同様の入れ子の形状、例えば、入れ子の円と、入れ子の正方形と、他の多角形の形状も、二共振を示し得るので、広範囲の位相シフト値を提供できる。
【0030】
図3に示されているシミュレーション結果は、R=R−0.011インチと、R=R−0.004インチとを含む幾つかの条件に基づいている。なお、Rと、Rと、Rは、図2に定義されている。しかしながら、これらの条件を用いると、0.015インチ未満のRの値では、入れ子の六角形の形状を形成できない。ここで図4を参照すると、位相シフト素子のアレイ430は、入れ子の六角形と、環状の六角形と、ソリッドの六角形の形状の組み合わせを含んでいるかもしれない。例えば、位相シフト素子441と442は、ソリッドの六角形であり、それぞれ、0.005インチと0.010インチの外側半径Rを有する。位相シフト素子443は、環状の六角形であり、0.015インチの外側半径Rと、内側半径R=R−0.011インチとを有する。位相シフト素子444と、445と、446は、それぞれ、入れ子の六角形であって、それぞれ0.020インチと、0.025インチと、0.030インチの外側半径Rと、R=R−0.011インチと、R=R−0.004インチとを有する。
【0031】
ここで図5を参照すると、グラフ500は、図4に示されている入れ子の六角形と、環状の六角形と、ソリッドの六角形との位相シフト素子に類似した位相シフト素子を組み込んだ反射アレイに対するシミュレートされた性能データの概要を示している。グラフ500は、寸法Rに対する、反射位相シフトと反射損失との依存関係を示している。寸法Rは、図2に定義されている。
【0032】
グラフ500に示されている性能データは、次の条件を使用したシミュレーションから導き出されている。条件は、垂直入射と、周波数=95GHzと、基板の厚さt=0.010インチと、基板材料=DUROID(登録商標)と、寸法a=0.060インチと、寸法b=0.104インチと、寸法R=R−0.011インチと、寸法R=R−0.004インチである。
【0033】
ソリッド線510は、0.016インチ乃至0.034インチのRを有する入れ子の六角形の位相シフト素子によって提供された位相シフトを、度(degree)で定義している。点線510Aは、0.012インチ乃至0.016インチのRを有する環状の六角形の位相シフト素子によって提供された位相シフトを定義している。鎖線(dot-dash line)510Bは、0乃至0.012インチのRを有するソリッドの六角形の位相シフト素子によって提供された位相シフトを定義している。ソリッドの六角形の位相シフト素子と、環状の六角形の位相シフト素子と、入れ子の六角形の位相シフト素子とを混ぜたものを用いて実施された可変位相反射アレイは、−180度乃至+180度の任意の所望の位相シフト値を生成し得る。
【0034】
点線520は、0.016インチ乃至0.034インチのRを有する入れ子の六角形の位相シフト素子によって提供された反射損失を、dBで定義している。点線520Aは、0.012インチ乃至0.016インチのRを有する環状の六角形の位相シフト素子によって提供された反射損失を定義している。鎖線520Bは、0乃至0.012インチのRを有するソリッドの六角形の位相シフト素子によって提供された反射損失を定義している。図3に示されているデータとは対照的に、ソリッドの六角形の位相シフト素子と、環状の六角形の位相シフト素子と、入れ子の六角形の位相シフト素子とを混ぜたものを用いて実施された可変位相反射アレイの反射損失は、位相シフト値の全範囲にわたって約0.12dB未満であり得る。
【0035】
ここで図6を参照すると、グラフ600は、図4に示されている入れ子の六角形の位相シフト素子とソリッドの六角形の位相シフト素子とに類似した位相シフト素子を組み込んだ別の反射アレイについてのシミュレートされた性能データの概要を示している。グラフ600は、寸法Rに対する反射位相シフトと反射損失との依存関係を示している。寸法Rは、図2に定義されている。
【0036】
グラフ600に示されている性能データは、次の条件を使用したシミュレーションから導き出されている。条件は、垂直入射と、周波数=95GHzと、基板の厚さt=0.010インチと、基板材料=DUROID(登録商標)と、寸法a=0.056インチと、寸法b=0.097インチと、寸法R=R−0.009インチと、寸法R=R−0.004インチである。
【0037】
ソリッド線610は、0.015インチ乃至0.032インチのRを有する入れ子の六角形の位相シフト素子によって提供された位相シフトを、度(degree)で定義している。鎖線610Bは、0乃至0.015インチのRを有するソリッドの六角形の位相シフト素子によって提供された位相シフトを定義している。ソリッドの六角形の位相シフト素子と、入れ子の六角形の位相シフト素子とを混ぜたものを用いて実施された可変位相反射アレイは、−180度乃至+180度の任意の所望の位相シフト値を生成し得る。
【0038】
点線620は、0.015インチ乃至0.032インチのRを有する入れ子の六角形の位相シフト素子によって提供された反射損失を、dBで定義している。入れ子の六角形の位相シフト素子の反射損失は、二共振のピークを示している。鎖線620Bは、0乃至0.015インチのRを有するソリッドの六角形の位相シフト素子によって提供された反射損失を定義している。図5に示されているデータと同様に、ソリッドの六角形の位相シフト素子と、入れ子の六角形の位相シフト素子とを混ぜたものを用いて実施された可変位相反射アレイの反射損失は、位相シフト値の全範囲にわたって、約0.125dB未満であり得る。
【0039】
図3と、図5と、図6は、3つの例示的な可変位相反射アレイに対するシミュレーション結果を示している。3つのシミュレートされた反射アレイは、考えられる一連の設計の中のポイントの設計であって、360°の全範囲にわたる可変位相シフトと、低反射損失とを提供し得る設計である。これらの3つの例で使用されている条件と寸法の範囲内で、他のポイントの設計に対して、同様の結果が得られるかもしれない。
【0040】
図3と、図5と、図6は、95GHzの特定の周波数における垂直入射のマイクロ波エネルギを想定して、3つの例示的な可変位相反射アレイに対するシミュレーション結果を示している。物理的パラメータを適切に選択することによって、垂直以外の角度の入射又は反射に対して、同様の結果が得られるかもしれない。これらの結果は、約95GHzの他の周波数にも適用され得る。なお、「約95GHz」は、94GHzの大気の電波の窓の中の任意の周波数を含み得る。想定された物理的パラメータをスケーリングすることによって、他の周波数に対して、同様の結果が得られるかもしれない。
【0041】
プロセスの説明
再び簡単に図1を参照すると、マイクロ波エネルギのビームを提供するプロセスは、マイクロ波エネルギ源110のような源を使用してマイクロ波エネルギを生成することと、生成されたマイクロ波エネルギから、ビーム導波器120のようなビーム導波器を使用して、マイクロ波エネルギビーム115のようなマイクロ波エネルギのビームを形成することとを含む。ビーム導波器は、ここに記載されている二共振の可変位相反射アレイを含み得る。
【0042】
ここで図7を参照すると、反射アレイを設計するプロセス700は、開始705と終了795との両者を有するが、プロセスは、実際は循環し、設計が成功するまで反復的に繰り返され得る。710において、反射アレイに対する所望の光学性能を定めてもよい。例えば、定められる性能は、第1の波面を有する入射ビームを、第2の波面を有する反射ビームに変換することを含む。なお、第2の波面は、第1の波面の鏡面反射ではない。更に、所望の性能は、動作波長又は波長範囲と、最大反射損失との定義を含み得る。通常、反射アレイは、より大きなシステムにおけるコンポーネントであり得る。反射アレイの所望の性能を、システムの他のコンポーネントに関連付けて定めてもよい。
【0043】
720において、710において定められた第1と第2の波面と、波長とから、要求されている位相シフトパターン、即ち位相シフトを反射アレイ上の位置の関数として計算してもよい。
【0044】
730において、基板材料と厚さとを定めてもよい。製造上の検討事項、材料の入手し易さ、又は他の何らかの基準に基づいて、基板材料と厚さとを定めてもよい。
【0045】
740において、位相シフト素子のアレイについて、グリッドの間隔と、位相シフト素子の形状と、自由度(設計プロセス中に変えることができる次元数)と、寸法の範囲とを定めてもよい。条件と、経験と、従来設計に対する変更と、他の方法と、これらの組み合わせとによって、これらのパラメータを定めてもよい。
【0046】
750において、適切なシミュレーションツールを使用して、反射アレイの性能をシミュレートすることによって、反射位相シフトと反射損失とを計算してもよい。例えば、740で定められる自由度は、3つの異なる位相シフト素子の形状(即ち、ソリッドと、環状と、入れ子)と1つの可変寸法との選択であるとする。750において、可変寸法の全範囲にわたって複数の値を選択してもよい。全ての値における各位相シフト素子の形状に対して、反射位相シフトと反射損失とを計算してもよい。
【0047】
770において、750からの計算結果を評価して、低反射損失の所望の位相シフトを提供する位相シフト素子を選択してもよい。例えば、750からのデータを、図3、5、6に示されているようにグラフにしてもよい。適切な位相シフト素子を、観測値によって決定してもよい。更に、750からのデータを数値解析することによって、適切な位相シフト素子を選択してもよい。
【0048】
780において、全体的な反射アレイの性能をシミュレートしてもよい。調整と反復とによって、設計を最適化してもよい。
【0049】
790において、780からの反射アレイのシミュレートされた性能と、710において定められた光学性能の要件とを比較してもよい。780からの設計が、710からの性能の要件を満たす場合は、795において、プロセス700が終了してもよい。780からの設計が、710からの性能の要件を満たさない場合は、光学性能の要件が満たされるまで、(光学性能の要件を変更して)ステップ710から、(基板の選択を変更して)ステップ730から、又は(グリッドの間隔、素子の形状、自由度、又は寸法の範囲を変更して)ステップ740から、プロセスを繰り返してもよい。
【0050】
最後の補足説明
この説明の全体にわたって、示されている実施形態と例は、開示されている又は請求項に係る装置と手順とを制限するものではなく、例示として見なすべきである。ここに提示されている例の多くは、方法の動作又はシステムの要素の具体的な組み合わせを含むが、これらの動作とこれらの要素とを他のやり方で組み合わせて、同じ目的を達成してもよいことが分かるはずである。フローチャートに関して、ステップを追加しても、低減してもよく、示されているステップを組み合わせるか、又は更に改善して、ここに記載されている方法を実現してもよい。1つのみの実施形態に関連して記載された動作と、要素と、特徴とを、他の実施形態における同様の役割から除外することは、意図されていない。
【0051】
請求項に記載されているミーンズプラスファンクション(means-plus-function)の制限に関して、手段(means)が、ここに開示されている手段であって、記載されている機能(function)を行なう手段に制限されることは意図されていないが、現在知られている又は将来開発される任意の手段であって、記載されている機能を行なう手段の範囲をカバーすることが意図されている。
【0052】
ここで使用されているように、「複数」は、2以上を意味する。
【0053】
ここで使用されているように、事項(item)の「組」は、当該事項の1つ以上を含み得る。
【0054】
ここで使用されているように、記載されている説明又は請求項において、「具備する」、「含む」、「保持する」、「有する」、「包含する」、「伴う」、等の用語は、限定されていないこと、即ち、含んでいるが制限されない(including but not limited to)ことを意味すると理解すべきである。それぞれ、「・・・から成る」及び「本質的に、・・・から成る」という移行句のみが、請求項に関する限定的又は半限定的な移行句である。
【0055】
請求項において、請求項の要素を修飾するために、「第1」、「第2」、「第3」、等のような序数を表す用語を使用していることは、それ自体で、1つの請求項の要素が別の請求項の要素に対して優位であること、優先すべきであること、又はこれらの順序、或いは方法の動作を行なう時間的順序を意味しているのではなく、(順序を示す用語の使用以外に)請求項の要素を区別するために、ある特定の名前を有する1つの請求項の要素と、同じ名前を有する別の要素とを区別するための単なるラベルとして、序数を表す用語を使用している。
【0056】
ここで使用されているように、「及び/又は」は、列挙されている事項が選択肢であり、更に、選択肢が、列挙されている事項の任意の組み合わせを含むことを意味する。
【符号の説明】
【0057】
100・・・システム、112・・・マイクロ波エネルギ、115・・・マイクロ波エネルギのビーム、120・・・ビーム導波器、124・・・曲面反射器、126・・・二次反射器、128・・・曲面、130・・・一次反射器、230・・・反射アレイ、232・・・誘電体基板、233・・・第1の表面、234・・・第2の表面、235・・・導電層、240・・・二次元アレイ、241,441,442,443,444,445,446・・・位相シフト素子、241a・・・外側の環状の六角形リング、241b・・・中央の六角形の形状、300,500,600,800・・・グラフ、310,510,510A,510B,610,610B,810・・・位相シフト、320,520,520A,520B,620B,820・・・反射損失、430・・・位相シフト素子のアレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面(233)と第2の表面(234)とを有する誘電体基板(232)と、
前記第2の表面によって支持されている導電層(235)と、
前記第1の表面によって支持されている複数の位相シフト素子(240)と、
を具備しており、
前記位相シフト素子のうちの少なくとも幾つかが、二共振の位相シフト素子である、
反射アレイ(130、230、430)。
【請求項2】
前記反射アレイから反射したマイクロ波ビーム(115)の位相シフトは、前記位相シフト素子の少なくとも1つの可変寸法によって、少なくとも部分的に決定される、請求項1の反射アレイ。
【請求項3】
前記二共振の位相シフト素子は、前記反射アレイの動作周波数において、前記可変寸法の2つの異なる値で共振をもたらす形状を有する、請求項2の反射アレイ。
【請求項4】
前記誘電体基板は、第1の曲率を有しており、
前記第1の曲率と異なる第2の曲率(124)を有する反射器に、前記反射アレイを匹敵させるために、前記反射アレイの全体にわたって、前記可変寸法を変化させる、請求項2の反射アレイ。
【請求項5】
前記誘電体基板は、平面であり、
前記反射アレイは、非平面反射器に匹敵する、請求項4の反射アレイ。
【請求項6】
前記反射アレイは、
放物面反射器と、球面反射器と、円筒形反射器と、トロイダル反射器と、円錐形反射器と、一般的な非球面反射器とから成るグループから選択される曲面反射器に匹敵する、請求項5の反射アレイ。
【請求項7】
前記誘電体基板は、球形と円筒形とから成るグループから選択される曲率を有し、
前記反射アレイは、
放物面反射器と、トロイダル反射器と、円錐形反射器と、一般的な非球面反射器とから成るグループから選択される非球面反射器に匹敵する、請求項4の反射アレイ。
【請求項8】
前記二共振の位相シフト素子(241)は、入れ子の素子であり、
前記入れ子の素子は、同心の環状の導体(241a)に囲まれたソリッドの内側の導体(241b)を含む、請求項1の反射アレイ。
【請求項9】
前記二共振の位相シフト素子は、入れ子の六角形である、請求項8の反射アレイ。
【請求項10】
前記複数の位相シフト素子は、入れ子の素子(444、445、446)と、環状の素子(443)とソリッドの素子(441、442)との少なくとも一方とを含む、請求項9の反射アレイ。
【請求項11】
前記複数の位相シフト素子は、入れ子の六角形(444、445、446)と、環状の六角形(443)と、ソリッドの六角形(441、442)とを含む、請求項10の反射アレイ。
【請求項12】
前記反射アレイの動作周波数は、約95GHzであり、
前記複数の位相シフト素子は、三角形のアレイで配置されており、
前記三角形のアレイの隣接する行間の距離は、寸法aであって、0.056”≦a≦0.065”であり、
前記三角形のアレイの各行の中の隣接する位相シフト素子間の距離は、寸法bであって、b=2a cos(30°)であり、
前記複数の位相シフト素子の各々は、変数Rによって特徴付けられ、
変数Rは、前記位相シフト素子に外接し得る円の半径であり、
≦0.035”である、請求項11の反射アレイ。
【請求項13】
−180度乃至+180度の任意の位相値を提供するように、Rを変化させることができる、請求項12の反射アレイ。
【請求項14】
マイクロ波エネルギのビームを生成するシステム(100)であって、
マイクロ波エネルギ源(110)と、
前記マイクロ波エネルギ源(110)から受け取ったエネルギを、マイクロ波エネルギビーム(115)に方向付けるビーム導波器(120)と、
を具備し、
前記ビーム導波器は、
第1の表面(233)と第2の表面(234)とを有する誘電体基板(232)と、
前記第2の表面によって支持されている導電層(235)と、
前記第1の表面によって支持されている複数の位相シフト素子と、
を具備し、
前記位相シフト素子のうちの少なくとも幾つかは、二共振の位相シフト素子(241)である、
システム(100)。
【請求項15】
マイクロ波エネルギのビームを生成する方法であって、
マイクロ波エネルギを生成するステップと、
ビーム導波器を使って、前記マイクロ波エネルギからビームを形成するステップと、
を具備し、
前記ビーム導波器は、一次反射器を含み、
前記一次反射器は、
第1の表面と第2の表面とを有する誘電体基板と、
前記第2の表面によって支持されている導電層と、
前記第1の表面によって支持されている複数の位相シフト素子と、
を具備し、
前記位相シフト素子のうちの少なくとも幾つかは、二共振の位相シフト素子である、
方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−528540(P2012−528540A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513258(P2012−513258)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/036425
【国際公開番号】WO2010/138731
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】