説明

二液混合噴霧器

【課題】 異種の液体を収納した二つの注射器状の円筒状容器の注出筒に噴霧ノズルを取付け、二種の液体を一定割合に混合して一定量噴霧できるようにした小型の二液混合噴霧器を提供すること。
【解決手段】 頂壁に注出筒を立設した二つの円筒体を連設した容器本体と、各円筒体に嵌挿されるピストン体と該ピストン体と作動杆によって連設された押し板とからなるピストン部材と、二つの注出筒に嵌挿され、液流路と噴出口を具えたノズル部材とを具備していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液混合噴霧器、とくに二液を一定割合で混合して、一定量噴霧するようにした混合噴霧器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
噴霧器として、二種の液体を混合させて噴霧するようにしたトリガー式噴霧器は、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載のトリガー式噴霧器は、混合液を噴霧するものであるが、トリガー式噴霧器として、狭い範囲に噴霧できないという問題があり、また、各液を正確に計量して混合させることはできなかった。
【0003】
また、異なる二種の液体を別々に注射器状の二つの筒状容器を一体とし、同時に異なる液を一定量ずつ注出して混合させるようにした注出容器も、従来より知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2記載の従来技術は、二液を混合して注出するだけのもので、混合液を噴霧することはできなかった。
【特許文献1】特開平10−165854号公報
【特許文献2】特開2003−341749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決することを課題として、異種の液体を収納した二つの注射器状の円筒状容器の注出筒に噴霧ノズルを取付け、二種の液体を一定割合に混合して一定量噴霧できるようにした小型の二液混合噴霧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、二液混合噴霧器として、頂壁に注出筒を立設した二つの円筒体を連設した容器本体と、各円筒体に嵌挿されるピストン体と該ピストン体と作動杆によって連設された押し板とからなるピストン部材と、二つの注出筒に嵌挿され、液流路と噴出口を具えたノズル部材とを具備していることを特徴とする構成を採用する。
【0006】
容器本体とピストン部材に係る実施例として、円筒体の下端内周に係合突条が設けられ、作動杆に、前記係合突条を係合する突部が、所定の間隔をおいて設けられていることを特徴とする構成、または、容器本体に把持部が設けられ、作動杆に連設された押し板が一体されて、把持部と押し板を手指で押圧操作されるようにしたことを特徴とする構成、または、二つの円筒体の直径を変え、内容液を一定割合で混合させることを特徴とする構成を採用する。
【0007】
噴霧器の別実施例として、前記二液混合噴霧器において、二つの注出筒に変え、それぞれの円筒体内に連通する二つの注出孔を穿孔した一つの注出筒が、円筒体の頂壁に連設されていることを特徴とする構成を採用する。
【0008】
ノズル部材の実施例として、ノズル部材の内部に混合室が設けられていることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、二つの円筒体を連設した容器本体に設けた二つの注出筒にノズル部材を取着しているので、二つの円筒体に収納した内容液を混合して噴霧できるようになった。
二つの円筒体にピストン体を装着し、円筒体の下端内周に設けた係合突条と作動杆に設けた突部により、ピストン体をクリックモーションで間欠的に作動できるようにしているので、一定量の内容液を正確に混合噴霧できるようになった。
また、係合突条と突部との係合が外れたときには、ピストン体が連動し、内容液に対する押圧速度が速くなるので細かい噴霧が得られるようになった。
【0010】
さらに、円筒体の直径を変えることによって、内容液の注出量を一定割合に配分して、混合噴霧できるようになった。
また、ノズル部材の内部に二液の混合室を設けることによって、均一に噴霧できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の二液混合噴霧器について、図面を参照して説明する。
図1、2において、Aは二つの円筒容器を連設した容器本体、Bはピストン部材、Cは容器本体Aに取着されたノズル部材である。
【0012】
容器本体Aは、直径の異なる大径の円筒体A1と、小径の円筒体A2とからなり、それぞれ筒壁1a、1bと、中央を頂点とした山形の頂壁2a、2bとを具えており、筒壁1aと筒壁1bは、その一部を共通する接続部3として連設されている。
それぞれの頂壁2a、2bには、接続部3より一定の距離を保って注出筒4a、4bが立設されており、注出筒4a、4bには、注出路5a、5bが穿孔されている。
注出筒4a、4b外周の所定の位置には、図1、4に示すように、ノズル部材Cを取着するための膨出環6a、6bが設けられている。
【0013】
図1〜3に示すように、容器本体Aの中間部には、筒壁1a、1bを接続して指掛けのための把持部7が設けられており、筒壁1a、1b下端には、接続部3を除く外周に膨出環8a、8bが設けられている。
膨出環8a、8bに指掛けできるときには、把持部7はなくてもよい。
筒壁1a、1b下端内周には、少なくとも接続部3に対向する面の一定範囲にわたる係合突条9a、9bが設けられている。
【0014】
ピストン部材Bは、円筒体A1、A2に対応する二つのピストン部材B1、B2からなり、それぞれの部材は、筒壁1a、1b内を摺動するピストン体10a、10bと、作動杆11a、11bとを具えている。
それぞれのピストン体10a、10bは、円筒体A1、A2の頂壁2a、2bと同形の頂壁12a、12bとスカート状の摺動面13a、13b、底壁14a、14bとを具えており、底壁14a、14bには、作動杆11a、11bの支持部15a、15bが設けられている。
【0015】
作動杆11a、11bは、接続部3に直交する連杆16a、16bと、該連杆16a、16bに直交する連杆17a、17bとによって断面十字形に形成されており、連杆16a、16bの外側面には、一定の間隔をおいて、複数の突部18a、18bが突設されている。
【0016】
作動杆11a、11bの下端には、ピストンを押圧するための押し板19a、19bが連設されている。
それぞれの押し板19a、19bの中央端部には、相互に重なり合う部分20a、20b、および21a、21bが設けられており、押し板19a、19bは、一体となって動くようにされている。
また、押し板19a、19bを一体として、作動杆11a、11bを連設して、一体成形してもよい。
【0017】
図4、5に示すように、ノズル部材Cは、注出筒4a、4bに取着される取付部25と円形のノズル本体26とからなっている。
取付部25には、注出筒4a、4bが嵌挿する嵌挿孔27a、27bが穿設されており、嵌挿孔27a、27bの下端には、注出筒4a、4bの膨出環6a、6bと係合して、ノズル部材Cを位置決めするための凹部28a、28bと係止突条29a、29bが設けられており、嵌挿孔27a、27bの上壁30と、注出筒4a、4bの先端との間には、液室31a、31bが形成されている。
【0018】
ノズル本体26は、取付部25の上壁30表面に立設され、頂壁32と周面33とを有している。
ノズル本体26の中心部は、円柱部34となっており、その周囲には、弧状の流路35が設けられている。
ノズル本体26の先端部は、円形の環状孔36となっており、該環状孔36には、頂壁面37と側周壁38とからなるノズルチップ39が嵌着されている。
ノズルチップ39の頂壁面37には、噴出口40が穿孔され、頂壁面37と円柱部34の先端との間には、スピン溝41が形成されている。
側周壁38の内周面には、円柱部34との間に環状流路42が形成されている。
【0019】
次に、本発明の二液混合噴霧器の使用態様と、作用効果について説明する。
本発明の二液混合噴霧器は、薬剤、化粧料、その他の二種混合噴霧器として使用される。
【0020】
まず、二液混合噴霧器の組立について述べると、図6に示すように、容器本体Aの大径、小径の円筒体A1、A2の注出筒4a、4bに、仮蓋dを被嵌するとともに、筒壁1a、1b内のそれぞれに異なる内容液を収納し、ピストン部材B1、B2のピストン体10a、10bを筒壁1a、1bに嵌挿する。
【0021】
その際、筒壁1a、1b下端の係合突条9a、9bがピストン連杆16a、16bの最初の突部18a、18bに係合させるような状態となるとともに、円筒体A1、A2の直径が異なっているので、一定割合の内容液が円筒体A1、A2に収納される。
かくして、それぞれの円筒体A1、A2に異なる内容液を所定量充填した二種混合噴霧器の容器本体Aが得られる。
【0022】
使用にあたっては、まず始めに、容器本体Aを正立させ、仮蓋dを取外し、図6に示すように、ノズル部材Cを注出筒4a、4bに取着する。
その際、注出筒4a、4bをノズル部材Cの嵌挿孔27a、27bに嵌挿し、注出筒4a、4bの膨出環6a、6bを凹部28a、28bに係合させ、膨出環6a、6bの下側に嵌挿孔27a、27b下端の係止突条29a、29bを係合させることによって、注出筒4a、4bの上端と取付部25の上壁30との間を、所定の間隔に位置決めして取着される。
【0023】
噴霧にあたっては、ノズル本体26を所望する噴霧方向に向け、把持部7、または円筒体A1、A2下端の膨出環8a、8bと押し板19a、19bを手指で把持し、押圧すると、それぞれの円筒体A1、A2内の内容液は、液室31a、31bから流路35に入ってある程度混合され、さらに、環状流路42内に入り、混合され、スピン溝41を通って、二液が完全に混合されて噴出口40より噴出される。
【0024】
噴霧時のピストン部材Bの押圧にあたって、作動杆11の連杆16a、16bの突部18a、18bが、筒壁1a、1bの下端の係合突条9a、9bに係合してクリックモーションが付与されることになる。
【0025】
そこで、押し板19a、19bを再度強く押圧すると、連杆16a、16bの突部18a、18bが、係合している筒壁1a、1b下端の係合突条9a、9bを乗り越え、そのまま次の突部18a、18bまで急速に押圧され、再び停止することになる。
そのため、突部18a、18bが係合突条9a、9bを乗り越えたときには、ピストン体10a、10bの内容液に対する押圧が速くなることによって噴霧が細かくなるとともに、次位の突部18a、18bが、係合突条9a、9bに係合するまでの間に、一定量の内容液が、頂壁1a、1bから注出され、噴霧される。
【0026】
所望する噴霧が終わり、内容液が残っている場合には、ノズル部材Cを外し、仮蓋dを被嵌して保存する。
【0027】
押し板19a、19bの押圧にあたって、押し板19a、19bに重合部があることによりいずれか一方を押圧すると、双方のピストン部材が同時に作動し、常に一定割合の内容液が注出されることになる。
【0028】
次に別実施例について説明する。
前記実施例では、それぞれの円筒体の頂壁に注出筒を設けたが、注出筒を一つにして、各円筒体の間に架設するようにしてもよい。
【0029】
図7において、50は、各円筒体A1、A2の頂壁2a、2bの間に架設された注出筒であり、注出筒50には、それぞれの円筒体A1、A2内に連通する二つの注出孔51a、51bが穿孔されている。
Caは、ノズル部材であり、取付部52とノズル本体53とからなっている。
取付部52は、上壁54と側周壁55とを具え、側周壁55の下端内周には、注出筒50に設けた膨出環56に係合する係止環57が設けられ、注出筒50上端と、上壁54との間に液室58が形成されている。
【0030】
ノズル本体53の内部には、液室58につづく混合室59が設けられており、混合室59に接続して液流路60が刻設されている。
ノズル本体53の先端には、噴出口61を設けたノズルチップ62が取着され、液流路60につづく流路63が設けられている。
【0031】
本実施例では、注出孔51a、51bから注出される内容液が、液室58と混合室59で混合され、噴出口61から混合された液が噴霧されることになり、混合効果を高めることができる。
【0032】
本実施例は、ノズル部材として、単に噴霧するだけであるので、種々の噴霧ノズルが利用できるので、上記実施例に示したものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の混合噴霧器は、二つの円筒体を連設した容器本体内に収納した異種の内容物を一定割合で、かつ定量ずつ混合、噴霧するようにでき、薬品、化粧品、その他内容液の二液混合噴霧に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の二液混合噴霧器の断面立面図である。
【図2】二液混合噴霧器の斜視図である。
【図3】二液混合噴霧器の説明図で、(a)は上面図、(b)は底面の斜視図である。
【図4】ノズル部材の断面立面図である。
【図5】ノズル部材の説明図で、 (a)は上面図、(b)は図4のA−A線における横断面図、(c)は底面図である。
【図6】内容液充填時の説明図である。
【図7】別実施例の断面立面図である。
【符号の説明】
【0035】
A 容器本体
A1、A2 円筒体
B、B1、B2 ピストン部材
C、Ca ノズル部材
d 仮蓋
1a,b 筒壁
2a,b、12a,b 頂壁
3 接続部
4a,b、50 注出筒
5a,b 注出路
6a,b、8a,b 膨出環
7 把持部
9a,b 係合突条
10a,b ピストン体
11a,b 作動杆
13a,b 摺動面
14a,b 底壁
15a,b 支持部
16a,b、17a,b 連杆
18a,b 突部
19a,b 押し板
20a,b、21a,b 重なり合う部分
25 取付部
26、53 ノズル本体
27a,b 嵌挿孔
28a,b 凹部
29a,b 係止突条
30、54、58 上壁
31a,b、59 液室
32 頂壁
33 周面
34 円柱部
35、64 流路
36 環状孔
37 頂壁面
38,55 側周壁
39,63 ノズルチップ
40、62 噴出口
41 スピン溝
42 環状流路
51a,b 注出孔
52 取付部
56 膨出環
57 係止環
59 混合室
60 液流路
61 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂壁に注出筒を立設した二つの円筒体を連設した容器本体と、各円筒体に嵌挿されるピストン体と該ピストン体と作動杆によって連設された押し板とからなるピストン部材と、二つの注出筒に嵌挿され、液流路と噴出口を具えたノズル部材とを具備していることを特徴とする二液混合噴霧器。
【請求項2】
円筒体の下端内周に係合突条が設けられ、
作動杆に、前記係合突条を係合する突部が、所定の間隔をおいて設けられていることを特徴とする請求項1記載の二液混合噴霧器。
【請求項3】
容器本体に把持部が設けられ、作動杆に連設された押し板が一体されて、把持部と押し板を手指で押圧操作されるようにしたことを特徴とする請求項1、2記載の二液混合噴霧器。
【請求項4】
二つの円筒体の直径を変え、内容液を一定割合で混合させることを特徴とする請求項1〜3記載の二液混合噴霧器。
【請求項5】
請求項1記載の二液混合噴霧器において、
二つの注出筒に変え、それぞれの円筒体内に連通する二つの注出孔を穿孔した一つの注出筒が、円筒体の頂壁に連設されていることを特徴とする二液混合噴霧器。
【請求項6】
ノズル部材の内部に混合室が設けられていることを特徴とする請求項1〜5記載の二液混合噴霧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−122854(P2006−122854A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317348(P2004−317348)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】