説明

二次電池用活物質及び二次電池

【課題】 大電流充放電特性に優れ且つエネルギー密度の高い二次電池が実現できる二次電池用活物質及びそれを用いた二次電池を提供すること。
【解決手段】
本発明の二次電池用活物質は、側鎖にラジカル部位をもつとともに、主鎖にポリフェニレンビニレン構造及び/又はポリフェニレンチオフェン構造をもつ高分子化合物を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流充放電特性に優れ且つエネルギー密度が高い二次電池が実現できる二次電池用活物質及びそれを用いた二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノート型コンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ等電子機器の普及に伴い、これら電子機器を駆動するための二次電池の需要が拡大している。近年、これら電子機器は高機能化の進展に伴い消費電力が増大していることや、小型化が期待されていることから、二次電池に対しては容量の増大が求められている。二次電池の中でもリチウムイオン二次電池は高容量化が可能であることから種々の電子機器に利用されている。
【0003】
しかし、一般的なリチウムイオン二次電池は、正極に比重の大きなリチウム含有遷移金属酸化物を用いているので、単位質量当りの二次電池容量は充分とは言えず、より軽量の電極材料を用いて高容量二次電池を開発しようとする試みが検討されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、導電性高分子を正極もしくは負極の材料とする二次電池が開示されている。これは導電性高分子の酸化還元に伴う電解質イオンのドープ、脱ドープ反応を原理とした二次電池である。
【0005】
導電性高分子は、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成されているため、単位質量当たりの二次電池容量の高容量化が期待された。しかしながら、導電性高分子の酸化又は還元反応によって生じる電解質イオンのドープはπ電子共役系の広い範囲にわたり非局在化し、それらが相互作用する性質があるため、電解質イオンのドープ量、すなわち二次電池容量を制限する。そのため、導電性高分子を電極材料とする二次電池では軽量化という点では一定の効果があるものの、大容量という点からは不充分である。
【0006】
一方、特許文献2には電極反応に関与する物質としてラジカル化合物を用いる二次電池が開示されている。これは、安定ラジカルの酸化還元に伴う電解質イオンのドープ、脱ドープ反応を原理とした電池である。
【0007】
ラジカル化合物も、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成されたものであり、更にラジカル化合物では反応する不対電子がラジカル原子に局在化して存在するので、反応部位の濃度を増大させることができるため高容量二次電池が期待できる。しかも、この酸化還元過程において、分子内の化学結合状態の変化やリチウム電池の正極材であるリチウム含有遷移金属酸化物の様な固体内のイオン拡散過程を伴わないため酸化還元反応速度が大きく、大電流での充放電が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4442187号公報
【特許文献2】特許第3687736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、大電流充放電特性に優れ且つエネルギー密度の高い二次電池が実現できる二次電池用活物質及びそれを用いた二次電池を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決する目的で鋭意検討を行った結果、本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の本発明の二次電池用活物質は、二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、化43〜45で表される高分子化合物の少なくとも一種を有することを特徴とする。
【0012】
【化43】

【0013】
【化44】

【0014】
【化45】

【0015】
(なお、R1〜R4は水素、炭素数1〜10のアルキル基からそれぞれ独立して選択される。R1〜R4のうちの少なくとも1つは、化46〜48で表される構造のうちのいずれかである。nは正の整数であり、nの値はそれぞれ独立して選択可能である。)
【0016】
【化46】

【0017】
【化47】

【0018】
【化48】

【0019】
(化46〜48は、*の部分で、前記化43〜45のベンゼン環の炭素原子に結合する。化46〜48中、RはH、OH、CH3又はNH2である。化46〜48中、Yは−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化49〜53のいずれかで置換されてもよい。)
【0020】
【化49】

【0021】
【化50】

【0022】
【化51】

【0023】
【化52】

【0024】
【化53】

【0025】
請求項3に記載の本発明の二次電池用活物質は、二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、化55で表される高分子化合物を有することを特徴とする。
【0026】
【化55】

【0027】
(なお、R1〜R4は水素、炭素数1〜10のアルキル基からそれぞれ独立して選択される。R1〜R4のうちの少なくとも1つは、化56〜58で表される構造のうちのいずれかである。nは正の整数である。)
【0028】
【化56】

【0029】
【化57】

【0030】
【化58】

【0031】
(化56〜58は、*の部分で、前記化55のベンゼン環の炭素原子に結合する。化56〜58で、RはH、OH、CH3又はNH2である。化56〜58で、Yは−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化59〜63で置換されてもよい。)
【0032】
【化59】

【0033】
【化60】

【0034】
【化61】

【0035】
【化62】

【0036】
【化63】

【0037】
請求項5に記載の本発明の二次電池用活物質は、二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、化65〜67で表される単位化合物の少なくとも一種を主成分とする単量体混合物を、単位化合物のR1〜R4以外に結合した水素が脱離して重合した高分子化合物を有することを特徴とする。
【0038】
【化65】

【0039】
【化66】

【0040】
【化67】

【0041】
(なお、R1〜R4は水素、炭素数1〜10のアルキル基からそれぞれ独立して選択される。R1〜R4のうちの少なくとも1つは、化68〜70で表される構造のうちのいずれかである。nは正の整数である。)
【0042】
【化68】

【0043】
【化69】

【0044】
【化70】

【0045】
(化68〜70は、*の部分で、前記化65〜67のベンゼン環の炭素原子に結合する。化68〜70で、RはH、OH、CH3又はNH2である。化68〜70で、Yは−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化71〜75で置換されてもよい。)
【0046】
【化71】

【0047】
【化72】

【0048】
【化73】

【0049】
【化74】

【0050】
【化75】

【0051】
請求項6に記載の本発明の二次電池用活物質は、二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、化76で表される単位化合物を主成分とする単量体混合物を、単位化合物のR1〜R4以外に結合した水素が脱離して重合した高分子化合物を有することを特徴とする。
【0052】
【化76】

【0053】
(なお、R1〜R4は水素、炭素数1〜10のアルキル基からそれぞれ独立して選択される。R1〜R4のうちの少なくとも1つは、化77〜79で表される構造のうちのいずれかである。nは正の整数である。)
【0054】
【化77】

【0055】
【化78】

【0056】
【化79】

【0057】
(化77〜79は、*の部分で、前記化76のベンゼン環の炭素原子に結合する。化77〜79で、RはH、OH、CH3又はNH2である。化77〜79で、Yは−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化80〜84で置換されてもよい。)
【0058】
【化80】

【0059】
【化81】

【0060】
【化82】

【0061】
【化83】

【0062】
【化84】

【0063】
請求項10に記載の本発明の二次電池は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二次電池用活物質を用いた電極と、電解質と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0064】
本発明の二次電池用活物質は、側鎖にラジカル部位をもつとともに、主鎖にポリフェニレンビニレン構造及び/又はポリフェニレンチオフェン構造をもつ高分子化合物を有する。この高分子化合物は、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成された化合物であり、更に反応する不対電子がラジカル原子に局在化して存在するので、反応部位の濃度を増大させることができることから、二次電池に用いたときに高容量化を達成できる。
【0065】
さらに、この酸化還元過程において、分子内の化学結合状態の変化やリチウム電池の正極材であるリチウム含有遷移金属酸化物の様な固体内のイオン拡散過程を伴わないため酸化還元反応速度が大きく、大電流での充放電が実現できるため、この二次電池用活物質を採用することで、大電流充放電特性に優れ、かつエネルギー密度が高い二次電池が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1のコイン型電池の構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
(第一発明)
本発明の二次電池用活物質は、二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、上記の化43〜45で表される高分子化合物の少なくとも一種を有する。
【0068】
本発明の二次電池用活物質に含まれる高分子化合物は、上記の化43〜45(43〜53)に示したように、側鎖に安定なラジカル部位をもち、主鎖にポリフェニレンビニレン構造を備えている。
【0069】
上記の化43〜45(43〜53)に示した高分子化合物は、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成された化合物であることから、単位質量当たりの二次電池容量を高容量化できる二次電池を得られる効果を発揮する。
【0070】
また、本発明の二次電池用活物質に含まれる高分子化合物は、反応する不対電子がラジカル原子に局在化して存在しているので、反応部位の濃度を増大させることができ、活物質が用いられる二次電池の高容量化を期待できる効果を発揮する。
【0071】
さらに、酸化還元過程において、分子内の化学結合状態の変化やリチウム電池の正極材であるリチウム含有遷移金属酸化物の様な固体内のイオン拡散過程を伴わないため酸化還元反応速度が大きく、大電流での充放電が実現できる。このため、本発明の二次電池用活物質を活物質に採用した二次電池は、大電流充放電特性に優れ、かつエネルギー密度が高いという効果を発揮できる。
【0072】
なお、上記したように、化43〜45(43〜53)に示した高分子化合物は、側鎖に化46〜48に示した安定なラジカル部位(ラジカル構造)をもっている。側鎖の安定なラジカル構造には、高分子化合物内において対カウンタイオンが出入りできる程度の空間(隣接する主鎖の間隔が10Å程度)を確保することが要求される。更に、安定ラジカル構造が、ポリフェニレンビニレン構造をもつ主鎖を作成する重合反応を阻害しない程度に離すことも要求される。そして、化46〜48中のYが、−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化49〜53のいずれかで置換されることで、この要求が満たされる。
【0073】
上記の化43〜45で表される高分子化合物としては、たとえば、下記の化54式に示した高分子化合物をあげることができる。すなわち、本発明の二次電池用活物質において、高分子化合物は化54で表されることが好ましい。
【0074】
【化54】

【0075】
(なお、m、pは0〜10の整数からそれぞれ独立に選択される。nは正の整数である。)
【0076】
(第二発明)
本発明の二次電池用活物質は、二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、上記の化55で表される高分子化合物を有する。
【0077】
本発明の二次電池用活物質に含まれる高分子化合物は、上記の化55に示したように、側鎖にラジカル部位をもつ高分子化合物であって、主鎖にポリフェニレンチオフェン構造を備えている。これらの高分子化合物は、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成された化合物であることから、単位質量当たりの二次電池容量を高容量化できる二次電池を得られる効果を発揮する。
【0078】
また、本発明の二次電池用活物質に含まれる高分子化合物は、反応する不対電子がラジカル原子に局在化して存在しているので、反応部位の濃度を増大させることができ、活物質が用いられる二次電池の高容量化を期待できる効果を発揮する。
【0079】
さらに、酸化還元過程において、分子内の化学結合状態の変化やリチウム電池の正極材であるリチウム含有遷移金属酸化物の様な固体内のイオン拡散過程を伴わないため酸化還元反応速度が大きく、大電流での充放電が実現できる。このため、本発明の二次電池用活物質を活物質に採用した二次電池は、大電流充放電特性に優れ、かつエネルギー密度が高いという効果を発揮できる。
【0080】
なお、上記したように、化55(55〜63)に示した高分子化合物は、側鎖に化56〜58に示した安定なラジカル部位(ラジカル構造)をもっている。側鎖の安定なラジカル構造には、高分子化合物内において対カウンタイオンが出入りできる程度の空間(隣接する主鎖の間隔が10Å程度)を確保することが要求される。更に、安定ラジカル構造が、ポリフェニレンチオフェン構造をもつ主鎖を作成する重合反応を阻害しない程度に離すことも要求される。そして、化56〜58中のYが、−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化59〜63のいずれかで置換されることで、この要求が満たされる。
【0081】
上記の化55で表される高分子化合物としては、たとえば、下記の化64式に示した高分子化合物をあげることができる。すなわち、本発明の二次電池用活物質において、高分子化合物は化64で表されることが好ましい。
【0082】
【化64】

【0083】
(なお、m、pは0〜10の整数からそれぞれ独立に選択される。nは正の整数である。)
【0084】
(第三発明)
本発明の二次電池用活物質は、二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、上記の化65〜67(65〜75)で表される単位化合物の少なくとも一種を主成分とする単量体混合物を、単位化合物のR1〜R4以外に結合した水素が脱離して重合した高分子化合物を有する。本発明の二次電池用活物質に含まれる高分子化合物は、上記の化65〜67(65〜75)に示した単位化合物を重合しており、主鎖にポリフェニレンビニレン構造を備える高分子化合物となっている。また、この高分子化合物は、側鎖にラジカル部位をもつ高分子化合物となっている。すなわち、この高分子化合物は、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成された化合物であることから、単位質量当たりの二次電池容量を高容量化できる二次電池を得られる効果を発揮する。
【0085】
また、本発明の二次電池用活物質に含まれる高分子化合物は、反応する不対電子がラジカル原子に局在化して存在しているので、反応部位の濃度を増大させることができ、活物質が用いられる二次電池の高容量化を期待できる効果を発揮する。
【0086】
さらに、酸化還元過程において、分子内の化学結合状態の変化やリチウム電池の正極材であるリチウム含有遷移金属酸化物の様な固体内のイオン拡散過程を伴わないため酸化還元反応速度が大きく、大電流での充放電が実現できる。このため、本発明の二次電池用活物質を活物質に採用した二次電池は、大電流充放電特性に優れ、かつエネルギー密度が高いという効果を発揮できる。
【0087】
なお、上記したように、化65〜67(65〜75)に示した高分子化合物は、側鎖に化68〜70に示した安定なラジカル部位(ラジカル構造)をもっている。側鎖の安定なラジカル構造には、高分子化合物内において対カウンタイオンが出入りできる程度の空間(隣接する主鎖の間隔が10Å程度)を確保することが要求される。更に、安定ラジカル構造が、ポリフェニレンビニレン構造をもつ主鎖を作成する重合反応を阻害しない程度に離すことも要求される。そして、化68〜70中のYが、−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化71〜75のいずれかで置換されることで、この要求が満たされる。
【0088】
(第四発明)
本発明の二次電池用活物質は、二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、上記の化76で表される単位化合物を主成分とする単量体混合物を、単位化合物のR1〜R4以外に結合した水素が脱離して重合した高分子化合物を有する。本発明の二次電池用活物質に含まれる高分子化合物は、上記の化76(76〜84)に示した単位化合物を重合しており、主鎖にポリフェニレンチオフェン構造を備える高分子化合物となっている。また、この高分子化合物は、側鎖にラジカル部位をもつ高分子化合物となっている。すなわち、この高分子化合物は、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成された化合物であることから、単位質量当たりの二次電池容量を高容量化できる二次電池を得られる効果を発揮する。
【0089】
また、本発明の二次電池用活物質に含まれる高分子化合物は、反応する不対電子がラジカル原子に局在化して存在しているので、反応部位の濃度を増大させることができ、活物質が用いられる二次電池の高容量化を期待できる効果を発揮する。
【0090】
さらに、酸化還元過程において、分子内の化学結合状態の変化やリチウム電池の正極材であるリチウム含有遷移金属酸化物の様な固体内のイオン拡散過程を伴わないため酸化還元反応速度が大きく、大電流での充放電が実現できる。このため、本発明の二次電池用活物質を活物質に採用した二次電池は、大電流充放電特性に優れ、かつエネルギー密度が高いという効果を発揮できる。
【0091】
なお、上記したように、化76(76〜84)に示した高分子化合物は、側鎖に化77〜79に示した安定なラジカル部位(ラジカル構造)をもっている。側鎖の安定なラジカル構造には、高分子化合物内において対カウンタイオンが出入りできる程度の空間(隣接する主鎖の間隔が10Å程度)を確保することが要求される。更に、安定ラジカル構造が、ポリフェニレンチオフェン構造をもつ主鎖を作成する重合反応を阻害しない程度に離すことも要求される。そして、化77〜79中のYが、−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化80〜84のいずれかで置換されることで、この要求が満たされる。
【0092】
(第三及び第四発明)
上記の第三及び第四発明の二次電池用活物質において、高分子化合物を生成するための重合反応は、特に限定しない。そして、一般的な化学重合により何らかの有機溶剤に可溶性の高分子化合物を製造してもよい。有機溶媒に可溶な高分子化合物を製造すれば、溶液を塗布・乾燥することで電極の形成を行うことができる。また、高分子化合物として溶媒に不溶なものであっても、集電体の表面上に重合した高分子化合物が付着するようにすることもできる。例えば、電解重合などを例示できる。
【0093】
更に、第三及び第四発明の二次電池用活物質においては、化65〜67(65〜75),化76(76〜84)に示した単位化合物以外にも、他の単量体を共重合させてもよい。共重合可能なその他の単量体としては特に限定しないが、導電性が充分に発揮できるような構造をもつもの(例えば、ピロール、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基にて置換されたピロール、チオフェン、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基にて置換されたチオフェン)が採用できる。その他の単量体を共重合することで、電解液に対する親和性や安定性を制御したりすることができる。
【0094】
すなわち、上記の第三及び第四発明の二次電池用活物質において、単量体混合物は、ピロール、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基にて置換されたピロール、チオフェン、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基にて置換されたチオフェンの少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0095】
これらの複素環式芳香族化合物は、上記した第三〜第四発明の単位化合物(化65〜67(65〜75),化76(76〜84))と共重合させて導電性高分子化合物を形成することが可能である。そして、これらの複素環式芳香族化合物の電池を構成したときに、電極反応に寄与する。つまり、これらの複素環式芳香族化合物の種類や添加量を調節することで、電極活物質、その電極活物質を有する電極及び二次電池の性能を調節できる。
【0096】
複素環式芳香族化合物としては、水素が脱離することで上記の単位化合物と共重合できること、並びに、上記の単位化合物と共重合することで共役系を形成できるものを用いることができる。
【0097】
単量体として上述したような導電性が充分に発揮できる構造をもつ複素環式芳香族化合物を採用する場合は、化65〜67(65〜75),化76(76〜84)に示した単位化合物と、その他の単量体と、が合わさった混合物が単量体混合物中で主成分として存在すればよい。化65〜67(65〜75),化76(76〜84)に示した単位化合物と、その他の単量体との混合比は特に限定しないが、1:10〜10:1程度の範囲を採用することができる。特に化65〜67(65〜75),化76(76〜84)に示した単位化合物を1/2以上含有することが望ましい。
【0098】
(各発明のその他の構成)
本発明の二次電池用活物質は、上記の第一〜第四発明に記載のように、側鎖にラジカル部位をもち、主鎖にポリフェニレンビニレン構造及び/又はポリフェニレンチオフェン構造をもつ高分子化合物を有する。この高分子化合物の分子量は特に限定するものではない。例えば、二次電池を形成したときに、二次電池に用いられる電解液に溶解して散逸しない程度の分子量を採用したり、固体となる分子量を採用できる。具体的には、分子量が1000〜100000程度の値を採用できる。従って、分子量に応じて各式中のnの値を決定することができる。具体的には、1000〜50000の範囲内であることが好ましい。更に具体的には、高分子化合物が上記の化54であり、リチウム電池(リチウムイオン電池)に用いられるときには、1000〜50000の範囲内であることが好ましい。高分子化合物が上記の化64であり、リチウム電池(リチウムイオン電池)に用いられるときには、1000〜50000の範囲内であることが好ましい。
【0099】
本発明の二次電池用活物質は、上記の第一〜第四発明に記載のように、側鎖にラジカル部位をもつ高分子化合物を有すること以外の構成は、限定されるものではなく、従来公知の二次電池用活物質と同様の構成とすることができる。
【0100】
すなわち、上記の第一〜第四発明の二次電池用活物質は、化43〜45,55,65〜67,76に記載の高分子化合物だけではなく、従来の二次電池において活物質として用いられている化合物と混合して用いることができる。
【0101】
このような化合物としては、たとえば、リチウムイオン二次電池の正極活物質であるリチウム含有遷移金属酸化物をあげることができる。リチウム含有遷移金属酸化物は、Liイオン(Li)を脱挿入できる材料であり、層状構造またはスピネル構造のリチウム−金属複合酸化物を挙げることができる。具体的には、Li1−ZNiO、Li1−ZMnO、Li1−ZMn、Li1−ZCoOなどの金属酸化物系材料をあげることができる。さらに、Li1−ZβPOとしては、LiFePOをあげることができ、それらを1種以上含む化合物をあげることができる。なお、Zは0から1未満の数を示す。また、各々の金属酸化物系材料は、Li、Mg、Al、又はCo、Ti、Nb、Cr等の遷移金属を添加または置換した材料等であってもよい。さらに、これらのリチウム−金属複合酸化物を単独で用いるばかりでなくこれらを複数種類混合して用いてもよい。
【0102】
すなわち、上記の第一〜第四発明の二次電池用活物質は、正極活物質であることが好ましく、正極活物質がリチウム含有遷移金属酸化物を含有することが好ましい。
【0103】
(二次電池)
本発明の二次電池は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の二次電池用活物質を用いた電極と、電解質と、を有する。すなわち、本発明の二次電池は、上記の第一〜第四発明に記載の二次電池用活物質を備えた電極を用いた二次電池である。なお、上記の第一〜第四発明に記載の二次電池用活物質を備えた電極は、正極であっても、負極であっても、正極と負極の両極であっても、いずれでもよい。
【0104】
本発明の二次電池は、上記の第一〜第四発明に記載の二次電池用活物質を備えた電極を用いた二次電池であること以外の構成は、限定されるものではなく、従来公知の二次電池と同様の構成とすることができる。
【0105】
すなわち、本発明の二次電池は、上記の第一〜第四発明に記載の二次電池用活物質を備えた正極及び負極と、電解液と、を有する二次電池であればよく、非水電解液電池であることが好ましく、リチウム電池、リチウムイオン二次電池であることがより好ましい。そして、正極及び負極は、電極活物質、結着材、導電材その他の材料から必要に応じて選択される添加材を混合した電極合材層を、集電体の表面に形成してなることが好ましい。
【0106】
結着材は、高分子材料から形成されることが望ましく、二次電池内の雰囲気において化学的・物理的に安定な材料であることが望ましい。この結着材としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)をあげることができる。
【0107】
導電材としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、非晶質炭素等などが例示できる。また、導電性高分子ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンなどをあげることができる。
【0108】
集電体の表面に電極合材層を形成する方法としては、活物質、結着材、導電材を有する電極合材を適当な分散媒中に分散または溶解させた後、集電体の表面に塗布・乾燥する方法をあげることができる。
【0109】
本発明の二次電池がリチウム電池、リチウムイオン二次電池であるときには、上記の第一〜第四発明に記載の二次電池用活物質を正極活物質に用いることが好ましい。この場合には、負極活物質としては、リチウム、リチウム合金やリチウムを吸蔵放出可能な材料を用いることができる。リチウムを吸蔵放出可能な材料としては、黒鉛、コークス、有機高分子化合物焼成体等の炭素材料を例示できる。そして、正極活物質は、上記したように、更に、リチウム含有遷移金属酸化物などの金属酸化物を混合することができる。
【0110】
本発明の二次電池は、電解質を有する。電解質は、有機溶媒等の溶媒に分散した電解液の状態で二次電池内に保持されることが好ましい。電解液は正極および負極の間のイオンなどの荷電担体の輸送を行う媒体であり、その種類が特に限定されないが、二次電池が使用される雰囲気下で物理的、化学的、電気的に安定なものが望ましい。非水電解液としては、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)の中から選ばれた1種以上を支持電解質とし、これを有機溶媒に溶解させた電解液が好ましい。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等及びこれらの混合物が例示できる。中でもカーボネート系溶媒を含む電解液は、高温での安定性が高いことから好ましい。
【0111】
また、電解質としては、ポリエチレンオキサイドなどの固体高分子に上記の電解質を含んだ固体高分子電解質であってもよい。
【0112】
本発明の二次電池においては、正極と負極との間には電気的な絶縁作用とイオン伝導作用とを両立する部材であるセパレータを介装することが好ましい。支持電解質が液状である場合にはセパレータは、液状の支持電解質を保持する役割をも果たす。セパレータとしては、多孔質合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔質膜をあげることができる。更に、セパレータは、正極及び負極の間の絶縁を担保する目的で、正極及び負極よりも更に大きい形態を採用することが好ましい。
【0113】
本発明の二次電池は、上記の要素以外に、その他必要に応じた要素とからなる。本発明の二次電池は、その形状は特に制限を受けず、コイン型、円筒型、角型等、種々の形状の電池とすることができる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
【0115】
本発明の実施例として、正極活物質及びリチウム二次電池を製造した。
【0116】
(正極活物質の製造)
本実施例の正極活物質として、下記の化85及び化86で示した高分子化合物を製造した。なお、化85に示した高分子化合物は、上記の化54においてm,pのそれぞれが0の高分子化合物である。また、化86に示した高分子化合物は、上記の化64においてm,pのそれぞれが0の高分子化合物である。
【0117】
【化85】

【0118】
【化86】

【0119】
なお、化85に示した高分子化合物は、以下の方法で製造した。
【0120】
まず、トリエチルアミン存在下で、2,5−ジヨード−1,4−ベンゼンジカルボン酸と4−ヒドロキシ−2,2−6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルと反応させることにより、化87で示した化合物を生成した。
【0121】
具体的には、窒素雰囲気下の300mLのシュレンク管に、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−ヒドロキシ−N−オキシル(1.74g)、トリエチルアミン(10mL)、トルエン(100mL)を加えた。ここへ2,5−ジヨード−1,4−ベンゼンジカルボン酸塩化物(2.30g)のトルエン(50mL)溶液を1時間かけて滴下し、反応溶液を室温で21時間撹拌した。反応溶液を水に加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後に、硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。次いで、ろ過を行い、ろ液を濃縮した後に、アルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶液:クロロホルム)で精製することにより、化87で表される生成物2.82gを得た。
【0122】
【化87】

【0123】
化87で示される生成物のスピン濃度測定を電子スピン共鳴装置にて実施した。測定装置には、JEOL−JES−FE2XGを用い、マイクロ波出力8mW、変調周波数100kHz、測定範囲335.0mT±10mTの条件下で測定した。上記測定で得られた吸収面積強度と同一条件下で測定した既知試料の吸収面積強度と比較した結果、化87で示す生成物のスピン濃度は1.0×1021spin/g以上であり、ラジカルを形成していることが確認できた。
【0124】
紫外可視吸収スペクトル(nm):323 (クロロホルム溶液)
赤外スペクトル(cm−1):3437、3082、2974、2934、2867、1715、1462、1366、1331、1279、1261、1224、1179、1140、1125、1046、962、938、908、838、777、688、563、481
この様にして得られた化87で示したジエステル726mg(1.0mmol)と化88で示す1,2−ビス(トリブチルスタンニル)エチレン606mg(1.0mmol)を25mLの無水N,N−ジメチルホルムアミドに加え、さらにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)58mgとヨウ化銅(I)10mgを加えて80℃で2日間反応させて、下記の化89式により高分子化合物を合成した。
【0125】
なお、化89で示した反応式に関して、芳香族ハロゲン化有機化合物や複素環ハロゲン化有機化合物と有機スズ化合物がパラジウム錯体触媒存在下にC−Cカップリング反応を起こし、このカップリング反応をジハロゲン化有機化合物と2つのスズ置換基(SnR(Rはアルキル基等))を持つ有機化合物に応用して重縮合を起こさせると高分子が得られることについては多くの報告例がある(例えば、非特許文献であるJ.Am.Chem.Soc.,117,12426(1995)及びSynlett,425(2003))。
【0126】
【化88】

【0127】
【化89】

【0128】
反応終了後に、反応液をフッ化カリウムの5%水溶液中に加え、撹拌した後にろ過して生成高分子化合物をろ別した。この様にして得られた固体状高分子化合物を、水、メタノール、アセトンで洗浄して真空乾燥して当該高分子化合物350mg(上記の重縮合反応式に基づく収率は83%)を得た。この高分子化合物はクロロホルム中で385nmに紫外・可視吸収ピークを示し、パイ共役系が発達した高分子化合物であることが分かった。
【0129】
また、得られた重合体のスピン濃度測定を電子スピン共鳴装置にて実施した。測定装置には、JEOL−JES−FE2XGを用い、マイクロ波出力8mW、変調周波数100kHz、測定範囲335.0mT±10mTの条件下で測定した。上記測定で得られた吸収面積強度と同一条件下で測定した既知試料の吸収面積強度と比較してスピン濃度を測定した結果、重合体のスピン濃度は2.1×1021spin/g以上であり、ラジカルを形成していることが確認できた。
【0130】
また、化86に示した高分子化合物は、以下の方法で製造した。
【0131】
まず、化87で示すジエステル166mg(0.23mmol)と化90で示す2,5−ビス(トリメチルスタンニル)チオフェン94mg(0.23mmol)を無水N,N−ジメチルホルムアミドに加えた。さらにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)13mgを加えて、実施例1と同様にして、下記の化91式に示した反応式により高分子化合物を合成した。
【0132】
【化90】

【0133】
【化91】

【0134】
反応終了後に、反応液をフッ化カリウムの5%水溶液中に加え、撹拌した後にろ過して生成高分子化合物をろ別した。この様にして得られた固体状高分子化合物を、水、メタノール、アセトンで洗浄して真空乾燥して当該高分子化合物98mg(上記の重縮合反応式に基づく収率は77%)を得た。この高分子化合物はクロロフォルム中で約365nm に紫外・可視吸収ピークを示し、パイ共役系が発達した高分子化合物であることが分かる。化85に示した高分子化合物に比べて、幾分か短波長側に紫外・可視吸収ピークが観測された一つの原因としては、この高分子化合物においてはオルト位に2つの置換基を有するパラフェニレン単位とチオフェン単位との間に立体障害があり、高分子化合物主鎖にねじれが生じてパイ共役系の大きな発達が起こらないためであると考えられる。
【0135】
また、得られた重合体のスピン濃度測定を電子スピン共鳴装置にて実施した。測定装置は、JEOL−JES−FE2XGを用い、マイクロ波出力8mW、変調周波数100kHz、測定範囲335.0mT±10mTの条件下で測定した。上記測定で得られた吸収面積強度と同一条件下で測定した既知試料の吸収面積強度と比較してスピン濃度を測定した結果、重合体のスピン濃度は1.8×1021spin/g以上であり、ラジカルを形成していることが確認できた。
【0136】
(実施例1)
(正極の作製)
上記の化85に示した高分子化合物を30質量部、カーボンブラックを60質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を10質量部にN−メチルピロリドン(NMP)を加え、混合、分散させ均質塗料液を調製した。
【0137】
調製された均質塗料液をアルミニウム製の集電体(膜厚50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断した。
【0138】
これにより、正極が作製された。
【0139】
作製した正極は、アルミニウム製の集電体の表面上に、化85に示した高分子化合物よりなる正極活物質と、カーボンブラックよりなる導電材と、PVDFよりなる結着剤と、を備えた正極合剤層が形成された構成となっている。また、作製した正極は、アルミニウム製の集電体を含めた厚さが100μmであった。
【0140】
(負極の作製)
リチウム金属箔(300μm)を所定のサイズに裁断して作製した。
【0141】
(電解液の調製)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比3:7に混合し、この混合有機溶媒に支持電解質としてLiPFを1mol/Lの濃度となるように溶解して作製した。
【0142】
(電池の作製)
製造された正極を用いてコイン型電池(リチウム二次電池)を製造した。本実施例のコイン型電池1を断面図で図1に示した。本実施例のコイン型電池は、正極2、負極3、電解液4およびセパレータ7を有する。正極2は、正極集電体20と、正極集電体20の表面上に形成された正極合剤層21と、を有する。セパレータ7には、多孔質ポリプロピレン製の多孔質膜を用いた。
【0143】
これらの発電要素をステンレス製のケース(正極ケース50と負極ケース51から構成されている)中に収納した。正極ケース50と負極ケース51とは正極端子と負極端子とを兼ねている。正極ケース50と負極ケース51との間にはポリプロピレン製のガスケット6を介装することで密閉性と正極ケース50と負極ケース51との間の絶縁性とを担保している。
【0144】
コイン型電池1の製造は、まず正極2を、正極ケース50上に、正極集電体20が正極ケース50に当接した状態で置き、その上にセパレータ7をおいた。そして、電解液4をケース内に注液した。
【0145】
そして、内部に負極3を収容し、周辺部にガスケット6を装着した負極ケース51をかぶせ、外周をかしめて本実施例のリチウムイオン二次電池(コイン電池)が製造された。
【0146】
以上の手順により、φ19mm、厚さ3mmのコイン型のリチウム電池を作製した。
【0147】
(評価)
作製したリチウム電池の評価として、充放電容量を測定した。
【0148】
まず、作製したリチウム電池を、0.1mAの電流値で2.5Vから4.1Vまで充電した後、0.1mAの電流値で4.1Vから2.5Vまで放電したときの放電状況を観察した。観察結果によると、3.5V付近で平坦な放電カーブを示し、電池活物質あたりの容量は99mAh/gであった。
【0149】
次に、再度0.1mAの電流値にて2.5Vから4.1Vまで充電した後、1.0mAの電流値で4.1Vから2.5Vまで放電した結果、電極活物質あたりの容量は88mAh/gであり、0.1mAで放電時の約89%の放電容量が得られた。
【0150】
(実施例2)
化85に示した高分子化合物に替えて、上記の化86に示した高分子化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質及びリチウム電池を作製した。
【0151】
本実施例のリチウム電池を実施例1の時と同様に評価した。
【0152】
観察結果によると、3.5V付近で平坦な放電カーブを示し、0.1mA放電時の電池容量は88mAh/gであった。また、1.0mA放電時の電池容量は80mAh/gであり、0.1mAで放電時の約91%の放電容量が得られた。
【0153】
(比較例1)
上記の化85に示した高分子化合物に替えて、LiNiO2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質及びリチウム電池を作製した。
【0154】
本比較例のリチウム電池を実施例1の時と同様に評価した。
【0155】
観察結果によると、0.1mA放電時の電池容量は138mAh/gであった。また、1.0mA放電時の電池容量は78mAh/gであり、0.1mAで放電時の約56%の放電容量が得られた。
【0156】
(比較例2)
上記の化85に示した高分子化合物に替えて、カーボンブラックを用いたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質及びリチウム電池を作製した。
【0157】
本比較例のリチウム電池を実施例1の時と同様に評価した。
【0158】
観察結果によると、平坦な放電カーブは見られず、電池容量もほとんど得られなかった。
【0159】
(評価結果)
上記の評価から、各実施例のリチウム二次電池は、電池容量及び放電容量が各比較例の二次電池と比較して高いことが確認できた。すなわち、各実施例のリチウム二次電池は、優れた電池性能を備えることが確認できた。
【符号の説明】
【0160】
1:コイン電池
2:正極 20:正極集電体
21:正極合剤層
3:負極
4:電解液
50:正極ケース 51:負極ケース
6:ガスケット
7:セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、
化1〜3で表される高分子化合物の少なくとも一種を有することを特徴とする二次電池用活物質。
【化1】


【化2】


【化3】


(なお、R1〜R4は水素、炭素数1〜10のアルキル基からそれぞれ独立して選択される。R1〜R4のうちの少なくとも1つは、化4〜6で表される構造のうちのいずれかである。nは正の整数であり、nの値はそれぞれ独立して選択可能である。)
【化4】


【化5】


【化6】


(化4〜6は、*の部分で、前記化1〜3のベンゼン環の炭素原子に結合する。化4〜6中、RはH、OH、CH3又はNH2である。化4〜6中、Yは−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化7〜11のいずれかで置換されてもよい。)
【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】

【請求項2】
前記高分子化合物は化12で表される請求項1記載の二次電池用活物質。
【化12】


(なお、m、pは0〜10の整数からそれぞれ独立に選択される。nは正の整数である。)
【請求項3】
二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、
化13で表される高分子化合物を有することを特徴とする二次電池用活物質。
【化13】


(なお、R1〜R4は水素、炭素数1〜10のアルキル基からそれぞれ独立して選択される。R1〜R4のうちの少なくとも1つは、化14〜16で表される構造のうちのいずれかである。nは正の整数である。)
【化14】


【化15】


【化16】


(化14〜16は、*の部分で、前記化13のベンゼン環の炭素原子に結合する。化14〜16で、RはH、OH、CH3又はNH2である。化14〜16で、Yは−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化17〜21で置換されてもよい。)
【化17】


【化18】


【化19】


【化20】


【化21】

【請求項4】
前記高分子化合物は化22で表される請求項3記載の二次電池用活物質。
【化22】


(なお、m、pは0〜10の整数からそれぞれ独立に選択される。nは正の整数である。)
【請求項5】
二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、
化23〜25で表される単位化合物の少なくとも一種を主成分とする単量体混合物を、該単位化合物のR1〜R4以外に結合した水素が脱離して重合した高分子化合物を有することを特徴とする二次電池用活物質。
【化23】


【化24】


【化25】


(なお、R1〜R4は水素、炭素数1〜10のアルキル基からそれぞれ独立して選択される。R1〜R4のうちの少なくとも1つは、化26〜28で表される構造のうちのいずれかである。nは正の整数である。)
【化26】


【化27】


【化28】


(化26〜28は、*の部分で、前記化23のベンゼン環の炭素原子に結合する。化26〜28で、RはH、OH、CH3又はNH2である。化26〜28で、Yは−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化29〜33で置換されてもよい。)
【化29】


【化30】


【化31】


【化32】


【化33】

【請求項6】
二次電池の正極及び/又は負極の活物質であって、
化34で表される単位化合物を主成分とする単量体混合物を、該単位化合物のR1〜R4以外に結合した水素が脱離して重合した高分子化合物を有することを特徴とする二次電池用活物質。
【化34】


(なお、R1〜R4は水素、炭素数1〜10のアルキル基からそれぞれ独立して選択される。R1〜R4のうちの少なくとも1つは、化35〜37で表される構造のうちのいずれかである。nは正の整数である。)
【化35】


【化36】


【化37】


(化35〜37は、*の部分で、前記化34のベンゼン環の炭素原子に結合する。化35〜37で、RはH、OH、CH3又はNH2である。化35〜37で、Yは−(CH2)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−NH−、−CH=N−、−S−、−CO−、化38〜42で置換されてもよい。)
【化38】


【化39】


【化40】


【化41】


【化42】

【請求項7】
前記単量体混合物は、ピロール、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基にて置換されたピロール、チオフェン、1以上の水素原子が炭素数1〜10のアルキル基にて置換されたチオフェンの少なくとも一種を含む請求項5〜6のいずれかに記載の二次電池用活物質。
【請求項8】
正極活物質である請求項1〜7のいずれか1項に記載の二次電池用活物質。
【請求項9】
前記正極活物質は、リチウム含有遷移金属酸化物を有する請求項8記載の二次電池用活物質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の二次電池用活物質を用いた電極と、電解質と、を有することを特徴とする二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−146346(P2011−146346A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8264(P2010−8264)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】