説明

二層構造蓋の製造方法

【課題】 外層の内面に残った注入痕が明瞭に見えてしまい、二重構造蓋の高級感のある外観を損なわれていた。
【解決手段】 所定の高分子組成を有する透明な原料樹脂を二組に分け、その一方を外層樹脂、他方を内層樹脂とし、外層樹脂で形成された外層の内面と内層金型との間隙に、溶融した内層樹脂を注入し、注入した内層樹脂からの顕熱によって外層の内面を軟化することにより、内層樹脂と外層との界面を平坦化した後、注入された内層樹脂を冷却して固化し、内層を形成することによりなる二層構造蓋の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容液等の保存に用いられる容器本体の口部を閉塞するために用いられる蓋の製造方法に関するものであって、特に外層と内層とからなる二層構造を備えた蓋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美容液等の保存に用いられる容器用の蓋は、美容液等の劣化を防ぐために外気を遮断する機能以外に、外観に高級感を備えることによって購入者の購買意欲を高める機能も有する。蓋が高級感のある外観を備えるためによく用いられる従来技術として、着色された樹脂で射出成形した内層部分と、透明な樹脂で射出成形した外層部分とを嵌め合わせることによって着色された内層と透明な外層とを有する二層構造の蓋を形成する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−62820
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、均一な射出を行うために、金型の中央に貫通して設置されたライナーを通して溶融樹脂を注入するセンターゲート方式を用いるため、樹脂を冷却して固化しライナーを離脱させると、ライナーの注入口に近接していた樹脂の部分が、盛り上り又は切れ残りによる注入痕として残る。そうして形成した透明な外層を内層に嵌め合わせると蓋外部から外層の内面に残った注入痕が明瞭に見えてしまい、高級感のある外観を損なうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、前記課題を解決するため、本発明に係る二層構造蓋の製造方法は、外層と内層の二層構造からなる蓋の製造方法であって、所定の高分子組成を有する透明な原料樹脂を二組に分け、その一方を外層樹脂、他方を内層樹脂とし、内層樹脂は原料樹脂に着色料が混合されてなり、外層樹脂を第一シリンダーに充填する工程と、内層樹脂を第二シリンダーに充填する工程と、外層の外面を囲む移動金型と、外層の内面を囲み第一シリンダーに連通するランナーを中央に備えた外層金型との間隙に、溶融した外層樹脂を第一シリンダーから注入する工程と、注入された外層樹脂を冷却して固化し、外層を形成する工程と、外層から外層金型を離型させた後、外層が付属した移動金型に、外層の内面との間に間隙を形成して、内層の内面を囲む内層金型を嵌合する工程と、外層の内面と内層金型との間隙に、溶融した内層樹脂を第二シリンダーから内層金型の中央に備えられたランナーを介して注入する工程と、注入した内層樹脂からの顕熱によって外層の内面を軟化することにより、内層樹脂と外層との界面を平坦化した後、注入された内層樹脂を冷却して固化し、内層を形成する工程とからなることを特徴とする。
【0006】
本発明によって製造される蓋は、容器本体の口部を閉塞するために用いられる蓋であって、内面が凹形に形成されており、該凹形部の内面が容器本体の口部に密着することによって容器本体を閉塞することができるものである。
【0007】
外層樹脂と内層樹脂は、所定の高分子組成を有する原料樹脂を二組に分けて形成されており、同じ高分子組成を備えるものである。但し、分子量の違いは組成の同一性を損なうものではない。同じ高分子組成を備えることによって、外層の内面中心部に残存していた樹脂の注入痕を、後の工程で注入される溶融状態の内層樹脂の顕熱を用いて軟化させ、平坦化させることができる。また、高分子組成が同じであることから、固化後の内層の熱収縮により生ずる内層と外層の界面の歪みを最小限に抑制し、内層と外層との剥がれを防止することができる。
【0008】
原料樹脂は透明であり、好ましくはポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂、またはメタクリル樹脂(PMMA)を用いることがよい。原料樹脂が透明であることによって、分けられた原料樹脂をそのまま外層樹脂として用いて外層を透明に形成することができる。但し、原料樹脂は着色された透明であってもよい。
【0009】
外層樹脂は上述のように原料樹脂をそのまま使用することができ、一方、内層樹脂は原料樹脂に着色料を混合してなる。内層樹脂には着色料が混合されることによって原料樹脂と比較して透光性が50%以下となることが好ましく、より好ましくは完全に不透明に形成されることがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来外層の内面中心部に残存していた樹脂の注入痕が目立たなくなり、高級感のある外観を保持した二重構造蓋を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】外層12を形成するために移動金型7と外層金型8を嵌合した状態を示す概略図である。
【図2】外層間隙10に外層樹脂11を注入した状態を示す概略図である。
【図3】外層12の形成後、並進盤4と共に回転盤3を後方へ移動させた状態を示す図である。
【図4】内層17を形成するために移動金型7と内層金型9を嵌合した状態を示す概略図である。
【図5】内層間隙15に内層樹脂18を注入した状態を示す概略図である。
【図6】移動金型7が離型し、二層構造蓋24が内層金型9に付属した状態を示す概略図である。
【図7】工程が完了し、凸部9aを軸回転させて二層構造蓋24を取り出す状態を示す概略図である。
【図8】外層金型8から離型した外層12の概略図と、外層内面121と注入痕122の拡大図である。
【図9】内層間隙15に溶融した内層樹脂18を注入して外層12と内層樹脂18の界面が平坦化された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係る実施の形態について図面に基づきながら詳しく説明する。
【0013】
図1から図7は、二層構造蓋の製造装置1の構成及びその機能を説明する図である。
【0014】
図3を参照して説明すると、射出成形機2には、金型を取り付け可能な回転盤3及び固定盤6が対向位置に設置されている。回転盤3は、回転駆動源Rによって、公転軸3aを中心として軸回転可能に設置されている。回転盤3の前方(図1から図7において右方向)には、回転盤3の前面と固定盤6の後面が対面するように固定盤6が設置されている。
【0015】
回転盤3の後面には並進盤4が設置されている。並進盤4の外縁部にはタイバー5が前後方向に挿通されており、並進盤4は並進駆動源Sを駆動することによって、前後に並進可能であり、回転盤3は並進盤4に追随して前後に並進する。固定盤6に取付けられた金型に対して回転盤3に取付けられた金型の嵌合および離型はこの並進運動により行われる。
【0016】
回転盤3の前面には一対の移動金型7、7が設置されており、一対の移動金型7、7は回転盤3を半回転させることにより互いの位置を入れ替えることができる。
【0017】
一方、固定盤6の後面には外層金型8と内層金型9が前記一対の移動金型7、7に対応する位置にそれぞれ設置されている。従って外層金型8と内層金型9は、回転盤3を並進盤4と共に前方へ併進させて回転盤3と固定盤6とを近接させることにより、図2、図4に示すように、一対の移動金型7のそれぞれと同時に嵌合することができる。
【0018】
移動金型7は、回転盤3に設置された状態で前方に向かって開放された凹形状の内面を有する金型であり、外層金型8及び内層金型9と嵌合することができるものである。当該凹形状の内面が外層12の外面を囲むように形成されている。
【0019】
外層金型8は、二層構造蓋24の外層12の内面を形成するための金型であり、図1に示すように移動金型7と嵌合することができるものである。外層金型8と移動金型7は、互いに嵌合すると外層金型8と移動金型7との間に外層間隙10が形成される。外層間隙10に溶融した外層樹脂11が注入されると外層樹脂11が外層12として形成される。なお、外層樹脂11の注入は、固定盤6の前方に設置された第一シリンダー13内で加熱溶融され、固定盤6のランナー6a及び外層金型8の中央に形成された第一ランナー14を介して外層間隙10に注入される。
【0020】
内層金型9は、二層構造蓋24の内層17の内面を形成するための金型である。内層金型9は、固定盤6に設置された場合に後方に向かって凸形状を有し、凸部9a、凸部9aの周縁部に設置された底部9b及び、凸部9aに接続された回転受部9cより構成されている。該凸部9aの周面には二層構造蓋24のネジ部を形成するためのネジ構造が螺旋状に形成されている。凸部9aは固定盤6の後面に対して垂直に形成されている。
【0021】
また、内層金型9の凸部9aは、凸部9aの中心を自転軸として軸回転可能に設置されている。一方、底部9bは固定盤6に固定されている。また、凸部9aに接続される回転受部9cは、後述するネジ抜取り機構20に接続されており、該ネジ抜取り機構20の駆動により回転受部9cを軸回転させることにより凸部9aに回転運動を伝達することができる。当該軸回転により、二層構造蓋24の形成後、内層金型9と二層構造蓋24とを離型させることができる。
【0022】
内層金型9は、二層構造蓋24の内層17の内面を形成するための金型であり、図3に示す下側の移動金型7と嵌合することができるものである。図4に示すように内層金型9と移動金型7は、移動金型7の内面に外層12が付属した状態で嵌合すると該外層12の内面と内層金型9との間に内層間隙15を形成するように構成されている。内層間隙15に、溶融した内層樹脂16が注入されると、内層樹脂16が外層樹脂11の内側に密着した状態で内層17が形成される。なお、内層樹脂16の注入は、固定盤6の前方に設置された第二シリンダー18内で加熱溶融され、固定盤6のランナー6b及び内層金型9の中央に形成された第二ランナー19を介して内層間隙15に注入される。
【0023】
第二ランナー19は、内層金型9の軸中心を貫通して形成されている。
【0024】
固定盤6の下方にはネジ抜取り機構20が設置されている。ネジ抜取り機構20は、モーター21、回転伝達部22、及び回転軸23を備えて構成されるものである。回転伝達部22は、モーター21の回転を受けて直接的に回転するものである。回転軸23の下端部は回転伝達部22に接続され、回転軸23の上端部は内層金型9の底部9b内に挿入され、回転受部9cと軸回転自在に接続されている。
【0025】
モーター21が軸回転すると回転伝達部22、及び回転軸23が軸回転し、回転軸23の軸回転を受けて回転受部9cが軸回転する。上述のように回転受部9cの軸回転は凸部9aに伝達されるため、モーター21の軸回転を凸部9aに伝達することができ、この軸回転によって、図5に示すように内層金型9から二層構造蓋24を取り出すことができる。
【0026】
次に、本発明に係る二層構造蓋24を製造する方法の工程について説明する。
【0027】
本実施例で作製する二層構造蓋24は、透明又は着色された透明である外層12及び着色されて不透明な内層17の二層からなる樹脂製の蓋であり、二層構造蓋24の内面にはネジ構造が形成されている。外層12を形成する樹脂である外層樹脂11と、内層を形成する樹脂である内層樹脂16は、ポリプロピレン樹脂を原料樹脂Pとしており、当該原料樹脂Pを二組に分けた一方を外層樹脂11とした。外層樹脂11は透明、又は微量の着色剤を混合することによって着色された透明としたポリプロピレン樹脂である。そして、他方の原料樹脂Pに着色剤を混合して不透明に加工したものを内層樹脂17とした。
【0028】
まず、外層樹脂11を第一シリンダー13に充填し、第一シリンダー13内で外層樹脂11を加熱し溶融させる。一方、内層樹脂17も第二シリンダー18へ充填され、外層樹脂11と同じく加熱により溶融される。
【0029】
図1に示すように回転盤3に移動金型7を設置し、固定盤6の後面上に外層金型8及び内層金型9を設置した後、並進盤4と共に回転盤3を前方に移動させて、回転盤3と固定盤6とを近接させることにより外層金型8を移動金型7に嵌合させる。
【0030】
嵌合した移動金型7と外層金型8との間には外層間隙10が形成される。
【0031】
図2に示すように、形成された外層間隙10に溶融した外層樹脂11を、第一シリンダー13から固定盤6のランナー6a及び外層金型8の中央に形成された第一ランナー14を介して注入する。
【0032】
続いて外層金型8の冷却により外層12を冷却して固化し、外層2を形成する。
【0033】
次に、図3に示すように並進盤4と共に回転盤3を後方へ移動させ、前記外層12を前記移動金型7の内面に付属させたまま外層金型8から離型する。
【0034】
ここで、外層12が外層金型8から離型する際に、外層12の外層内面121の一部であって、第一ランナー14の注入口141と接触していた部分に、図8に示すような注入痕122が形成される。注入痕122は図8の拡大図に示すように、外層内面121の表面から突出して形成される。
【0035】
続いて回転盤3を軸回転により半回転させて移動金型7及び外層12を搬送する。
【0036】
さらに並進盤4と共に回転盤3を前方に移動させて、図4に示すように回転盤3と固定盤6とを近接させることにより移動金型7を内層金型9に嵌合させる。
【0037】
この時、外層12と内層金型9との間に内層間隙15が形成される。
【0038】
図5に示すように内層間隙15に溶融した内層樹脂16を、第二シリンダー18から固定盤6のランナー6b及び内層金型8の中央に形成された第二ランナー19を介して注入する。
【0039】
溶融した内層樹脂16を注入することによって、ポリプロピレンの融点以上の顕熱を外層12の外層内面121及び注入痕122に伝熱させる。これにより外層内面121及び注入痕122を融点以上まで昇温させ、軟化させる。軟化した注入痕122は、溶融状態の内層樹脂16とともに平坦化しようとする応力を受けて注入痕122の周辺方向へ広がる。その結果、図9の拡大図に示すように注入痕122は平坦化部123となり、外層内面121との高低差が小さくなることにより内層樹脂16と外層12との界面が平坦化する。
【0040】
続いて内層金型9の冷却により内層17を冷却し固化する。
【0041】
並進盤4と共に回転盤3及び移動金型7を後方へ移動させることにより、外層12及び内層17を内層金型9に付属させたまま移動金型7を離型し(図6)、図7に示すように内層金型9の凸部9aに接続したネジ抜取り機構20の駆動によって凸部9aを軸回転させ、内層金型9を内層17から離型することで、外層12及び内層17とからなる二層構造蓋24の製造工程を完了する。
【0042】
完成した二層構造蓋24は、透明な外層12を通して外層12と内層17との界面を見ても、外層内面121に形成されていた注入痕122がほとんど確認できなくなっており、蓋の美感の向上を達成できた。
【符号の説明】
【0043】
1 二層構造蓋の製造装置
2 射出成形機
3 回転盤
6 固定盤
7 移動金型
8 外層金型
9 内層金型
10 外層間隙
11 外層樹脂
12 外層
15 内層間隙
16 内層樹脂
17 内層
20 ネジ抜き取り機構
24 二層形成蓋
121 外層内面
122 注入痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層と内層の二層構造からなる蓋の製造方法であって、
所定の高分子組成を有する透明な原料樹脂を二組に分け、その一方を外層樹脂、他方を内層樹脂とし、内層樹脂は原料樹脂に着色料が混合されてなり、
外層樹脂を第一シリンダーに充填する工程と、
内層樹脂を第二シリンダーに充填する工程と、
外層の外面を囲む移動金型と、外層の内面を囲み第一シリンダーに連通するランナーを中央に備えた外層金型との間隙に、溶融した外層樹脂を第一シリンダーから注入する工程と、
注入された外層樹脂を冷却して固化し、外層を形成する工程と、
外層から外層金型を離型させた後、外層が付属した移動金型に、外層の内面との間に間隙を形成して、内層の内面を囲む内層金型を嵌合する工程と、
外層の内面と内層金型との間隙に、溶融した内層樹脂を第二シリンダーから内層金型の中央に備えられたランナーを介して注入する工程と、
注入した内層樹脂からの顕熱によって外層の内面を軟化することにより、内層樹脂と外層との界面を平坦化した後、注入された内層樹脂を冷却して固化し、内層を形成する工程とからなる
ことを特徴とする二層構造蓋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−31538(P2011−31538A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181287(P2009−181287)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(390003609)株式会社クニムネ (11)
【Fターム(参考)】