説明

二環式化合物組成物およびその安定化方法

【課題】安定な二環式化合物を含有する組成物を提供する。
【解決手段】医薬品として期待される新規二環式化合物とグリセリドを含有する新規組成物。下式の二環式化合物をグリセリドに溶解することにより二環式化合物の安定性を著しく改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規二環式化合物とグリセリドを含有する新規組成物および二環式化合物をグリセリドと混合することによる二環式化合物の安定性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセリドは、医療分野において広く利用されており、それ自身、応急の栄養補給や消化管壁保護剤(特開平4−210631)として有用である。また各種(例えば、活性ビタミンD類、ジアゼパム、チアゾール誘導体、プロスタグランジン、フラボノイドなど)薬剤の溶剤、カプセル用基剤、点眼用ビヒクル、安定化剤などとしても有用であることが知られている(特開昭53−50141、特開昭53−75320、US4,248,867、特開昭55−136219、US4,247,702、特開昭59−137413、特開平02−204417、特開平04−46122、US5,411,952、US5,474,979およびUS5,981,607など)。
しかしながら、医薬品として有用な新規二環式化合物の物性に対して、グリセリドがどのようにな影響を及ぼすかは、全く知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、医薬品として有用な特定の二環式化合物とグリセリドを含有する新規組成物および二環式化合物をグリセリドと混合することによる二環式化合物の安定性化方法を提供することを目的とする。
この発明はさらに、医薬品として有用な新規化合物を提供することを目的とする。
この発明者は、新規二環式化合物の安定性の改善について鋭意研究した結果、二環式化合物とグリセリドを含有する組成物が上記目的を達成し得ることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、この発明は、下記一般式(I)
【化1】

[式中、
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
およびVは、炭素または酸素;
およびWは、
【化2】

(R及びRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル。ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない。);
Zは、炭素、酸素、イオウまたは窒素;
は、非置換またはハロゲン、アルキル基、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基;
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された、飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基:低級シクロアルキル基:低級シクロアルキルオキシ基:アリール基、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基;
は、水素、低級アルキル、低級シクロアルキル、アリールまたは複素環基]
で表される二環式化合物とグリセリドを含有する新規組成物、および上記二環式化合物をグリセリドに溶解することによる上記二環式化合物の安定化方法を提供するものである。
【0005】
この発明はさらに、上記一般式(I)で表される新規二環式化合物を提供するものである。
【0006】
より詳細には本発明は下記に関する:
(1) 下記一般式(I)
【化3】

[式中、
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
1およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
およびVは、炭素または酸素;
およびWは、
【化4】

(R及びRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル。ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない。);
Zは、炭素、酸素、イオウまたは窒素;
は、非置換またはハロゲン、アルキル基、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基;
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環−オキシ基で置換された、飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基:低級シクロアルキル基:低級シクロアルキルオキシ基:アリール基、アリールオキシ基、複素環基または複素環−オキシ基;
は、水素、低級アルキル、低級シクロアルキル、アリールまたは複素環基]
で表される二環式化合物とグリセリドを含有する新規組成物。
(2) 二環式化合物が、一般式(I)において
Aが−COOHまたはその官能性誘導体、
1およびXがハロゲン、
が=O、またはRおよびRの一方が水素、他方がヒドロキシであるもの、
が、RおよびRの両方が水素であるもの、
Zが酸素、
が非置換の二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基、
が非置換の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基および
が水素である、(1)記載の組成物。
(3) グリセリドが炭素数6〜24の脂肪酸のグリセリドである、(1)記載の組成物。
(4) グリセリドが炭素数6〜20の脂肪酸のグリセリドである、(3)記載の組成物。
(5) グリセリドが2以上のグリセリドの混合物である、(1)記載の組成物。
(6) グリセリドが他の油性溶媒と混合されたものである、(1)記載の組成物。
(7) 他の油性溶媒が鉱油である、(6)記載の組成物。
(8) 経口投与用製剤である、(1)記載の組成物。
(9) カプセル製剤である、(8)記載の組成物。
(10) 局所投与用製剤である、(1)記載の組成物。
(11) 点眼剤である、(10)記載の組成物。
(12) 下記一般式(I)
【化5】

[式中、
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
1およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
およびVは、炭素または酸素;
およびWは、
【化6】

(R及びRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル。ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない。);
Zは、炭素、酸素、イオウまたは窒素;
は、非置換またはハロゲン、アルキル基、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基;
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環−オキシ基で置換された、飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基:低級シクロアルキル基:低級シクロアルキルオキシ基:アリール基、アリールオキシ基、複素環基または複素環−オキシ基;
は、水素、低級アルキル、低級シクロアルキル、アリールまたは複素環基]
で表される二環式化合物をグリセリドと混合することによる二環式化合物の安定化方法。
(13) 二環式化合物が、一般式(I)において
Aが−COOHまたはその官能性誘導体、
1およびXがハロゲン、
が=O、またはRおよびRの一方が水素、他方がヒドロキシであるもの、
が、RおよびRの両方が水素であるもの、
Zが酸素、
が非置換の二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基、
が非置換の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基、
が水素である、(12)記載の方法。
(14) グリセリドが炭素数6〜24の脂肪酸のグリセリドである、(12)記載の方法。
(15) グリセリドが炭素数6〜20の脂肪酸のグリセリドである、(14)記載の方法。
(16) グリセリドが2以上のグリセリドの混合物である、(12)記載の方法。
(17) グリセリドが他の油性溶媒と混合されたものである、(12)記載の方法。
(18) 他の油性溶媒が鉱油である、(17)記載の方法。
(19) 経口投与用に製剤される、(12)記載の方法。
(20) カプセル剤に製剤される、(19)記載の方法。
(21) 局所投与用に製剤される、(12)記載の方法。
(22) 点眼剤として製剤される、(21)記載の方法。
(23) 下記一般式(I)
【化7】

[式中、
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
1およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
およびVは、炭素または酸素;
およびWは、
【化8】

(R及びRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル。ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない。);
Zは、炭素、酸素、イオウまたは窒素;
は、非置換またはハロゲン、アルキル基、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基;
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環−オキシ基で置換された、飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基:低級シクロアルキル基:低級シクロアルキルオキシ基:アリール基、アリールオキシ基、複素環基または複素環−オキシ基;
は、水素、低級アルキル、低級シクロアルキル、アリールまたは複素環基]
で表される二環式化合物。
(24) 二環式化合物が、一般式(I)において、X1およびXがハロゲンである、(23)記載の化合物。
(25) 二環式化合物が、一般式(I)において、X1およびXがふっ素である、(24)記載の化合物。
(26) 下記一般式(I)
【化9】

[式中、
Aは、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
1およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
およびVは、炭素または酸素;
およびWは、
【化10】

(R及びRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル。ただし、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない。);
Zは、炭素、酸素、イオウまたは窒素;
は、非置換またはハロゲン、アルキル基、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基;
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環−オキシ基で置換された、飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基:低級シクロアルキル基:低級シクロアルキルオキシ基:アリール基、アリールオキシ基、複素環基または複素環−オキシ基;
は、水素、低級アルキル、低級シクロアルキル、アリールまたは複素環基]
で表される二環式化合物を含む医薬組成物。
(27) 二環式化合物が、一般式(I)において、X1およびXがハロゲンである、(26)記載の組成物。
(28) 二環式化合物が、一般式(I)において、X1およびXがふっ素である、(27)記載の組成物。
【0007】
上式(I)中、RおよびRにおける「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、少なくとも1つまたはそれ以上の2重結合および/または3重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和は両方の位置番号を表示して示す。
【0008】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素を意味し、好ましくはRの場合炭素数1〜10、特に好ましくは2〜8の炭化水素であり、Rの場合炭素数1〜10、特に好ましくは1〜8の炭化水素である。
「ハロゲン」の語は、ふっ素、塩素、臭素およびよう素を包含する。特に好ましくはふっ素である。
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0009】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−を意味する。
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のようなアルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルである。
【0010】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキルが酸化されて生じるアシル、例えばアセチル)で示される基を意味する。
「低級シクロアルキル基」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる基であり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
「低級シクロアルキルオキシ」の語は、低級シクロアルキルが上述と同意語である低級シクロアルキル−O−を意味する。
【0011】
「アリール」の語は、非置換または置換芳香性炭化水素環(好ましくは単環性の基)を包含し、例えばフェニル、ナフチル、トリル、キシリルを含む。置換基としては、ハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲン原子および低級アルキル基は前記の意味)が含まれる。
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール基)で示される基を意味する。
【0012】
「複素環基」の語は、置換されていてよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1〜4、好ましくは1〜3の1または2種のヘテロ原子を有する5〜14、好ましくは5〜10員環である単環から三環、好ましくは単環複素環基を含む。複素環基の例には、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、2−ピロリニル、ピロリジニル、2−イミダゾリニル、イミダゾリジニル、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、インドリル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、プリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾロニル、ベンゾチアゾリル、フェノチアジニルが含まれる。この場合の置換基の例には、ハロゲンおよびハロゲン置換低級アルキル基(ここでハロゲン原子および低級アルキル基は前記の意味)が含まれる。
【0013】
「複素環−オキシ基」の語は、式HcO−、ここでHcは前記の複素環基である、により表される基を意味する。
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0014】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等があげられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の方法によってまたは塩交換によって製造し得る。
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル、オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル、オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル、ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル、エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル、メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル、および例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル、ベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルがあげられる。
【0015】
エステルの例としては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル、ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル、エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル、ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル、メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステルおよび例えばフェニルエステル、トシルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル、ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルがあげられる。アミドとしては、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド等のモノもしくはジ低級アルキルアミド、アニリド、トルイジド等のアリールアミド、メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキルもしくはアリールスルホニルアミド等があげられる。
【0016】
好ましいAの例は−COOH、−CHOH、その医薬上許容し得る塩、エステル、エーテルまたはアミドである。
好ましいXおよびXは少なくとも一方がハロゲンであり、好ましくは両方がハロゲンである。特に好ましくはふっ素である。
好ましいWは=O、またはRおよびRの一方が水素、他方がヒドロキシであるものである。
好ましいWはRおよびRの両方が水素であるものである。
好ましいZは酸素である。
好ましいRは非置換の二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基である。特に好ましくは1〜10の炭素原子、最も好ましくは2〜8の炭素原子を含有する。
【0017】
の具体例としては、例えば、次のものがあげられる。
−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−CH≡CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
など。
【0018】
好ましいRは二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基である。特に好ましくは1〜10の炭素原子、最も好ましくは1〜8の炭素原子を含有する。
好ましいRは水素である。
【0019】
この発明の二環式化合物は、上記一般式(I)で表される化合物、およびそのいずれの光学異性体、立体異性体、互変異性体をも包含する。
以下に示す式(互変異性体II)で表される二環式化合物においては、その互変異性体として13,14−ジヒドロ−15−ケト−プロスタグランジン化合物(互変異性体I)と平行状態で存在し得ることが知られている(USP5,166,174、USP5,225,439、USP5,284,858、USP5,380,709、USP5,428,062およびUSP5,886,034、これらの引用文献は本明細書中に引用により組み込む)。
【0020】
【化11】

【0021】
しかしながら、水の不存在下において、上記互変異性体化合物は、主に二環式化合物の形態で存在することが確認されている。水性媒質中で、水分子と例えば炭化水素鎖のケト基の間に水素結合が生じ、それにより二環式環の形成が妨害されると考えられる。加えて、Xおよび/またはXのハロゲン原子が二環式環、例えば下記化合物1あるいは2など、の形成を促進すると考えられる。例えば、二環式/単環式構造は、DO中では6:1の、CDOD−DO中では10:1の、CDCl中では96:4の比率で存在し得る。従って、この発明の好ましい具体例は、二環式形態が少なくとも50:50、好ましくは90:10の二環/単環の比率で、またはより大きな比率から実質上全てが二環式化合物として存在する組成物であり、100%の二環式化合物はこの発明の範囲内である。
【0022】
この発明の化合物の好ましい具体例には、以下に示す化合物1および2が含まれる。
【0023】
化合物1:
【化12】

【0024】
7−[(1R、3R、6R、7R)−3−(1,1−ジフルオロペンチル)−3−ヒドロキシ−2−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]ヘプタノイックアシッド
【0025】
化合物2:
【化13】

【0026】
7−[(1R、6R、7R)−3−[(3S)−1,1−ジフルオロ−3−メチルペンチル]−3−ヒドロキシ−2−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]ヘプタノイックアシッド
この発明の化合物は、気管支拡張薬のごとき薬理学的活性を有する。
【0027】
前記二環式化合物は以下に示す一般的方法に従って調製してよい。:
イソプロピル7−[(1S、3S、6S、7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビ−シクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]ヘプト−5−エノエートおよびイソプロピル7−[1S、3R、6S、7R]−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]ヘプト−5−エノエートの調製
【0028】
1.イソプロピル(Z)−7−[1R,2R,3R,5S]−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホニル)シクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(2)の調製
【0029】
【化14】

【0030】
ピリジン(0.77g)およびイソプロピル(Z)−7−[(1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)シクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(1)(4.05g)のジクロロメタン混合液に、トシルクロライド(1.86g)のジクロロメタン溶液を0℃で添加し、0℃で2日間攪拌した。反応中、トシルクロライド(5.58g)およびピリジン(2.31g)をそれぞれ3回に分けて添加した。常套のワークアップの後、粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフィーにかけ、イソプロピル(Z)−7−[(1R,2R,3R,5S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホキシ)シクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(2)を得た。収量3.45g、64.1%。
【0031】
2.イソプロピル(Z)−7−[(1R,2S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソシクロペント−3−エニル]ヘプト−5−エノエート(3)の調製
【0032】
【化15】

【0033】
イソプロピル(Z)−[1R,2R,3R,5S]−2−(3,3−エチレンジオキシ−デシル)−5−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホキシ)シクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(2)(1.72g)をアセトン中−40℃〜−20℃で、ジョーンズ試薬を用いて4時間酸化した。常套のワークアップの後、粗生成物を、n−ヘキサン/酢酸エチル(3.5/1)と共にシリカゲルパッドへ通した。生成物をさらにシリカゲル上(n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)でクロマトグラフィーにかけた。イソプロピル(Z)−7−[(1R,2S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソ−シクロペント−3−エニル]ヘプト−5−エノエート(3)を得た。収量0.81g、64.6%。
【0034】
3.イソプロピル−7−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヒドロキシメチル−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(4)の調製
【0035】
【化16】

【0036】
イソプロピル(Z)−7−[(1R,2S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)5−オキソ−シクロペント−3−エニル]ヘプト−5−エノエート(3)(0.81g)およびベンゾフェノンをメタノールに溶解した。アルゴン雰囲気下、溶液を300−W高圧水銀ランプで4時間40分間照射した。溶媒を蒸発させた後、粗生成物をシリカゲル上(n−ヘキサン/酢酸エチル=3/2)でクロマトグラフィーにかけ、イソプロピル−7−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヒドロキシメチル−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(4)を得た。収量0.41g、47%。
【0037】
4.イソプロピル−7−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソ−3−(p−トルエンスルホキシメチル)シクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(5)の調製
【0038】
【化17】

【0039】
イソプロピル−(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヒドロキシメチル−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(4)(0.21g)およびピリジン(0.07g)をジクロロメタンに溶解した。この混合液にトシルクロライド(0.17g)を0℃にて添加し、次いで混合液を72時間攪拌した。常套のワークアップの後、粗生成物をシリカゲル上でクロマトグラフィーにかけ、イソプロピル7−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソ−3−(p−トルエンスルホキシ)メチルシクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(5)を得た。収量0.25g、89%。
【0040】
5.イソプロピル−7−[(1R,2R,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヨードメチル−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(6)の調製
【0041】
【化18】

【0042】
イソプロピル7−(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソ−3−(p−トルエンスルホキシ)メチルシクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(5)(0.25g)をアセトンに溶解し、ついでヨウ化ナトリウム(0.12g)を添加した。混合液を3時間還流した。ヨウ化ナトリウム(0.097g)を混合液に添加し、次いで混合液をさらに80分間還流した。常套のワークアップの後、粗生成物をシリカゲル上(n−ヘキサン/酢酸エチル=5/1)でクロマトグラフィーにかけ、イソプロピル7−(1R,2R,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヨードメチル−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(6)を得た。収量0.16g、68%。
【0043】
6.イソプロピル7−(1R,2R,3R)−3−ヨードメチル−5−オキソ−2−(3−オキソデシル)シクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(7)の調製
【0044】
【化19】

【0045】
イソプロピル7−(1R,2R,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヨードメチル−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(6)(0.16g)を酢酸/水/テトラヒドロフラン(3/1/1)の混合溶媒に溶解した。混合液を20時間室温で、および2.5時間50℃で攪拌した。溶媒を蒸発させた後、得られた残存物をシリカゲル上(n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1)でクロマトグラフィーにかけ、イソプロピル7−(1R,2R,3R)−3−ヨードメチル−5−オキソ−2−(3−オキソデシル)シクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(7)を得た。収量0.13g、86%。
【0046】
7.イソプロピル7−(1S,3S,6S,7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]ヘプト−5−エノエート(8a)およびイソプロピル7−(1S,3R,6S,7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]ヘプト−5−エノエート(8b)の調製
【0047】
【化20】

【0048】
イソプロピル7−(1R,2R,3R)−3−ヨードメチル−2−(3−オキソデシル)−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノエート(7)(0.0574g)およびジルコノセンジクロライドをテトラヒドロフランに溶解した。混合液をアルゴン蒸気下で超音波処理し、空気を混合液からパージ除去した。混合液にヨウ化サマリアムのテトラヒドロフラン溶液(0.1M、2.1mL)を滴下した。混合液を30分間室温で攪拌し、次いで塩酸(0.1M、1mL)を添加した。常套のワークアップの後、粗生成物をシリカゲル上(n−ヘキサン/酢酸エチル=5/1)でクロマトグラフィーにかけた。2つの二環式生成物、極性の大きい方(8a)とそのエピマー、極性の小さい方(8b)および出発物質(7)を以下のように得た。:
【0049】
イソプロピル7−(1S,3S,6S,7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]ヘプト−5−エノエート(8a)およびイソプロピル7−(1S,3R,6S,7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]ヘプト−5−エノエート(8b):収量8(a)5.1mg、収量8(b)7.2mg、出発物質(7)の回収26.7mg。
【0050】
Zがイオウであり、Wが−OH基である式(I)により表される化合物の理論的合成経路を以下に示す。
【化21】

【0051】
【化22】

【0052】
Zがイオウであり、Wがケトである式(I)により表される化合物の理論的合成経路を以下に示す。
【化23】

【0053】
Zがイオウであり、Wがケトであり、およびXとXがふっ素である式(I)により表される化合物の理論的合成経路を以下に示す。
【化24】

【0054】
Zが窒素である式(I)により表される化合物の理論的合成経路を以下に示す。
【化25】

【0055】
【化26】

【0056】
Zが窒素である式(I)により表される化合物のもう一つの理論的合成経路を以下に示す。
【化27】

【0057】
【化28】

【0058】
この発明の調製法は、記載されたものに制限されると解釈されるべきではなく、保護、酸化、還元等に適した方法を用いてよい。
この発明の組成物は、上記二環式化合物およびグリセリドを含有する。この発明に用いられるグリセリドとして、飽和または不飽和の分岐を有していてもよいグリセリドがあげられる。好ましい脂肪酸としては、少なくともC6、好ましくはC6−24の炭素原子を有する中鎖または高鎖脂肪酸であり、例えばカプロン酸(炭素数6)、カプリル酸(炭素数8)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)およびミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、パルミトレイン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、リノレン酸(炭素数18)、リシノール酸(炭素数18)およびアラキン酸(炭素数20)などの脂肪酸をあげることができる。
【0059】
また、2種以上のグリセリドを混合物として用いることもできる。
グリセリドの混合物としては、カプリル酸トリグリセリドおよびカプリン酸トリグリセリドの混合物、ひまし油、トウモロコシ油、オリーブ油、ゴマ油、菜種油、サラダ油、綿実油、ツバキ油、ピーナツ油、パーム油、ヒマワリ油等の植物油をあげることができる。
【0060】
この発明の組成物は、通常、上記の二環式化合物をグリセリドに溶解あるいは混合することにより得ることができる。二環式化合物を直接グリセリドに溶解することが困難な場合は、両者を溶解することができる溶剤にそれぞれ溶解した後、これらを混合してよい。この具体例では、減圧下に溶剤を除去してもよい。
この発明において、上記の二環式化合物に対するグリセリドの使用量は、この発明の目的である二環式化合物の安定化が達成される限りは、特に限定されない。通常、二環式化合物1重量部に対して1〜5,000,000重量部、好ましくは5〜1,000,000重量部、より好ましくは10〜500,000重量部である。
【0061】
本発明の組成物には、他の油性溶媒を含んでもよい。他の油性溶媒としては、液体パラフィンおよび軽質液体パラフィンなどの鉱油、トコフェロール等があげられる。
他の油性溶媒に対するグリセリドの比率は制限されない。グリセリドは、この発明の二環式組成物の安定性を少なくとも改善する量で存在してよい。全油性溶媒中のグリセリドの比率は少なくとも1v/v%、好ましくは5v/v%以下である。
【0062】
好ましい1具体例では、この発明の組成物は実質上水を含まない。「実質上水を含まない」の語は、組成物が意図的に添加された水を含まないことを意味する。多くの物質が大気から取り込まれた水を含み、または常態で配位化合物として存在していることが分かっている。吸湿性物質により取りこまれた水、または水和物として存在する水は、この具体例の組成物に存在して差し支えない。本具体例では、組成物中に存在する水はいずれも、この発明の組成物に害のある量で存在してはならない。
【0063】
本発明の組成物には、生理学的に許容され、一般式(I)の化合物の安定性を損なわない範囲で適当な添加剤をさらに含んでいてもよい。本発明に用いられる添加剤としては賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤、滑沢剤、潤滑剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基材、座薬用基材、エアゾール材、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性剤(例えばシクロデキストリン、生体内分解高分子など)などが例示されるが、これらの添加剤の詳細については、製剤学に関する一般書籍に記載されているものから適宜選択すればよい。さらに本発明の組成物には、別種の薬効成分を適宜含有させることができる。
【0064】
この発明の組成物は、常套の手段により、適宜、製剤化することができる。製剤の形態としては、経口投与用製剤、坐剤、注射剤、局所投与用製剤(点眼剤、軟膏剤など)等があげられるが、特にカプセル剤等の経口投与用製剤、および点眼剤等の局所投与用組成物の形態が好ましい。
以下、この発明を実施例により、さらに詳細な説明をするが、これらはこの発明を限定するものではない。
【0065】
実施例1
上記化合物1及び化合物2を表1に示した量で中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)3)に溶解し、40℃で硬質ガラス容器に保存して、経時的に化合物1及び化合物2の含量をHPLC法により調べた。中鎖脂肪酸トリグリセリドとしてはカプリル酸トリグリセリドおよびカプリン酸トリグリセリドの混合物(85:15)を用いた。上記の実験と同時に、対照試験として、対応する各化合物1および2を(溶媒に溶かさずに)そのままで40℃で保存して同様の実験を行った。
(1)溶媒を添加しない場合の含量測定法(HPLC法)は以下のように行った。
【0066】
化合物1または化合物2及びそれらの標準品についてその約0.025gずつを精密に量り、それぞれに内標準溶液5mLを正確に加えた後、液体クロマトグラフ用アセトニトリルを加えて正確に10mLとし、試料溶液及び標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10mLにつき、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、1点検量線を用いた内標準法により含量を測定した。
【0067】
【数1】

【0068】
W:各標準品の量(mg)
W:化合物1及び化合物2の試料の量(mg)
:各標準品の内標準物質に対するピーク面積比
:試料の内標準物質に対するピーク面積比
操作条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:294nm)
カラム:内径約5mm、長さ約25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てん
カラム温度:35℃付近の一定温度
移動相:液体クロマトグラフ用アセトニトリル/0.01mol/Lの酢酸ナトリウム水溶液/氷酢酸混液(800:200:1)
【0069】
(2)溶媒を添加した場合の含量測定法(HPLC法)は以下のように行った。
表1の表示量に従い化合物1または化合物2約36μgに対応する量を精密に量った。これに内標準溶液1.0mLを正確に加え、液体クロマトグラフ用酢酸エチルを加えて10mLとした。この液0.1mLを取り、減圧下濃縮乾固し試料とした。
別にそれぞれの標準品18mgを精密に量り、液体クロマトグラフ用酢酸エチルを加えて正確に50mLとした。この液1.0mL、及び内標準溶液10.0mLを正確に量り、液体クロマトグラフ用酢酸エチルを加え100mLとした。この液0.1mLをとり、減圧下濃縮乾固し、標準試料とした。
【0070】
試料及び標準試料に、蛍光ラベル化試液0.1mL及び蛍光ラベル化触媒0.85mLを加え、撹拌後室温で30分以上反応させた。これに2%酢酸を含む液体クロマトグラフ用アセトニトリル0.05mLを加え撹拌後室温で30分以上おき、試料溶液及び標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液10μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、1点検量線を用いた内標準法により含量を測定した。
【0071】
【数2】

【0072】
W:各標準品の量(mg)
:各標準品の内標準物質に対するピーク面積比
:試料の内標準物質に対するピーク面積比
操作条件
検出器:分光蛍光検出器(励起波長 259nm蛍光波長 394nm)
カラム:内径約5mm、長さ約25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てん
カラム温度:35℃付近の一定温度
移動相:液体クロマトグラフ用アセトニトリル/液体クロマトグラフ用メタノール/酢酸アンモニウム混液(0.05mol/L)(4:11:5)
実験結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1の結果から本発明に従いグリセリドと混合することにより化合物1及び化合物2の安定性が著しく向上することが示される。
【0075】
実施例2
上記化合物1を表2に示した量で種々の溶媒に溶解し、40℃で低密度ポリエチレン(LDPE)、硬質ガラスまたはステンレススチール製の容器に保存して、4週間後に化合物1の含量を、以下の表2に示す組成物を用いる以外は上記実施例1の(2)に従いHPLC法により調べた。
実験結果を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表2の結果から本発明に従いグリセリドと混合することにより化合物1の安定性が著しく向上することが示される。
【0078】
実施例3
上記化合物1を表3に示した量で種々の比率のMCT:鉱油に溶解し、40℃でLDPE製の容器に保存して、4週間後に化合物の含量を、以下の表3に示す組成物を用いる以外は上記実施例1の(2)に従いHPLC法により調べた。
実験結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
表3の結果から本発明に従いグリセリドおよび他の油性溶媒と混合することにより化合物1の安定性が著しく向上することが示される。
【0081】
製剤例1
カプセル
50μgの化合物1をMCTに溶解して全量を100mgとし、常套の方法でカプセルに充填してカプセル製剤を得た。
【0082】
製剤例2
点眼剤
2.5μgの化合物1をMCT/鉱油(20:80)に溶解し、全容積を5mlとした。溶液を点眼容器に充填し、点眼剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

[式中、
Aは、−CHOH、−COOHまたはそれらの塩、エーテル、エステルまたはアミド;
1およびXは、水素または低級アルキル;
およびVは、炭素;
およびWは、
【化2】

(R及びRは、水素またはヒドロキシ。ただし、RおよびRが同時にヒドロキシとなることはない。);
Zは、炭素、酸素、イオウまたは窒素;
は、二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基;
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環−オキシ基で置換された、飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基;
は、水素または低級アルキル]
で表される二環式化合物。

【公開番号】特開2009−235079(P2009−235079A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125293(P2009−125293)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【分割の表示】特願2001−530318(P2001−530318)の分割
【原出願日】平成12年10月13日(2000.10.13)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】