説明

二次電池監視装置

【課題】二次電池セルを直列に接続された二次電池から電力供給を受けて、各電池の状態検知を行うシステムにおいて、各組電池ユニットの放電量が常に均等となるよう維持することにより、二次電池に蓄えられた電力の有効利用、電池の容量を最適化、電池の小型化を実現する。
【解決手段】充放電可能な1つ以上の電池セルと、該電池セルの状態の検知を行う監視装置とからなる電池ユニットを、直列に接続して構成される二次電池監視装置において、電池ユニットのそれぞれに各自の監視装置に電力供給を行う第1の電源回路を設けるとともに、すべての電池ユニットから均等に電力供給を行う第2の電源回路とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池を監視する監視装置を備えた二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道などの駆動システムやバックアップ用のUPSシステムなどに搭載される鉛電池、ニッケル水素電池、リチウム電池などの二次電池は、システムに必要な電圧及び電流を得るために直列及び並列に接続して使用することが多い。
二次電池は、その化学的な性質から充放電可能な電流や電荷量が決まっており、これを超えて充放電すると、性能の急激な低下や故障を引き起こす恐れがある。したがって、これらを防ぐためには、電圧等、二次電池の状態を監視しながら充放電を適切に管理する必要がある。
【0003】
このことから、二次電池を利用するシステムでは、二次電池の電圧等の状態を検知する監視装置が備えられ、検知した二次電池の状態情報を充放電部に伝え、それをもとに充放電を制御するようにしている。
自動車のような出力規模の大きなシステムで二次電池を用いる際、大電力や大容量を確保するため、電池セルを多直列して組電池ユニットとし、この組電池ユニットをさら多直列して、数百V以上の出力電圧を有する二次電池システムを構成する場合がある。
【0004】
こうした二次電池システムにおいて、例えば、組電池ユニットの内の1つでも、過放電状態に陥ると、その組電池ユニットの二次電池性能を急激に劣化させ、寿命を急速に縮めてしまうため、組電池ユニット毎に監視装置を搭載し、上位制御装置がその各々と連携できるようして、各組電池の充電量をその電圧で把握して、すべての組電池が過放電とならないように管理すれば、監視装置のサイズや配線の上で都合がよい。
【0005】
しかしながら、自動車等の動力源の用途では、前述のように二次電池システム全体では数百ボルトの高電圧となり、しかも、各監視装置は、組電池ユニットに設けられたセンサと結線されることから、組電池と至近する位置に配置せざるを得ず、高電圧による破壊を防止するため、フォトカプラをはじめとする絶縁素子を使用して、適切な絶縁を施す必要があり、コストアップにつながる。
【0006】
こうしたことから、下記特許文献1に開示された方法によれば、電池セルが多直列に接続された組電池ユニットのそれぞれに搭載された監視装置を一列に接続し、隣接する組電池ユニットを経由して、二次電池モジュールの外部に設置された上位制御装置からの指令、あるいは上位制御装置から要求された状態情報などを順次伝達するようにしている。こうすることにより、最高電位、最低電位に接続された組電池ユニットを除いて、組電池ユニットと監視装置間をフォトカプラで絶縁する必要がなくなり、別途設ける上位制御装置との通信路は、これらの最高電位、最低電位に接続された組電池ユニット監視装置に限り、各組電池ユニット分の耐圧を考慮して絶縁することで、蓄電装置を安価に構成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−70179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような構成では、一列に接続された監視装置のうち、最高電位と最低電位に位置する監視装置は、絶縁手段を介して上位制御装置に接続されており、絶縁手段を駆動する分、それ以外の監視装置に比べ、消費電力が大きくなる。一方、各監視装置は、それぞれの組電池ユニットの二次電池から電源の供給を受けているため、監視装置間で消費電力に差が発生し、二次電池間で蓄電量にばらつきが発生する。二次電池には使用できる充放電量に限界が存在するため、このように二次電池間で蓄電量のばらつきがあると、その分使用できる放電量が狭められてしまうという問題があった。
【0009】
すなわち、最高電位と最低電位に位置する組電池ユニットのみ、各自の監視装置に加え、絶縁手段を駆動するための電力を消費するため、所定の期間が経過すると、これらの組電池ユニットのみ、残存する蓄電量がいち早く限界に達し、他の組電池ユニットには、未だ蓄電量に余裕があるにもかかわらず、上位制御装置は、すべての組電池ユニットに対し、放電を中止する指令を出さざるを得ず、結果として、二次電池システム全体の放電量を狭めてしまうことになる。
【0010】
また、上位制御装置と各監視装置との通信、及び、隣接する監視装置間の通信は、いずれも各組電池ユニット内の二次電池をその電源として使用しているため、両通信方式を共通するものとせざるを得ず、通信による消費電力を抑えるために、それぞれに最適な通信方式を選択することができないという問題もあった。
そこで、本発明は、各組電池ユニットの放電量が均等となるよう維持するとともに、上位制御装置と各監視装置との通信、隣接する監視装置間の通信にそれぞれ最適な通信方式を選択することをも可能にする二次電池監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の二次電池監視装置においては、次のような技術的手段を講じた。すなわち、
(1)充放電可能な1つ以上の電池セルと、該電池セルの状態の検知を行う監視装置とからなる電池ユニットを、直列に接続して構成される二次電池監視装置において、前記電池ユニットのそれぞれに各自の監視装置に電力供給を行う第1の電源回路を配備するとともに、すべての電池ユニットから均等に電力供給を行う第2の電源回路を具備するようにした。
【0012】
(2)上記の二次電池監視装置において、外部との通信を行う外部通信装置を有し、前記第二の電源回路は、前記外部通信装置に電力を供給するようにした。
【0013】
(3)上記の二次電池監視装置において、前記監視装置は、隣接する他の電池ユニットの監視装置との間で通信を行う通信回路を有し、前記外部通信装置は、各通信回路を経由して、前記監視装置のそれぞれと通信を行うようにした。
【0014】
(4)上記の二次電池監視装置において、前記外部通信装置は、各監視装置を経由して、各電池ユニットの電池セルの状態を取得し、外部と通信するようにした。
【0015】
(5)上記の二次電池監視装置において、前記組電池ユニットの監視装置間で行われる通信と、前記外部通信装置と外部間で行われる通信が、互いに異なる通信方式を採用した。
【0016】
(6)上記の二次電池監視装置において、前記監視装置は、前記電池セルの状態として、電圧、温度を測定する手段を有するようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池ユニットのそれぞれに各自の監視装置に電力供給を行う第1の電源回路と、すべての電池ユニットから均等に電力供給を行う第2の電源回路とを具備するようにしたので、第1の電源回路を、各電池ユニットの監視装置駆動用とし、第2の電源回路を、上位制御装置との通信用等に使用することで、各組電池の消費電力のばらつきを抑え、本来の充放電に使用する電力量を増やし、二次電池に蓄えられた電力の有効利用を図ることで、電池の容量を最適化し、電池の小型化を実現できる。
また、特に第2の電源回路を、上位制御装置との通信用に使用した場合、各電池ユニットの監視装置間の通信と、外部との通信を個別の電源で行うことで、組電池間の通信方式をより低消費電力のものにすることができ、二次電池の監視に必要な電力を抑え、二次電池に蓄えられた電力の有効利用を図ることで、電池の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る二次電池モジュール1000のブロック図である。
【図2】本発明に係る二次電池モジュールの通信の様子を示す図である。
【図3】組電池ユニットに搭載される監視装置の構成を示す図である。
【図4】外部通信装置の構成を示す図である。
【図5】本発明に係る二次電池モジュールの別の通信の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例】
【0020】
[実施例1]
本実施例は、電池セルの状態検知で消費する電力を供給する第一の電源回路と、外部の上位制御回路との通信で消費する電力を供給する第二の電源回路を持ち、第二の電源回路は直列に接続された電池セル全体から電力供給を受けることで、各電池セルの状態検知に必要な消費電力量の均一化を電池セル間で図るものである。
図1に本実施例の二次電池モジュール1000を示す。二次電池モジュール1000は、複数の電池セル12が直列に接続された組電池11をそれぞれ備えた組電池ユニット100(100−1〜100−n)と、外部通信装置200から構成される。また、これらの組電池ユニット100がさらに直列に接続されて、高い出力電圧を備えた、全二次電池10を構成している。
【0021】
各組電池ユニット100は、それぞれ監視装置20(20−1〜20−n)を有し、この監視装置20は、電源回路40、制御回路50及び通信回路60からなる。電源回路40は、それぞれ、電池ユニット100内の組電池11より電力の供給を受け、内蔵する基準電源回路により電圧を変換して、制御回路50及び通信回路60の駆動に必要な、例えば直流5Vに変換して電力を供給する。すなわち、各組電池ユニット100の監視装置20は、各自の組電池11を電源とした電源回路40を第一の電源回路として具備し、この第一の電源回路から電力の供給を受ける。
【0022】
制御回路50は、組電池11の電圧や温度などの状態を検知するとともに、通信装置60が送受信した信号を処理する。
通信回路60は、隣接する組電池ユニット(例えば100−1と100−2)間で1対1通信を行う。
【0023】
外部通信装置200は、二次電池モジュール1000と、その外部に配備される上位制御装置2000との間で通信を行うもので、電源回路210、制御回路220、内部通信回路230及び外部通信回路240から構成されている。電源回路210は、複数の組電池11が直列に接続された二次電池10全体から電力の供給を受け、内蔵する基準電源回路により、制御回路220、内部通信回路230、外部通信回路240の駆動に必要な、例えば直流5Vに変換して電力を供給する。すなわち、外部通信装置200は、組電池11を直列に接続した全二次電池10を電源とした電源回路210を第二の電源回路として具備し、この第二の電源回路から電力の供給を受ける。
【0024】
内部通信回路230は、組電池ユニット100−nと通信を、外部通信回路240は、上位の制御装置2000と通信を、それぞれ個別に行い、これらの通信制御は制御回路220により行われる。
また、監視装置20は組電池11から、二次電池及び外部通信装置200は、全二次電池10に蓄えられた電力で動作するため、待機時など二次電池10の監視が不要な時には、監視装置20をスリープさせ、二次電池10の充電量の低下を防止する。
【0025】
図2は、図1における組電池ユニット100−1〜100−nと外部通信装置200とのデータの通信を示したものであり、左側のCOM310、COM311は、外部通信装置200から、組電池ユニット100−nから100−1に順次送信されるデータを、右側のCOM321−1〜COM321−n、COM322は、終端の組電池ユニット100−1から外部通信装置200に向けて順次送信されるデータを示している。
組電池ユニット100−1〜100−nの通信回路60及び外部通信装置200の内部通信装置230、外部通信回路240はデータの送受信が行われていない場合には、受信状態として待機している。
【0026】
上位の制御装置2000は、二次電池10の状態を得るため、状態情報要求を含むデータ310を外部通信装置200に対して送信する。データ310を受信した外部通信装置200の外部通信回路240は、受信したデータ310を外部通信装置200の制御装置220で処理し、内部通信回路230で送信できる各組電池ユニット100−1〜100−nのそれぞれに対するコマンドを含むデータフォーマットであるデータ311に変換する。このコマンドには、内部状態の設定、状態の検出指令、検出結果の送信指令などがある。制御回路220で変換されたデータ311は、内部通信回路230を介して、組電池ユニット100−nに送信される。組電池ユニット100−nは、データ311に含まれるコマンドに対応する処理を行うとともに、通信回路60を介して、組電池ユニット100−n−1にデータ311を送信する。
【0027】
データ311が終端の組電池ユニット100−1に到着すると、組電池ユニット100−1の制御回路50は、n個の組電池11の状態情報分のデータサイズを付加したデータを作る。組電池ユニット100−1が該当する部分に状態情報(data1)を書き込み付加したデータ321−1を生成する。なお、このとき、組電池ユニット100−2〜100−nのデータを書き込むところにはダミーのデータとして例えば0がセットされている。
なお、何個の状態情報を追加するかは、起動時に外部通信装置200より、外部通信装置200から近い順にIDを割り付けることで、また、データ311の中に何個の組電池ユニット100を経由してきたかの情報を入れることで決定できる。
【0028】
組電池ユニット100−1で生成されたデータ321−1は、通信回路60を介して、組電池ユニット100−2に送信される。
組電池ユニット100−2では、続く部分に状態情報(data2)を書き込む(データ321−2)。
このようにすることで、組電池ユニット100−nの通信回路60から送信されたデータ321に、組電池ユニット100−1〜100−nの組電池11の状態情報が順次書き込まれていき、外部通信装置200の内部通信回路230は、組電池ユニット100−1〜100−nの全ての二次電池情報が追加されたデータ321−nを受信することができ、外部通信装置200の制御回路220は、データ321−nを上位制御装置2000への送信データのフォーマットに変換したデータ322を生成し、外部通信回路240を介して、上位制御装置2000に送信することができる。
【0029】
これにより、組電池ユニット100−1〜100−nが送受信するデータサイズが同じとし、通信に伴う消費電力を組電池ユニット100−1〜n間で均一化を図ることができる。また、外部通信装置200での処理及び、上位制御装置2000との送受信に必要な電力は、全二次電池10から供給され、各電池セル12が供給する電力は等しくできる。
このように、本実施例によれば、二次電池モジュール1000における状態検知処理による電池セル12の充電量のばらつきの発生を抑えることができ、電池セルの容量を最適化し小型化することできる。
【0030】
また、外部通信装置200は、二次電池モジュール1000の外部に配備された上位制御装置2000との通信を行う外部通信回路240と、組電池ユニット100−1〜100−nとの通信を内部通信回路230とを個別に具備することで、それぞれ異なる通信方式にすることができる。
例えば、上位制御装置2000との通信として、RS485やCANまたはEthernet(登録商標)等の通信方式とし、組電池ユニット100間の通信は、低消費電力化が可能となるカレントループ方式などを選択することができ、電池セル12の状態検知に伴う消費電力を削減することができる。
【0031】
図3に組電池ユニット100−2に搭載される監視装置20の構成を示す。
監視装置20は、電源回路40と制御回路50、通信回路60からなる。電源回路40はリレー41と電源生成回路42から構成される。制御回路50及び通信回路60は電源回路40より電力供給を受けて動作し、制御回路50はセンサ51、電池状態監視装置52、通信制御装置53から、通信回路60は、送受信回路61、62から構成される。
図2におけるフォーマット変換及び通信パケット生成は通信制御装置53で行われ、送受信回路61、62は通信パケットの送受信を行う。センサ51は、組電池11を構成する電池セル12の各電圧の検出及び、1つ以上の電池セル12の温度を検出する機能を有する。
【0032】
電源回路40は、下位の組電池ユニット100−3からの通信線70−2に含まれる起動要求73−2を受けるとリレー41がONされ、電源生成回路42が起動し、組電池11からの電力供給により、制御回路50、通信回路60を起動する電力を生成するとともに、リレー41のON信号43、及び上位の組電池ユニット100−1の起動要求73−1を出力する。この方式により、外部からの起動要求73−3が一度ONになれば、ON継続信号43によりリレー41はON状態を継続できる。また、ノイズによる誤動作を防ぐために、一定期間、起動要求信号73−2のON状態が継続されないと、リレー41がONされないように、起動要求信号73−2にコンデンサ44を追加している。また、制御回路50よりOFF要求を受けると、リレー41をOFFとし、電源生成回路42の動作が終了することで、監視装置20の動作を終了させることができる。
【0033】
送受信回路61、62はそれぞれ隣接する組電池ユニット10の送受信回路と通信線70−1及び70−2を介して接続され、送信用71、受信用72、及び起動信号が73である。また、監視装置20をスリープとさせる条件として、通信回路60が一定期間、データを受信しなかった場合とする。
【0034】
続いて、図4に外部通信回路200の構成を示す。
外部通信回路200は、電源回路210と制御回路220、内部通信回路230、外部通信回路240からなる。電源回路210は、電源回路40と同じく、リレー211と電源回路生成212、リレー211のON信号213、誤動作防止用のコンデンサ214から構成されている。なお、電源回路210の電力の供給は全二次電池10から供給されており、その点が電源回路40と異なっている。この電源回路210からの電圧出力により、制御回路220、内部通信回路230、外部通信回路240が動作する。
【0035】
制御回路220は、モジュール状態監視装置221、通信制御装置222、通信制御装置223から構成され、通信制御装置222は、内部通信回路230内の送受信回路231、通信路70−nを介して、組電池ユニット100−nに接続される。また、通信制御装置223は、外部通信回路240内の送受信回路241、通信路250を介して、外部の上位制御装置2000に接続される。
【0036】
図2における外部通信装置200での上位制御装置2000からのデータ310からデータ311への変換、組電池ユニット100−nからのデータ321−nからデータ330への変換は、モジュール状態監視装置にて行う。
また、送受信回路231及び241は通信パケットの送受信を行い、通信制御装置222は、送受信回路231が受信した通信パケットの処理及び、送受信回路231が送信する通信パケットの生成を行う。同様に、通信制御装置223は、送受信回路241が受信した通信パケットの処理及び、送受信回路241が送信する通信パケットの生成を行う。送受信回路231は組電池ユニット100−nとの通信方式に、送受信回路241は外部の上位制御装置2000との通信方式に、それぞれ対応させる。
【0037】
これにより、外部通信装置200は、上位制御装置2000と、二次電池モジュール1000内の組電池ユニット100間との通信を異なる通信方式にすることが可能となる。
また、モジュール状態監視装置221での処理に、例えば二次電池10の電圧や電流が必要な場合には、電池セル12間で消費電力のばらつきを発生させず、センサを追加することが可能となる。
なお、通信機能を内蔵したマイコンがあることから、制御回路220、内部通信回路230、外部通信回路240を1つマイコンに割り当て、マイコン上のソフトウエアを変更のみで、通信方式を変更することができる。
【0038】
[実施例2]
上位制御装置2000が特定の組電池ユニット100の電池セル12の状態情報を入手する通信方式を示す。図5では上位制御装置2000が、全組電池ユニットのうち、特定の組電池ユニット100−2における組電池11のデータを入手する例である。
これは、上位制御装置2000が一回で送信する通信量を、特定の組電池ユニット100−2のように、ひとつの組電池ユニットに対するものに限定することで、その電池セル12の状態情報等、最小の通信量で済み、通信に伴う電池セル12への負荷を最小にすることができる。
【0039】
これを実現するため、各組電池ユニット100に予めIDを振ることで、上位制御装置2000が欲しい組電池ユニット100の状態情報を入手することができる。
このIDは、例えば、起動時に外部通信装置200より、外部通信装置200から近い順にIDを割り付けることで設定することができる。
組電池ユニット100−1〜100−nの通信回路60は及び外部通信装置200の内部通信装置230、外部通信回路240は受信状態として待機している。
【0040】
この状態で、上位の制御装置は当該組電池11のデータ入手するため、IDを含むデータ330を送信する。送信されたデータ310は外部通信装置200の外部通信回路240で受信される。受信されたデータ330は外部通信装置200の制御装置220で処理され、IDから、該当する組電池ユニット100に対するコマンドに変換される。図5は組電池ユニット100−2に対するコマンドの例を示している。制御回路220で変換されたデータ331は、内部通信回路230を介して、組電池ユニット100−nに送信される。組電池ユニット100−nは、データ331に含まれるIDが自分のIDと異なるためにそのまま、通信回路60を介して、組電池ユニット100−1〜100n−1にデータ331を送信する。このようにデータ331が組電池ユニット間を次々と伝わり、組電池ユニット100−2に到着すると、組電池ユニット100−2はデータ331に含まれるIDが自分のIDが一致することから、組電池ユニット100−2は、データ331に含まれるコマンドに対応する処理を行うとともに、通信回路60を介して、組電池ユニット100−1にデータ331を送信する。
【0041】
データ331が終端の組電池ユニット100−1に到着すると、組電池ユニット100−1の制御回路は、データ331に含まれるIDが自分のIDと異なるため、何もせず、状態情報のデータサイズ分のダミーデータを追加したデータ341−1を生成し、信回路60を介して、組電池ユニット100−2に送信される。組電池ユニット100−2は、データ331に含まれるIDが自分のIDと一致するため、組電池11の状態情報(data2)を付加したデータ341−2を生成する。生成されたデータ341−2は、通信回路60を介して、組電池ユニット100−3に送信される。組電池ユニット100−3〜100−nは、それぞれのデータ341に含まれるIDが自分のIDと異なるために、そのまま送信される。
【0042】
このようにすることで、組電池ユニット100−nの通信回路60から送信されたデータ341−nを外部通信装置200の内部通信回路230で受信できる。
また、外部通信装置200の制御回路220は、データ341を上位制御装置2000への送信データのフォーマットに変換したデータ342を作成し、外部通信回路240を介して、上位制御装置2000に送信することができる。
【0043】
また、上位制御装置2000は、IDを用いることで特定の組電池ユニット100の組電池11のデータを最小の通信量で入手することができ、さらに、各組電池ユニット100で消費される電力を等しくすることで、電池セル12間で蓄電量のばらつきの発生も抑えることができる。
【0044】
なお、本実施例の通信方式は、組電池ユニット100−1〜100−nと個別に順次通信を行うため、ある程度の時間が要求されるが、上位制御装置2000からの指令には、短時間にすべての組電池ユニット100−1〜100−nに伝達しなければならないものと、数時間、あるいは数日毎に行えばよいものとがあるため、実施例1で採用した通信方式と本実施例の通信方式を、その緊急度に合わせて併用するようにしてもよい。
また、以上の実施例では、複数の電池セルを直列に接続して組電池ユニットとしたが、1つの電池セルで電池ユニットを構成してもよい。
【0045】
さらに、外部通信装置200用の第二の電源回路の電源として、組電池11を直列に接続して、その全二次電池10の出力電圧を採用したが、例えば、組電池ユニット100−1〜100−nが偶数個であれば、同数の2グループに分け、各グループの組電池ユニットを直列に接続した上で、両グループを並列接続したもの等を採用してもよく、要は、すべての電池ユニットから均等に電力供給を行うようにすればよい。
このように構成された第二の電源回路は、外部通信装置200の電力供給のみならず、上位制御装置2000等、二次電池システムを構成する様々な機器の電力供給に利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、電池ユニットのそれぞれに各自の監視装置に電力供給を行う第1の電源回路と、すべての電池ユニットから均等に電力供給を行う第2の電源回路とを具備するようにしたので、第1の電源回路を、各電池ユニットの監視装置駆動用とし、第2の電源回路を、上位制御装置との通信用等に使用することで、各組電池の消費電力のばらつきを抑えるとともに、いずれの電池ユニットにおいても、最低限の蓄電量を確保することで、充放電量を最大限に高め、二次電池に蓄えられた電力の有効利用を図ることで、電池の容量を最適化し、電池の小型化を実現できるので、特に自動車等の二次電池システムに広く採用されることが期待できる。
【符号の説明】
【0047】
10・・・二次電池、20・・・監視装置、40・・・電源回路、50・・・制御回路、60・・・通信回路、41・・・リレー、42・・・電源生成回路、51・・・センサ、52・・・監視装置、53・・・通信制御装置、61、62・・・送受信回路、100・・・組電池ユニット、200・・・外部通信装置、210・・・電源回路、220・・・制御回路、230・・・内部通信回路、240・・・外部通信回路、211・・・リレー、212・・・電源生成回路、221・・・モジュール状態監視装置、222、223・・・通信制御装置、231、232・・・送受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な1つ以上の電池セルと、該電池セルの状態の検知を行う監視装置とからなる電池ユニットを、直列に接続して構成される二次電池監視装置において、
前記電池ユニットのそれぞれに各自の監視装置に電力供給を行う第1の電源回路と、すべての電池ユニットから均等に電力供給を行う第2の電源回路とを具備することを特徴とする二次電池監視装置。
【請求項2】
請求項1の二次電池監視装置において、
外部との通信を行う外部通信装置を有し、前記第2の電源回路は、前記外部通信装置に電力を供給することを特徴とする二次電池監視装置。
【請求項3】
請求項2の二次電池監視装置において、
前記監視装置は、隣接する他の電池ユニットの監視装置との間で通信を行う通信回路を有し、前記外部通信装置は、各通信回路を経由して、前記監視装置のそれぞれと通信を行うことを特徴とする二次電池監視装置。
【請求項4】
請求項3の二次電池監視装置において、
前記外部通信装置は、各監視装置を経由して、各電池ユニットの電池セルの状態を取得し、外部と通信することを特徴とする二次電池監視装置。
【請求項5】
請求項3または4の二次電池監視装置において、
前記組電池ユニットの監視装置間で行われる通信と、前記外部通信装置と外部間で行われる通信が、互いに異なる通信方式を採用したことを特徴とする二次電池監視装置。
【請求項6】
請求項1の二次電池監視装置において、
前記監視装置は、前記電池セルの状態として、電圧、温度を測定する手段を有することを特徴とする二次電池監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102657(P2013−102657A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246077(P2011−246077)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】