説明

二枚貝剥き身分離装置

【課題】 二枚貝の身を殻から簡単かつ効率的に分離し、身だけを選別できるようにする。
【解決手段】 二枚貝の身と殻とを分離し、身だけを選別する二枚貝剥き身分離装置1を、二枚貝が投入される筒状の回転ドラム3と、該回転ドラムと一体回転するように設けられ、前記投入した二枚貝を掬上げて落下させる掬上げ羽根22とで構成し、回転ドラムに投入された二枚貝が、回転ドラムの回転に伴い掬上げ羽根によって回転ドラム内上部に掬い上げられ、しかる後回転ドラム内下部に落下することで二枚貝の身と殻とを分離させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しじみ、あさり等の二枚貝の身を殻から分離させる二枚貝剥き身分離装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
しじみやあさり等の二枚貝は、古来より日本全国の沿岸で採取され食されてきた日本人にとっては馴染みの深い食材であり、また近年は、特にしじみに含まれる成分であるオルニチンを初めとする種々の栄養素が肝臓の働きを助けたり疲労を回復させる等の効果があるとして広く一般に認知され、健康に良い食材として人気を集めている。
そこで、これら二枚貝の剥き身に酵素分解等の処理を施すことによって液化させ、これを栄養食品或いは健康食品として販売する試みがなされている。ところでこのような加工を行うにあたってはまず二枚貝の殻から身を剥くという作業が必要である。しかしながら、しじみのような小さな二枚貝の殻から身を剥き取るという作業は非常に手間を要するため、一日の一人当たりの処理量は僅かなものである。このためどうしても人件費が嵩んで、二枚貝の剥き身を用いた加工製品は販売価格を高く設定せざるを得なかった。
【0003】
そこで、二枚貝の殻から身を分離させるにあたり、蒸煮して開殻した二枚貝に振動を与えることで分離させるよう構成したものが開示されている(特許文献1参照)。ところがこのものは、単に振動だけによる身と殻の分離であるため身の殻からの分離性能が悪いだけでなく、分離した身を振動板に形成された選別孔を通過させることで身と殻とを選別するものであるため、身が上を向いた状態のままである場合には身が殻から出てこない場合があって選別性能が悪いという問題がある。
これに対して、貝をクラッシャで割ることで身と殻とを分離するようにしたものが知られている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−146183号公報
【特許文献2】特許第2895781号公報
【特許文献3】特開2005−205292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに前記貝自体を割ることで身と殻とを分離するものは、貝を割るという工程が必要になるだけでなく、割られた殻によって身が損ねられてしまううえ、身の中に割れた殻の破片が混ざってしまうという問題がある。
このように二枚貝の身を損ねることなく効率的に身と殻とに分離する技術は未だどこにも見当たらず、ここに本発明が解決せんとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、二枚貝の身を殻から分離し剥き身として選別するための二枚貝剥き身分離装置であって、該二枚貝剥き身分離装置は、二枚貝が投入される筒状の回転ドラムと、該回転ドラム内に設けられ、回転ドラムと一体回転して前記投入された二枚貝を掬上げて落下させるための掬上げ羽根とを備えたことを特徴とする二枚貝剥き身分離装置である。
請求項2の発明は、回転ドラムの周面には、投入された二枚貝の殻は通過しないが殻から分離した剥き身は通過する大きさの網目で形成され、殻と剥き身とを選別する選別網が設けられていることを特徴とする請求項1記載の二枚貝剥き身分離装置である。
請求項3の発明は、回転ドラムは多角筒状に形成され、前記選別網は筒周面部に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項2記載の二枚貝剥き身分離装置である。
請求項4の発明は、投入されている二枚貝を湿潤するための湿潤手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の二枚貝剥き身分離装置である。
請求項5の発明は、回転ドラムは、収容室内に回転自在に収容されて構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の二枚貝剥き身分離装置である。
請求項6の発明は、湿潤手段は収容室に設けられていることを特徴とする請求項5記載の二枚貝剥き身分離装置である。
請求項7の発明は、収容室には、回転ドラムから選別される剥き身を回収するための回収手段が設けられていることを特徴とする請求項5または6記載の二枚貝剥き身分離装置である。
請求項8の発明は、収容室には排水口が設けられていることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1記載の二枚貝剥き身分離装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明とすることで、回転ドラムの回転にともなって、回転ドラム内の二枚貝が掬上げ羽根に掬い上げられて回転ドラムの上部に搬送され、回転ドラムの上部まで搬送されるに従い二枚貝が掬上げ羽根から落下していって回転ドラムの下部で落下衝撃を受けることになり、この落下衝撃によって、二枚貝の身と殻との分離を促進させることができる。
請求項2の発明とすることで、二枚貝の殻から分離した剥き身が選別網の網目を通過して回転ドラムの外部に放出されることになって、剥き身だけを簡単に選別することが出来る。
請求項3の発明とすることで、二枚貝を回転ドラムに投入するにあたっては、筒周面部に設けられた選別網を取り外してここから二枚貝を投入し、しかる後再び選別網を取付ければよく、二枚貝を簡単に回転ドラムに投入することが出来る。
そして、回転ドラムの回転によって身が分離した後の殻は、再び選別網を取り外して取り出せば良いことになって、殻の取り出しを簡単に行うことが出来る。
また、大きさの異なる二枚貝の剥き身分離をするにあたっては、異なる大きさの網目が形成された選別網と交換すればよく、従ってどのような大きさの二枚貝であっても簡単に殻から身を分離することが出来る。
請求項4の発明とすることで、回転ドラムに投入される二枚貝の身離れを良くすることが出来る。また、低温時の作業にあっては、加熱蒸気を用いることで、低温環境下における身離れの悪さを解消することが出来る。また、加熱蒸気を用いることで、まだ開殻していない二枚貝を回転ドラムに投入し、しかる後二枚貝を開殻させることが出来る。
請求項5の発明とすることで、回転ドラムの回転によって飛散する液体等により周囲が汚れてしまうようなことを防止できる。
また、回転ドラムをモータ駆動によって回転させる構成とした場合には、電気系統を前記飛散する液体等から遮断することが出来る。
請求項6の発明とすることで、収容室内の温度や湿度の調整を行うことによって収容室内全体を加温状態や湿潤状態にして、回転ドラム内を二枚貝の身と殻とが分離し易い最適な環境にすることが出来る。
請求項7の発明とすることで、回転ドラムによる二枚貝の身と殻との分離と分離した後に選別網を通過して落下する剥き身の回収とを収容室内で行うことが出来て、作業効率が向上する。
請求項8の発明とすることで、二枚貝から浸出する液体および湿潤手段によって収容室内に供給される液体を、収容室外部に排出することが出来るとともに、収容室を洗浄する場合に用いた洗浄液等も簡単に収容室外部に排出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(A)、(B)は、それぞれ二枚貝剥き身分離装置の正面図、左側面図である。
【図2】開閉蓋の開閉の様子を示す二枚貝剥き身分離装置の正面図である。
【図3】回転ドラムの斜視図である。
【図4】回転ドラムの左側面図である。
【図5】回転ドラムの右側面図である。
【図6】(A)、(B)は、それぞれ選別網の正面図、右側面図である。
【図7】網目の大きさとしじみの大きさとの関係を示す説明図である。
【図8】(A)、(B)、(C)は、それぞれ回転ドラムの回転によるしじみの身と殻とが分離する様子を示す斜視図、左側面図、収容室および回収箱の排水の様子を示す左側面図である。
【図9】(A)、(B)は、それぞれしじみの回転ドラムへの投入量と剥き身の回収率、該回収率に至るまでの回転ドラムの回転速度と処理時間(回転時間)との関係を示すグラフである。
【図10】(A)、(B)は、それぞれしじみの落下距離と身と殻との分離率(身の回収率)との関係を示すグラフ、スチームの有無による剥き身回収率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図において、1は二枚貝の一種であるしじみの身を殻から分離して選別する二枚貝剥き身分離装置であって、該二枚貝剥き身分離装置1は、五角形状の筒体である回転ドラム3が、密閉された箱体である収容室2の内部に回転自在に設けられて構成されている。収容室2の上面には、一対の開閉蓋4が観音開き状態で設けられており、該開閉蓋4は、それぞれの開閉蓋4に設けられた把手4aを上方に持ち上げることによって左右対称に開くようになっている(図1、2参照)。
【0010】
さらに収容室2の上面には、図1において左側の後端縁部に位置して、回転ドラム3を後述するモータ11によってモータ駆動させるための制御盤が収納された制御部5がブラケット5cを介して突設されており、該制御部5の前面には、これらモータ11のON−OFF操作をするためのスイッチ5aやモータ11の回転速度や収容室2内の温度湿度等を表示する表示計5bが設けられている。
【0011】
収容室2の内側底面部には、回転ドラム3からの剥き身や殻等が落下して回収される本発明の回収手段であるところの回収箱6が設けられている。該回収箱6は、収容室2の正面(前面)側から引き出すことが出来る引き出し方式となっており、該正面側に設けられた把手6aを把持して引き出すことによって回収箱6の中身を外部から取り出すことが出来るようになっている。また、回収箱6の底面には排水のための回収箱排水孔6bが形成されている。
【0012】
前記回転ドラム3には、軸心部を貫くようにして回転軸7が設けられており、回転ドラム3の左右両側面部3a、3bの中心部に形成された左右回転軸取付け部3c、3dが、左右嵌合部3k、3mを介して回転軸7の左右両端部7a、7bに一体的に取付けられ、これによって回転ドラム3と回転軸7とが一体回転するようになっている。そして回転軸7の左側端部7aの先端である左側先端部7cは、収容室2の左側面2aから外部に突出するようにして該左側面2aに設けられた第一軸受8aに軸支されている。そして該左側先端部7cの収容室左側面2aから外部に突出する部位には第一ギア歯9aが一体的に設けられている。同様に回転軸7の右側端部7bの先端である右側先端部7dは、収容室2の右側面2bから外部に突出するようにして該右側面2bに設けられた第二軸受8bに軸支されている。
【0013】
一方、収容室2の背面部外側にはモータ11が配されており、該モータ11から突出するモータ軸11aには第二ギア歯9bが一体的に設けられている。そして該第二ギア歯9bと前述した回転軸7に設けられた第一ギア歯9aとは無端のチェーン10が懸回されていて動力伝動するようになっており、モータ11の駆動によるモータ軸11aの回転が第二ギア歯9bから第一ギア歯9aへと伝動して回転軸7を回転させ、これによって左右回転軸取付け部3c、3dを介して回転軸7に一体的に取付けられる回転ドラム3が回転するようになっている。
【0014】
尚、モータ軸11a、第一、第二ギア歯9a、9b、チェーン10等の収容室左側面から外部に露出する部分はカバー11bによって被覆されている。
また、カバー11bには回転ハンドル17の基端部17aを挿入するためのハンドル孔11cが形成されており、該ハンドル孔11cから基端部17aを挿入することで回転ハンドル17と回転軸7の左側先端部7cとが着脱自在に連結するようになっている。そして、モータ駆動によらずこのように回転軸7に連結された回転ハンドル17を手動で回転させることによっても回転ドラム3を回転出来るようになっている。
【0015】
回転ドラム3は、一方向(本実施の形態では図4で示される左側面部3a側から見て時計回り方向)のみに回転するよう構成されており、該回転ドラム3の左右両側面部3a、3bに形成される5つの辺には、それぞれ左側面部枠体12a〜12e、右側面部枠体13a〜13eが形成されるとともに、筒周面部3eに形成される5つの面部3f〜3jの互いに隣接する5つの辺には、それぞれ周面部枠体14a〜14eが形成されている。そして、前述の左右回転軸取付け部3c、3dからは、それぞれ左側面部枠体12a〜12e、右側側面部枠体13a〜13eの各角部12f〜12j、13f〜13jまで至って各側面部3a、3bを支持する左側ドラム支持枠体15a〜15e、右側ドラム支持枠体16a〜16eが放射状に形成されている。
【0016】
各周面部枠体14a〜14eの外周側面には、それぞれ左側角部12f〜12jから右側角部13f〜13jにまで至る長板状の網支持枠18が取付けられている。該網支持枠18には、回転ドラムの反進行方向に向けて開口する長溝18aが形成される。該長溝18aは、長溝18aを形成する側壁のうち、各周面部枠体14a〜14eの外側面と当接している第一側壁18bの方が当接していない第二側壁18cよりも回転ドラム3の周回り方向に長く形成されており、これによって後述する選別網21の第二の辺部21bが、長溝18aに対して着脱し易いようになっている(図6(B)参照)。
【0017】
さらに各周面部枠体14a〜14eの外周側面には、後述する選別網21の網鍵19a〜19cに対応する鍵穴20a〜20cが取り付けられている。該鍵穴20a〜20cは、各周面部枠体14a〜14eの長溝18aが開口していない側面の左右両側角部12f〜12j、13f〜13jに偏寄した位置、およびその中間位置の都合三箇所にそれぞれ設けられる。尚、網鍵の数は、特に網が脱落しないようになっていれば個数は限定されない。
【0018】
一方、21は、前記筒周面部3eに形成された5つの面部3f〜3jを覆うようにして着脱自在に取り付けられる長方形状の選別網である。該選別網21は、一方の長辺である第一の辺部21aの左右両端部と中央部の都合三箇所に、前述した鍵穴20a〜20cに嵌合する網鍵19a〜19cが取付けられている。そして、他方の長辺である第二の辺部21bは、前述した網支持枠18に形成された長溝18aに対して抜き差し可能な形状に形成されている。
また、選別網21の網目21cの大きさは、該網目21cの対角線の長さAが、回転ドラム3に投入される二枚貝であるしじみKの殻が閉じた状態における最長の長さBよりも短く、身(剥き身)の最長の長さCよりも長くなるように形成されている(図7参照)。因みに、島根県の宍道湖で取れるヤマトシジミの出荷時の大きさは、宍道湖蜆漁業組合の出荷基準により定められている。
【0019】
また、回転ドラム3の内部には、図3〜図5に示すように、長板状の5枚の掬上げ羽根22a〜22eが取り付けられる。つまり、該掬上げ羽根22a〜22eは、長手方向の左右両端縁である第一、第二の縁部22f、22gが、80度となっていてやや鋭角に折曲されたエル字状の取付金具23によって左側面部枠体12a〜12eおよび右側面部枠体13a〜13eにそれぞれ取付けられるが、このとき該掬上げ羽根22a〜22eの短手方向の一方の縁部である第三の縁部22hは、各周面部3f〜3jにあって周面部枠体12a〜12eの鍵穴20a〜20c側(回転方向下手側)に偏寄した位置に設けられるとともに、掬上げ羽根22a〜22eの羽根板面は、短手方向の他方の縁部である第四の縁部22iが先端となって回転軸7を臨む方向に突出するようにして設けられる。そしてこのように取付けられた掬上げ羽根22a〜22eは、掬上げ羽根22a〜22eと各対応する周面部3f〜3jとのなす角度が80度となるため、これによって回転ドラムの回転に伴い二枚貝が掬上げ羽根22によって掬上げられ易くなっている。尚、前記掬上げ羽根22と周面部3との角度は、しじみを掬い上げて落下できるものであれば特に限定されない。
【0020】
収容室2の背面2cには、図8(B)、(C)に示すように、回転軸7よりも上方の位置から、本発明の湿潤手段の実施の形態であるところの噴霧ノズル24が設けられており、該噴霧ノズル24から噴霧される例えば霧状の水によって収容室2内を湿潤状態に保つことが出来るようになっている。
一方、収容室2の底面には、噴霧ノズル24から噴霧された液体やしじみから滲み出る液体、また収容室内の洗浄のために用いられた洗浄液等を収容室2から外部へ排出するための排水口25が設けられている。そして収容室2の底面は、排水口25が最も低位置となるように排水口25に向けて傾斜状となっている。
【0021】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、まず、モータ11が駆動していない状態で収容室2の開閉蓋4を開けて、回転ドラム3に取付けられた5枚の選別網21のうち何れか一つ(通常は最も上部に位置している選別網21)の三箇所の網鍵19a〜19cを全て鍵穴20a〜20cから外す。次に網鍵19が取付けられている側である第一の辺部21aを少し浮かせ、この状態から第二の辺部21bを長溝18aから抜き取るように手前に引いて選別網21を回転ドラム3から外す。そしてこの選別網21を外した周面部3eから蒸煮によって既に開殻したしじみを投入して、前記外した選別網21を外す場合と逆の手順で再び取り付ける。さらに開閉蓋4を閉じて、制御部5に設けられたスイッチ5aを操作してモータ11を駆動させ回転ドラム3を回転させる。尚、回転ドラム3の回転は、前述したようにモータ駆動ではなく回転ハンドル17を回転させることによって行っても良い。
【0022】
そして、しじみが投入された回転ドラム3を回転させると、自重によって回転ドラム3の下方に堆積していたしじみは、回転に伴って掬上げ羽根22と選別網21とのあいだに保持されつつ回転ドラム3の上方に搬送されていき、掬上げ羽根22が回転ドラム3の上部に近づくにつれて掬上げ羽根22の第四の縁部22iからこぼれ落ちていって回転ドラム3の下方に落下する。この落下衝撃によってしじみの身が殻から分離する。
そして、殻から分離した剥き身だけが選別網21の網目21cを通過することが出来るため、剥き身は順次回転ドラム3から下方に落下し、回転ドラム3の下方に配された回収箱6に回収される。
【0023】
このように、回収箱6には回転ドラム3から落下した剥き身だけが回収され、回転ドラム3には身が分離した後の殻が残る。この状態で回転ドラム3の回転を停止させて回収箱6を収容室2から取出せば、しじみの剥き身だけを得ることが出来る。
そして、回転ドラム3の内部に残った殻は、選別網21を例えば一枚だけ外し、外したままの状態で回転ドラム3を外した選別網21が下方に位置するまで回転させて殻を回収箱6に落下させ、回収箱6を引き出すことで回収することが出来る。
さらに、収容室2の上部の開閉蓋4を開けて上部から放水すれば収容室内の清掃を行うことが出来る。このとき、排水口25が設けられているため、清掃に用いた洗浄水等は収容室底部から排出される。
【0024】
また、このようなしじみの剥き身分離作業を乾燥した環境下で行うにあたっては、噴霧ノズル24から霧状の水を噴霧させることによって回転ドラム内を湿潤状態に保つことが出来る。このような湿潤雰囲気下で作業を行うことによって、乾燥から来るしじみの身離れの悪さを防ぐことが出来て分離作業効率を向上させることが出来る。
【0025】
また、回転ドラム3に大きさの異なる二枚貝を投入しようとする場合は、選別網21を、投入する二枚貝の大きさに見合う大きさの網目21cが形成されたものに交換すれば良い。この場合、交換する選別網21の網目21cの対角線の長さAは、投入されるしじみKの殻の最長の長さBより短く剥き身の最長の長さCより長いものであれば良い。
【0026】
このように構成された本発明によれば、二枚貝であるしじみを身と殻とに分離し、剥き身だけを選別する作業を簡単かつ効率的に行うことが出来る。
また、選別網21を交換することによって、どんな大きさの二枚貝であっても身と殻とに分離選別することが出来る。
【0027】
尚、本発明の第一の実施の形態では、上述したように湿潤手段として噴霧ノズル24を設けたものに構成したが、これに限定されるものではなく、第二の実施の形態として、例えば噴霧ノズル24に代えて湿潤機能とともに加温機能を備えたスチーム26を設けたものに構成しても良い。この場合、噴霧ノズル24を使用した場合のように収容室2内を湿潤状態に保つことに加えて加温された霧状の液体或いは蒸気を収容室2内に供給することができて、収容室2内を高温状態にして分離選別作業を行うことができ、例えば寒冷地や冬季等の温度が低くて凍結し易い環境下における作業の効率を向上させることが出来る。
【0028】
また、第三の実施の形態として、第一、第二の実施の形態のように開殻したしじみを投入するのではなく、まだ開殻していない生のしじみ(常温或いは冷凍したもの)を投入して、前述したスチーム26から噴出される高温の水蒸気あるいは蒸気によってしじみが開殻するまで収容室2内を高温にしてしじみを開殻させ、その後、或いはスチーム26による加温と同時に回転ドラム3を回転させてしじみの身と殻との分離選別作業を行うよう構成しても良い。この場合、投入された生のしじみはスチーム26による加温によって回転ドラム3内で開殻し、該開殻したしじみは回転ドラム3の回転による掬上げ羽根22からの落下によって身と殻とに分離した後、剥き身だけが選別網21の網目21cを通過して回収箱6に落下する。このようにした場合には、しじみを回転ドラム3に投入する前に予め蒸煮(湯がき)する等して開殻させておく必要がない。
【0029】
本発明の発明者は、回転ドラム3にどのくらいの量のしじみを投入し、何回回転ドラムを回転させれば最も効率的に剥き身の分離選別が行われるかを知るために、回転ドラム3に異なる量のしじみを投入し、投入された量毎のしじみの身の回収率と、所定の回収率に至るまでの回転ドラム3の回転速度と処理時間との関係を調べた。
図9(A)のグラフは、異なる量のしじみを回転ドラム3に投入して所定時間回転させた場合の剥き身の回収率を示している。このグラフによれば5kgのしじみを投入した場合の剥き身の回収率は99.7%、10kgの場合は97.6%、15kgの場合は94.0%、20kgの場合は90.16%であった。
また、これらの回収率に至るまでの処理時間を示したものが、図9(B)のグラフである。このグラフによれば、例えば5kgのしじみであった場合、回収率が99.7%に到達するには回転ドラム3を3秒で一回転する速度で回転させると4分かかり、2秒で一回転する速度で回転させると2分半、1.5秒で一回転する速度で回転させると2分かかった。また、1.5秒よりも速い速度で回転ドラム3を一回転させた場合は、回転ドラム3に発生する遠心力によってしじみの身が破壊されたり、殻が破壊されて破片が身と一緒に回転ドラム3の網目から通過してしまったりして分離性能が悪化した。
【0030】
次に発明者は、しじみが最も効率的に身と殻とに分離する落下距離を調べた。図10(A)は、しじみが身と殻とに分離する分離率と落下距離との関係を示したものである。発明者は、湯がきや蒸煮等によって開口した20粒のしじみをさまざまな高さに形成された箱の中に入れ、それぞれの箱を各60回天地逆転させて落下衝撃を与える実験を行い、この実験による身と殻との分離率を調べた。この結果、箱の高さ、つまりしじみの落下距離が500mmの場合は20粒全てが分離し、350mmの場合は20粒中19粒、300mmの場合は20粒中18粒、250mmの場合は20粒中14粒、200mmの場合は20粒中10粒分離した。この結果、箱の天地逆転回数を60回とした場合は、分離率が50%以上に達するためには200mm以上の落下距離が必要であることが判明した。因みに、箱の天地逆転回数を60回以上とした場合は、分離率はさらに上がるが、60回以上天地逆転を行った場合はしじみの傷みがひどくなってしまうためこれ以上の天地逆転は好ましくないことも判明した。
尚、本実施の形態における回転ドラム3は、該回転ドラム3を回転させた場合のしじみの落下距離が約400mmであって、実験によれば95%以上の分離率を達成できる距離となっている。
【0031】
さらに発明者は、回転ドラム3を加温した場合としなかった場合とのしじみの身の回収率を調べた。
図10(B)は、収容室2に設けたスチーム26を作動させて収容室2内を高温多湿状態にした場合と、スチーム26を使用しなかった場合の違いを示す表である。スチーム26を使用せずに回転ドラムを回転させてしじみの剥き身分離作業を行った場合は身の回収率は74%であったが、139度に加熱した湯を吐出圧力0.35MPaでスチーム26から吐出した場合は身の回収率は97.6%であった。
この実験によって、収容室内のスチーム26による加温加湿がある場合とない場合とでは、スチーム26によって加温加湿した場合の方が身の回収率が向上することが判明した。
【0032】
尚、本発明は、前記第一、第二の実施の形態に限定されるものでないことは勿論であって、二枚貝はしじみではなく、あさり等他の二枚貝であっても良い。また、回転ドラム3の形状は五角筒形状に限定されるものではなく、他の多角筒形状や円筒形状であっても良く、さらには球状や楕円筒形状であっても良いのであって、特定の形状に限定されるものではないことは勿論である。
また、掬上げ羽根22の形状や取り付け角度等も本発明の実施の形態に限定されるものではなく、回転ドラム3の回転に応じて回転ドラム3内の二枚貝を回転ドラム3の上方に持ち上げることが出来るものであれば形状は問わない。
また、収容室2の開閉蓋4は上面に限定されるものではなく、前面や下面或いは側面に設けて、選別網21の着脱作業はこれらの開閉蓋4から行うよう構成しても良い。
要するに、回転ドラム3内に二枚貝を投入して、掬上げ羽根22によって二枚貝を回転ドラム3内で上方に持上げた後落下させることで二枚貝を身と殻とに分離する構成のものであれば形状は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、しじみ、あさり等の二枚貝の身を殻から分離させて加工品を製造する加工食品の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 二枚貝剥き身分離装置
3 回転ドラム
22 掬上げ羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚貝の身を殻から分離し剥き身として選別するための二枚貝剥き身分離装置であって、該二枚貝剥き身分離装置は、
二枚貝が投入される筒状の回転ドラムと、
該回転ドラム内に設けられ、回転ドラムと一体回転して前記投入された二枚貝を掬上げて落下させるための掬上げ羽根と
を備えたことを特徴とする二枚貝剥き身分離装置。
【請求項2】
回転ドラムの周面には、投入された二枚貝の殻は通過しないが殻から分離した剥き身は通過する大きさの網目で形成され、殻と剥き身とを選別する選別網が設けられていることを特徴とする請求項1記載の二枚貝剥き身分離装置。
【請求項3】
回転ドラムは多角筒状に形成され、前記選別網は筒周面部に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項2記載の二枚貝剥き身分離装置。
【請求項4】
投入されている二枚貝を湿潤するための湿潤手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の二枚貝剥き身分離装置。
【請求項5】
回転ドラムは、収容室内に回転自在に収容されて構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1記載の二枚貝剥き身分離装置。
【請求項6】
湿潤手段は収容室に設けられていることを特徴とする請求項5記載の二枚貝剥き身分離装置。
【請求項7】
収容室には、回転ドラムから選別される剥き身を回収するための回収手段が設けられていることを特徴とする請求項5または6記載の二枚貝剥き身分離装置。
【請求項8】
収容室には排水口が設けられていることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1記載の二枚貝剥き身分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−60945(P2012−60945A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209046(P2010−209046)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(508214525)有限会社エヌ・イー・ワークス (1)
【Fターム(参考)】