説明

二槽式オイルパン装置

【課題】オイルの劣化抑制と共に暖機性をさらに向上することができる二槽式オイルパン装置を提供する。
【解決手段】外槽部材12とその内側に配置された内槽部材14とを備え、内槽部材の内側の内槽オイル貯留部14aと外槽部材の内側で内槽部材との間の外槽オイル貯留部12aとを備える二槽式オイルパン装置10であって、内槽部材14の底部に設けられ、エンジンの停止時に内槽オイル貯留部と外槽オイル貯留部とを連通し、エンジンの運転時には内槽オイル貯留部と外槽オイル貯留部との連通を遮断する底部開閉弁20と、底部開閉弁20が開いたとき、内槽オイル貯留部と外槽オイル貯留部とを連通する連通路と、連通路に設けられ、オイル温度が所定値を超えるときに当該連通路を閉じ、所定値以下のときには当該連通路を開くように作動するサーモスタット弁装置30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのオイルパン装置、特に二槽式オイルパン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等のエンジンのオイルパン装置は、エンジン本体の下側に設けられ、この内部に配置されたオイルストレーナを介して、オイルパンに貯留されたオイルをオイルポンプで汲上げてエンジン本体内に供給し、そのオイルでエンジン各所を潤滑した後、回収するように構成されている。この種のオイルパン装置では、エンジン始動直後のオイルが低温のときには、オイルの粘性が高くて循環性が低い。そこで、オイルの昇温速度を速めてオイル循環性を良好にするために、オイルの潤滑不良が起きない程度に、オイル容量を小さくすることで、暖機性を向上させてオイルの循環促進を図る一方、オイル容量を小さくすることによってオイルが全体的に劣化し易くなることを抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のオイルパン装置は、オイルストレーナの吸込口が内部に設置された主貯留室と、この主貯留室に対して仕切壁で仕切られた副貯留室とを有し、エンジン本体から流下するオイルを主貯留室に誘導するオイル誘導手段と、仕切壁に形成され主貯留室と副貯留室とを連通する連通孔と、連通孔を開閉する弁部材であって、主貯留室のオイルレベルが副貯留室のオイルレベルよりも低い場合にのみ連通孔を開放する弁部材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−303720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のオイルパン装置では、エンジン停止時に、主貯留室と副貯留室のオイルレベルが同じになるまで主貯留室のオイルを副貯留室へ戻し、再度のエンジン始動時には、その一部が主貯留室へ移動するようにしているので、オイルパン内のオイルが全体的に満遍なく使用され、そのオイルの局部的な劣化が抑制される。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、いずれの場合にもその停止後に主貯留室のオイルが副貯留室へ戻されるので、暖められたオイルが比較的低温のオイルと混合されることになる。この結果、エンジンオイル温度は全体的に低下してしまうので、再度のエンジン始動時にはそのオイルを再度昇温させねばならない。従って、エンジンの始動と停止とを繰り返すような使い方の場合には、本来不要な再昇温を繰り返すことになり暖機性に不利である。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題を解消し、オイルの劣化抑制と共に暖機性をさらに向上することができる、エンジンの二槽式オイルパン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の一形態に係る二槽式オイルパン装置は、外槽部材とその内側に配置された内槽部材とを備え、内槽部材の内側の内槽オイル貯留部と外槽部材の内側で内槽部材との間の外槽オイル貯留部とを備える二槽式オイルパン装置であって、前記内槽部材の底部に設けられ、エンジンの停止時に前記内槽オイル貯留部と前記外槽オイル貯留部とを連通し、エンジンの運転時には前記内槽オイル貯留部と前記外槽オイル貯留部との連通を遮断する底部開閉弁と、前記底部開閉弁が開いたとき、前記内槽オイル貯留部と前記外槽オイル貯留部とを連通する連通路と、前記連通路に設けられ、オイル温度が所定値を超えるときに当該連通路を閉じ、当該所定値以下のときには当該連通路を開くように作動するサーモスタット弁装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、上記一形態は、前記内槽部材の上部に設けられ、エンジンから戻るオイルを受け開口を介して前記内槽オイル貯留部に案内する受け皿部材と、エンジンの停止時に当該受け皿部材の開口を閉じ、エンジンの運転時には当該受け皿部材の開口を開く受け皿部材開閉弁と、前記内槽部材に形成され、当該受け皿部材との接触部位の上方の連通孔と、をさらに備えてもよい。
【0010】
また、前記底部開閉弁と前記受け皿部材開閉弁とは、協働する作動ロッドでもって連動されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の一形態に係る二槽式オイルパン装置によれば、内槽部材の底部に設けられた底部開閉弁により、エンジンの停止時には内槽オイル貯留部と外槽オイル貯留部とが連通され、エンジンの運転時には内槽オイル貯留部と外槽オイル貯留部との連通が遮断される。そこで、エンジンの運転後にエンジンが停止されると、底部開閉弁が開かれ、内槽オイル貯留部と外槽オイル貯留部とが連通路でもって連通され得る。しかし、底部開閉弁が開かれた場合であっても、連通路に設けられたサーモスタット弁装置はオイル温度が所定値を超えるときに当該連通路を閉じ、当該所定値以下のときには当該連通路を開くように作動する。したがって、オイル温度が所定値を超えているときは、外槽オイル貯留部から内槽オイル貯留部へのオイルの流入が抑制され、内槽オイル貯留部のオイル温度の低下が抑制される。一方、オイル温度が所定値以下になるとサーモスタット弁装置が開き、外槽オイル貯留部から内槽オイル貯留部へオイルが流入することになる。かくて、オイル温度が所定値を超えているときのエンジンの再始動の際には、サーモスタット弁装置と共に底部開閉弁も閉じられるので、オイル温度が所定値を超えている内槽オイル貯留部のオイルのみが循環され、暖機性がさらに向上されてエンジンのフリクションロスの低減と燃費の向上を実現できる。
【0012】
なお、外槽オイル貯留部のオイルについては、エンジンの停止後、内槽オイル貯留部のオイル温度が所定値以下に低下すると、サーモスタット弁装置が開き内槽オイル貯留部と外槽オイル貯留部のオイルレベルが同じになるまで、内槽オイル貯留部へ流入する。故に、オイルパン内のオイルを全体的に満遍なく使用し、そのオイルの全体的な劣化を抑制できる。こうして、オイルの劣化抑制とこの暖機性のさらなる向上とを両立させることできる。
【0013】
また、上記一形態に加えて、前記内槽部材の上部に設けられ、エンジンから戻るオイルを受け開口を介して前記内槽オイル貯留部に案内する受け皿部材と、エンジンの停止時に当該受け皿部材の開口を閉じ、エンジンの運転時には当該受け皿部材の開口を開く受け皿部材開閉弁と、前記内槽部材に形成され、当該受け皿部材との接触部位の上方の連通孔と、をさらに備える形態によれば、エンジンの運転時には、受け皿部材開閉弁によって受け皿部材の開口が開かれ、エンジンの停止時には、当該受け皿部材の開口が閉じられる。したがって、エンジンの運転時には、エンジンから戻る温められたオイルが受け皿部材の開口を介して内槽オイル貯留部に案内される。一方、エンジンの停止時には、受け皿部材開閉弁によって受け皿部材の開口が閉じられ、エンジンから戻る温められたオイルは、内槽部材に形成された連通孔を介して外槽オイル貯留部に流入する。かくて、外槽オイル貯留部から内槽オイル貯留部へのオイルの流入が促進され、オイルパン内のオイルを全体的に満遍なく使用し、そのオイルの全体的な劣化をさらに抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る二槽式オイルパン装置の一実施形態の要部断面を示し、エンジンは運転状態にある。
【図2】図1の一部拡大断面図である。
【図3】本発明に係る二槽式オイルパン装置の一実施形態の要部断面を示し、エンジンは停止直後状態にある。
【図4】本発明に係る二槽式オイルパン装置の他の実施形態の要部断面を示し、エンジンは運転状態にある。
【図5】本発明に係る二槽式オイルパン装置の他の実施形態の要部断面を示し、エンジンは停止直後状態にある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、エンジンに用いられる本発明の実施形態に係る二槽式オイルパン装置10の概略構成を示している。このエンジン(不図示)は、シリンダヘッド及びシリンダブロックを含む被潤滑機構としてのエンジンブロック(不図示)と、そのエンジンブロックの下端部に接続された本実施形態に係る二槽式オイルパン装置10と、当該エンジンの内部の潤滑のためのオイルを当該エンジン内の各部に供給するための潤滑系統とを備えている。
【0017】
エンジンブロックには、周知のように、ピストン、クランクシャフト、カムシャフト等の複数の被潤滑部材が配置されており、エンジンブロックの下端部には、これらの被潤滑部材に対して供給されるべきオイルを貯留するための部材である二槽式オイルパン装置10が接続されている。
【0018】
本実施形態に係る二槽式オイルパン装置10は、外槽部材12とその内側に配設された内槽部材14とを備え、外槽部材12内の空間が、内槽部材14の内部空間である第1室10Aと、外槽部材12と内槽部材14とで囲まれた空間である第2室10Bに仕切られる、いわゆる二槽式のオイルパンである。
【0019】
外槽部材12は、二槽式オイルパン装置10の外側を構成するバスタブ状の部材であり、例えば、鋼板をプレス加工することによって一体に成形されている。外槽部材12には、内側の空間内にオイルを貯留可能なオイル貯留部12aが形成されている。このオイル貯留部12aの底面を構成する外槽部材12の底板12bの周縁部から側板12cが立上げられ、この側板12cの上端縁部からは外側に向けて略水平に延びるフランジ部(不図示)が形成されている。なお、このフランジ部が、例えば、シリンダブロックの下端面にボルトにより固定されることで、外槽部材12がエンジンブロックに対して装着される。
【0020】
内槽部材14は、外槽部材12の内側に配設されて外槽部材12の内側の空間を仕切るための部材であり、例えば、合成樹脂を射出成形することにより一体に形成されている。内槽部材14は、外槽部材12と同様にバスタブ状の内側の空間(第1室10A)を有していて、その下方のオイル貯留部14a内にオイルを貯留可能に構成されている。このオイル貯留部14aの底面を構成する底板14bの周縁部から側板14cが立上げられている。また、側板14cの中腹部には、第1室10Aと第2室10Bとの油面の調整のために上部連通孔16aが複数設けられている。
【0021】
そして、二槽式オイルパン装置10に貯留されているオイルを被潤滑部材へ供給する潤滑系統の一部として、内槽部材14の第1室10Aにオイルストレーナ18が配置され、その吸込口18aは、好ましくは、オイル貯留部14aにおける最低位置を構成する内槽部材14の底板14bから所定の狭い間隔(例えば10mm程度)を隔てて配置されている。このオイルストレーナ18は、エンジンブロックに設けられたオイルポンプ(不図示)とストレーナ流路18bによって接続されている。
【0022】
なお、内槽部材14の側板14cの上端縁部から外側に向けて略水平に延びるように、フランジ部(不図示)が形成されている。このフランジ部がシリンダブロックの下端面と外槽部材12のフランジ部との間に挟まれて、内槽部材14がエンジンブロックと外槽部材12とで囲まれた空間内に支持されてもよい。
【0023】
ここで、外槽部材12の底板12bと、内槽部材14のオイル貯留部14aにおける最低位置にある底板14bとの間には、所定の間隙が設定されている。また、外槽部材12の側板12cと、内槽部材14の側板14cとの間にも、所定の間隙が設定されている。すなわち、内槽部材14のオイル貯留部14aの下方及び側方に、外槽部材12と内槽部材14とで囲まれてオイルを貯留可能な空間である外槽オイル貯留部12a(第2室10B)が形成されている。また、本実施の形態においては、外槽部材12の底板12bにドレインプラグ13が設けられており、さらに、外槽部材12の側板12cと内槽部材14の側板14cとの間に形成されている外槽オイル貯留部12aに、オイルレベルゲージ(不図示)が挿置される。
【0024】
さらに、本実施の形態において、内槽部材14の底板14bには、第1室10Aと第2室10Bとの間の連通を開閉制御する底部開閉弁20及びサーモスタット弁装置30が設けられている。
【0025】
ここで、この底部開閉弁20及びサーモスタット弁装置30の構成について、図1に加えて、図1の部分拡大図である図2を参照して説明する。
【0026】
図2において、底部開閉弁20は、内槽部材14の底板14bに形成され第1室10Aと第2室10Bとの間を連通する底部連通孔16bを開閉する弁体20aを備えて構成されている。そして、この底部開閉弁20の弁体20aは、本実施の形態において、底板14bに立設された案内筒20b内を摺動可能であるように底部開閉弁20のアクチュエータ25の作動ロッド25aに連結されている。また、この案内筒20bには、弁体20aの開閉動作に併せて開閉される連通口20cが形成されている。
【0027】
ここで、図1に戻って、まず上記底部開閉弁20のアクチュエータ25について説明する。本実施の形態におけるアクチュエータ25は、エンジンの吸入負圧などを利用して作動するいわゆるバキューム式アクチュエータである。そのため、アクチュエータ25のハウジング25bが、バキューム源に連通されるバキューム導入室25cと大気に連通される大気解放室25dとに、ダイヤフラム、ピストンなどの圧力感知部材25eで画成されている。さらに、この圧力感知部材25eには上述の作動ロッド25aが連結されると共に、バキューム導入室25cに設けられたリターンスプリング25fによって戻り方向(本実施の形態においては、弁体20aの開成方向)に付勢されている。また、本実施の形態において、アクチュエータ25のハウジング25bは外槽部材12の底板12bに取り付けられ、作動ロッド25aはその外周部にシール部材(不図示)が配置されて、外槽部材12の底板12bを貫通して設けられている。なお、このような外槽部材12の底板12bの貫通孔やシール部材を不要とするために、アクチュエータ25を内槽部材14の第1室10A内に配置するようにしてもよい。
【0028】
なお、上述したアクチュエータ25においては、弁体20aを開成方向に付勢するリターンスプリング25fを用いて、後述するように、エンジン停止時に弁体20aを開成させるようにしている。しかし、この弁体20aがオイル中で受ける浮力によって、弁体20aを開成させるように構成することにより、リターンスプリングを用いなくするようにしてもよい。
【0029】
次に、再度、図2において、サーモスタット弁装置30は、上述の案内筒20bに形成された連通口20cに連通して、底板14b上に形成された連通路30a内の開口30bを弁体30cが開閉可能に設けられている。具体的には、このサーモスタット弁装置30は、当該弁体30cが一端に固定されたロッド部材30dとワックス(不図示)が内部空間内に封入された筐体30eをさらに備えている。そして、このロッド部材30dの他端部が筐体30eの内部空間内のワックス内に没入されている。
【0030】
ここで、上に説明した本実施形態に係る二槽式オイルパン装置10の作用について説明する。
【0031】
先ず、エンジンの始動を含む運転時には、アクチュエータ25のバキューム導入室25cにエンジンの吸入負圧が導入され、圧力感知部材25eが吸引されることにより作動ロッド25aが引かれ、作動ロッド25aに連結されている底部開閉弁20の弁体20aが底部連通孔16b及び連通口20cを閉じている。したがって、エンジンの始動と同時に底部開閉弁20が底部連通孔16bを閉じる、換言すると、内槽オイル貯留部14aと外槽オイル貯留部12aとの連通が遮断されるので、内槽オイル貯留部14aのオイルのみがストレーナ18によって吸い上げられてエンジン内に供給される。
【0032】
そして、エンジンが停止すると、アクチュエータ25のバキューム導入室25cへのバキューム供給が無くなるために、圧力感知部材25eがリターンスプリング25fによって戻され底部開閉弁20の弁体20aが底部連通孔16bを開くので、外槽オイル貯留部12aのオイルが内槽オイル貯留部14aに流入しようとする。しかし、本実施形態においては、このエンジンの停止時には、前回のエンジンの運転時にエンジン本体内に供給されたオイルがオイルパンに回収されるが、そのオイルの温度に応じて内槽オイル貯留部14aと外槽オイル貯留部12aのオイルレベルが決定される。
【0033】
すなわち、上述のように、内槽部材14の底部に設けられた底部開閉弁20により、エンジンの停止時には底部連通孔16bが開かれ内槽オイル貯留部14aと外槽オイル貯留部12aとが連通されるが、底部開閉弁20が開かれた場合であっても、連通路30aに設けられたサーモスタット弁装置30はオイル温度が所定値を超えるときに当該連通路30aを閉じ、当該所定値以下のときには当該連通路30aを開くように作動する。具体的には、オイル温度が所定値を超えるときには、筐体30eの内部空間内に封入されたワックスの膨張によってロッド部材30dが移動されて、サーモスタット弁装置30の弁体30cが案内筒20bに形成された連通口20cに連通して底板14b上に形成された連通路30a内の開口30bを閉じるのに対し、当該所定値以下のときには当該弁体30cが連通路30a内の開口30bを開くように作動するのである。
【0034】
したがって、オイル温度が所定値を超えているときは当該連通路30aが閉じられ、外槽オイル貯留部12aから内槽オイル貯留部14aへのオイルの流入が抑制され、内槽オイル貯留部14aのオイルレベルは、図3に示すように、外槽オイル貯留部12aよりも低く維持される。一方、エンジンの停止時にオイル温度が所定値以下であったとき、及び停止後にオイル温度が所定値以下になるとサーモスタット弁装置30が開き、内槽オイル貯留部14aと外槽オイル貯留部12aのオイルレベルが等しくなるように、外槽オイル貯留部12aから内槽オイル貯留部14aへオイルが流入することになる。
【0035】
かくて、オイル温度が所定値を超えているときのエンジンの再始動の際には、サーモスタット弁装置30と共に底部開閉弁20も閉じられるので、オイル温度が所定値を超えている内槽オイル貯留部14aのオイルのみが循環されることになる。したがって、暖機性がさらに向上されてエンジンのフリクションロスの低減と燃費の向上を実現できる。
【0036】
ここで、内槽オイル貯留部14a又は外槽オイル貯留部12aに一定量以上のオイルが貯留された場合には、その一定量以上のオイルは複数の連通孔16aから外槽オイル貯留部12a又は内槽オイル貯留部14aに流入され、内槽オイル貯留部14a又は外槽オイル貯留部12aのオイル量が増大し過ぎず適正量となるように調整される。
【0037】
次に、上述の実施形態に対して部分的に変更ないしは追加した二槽式オイルパン装置の他の実施形態について説明する。但し、変更ないしは追加した構成以外の構成については、基本的に、上述の実施形態と同様の構成であるので、同一の部位には同一符号を付して重複説明を避けることとする。
【0038】
そこで、他の実施形態に係る二槽式オイルパン装置10’は、図4及び5に示すように、内槽部材14の上部に設けられ、エンジンから戻るオイルを受けて開口15aを介して内槽オイル貯留部14aに案内する受け皿部材15と、エンジンの停止時に受け皿部材15の開口15aを閉じ、エンジンの運転時には当該受け皿部材15の開口15aを開く受け皿部材開閉弁22と、内槽部材14に形成され、当該受け皿部材15との接触部位の上方の連通孔17と、をさらに備えている。
【0039】
そして、この他の実施形態においては、受け皿部材開閉弁22の弁体22aが作動ロッド25gの一端に連結され、さらに、作動ロッド25gの他端が上述の底部開閉弁20の弁体20aに連結されている。換言すると、底部開閉弁20と受け皿部材開閉弁22とは、それぞれの弁体20a及び弁体22aが協働する作動ロッドでもって連動されている。
【0040】
上に説明した他の実施形態に係る二槽式オイルパン装置10’によれば、先ず、エンジンの始動を含む運転時には、アクチュエータ25のバキューム導入室25cにエンジンの吸入負圧が導入され、圧力感知部材25eが吸引されることにより作動ロッド25a及びこれと協働する作動ロッド25gが共に引かれる。その結果、作動ロッド25aに連結されている底部開閉弁20の弁体20aが底部連通孔16b及び連通口20cを閉じると共に、作動ロッド25gに連結されている受け皿部材開閉弁22の弁体22aが受け皿部材15の開口15aを開く。したがって、前実施形態と同様に、エンジンの始動と同時に底部開閉弁20が底部連通孔16b及び連通口20cを閉じる、換言すると、内槽オイル貯留部14aと外槽オイル貯留部12aとの連通が遮断されるので、内槽オイル貯留部14aのオイルのみがストレーナ18によって吸い上げられてエンジン内に供給される。そして、エンジン内に供給されて暖められたオイルが、受け皿部材15に滴下して回収され、その開口15aを介して内槽オイル貯留部14aに流れ落ちて循環する。
【0041】
そして、エンジンが停止すると、アクチュエータ25のバキューム導入室25cへのバキューム供給が無くなるために、圧力感知部材25eがリターンスプリング25fによって戻され(又は、弁体20aに作用する浮力によって)底部開閉弁20の弁体20aは底部連通孔16b及び連通口20cを開くと共に、受け皿部材開閉弁22の弁体22aは受け皿部材15の開口15aを閉じる。従って、エンジンの停止時には、図5に示すように、受け皿部材開閉弁22によって受け皿部材15の開口15aが閉じられるので、エンジンから戻る暖められたオイルは、内槽部材14に形成された連通孔17を介して外槽オイル貯留部12aに流入することになる。
【0042】
ここで、底部開閉弁20が開かれた場合であっても、上述のように、連通路30aに設けられたサーモスタット弁装置30はオイル温度が所定値を超えるときに当該連通路30aを閉じ、オイル温度が当該所定値以下のときには当該連通路30aを開くように作動するので、オイル温度が所定値を超えるときは、外槽オイル貯留部12aから内槽オイル貯留部14aへのオイルの流入が抑制される。従って、内槽オイル貯留部14aのオイルレベルは低く維持されつつ外槽オイル貯留部12aのオイルレベルは上昇し、連通孔16aを越えた分が内槽オイル貯留部14aに流下することになる。
【0043】
一方、エンジンの停止時にオイル温度が所定値以下であったとき、及び停止後にオイル温度が所定値以下になるとサーモスタット弁装置30が開き、内槽オイル貯留部14aと外槽オイル貯留部12aのオイルレベルが等しくなるように、外槽オイル貯留部12aから連通路30aを介して内槽オイル貯留部14aへオイルが流入することになる。かくて、外槽オイル貯留部12aから連通口20cを介しての内槽オイル貯留部14aへのオイルの流入が促進され、オイルパン内のオイルを全体的に満遍なく使用し、そのオイルの全体的な劣化をさらに抑制できる。
【0044】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記開示事項以外の種々の変更ないしは追加を付加して実施可能であることは言うまでもない。例えば、アクチュエータとしてバキューム式の例を示したが、エンジンの運転又は停止に連携して作動するモータ式のアクチュエータを用いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10、10’ 二槽式オイルパン装置
10A 第1室
10B 第2室
12 外槽部材
12a 外槽オイル貯留部
12b 底板
12c 側板
13 ドレインプラグ
14 内槽部材
14a 内槽オイル貯留部
15 受け皿部材
15a 開口
16a 上部連通孔
16b 底部連通孔
17 連通孔
18 オイルストレーナ
20 底部開閉弁
20a 弁体
22 受け皿部材開閉弁
22a 弁体
25 アクチュエータ
25a、25g 作動ロッド
25f リターンスプリング
30 サーモスタット弁装置
30a 連通路
30b 開口
30c 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽部材とその内側に配置された内槽部材とを備え、内槽部材の内側の内槽オイル貯留部と外槽部材の内側で内槽部材との間の外槽オイル貯留部とを備える二槽式オイルパン装置であって、
前記内槽部材の底部に設けられ、エンジンの停止時に前記内槽オイル貯留部と前記外槽オイル貯留部とを連通し、エンジンの運転時には前記内槽オイル貯留部と前記外槽オイル貯留部との連通を遮断する底部開閉弁と、
前記底部開閉弁が開いたとき、前記内槽オイル貯留部と前記外槽オイル貯留部とを連通する連通路と、
前記連通路に設けられ、オイル温度が所定値を超えるときに当該連通路を閉じ、当該所定値以下のときには当該連通路を開くように作動するサーモスタット弁装置と、
を備えることを特徴とする二槽式オイルパン装置。
【請求項2】
前記内槽部材の上部に設けられ、エンジンから戻るオイルを受け開口を介して前記内槽オイル貯留部に案内する受け皿部材と、
エンジンの停止時に当該受け皿部材の開口を閉じ、エンジンの運転時には当該受け皿部材の開口を開く受け皿部材開閉弁と、
前記内槽部材に形成され、当該受け皿部材との接触部位の上方の連通孔と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の二槽式オイルパン装置。
【請求項3】
前記底部開閉弁と前記受け皿部材開閉弁とは、協働する作動ロッドでもって連動されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の二槽式オイルパン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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