説明

二成分現像剤

【課題】単純な構成で長期間の使用においても攪拌後のトナーの帯電量分布の変化量が少なく、長期間にわたって安定した画質を維持する。
【解決手段】感光体ドラム10に供給されるべきトナー5Bと、磁性材料からなるコア材をコート剤で被覆し、トナー5Bと攪拌される3種類のキャリア5AA〜5ACとから二成分現像剤5を形成する。3種類のキャリア5AA〜5ACのそれぞれは、キャリア5AA〜5ACの攪拌後におけるトナー5Bの帯電量分布曲線がピークの帯電量より大きい値として予め設定された所定の帯電量P以上での傾きが所定の帯電量P未満での傾きよりも緩やかな形状となるようにコート剤の帯電特性及び含有量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置等に備えられる像担持体に供給されるトナーと、このトナーを攪拌帯電させて搬送するキャリアとからなる二成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリアとトナーとからなる二成分現像剤を使用する二成分現像方式の画像形成装置は、特に高速機やフルカラーのプリンタ及び複写機に用いられる。二成分現像方式の画像形成装置においては、まず現像装置内においてキャリアとトナーとを攪拌・混合してトナーを帯電させ、帯電によりトナーをキャリアの粒子の周りに付着させる。この状態で、磁石を内蔵した現像スリーブの外周面にキャリアを磁気吸着させる。これにより、現像スリーブの外周面上にキャリア及びトナーからなる磁気ブラシが形成される。
【0003】
その後、現像スリーブを回転させて、現像バイアスを印加した磁気ブラシを静電潜像が形成されている感光体ドラムの表面の接近位置または接触位置にまで搬送する。これにより、磁気ブラシ中のトナーが静電潜像に静電吸着し、静電潜像が現像される。
【0004】
したがって、画像形成での長期間の使用において安定した画質を維持するためには、トナーの帯電量が一定となるようにすることが重要である。
【0005】
ところが、図4に示すように現像装置内の画像形成に使用する二成分現像剤における攪拌後のトナーの帯電量分布Aに対し、所定枚数(例えば1000枚)の用紙への画像形成に使用した二成分現像剤における攪拌後のトナーの帯電量分布Bは変化量が大きい。しかも、所定の帯電量P以上の帯電量のトナーについても変化量(斜線部分M)が大きい。
【0006】
所定の帯電量P以上の帯電量を有するトナーは、帯電量が大きいのでクーロン力が強く作用し、感光体ドラムに吸着されずに現像スリーブに付着したままの状態となるので、感光体ドラムに供給されない(現像に用いられない)。このため、所定の帯電量P以上の帯電量を有するトナーが多いと画像濃度が低下する。
【0007】
そのため、所定の帯電量P以上におけるトナーの帯電量分布の変化量(斜線部分M)が大きいと、画質が大きく変化してしまう。つまり、図4に示す帯電量分布Aの状態から帯電量分布Bの状態に変化すると、現像に用いられない所定の帯電量P以上の帯電量を有するトナーの量(個数)が減少し、所定の帯電量P未満の帯電量を有する現像に用いられるトナーの量が増大し、画像濃度が大きく上昇して画質も大きく変化する。これは長期間の使用によってトナーやキャリアが劣化する等の原因によるものである。
【0008】
そこで、近年の画像形成装置には、キャリアの材料や構成比率、粒径等を変更することで長期間にわたって安定した画質の画像形成を行えるような二成分現像剤を用いる構成のものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−171153号公報
【特許文献2】特開平10−232513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1,2の構成では、構成比率、粒径等によりキャリアの構成が複雑となるので製造工程も複雑になり、コストアップしてしまう。
【0010】
この発明の目的は、単純な構成で画像形成での長期間の使用においても攪拌後のトナーの帯電量分布の変化量が少なく、長期間にわたって安定した画質を維持することができる二成分現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を備えている。
【0012】
(1)像担持体に供給されるべきトナーと、
磁性材料からなるコア材をコート剤で被覆し、前記トナーと攪拌される複数種類のキャリアと、からなり、
前記複数種類のキャリアのそれぞれは、キャリアの攪拌後における前記トナーの帯電量分布曲線がピークの帯電量より大きい値として予め設定された所定の帯電量以上での傾きが該所定の帯電量未満での傾きよりも緩やかな形状となるようにコート剤の帯電特性及び含有量を決定したことを特徴とする。
【0013】
この構成においては、二成分現像剤を構成する複数種類のキャリアのそれぞれにおけるコート剤の帯電特性及び含有量が、トナーの帯電量分布曲線におけるピークの帯電量が所定の帯電量未満であり、該所定の帯電量以上での傾きが該所定の帯電量未満での傾きよりも緩やかとなる形状になるように決定されている。
【0014】
したがって、長期間の使用によっても、攪拌後のトナーの帯電量分布について、画像形成に使用する前と画像形成に使用された後との変化量が従来の二成分現像剤におけるトナーよりも小さくなる。
【0015】
(2)前記複数種類のキャリアは、前記コート剤の組成成分の比率が互いに異なることを特徴とする。
【0016】
この構成においては、コート剤の組成成分の比率が互いに異なる複数種類のキャリアが二成分現像剤に含まれている。複数種類のキャリアは組成成分の比率のみが異なるので、同様の製造工程で製造される。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0018】
(1)キャリアの攪拌後のトナーの帯電量分布曲線におけるピークの帯電量を所定の帯電量未満とし、所定の帯電量以上での傾きが所定の帯電量未満での傾きよりも緩やかとなる形状を描くようにコート剤の帯電特性及び含有量が互いに異なる複数種類のキャリアを用いることによって、長期間の使用によっても、攪拌後におけるトナーの帯電量分布の変化量を従来の二成分現像剤におけるトナーよりも小さくできるので、画像形成における安定した画質を長期間にわたって維持することができる。
【0019】
(2)コート剤の組成成分の比率が互いに異なる複数種類のキャリアを用いることによって、同様の製造工程で製造できるので、複数種類のキャリアであっても容易に製造できる。また、製造設備等の増大を防止できるので、コストアップを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、この発明の実施形態に係る二成分現像剤を備えた画像形成装置の一部の構成を示す拡大図である。画像形成装置100は、感光体ドラム(本発明の像担持体に相当する。)10、現像装置20等を備え、画像データに基づいて形成したトナー像を用紙に転写することで用紙に画像を形成する。
【0021】
現像装置20は、現像槽20A内に攪拌ローラ21、現像スリーブ22等を備え、現像槽内20Aに収容された二成分現像剤5を用いて感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像を現像する。攪拌ローラ21は、回転によって二成分現像剤5を構成するキャリア5A及びトナー5Bを攪拌・混合しつつ、現像スリーブ22に搬送する。この時、トナー5Bは、キャリア5Aとの攪拌・混合によって帯電され、キャリア5Aの周辺に付着した状態で現像スリーブ22に搬送される。
【0022】
現像スリーブ22は、回転自在なローラの内部に磁石を備え、外周面にトナー5Bが付着した状態のキャリア5Aを磁気吸着させて磁気ブラシを形成する。また、現像スリーブ22は、図示しない現像バイアス電源に接続されている。現像バイアス電源は、現像スリーブ22の外周面上の二成分現像剤5に現像バイアス電圧を印加する。
【0023】
また、現像スリーブ22は、回転によって、現像バイアスが印加された状態の二成分現像剤5を空隙を設けて感光体ドラム10に対向する現像領域Yに搬送する。この時、トナー5Bは、現像領域Yにおいて感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像に静電吸着してトナー像を形成する。感光体ドラム10は、表面に形成されたトナー像を用紙に転写する。感光体ドラム10と現像スリーブ22との間に設けた空隙は、現像スリーブ22の外周面上を搬送される二成分現像剤5が感光体ドラム10の表面に接触する程度の間隔で形成されている。
【0024】
キャリア5Aは、コア材及びコート剤等から構成されている。コア材は、キャリア5Aの芯材であり、磁性材料で構成されている。磁性材料としては、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属やマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の合金あるいは化合物等がある。
【0025】
コート剤は、コア材の表面全体を被覆(コーティング)する。コート剤としては、シリコーン系樹脂(シリコーン樹脂及びその誘電体)、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フェノール系樹脂等があり、これらを単独、組み合わせて使用する、または共重合体として使用する。また、コート剤は、使用する樹脂やキャリア5Aに対する重量比等によってキャリア5Aの帯電特性を変化させる。
【0026】
コート剤をコア材にコーティングする方法としては、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、フローコーターを用いる流動スプレーコーティング法等がある。コート剤をコーティングした後は、被腹膜の硬化及び乾燥を行うが、加熱、あるいは加熱及び加湿を行えば速やかにコート剤の硬化・乾燥を行うことができる。
【0027】
また、現像槽20A内のキャリア5Aは、3種類(5AA〜5AC)で構成されている。各キャリア5AA〜5ACは、同一のコア材を有し、コート剤の組成成分の比率が互いに異なるように形成されている。また、これらのキャリア5AA〜5ACは、キャリア5A全体に対する数量の比率(含有量)が異なっている。
【0028】
現像槽20A内において、トナー5Bをキャリア5AA〜5ACを用いて攪拌すると、図2に示すような帯電量分布となる。このような帯電量分布となるのは、各種類のキャリア5AA〜5ACの帯電特性がトナー5Bの帯電量に影響を与えるためであり、また各種類のキャリア5AA〜5ACの現像槽20A内の含有量によってもトナーの帯電量に影響を与えるからである。
【0029】
本実施形態においては、各種類のキャリア5AA〜5ACを単独で用いた二成分現像剤における攪拌後のトナー5Bの帯電量分布おいて、数量が最も多かったピークの帯電量が図2に示す矢印の位置となる。したがって、本実施形態のトナー5Bは、各ピークの帯電量に帯電し易い。また、各種類のキャリア5AA〜5ACは、現像槽20A内における数量が5AA<5AB<5ACとなっている。したがって、本実施形態のトナー5Bは、キャリア5ACの帯電特性に最も影響を受けるので、キャリア5ACのピークの帯電量に帯電する数量が多く、キャリア5AAのピークの帯電量に帯電する数量が最も少ない。これにより、図2に示す形状のトナー5Bの帯電量分布が形成される。
【0030】
なお、図2は、現像槽20A内において画像形成に使用していない二成分現像剤5における攪拌後のトナー5Bの帯電量分布を示す。
【0031】
図3は、所定枚数の用紙への画像形成に使用した二成分現像剤における攪拌後のトナー5Bの帯電量分布を示す説明図である。所定枚数(例えば1000枚)の用紙への画像形成に使用した攪拌後のトナー5Bの帯電量分布B(使用後)は、図2にも示す画像形成に使用していない二成分現像剤5における攪拌後のトナー5Bの帯電量分布A(使用前)に比べて全体的に帯電量が低下しているが、変化量が従来の1種類のキャリアを用いた構成に比べて少ない。
【0032】
特に、予め設定している所定の帯電量P以上の帯電量を有するトナーの変化量(斜線部分N)が少ない。所定の帯電量P以上の帯電量を有するトナーは、帯電量が大きく、クーロン力が強く作用するので、感光体ドラムに吸着されずに現像スリーブ22に付着したままの状態となるので現像に用いられない。このため、所定の帯電量P以上の帯電量を有するトナーが多いと画像濃度が低下する。
【0033】
したがって、画像形成での長期間の使用によっても、攪拌後のトナー5Bの帯電量分布の変化量を従来の二成分現像剤におけるトナーよりも小さくできるので、画像形成における安定した画質を長期間にわたって維持することができる。
【0034】
また、図3に示すように、従来の1種類のキャリアを用いた構成に比べて画質に影響を与える所定の帯電量P以上の帯電量を有するトナー5Bの数量が少ないので、より安定した画質を維持することができる。
【0035】
さらに、3種類のキャリア5AA〜5ACは、組成成分の比率のみが異なるで、組成成分が異なるキャリアと違って同様の製造工程で製造できるので、複数種類のキャリア5AA〜5ACであっても容易に製造できる。また、製造設備等の増大を防止できるので、コストアップを抑制できる。
【0036】
なお、所定の帯電量Pは、現像装置20等の構成やトナーの成分によって異なるものである。
【0037】
本実施形態では、3種類のキャリア5AA〜5ACを用いているが特にこれに限定されるものではなく、2種類以上(複数種類)のキャリアを用いて二成分現像剤を形成し、複数種類のキャリアの攪拌後におけるトナーの帯電量分布曲線がピークの帯電量より大きい値として予め設定された所定の帯電量P以上での傾きが所定の帯電量P未満での傾きよりも緩やかな形状となるようにコート剤の帯電特性及び含有量を決定した構成であればよい。
【0038】
また、複数種類のキャリアの代わりに、コア材を複数種類のコート剤でコーティングした1種類のキャリアを用いた二成分現像剤の構成であってもよい。具体的には、複数種類のコート剤を混合してコア材をコーティングする、又は複数種類のコート剤の層をコア材の表面に形成するようにコーティングする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施形態に係る二成分現像剤を備えた画像形成装置の一部の構成を示す拡大図である。
【図2】同二成分現像剤を構成するトナーの画像形成前における攪拌後の帯電量分布を示す説明図である。
【図3】同二成分現像剤を構成するトナーの所定枚数の用紙に画像形成した攪拌後の帯電量分布を示す説明図である。
【図4】従来のトナーの攪拌後の帯電量分布を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
5−二成分現像剤
5AA〜5AC−キャリア
5B−トナー
10−像担持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に供給されるべきトナーと、
磁性材料からなるコア材をコート剤で被覆し、前記トナーと攪拌される複数種類のキャリアと、からなり、
前記複数種類のキャリアのそれぞれは、キャリアの攪拌後における前記トナーの帯電量分布曲線がピークの帯電量より大きい値として予め設定された所定の帯電量以上での傾きが該所定の帯電量未満での傾きよりも緩やかな形状となるようにコート剤の帯電特性及び含有量を決定したことを特徴とする二成分現像剤。
【請求項2】
前記複数種類のキャリアは、前記コート剤の組成成分の比率が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の二成分現像剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate