説明

二流体噴射ノズル

【課題】整流孔からダストを吸い込まないようにして、ダストによる整流孔の摩耗や閉塞を防止することができ、併せて外筒の腐食も防止する。
【解決手段】ノズルヘッド20にて液体と気体とを混合し、この混合された二流体をノズルヘッド20の先端部に接続される先端ノズル部40の噴射口45から噴射させるとともに、噴射口45の周囲に配される吸込み孔46から外気を吸い込むことにより噴射される二流体の拡散を抑えるようにする。また、先端ノズル部40を外筒3により覆うとともに、これら先端ノズル部40と外筒3との間の空間にバグフィルターにてダスト除去後の排ガスを導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却炉の減温塔に使用するのに適した二流体噴射ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ焼却炉、灰溶融炉などの焼却施設において発生する高温の排ガスは、ボイラーによって排熱利用された後、減温塔内に導入される。この減温塔において排ガスは、円筒形状の塔体内部を塔下部から頂部に移動され、この間に水噴射ノズル(二流体噴射ノズル)の噴霧水で冷却され、その後、減温塔より下流側に設けられるバグフィルター等の排ガス処理装置に導入される。
【0003】
次に、従来の二流体噴射ノズルの構造を図3によって説明する(特許文献1参照)。この二流体噴射ノズル50は、内部混合型であって、噴霧ノズル51と、水および空気の供給管52とアダプター53とからなる。噴霧ノズル51には、軸芯に沿う水の流路54が形成されるとともに、先端側に水の流路54と連通する複数の噴射口55が、後方側に複数の空気流路56が形成されている。水の流路54は供給管52の中心側の流路57に連通し、空気流路56は供給管52における外筒58と内筒59との間の流路60に連通している。なお、噴霧ノズル51には、水の流路54を流れる気液混合体の流れの邪魔をして気液混合体を微粒化するために邪魔部材61が配されている。このような構成において、噴霧ノズル51の流路54に供給された水は、その流路54の径方向外方側から連通する複数の空気流路56から噴射される空気に衝突して激しく混合して微粒化される。また、その微粒化された気液混合体が邪魔部材61に衝突して更に微粒化されて噴射口55から高速噴射される。
【0004】
しかしながら、図3に示される従来の二流体噴射ノズル50では、ノズル形状が円柱状(オリフィス形状)であり、噴射した二流体は大きく拡がり、その噴射流域の外周部が接する外部のガス(空気)との衝突により失速し、また微粒化した粒子が結合して粒子径が大きくなる傾向がある。そのために、排ガスと噴射した微粒子との接触効果が低下する減温塔内壁面に水滴が付着し、排ガス中に含まれる固形物が吸着され、壁面に堆積成長するという問題点がある。
【0005】
このような問題点を解消するために、本出願人は、微粒化された二流体の拡散を抑制するとともに、任意の方向に超音速で噴射させることのできる二流体噴射ノズルを特許文献2において提案している(図2参照)。この特許文献2にて提案された二流体噴射ノズルにおいては、ノズル部40の噴射口45の周囲に複数個の整流孔46を配して、これら整流孔46から外気を吸い込むことにより噴射される二流体の拡散を抑えるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−220354号公報
【特許文献2】特開2008−23459号公報
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載された二流体噴射ノズルを、ごみ焼却炉の減温塔において使用すると、ノズル部周囲の排ガスを整流孔から吸い込む際に排ガス中のダストも一緒に吸い込むことになり、この吸い込んだダストによって整流孔が摩耗したり、水滴とダストによって整流孔が閉塞するといった問題点が発生する。この結果、噴霧水滴の粒子径が大きくなり、蒸発時間が長くなり、また、噴射流体の直進性が失われ、水滴の減温塔壁面への付着・成長の原因になるという問題点がある。
【0008】
なお、従来、腐食性ガスを含有する排ガス中でノズルを使用する場合に、ノズルの接ガス部の腐食を防止するために、図4に示されるように、ノズル70を覆う外筒(保護管)71を設け、ファンによってノズル70と外筒71との間の空間に大気を流すようにしたものがあるが、このようにした場合でも、外筒71の接ガス部が腐食するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、整流孔を有するノズルにおいて、整流孔からダストを吸い込まないようにして、ダストによる整流孔の摩耗や閉塞を防止することができ、併せて外筒の腐食も防止することのできる二流体噴射ノズルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明による二流体噴射ノズルは、
ノズルヘッドにて液体と気体とを混合し、この混合された二流体を前記ノズルヘッドの先端部に接続されるノズル部の噴射口から噴射させるとともに、前記噴射口の周囲に配される整流孔から外気を吸い込むことにより噴射される二流体の拡散を抑えるように構成される二流体噴射ノズルにおいて、
前記ノズル部を外筒により覆うとともに、これらノズル部と外筒との間の空間にダスト除去後の排ガスを導入することを特徴とするものである。
【0011】
本発明による二流体噴射ノズルは、高温の排ガスを排出する排出経路に設けられる減温塔において、排ガスの気流中に冷却用液体を噴射して排ガスを冷却するのに用いられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を奏する。
1)ノズル部と外筒との間の空間にダスト除去後の排ガスが導入されるので、噴射口の周囲に配される整流孔から外気を吸い込む際にダストが吸い込まれることがない。したがって、ダストによる整流孔が摩耗したり、閉塞したりするのを防止することができる。
2)整流孔から吸い込まれる外気によって冷却用液体の微粒化が維持されるので、この二流体噴射ノズルが設置される機器(減温塔)の小型化を促進することができる。また、微粒化された冷却用液体の拡散を抑えて直進性を維持することができるので、水滴の壁面付着に伴うダストの付着・成長を抑制することができる。
3)腐食性ガス雰囲気で使用しても、ノズル部が直接ガスと接触することはないので、ノズル部の腐食を防止することができる。
4)バグフィルター出口におけるダスト除去後の140℃以上の排ガスを用いることで、外筒の温度を140〜400℃に抑えることができ、外筒の腐食を防止することができる。
5)ダスト除去後の排ガスが用いられているので、煙突からの排ガス量の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る二流体噴射ノズルの部分断面正面図(a)と部分断面側面図(b)
【図2】二流体噴射ノズルの要部拡大断面図
【図3】従来の二流体噴射ノズルの断面図
【図4】外筒で覆われた従来のノズルの部分断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明による二流体噴射ノズルの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1には、本発明の一実施形態に係る二流体噴射ノズルの部分断面正面図(a)と部分断面側面図(b)が示され、図2には、同二流体噴射ノズルの要部拡大断面図が示されている。
【0016】
本実施形態の二流体噴射ノズル1は、噴射ノズル本体2と、この噴射ノズル本体2の全体を覆うように配される外筒3とにより構成されている。噴射ノズル本体2は、同軸心で組み合わされた外管4aと内管4bとよりなる二重管構造の流体供給管4の先端部に取付けられるブロック形状のノズルヘッド20と、このノズルヘッド20の先端部にそのノズルヘッド20と軸線を交差(図の例では直交)させて接続される先端ノズル部(本発明の「ノズル部」に相当)40とを備えて構成されている。ノズルヘッド20の内部には、長軸方向に第1ラバルノズル部25と、その第1ラバルノズル部25に連通するチャンバー30とが形成され、このチャンバー30に基端部が開口するように、ノズルヘッド20に対して別部材よりなる前記先端ノズル部40が取付けられている。
【0017】
前記流体供給管4には、内管4bの軸心に流量制御のためのニードル弁棒11が貫通挿入されている。また、内管4bの先端部は、第1ラバルノズル部25の吸込み部26と所要の間隔を保って対向位置させるため、外形が截頭円錐形にされている。また、この内管4bの先端中心部に設けられた水噴出口15の内側には弁座12が設けられ、前記ニードル弁棒11先端の弁体13により弁開度の調節ならびに弁の開閉ができるようにされている。一方、外管4aは、後端部に螺合される接続金具によって前記内管4bと同心に保持されている。そして、外管4a内周面と内管4b外周面との空間には、図示されない気体導入接続管から圧縮空気(または蒸気)が供給される。
【0018】
一方、ノズルヘッド20には、一端部に前記流体供給管4の外管4a先端部が接続部21において螺合定着され、この流体供給管4の軸心線の延長上に、前記第1ラバルノズル部25とチャンバー30とが形成されている。また、前記外管4aの接続部21に対し、内管4bは所要寸法前方へ突き出すように配され、この内管4bの先端部周囲に気体流動空間部22が形成されている。
【0019】
前記第1ラバルノズル部25は、前記気体流動空間部22に連接して軸心に向かって絞縮するラッパ形状の吸込み部26から狭窄部分(スロート部27)を経てディフューザ28に通じる構造にされており、前記吸込み部26に対峙する前記内管4bの先端の水噴出口15が前記スロート部27に対向する位置関係となるように関係付けられている。また前記ディフューザ28の出口は、前方位置に設けられた所要容積のチャンバー30に接続されている。
【0020】
前記チャンバー30は、全体として円柱状にされるとともに、軸線方向の両端面31,31′が球面状に形成されている。特に、前記第1ラバルノズル部25との接続部と反対位置となる端面31は、ノズルヘッド20の後端側に分離される蓋体29の一部とされ、この蓋体29はガスケット33を介在させて四本のボルト34によって取り外し可能に締結されている。このような構造とすることにより、チャンバー30の内面および第1ラバルノズル部25の要部を精密加工するのが容易となる。また、蓋体29を取り外すことによりメンテナンスも容易になる。
【0021】
前記先端ノズル部40は、外部からノズルヘッド20の軸線に直交する向きに基端の雄ねじ部40aをノズルヘッド20に設けられた取付雌ねじ孔23に螺合締着されることにより、ノズルヘッド20に取付けられている。この先端ノズル部40には、前記チャンバー30と接続されるように第2ラバルノズル部41が形成されている。この第2ラバルノズル部41は、先端ノズル部40の軸心に基端側からラッパ状に絞縮形成された吸込み部42、スロート部43、ディフューザ44および拡大径にされた噴射口45が一軸上に形成された構成となっている。そして、前記噴射口45の周囲には軸線方向に長孔に形成された吸込み孔(整流孔)46が複数等分して配設されている。
【0022】
このように構成された二流体噴射ノズル1においては、流体供給管4および外筒3が減温塔の外部から塔内部に挿入されて壁体に固定され、流体供給管4の外管4aに圧縮空気供給配管が、内管4bに水供給配管が、それぞれ接続されて各流体が供給される。なお、圧縮空気の供給量は、内管4bを進退させて第1ラバルノズル部25の吸込み部26の周面と内管4b先端との間隔を調整することで設定される。また、水量の調整はニードル弁棒11を回動操作して内管4b先端部における弁座12と弁体13とによる弁開度の調整により行われる。
【0023】
本実施形態においては、減温塔の下流側に配されるバグフィルター出口のダスト除去後の140℃以上の排ガスが、図1の矢印Pにて示されるように、外筒3と流体供給管4との間の空間に導入される。
【0024】
流体供給管4により圧縮空気および圧力水が供給されると、内管4b内を通して送入される圧力水は先端の水噴出口15から第1ラバルノズル部25に向かって噴出され、外管4aを通して送入される圧縮空気は気体流動空間部22から吸込み部26に向かって流動する。噴出された圧力水と圧縮空気とは、この吸込み部26において激しく混合され、その前方位置の最も狭い流路であるスロート部27にて圧縮されて高速度に加速され、ディフューザ28を通過してチャンバー30に送り出される。
【0025】
こうして第1ラバルノズル部25で気液混合された二流体は、チャンバー30内で一旦圧力開放されるが、そのまま放出されることはなく後続する圧力流体により閉鎖状態にあるチャンバー30と接続された第2ラバルノズル部41の吸込み部42からスロート部43を通じて再び加圧されて音速以上の速度に加速され、ディフューザ44から出口部44′を介して繋がる噴射口45で音速になって噴射される。この出口部44′では通過する二流体の混合気の噴射力により、噴射口45の周囲に設けられた複数の吸込み孔46から周囲の空気が図1の矢印Qにて示されるように吸引され、噴射する混合気の周囲を吸引した空気流が取巻いた状態で噴射される。その結果、この第2ラバルノズル部41を備える先端ノズル部40の先端から噴射される混合気はノズル先端出口45′での拡散を抑えられて直進性の高い噴射が行われることになる。
【0026】
本実施形態の二流体噴射ノズル1によれば、先端ノズル部40と外筒3との間の空間にダスト除去後の排ガスが導入されるので、噴射口45の周囲に配される吸込み孔(整流孔)46から外気を吸い込む際にダストが吸い込まれることがない。したがって、ダストによって吸込み孔46が摩耗したり、閉塞したりするのを防止することができる。また、バグフィルター出口におけるダスト除去後の140℃以上の排ガスが用いられているので、外筒3の温度を140〜400℃に抑えることができ、外筒3の腐食を防止することができる。
【0027】
また、本実施形態では、二段のラバルノズル部25,41を途中にチャンバー30を介在させて噴射方向を変換させることにより、減温塔内に配置して冷却水を排ガスに対して並流噴射させることができ、噴射する水の噴霧状態が直進性を有することから噴射によってその周囲の気流を伴走させて流動性を与えることができ、微粒化した粒子もその流動に際しての粒度差の少ない状態を維持させて、冷却効果を高めることができる。さらに、吸込み孔46から吸い込まれる外気によって冷却水の微粒化が維持されるので、この二流体噴射ノズル1が設置される機器である減温塔の小型化を促進することができる。また、微粒化された冷却水の拡散を抑えて直進性を維持することができるので、水滴の壁面付着に伴うダストの付着・成長を抑制することができる。さらに、腐食性ガス雰囲気で使用した場合でも、先端ノズル部40が直接ガスと接触することはないので、この先端ノズル部40の腐食を防止することができる。また、ダスト除去後の排ガスが用いられているので、煙突からの排ガス量の増加を抑制することができるという効果もある。
【0028】
本実施形態の二流体噴射ノズル1では、先端ノズル部40を第1ラバルノズル部25の軸線に対し直交するように装着したものについて説明したが、チャンバー30を球形状に加工し、先端ノズル部40を任意の角度に設けるようにすることもできる。こうすることで、噴射方向を任意角度に設定することができるだけでなく、メンテナンスを容易にすることができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の二流体噴射ノズルは、整流孔を有するノズルを使用する各種燃焼炉の減温塔に適用できるだけでなく、整流孔を有するノズルを使用するバーナーに適用して好適である。
【符号の説明】
【0030】
1 二流体噴射ノズル
2 噴射ノズル本体
3 外筒
4 流体供給管
15 水噴出口
20 ノズルヘッド
25 第1ラバルノズル部
30 チャンバー
40 先端ノズル部(ノズル部)
41 第2ラバルノズル部
45 噴射口
46 吸込み孔(整流孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルヘッドにて液体と気体とを混合し、この混合された二流体を前記ノズルヘッドの先端部に接続されるノズル部の噴射口から噴射させるとともに、前記噴射口の周囲に配される整流孔から外気を吸い込むことにより噴射される二流体の拡散を抑えるように構成される二流体噴射ノズルにおいて、
前記ノズル部を外筒により覆うとともに、これらノズル部と外筒との間の空間にダスト除去後の排ガスを導入することを特徴とする二流体噴射ノズル。
【請求項2】
高温の排ガスを排出する排出経路に設けられる減温塔において、排ガスの気流中に冷却用液体を噴射して排ガスを冷却するのに用いられる請求項1に記載の二流体噴射ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−92813(P2011−92813A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246344(P2009−246344)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】