説明

二層ホース用カプラ

【課題】移送する流体の系外への漏洩を生じさせることなく、内外二層のホースを適宜な配管に接続する。
【解決手段】配管に連通されるべきホースがいずれも外周にらせん状のリブを有する内側ホース3と外側ホース6との二層構成であり、内側ホース3が外周に挿入されるホースシャンク21と、内側ホース3の外側に、内面のらせん状の溝によりねじ込まれるゴムスリーブ4と、このゴムスリーブ4と外側ホース6とを接続する中継スリーブ5と、外側ホース6の外周のリブ61間の谷部に巻き付けられる緊縛材7と、この緊縛材7の外側に嵌め込まれる外スリーブ8とを備え、中継スリーブ5のストレート部51をかしめることによりゴムスリーブ4と内側ホース3とがホースシャンク21に密着させられ、外スリーブ8をかしめることにより外側ホース6が中継スリーブ5のシャンク部52に密着させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の一端に取り付けられるアダプタに嵌合させ、フレキシブルホース等のホース類を前記配管に接続するホースカプラであって、特にホース内を流れる流体のホース外部への漏れを絶無とするためホースを二層とした二層ホース用カプラに関する。
【背景技術】
【0002】
固定配管と機器の中間など、配管系統内に相対変位があったり、取り付け取り外しが頻繁に行われる部分や、仮設配管等には、一般に正規の配管に代えて可撓性のあるホースが使用される。そしてホースを固定配管に接続する部分には、ワンタッチで着脱のできるカムアーム式ホースカプラが使用されることが多い。ホースカプラはシール材を除いて一般にステンレス鋼、アルミニウム、銅合金等の金属製である。カムアーム式ホースカプラの一例として特許文献1に記載されているものを図6に示す。この例ではホースを取り付けるシャンク(通称「たけのこ」)を右側のねじ部に取り付ける構造であるが、シャンクをカプラ本体と一体に構成してもよい。なお、図6において、符号1はアダプタ、符号2はカプラをそれぞれ示す。
【0003】
ホースは可撓性、保形性のそれぞれが必要とされるため、内壁のストレート部の厚みを少なくして曲がりやすくし、外側にらせん状、あるいは蛇腹状のリブを設けて剛性を補った構造の可撓管が使用され、必要に応じて外周にさらにステンレス鋼線の編組体で構成された保形層を積層する場合もある。
【0004】
また、特許文献2には、両端に管継手を備えるこのような通常のホースの外周に、さらに可撓性の断熱層と保形ジャケットからなる外層を被せて二層構造としたホース(断熱可撓管)が記載されている。
【0005】
これは、燃料油を移送する送油管の場合、国際規格に基づく耐火テストが義務づけられており、外層で被覆することによって作業性や経済性を損なわずに耐火性を向上させることを目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−47431号公報
【特許文献2】実用新案登録第3166854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献2に記載された耐熱可撓管は、最も内周側の可撓管の端部を、継手となっている内側管体のスリーブに嵌合させ、その外側に外側管体のスリーブを嵌め込んで、これら二つのスリーブの間に形成された環状溝に差し込んだ状態で固定している。その可撓管の外周側を覆っている可撓断熱層における第1断熱材の端部は、上記の外側管体のスリーブに嵌合させ、その外周側に抜け止めリングで締め付けて外側管体のスリーブに取り付けられている。この第1断熱材の外周側を覆っている第1可撓保形層を構成している可撓保形ジャケットの端部は、上記の外側管体に形成されているフランジの外周側に嵌合させられ、その嵌合部分に嵌め込んだ第1リングで締め付けることによりそのフランジに取り付けられている。したがって、上記の抜け止めリングは、可撓保形ジャケットに覆われ、その内側に隠れた状態になっている。
【0008】
さらに、上記の第1可撓保形層の外周側を覆っている第2可撓保形層における可撓保形ジャケットの端部は、上記の第1リングの外周側に嵌め込まれ、その嵌合部分の外周側に第2リングを嵌め込んで締め付けることにより固定されている。そして、これら第1および第2のリングは、それぞれの内周側に挟み付けている部材の端部と併せて溶接されて一体化されている。
【0009】
このように、特許文献2に記載された耐熱可撓管は、耐熱性および保形性を確実なものとすることを目的として複数層の構造になっているが、可撓管や各保形層を構成している環状部材の端部を管継手に連結するための固定部は、上述したように、外側管体のスリーブやフランジであり、しかも可撓管の固定部分を第1断熱材が覆っているなど、構造が複雑であり、そのために製造もしくは連結のための作業性に難点がある。
【0010】
この発明は上記の技術的課題に着目し、内外二層の各ホースの端部を確実かつ容易に連結できる、構成の簡単なカプラを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、配管の一端に取り付けられたアダプタに嵌合させてホースを前記アダプタに接続する二層ホース用カプラであって、前記ホースがいずれも外周にらせん状のリブを有する内側ホースと外側ホースとの二層構成であり、前記内側ホースが外周に挿入されるホースシャンクと、前記内側ホースの外側に、内面のらせん状の溝によりねじ込まれるゴムスリーブと、このゴムスリーブと前記外側ホースとを接続する金属製の中継スリーブと、前記外側ホースの外周のリブ間の谷部に巻き付けられる緊縛材と、この巻き付けられた緊縛材の外側に嵌め込まれる金属製の外スリーブとを備え、前記中継スリーブのストレート部をかしめ加工することにより前記ゴムスリーブと前記内側ホースとが前記ホースカプラのホースシャンクに密着させられ、前記外スリーブをかしめ加工することにより前記外側ホースが前記中継スリーブのシャンク部に密着させられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の構成において、前記中継スリーブは、前記ゴムスリーブの外側に被せられる小径のストレート部と前記外側ホースが外周に挿入される大径のシャンク部とからなる段付き円筒状に形成されていることを特徴とする二層ホース用カプラである。
【0013】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または2の構成において、前記外側ホースは、前記内側ホースよりも軟質で、かつ透明度の高いものであることを特徴とする二層ホース用カプラである。
【発明の効果】
【0014】
ホースから外部への流体の漏洩は、第1にホース部分の劣化によるピンホール、クラック等からの漏れ、第2にホースとカプラとの接続部分からの漏れである。本発明ではホースを二層構成とすることによりホース自体からの漏れを防止し、カプラ部分を上記の構成とすることによりカプラとの接続部分からの漏れをなくして課題を達成した。すなわち本発明によれば、流体を移送する内側ホースから外部への漏洩があっても、外側ホースによってシールされている空間内へ漏洩するのみで系外へ漏れ出ることがなく、またカプラとの接続部分は二段階のかしめ加工を行うことによりほぼ完全な漏洩防止を実現し、流体移送における安全性を高め信頼性を向上させるという、すぐれた効果を奏する。さらに、中継スリーブのストレート部が内側ホースの締め付け部となり、また中継スリーブのシャンク部が外側ホースの嵌合部となっていて、中継スリーブがこのような二つの機能を兼ねるので、全体としての構成を簡素化することができるうえに、接続のための作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る二層ホース用カムアーム式ホースカプラの要部を示す断面図である。
【図2】そのゴムスリーブの断面図である。
【図3】その組み立て段階における状態を示す斜視図である。
【図4】その組み立て段階における他の状態を示す斜視図である。
【図5】その組み立て段階における更に他の状態を示す斜視図である。
【図6】従来知られているカムアーム式ホースカプラを一部断面で示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面により説明する。
【0017】
図1は本発明に係る二層ホース用カムアーム式ホースカプラ2の断面図であり、カプラ2の一端に設けられたホースシャンク21に内側ホース3が嵌め込まれ、その外側の中継スリーブ5のシャンク部51には外側ホース6が接続されてホースは二層構成になっている。内側ホース3のいわゆる本体部分は例えば軟質PVC(ポリ塩化ビニル)によって構成され、また外側ホース6のいわゆる本体は透明な軟質PVCによって構成されている。流体の圧力等によってホースが伸縮する場合も、内外ホース3,6は同調して伸縮する。また外側ホース6の許容曲げ半径を内側ホース3のそれよりも小さくする(外側ホース6の方を軟らかくする)ことで、外側ホース6が内側ホース3の曲がりを妨げないようにする。内側ホース3、外側ホース6はいずれも外周にらせん状のリブ31,61を有する。リブ31,61は硬質樹脂である。図1に示す構成の詳細については追って説明する。
【0018】
内側ホース3の先端部、すなわちホースシャンク21に被せられる部分には、外側にゴムスリーブ4が嵌められている。ゴムスリーブ4は図2に示すように内面にらせん溝41が形成され、このらせん溝41は内側ホース外面のらせんリブ31に対応する形状となっているので、らせんに沿ってねじこむことにより内側ホース3の外周に密着して嵌めることができる。ゴムスリーブ4は軟質ゴムの成形品などが好ましい。嵌める際、必要に応じて内面に液状のシール材を塗布してもよい。
【0019】
図3は、先端にゴムスリーブ4を嵌めた内側ホース3をカプラ2のホースシャンク21に嵌めようとする段階の斜視図である。ゴムスリーブ4の後方には、以下続いて説明する中継スリーブ5が控えている。
【0020】
金属製の中継スリーブ5は、ゴムスリーブ4の外側に被せられる小径のストレート部51と、外側ホース6が外周に挿入される大径のシャンク部52とからなる段付き円筒状のものである。中継スリーブ5の役割は、ストレート部51で内側ホース3とホースシャンク21との接合部をすきまなく固定し、シャンク部52で外側ホースをカプラ2に接合することである。この二つの機能を有するものであれば、段付き円筒状でなくともよい。
【0021】
内側ホース3をホースシャンク21に嵌め込んだら、その外側に中継スリーブ5のストレート部51をかぶせ、図4の斜視図に示すように、この段階でストレート部51をかしめ装置にかけて外径を締め込む。
【0022】
かしめ加工は、複数に分割した駒(図示せず)を外周に当て、中心に向けて絞り寄せることで被加工物の外径を強い力で僅かに縮小させる。これにより、ゴムスリーブ4と内側ホース3とはホースシャンク21に密着するから、ホースシャンク21の部分から外部への漏洩をほぼ完全に防止することができる。
【0023】
続いて中継スリーブ5のシャンク部52に外側ホース6を嵌め、外側ホース6のシャンク部52に被っている部分の外周のリブ61間の谷部に、緊縛材(例えばゴムひも7)を巻き付ける。ゴムひも7はらせんリブ61による谷間を埋め、この後に行うかしめ加工における力の作用点を分散して変形が局部に集中することを防ぐ。したがって緊縛材は上記のゴムひも7以外に、単なる紐でも、細長いシートでも、らせん状の成形品でもよい。
【0024】
続いてゴムひも7の外側に金属製の外スリーブ8を嵌める。この状態を図5に示す。そして外スリーブ8をかしめ装置にかけて外径を締め込む。この2回目のかしめ加工により、外側ホース6は中継スリーブ5に密着し、取り付け部分のすきまは完全になくなる。
【0025】
以上で本発明のホースカプラ2と中継スリーブ5とによる二層のホースの接続は完成し、その断面構造は図1に示すようになる。このような本発明の構成によれば、中継スリーブ5が、内側ホース3を固定するための機能と、受け部として外側ホース6を嵌合させる機能とを備え、しかもこれらの機能を奏する部分が軸線方向にずれていて、内外の各ホース3,6を固定する部分が外部に露出するので、全体としての構成が簡素化され、かつ各ホース3,6の接続作業性を向上させることができる。
【0026】
かしめ加工が完全であれば内側ホース3の先端部からカプラ2の外部への漏れはないものと考えられるが、ホースそのもののピンホール、クラック等により漏洩する可能性は否定できない。その場合、流体は内側ホース3と外側ホース6との間の空間A内に侵入する。本発明では2回目のかしめ加工によりシャンク部52で外側ホース6を密着させているから、空間Aから外部への漏洩も防止できる構造である。さらに外側ホース6を透明度の高いものとすることにより空間A内における流体の漏洩を早期に発見できる。また外側ホース6を軟質のものとすることで、流体が気体である場合にも、空間Aのふくらみや圧力測定で流出を検知できる。
【0027】
なお、ホースの両端に口金を取り付ける際,内側ホース3と外側ホース6の長さを合わせる必要がある。手順として外側ホース6への口金取り付けが後になるので、外側ホース6は最初はやや長めに切断しておいてまず片側を取り付け、残りの側を取り付ける時点で長さを合わせて再切断し、口金を取り付けるようにする。
【符号の説明】
【0028】
2…カプラ、 21…ホースシャンク、 3…内側ホース、 31,61…リブ、 4…ゴムスリーブ、 41…らせん溝、 5…中継スリーブ、 51…ストレート部、 52…シャンク部、 6…外側ホース、 7…ゴムひも、 8…外スリーブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の一端に取り付けられたアダプタに嵌合させてホースを前記アダプタに接続する二層ホース用カプラであって、
前記ホースがいずれも外周にらせん状のリブを有する内側ホースと外側ホースとの二層構成であり、
前記内側ホースが外周に挿入されるホースシャンクと、
前記内側ホースの外側に、内面のらせん状の溝によりねじ込まれるゴムスリーブと、
このゴムスリーブと前記外側ホースとを接続する金属製の中継スリーブと、
前記外側ホースの外周のリブ間の谷部に巻き付けられる緊縛材と、
この巻き付けられた緊縛材の外側に嵌め込まれる金属製の外スリーブと
を備え、
前記中継スリーブのストレート部をかしめ加工することにより前記ゴムスリーブと前記内側ホースとが前記ホースカプラのホースシャンクに密着させられ、
前記外スリーブをかしめ加工することにより前記外側ホースが前記中継スリーブのシャンク部に密着させられている
ことを特徴とする二層ホース用カプラ。
【請求項2】
前記中継スリーブは、前記ゴムスリーブの外側に被せられる小径のストレート部と前記外側ホースが外周に挿入される大径のシャンク部とからなる段付き円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の二層ホース用カプラ。
【請求項3】
前記外側ホースは、前記内側ホースよりも軟質で、かつ透明度の高いものであることを特徴とする請求項1または2に記載の二層ホース用カプラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92169(P2013−92169A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232922(P2011−232922)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(504210433)フルネスジャパン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】