説明

二次元電気泳動方法

【課題】二次元電気泳動方法および二次元電気泳動用キットを提供する。
【解決手段】下記工程を含む:(1)ストリップ状の乾燥した第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体とが、互いに間隔をおいて、一つの支持手段上に担持された泳動基板を提供する工程、(2)前記第1の電気泳動分離媒体に、膨潤用溶液を添加し、前記第1の電気泳動分離媒体を飽和状態まで膨潤させ、前記第1の電気泳動分離媒体にサンプルを含浸させる工程、(3)前記第1の電気泳動分離媒体に電場を与えて、前記サンプルを一次分離する工程、(4)その後、液状緩衝剤を前記間隔に流し、さらにゲル化する工程、および(5)前記第1の電気泳動分離媒体および第2の電気泳動分離媒体の双方に、前記第1の電気泳動分離媒体の長手方向に対して実質的に垂直方向に電場を与え、前記第2の電気泳動分離媒体において、二次分離する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元電気泳動方法および二次元電気泳動用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次元電気泳動方法においては、一次元ゲル(一次元目の電気泳動で用いるゲルを意味する)と二次元ゲル(二次元目の電気泳動で用いるゲルを意味する)とが別々の装置において実験にかけられていた。このため、一次元目の電気泳動終了後、一次元目の電気泳動で用いたゲルを取り出し、次に取り出した一次元ゲルを二次元ゲルに接合させていた。ゲルの取り出しと接合は人手により行われるため装置の自動化が難しく、また二次元ゲルに適切に接合するには高度な熟練度が必要で、一次元目のゲルは操作時に容易に切断されたり、伸延したり、折れ曲がったりするという問題があった。
【0003】
このため、近年、一次元ゲルの取り出しと接合による弊害をなくすため、一の支持基板上に一次元ゲルと二次元ゲルとを間隔を置いて担持させる方法(特許文献1)、一次元目の電気泳動終了後に、間隔中に第3の導電性ゲルを注入して一次元ゲルと二次元ゲルとを接触させる方法が試みられている。(特許文献2〜4)
【0004】
一次元ゲルは通常乾燥状態で入手され、等電点電気泳動前に膨潤液で膨潤させる必要があるが、通常、サンプルを含有させた膨潤液による膨潤には数時間〜20時間という長時間を要するという問題があった。また、このように長時間にわたり膨潤を行うとゲルが完全に膨潤する前に膨潤液の蒸発により一次元ゲルが乾燥する場合があるという問題があった。
【0005】
さらに、膨潤後一次元目の等電点電気泳動も、通常、2時間〜13時間程度の長時間を要するという問題がある。一次元目の電気泳動が長時間にわたると、緩衝液で膨潤したゲルが電気泳動中に乾燥してしまうという問題があった。
このため、従来は、一次元目の電気泳動を行う際の一次元ゲルの乾燥を防止し、併せて一次元ゲルと二次元ゲルとを非導電状態とするため、一次元ゲルを非導電性の固体或いは液体で包含する方法が採られていた。そして一次元目の電気泳動終了後、該乾燥防止等のための物質を除去していた。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−193446号公報
【特許文献2】特開昭61−288148号公報
【特許文献3】特開平2−151758号公報
【特許文献4】特表2004−510168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術における問題を解決するもので、二次元電気泳動を短時間でしかも簡便に実施できる二次元電気泳動方法および二次元電気泳動用キットを提供することを課題とする。
より詳しくは、乾燥した一次元ゲルの膨潤を短時間で実施し、トータルの一次元目の電気泳動を短時間でしかも簡便に実施することができる、二次元電気泳動方法および二次元電気泳動用キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、特定の膨潤液を用いることにより、膨潤時間を著しく短縮できることを見出した。
さらに、本発明では、前記第1の電気泳動分離媒体を冷却しながら、該第1の電気泳動分離媒体に電場を与えて、前記サンプル中の成分を一次元目の分離を実施することにより、該第1の電気泳動分離媒体へ任意の電流量を供給することができる。これにより、電場供給開始直後から大電力を供給することが可能となるが、特定の電場を供給することにより、一次元目の分離(一次分離)時間をより短縮できることを見出した。
すなわち、本発明は下記を含む。
【0009】
〔1〕 下記工程を含む、二次元電気泳動方法:
(1)ストリップ状の乾燥した第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体とが、互いに間隔をおいて、一つの支持基板上に担持された二次元電気泳動基板を提供する工程、
(2)前記乾燥した第1の電気泳動分離媒体に、水よりも極性が高い有機溶媒を含有する膨潤用溶液を添加して、前記乾燥した第1の電気泳動分離媒体を飽和状態まで膨潤させるとともに、前記第1の電気泳動分離媒体にサンプルを含浸させる工程、
(3)前記第1の電気泳動分離媒体を冷却しながら、該第1の電気泳動分離媒体に電場を与えて、前記サンプル中の成分を一次分離する工程、
(4)一次分離を実施した後、液状緩衝剤を前記間隔に流し、さらに該液状緩衝剤をゲル化する工程、および
(5)前記第1の電気泳動分離媒体および第2の電気泳動分離媒体の双方に、前記第1の電気泳動分離媒体の長手方向に対して実質的に垂直方向に電場を与え、前記第2の電気泳動分離媒体において、前記一次分離された成分を二次分離する工程。
〔2〕 前記工程(2)において、水よりも極性が高い有機溶媒が、水よりも極性が高い有機酸である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕 前記工程(2)において、膨潤用溶液中の水よりも極性が高い有機溶媒の含有量が、5体積%(有機溶媒の体積/水溶液全体の体積×100(%))以上である、〔1〕に記載の方法。
〔4〕 前記工程(3)において、第1の電気泳動分離媒体の温度が、電場が供給されている間0〜20℃である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 前記工程(3)において、電場の供給開始直後から、単位体積あたりの電力量を1〜120mW/mm3の範囲にして電場の供給を行う、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 前記工程(4)で用いる液状緩衝剤が、アガロースを含有する、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 前記液状緩衝剤が、pH6.8であり、さらにマイナスイオンを含有する、〔6〕に記載の方法。
〔8〕 前記工程(1)において、前記第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体との間の間隔が、気体により隔てられている、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕 ストリップ状の乾燥した第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体とが、互いに間隔を置いて、一つの支持手段上に備えられ、
前記支持手段には、乾燥した第1の電気泳動分離媒体の膨潤用に、水よりも極性が高い有機溶媒を含有する膨潤用溶液の供給手段が備えられている、二次元電気泳動用キット。
〔10〕 前記支持手段に、さらに冷却手段が前記第1の電気泳動分離媒体の冷却を可能とするように備えられている、〔9〕に記載のキット。
〔11〕 前記支持手段が、さらに、サンプルの一次分離後に前記間隔に流し込むための、液状緩衝剤の供給手段を有している、〔9〕または〔10〕に記載のキット。
〔12〕 前記冷却手段が、ペルチェ素子である、〔10〕に記載のキット。
〔13〕 前記液状緩衝剤が、アガロースおよびマイナスイオンを含有し、pHが6.8である、〔11〕に記載のキット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の膨潤液を用いるので、これまで数時間〜20時間要していた膨潤時間を、たとえば10〜20分程度に著しく短縮できる。特に、膨潤のための緩衝液を一定の条件で添加することにより、膨潤時間をより短縮できる。
また、前記第1の電気泳動分離媒体を冷却しながら、該第1の電気泳動分離媒体に電場を与えて、前記サンプル中の成分を一次分離するので、該第1の電気泳動分離媒体へ任意の電流量を供給することができる。第1の電気泳動分離媒体への電場を特定の条件で供給することにより、これまで2〜13時間要していた一次分離時間を、たとえば10〜20分程度に著しく短縮できる。これにより、一次元目の電気泳動に際し、一次元ゲルの乾燥防止のため液体または固体で一次元ゲルを保護する必要がなくなり、極めて簡便な操作で二次元電気泳動を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<二次元電気泳動方法>
本発明に係る二次元電気泳動方法は、下記工程を含む。
(1)ストリップ状の乾燥した第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体とが、互いに間隔をおいて、一つの支持手段上に担持された二次元電気泳動基板を提供する工程、
(2)前記乾燥した第1の電気泳動分離媒体に、水よりも極性が高い有機溶媒を含有する膨潤用溶液を添加して、前記乾燥した第1の電気泳動分離媒体を飽和状態まで膨潤させるとともに、前記第1の電気泳動分離媒体にサンプルを含浸させる工程、
(3)前記第1の電気泳動分離媒体を冷却しながら、該第1の電気泳動分離媒体に電場を与えて、前記サンプル中の成分を一次分離する工程、
(4)一次分離を実施した後、液状緩衝剤を前記間隔に流し、さらに該液状緩衝剤をゲル化する工程、および
(5)前記第1の電気泳動分離媒体および第2の電気泳動分離媒体の双方に、前記第1の電気泳動分離媒体の長手方向に対して実質的に垂直方向に電場を与え、前記第2の電気泳動分離媒体において、前記一次分離された成分を二次分離する工程。
以下、各工程ごとに説明する。
【0012】
工程(1)
前記工程(1)で供給される二次元電気泳動基板において、前記第1の電気泳動分離媒体は、水又は水溶性溶液の吸収により膨張する乾燥ゲルであり、通常、使用する直前に水あるいは水溶性溶液で膨潤させる。
このようなゲルとしては、ポリアクリルアミドゲルが挙げられる。このようなゲルは、等電点電気泳動を行うIPGゲル(固定化pH勾配ゲル)である。
【0013】
第1の電気泳動分離媒体の形状は特に限定はないが、通常、細長い薄板状であり、たとえばストリップ状である。ストリップの長手方向の両端は、一次元目の電気泳動を行うことができるよう電極を備えることができる。
第1の電気泳動分離媒体の寸法に限定はないが、本発明では、膨潤後においても、極めて細く薄い形状のものを採用できる。たとえば、飽和状態の膨潤後において、厚さ0.1〜1.0mm、短手方向の長さ0.5〜5.0mmであるようなものを用いることもできる。長手方向の長さは、基板の大きさにより異なり限定されない。
【0014】
前記第2の電気泳動分離媒体は、スラブゲルを用いることができる。スラブゲルは公知のスラブゲルを用いることができる。スラブゲルは一般に水性ゲルであり、たとえば、ポリアクリルアミドゲル、デンプンゲル、寒天ゲルなどが挙げられる。このゲルは好ましくは均一な濃度又は濃度勾配である。
【0015】
これらの第1の電気泳動分離媒体と第2の電気泳動分離媒体とは、一つの支持手段上に、互いに間隔を置いて担持されている。第2の電気泳動分離媒体は、第1の電気泳動分離媒体と対面し、好ましくはこれと平行な面を有する。本発明では、第1の電気泳動分離媒体の膨潤、および一次元目の電気泳動の際、該媒体の間隔は、空気などの気体により隔てられていればよく、液体、固体、あるいはバリヤーなどで仕切る必要はない。
【0016】
前記間隔は、二次元電気泳動の大きさにより異なり限定されないが、好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは1〜3mm程度の比較的狭い隙間とすることができる。
【0017】
本発明で用いることのできるサンプルは、DNA、RNA、またはタンパク質などを含む。このうち、本発明はタンパク質の分離に特に有効である。タンパク質としては、好ましくは水溶性タンパク質である。
電気泳動に先立って、タンパク質等のサンプルは蛍光標識しておくことができる。またこのとき、同じ条件で等電点マーカーも泳動しておくことができる。
【0018】
工程(2)
本発明では、前記第1の電気泳動分離媒体の膨潤に、水よりも極性が高い有機溶媒を含有する膨潤用溶液を用いる。すなわち膨潤用溶液は、水および水よりも極性が高い有機溶媒を含有する。
【0019】
水よりも極性が高い有機溶媒のうち、好ましくは水よりも極性が高い有機酸、水よりも極性が高い有機塩基などが挙げられる。これらのうちでは、有機酸が好ましい。前記有機酸のうちでは、たとえば、好ましくはギ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられ、さらに好ましくはギ酸、トリフルオロ酢酸であり、特に好ましくはギ酸である。
溶媒の極性は、誘電率測定などの方法により、測定することができる。
【0020】
緩衝液中の前記水よりも極性が高い有機溶媒の含有割合(有機溶媒の体積/水溶液全体の体積×100(%))は、好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上である。含有量の上限値としては、前記第1の電気泳動分離媒体およびサンプルに悪影響を及ぼさない範囲にあればよく、特に限定されないが、たとえば、好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは60体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。
前記水よりも極性が高い有機溶媒の含有割合が上記の量以上であると、前記乾燥した第1の電気泳動分離媒体の膨潤用溶液の膨潤時間を著しく短縮化できる。特に、ポリアクリルアミドゲルのIPGゲルの迅速な膨潤に好適である。
【0021】
前記飽和状態とは、膨潤用溶液が最大限に含有された状態であり、膨潤用溶液を添加しても含有量が一定限度にとどまりそれ以上増えない状態を意味する。
【0022】
前記膨潤用溶液は、さらに、尿素、チオウレアなどのタンパク質変性剤、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸などの界面活性剤、ジチオスレイトールなどの還元剤、キャリアアンフォライト(バイオライト:バイオラットラボラトリーズ社製)などの両性化合物などを含有していてもよい。
【0023】
本発明では、二次元電気泳動に供するサンプルは、膨潤用溶液に混入して、該膨潤用溶液とともに添加することができる。
【0024】
工程(3)
前記第1の電気泳動分離媒体を膨潤用溶液で膨潤させた後、該膨張した第1の電気泳動分離媒体の長手方向の両端から電流を流し、一次元目の分離を実施する。膨潤用溶液は、そのまま一次元目の泳動媒体として機能する。
【0025】
第1の電気泳動分離媒体の温度は、一次元目のゲルやサンプルに悪影響を及ぼさない温度に制御できればよいが、たとえば、電場が供給されている間、0℃〜20℃であることが好ましい。
温度制御方法は特に限定されないが、たとえば、ペルチェ素子を第1の電気泳動分離媒体の裏側、あるいは、第1の電気泳動分離媒体の結合する支持手段の裏側に設けることができる。
【0026】
電力の供給方法は、好ましくは、電場の供給開始直後から、単位体積あたりの電力量を好ましくは1〜120mW/mm3、さらに好ましくは5〜100mW/mm3、より好ましくは10〜60mW/mm3の範囲にして電場の供給を行う。このように、一次元目の電気泳動の開始直後から、一定量以上の大電力を供給すると、一次元目の分離時間を著しく短縮できる。
【0027】
以上のようにして一次元目の分離を行うことにより、分離時間の短縮が可能となるため、第1の電気泳動分離媒体に膨潤させた緩衝液の蒸発による第1の電気泳動分離媒体の劣化を抑制できる。すなわち、従来は、緩衝液の蒸発防止のため、一次元目の電気泳動時に一次元目のゲルをパラフィン油や非導電性の固体などで保護していた(たとえば、前記特許文献3、4など)が、上記のような電力供給方法によれば、そのような液体あるいは固体を備える必要がなく、一次元目の電気泳動工程が極めて簡便になる。
【0028】
工程(4)
一次分離を実施した後、液状緩衝液を前記間隔に流し込み、該液状緩衝剤をゲル化することにより、第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体とを該ゲルを介して接触させる。
【0029】
前記液状緩衝剤は、通常、水溶性であり、緩衝液およびアガロースなどのゲル化成分を含有している。
【0030】
緩衝液としては、たとえば、トリス−グリシン緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、トリス−トリシン緩衝液、トリス−リン酸二水素ナトリウム緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液等のような一般にタンパク質などの電気泳動用緩衝液として使用される緩衝液が挙げられる。前記緩衝液は、一般にタンパク質の緩衝液として使用される濃度で使用できる。
【0031】
液状緩衝剤のpHは、好ましくは6〜8である。液状緩衝液のpHの調整は、水酸化ナトリウム、塩酸、ホウ酸、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸−リン酸二ナトリウム緩衝液、β−β’ジメチルグルタル酸−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、マレイン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液等やキャリアアンフォライト(バイオライト;バイオラットラボラトリーズ社製)等により行うことができる。
【0032】
このような液状緩衝剤は、温度変化により液状態からゲル状態へ変化するものであればよい。ゲル化した液状緩衝剤は電気伝導性であることが必要である。
液状緩衝剤に含まれるゲル化成分としては、たとえば、好ましくはアガロース、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミドなどが挙げられ、さらに好ましくはアガロースである。液状緩衝剤中のアガロースの含有割合は、好ましくは0.2〜0.4質量%、さらに好ましくは0.25〜0.35質量%である。
アガロースの含有量が上記範囲にあると、液状緩衝剤の流し込みを効率的に実施できるとともに、二次元目の電気泳動が精度よく実施できる範囲で、一次元目のゲルと二次元目のゲルとを接続させることができる。
【0033】
液状緩衝剤は、さらに好ましくはpH6.8で、マイナスイオンを含有することができる。マイナスイオンとしては、たとえば、塩素イオン、フッ素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどが挙げられ、これらのうちでは、好ましくは塩素イオンである。マイナスイオン濃度は、好ましくは0.1〜0.2Mである。
【0034】
一次元目の電気泳動後、サンプルは前記第1の電気泳動分離媒体の長手方向に分離されるが、二次元目の電気泳動方向にブロードなスポットして分離されることがある。上記条件の液状緩衝剤を用いて前記第1の電気泳動分離媒体と前記第2の電気泳動分離媒体とを接続し、二次元目の電気泳動を行うと、前記ゲル化した液状緩衝剤をサンプルが通過する際、ブロードに存在するサンプルを、該ゲル化した液状緩衝剤中の二次元目の電気泳動方向の狭い範囲内に濃縮させることが可能となる。この結果、二次元目の電気泳動の精度を向上させることができる。
また、アガロースの濃度が上記範囲にあると、サンプルの濃縮の程度を向上させることができる。
【0035】
上記液状緩衝剤は、さらに、適当な界面活性剤:たとえばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などを含有することができる。
【0036】
工程(5)
一次元目のゲルに展開された個々の成分は、上記のゲル化した液状緩衝剤を通って、1次元目のゲルから最も近い二次元目のゲルに移動し、分子量にしたがって展開される。このとき、通常、分子量マーカーを同じ条件で電気泳動しておく。
二次元目の電気泳動は、公知の方法と同様に実施すればよく、特に限定はない。二次元目の電気泳動は、たとえば、トリス−グリシン緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、トリス−トリシン緩衝液、トリス−リン酸二水素ナトリウム緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液等のような一般にタンパク質などの電気泳動用緩衝液として使用される緩衝液を用いて行うことができる。前記緩衝液は、一般にタンパク質の緩衝液として使用される濃度で使用できる。
【0037】
上記緩衝液は、さらに、適当な界面活性剤:たとえばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、グリシンなどを含有することができる。
【0038】
緩衝剤のpHは、好ましくは6〜10である。緩衝液のpHの調整は、水酸化ナトリウム、塩酸、ホウ酸、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸−リン酸二ナトリウム緩衝液、β−β’ジメチルグルタル酸−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、マレイン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液等やキャリアアンフォライト(バイオライト;バイオラットラボラトリーズ社製)等により行うことができる。
【0039】
二次元目の泳動は、通常、好ましくは1〜10V/mmで、5〜20分程度の時間行う。
【0040】
二次元目の泳動を終えたゲル上で、タンパク質等の各成分のスポットを確認する。電気泳動に供したタンパク質の検出法としては、例えば、光による吸収や蛍光検出、電気化学的検出、化学や生化学発光検出、質量検出、熱検出などを用いることができる。
【0041】
たとえば、タンパク質が蛍光標識されていれば、その蛍光を追跡することで個々のスポットを確認することができる。この他、CBB染色や銀染色によってタンパク質のスポットを確認することもできる。こうして分離されたタンパク質などの各成分は、同じ条件で行った二次元電気泳動の結果と比較照合することによって、座標情報に基づいて同定することができる。あるいは未知のタンパク質の解析を進めるには、更に各スポットのタンパク質の同定を進めることができる。
【0042】
<二次元電気泳動用キット、装置>
本発明に係る二次元電気泳動用キットは、ストリップ状の乾燥した第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体とが、互いに間隔を置いて、一つの支持手段上に備えられ、前記支持手段には、乾燥した第1の電気泳動分離媒体の膨潤用に、水よりも極性が高い有機溶媒を含有する膨潤用溶液の供給手段が備えられている。
このような二次元電気泳動用キットは、試料の汚染などの防止のため使い捨て可能なよう、低コストで簡便な構造となっている。
【0043】
第1の電気泳動分離媒体、第2の電気泳動分離媒体、膨潤用溶液は前述のとおりである。前記支持手段とは、第1の電気泳動分離媒体、第2の電気泳動分離媒体を支持するものであればよく、たとえば、プラスチック基板、ガラス基板、表面が電気的に絶縁された金属基板、表面が電気的に絶縁された半導体基板などが挙げられる。
膨潤用溶液の供給手段は、前記支持手段に備えられており、これにより、簡便に膨潤用溶液を乾燥した第1の電気泳動分離媒体に添加することができる。
【0044】
前記支持手段には、さらに冷却手段が、前記第1の電気泳動分離媒体の冷却を可能とするように備えられていてもよい。
前記冷却手段としては、たとえば、ペルチェ素子などを用いることができる。この場合、冷却手段は、特に、前記第1の電気泳動分離媒体の冷却に用いるものであるため、前述のとおり、たとえばペルチェ素子を第1の電気泳動分離媒体の裏側、あるいは、第1の電気泳動分離媒体の結合する支持手段の裏側に設ければよく、支持手段全体に設ける必要はない。
【0045】
前記支持手段は、さらに、サンプルの一次分離後に前記間隔に流し込むための、液状緩衝剤の供給手段を有していてもよい。
該液状緩衝剤は、上述のとおり、たとえば、アガロースおよびマイナスイオンを含有していてもよく、またpHは好ましくは6〜8、さらに好ましくは6.8である。
液状緩衝剤の供給手段は、前記支持手段に備えられており、これにより、簡便に液状緩衝剤を前記間隔に流し込むことができる。
【0046】
以下に図を用いて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1、2は、本発明に係る二次元電気泳動用キットの模式図およびその断面図の一例である。第1の電気泳動分離媒体1、および第2の電気泳動分離媒体2は、支持基板8上に隙間(ジャンクション部)9を有して備えられる。第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体とは互いに平行な面で対面して配置されている。また、二次元目の電気泳動用バッファー槽3、4が設けられている。
【0047】
前記第1の電気泳動分離媒体1は使用前は乾燥しているが、使用直前に、膨潤用溶液を添加する。膨潤用溶液の添加は、好ましくは表面張力により第1の電気泳動分離媒体1上から流れ落ちない程度の量を添加する。膨潤後、上述の方法の工程(3)のように、前記第1の電気泳動分離媒体1の長手方向の両端から電力を供給して一次元目の電気泳動を実施する。一次元目の電気泳動後、間隔9に液状緩衝剤を流し込み、さらにこれをゲル化させて、第1の電気泳動分離媒体1、および第2の電気泳動分離媒体2を接合させる。次に、緩衝溶液槽3、4に電極を通し、二次元目の電気泳動を行うことができる。
【0048】
また、第1の電気泳動分離媒体1の裏側、あるいは、第1の電気泳動分離媒体1の結合する位置の支持手段1の裏側に、ペルチェ素子を設けることができる(図示せず)。
これにより、一次元目の電気泳動に際し、通電に伴って、簡便に第1の電気泳動分離媒体1の冷却を簡便かつ効率よく実施できる。
【0049】
図3に示すように、膨潤用溶液は、支持手段1に備えられた膨潤用溶液の供給手段5を用いて行うこともできる。該膨潤用溶液の供給手段5は、緩衝液を放出する液だめなどである。
また、支持手段8には、間隔9に注入する液状緩衝剤の供給手段が備えられていてもよい(図示せず)。該液状緩衝剤の供給手段は、緩衝剤を放出する液だめなどである。
このような膨潤用溶液の供給手段5、液状緩衝剤の供給手段が備えられていると、操作の自動化を図ることができ、迅速で正確な電気泳動を実施できる。特に、たとえば、前記前記第1の電気泳動分離媒体1の幅が数ミリ単位、あるいは前記間隔9も数ミリ単位となっても、正確にこれらの緩衝液の供給が可能となるという利点がある。
【実施例】
【0050】
以下実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕
一次元目ゲルの膨潤時間の溶媒組成依存性
一次元目の乾燥ゲルとして、ポリアクリルアミド乾燥pH勾配固定化ゲル(インビトロジェン社製、厚さ0.02mm×短手方向の幅0.8mm×長手方向の長さ52mm)を用いた。添加する溶媒として蒸留水とギ酸の2液の混合溶媒で、ギ酸の割合を0%、5%、10%、20%、40%、100%(ギ酸の体積/水溶液全体の体積×100(体積%))に変えた溶液を用いた。ギ酸の極性は比誘電率として58であり、水の比誘電率である40よりも大きい。
【0052】
上記ポリアクリルアミド乾燥pH勾配固定化ゲルは、完全にゲルが膨潤するとゲルの高さは0.5mmになることをオリンパス社製測長顕微鏡STM6(総合倍率500倍)にて測定した。
上記混合溶媒を添加してゲルの膨潤に要する時間を測定した。
測定は、測長顕微鏡(総合倍率500倍)を用い、目視にてゲルの高さが0.5mmになるまでの時間を計測した。
【0053】
結果を図4に示す。溶媒割合を変化させた溶液を横軸に、ゲルの高さが0.5mmに達するまでに要した時間を縦軸に表した。その結果、水だけでは膨潤に35分以上を要したが、ギ酸の割合が5%の時では18分、さらに20%以上ではほぼ一定の5分程度と、極めて短時間で膨潤を行うことができた。
【0054】
〔比較例1〕
一次元目ゲルの膨潤時間の溶媒組成依存性
実施例1においてギ酸の代わりにメタノールを用い、実施例1と同様にしてゲルの膨潤時間を測定した。メタノールの極性は比誘電率として32であり、水の極性よりも小さい。
【0055】
結果を図4に示す。メタノールを加えた水溶液ではすべてのメタノール割合において、35分以上の時間を要し、水だけの時よりも膨潤に長い時間を要した。
〔実施例2〕
【0056】
図1、2、3に示すように、一次元目の電気泳動用ゲル1(ゲル1)として、ポリアクリルアミド乾燥pH勾配固定化ゲル(インビトロジェン社製、厚さ0.02mm×短手方向の幅0.8mm×長手方向の長さ52mm)をプラスチック製の支持基板8の所定の位置に置いた。
【0057】
二次元目の電気泳動用ゲル2(ゲル2)はポリアクリルアミドゲルであり、その緩衝液には375mMトリス塩酸バッファー(pH8.8)を用いた。
ゲル1の長手方向の横は、支持基板の壁と接することが無いよう空間でさえぎられ、ゲル1とゲル2とは互いに接触しない用に配置され、ゲル1とゲル2とは互いに電気的に絶縁されている。
【0058】
次にタンパク質変性剤(尿素6M、チオウレア2M)、界面活性剤(CHAPS(同仁化学社製))2%(w/v)、還元剤(ジチオスレイトール)20mM、キャリアーアンフォライト(インビトロジェン社製)0.5%(v/v)、ギ酸10%(v/v)を含む膨潤用溶液を用意し、該膨潤用溶液に試料サンプルを添加し、サンプル入り膨潤用溶液を20μL用意した。サンプルは、ヒトグロビンのβ鎖を異なる程度でカルバミル化した13個の化合物(第一化学薬品社製)を用いた。該サンプルは、CBB(Coomassie brilliant blue)(バイオラッド社製)で染色した。
【0059】
上記サンプル入りの膨潤用溶液を基板に備え付けの液だめ5を用いてゲル1に添加し、ゲル1を膨潤させた。添加は15分間静置後、一次元目の電気泳動用の電極6をゲル1の長手方向の端に接触させて等電点電気泳動を行った。
【0060】
電極間6に当初から60mW/mm3以内の電力(0-5000 V (リニア)で4分間、5000-6000 V (リニア)で1分間、6000 Vで5分間)をかけ、合計10分間電気を流した。この時熱の発生によるゲルの乾燥や燃焼を防ぐため、ゲル1を0〜5℃になるようにペルチェ素子で冷却した。
【0061】
以上のとおり、泳動開始直後から、高電力を供給することにより、短時間でサンプルのフォーカシングを完了できた。結果を図5に示すように、電気泳動により試料サンプルが分離された。
〔実施例3〕
【0062】
一次元目の電気泳動後の一次元目ゲルと二次元目ゲルの接続方法について実験した。
サンプルとして、ウシ血清アルブミン(シグマ社製)と馬心臓由来ミオグロビン(シグマ社製)の混合物を用いた。図2に示すようなゲル1として実施例1と同様のポリアクリルアミドゲルを用い、上記のサンプルを実施例2と同様の方法でゲル内に注入した(図6A)。
ゲル2として実施例2と同様のポリアクリルアミドゲルを用い、これらのゲルの溝9に、95℃で加温し液状化した125mMトリス塩酸緩衝溶液(pH 6.8)、0.25%アガロース混合液を基板に備え付けの液だめから注入した。5分以内でアガロースはゲル化した。つぎに緩衝溶液槽3、4に二次元目の電気泳動用の緩衝溶液(0.19Mグリシン、SDS、25mMトリスアミノメタンを含む)を注入し、陰極として一次元目のゲルに近い緩衝溶液槽3に、陽極として二次元目のゲルに近い緩衝溶液槽4に電極7を接触させ、二次元目の電気泳動を行った(定電圧200V、約15分間)。
【0063】
アガロース内を通るサンプルはアガロース中で濃縮され(図6B)、二次元目のポリアクリルアミドゲルに入ったことを確認した。
図6Cは、二次元目電気泳動においてサンプルが一次元目のポリアクリルアミドゲルから二次元目のポリアクリルアミドゲルに移動したゲルの像である。
〔実施例4〕
【0064】
サンプルとして二次元電気泳動用マーカータンパク質(アミログルコシダーゼ、オボアルブミン、カルボニックアンヒドラーゼ、ミオグロビン)(シグマ社製)を用いた。該タンパク質は、Cy5(アマシャムバイオサイエンス社製)で蛍光標識した。
実施例2で示したのと同様の方法で一次元目ゲルへのサンプル注入と等電点電気泳動を行った。さらに、その後、実施例3と同様の方法で一次元目ゲルと二次元目ゲルを接続し、二次元目の電気泳動を行った。図7に一次元目の電気泳動に続いて行った二次元目の電気泳動後にサンプルが分離された二次元目ポリアクリルアミドゲルの像を示す。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明に係る二次元電気泳動用キットの模式図の一例である。
【図2】図2は、本発明に係る二次元電気泳動用キットの断面図の一例である。
【図3】図3は、溶液の注入器具を有する二次元電気泳動用キットの模式図の一例である。
【図4】図4は、一次元目ゲルの膨潤時間の溶媒組成依存性(メタノール含有溶媒およびギ酸含有溶媒)を示すグラフである。縦軸は、最大ゲル厚(0.5mm)に達するまでの時間(分)、横軸はギ酸またはメタノールの含有割合(ギ酸又はメタノールの体積/水溶液全体の体積×100)(%)を示す。
【図5】図5は、一次元目の電気泳動後にヒトグロビンのβ鎖を異なる程度でカルバミル化した13個の化合物が分離された一次元目のゲルの写真を示す。サンプル(pIマーカー)はCBBで染色して検出した。
【図6】図6は、一次元目の電気泳動後、二次元目の電気泳動により、第1の電気泳動分離媒体中のウシ血清アルブミンとミオグロビンとが、ジャンクション部を経由して第2の電気泳動分離媒体中で各成分に分離された結果を示す写真である。図6Aは二次元目の電気泳動前、図6Bは二次元目の電気泳動中で、タンパク質がジャンクション部(アガロースゲル中)に展開した状態、図6Cは二次元目の電気泳動により、タンパク質が二次元目のポリアクリルアミド中で分離した状態を示す。
【図7】図7は、二次元目の電気泳動により、第2の電気泳動分離媒体中で、蛍光ラベルしたタンパク質(アミログルコシダーゼ、オボアルブミン、カルボニックアンヒドラーゼ、ミオグロビン)が分離された結果を示す写真である。
【符号の説明】
【0066】
1 第1の電気泳動分離媒体
2 第2の電気泳動分離媒体
3 緩衝溶液槽
4 緩衝溶液槽
5 膨潤用溶液の供給手段
6 電極
7 電極
8 支持基板
9 間隔(ジャンクション部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含む、二次元電気泳動方法:
(1)ストリップ状の乾燥した第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体とが、互いに間隔をおいて、一つの支持基板上に担持された二次元電気泳動基板を提供する工程、
(2)前記乾燥した第1の電気泳動分離媒体に、水よりも極性が高い有機溶媒を含有する膨潤用溶液を添加して、前記乾燥した第1の電気泳動分離媒体を飽和状態まで膨潤させるとともに、前記第1の電気泳動分離媒体にサンプルを含浸させる工程、
(3)前記第1の電気泳動分離媒体を冷却しながら、該第1の電気泳動分離媒体に電場を与えて、前記サンプル中の成分を一次分離する工程、
(4)一次分離を実施した後、液状緩衝剤を前記間隔に流し、さらに該液状緩衝剤をゲル化する工程、および
(5)前記第1の電気泳動分離媒体および第2の電気泳動分離媒体の双方に、前記第1の電気泳動分離媒体の長手方向に対して実質的に垂直方向に電場を与え、前記第2の電気泳動分離媒体において、前記一次分離された成分を二次分離する工程。
【請求項2】
前記工程(2)において、水よりも極性が高い有機溶媒が、水よりも極性が高い有機酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(2)において、膨潤用溶液中の水よりも極性が高い有機溶媒の含有量が、5体積%(有機溶媒の体積/水溶液全体の体積×100(%))以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(3)において、第1の電気泳動分離媒体の温度が、電場が供給されている間0〜20℃である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記工程(3)において、電場の供給開始直後から、単位体積あたりの電力量を1〜120mW/mm3の範囲にして電場の供給を行う、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記工程(4)で用いる液状緩衝剤が、アガロースを含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記液状緩衝剤が、pH6.8であり、さらにマイナスイオンを含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(1)において、前記第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体との間の間隔が、気体により隔てられている、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ストリップ状の乾燥した第1の電気泳動分離媒体と、第2の電気泳動分離媒体とが、互いに間隔を置いて、一つの支持手段上に備えられ、
前記支持手段には、乾燥した第1の電気泳動分離媒体の膨潤用に、水よりも極性が高い有機溶媒を含有する膨潤用溶液の供給手段が備えられている、二次元電気泳動用キット。
【請求項10】
前記支持手段に、さらに冷却手段が前記第1の電気泳動分離媒体の冷却を可能とするように備えられている、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記支持手段が、さらに、サンプルの一次分離後に前記間隔に流し込むための、液状緩衝剤の供給手段を有している、請求項9または10に記載のキット。
【請求項12】
前記冷却手段が、ペルチェ素子である、請求項10に記載のキット。
【請求項13】
前記液状緩衝剤が、アガロースおよびマイナスイオンを含有し、pHが6.8である、請求項11に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−162405(P2006−162405A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353473(P2004−353473)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)