説明

二多段式駐車装置とその運転方法

【課題】入出庫スペース及び人の通路スペースを広く確保することができる二多段式駐車装置とその運転方法を提供する。
【解決手段】車両1が入出庫する入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で車両1を載せて昇降可能なパレット12と、横方向に移動可能に設置された横行枠15と、車両1と干渉しない位置でパレット12を把持可能な昇降枠20と、本体フレーム2又は横行枠15に取り付けられ、車両1と干渉しない位置で可撓性のある紐状体17の下端17aに昇降枠20を吊下げ、紐状体17の下端17aを昇降可能な昇降駆動装置16とを備え、パレット12を把持した状態で昇降枠20を昇降させて、パレット12を入出庫高さより上方の駐車スペースとの間で昇降させ、横行枠15を横行移動させ、パレット12が入出庫高さに位置する入出庫時に、昇降枠20からパレット12を分離し、入出庫及び人の通行を妨げない高さまで上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二多段式駐車装置とその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二多段式駐車装置とは、同一の設置スペースに二段以上の駐車スペースが設けられた機械式駐車装置である。
二多段式駐車装置は、地上のみに駐車スペースが設けられる地上式と、地上と地下に駐車スペースが設けられるピット式とに大別できる。地上式とピット式のいずれも、車両の入出庫は、入出庫高さ(FL)に位置するパレット上に車両を直接入庫し又はパレット上から車両を出庫することで行われる。
【0003】
上述した二多段式駐車装置は、例えば特許文献1〜4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−115674号公報、「二・多段式駐車装置の横行装置と横行ガイド装置」
【特許文献2】特開2003−97074号公報、「多段式駐車装置」
【特許文献3】特開2003−105997号公報、「多段式駐車装置」
【特許文献4】特開2009−256978号公報、「二・多段式駐車装置の改造方法と、この方法で改造された二・多段式駐車装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二多段式駐車装置において、上下に昇降するパレットは、荷重バランスを考慮して4本のチェーン(パレット吊りチェーン)で通常吊下げられている。
しかし、パレットが入出庫高さ(FL)まで下降した状態では、パレット吊りチェーンが車両の側面近傍にあるため、パレットへの車両の入庫、パレットからの車両の出庫、または、人の通行に、パレット吊りチェーンが邪魔になる問題点があった。
また、二多段式駐車装置の利用者からは、隣り合うパレットとの間隔が狭いため、車両の入出庫や、パレットの間の通行が不便であり、パレットの間隔を広く使いたいという要望があった。しかし、それに対し、パレット間の間隔を広く設計すると、敷地面積が余計に必要となり、建設費用もかかるため、管理者のニーズに合わなかった。
【0006】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、入出庫高さ(FL)における車両の入出庫の際に、パレット吊りチェーン等が邪魔にならず、入出庫スペース及び人の通路スペースを広く確保することができる二多段式駐車装置とその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースが設けられた二多段式駐車装置であって、
車両が入出庫する入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で車両を載せて昇降可能なパレットと、
2段目以上の駐車段で入出庫時の車両の進行方向に対して横方向に移動可能に設置された横行枠と、
車両と干渉しない位置で前記パレットを把持可能な昇降枠と、
前記二多段式駐車装置を囲む枠である本体フレーム又は前記横行枠に取り付けられ、車両と干渉しない位置で可撓性のある紐状体の下端に前記昇降枠を吊下げ、該紐状体の下端を昇降可能な昇降駆動装置とを備え、
(A)前記昇降枠により前記パレットを把持した状態で、該昇降枠を昇降させて、パレットを入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で昇降させ、
(B)前記パレットが前記2段目以上にあるときは、前記横行枠の移動により横行移動させ、
(C)前記パレットが入出庫高さに位置する入出庫時に、前記昇降枠から前記パレットを分離し、前記昇降駆動装置により前記昇降枠及び紐状体を入出庫及び人の通行を妨げない高さまで上昇させる、ことを特徴とする二多段式駐車装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースが設けられた二多段式駐車装置であって、
車両が入出庫する入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で車両を載せて昇降可能なパレットと、
2段目以上の駐車段で入出庫時の車両の進行方向に対して横方向に移動可能に設置された横行枠と、
車両と干渉しない位置で前記パレットを把持可能な昇降枠と、
前記二多段式駐車装置を囲む枠である本体フレーム又は前記横行枠に取り付けられ、車両と干渉しない位置で可撓性のある紐状体の下端に前記昇降枠を吊下げ、該紐状体の下端を昇降可能な昇降駆動装置とを備え、
(A)前記昇降枠により前記パレットを把持した状態で、該昇降枠を昇降させて、パレットを入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で昇降させ、
(B)前記パレットが前記2段目以上にあるときは、前記横行枠の移動により横行移動させ、
(C)前記パレットが入出庫高さに位置する入出庫時に、前記昇降枠から前記パレットを分離し、前記昇降駆動装置により前記昇降枠及び紐状体を入出庫及び人の通行を妨げない高さまで上昇させる、ことを特徴とする二多段式駐車装置の運転方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明によれば、横方向に移動可能に設置された横行枠と、車両と干渉しない位置にパレットを把持可能な昇降枠と、可撓性のある紐状体(例えばチェーン)の下端に前記昇降枠を吊下げ該紐状体の下端を昇降可能な昇降駆動装置とを備えているので、(A)前記昇降枠により前記パレットを把持した状態で、該昇降枠を昇降させて、パレットを入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で昇降させることができ、さらに(B)前記パレットが前記2段目以上にあるときは、前記横行枠の移動により横行移動させることができる。
【0010】
また、(C)前記パレットが入出庫高さに位置する入出庫時に、前記昇降枠から前記パレットを分離し、パレットを入出庫高さに残したまま、前記昇降駆動装置により前記昇降枠及び紐状体を入出庫及び人の通行を妨げない高さまで上昇させることにより、入出庫高さ(FL)における車両の入出庫の際に、紐状体(チェーン等)が邪魔にならず、入出庫スペース及び人の通路スペースを広く確保することができる。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による二多段式駐車装置の正面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】本発明による二多段式駐車装置の昇降駆動装置、昇降枠、横行枠、パレットの斜視図である。
【図4】昇降枠の部分拡大図である。
【図5】図4の回転装置の矢視図である。
【図6】最上段の車両を入出庫する際の本発明による二多段式駐車装置の作動説明図である。
【図7】横行枠を有する段の車両を入出庫する際の本発明による二多段式駐車装置の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による二多段式駐車装置10の正面図であり、図2は図1の右側面図である。
この例において、二多段式駐車装置10は、同一の設置スペースに3段(1F,2F,3F)の駐車スペースが設けられた地上3段昇降横行式である。
【0014】
この例において、3段のうち1Fに位置する2つのパレット12aは、水平に横行可能であり、2Fに位置する2つのパレット12bは、横行と昇降が可能であり、3Fに位置する3つのパレット12cは、昇降のみが可能になっている。
従って、この例において、車両1の収容台数は、パレットの昇降に1台分のスペースが必要となるため、1Fに2台、2Fに2台、3Fに3台で計7台である。
以下、パレット12a〜12cを特に区別しない場合は、単にパレット12と呼ぶ。
【0015】
なお、本発明は上述した二多段式駐車装置に限定されず、それ以外の二多段式駐車装置であってもよい。
例えば、駐車スペースの段数は、二段以上であれば何段であってもよい。また、同一段の収容台数も3台に限定されず、2台以上であれば何台でもよい。
以下、図1、図2に基づき、本発明を説明する。
【0016】
車両1が入出庫する入出庫高さ(FL)は、この例で3連であり、A,B,Cの3つの入出庫部を有する。パレット12(パレット12a〜12c)の全幅はすべて同一であり、各入出庫部A,B,Cは、3つのパレット12が必要な隙間(例えば40mm以下)を隔てて互いに隣接して位置するようになっている。
【0017】
1Fに位置する2つのパレット12aは、その長さ方向両端部に車輪13aを有し、1Fに設けられた2本の水平レール14aに沿って図示しない水平駆動装置により水平に横行し、入出庫部A,B,Cのいずれかにおいて、車両1を直接入出庫させるようになっている。以下、入出庫とは、入庫と出庫を意味する。
【0018】
2Fに位置する2つのパレット12bは、昇降枠20と横行枠15によって吊り上げられている。横行枠15は、長さ方向両端部に車輪13bを有し、2Fに設けられた2本の水平レール14bに沿って図示しない水平駆動装置により水平に横行する。また、横行枠15は、パレット12bの幅方向側部に、下方向に延びる複数の揺れ防止ガイド15aを有する。また、昇降枠20は、横行枠15によって吊り上げられ、車両1と干渉しない位置で、パレット12bを把持する。そして、入出庫部A,B,Cのいずれかにおいて、車両1を直接入出庫させるようになっている。
【0019】
3Fに位置する3つのパレット12cは、昇降枠20によって吊り上げられている。昇降枠20は、二多段式駐車装置10を囲む枠である本体フレーム2によって吊り上げられ、車両1と干渉しない位置で、パレット12を把持する。そして、入出庫部A,B,Cのいずれかにおいて、車両1を直接入出庫させるようになっている。
なお、本実施形態の3Fには、横行枠15が設置されていないが、横行枠15を設置し、横行可能に構成しても良い。
【0020】
本発明の二多段式駐車装置10は、車両1が入出庫する入出庫高さ(FL)と、この入出庫高さより上方の駐車スペースとの間で車両1を載せて昇降可能なパレット12cと、昇降と横行が可能なパレット12bを有する。
この昇降可能なパレット12cには、上述した3Fに位置する3つのパレット12cが該当し、昇降と横行が可能なパレット12bには、2Fに位置する2つのパレット12bが該当する。
【0021】
本発明の二多段式駐車装置10は、さらに、昇降駆動装置16、昇降枠20、横行枠15を備える。また、横行枠15は、揺れ防止ガイド15aを有する。図3は本発明による二多段式駐車装置10の昇降駆動装置16、昇降枠20、横行枠15、パレット12の斜視図である。
【0022】
昇降駆動装置16は、車両1と干渉しない位置で鉛直に延びる可撓性のある紐状体17と、紐状体17を巻き上げ又は巻き戻しして、その下端17aを昇降させる吊り駆動装置18とを有する。
この例において、紐状体17はチェーン(又はワイヤ)であり、吊り駆動装置18はチェーン駆動装置(又はウインチ)である。
【0023】
紐状体17の下端17aは昇降枠20の上面に固定され、複数のスプロケット(又はプーリ)と噛合して回転する紐状無端リング21に他端17bが連結している。紐状無端リング21は、チェーン又はワイヤから構成される。吊り駆動装置18がチェーン駆動装置の場合、紐状体17の他端17bもしくは紐状無端リング21には図示しないカウンタバランスが設けられ、チェーン駆動装置によりチェーンと噛合するスプロケットを回転駆動する。
また、昇降駆動装置16の形態はこれに限らず、ウインチを吊り駆動装置18として使用し、紐状体17の他端17bをウインチのドラムに巻き付けて、ドラムを回転駆動してもよい。
【0024】
2F用の吊り駆動装置18は、横行枠15に固定され、横行枠15と共に水平に横行する。
3F用の吊り駆動装置18は、本体フレーム2に固定され、本体フレーム2から3つの昇降枠20をそれぞれ独立に昇降させるようになっている。
【0025】
また、この例において、4本の紐状体17(チェーン又はワイヤ)の下端17aは荷重バランスを考慮して、昇降枠20の前後の計4箇所に固定され、吊り駆動装置18により、昇降枠20を水平に保持したまま昇降するようになっている。また、対面するスプロケットを回転軸で連結することにより4つのスプロケットを同期して作動させるのが好ましい。
なお、横行枠15が水平に横行する際、昇降枠20の揺れを防止するため、横行枠15の幅方向側部には、複数の揺れ防止ガイド15aが備え付けられている。揺れ防止ガイド15aは、横行枠15の幅方向側部から、駐車状態であるときの昇降枠20の幅方向側部まで、下方向に延びており、昇降枠20の外周に僅差で接する。そして、4本の紐状体17で吊下げられた昇降枠20の振れや揺動を防止する。揺れ防止ガイド15aの形状は、矩形、円筒形等いずれの形状でも良い。
【0026】
図4は、昇降枠20の部分拡大図である。図4(A)は、昇降枠20がパレット12を把持するときの部分拡大図であり、図4(B)は、昇降枠20がパレット12を開放したときの部分拡大図である。
また、図5は、図4の回転装置28の矢視図である。図5(A)は図4(A)の回転装置28が電動シリンダとリンク機構であるときのA−A矢視図、図5(B)は図4(B)の回転装置28が電動シリンダとリンク機構であるときのB−B矢視図である。また、図5(C)は、図4(A)の回転装置28が電動シリンダとラック・アンド・ピニオンであるときのA−A矢視図、図5(D)は図4(B)の回転装置28が電動シリンダとラック・アンド・ピニオンであるときのB−B矢視図である。
【0027】
昇降枠20は、車両1と干渉しない位置で、昇降可能なパレット12bとパレット12cを把持可能に構成されている。
この例において、昇降枠20は、枠体22、昇降ガイド23a、連結軸24、把持用爪26、回転装置28を有する。
【0028】
枠体22は、この例でパレット12の上面において、車両1と干渉せずに車両1を囲む矩形リング形状の部材である。枠体22の外寸法は、昇降可能なパレット12bとパレット12cと実質的に同一であり、その内寸法は、車両1より大きくなっている。
枠体22の矩形リング形状の断面形状は、中空の矩形であるのが好ましいが、その他の断面形状、例えばH形、I形等であってもよい。
【0029】
昇降ガイド23aは、入庫時の進行方向における奥側の昇降枠20の長さ方向側部に取り付けられている。また、二多段式駐車装置10の入庫時の進行方向における奥側には、地上から鉛直に昇降レール23bが延びており、昇降ガイド23aと連結している。昇降ガイド23aは、駐車位置に昇降枠20があるときには、昇降レール23bから外れ、開放されるようになっている。すなわち、昇降レール23bは、昇降枠20の駐車位置よりも下方で途切れている。それにより、パレット12bの昇降時には昇降枠20と連結し、パレット12bの横行時には、昇降枠20が横行枠15と共に横行できるようになっている。
なお、昇降枠20の揺れを防止するため、揺れ防止ガイド15aは、昇降レール23bの上端よりも下方まで伸びていることが好ましい。
【0030】
連結軸24は、枠体22より下方に突出し、パレット12bとパレット12cの上面に設けられた把持用孔19に嵌合する。また、連結軸24の下方には、把持用孔19を通過可能な把持用爪26が、水平方向に突出した状態で固定されている。
連結軸24の水平断面形状は例えば円形であり、把持用孔19の形状は連結軸24と把持用爪26が干渉なく通過できる形状である。なお、連結軸24、把持用孔19の形状は、矩形に限定されず、円形、楕円形、三角形、台形、その他であってもよい。
また、把持用孔19は、人がその上を支障なく通過できる大きさであるのが好ましい。
また、把持用孔19の内部に、人がその上を支障なく通過できるように開閉可能な蓋を設けてもよい。
【0031】
把持用爪26は、回転装置28による長軸を中心とした連結軸24の回転に伴い回転する。
また、把持用爪26の水平断面形状は、長軸と短軸の長さが異なる矩形や楕円形、もしくは正方形が好ましい。また、把持用爪26の水平断面形状は三角形、台形、その他であってもよく、さらには、連結軸24が把持用爪26の中心を外して取り付けられているのであれば、把持用爪26の水平断面形状が円形であっても良い。すなわち、把持用爪26の水平断面形状は、昇降枠20がパレット12を把持するとき(すなわち把持用爪26が把持位置Cにあるとき)に、把持用爪26がパレット12の下面に引っかかり、昇降枠20がパレット12を開放したとき(すなわち、把持用爪26が貫通位置Oにあるとき)に、把持用爪26が把持用孔19を通過する形状であれば、いずれでも良い。また、連結軸24は、把持用爪26の中心を通過していなくても良い。
【0032】
この回転装置28は、例えば枠体22の内部又は側部に設けられた電動シリンダとリンク機構もしくはラック・アンド・ピニオンから構成される。
なお、電動シリンダとリンク機構により、4本の連結軸24を同期して作動させるのが好ましい。
【0033】
図6は、最上段の車両1を入出庫する際の本発明による二多段式駐車装置10の作動説明図である。
この例は、3Fに位置するパレット12cが入出庫高さ(FL)まで下降して、入出庫する場合であり、図6(A)は3F用のパレット12cが3Fに位置する駐車状態、図6(B)はパレット12cの昇降中、図6(C)はパレット12cにおける入出庫状態を示している。
【0034】
図6(A)に示すように、3F用のパレット12cが3Fに位置する駐車状態では、昇降枠20によりパレット12cを把持した状態で、吊り駆動装置18により、昇降枠20及び紐状体17を、パレット12cが3Fに位置する高さまで上昇させている。
この駐車状態において、3段のうち1Fに位置する2つのパレット12aは、水平に横行可能であり、2Fに位置する2つのパレット12bは、横行と昇降が可能である。
【0035】
図6(B)に示すように、3Fに位置するパレット12cを昇降させる場合には、予め下方に位置するパレット12a、12bを水平に横行させ、昇降するパレット12cの下方には他のパレットが存在しないようにしておく必要がある。
次いで、昇降枠20がパレット12cを把持した状態で、吊り駆動装置18により昇降枠20を下降させて、パレット12cを入出庫高さまで下降させる。
【0036】
図6(C)、図5(B)、図5(D)に示すように、パレット12cが入出庫高さ(FL)に位置する入出庫時に、連結軸24を回転し、把持用爪26を貫通位置Oに回転駆動して昇降枠20からパレット12cを分離する。そして、パレット12cを入出庫高さ(FL)に残したまま、吊り駆動装置18により昇降枠20及び紐状体17を入出庫及び人の通行を妨げない高さまで上昇させる。
【0037】
入出庫は、図6(C)の状態で行われる。従って、入出庫高さ(FL)における車両1の入出庫の際に、紐状体17(チェーン等)が邪魔にならず、入出庫スペース及び人の通路スペースを広く確保することができる。
【0038】
図6(C)において、パレット12cに車両1が入出庫した後、吊り駆動装置18により昇降枠20及び紐状体17を入出庫高さ(FL)まで下降させ、連結軸24を把持用孔19に挿入する。そして、図5(A)、図5(C)に示すように、把持用爪26を貫通位置Oから把持位置Cに回転駆動して、昇降枠20とパレット12aを連結する。
次いで、図6(B)の状態を経て図6(A)の駐車状態に戻る。
【0039】
図7は、横行枠15を有する段の車両を入出庫する際の本発明による二多段式駐車装置の作動説明図である。
この例は、2Fに位置するパレット12bが入出庫高さ(FL)まで下降して、入出庫する場合であり、図7(A)は2F用のパレット12bが2Fに位置する駐車状態および横行状態、図7(B)はパレット12bの昇降中、図7(C)はパレット12bにおける入出庫状態を示している。
【0040】
図7(A)に示すように、2F用のパレット12bが2Fに位置する駐車状態では、昇降枠20によりパレット12bを把持した状態で、横行枠15に取り付けられた吊り駆動装置18により、昇降枠20及び紐状体17をパレット12cが3Fに位置する高さまで上昇させている。
この駐車状態において、3段のうち1Fに位置する2つのパレット12aは、水平に横行可能である。
【0041】
2Fに位置するパレット12bを昇降させる場合には、予め下方に位置するパレット12aを水平に横行させるか、もしくは横行枠15に取り付けられた水平駆動装置を駆動させてパレット12bを水平に横行させ、昇降するパレット12bの下方には他のパレットが存在しないようにしておく必要がある。
この際、パレット12bの昇降ガイド23aは昇降レール23bから外れており、昇降枠20の揺れは、揺れ防止ガイド15aによって防止される。
【0042】
次いで、図7(B)に示すように、昇降枠20がパレット12bを把持した状態で、吊り駆動装置18により昇降枠20を下降させることにより、昇降ガイド23aを昇降レール23bに嵌める。そして、昇降ガイド23aと昇降レール23bによってガイドされながら、吊り駆動装置18により昇降枠20を下降させてパレット12bを入出庫高さまで下降させる。
【0043】
図7(C)、図5(B)、図5(D)に示すように、パレット12bが入出庫高さ(FL)に位置する入出庫時に、連結軸24を回転し、把持用爪26を貫通位置Oに回転駆動して昇降枠20からパレット12bを分離する。そして、パレット12bを入出庫高さ(FL)に残したまま、吊り駆動装置18により昇降枠20及び紐状体17を入出庫及び人の通行を妨げない高さまで上昇させる。
なお、その他の作動は、3Fに位置するパレット12cの入出庫と同様である。
【0044】
上述した本発明によれば、横方向に移動可能に設置された横行枠15と、車両1と干渉しない位置にパレット12を把持可能な昇降枠20と、可撓性のある紐状体17(例えばチェーン)の下端17aに昇降枠20を吊下げ紐状体17の下端17aを昇降可能な昇降駆動装置16とを備えているので、(A)昇降枠20によりパレット12を把持した状態で、昇降枠20を昇降させて、パレット12を入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で昇降させることができ、さらに(B)パレット12が2段目以上にあるときは、横行枠15の移動により横行移動させることができる。
【0045】
また、(C)パレット12が入出庫高さに位置する入出庫時に、昇降枠20からパレット12を分離し、パレット12を入出庫高さに残したまま、昇降駆動装置16により昇降枠20及び紐状体17を入出庫及び人の通行を妨げない高さまで上昇させることにより、入出庫高さ(FL)における車両1の入出庫の際に、紐状体17(チェーン等)が邪魔にならず、入出庫スペース及び人の通路スペースを広く確保することができる。
【0046】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 車両、2 本体フレーム、
10 二多段式駐車装置、
12、12a〜12c パレット、13a,13b 車輪、
14a,14b 水平レール、15 横行枠、15a 揺れ防止ガイド、
16 昇降駆動装置、
17 紐状体(チェーン、ワイヤ)、17a 下端、17b 他端、
18 吊り駆動装置、19 把持用孔、20 昇降枠、
21 紐状無端リング、22 枠体、
23a 昇降ガイド、23b 昇降レール、
24 連結軸、26 把持用爪、
28 回転装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースが設けられた二多段式駐車装置であって、
車両が入出庫する入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で車両を載せて昇降可能なパレットと、
2段目以上の駐車段で入出庫時の車両の進行方向に対して横方向に移動可能に設置された横行枠と、
車両と干渉しない位置で前記パレットを把持可能な昇降枠と、
前記二多段式駐車装置を囲む枠である本体フレーム又は前記横行枠に取り付けられ、車両と干渉しない位置で可撓性のある紐状体の下端に前記昇降枠を吊下げ、該紐状体の下端を昇降可能な昇降駆動装置とを備え、
(A)前記昇降枠により前記パレットを把持した状態で、該昇降枠を昇降させて、パレットを入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で昇降させ、
(B)前記パレットが前記2段目以上にあるときは、前記横行枠の移動により横行移動させ、
(C)前記パレットが入出庫高さに位置する入出庫時に、前記昇降枠から前記パレットを分離し、前記昇降駆動装置により前記昇降枠及び紐状体を入出庫及び人の通行を妨げない高さまで上昇させる、ことを特徴とする二多段式駐車装置。
【請求項2】
前記昇降枠は、前記パレットの上面において車両を囲む枠体と、
該枠体より下方に突出し長軸を中心に回転可能であり前記パレットに設けられた把持用孔を通過可能な連結軸と、
該連結軸から水平に突出し前記回転に伴って回転し貫通位置において前記把持用孔を通過し把持位置において前記パレットの下面に引っかかる把持用爪と、
前記貫通位置と前記把持位置との間で長軸を中心として前記連結軸を回転させる回転装置とを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の二多段式駐車装置。
【請求項3】
前記昇降駆動装置は、車両と干渉しない位置で鉛直に延びる紐状体と、該紐状体を巻き上げ又は巻き戻ししその下端を昇降させる吊り駆動装置とを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の二多段式駐車装置。
【請求項4】
前記横行枠は、幅方向側部から下方に突出し前記昇降枠の外周に僅差で接する揺れ防止ガイドを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の二多段式駐車装置。
【請求項5】
地上から鉛直に設けられ前記パレットの昇降時に前記昇降枠と連結し前記パレットの横行時に前記昇降枠を開放する昇降レールを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の二多段式駐車装置。
【請求項6】
同一の設置スペースに2段以上の駐車スペースが設けられた二多段式駐車装置であって、
車両が入出庫する入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で車両を載せて昇降可能なパレットと、
2段目以上の駐車段で入出庫時の車両の進行方向に対して横方向に移動可能に設置された横行枠と、
車両と干渉しない位置で前記パレットを把持可能な昇降枠と、
前記二多段式駐車装置を囲む枠である本体フレーム又は前記横行枠に取り付けられ、車両と干渉しない位置で可撓性のある紐状体の下端に前記昇降枠を吊下げ、該紐状体の下端を昇降可能な昇降駆動装置とを備え、
(A)前記昇降枠により前記パレットを把持した状態で、該昇降枠を昇降させて、パレットを入出庫高さとそれより上方の駐車スペースとの間で昇降させ、
(B)前記パレットが前記2段目以上にあるときは、前記横行枠の移動により横行移動させ、
(C)前記パレットが入出庫高さに位置する入出庫時に、前記昇降枠から前記パレットを分離し、前記昇降駆動装置により前記昇降枠及び紐状体を入出庫及び人の通行を妨げない高さまで上昇させる、ことを特徴とする二多段式駐車装置の運転方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−241381(P2012−241381A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111113(P2011−111113)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)