説明

二相抽出発酵を用いてブタノールを生産するための方法

組換え微生物宿主を利用する発酵により、ブタノール生成の有効力価、有効速度、および有効収率の増加をもたらす、毒性の課題を克服する、少なくとも1つの発酵性炭素源からブタノールを作製する方法であり、ブタノールは、発酵中に特定の有機抽出剤に抽出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年6月4日に出願された米国仮特許出願第61/058567号明細書の便益性を主張する。
【0002】
本発明は、バイオ燃料の分野に関する。より詳細には、本発明は、微生物発酵を通じてブタノールを生成するための方法に関し、ここでブタノール生成物は、発酵中での水不混和性有機抽出剤への抽出によって取り出される。
【背景技術】
【0003】
ブタノールは、種々の用途、例えば燃料添加剤として、プラスチック産業における化学原料として、さらに食品および香料産業における食品等級の抽出剤としての用途を有する重要な産業化学物質である。毎年、100〜120億ポンドのブタノールが石油化学的手段によって生産されており、この化学物質に対する需要は高まる可能性が高い。
【0004】
いくつかの化学合成方法は既知であるが、ブタノールを生成するこれらの方法は、石油化学に由来する出発原料を使用し、一般に高価であり、環境に優しいとはいえない。発酵によってブタノールを生成するいくつかの方法もまた既知であり、例えばアセトン、1−ブタノールおよびエタノールの混合物を生産する発酵プロセスであるABEプロセスが挙げられる。クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)によるアセトン−ブタノール−エタノール(ABE)発酵は、最古の既知の工業発酵の1つであり、これらの溶媒の生成に関与する経路および遺伝子も同様である。ABEプロセスによる1−ブタノールの生成は、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)に対する1−ブタノールの毒性効果によって制限される。細菌に対して毒性を示さない特定の有機抽出剤を使用する原位置抽出発酵法は、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)を使用する発酵により、1−ブタノールの生成を促進することが報告されている(非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3)。
【0005】
上記の天然クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)に対し、1−ブタノール、2−ブタノール、およびイソブタノール生合成経路を発現する組換え微生物生成宿主についても記載がなされている。これらの組換え宿主は、アセトンおよびエタノールなどの副生成物を生成しないことから、ABEプロセスと比較して高収率でブタノールを生成する可能性を有する。しかし、これらの組換え宿主に伴う課題は、ブタノールの生物学的生成が、発酵において使用される宿主微生物に対するブタノール毒性閾値によって制限されるように思われることである。抽出発酵法は、組換え微生物株を使用して、ブタノールの生成に適用されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Rofflerら、Biotechnol.Bioeng.31:135−143頁、1988年
【非特許文献2】Rofflerら、Bioprocess Engineering 2:1−12頁、1987年
【非特許文献3】Evansら、Appl.Environ.Microbiol.54:1662−1667頁、1988年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の需要を満足させ、ブタノールを少なくとも1つの発酵性炭素源から作製する方法を提供し、それは毒性の課題を克服し、組換え微生物宿主を使用する発酵により、ブタノール生成の有効力価、有効速度、および有効収率における増大をもたらし、ここでブタノールは、発酵中、特定の有機抽出剤に抽出される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発酵培地からブタノールを回収するための方法であって、
a)少なくとも1つの発酵性炭素源からブタノールを生成する、ブタノール、水、および遺伝子組換え微生物を含む発酵培地を提供するステップと、
b)発酵培地を、i)C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1の水不混和性有機抽出剤、ならびに場合によって(ii)C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成するステップと、
c)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
d)ブタノールをブタノール含有有機相から回収し、回収ブタノールを生成するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0009】
本発明は、ブタノールを生成するための方法であって、
a)少なくとも1つの発酵性炭素源からブタノールを生成する遺伝子組換え微生物を提供するステップと、
b)微生物を、水相と、C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される水不混和性有機抽出剤とを含む二相発酵培地中で成長させるステップであって、ここで前記二相発酵培地は、ブタノールの有機抽出剤への抽出によってブタノール含有有機相を形成することを可能にするのに十分な時間、前記水不混和性有機抽出剤の約3容量%〜約60容量%を含むステップと、
c)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
d)ブタノールをブタノール含有有機相から回収し、回収ブタノールを生成するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0010】
本発明の実施形態は、ブタノールを生成するための方法であって、:
a)少なくとも1つの発酵性炭素源からブタノールを生成する遺伝子組換え微生物を提供するステップと、
b)微生物を発酵培地中で成長させるステップであって、ここで微生物は、前記ブタノールを発酵培地中に生成し、ブタノール含有発酵培地を生成するステップと、
c)ブタノール含有発酵培地を、i)C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1の水不混和性有機抽出剤、ならびに場合によって(ii)C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成するステップと、
d)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
e)ブタノールをブタノール含有有機相から回収するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0011】
本発明の実施形態は、ブタノールを生成するための方法であって、
a)少なくとも1つの発酵性炭素源からブタノールを生成する遺伝子組換え微生物を提供するステップと、
b)微生物を、好気的条件下で、予め選択された成長レベルに達するのに十分な期間、発酵培地中で成長させるステップと、
c)微好気的または嫌気的条件に変更し、発酵培地中でのブタノール生成を刺激し、ブタノール含有発酵培地を形成するステップと、
d)ブタノール含有発酵培地を、i)C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1の水不混和性有機抽出剤、ならびに場合によって(ii)C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成するステップと、
e)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
f)ブタノールをブタノール含有有機相から回収するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0012】
本発明の別の実施形態は、ブタノールを生成するための方法であって、
a)少なくとも1つの発酵性炭素源を含む発酵培地からブタノールを生成する、ブタノール、水、および遺伝子組換え微生物を含む発酵培地を提供するステップと、
b)発酵培地を、並流または向流抽出剤流を介して、i)C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1の水不混和性有機抽出剤、ならびに場合によって(ii)C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成するステップと、
c)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
d)ブタノールをブタノール含有有機相から回収し、回収ブタノールを生成するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0013】
本抽出発酵法は、すべてのブタノール異性体を含むブタノールを提供し、それは、ガソリンの場合と同様のエネルギー含量を有することで知られており、任意の化石燃料と混和可能である。ブタノールは、標準内燃機関内で燃焼される場合、COのみを生成し、SOまたはNOをほとんど生成しないことから、燃料または燃料添加剤として好ましい。さらにブタノールは、今日まで最も好ましい燃料添加剤であるエタノールより腐食性が低い。
【0014】
本方法から生成されるブタノールは、バイオ燃料または燃料添加剤としてのその有用性に加え、新興の燃料電池産業における水素流通問題に影響を与える可能性を有する。今日、燃料電池は、水素の輸送および流通に関連した安全性の懸念によって悩まされている。ブタノールは、その水素含量において容易に改質し、燃料電池または車両のいずれかにとって要求される純度で、既存のガソリンスタンドを通じて流通させることが可能である。
【0015】
最終的に、本方法は、ブタノールを植物由来の炭素源から生成し、ブタノール生成のための標準の石油化学プロセスに関連した環境影響を回避する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例6に記載のように有機抽出剤としてのオレイルアルコールとガスストリッピングを併用する発酵(■)中、および実施例7に記載のようにガスストリッピング単独を用いる発酵(●)中での発酵培地(すなわち水相)中のイソブタノールの濃度を示すグラフである。図1は、イソブタノールを生成する組換え大腸菌(Escherichia coli)を使用して得られるデータを表す。
【図2】実施例8に記載のように有機抽出剤としてのオレイルアルコールとガスストリッピングを併用する発酵(■)中、および実施例9に記載のようにガスストリッピング単独を用いる発酵(●)中での発酵培地(すなわち水相)中のイソブタノールの濃度を示すグラフである。図2は、イソブタノールを生成する組換えサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を使用して得られるデータを表す。
【図3】発酵培地を発酵容器内の抽出剤と接触させる前に、第1の水不混和性抽出剤および任意の第2の水不混和性抽出剤が容器内で結合される、本発明の方法の一実施形態を略図で例示する。
【図4】第1の水不混和性抽出剤および任意の第2の水不混和性抽出剤が、発酵培地が抽出剤と接触される発酵容器に別々に加えられる、本発明の方法の一実施形態を略図で例示する。
【図5】第1の水不混和性抽出剤および任意の第2の水不混和性抽出剤が、発酵培地と抽出剤との接触のための異なる発酵容器に別々に加えられる、本発明の方法の一実施形態を略図で例示する。
【図6】生成物の抽出が発酵槽の下流で行われ、発酵培地を異なる容器内の抽出剤と接触させる前に、第1の水不混和性抽出剤および任意の第2の水不混和性抽出剤が容器内で結合される、本発明の方法の一実施形態を略図で例示する。
【図7】生成物の抽出が発酵槽の下流で行われ、第1の水不混和性抽出剤および任意の第2の水不混和性抽出剤が、発酵培地が抽出剤と接触される容器に別々に加えられる、本発明の方法の一実施形態を略図で例示する。
【図8】生成物の抽出が発酵槽の下流で行われ、第1の水不混和性抽出剤および任意の第2の水不混和性抽出剤が、発酵培地と抽出剤との接触のための異なる発酵容器に別々に加えられる、本発明の方法の一実施形態を略図で例示する。
【図9】生成物の抽出が、少なくとも1つのバッチ発酵槽内で、発酵もろみ(fermentation mash)の底もしくはその近辺での抽出剤の並流を介して行われ、発酵槽は抽出剤(発酵槽の上部もしくはその近辺で発酵槽から流出する)で充填される、本発明の方法の一実施形態を略図で例示する。
【0017】
以下の配列は、米国特許施行規則第1.821−1.825条(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を有する特許出願の要件−配列の規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules)」)に従い、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization)(WIPO)基準ST.25(1998年)、ならびにEPOおよびPCTの配列表の要件(規則5.2および49.5(aの2)、ならびに実施細則の第208節および付録C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データにおいて用いられる記号および形式は、米国特許施行規則第1.822条に示される規則に従う。
【0018】
【表1】

【0019】
配列番号11〜22は、下記の本明細書中の実施例の一般的方法の項に記載される組換え大腸菌(Escherichia coli)株の作製に使用されるプライマーのヌクレオチド配列である。
【0020】
配列番号23は、大腸菌(Escherichia coli)株K−12 MG1655由来のpflB遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0021】
配列番号24は、大腸菌(Escherichia coli)株K−12 MG1655由来のldhA遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0022】
配列番号25は、大腸菌(Escherichia coli)株K−12 MG1655由来のadhE遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0023】
配列番号26は、大腸菌(Escherichia coli)株K−12 MG1655由来のfrdA遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0024】
配列番号27は、大腸菌(Escherichia coli)株K−12 MG1655由来のfrdB遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0025】
配列番号28は、大腸菌(Escherichia coli)株K−12 MG1655由来のfrdC遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0026】
配列番号29は、大腸菌(Escherichia coli)株K−12 MG1655由来のfrdD遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0027】
配列番号30は、pLH475−Z4B8のヌクレオチド配列である。
【0028】
配列番号31は、CUP1プロモーターのヌクレオチド配列である。
【0029】
配列番号34は、CYC1ターミネーターのヌクレオチド配列である。
【0030】
配列番号35は、ILV5プロモーターのヌクレオチド配列である。
【0031】
配列番号38は、ILV5ターミネーターのヌクレオチド配列である。
【0032】
配列番号39は、FBA1プロモーターのヌクレオチド配列である。
【0033】
配列番号42は、pLH468のヌクレオチド配列である。
【0034】
配列番号47は、pNY8のヌクレオチド配列である。
【0035】
配列番号48は、GPD1プロモーターのヌクレオチド配列である。
【0036】
配列番号49、50、54、55、62〜71、73〜83および85〜86は、実施例において使用されるプライマーのヌクレオチド配列である。
【0037】
配列番号51は、pRS425::GPM−sadBのヌクレオチド配列である。
【0038】
配列番号52は、GPM1プロモーターのヌクレオチド配列である。
【0039】
配列番号53は、ADH1ターミネーターのヌクレオチド配列である。
【0040】
配列番号56は、pRS423 FBA ilvD(Strep)のヌクレオチド配列である。
【0041】
配列番号57は、FBAターミネーターのヌクレオチド配列である。
【0042】
配列番号60は、GPM−sadB−ADHtセグメントのヌクレオチド配列である。
【0043】
配列番号61は、pUC19−URA3rのヌクレオチド配列である。
【0044】
配列番号72は、ilvD−FBA1tセグメントのヌクレオチド配列である。
【0045】
配列番号84は、URA3r2鋳型DNAのヌクレオチド配列である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
上で使用される、また本発明の説明を通じて、以下の用語は、他に指示されない限り、次のように定義されるものとする:
用語「ブタノール」は、本明細書で使用される場合、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、またはこれらの混合物を示す。
【0047】
用語「好気的条件」は、本明細書で使用される場合、酸素の存在下での成長条件を意味する。
【0048】
用語「微好気的条件」は、本明細書で使用される場合、低レベルの酸素(すなわち正常な大気中酸素レベル未満)下での成長条件を意味する。
【0049】
用語「嫌気的条件」は、本明細書で使用される場合、酸素の不在下での成長条件を意味する。
【0050】
用語「発酵性炭素源」は、本明細書で使用される場合、本明細書で開示される微生物によって代謝されることが可能な炭素源を示す。好適な発酵性炭素源は、限定はされないが、単糖、例えばグルコースまたはフルクトース;二糖、例えば乳糖またはスクロース;オリゴ糖;多糖、例えばデンプンまたはセルロース;1つの炭素基質;およびそれらの混合物を含む。
【0051】
用語「抽出剤」は、本明細書で使用される場合、任意のブタノール異性体の抽出に使用される有機溶媒を示す。
【0052】
用語「二相発酵培地」は、本明細書で使用される場合、発酵培地(すなわち水相)および適量の水不混和性有機抽出剤を含む二相成長培地を示す。
【0053】
用語「ブタノール生合成経路」は、本明細書で使用される場合、1−ブタノール、2−ブタノール、またはイソブタノールを生成するための酵素経路を示す。
【0054】
用語「1−ブタノール生合成経路」は、本明細書で使用される場合、アセチル補酵素A(アセチル−CoA)から1−ブタノールを生成するための酵素経路を示す。
【0055】
用語「2−ブタノール生合成経路」は、本明細書で使用される場合、ピルビン酸塩から2−ブタノールを生成するための酵素経路を示す。
【0056】
用語「イソブタノール生合成経路」は、本明細書で使用される場合、ピルビン酸塩からイソブタノールを生成するための酵素経路を示す。
【0057】
用語「脂肪酸」は、本明細書で使用される場合、飽和または不飽和のいずれかである長い脂肪族鎖(すなわちC11〜C22)を有するカルボキシル酸を示す。
【0058】
用語「脂肪族アルコール」は、本明細書で使用される場合、飽和または不飽和のいずれかである長い脂肪族鎖(すなわちC11〜C22)を有するアルコール酸を示す。
【0059】
用語「脂肪族アルデヒド」は、本明細書で使用される場合、飽和または不飽和のいずれかである長い脂肪族鎖(すなわちC11〜C22)を有するアルデヒドを示す。
【0060】
用語「有効力価」は、本明細書で使用される場合、発酵培地の1リットルあたりの発酵によって生成されるブタノールの総量を示す。ブタノールの総量は、発酵培地中のブタノールの量と、ガスストリッピングが用いられる場合での有機抽出剤および気相から回収されるブタノールの量を含む。
【0061】
用語「最少培地」は、本明細書で使用される場合、一般にアミノ酸が存在しない場合での、成長のために考えられる最少の栄養素を含有する成長培地を示す。最少培地は、典型的には、発酵性炭素源およびさまざまな塩(微生物および成長条件の間で変わりうる)を含有し、ここでこれらの塩は、一般に、微生物におけるタンパク質および核酸の合成を可能にするマグネシウム、窒素、リン、および硫黄などの必須元素を提供する
【0062】
用語「限定培地」は、本明細書で使用される場合、既知の量のすべての成分、例えば、限定された炭素源および窒素源、ならびに微生物によって必要とされる微量元素およびビタミンを含有する成長培地を示す。
【0063】
用語「OD」は、本明細書で使用される場合、光学密度を示す。
【0064】
用語「OD600」は、本明細書で使用される場合、600nmの波長での光学密度を示す。
【0065】
用語「id」は、本明細書で使用される場合、内径を示す。
【0066】
用語「Aq」は、本明細書で使用される場合、水相を示す。
【0067】
用語「Org」は、本明細書で使用される場合、有機相を示す。
【0068】
用語「IPTG」は、本明細書で使用される場合、イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシドを示す。
【0069】
用語「vvm」は、本明細書で使用される場合、容量/容量/分を示す。
【0070】
用語「ATCC」は、本明細書で使用される場合、American Type Culture Collection(Manassas,VA)を示す。
【0071】
用語「vol」は、容量を意味する。
【0072】
用語「rpm」は、回転/分を示す。
【0073】
用語「sec」は、秒を示す。
【0074】
用語「min」は、分を意味する。
【0075】
用語「h」は、時間を意味する。
【0076】
用語「μL」は、マイクロリットルを意味する。
【0077】
用語「mL」は、ミリリットルを意味する。
【0078】
用語「L」は、リットルを意味する。
【0079】
用語「mL/分」は、ミリリットル/分を意味する。
【0080】
用語「mmol」は、ミリモルを示す。
【0081】
用語「mM」は、ミリモル濃度を意味する。
【0082】
用語「M」は、モル濃度を意味する。
【0083】
用語「μm」は、マイクロメートルを意味する。
【0084】
用語「g」は、グラムを意味する。
【0085】
用語「μg」は、マイクログラムを意味する。
【0086】
用語「g/g」は、グラム/グラムを意味する。
【0087】
用語「g/L」は、グラム/リットルを意味する。
【0088】
用語「μg/mL」は、マイクログラム/リットルを意味する。
【0089】
用語「mg/L」は、ミリグラム/リットルを意味する。
【0090】
用語「mmol/分/mg」は、ミリモル/分/ミリグラムを意味する。
【0091】
用語「g/L/h」は、グラム/リットル/時間を意味する。
【0092】
用語「HPLC」は、高圧液体クロマトグラフィーを意味する。
【0093】
用語「GC」は、ガスクロマトグラフィーを意味する。
【0094】
遺伝子組換え微生物
ブタノール生成のための微生物宿主は、細菌、シアノバクテリア、糸状真菌および酵母から選択してもよい。使用される微生物宿主は、収率が宿主に対する生成物の毒性によって制限されないように、生成されるブタノール生成物に対して耐性を示す必要がある。ブタノール生成のための微生物宿主の選択は、下記に詳述される。
【0095】
高い力価レベルのブタノールで代謝的に活性な微生物は、当該技術分野で周知でない。ブタノール耐性突然変異体は発溶媒性クロストリジア(Clostridia)から単離されているが、他の潜在的に有用な細菌株のブタノール耐性に関する情報はほとんど利用できない。細菌におけるアルコール耐性の比較に関する試験の大部分は、ブタノールがエタノールより毒性があることを示唆している(de Cavalhoら、Microsc.Res.Tech.64:215−22頁(2004年)およびKabelitzら、FEMS Microbiol.Lett.220:223−227頁(2003年))。Tomasら(J.Bacteriol.186:2006−2018頁(2004年))は、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)における発酵中での1−ブタノールの収率がブタノール毒性によって制限されうることを報告している。クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)に対する1−ブタノールの主な効果は、膜機能の破壊である(Hermannら、Appl.Environ.Microbiol.50:1238−1243頁(1985年))。
【0096】
ブタノールの生成のために選択される微生物宿主は、ブタノールに耐性を示し、かつ、下記の導入される生合成経路を用いて炭水化物をブタノールに変換できる必要がある。好適な微生物宿主の選択における基準は、次のもの、すなわち、ブタノールに対する固有の耐性、高率の炭水化物利用、遺伝子操作のための遺伝的ツールの利用可能性、および安定な染色体改変をもたらす能力を含む。
【0097】
ブタノールに対する耐性を有する好適な宿主株は、株の固有の耐性に基づくスクリーニングによって同定してもよい。ブタノールに対する微生物の固有の耐性は、最少培地中で成長する場合での成長速度の50%阻害(IC50)に関与するブタノールの濃度を測定することによって測定可能である。IC50値は、当該技術分野で既知の方法を用いて測定可能である。例えば、目的の微生物は、さまざまな量のブタノールの存在下で成長することができ、成長速度は、600ナノメートルでの光学密度を測定することによって監視することが可能である。倍加時間は、成長曲線の対数部分から計算し、成長速度の尺度として使用することが可能である。成長の50%阻害をもたらすブタノールの濃度は、成長のパーセント阻害対ブタノール濃度のグラフから判定することが可能である。好ましくは、宿主株は、約0.5%を超える、ブタノールにおけるIC50を有する必要がある。より好適なのは、ブタノールにおけるIC50、すなわち約1.5%超を有する宿主株である。特に好適なのは、ブタノールにおけるIC50、すなわち約2.5%超を有する宿主株である。
【0098】
ブタノール生成のための微生物宿主はまた、グルコースおよび/または他の炭水化物を高率で利用する必要がある。大部分の微生物は、炭水化物を利用することができる。しかし、特定の環境微生物は、炭水化物を効率的に利用できず、それ故、好適な宿主とならない。
【0099】
宿主を遺伝的に修飾する能力は、任意の組換え微生物の生成にとって必須である。使用可能な遺伝子導入技術の様式は、エレクトロポレーション、複合、形質導入または天然形質転換によるものを含む。広範囲宿主の複合プラスミドおよび薬剤耐性マーカーが使用可能である。生物とともに使用されるクローニングベクターは、宿主生物に対して、その宿主内で機能可能な抗生物質耐性マーカーの性質に基づいて適合される。
【0100】
微生物宿主はまた、さまざまな遺伝子を不活性化することによって炭素流における競合経路を不活性化するため、操作してもよい。これは、不活性化を誘導するためのトランスポゾンまたは染色体組込みベクターのいずれかの可用性を必要とする。さらに、化学的突然変異誘発の影響を受けやすい生成宿主は、化学的突然変異誘発および突然変異体スクリーニングを通じて、固有のブタノール耐性における改善を受けうる。
【0101】
上記の基準に基づき、ブタノールの生成に適した微生物宿主は、限定はされないが、ザイモモナス(Zymomonas)属、エシェリキア(Escherichia)属、サルモネラ(Salmonella)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、乳酸桿菌(Lactobacillus)属、腸球菌(Enterococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、クレブシエラ(Klebsiella)属、パエニバチルス(Paenibacillus)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属およびサッカロミセス(Saccharomyces)属のメンバーを含む。好ましい宿主は、大腸菌(Escherichia coli)、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(Enteroccocus gallinarum)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、枯草菌(Bacillus subtilis)およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含む。
【0102】
上記の微生物は、当該技術分野で既知の方法を用いて、遺伝子組換えを行い、発酵性炭素源をブタノール、具体的には1−ブタノール、2−ブタノール、またはイソブタノールに変換してもよい。特に好適な微生物は、エシェリキア(Escherichia)、乳酸桿菌(Lactobacillus)、およびサッカロミセス(Saccharomyces)を含み、ここでは大腸菌(E.coli)、L.プランタラム(L.plantarum)およびS.セレビシアエ(S.cerevisiae)が特に好ましい。さらに、微生物は、Bramucciら(同時係属中の共同所有される米国特許出願第11/761497号明細書;および国際公開第2007/146377号パンフレット)によって記載の方法を用いて単離される上掲の微生物のうちの1つのブタノール耐性株であってもよい。1つのかかる株の例が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)株PN0512(ATCC:PTA−7727、米国特許出願第11/761497号明細書において2006年7月12日に行われた生物学的寄託物)である。
【0103】
これらの微生物は、Donaldsonらによる国際公開第2007/041269号パンフレット(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、1−ブタノール生合成経路を含むように、遺伝子組換えを行い、1−ブタノールを生成してもよい。例えば、微生物は、遺伝子組換えを行い、生成物変換に対して次の酵素によって触媒される基質
a)アセチル−CoAからアセトアセチル−CoA、
b)アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoA、
c)3−ヒドロキシブチリル−CoAからクロトニル−CoA、
d)クロトニル−CoAからブチリル−CoA、
e)ブチリル−CoAからブチルアルデヒド、および
f)ブチルアルデヒドから1−ブタノール
を含む1−ブタノール生合成経路を発現してもよい。
【0104】
微生物はまた、Donaldsonらによる米国特許公開第2007/0259410号明細書および米国特許公開第2007/0292927号明細書、国際公開第2007/130518号パンフレットおよび国際公開第2007/130521号パンフレット(これらのすべては参照により本明細書中に援用される)に記載のように、遺伝子組換えを行い、2−ブタノール生合成経路を発現し、2−ブタノールを生成してもよい。例えば、一実施形態では、微生物は、遺伝子組換えを行い、生成物変換に対して次の酵素によって触媒される基質
a)ピルビン酸塩からα−アセト乳酸、
b)α−アセト乳酸からアセトイン、
c)アセトインから2,3−ブタンジオール、
d)2,3−ブタンジオールから2−ブタノン、および
e)2−ブタノンから2−ブタノール
を含む2−ブタノール生合成経路を発現してもよい。
【0105】
微生物はまた、Donaldsonらによる米国特許公開第2007/0092957号明細書および国際公開第2007/050671号パンフレット(双方とも参照により本明細書中に援用される)に記載のように、遺伝子組換えを行い、イソブタノール生合成経路を発現し、イソブタノールを生成してもよい。例えば、微生物は、遺伝子組換えを行い、生成物変換に対して次の酵素によって触媒される基質
a)ピルビン酸塩からアセト乳酸塩
b)アセト乳酸塩から2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸
c)2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸からα−ケトイソ吉草酸
d)α−ケトイソ吉草酸からイソブチルアルデヒド、および
e)イソブチルアルデヒドからイソブタノール.
を含むイソブタノール生合成経路を含むことが可能である。
【0106】
発酵性炭素源をブタノールに変換することが可能にする遺伝子組換えがなされた微生物は、上記のようなイソブタノール生合成経路と、イソブタノール生成を制限する競合経路を除外するための次の遺伝子、すなわち(ピルビン酸・ギ酸リアーゼをコードする)配列番号23として与えられるpflB、(乳酸デヒドロゲナーゼをコードする)配列番号24として与えられるldhA、(アルコールデヒドロゲナーゼをコードする)配列番号25として与えられるadhE、および(フマル酸レダクターゼをコードする)frdABCDオペロンを含む少なくとも1つの遺伝子、具体的には配列番号26として与えられるfrdA、配列番号27として与えられるfrdB、配列番号28として与えられるfrdC、および配列番号29として与えられるfrdD、の欠失を含む組換え大腸菌(Escherichia coli)株でありうる。
【0107】
大腸菌(Escherichia coli)株は、(a)次の遺伝子、すなわち、(配列番号2として与えられる)アセト乳酸シンターゼをコードするクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)由来の(配列番号1として与えられる)budB、(配列番号4として与えられる)アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼをコードする大腸菌(E.coli)由来の(配列番号3として与えられる)ilvC、(配列番号6として与えられる)アセトヒドロキシ酸デヒドラターゼをコードする大腸菌(E.coli)由来の(配列番号5として与えられる)ilvD、(配列番号8として与えられる)分岐鎖ケト酸デカルボキシラーゼをコードするラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)由来の(配列番号7として与えられる)kivD、および(配列番号10として与えられる)ブタノールデヒドロゲナーゼをコードするアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)由来の(配列番号9として与えられる)sadBによってコードされるイソブタノール生合成経路と、(b)次の遺伝子、すなわちpflB(配列番号23)、ldhA(配列番号24)、adhE(配列番号25)、およびfrdB(配列番号27)の欠失を含みうる。イソブタノール生合成経路の遺伝子によってコードされる酵素は、上記のようにピルビン酸塩をイソブタノールに変換するための生成物変換に対して基質を触媒する。詳細には、アセト乳酸シンターゼは、ピルビン酸塩のアセト乳酸塩への変換を触媒し、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼは、アセト乳酸塩の2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸への変換を触媒し、アセトヒドロキシ酸デヒドラターゼは、2,3−ジヒドロキシイソ吉草酸のα−ケトイソ吉草酸への変換を触媒し、分岐鎖ケト酸デカルボキシラーゼは、α−ケトイソ吉草酸のイソブチルアルデヒドへの変換を触媒し、かつブタノールデヒドロゲナーゼは、イソブチルアルデヒドのイソブタノールへの変換を触媒する。この組換え大腸菌(Escherichia coli)株は、下記の本明細書中の実施例の一般的方法の項に例示されるように、当該技術分野で既知の方法を用いて作製してもよい。
【0108】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株は、次の遺伝子、すなわち、アセト乳酸シンターゼ(配列番号33)をコードする枯草菌(Bacillus subtilis)由来のalsSコード領域(配列番号32)、アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ(KARI;配列番号41)をコードするS.セレビシアエ(S.cerevisiae)由来のILV5(配列番号40)、および/または例えばPf5.IlvC−Z4B8によってコードされる突然変異体KARI(配列番号36;タンパク質配列番号37)、アセトヒドロキシ酸デヒドラターゼ(配列番号59)をコードするストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)由来のilvD(配列番号58)、分岐鎖ケト酸デカルボキシラーゼ(配列番号44)をコードする枯草菌(Bacillus subtilis)由来のkivD(配列番号43)、ならびにブタノールデヒドロゲナーゼ(配列番号10)をコードするアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)由来のsadB(配列番号9)によってコードされるイソブタノール生合成経路を含みうる。イソブタノール生合成経路の遺伝子によってコードされる酵素は、本明細書中に記載のように、ピルビン酸塩をイソブタノールに変換するための生成物変換に対して基質を触媒する。
【0109】
イソブタノール経路を発現する好ましい酵母株は、共同所有された同時係属中の米国特許出願第61/058970号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、サイトゾルにおけるアセト乳酸シンターゼ(ALS)活性を有し、かつ内因性ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)遺伝子の欠失を有する。サイトゾルのALSおよび還元型PDCの発現のこの組み合わせにより、ピルビン酸塩からアセト乳酸塩へのフラックス(次いでイソブタノールを生成するための経路に流れる)が顕著に増大することが見出された。
【0110】
この組換えサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株は、下記の本明細書中の実施例の一般的方法の項に例示されるように、当該技術分野で既知の方法を用いて作製してもよい。
【0111】
有機抽出剤
本明細書中に記載の方法において有用な抽出剤は、水不混和性有機溶媒である。好適な有機抽出剤は、ブタノールの生成または回収のための商業的な二相抽出発酵にとって理想的な溶媒における基準を満たす必要がある。詳細には、抽出剤は、(i)例えば、遺伝子組換え大腸菌(Escherichia coli)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などのブタノール生成微生物に対して無害であり、(ii)発酵培地と実質的に不混和性であり、(iii)ブタノールの抽出において高い分配係数を有し、(iv)栄養素の抽出において低い分配係数を有し、(v)発酵培地とエマルジョンを形成する傾向が低く、かつ(vi)低コストで無害である必要がある。本明細書で開示される方法での使用に適した有機抽出剤は、C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本明細書で使用される用語「それらの混合物」は、これらの基員の内部の混合物およびそれらの間の混合物の双方、例えばC12〜C22脂肪族アルコールの内部の混合物とともに、例えばC12〜C22脂肪族アルコールとC12〜C22脂肪酸の間の混合物を包含する。
【0112】
いくつかの例では、12炭素鎖長未満を有する抽出剤は、微生物に対して有害であり、それ故、生合成経路を介するブタノールを生成するプロセスに有害でありうる。11炭素の抽出剤の場合、微生物に対する効果は、条件に依存しうるが、有害でありうる。C11脂肪族アルコール、C11脂肪酸、C12脂肪酸のエステル、C11アルデヒド、およびそれらの混合物がプロセスに対して有害でありうる場合、例えば微生物が使用される条件下でC11化合物によって悪影響を受ける場合、かかる使用は回避されるべきである。好適な有機抽出剤は、さらに、オレイルアルコール(CAS番号143−28−2)、ベヘニルアルコール(CAS番号661−19−8)、セチルアルコール(CAS番号36653−82−4)、ラウリルアルコール(1−ドデカノールとも称される)(CAS番号112−53−8)、ミリスチルアルコール(112−72−1)、ステアリルアルコール(CAS番号112−92−5)、1−ウンデカノール(CAS番号112−42−5)、オレイン酸(CAS番号112−80−1)、ラウリン酸(CAS番号143−07−7)、ミリスチン酸(CAS番号544−63−8)、ステアリン酸(CAS番号57−11−4)、ミリスチン酸メチル(CAS番号124−10−7)、オレイン酸メチル(CAS番号112−62−9)、ウンデカナール(CAS番号112−44−7)、ラウリンアルデヒド(CAS番号112−54−9)、2−メチルウンデカナール(CAS番号110−41−8)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。これらの有機抽出剤は、さまざまなグレードで、さまざまな供給元、例えばSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から市販されており、その多くは、ブタノールを生成または回収するための抽出発酵における使用に適しうる。テクニカルグレードは、所望される成分ならびに高級および低級脂肪族成分を含む化合物の混合物を含有する。例えば、1つの市販のテクニカルグレードオレイルアルコールは、約65%のオレイルアルコールと、高級および低級脂肪族アルコールの混合物とを含有する。
【0113】
当業者は、有機抽出剤の混合物を使用することが有利でありうることを理解できる。例えば、溶媒混合物を使用し、生成物の分配係数を増加させることが可能である。さらに、溶媒混合物を使用し、溶媒の物理特性、例えば密度、沸点、および粘度を調節し、最適化することが可能である。
【0114】
二相抽出発酵を用いてブタノールを生成するための方法
微生物は、ブタノールを生成する、好適な発酵槽内の好適な発酵培地中で培養してもよい。撹拌槽発酵槽、エアリフト発酵槽、気泡(bubble)発酵槽、またはこれらの任意の組み合わせを含む任意の好適な発酵槽を使用してもよい。微生物培養物の維持および成長のための材料および方法は、微生物学または発酵科学の当業者に周知である(例えば、Baileyら、Biochemical Engineering Fundamentals、第2版、McGraw Hill,New York,、1986年を参照)。好適な発酵培地、pH、温度、および好気的、微好気的、または嫌気的条件に対する要件に対しては、微生物、発酵、およびプロセスの特定の要件に応じて熟慮しなければならない。使用される発酵培地は重要ではないが、それは、使用される微生物の成長を支持し、所望されるブタノール生成物の生成に必要な生合成経路を促進する必要がある。限定はされないが、酵母抽出物またはペプトンなどの有機窒素源および少なくとも1つの発酵性炭素源を含有する複合培地;最少培地;ならびに限定培地を含む従来の発酵培地を使用してもよい。好適な発酵性炭素源は、限定はされないが、単糖、例えばグルコースまたはフルクトース;二糖、例えば乳糖またはスクロース;オリゴ糖;多糖、例えばデンプンまたはセルロース;1つの炭素基質;およびそれらの混合物を含む。好適な炭素源に加え、発酵培地は、当業者に既知の好適な窒素源、例えばアンモニウム塩、酵母抽出物またはペプトン、ミネラル、塩、共同因子、緩衝液および他の成分を含有してもよい(Baileyら、上記)。抽出発酵に適した条件は、使用される特定の微生物に依存し、通常の実験を用いて、当業者によって容易に測定することが可能である。
【0115】
二相抽出発酵を用いてブタノールを回収するための方法
ブタノールは、ブタノールを少なくとも1つの炭素源から生合成経路を介して生成するため、ブタノール、水、少なくとも1つの発酵性炭素源、および遺伝子組換え(すなわち遺伝子操作)がなされている微生物を含有する発酵培地から回収することが可能である。かかる遺伝子組換え微生物は、大腸菌(Escherichia coli)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)からなる群から選択してもよい。同プロセスにおける第1のステップは、発酵培地を上記の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成することである。「接触させる」は発酵培地を意味し、有機抽出剤は、発酵プロセスの間、常に物理的接触状態にされる。一実施形態では、発酵培地はエタノールをさらに含有し、かつブタノール含有有機相はエタノールを含有してもよい。
【0116】
有機抽出剤は、発酵の開始時に発酵培地と接触させ、二相発酵培地を形成してもよい。あるいは、有機抽出剤は、微生物が所望される量の成長を達成してから(培養物の光学密度を測定することによって判定可能である)、発酵培地と接触させてもよい。
【0117】
さらに、有機抽出剤は、発酵培地中のブタノールレベルが予め選択されたレベルに達する時点、例えばブタノール濃度が毒性レベルに達する前に発酵培地と接触させてもよい。ブタノール濃度は、当該技術分野で既知の方法、例えばガスクロマトグラフィーまたは高性能液体クロマトグラフィーを用いて発酵中に監視してもよい。
【0118】
発酵は、光学密度測定によって判定されるように、培養物における予め選択されたレベルの成長を得るための十分な時間、好気的条件下で行ってもよい。次いで、誘導物質を添加し、修飾微生物におけるブタノール生合成経路の発現を誘発してもよく、下記の本明細書中の実施例6において詳述されるように、発酵条件は微好気的または嫌気的条件に変更され、ブタノール生成が刺激される。抽出剤は、微好気的または嫌気的条件への変更後に加えられる。
【0119】
発酵培地を有機抽出剤と接触後、ブタノール生成物は有機抽出剤に分配され、微生物を含有する水相中の濃度が減少し、それによって生成微生物の阻害性のブタノール生成物への暴露が制限される。使用されるべき有機抽出剤の容量は、下記のように、発酵培地の容量、発酵槽のサイズ、ブタノール生成物に対する抽出剤の分配係数、および選択される発酵方法を含む要素の数に依存する。有機抽出剤の容量は、発酵槽の作動容量の約3%〜約60%である。
【0120】
次のステップは、限定はされないが、サイフォニング、デカンテーション、遠心分離、重力沈降槽の使用、膜支援(membrane−assisted)相分離などを含む当該技術分野で既知の方法を用いて、ブタノール含有有機相を水相から分離することである。ブタノール含有有機相からのブタノールの回収は、限定はされないが、蒸留、樹脂による吸着、分子ふるいによる分離、パーベーパレイションなどを含む当該技術分野で既知の方法を用いて行ってもよい。具体的には、蒸留を用いて、ブタノール含有有機相からブタノールを回収してもよい。
【0121】
ガスストリッピングを有機抽出剤と併用し、ブタノール生成物を発酵培地から取り出してもよい。大気、窒素、または二酸化炭素などの気体を発酵培地に対して通過させることによってガスストリッピングを行い、それによってブタノール含有気相を形成してもよい。ブタノール生成物は、当該技術分野で既知の方法を用いて、例えばブタノールを濃縮するための冷水トラップ(chilled water trap)を用いて、または気相を溶媒で洗い落とす(scrubbing)ことにより、ブタノール含有気相から回収してもよい。
【0122】
発酵の実行終了後、発酵培地中に残留する任意のブタノールは、新しいまたは再生された有機抽出剤を使用する連続抽出によって回収してもよい。あるいは、ブタノールは、当該技術分野で既知の方法、例えば蒸留、共沸蒸留、液体−液体抽出、吸着、ガスストリッピング、膜蒸発、パーベーパレイションなどを用いて、発酵培地から回収してもよい。
【0123】
二相抽出発酵法は、撹拌槽発酵装置において連続モードで実施してもよい。このモードでは、発酵培地とブタノール含有有機抽出剤の混合物は、発酵槽から取り出される。2つの相は、上記のように、限定はされないが、サイフォニング、デカンテーション、遠心分離、重力沈降槽の使用、膜支援相分離などを含む当該技術分野で既知の手段によって分離される。分離後、発酵培地は、発酵槽へと再利用するかまたは新しい培地と交換してもよい。次いで、抽出剤は、上記のように、処理し、ブタノール生成物が回収される。次いで、抽出剤は、生成物のさらなる抽出のため、発酵槽に戻して再利用してもよい。あるいは、新しい抽出剤を発酵槽に連続添加し、取り出された抽出剤と交換してもよい。運転のこの連続モードは、いくつかの利点を提供する。生成物は反応器から連続的に取り出されることから、より小容量の有機抽出剤が必要とされ、それによってより大容量の発酵培地の使用が可能になる。この結果、より高い生成収率が得られる。有機抽出剤の容量は、発酵槽の作動容量の約3%〜約50%、発酵槽の作動容量の3%〜約20%、または発酵槽の作動容量の3%〜約10%であってもよい。発酵槽内で、可能な限り最も小容量の抽出剤を使用し、水相の容量、ひいては発酵槽内の細胞の量を最大にすることは有益である。本プロセスは、抽出剤が発酵槽と分離装置の間で連続的に再利用され、かつ発酵培地が発酵槽から連続的に取り出され、新しい培地で補充されるような完全連続モードで運転することが可能である。この完全連続モードでは、ブタノール生成物は重大な毒性濃度に達することが許容されず、発酵が長期間実施できるように新しい栄養素が連続的に提供される。これらのモードの二相抽出発酵の実施に使用可能な本装置は、当該技術分野で周知である。例が、例えば米国特許第4,865,973号明細書中、Kollerupらによって記載されている。
【0124】
バッチ式発酵モードもまた使用してもよい。当該技術分野で周知であるバッチ発酵は、発酵培地の組成物が発酵開始時に設定され、かつプロセスの間、人為的改変を受けない閉鎖系である。このモードでは、大量の有機抽出剤が発酵槽に加えられ、かつ抽出剤はプロセスの間に取り出されない。このモードは上記の連続または完全連続モードより簡素であるが、発酵培地中の阻害性ブタノール生成物の濃度を最小限にするには、より大量の有機抽出剤が必要とされる。結果として、発酵培地の容量はより少なく、かつ生成される生成物の容量は、連続モードを使用して得られるものより少ない。バッチ式モードにおける有機溶媒の容量は、発酵槽の作動容量の20%〜約60%、または発酵槽の作動容量の30%〜約60%であってもよい。上記の理由から、発酵槽内で、可能な限り最も小容量の抽出剤を使用することは有益である。
【0125】
フェドバッチ発酵モードもまた使用してもよい。フェドバッチ発酵は、標準バッチ系の変形であり、ここでは栄養素、例えばグルコースが発酵中に徐々に加えられる。栄養素の添加の量および速度は、通常の実験によって判定することが可能である。例えば、発酵培地中の重要栄養素の濃度は、発酵中に監視することが可能である。あるいは、pH、溶解酸素、および排ガス、例えば二酸化炭素の分圧などのより容易に測定される要素は監視可能である。これらの測定されるパラメータから、栄養素添加の速度が判定可能である。このモードで使用される有機溶媒の量は、上記のバッチ式モードで使用されるものと同じである。
【0126】
生成物の抽出は、原位置ではなく発酵槽の下流で行ってもよい。この外部モードでは、ブタノール生成物の有機抽出剤への抽出は、発酵槽から取り出される発酵培地上で実施される。使用される有機溶媒の量は、発酵槽の作動容量の約20%〜約60%、または発酵槽の作動容量の30%〜約60%である。発酵培地は、発酵槽から連続的または定期的に取り出してもよく、また有機抽出剤によるブタノール生成物の抽出は、発酵培地からの細胞の除去にかかわらず行ってもよい。細胞は、限定はされないが、濾過または遠心分離を含む当該技術分野で既知の手段により、発酵培地から除去してもよい。上記の手段による抽出剤からの発酵培地の分離後、発酵培地は、発酵槽へと再利用し、廃棄し、または任意の残留ブタノール生成物を取り出すために処理してもよい。同様に、単離細胞はまた、発酵槽へと再利用してもよい。抽出剤は、ブタノール生成物を回収するために処理した後、抽出プロセスにおける使用のため、再利用してもよい。あるいは、新しい抽出剤を使用してもよい。このモードでは、溶媒は発酵槽内に存在しないことから、溶媒の毒性はほとんど問題にならない。細胞が溶媒との接触前に発酵培地から分離される場合、溶媒毒性の問題はさらに低減される。さらに、この外部モードを用いると、エマルジョンを形成する可能性は低下し、かつ溶媒の蒸発は最低限となり、環境影響は緩和される。
【0127】
少なくとも1つの発酵性炭素源をブタノールに変換可能な、遺伝子組換えがなされている微生物が二相発酵培地中で成長するような、ブタノールを生成するための方法が提供される。二相発酵培地は、上記のように水相および水不混和性有機抽出剤を含み、ここで二相発酵培地は有機抽出剤の容量の約3%〜約60%を含む。微生物は、ブタノールを抽出剤に抽出するのに十分な時間、二相発酵培地中で成長し、ブタノール含有有機相を形成することが可能である。発酵培地がエタノールをさらに含有する場合、ブタノール含有有機相はエタノールを含有しうる。次いで、ブタノール含有有機相は、上記のように水相から分離される。その後、ブタノールは、上記のようにブタノール含有有機相から回収される。
【0128】
イソブタノールは、組換え大腸菌(Escherichia coli)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株を有機抽出剤としてのオレイルアルコールと併用した抽出発酵によって生成してもよい。本明細書中に記載の方法を使用することは、イソブタノールにおいて有効性が高い力価を提供する。Atsumiら(Nature 451(3):86−90頁、2008年)は、イソブタノール生合成経路を有するように遺伝子組換えがなされた大腸菌(Escherichia coli)での発酵の利用における、イソブタノールの最大で22g/Lの力価について報告している。本明細書で開示される方法によって生成されるブタノールは、発酵培地の22g/Lを超える有効力価を有する。あるいは、開示される方法によって生成されるブタノールは、発酵培地の少なくとも25g/Lの有効力価を有する。あるいは、本明細書中に記載の方法によって生成されるブタノールは、発酵培地の少なくとも30g/Lの有効力価を有する。あるいは、本明細書中に記載の方法によって生成されるブタノールは、発酵培地の少なくとも37g/Lの有効力価を有する。
【0129】
理論に拘束されることなく、本明細書で開示される抽出発酵法によって得られるブタノール力価が高まることで、部分的には発酵培地からの毒性ブタノール生成物の除去から、同レベルが微生物に対して有害なレベルより低く保持されることになると考えられる。
【0130】
有機抽出剤としてのオレイルアルコールの使用は、本発明を提示する際、意外にも十分に理解されていないさらなる有益な効果を有する。詳細には、抽出剤としてのオレイルアルコールとガスストリッピングとの併用は、たとえガスストリッピング単独がブタノールを毒性レベル未満に保持する場合に有効であっても、ガスストリッピング単独より有意に高い力価を提供する。オレイルアルコールを含むかまたは本質的にそれからなる有機抽出剤は、本明細書中に記載のプロセスにおいて改善された力価を提供しうる。
【0131】
ここで図3を参照すると、原位置抽出発酵を用いてブタノールを生成し、回収するためのプロセスの一実施形態の略図が示される。少なくとも1つの発酵性炭素源の水性流10は、少なくとも1つの発酵性炭素源をブタノールに変換するように遺伝子組換えがなされた少なくとも1つの微生物(図示せず)を含有する発酵槽20に導入される。第1の水不混和性抽出剤の流れ12および任意の第2の水不混和性抽出剤の流れ14は、容器16に導入され、ここでは抽出剤は結合され、抽出剤18が形成される。抽出剤の流れ18は発酵槽20に導入され、それにより、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成する上での発酵培地と抽出剤との間の接触が生じる。水相および有機相の双方を含む流れ26は容器38に導入され、ここで水相と有機相の分離がなされ、ブタノール含有有機相40および水相42が生成される。
【0132】
ここで図4を参照すると、原位置抽出発酵を用いてブタノールを生成し、回収するためのプロセスの一実施形態の略図が示される。少なくとも1つの発酵性炭素源の水性流10は、少なくとも1つの発酵性炭素源をブタノールに変換するように遺伝子組換えがなされた少なくとも1つの微生物(図示せず)を含有する発酵槽20に導入される。第1の水不混和性抽出剤の流れ12および任意の第2の水不混和性抽出剤の流れ14は、発酵槽20に別々に導入され、それにより、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成する上での発酵培地と抽出剤との間の接触が生じる。水相および有機相の双方を含む流れ26は容器38に導入され、ここでは水相と有機相の分離がなされ、ブタノール含有有機相40および水相42が生成される。
【0133】
ここで図5を参照すると、原位置抽出発酵を用いてブタノールを生成し、回収するためのプロセスの一実施形態の略図が示される。少なくとも1つの発酵性炭素源の水性流10は、少なくとも1つの発酵性炭素源をブタノールに変換するように遺伝子組換えがなされた少なくとも1つの微生物(図示せず)を含有する第1の発酵槽20に導入される。第1の水不混和性抽出剤の流れ12は、発酵槽20に導入され、かつ第1の溶媒と発酵槽20の内容物との混合物を含む流れ22は、第2の発酵槽24に導入される。任意の第2の水不混和性抽出剤の流れ14は、第2の発酵槽24に導入され、それにより、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成する上での発酵培地と抽出剤との間の接触が生じる。水相および有機相の双方を含む流れ26は、容器38に導入され、ここでは水相と有機相の分離がなされ、ブタノール含有有機相40および水相42が生成される。
【0134】
ここで図6を参照すると、生成物の抽出が原位置ではなく発酵槽の下流で行われる、ブタノールを生成し、回収するためのプロセスの一実施形態の略図が示される。少なくとも1つの発酵性炭素源の水性流110は、少なくとも1つの発酵性炭素源をブタノールに変換するように遺伝子組換えがなされた少なくとも1つの微生物(図示せず)を含有する発酵槽120に導入される。第1の水不混和性抽出剤の流れ112および任意の第2の水不混和性抽出剤の流れ114は、容器116に導入され、ここでは水不混和性抽出剤は結合し、抽出剤118が形成される。発酵槽120内の発酵培地の流れ122として示される少なくとも一部は、容器124に導入される。抽出剤の流れ118はまた、容器124に導入され、それにより、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成する上での発酵培地と抽出剤との間の接触が生じる。水相および有機相の双方を含む流れ126は、容器138に導入され、ここでは水相と有機相の分離がなされ、ブタノール含有有機相140および水相142が生成される。
【0135】
ここで図7を参照すると、生成物の抽出が原位置ではなく発酵槽の下流で行われる、ブタノールを生成し、回収するためのプロセスの一実施形態の略図が示される。少なくとも1つの発酵性炭素源の水性流110は、少なくとも1つの発酵性炭素源をブタノールに変換するように遺伝子組換えがなされた少なくとも1つの微生物(図示せず)を含有する発酵槽120に導入される。第1の水不混和性抽出剤の流れ112および任意の第2の水不混和性抽出剤の流れ114は、容器124に別々に導入され、ここでは水不混和性抽出剤は結合し、抽出剤118が形成される。発酵槽120内の発酵培地の流れ122として示される少なくとも一部はまた、容器124に導入され、それにより、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成する上での発酵培地と抽出剤との間の接触が生じる。水相および有機相の双方を含む流れ126は、容器138に導入され、ここでは水相と有機相の分離がなされ、ブタノール含有有機相140および水相142が生成される。
【0136】
ここで図8を参照すると、生成物の抽出が原位置ではなく発酵槽の下流で行われる、ブタノールを生成し、回収するためのプロセスの一実施形態の略図が示される。少なくとも1つの発酵性炭素源の水性流110は、少なくとも1つの発酵性炭素源をブタノールに変換するように遺伝子組換えがなされた少なくとも1つの微生物(図示せず)を含有する発酵槽120に導入される。第1の水不混和性抽出剤の流れ112は、容器128に導入され、かつ発酵槽120内の発酵培地の流れ122として示される少なくとも一部はまた、容器128に導入される。第1の水不混和性抽出剤と発酵槽120の内容物との混合物を含む流れ130は、第2の容器132に導入される。任意の第2の水不混和性抽出剤の流れ114は、第2の容器132に導入され、それにより、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成する上での発酵培地と抽出剤との間の接触が生じる。水相および有機相の双方を含む流れ134は、容器138に導入され、ここでは水相と有機相の分離がなされ、ブタノール含有有機相140および水相142が生成される。
【0137】
本明細書中に記載の抽出プロセスは、バッチプロセスとして作動するか、または連続モードで作動することが可能であり、この場合、新しい抽出剤が加えられ、使用済み抽出剤が、発酵槽内の抽出剤の量が全発酵プロセスの間で一定に保持されるように吐出される。発酵からの生成物および副生成物のかかる連続抽出は、有効な速度、力価および収率を高めうる。
【0138】
さらに別の実施形態では、一連のバッチ発酵槽が使用される場合、バッチ動作特性における差異を決定づけるフレキシブルな並流またはその代わりとしての向流の方法で、液体−液体抽出を操作することも可能である。このシナリオでは、発酵槽は発酵性マッシュで充填され、それにより、少なくとも1つの発酵性炭素源および微生物が、プラントが稼働している間、連続的な方法で次々と提供される。図9を参照すると、一旦、発酵槽F100がマッシュおよび微生物で充填されると、マッシュおよび微生物の供給物は、連続ループで、発酵槽F101、次いで発酵槽F102に進み、次いで発酵槽F100に戻される。任意の1つの発酵槽内での発酵は、一旦マッシュおよび微生物が共に存在すると開始され、発酵が完了するまで継続する。マッシュおよび微生物の充填時間は、発酵槽の数で全サイクル時間(充填、発酵、空化および清浄)を除したものに等しい。全サイクル時間が60時間であり、かつ3つの発酵槽がある場合、充填時間は20時間である。全サイクル時間が60時間であり、かつ4つの発酵槽がある場合、充填時間は15時間である。
【0139】
適応並流抽出は、より高い培養液相の力価で作動する発酵槽で、ブタノール濃度が最高の抽出溶媒流を用いることが可能であり、最低の培養液相の力価で作動する発酵槽が、ブタノール濃度が最低の抽出溶媒流の便益を得ることを前提とした発酵特性に従う。例えば、再び図9を参照し、発酵槽F100が発酵の開始時に、比較的低いブタノール培養液相(B)の力価で作動している場合を考慮すると、発酵槽F101は、比較的適度なブタノール培養液相の力価で作動する発酵の中間段階であり、かつ発酵槽F102は、比較的高いブタノール培養液相の力価で作動する発酵の終了間際である。この場合、抽出されるブタノールが最小であるかまたは全くない希薄な抽出溶媒(S)は、発酵槽F100に供給可能であり、次いで抽出されるブタノール成分を有する発酵槽F100からの「溶媒流出(solvent out)」流(S’)は、その「溶媒流入(solvent in)」流として発酵槽F101に供給可能であり、次いでF101からの溶媒流出流は、その溶媒流入流として発酵槽F102に供給可能である。次いで、F102からの溶媒流出流は、送出され、処理され、同流中に存在するブタノールが回収されうる。ブタノールの大部分が除去された処理済みの溶媒流は、希薄な抽出溶媒としてシステムに戻すことが可能であり、その場合、上記の発酵槽F100への供給される溶媒となる。
【0140】
発酵が規則正しく進行すると、抽出溶媒マニホールド内の弁は、最も希薄な抽出溶媒を最低のブタノール培養液相の力価で作動する発酵槽に供給するように再配置してもよい。例えば、(a)発酵槽F102がその発酵を完了させ、再負荷されてから発酵が再開されると仮定すると、(b)発酵槽F100は、適度なブタノール培養液相の力価で作動するその発酵の中間段階であり、かつ(c)発酵槽F101は、比較的より高いブタノール培養液相の力価で作動するその発酵の終了間際である。このシナリオであれは、最も希薄な抽出溶媒は、F102に供給され、F102に残留する抽出溶媒は、発酵槽F100に供給され、また発酵槽F100に残留する抽出溶媒は、発酵槽F101に供給されることになる。
【0141】
この方法を実施する利点は、培養液相のブタノールの力価を、できるだけ長期間、できるだけ低く維持し、生産性における改善を実現することでありうる。さらに、より高いブタノール培養液相の力価で運転中の、発酵段階までさらに進行している他の発酵槽内の温度を低下させることは可能でありうる。温度の低下は、より高いブタノール培養液相の力価に対する改善された耐性を許容しうる。
【0142】
本発明はさらに以下の実施例にて定義される。これらの実施例が本発明の好ましい実施形態を示す一方であくまで例示目的で与えられることは理解されるべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特性により、その趣旨および範囲から逸脱することなく本発明に対してさまざまな変更および改良を行うことで、本発明のさまざまな利用および条件への適合が可能であることが確認できる。
【0143】
すべての溶媒(すなわち抽出剤)は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手し、さらなる精製を伴わずに使用した。使用したオレイルアルコールは、オレイルアルコール(65%)と高級および低級脂肪族アルコールの混合物を含有するテクニカルグレードであった。使用した他の溶媒の純度は、次のとおりであった。オレイン酸、65〜88%;オクタン酸、98%;ノナノール、98%;1−ドデカノール、98%;1−ノナナール、95%、および1−デカノール、98%。イソブタノールは、Sigma−Aldrichから入手し、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0144】
一般的方法
組換え大腸菌(Escherichia coli)株NGCI−031の作成
イソブタノール生合成経路と、次の遺伝子、すなわちpflB(配列番号23、ピルビン酸・ギ酸リアーゼをコード)、ldhA(配列番号24、乳酸デヒドロゲナーゼをコード)、adhE(配列番号25、アルコールデヒドロゲナーゼをコード)、およびfrdB(配列番号27、フマル酸レダクターゼのサブユニットをコード)の欠失を含む組換え大腸菌(Escherichia coli)株を下記のように作成した。イソブタノール生合成経路における遺伝子は、(配列番号1として与えられる)クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)由来のbudB、(配列番号3として与えられる)大腸菌(Escherichia coli)由来のilvC、(配列番号5として与えられる)大腸菌(Escherichia coli)由来のilvD、(配列番号7として与えられる)ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)由来のkivD、および(配列番号9として与えられる)アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)由来のsadBであった。組換え株の作成を、2つのステップで行った。まず、上記遺伝子の欠失を有する大腸菌(Escherichia coli)株を作成した。次いで、イソブタノール生合成経路をコードする遺伝子を株に導入した。
【0145】
pflB、ldhA、adhEおよびfrdB遺伝子の欠失を有する組換え大腸菌(Escherichia coli)株の作成
大腸菌(E.coli)株のKeio collection(Babaら、Mol.Syst.Biol.、2:1−11頁、2006年)を、本明細書中で4ノックアウト(four−knock out)大腸菌(E.coli)株と称される意図された遺伝子欠失を有する大腸菌(E.coli)株の生成に使用した。Keio collectionは、DatsenkoおよびWannerの方法によって大腸菌(E.coli)株BW25113中で生成される単一の遺伝子ノックアウトのライブラリーである(Datsenko K.A.およびWanner B.L.、Proc.Natl.Acad.Sci.、U.S.A.97 6640−6645頁、2000年)。Collection中での各欠失遺伝子を、Flpリコンビナーゼによって除去可能なFRTで隣接されるカナマイシンマーカーと置換した。4ノックアウト大腸菌(E.coli)株を、ノックアウト−カナマイシンマーカーをKeioドナー株からP1形質導入によってレシピエント株に移すことによって作成した。ノックアウトを生成するための各P1形質導入後、カナマイシンマーカーをFlpリコンビナーゼによって除去した。このマーカーレス株は、次のP1形質導入のための新しいドナー株として機能した。
【0146】
4ノックアウト大腸菌(E.coli)株を、JW0886に加えて3つのKeio株から調製したP1ファージ溶解物でのP1vir形質導入により、Keio株JW0886において作成した。使用したKeio株を以下にあげる。
−JW0886:kanマーカーがpflB遺伝子内に挿入される
−JW4114:kanマーカーがfrdB遺伝子内に挿入される
−JW1375:kanマーカーがldhA遺伝子内に挿入される
−JW1228:kanマーカーがadhE遺伝子内に挿入される
【0147】
P1vir形質導入は、いくつかの修飾を伴い、Millerによる記載のように行われた(Miller J.H.、1992年、A Short Course in Bacterial Genetics. Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y)。つまり、形質導入溶解物を調製するため、ドナー株の細胞を、振とうしながら、Luriaブロス(LB)培地中、37℃で一晩成長させた。これらの細胞の一晩成長を、0.005M CaClを含有するLB培地中に継代培養し、通気のない37℃の水槽内に入れた。ファージ添加の1時間前、細胞を、振とうしながら37℃でインキュベートした。細胞の最終成長後、一定分量1.0mLの培養物を14mLのチューブに分注し、約10個のP1virファージを加えた。このチューブを37℃の水槽内で20分間インキュベートした後に、2.5mLの0.8%LB上層寒天を各チューブに加えた。チューブの内容物を、LB寒天プレート上に展開し、37℃でインキュベートした。翌日、軟質寒天層をこすり、遠心管内に入れた。プレートの表面をLB培地で洗浄し、遠心管に加え、次いでCHCl数滴を加え、次にチューブをボルテックスミキサーを使用して激しく撹拌した。4,000rpmで10分間の遠心分離後、P1vir溶解物を含有する上清を回収した。
【0148】
形質導入においては、レシピエント株を、1〜2mLのLB培地中で、振とうしながら。37℃で一晩成長させた。培養物を、10,000rpm、室温で1分間の微量遠心管(Eppendorf)での遠心分離によってペレット状にした。細胞ペレットを、等しい容量のMC緩衝液(0.1M MgSO、0.005M CaCl)中に再懸濁し、0.1mLの一定分量でチューブに分注し、0.1mLおよび0.01mLのP1vir溶解物を加えた。P1vir溶解物を全く含有しない対照チューブも含めた。チューブを37℃で20分間インキュベートした後、0.2mLの0.1Mクエン酸ナトリウムを加えてP1の感染を停止させた。チューブを37℃で1時間インキュベートする前、1mLのLB培地を各チューブに加えた。インキュベーション後、細胞を上記のようにペレット状にし、25μg/mLのカナマイシンを含有するLBプレート上に展開する前に50〜200μLのLB中に再懸濁し、37℃で一晩インキュベートした。形質導入体を、カナマイシンマーカー挿入物の上流および下流の領域に隣接する染色体に特異的なプライマーを使用するコロニーPCRによってスクリーニングした。
【0149】
染色体からのカナマイシンマーカーの除去が、カナマイシン−耐性株をプラスミドpCP20で形質転換し(Cherepanov P.P.およびWackernagel W.、Gene、158:9−14頁、1995年)、次いでLBアンピシリン(100μg/mL)プレート上に展開し、30℃でインキュベートすることによって得られた。pCP20プラスミドは、λPRプロモーターの制御下で酵母FLPリコンビナーゼを有する。このプロモーターからの発現は、プラスミド上に存在するcI857温度感受性リプレッサーによって制御される。pCP20の複製の複製起点もまた、温度感受性である。アンピシリン耐性コロニーを、LB寒天プレート上にストリークし、42℃でインキュベートした。インキュベーション温度が高くなると同時にFLPリコンビナーゼの発現が誘発され、pCP20プラスミドが細胞から回復された。単離したコロニーを、カナマイシン(25μg/mL)を含有するLBプレートと、LBアンピシリン(100μg/mL)プレートおよびLBプレート上のグリッドにパッチした。得られたカナマイシン感受性、アンピシリン感受性コロニーを、コロニーPCRによってスクリーニングし、カナマイシンマーカーの染色体からの除去を確認した。
【0150】
コロニーPCR増幅においては、HotStarTaq Master Mix(Qiagen(Valencia,CA);カタログ番号71805−3)を、製造業者のプロトコルに従って使用した。0.2μMの各染色体に特異的なPCRプライマーを含有する25μLのMaster Mix反応物に、少量のコロニーを加えた。増幅を、DNA Thermocycler GeneAmp 9700(PE Applied Biosystems(Foster City,CA))で行った。典型的なコロニーPCR条件は以下の通り、95℃で15分;95℃で30秒間を30サイクル、50〜58℃の範囲の30秒間のアニーリング温度、約1分/DNAのkbの伸長時間、72℃で伸長されるプライマー;次いで72℃で10分間、次いで4℃で保持であった。PCR産物サイズを、公知の分子量標準との比較により、ゲル電気泳動によって測定した。
【0151】
形質転換においては、大腸菌(E.coli)のエレクトロコンピテント細胞を、Ausubel F.M.ら、(Current Protocols in Molecular Biology、1987年、Wiley−Interscience)で記載のように調製した。細胞を、25〜50mLのLB培地中、30〜37℃で成長させ、10,000rpmで10分間の遠心分離により、0.5〜0.7のOD600で収穫した。これらの細胞を、培養物の元の開始容量に等しい容量の無菌氷冷水で2回洗浄する。最終洗浄後、細胞を、滅菌水中に再懸濁し、形質転換されるべきDNAを加えた。細胞およびDNAを、冷却したキュベットに移し、製造業者の使用説明書に従い、Bio−Rad Gene Pulser IIでエレクトロポレートした(Bio−Rad Laboratories,Inc(Hercules,CA))。
【0152】
JW0886株(ΔpflB::kan)を、プラスミドpCP20で形質転換し、100μg/mLのアンピシリンを含有するLBプレート上に30℃で展開した。次いで、アンピシリン耐性形質転換体を選択し、LBプレート上にストリークし、42℃で成長させた。単離したコロニーを、アンピシリンおよびカナマイシン選択培地プレートならびにLBプレート上にパッチした。カナマイシン感受性およびアンピシリン感受性コロニーを、プライマーpflB CkUp(配列番号11)およびpflB CkDn(配列番号12)を伴うコロニーPCRによってスクリーニングした。PCR反応ミックスの一定分量10μLを、ゲル電気泳動によって分析した。予想された約0.4kbのPCR産物が認められ、それからマーカーの除去が確認され、「JW0886マーカーレス」株が生成された。この株は、pflB遺伝子の欠失を有した。
【0153】
「JW0886マーカーレス」株を、JW4114(frdB::kan)由来のP1vir溶解物で形質導入し、25μg/mLのカナマイシンを含有するLBプレート上にストリークした。カナマイシン耐性形質導入体を、プライマーfrdB CkUp(配列番号13)およびfrdB CkDn(配列番号14)を伴うコロニーPCRによってスクリーニングした。予想された約1.6kbのPCR産物を生成するコロニーを、上記のようにエレクトロコンピテントにし、上記のようにマーカーの除去のため、pCP20で形質転換した。形質転換体をまず、100μg/mLのアンピシリンを含有するLBプレート上に30℃で展開し、次いでアンピシリン耐性形質転換体を選択し、LBプレート上にストリークし、42℃で成長させた。単離したコロニーを、アンピシリンおよびカナマイシン選択培地プレートならびにLBプレート上にパッチした。カナマイシン選択、アンピシリン選択コロニーを、プライマーfrdB CkUp(配列番号13)およびfrdB CkDn(配列番号14)を伴うPCRによってスクリーニングした。予想された約0.4kbのPCR産物が認められ、それからマーカーの除去が確認され、二重ノックアウト株「ΔpflB frdB」が生成された。
【0154】
二重ノックアウト株を、JW1375(ΔldhA::kan)由来のP1vir溶解物で形質導入し、25μg/mLのカナマイシンを含有するLBプレート上に展開した。カナマイシン耐性形質導入体を、プライマーldhA CkUp(配列番号15)およびldhA CkDn(配列番号16)を伴うコロニーPCRによってスクリーニングした。予想された1.1kbのPCR産物を生成するクローンを、エレクトロコンピテントにし、上記のようにマーカーの除去のため、pCP20で形質転換した。形質転換体を、100μg/mLのアンピシリンを含有するLBプレート上に30℃で展開し、アンピシリン耐性形質転換体をLBプレート上にストリークし、42℃で成長させた。単離したコロニーを、アンピシリンおよびカナマイシン選択培地プレートならびにLBプレート上にパッチした。カナマイシン選択、アンピシリン選択コロニーを、0.3kbの産物について、プライマーldhA CkUp(配列番号15)およびldhA CkDn(配列番号16)を伴うPCRによってスクリーニングした。予想された約0.3kbのPCR産物を生成するクローンにより、マーカーの除去が確認され、「3ノックアウト株」(ΔpflB frdB ldhA)と称される三重ノックアウト株が生成された。
【0155】
「3ノックアウト株」を、JW1228(ΔadhE::kan)由来のP1vir溶解物で形質導入し、25μg/mLのカナマイシンを含有するLBプレート上に展開した。カナマイシン耐性形質導入体を、プライマーadhE CkUp(配列番号17)およびadhE CkDn(配列番号18)を伴うコロニーPCRによってスクリーニングした。予想された1.6kbのPCR産物を生成するクローンを、エレクトロコンピテントにし、マーカーの除去のため、pCP20で形質転換した。形質転換体を、100μg/mLのアンピシリンを含有するLBプレート上に30℃で展開した。アンピシリン耐性形質転換体をLBプレート上にストリークし、42℃で成長させた。単離したコロニーを、アンピシリンおよびカナマイシン選択プレートならびにLBプレート上にパッチした。カナマイシン選択、アンピシリン選択コロニーを、プライマーadhE CkUp(配列番号17)およびadhE CkDn(配列番号18)を伴うPCRによってスクリーニングした。予想された約0.4kbのPCR産物を生成するクローンを、「4ノックアウト株」(ΔpflB frdB ldhA adhE)と称した。
【0156】
4ノックアウト大腸菌(E.coli)株へのイソブタノール生合成経路をコードする遺伝子セットの導入
プラスミドpTrc99A::budB−ilvC−ilvD−kivDを、同時係属中の共同所有される米国特許出願公開第2007/0092957号明細書(参照により本明細書中に援用される)の実施例9〜14中に記載のように作成した。このプラスミドは、次の遺伝子、すなわち、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)由来のアセト乳酸シンターゼをコードするbudB(配列番号1)、大腸菌(E.coli)由来のアセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼをコードするilvC遺伝子(配列番号3)、大腸菌(E.coli)由来のアセトヒドロキシ酸デヒドラターゼをコードするilvD(配列番号5)、およびラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)由来の分岐鎖ケト酸デカルボキシラーゼをコードするkivD(配列番号7)を含んだ。ブタノールデヒドロゲナーゼをコードするアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)由来のsadB遺伝子(配列番号9)を、下記のようにpTrc99A::budB−ilvC−ilvD−kivDプラスミドにサブクローン化した。
【0157】
(同時係属中の共同所有される米国仮特許出願第61/048291号明細書中に開示される)アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)由来のブタノールデヒドロゲナーゼをコードするDNA断片(DNA:配列番号9;タンパク質:配列番号10)を、標準条件を使用して、A.キシロスオキシダンス(A.xylosoxidans)ゲノムDNAから増幅した。DNAを、グラム陰性生物に対して推奨されるプロトコルに従い、Gentra Puregeneキット(Gentra Systems,Inc.(Minneapolis,MN);カタログ番号D−5500A)を使用して調製した。PCR増幅を、フォワードおよびリバースプライマーのN473およびN469(配列番号19および20)を使用し、それぞれPhusion high Fidelity DNAポリメラーゼ(New England Biolabs(Beverly,MA))を使用して行った。PCR産物を、pCR4 BLUNT(Invitrogen)にTOPO−Bluntクローニングを行い、pCR4Blunt::sadBを生成し、それを大腸菌(E.coli)Mach−1細胞に形質転換した。それに続き、プラスミドを4つのクローンから単離し、配列を検証した。
【0158】
次いで、sadBコード領域を、ベクターpTrc99a(Amannら、Gene 69:301−315頁、1988年)にクローン化した。pCR4Blunt::sadBをEcoRIで消化し、sadB断片を放出し、それをEcoRIで消化されたpTrc99aとライゲートし、pTrc99a::sadBを生成した。このプラスミドを、大腸菌(E.coli)Mach1細胞に形質転換し、得られた形質転換体をMach1/pTrc99a::sadBと称した。これらの細胞におけるsadB遺伝子から発現される酵素の活性は、標準としてイソブチルアルデヒドを使用して分析すると、無細胞抽出液中で3.5mmol/分/mgのタンパク質であることが判定された。
【0159】
次いで、sadB遺伝子を、次のように、pTrc99A::budB−ilvC−ilvD−kivDにサブクローン化した。sadBコード領域を、プライマーN695A(配列番号21)およびN696A(配列番号22)を使用し、Phusion High Fidelity DNAポリメラーゼ(New England Biolabs(Beverly,MA))を使用し、pTrc99a::sadBから増幅した。増幅を、98℃で1分間の初期変性、次いで98℃で10秒間の変性の30サイクル、62℃で30秒間のアニーリング、72℃で20秒間の伸長および72℃で5分間の最終伸長サイクル、次いで4℃で保持の場合に行った。プライマーN695Aは、クローニングにおけるAvrII制限部位と、sadBコード領域のATG開始コドンの上流にRBS(リボソーマル結合部位)を有した。N696Aプライマーは、クローニングにおけるXbaI部位を含んだ。1.1kbのPCR産物を、AvrIIおよびXbaI(New England Biolabs(Beverly,MA))で消化し、Qiaquick Gel Extraction Kit(Qiagen Inc.(Valencia,CA))を使用してゲル精製した。精製断片を、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs(Beverly,MA))を使用し、同じ制限酵素で切断済みのpTrc99A::budB−ilvC−ilvD−kivDとライゲートした。ライゲーション混合物を、16℃で一晩インキュベートし、次いで製造業者のプロトコルに従い、大腸菌(E.coli)Mach1(商標)コンピテント細胞(Invitrogen)に形質転換した。形質転換体を、100μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天上で成長させた後に得た。形質転換体由来のプラスミドDNAを、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen Inc.(Valencia,CA))を使用し、製造業者のプロトコルに従って調製した。得られたプラスミドを、pTrc99A::budB−ilvC−ilvD−kivD−sadBと称した。エレクトロコンピテント4ノックアウト大腸菌(E.coli)細胞を、上記のように調製し、pTrc99A::budB−ilvC−ilvD−kivD−sadBで形質転換した。形質転換体を、100μg/mLのアンピシリンを含有するLB寒天プレート上にストリークした。得られた組換え大腸菌(E.coli)株は、プラスミドpTrc99A::budB−ilvC−ilvD−kivD−sadBによってコードされるイソブタノール生合成経路と、pflB、frdB、ldhA、およびadhE遺伝子の欠失を含み、株NGCI−031と称した。
【0160】
酵母株NGI−049の作成
NGI−049は、内因性PDC1、PDC5、およびPDC6遺伝子の挿入不活性化を有し、かつ発現ベクターpLH475−Z4B8およびpLH468を有するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株である。PDC1、PDC5、およびPDC6遺伝子は、ピルビン酸デカルボキシラーゼの3つの主要なアイソザイムをコードする。同株は、融合されるかまたはプラスミド上に存在する、イソブタノール生合成経路における酵素をコードする遺伝子を発現する。
【0161】
発現ベクターpLH475−Z4B8
酵母におけるALSおよびKARIの発現のため、pLH475−Z4B8プラスミド(配列番号30)を作成した。pLH475−Z4B8は、次のキメラ遺伝子、すなわち、
1)CUP1プロモーター(配列番号31)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のアセト乳酸シンターゼのコード領域(AlsS;配列番号32;タンパク質配列番号33)およびCYC1ターミネーター(配列番号34);
2)ILV5プロモーター(配列番号35)、Pf5.IlvC−Z4B8コード領域(配列番号36;タンパク質配列番号37)およびILV5ターミネーター(配列番号38);ならびに
3)FBA1プロモーター(配列番号39)、S.セレビシアエ(S.cerevisiae)KARIコード領域(ILV5;配列番号40;タンパク質配列番号41)およびCYC1ターミネーターを有するpHR81ベクター(ATCC番号87541)である。
【0162】
Pf5.IlvC−Z4B8コード領域は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)由来のKARIをコードするが、突然変異を有する配列であり、それは共同所有された同時係属中の米国特許出願第12/337736号明細書(参照により本明細書中に援用される)中に記載された。Pf5.IlvC−Z4B8でコードされるKARI(配列番号37)は、天然シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)のKARIに対して次のアミノ酸変化、すなわち、
C33L(システインが位置33でロイシンに変化)、
R47Y(アルギニンが位置47でチロシンに変化)、
S50A(セリンが位置50でアラニンに変化)、
T52D(トレオニンが位置52でアスパラギンに変化)、
V53A(バリンが位置53でアラニンに変化)、
L61F(ロイシンが位置61でフェニルアラニンに変化)、
T80I(トレオニンが位置80でイソロイシンに変化)、
A156V(アラニンが位置156でトレオニンに変化、および
G170A(グリシンが位置170でアラニンに変化)
を有する。
【0163】
Pf5.IlvC−Z4B8コード領域を、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のために最適化したコドンに基づき、DNA2.0(Palo Alto,CA;配列番号6)によって合成した。
【0164】
発現ベクターpLH468
pLH468プラスミド(配列番号42)を、酵母におけるDHAD、KivDおよびHADHの発現のために作成した。
【0165】
枯草菌(B.subtilis)のケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ(KivD)およびウマ肝臓アルコールデヒドロゲナーゼ(HADH)におけるコード領域を、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のために最適化したコドンに基づき、DNA2.0によって合成し(各々、配列番号43および45)、プラスミドpKivDy−DNA2.0およびpHadhy−DNA2.0において提供した。コードされるタンパク質は、それぞれ配列番号44および46である。KivDおよびHADHに対する各発現ベクターを作成した。pLH467(pRS426::PGPD1−kivDy−GPD1t)を構築するため、ベクターpNY8(配列番号47;pRS426.GPD−ald−GPDtとも称され、共同所有された同時係属中の米国特許出願公開第2008/0182308号明細書の実施例17(参照により本明細書中に援用される)中に記載)を、AscIおよびSfiI酵素で消化することで、GPD1プロモーターおよびaldコード領域を切断した。pNY8由来のGPD1プロモーター断片(配列番号48)をPCR増幅し、5’プライマーOT1068および3’プライマーOT1067(配列番号49および50)を使用して、5’末端にAscI部位および3’末端にSpeI部位を付加した。AscI/SfiIで消化したpNY8ベクター断片を、AscIおよびSpeIで消化したGPD1プロモーターPCR産物とライゲートし、かつ、コドン最適化したkivDコード領域を有するSpeI−SfiI断片を、ベクターpKivD−DNA2.0から単離した。3通りのライゲーションにより、ベクターpLH467(pRS426::PGPD1−kivDy−GPD1t)を生成した。pLH467を、制限マッピングおよび配列決定によって検証した。
【0166】
pLH435(pRS425::PGPM1−Hadhy−ADH1t)は、ベクターpRS425::GPM−sadB(配列番号51)(共同所有された同時係属中の米国仮特許出願第61/058970号明細書の実施例3(参照により本明細書中に援用される)に記載)から得られた。pRS425::GPM−sadBは、GPM1プロモーター(配列番号52)、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)のブタノールデヒドロゲナーゼ由来のコード領域(sadB;配列番号9;タンパク質配列番号10:共同所有された同時係属中の米国仮特許出願第61/048291号明細書中に開示)、およびADH1ターミネーター(配列番号53)を有するキメラ遺伝子を有するpRS425ベクター(ATCC番号77106)である。pRS425::GPMp−sadBは、sadBコード領域の5’および3’末端にそれぞれBbvIおよびPacI部位を有する。NheI部位を、プライマーOT1074およびOT1075(配列番号54および55)を使用する部位特異的突然変異誘発により、sadBコード領域の5’末端側に付加し、ベクターpRS425−GPMp−sadB−NheIを生成し、それを配列決定によって検証した。pRS425::PGPM1−sadB−NheIを、NheIおよびPacIで消化し、sadBコード領域を除外し、ベクターpHadhy−DNA2.0由来のコドン最適化したHADHコード領域を有するNheI−PacI断片とライゲートし、pLH435を生成した。
【0167】
KivDおよびHADHの発現カセットを単一ベクター内で結合させるため、酵母ベクターpRS411(ATCC番号87474)をSacIおよびNotIで消化し、3通りのライゲーション反応において、PGPM1−Hadhy−ADH1tカセットを有するpLH435由来のSalI−NotI断片とともに、PGPD1−kivDy−GPD1tカセットを有するpLH467由来のSacI−SalI断片とライゲートした。これによってベクターpRS411::PGPD1−kivDy−PGPM1−Hadhy(pLH441)を得て、それを制限マッピングによって検証した。
【0168】
低級イソブタノール経路内の3つの遺伝子ilvD、kivDyおよびHadhyのすべてにおける同時発現ベクターを生成するため、IlvD遺伝子の供給源として、共同所有された同時係属中の米国仮特許出願第61/100792号明細書に記載のpRS423 FBA ilvD(Strep)(配列番号56)を使用した。このシャトルベクターは、大腸菌(E.coli)における維持のためのF1複製起点(nt1423〜1879)および酵母における複製のための2ミクロンの複製起点(nt8082〜9426)を有する。ベクターは、FBAプロモーター(nt2111〜3108;配列番号39)およびFBAターミネーター(nt4861〜5860;配列番号57)を有する。さらに、それは、酵母における選択のためのHisマーカー(nt504〜1163)および大腸菌(E.coli)における選択のためのアンピシリン耐性マーカー(nt7092〜7949)を有する。ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)UA159(ATCC番号700610)由来のilvDコード領域(nt3116〜4828;配列番号58;タンパク質配列番号59)は、FBAプロモーターとFBAターミネーターの間に位置し、発現のためのキメラ遺伝子を形成する。さらに、ilvDコード領域(nt4829〜4849)に融合されたlumio tagがある。
【0169】
第1のステップは、pRS423 FBA ilvD(Strep)(pRS423−FBA(SpeI)−IlvD(ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans))−Lumioとも称される)を、SacIおよびSacII(SacII部位はT4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端化された)で線状化し、全長が9,482bpのベクターを得ることであった。第2のステップは、kivDy−hADHyカセットを、pLH441からSacIおよびKpnI(KpnI部位はT4 DNAポリメラーゼで平滑末端化された)で単離し、6,063bpの断片を得ることであった。この断片を、pRS423−FBA(SpeI)−IlvD(ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans))−Lumio由来の9,482bpのベクター断片とライゲートした。この生成されたベクターpLH468(pRS423::PFBA1−ilvD(Strep)Lumio−FBA1t−PGPD1−kivDy−GPD1t−PGPM1−hadhy−ADH1t)を、制限マッピングおよび配列決定によって確認した。
【0170】
pdc6::GPMp1−sadB組込みカセットの作成およびPDC6の欠失:
pdc6::GPM1p−sadB−ADH1t−URA3r組込みカセットを、pRS425::GPM−sadB(上記)由来のGPM−sadB−ADHtセグメント(配列番号60)をpUC19−URA3r由来のURA3r遺伝子と連結することによって作成した。pUC19−URA3r(配列番号61)は、インビボでの相同組換えおよびURA3マーカーの除去を可能にする、75bpの相同リピート配列によって隣接されたpRS426(ATCC番号77107)由来のURA3マーカーを有する。2つのDNAセグメントを、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs Inc.(Beverly,MA);カタログ番号F−540S)およびプライマー114117−11A〜114117−11D(配列番号62、63、64および65)、ならびに114117−13Aおよび114117−13B(配列番号66および67)とともに、鋳型としてpRS425::GPM−sadBおよびpUC19−URA3rプラスミドDNAを使用するSOE PCR(Hortonら(1989年) Gene 77:61−68頁で記載)によって連結した。
【0171】
SOE PCRにおける外部プライマー(114117−13Aおよび114117−13B)は、PDC6プロモーターおよびターミネーターの上流および下流の領域に相同な約50bpの5’および3’領域をそれぞれ有した。標準の遺伝子技術(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、201−202頁)を用いて、完全カセットPCR断片を、BY4700(ATCC番号200866)に形質転換し、かつ、形質転換体は、2%グルコースを30℃で補充したウラシル欠損合成完全培地上で維持した。形質転換体は、プライマー112590−34Gおよび112590−34H(配列番号68および69)と112590−34Fおよび112590−49E(配列番号70および71)を使用するPCRによってスクリーニングし、PDC6コード領域の欠失を伴うPDC6遺伝子座での組込みについて検証した。URA3rマーカーを、標準プロトコルに従い、30℃で2%グルコースおよび5−FOAを補充した合成完全培地上にプレーティングすることによって再生した。マーカーの除去を、5−FOAプレートからのコロニーをSD−URA培地上にパッチすることによって確認し、成長がないことを検証した。得られた同定株は、遺伝子型:BY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1tを有する。
【0172】
pdc1::PDC1−ilvD組込みカセットの作成およびPDC1の欠失:
pdc1::PDC1p−ilvD−FBA1t−URA3r組込みカセットを、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs Inc.(Beverly,MA);カタログ番号F−540S)およびプライマー114117−27A〜114117−27D(配列番号73、74、75および76)とともに、鋳型としてpLH468およびpUC19−URA3rプラスミドDNAを使用するSOE PCR(Hortonら(1989年) Gene 77:61−68頁で記載)により、pLH468(上記)由来のilvD−FBA1tセグメント(配列番号72)をpUC19−URA3r由来のURA3r遺伝子と連結することによって作成した。
【0173】
SOE PCRにおける外部プライマー(114117−27Aおよび114117−27D)は、PDC1プロモーターの下流およびPDC1コード配列の下流の領域に相同な約50bpの5’および3’領域を有した。標準の遺伝子技術(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、201−202頁)を用いて、完全カセットPCR断片を、BY4700 pdc6::PGPM1−sadB−ADH1tに形質転換し、かつ、形質転換体は、2%グルコース
を30℃で補充したウラシル欠損合成完全培地上で維持した。形質転換体は、プライマー114117−36Dおよび135(配列番号77および78)とプライマー112590−49Eおよび112590−30F(配列番号70および79)を使用するPCRによってスクリーニングし、PDC1コード配列の欠失を伴うPDC1遺伝子座での組込みについて検証した。URA3rマーカーを、標準プロトコルに従い、30℃で2%グルコースおよび5−FOAを補充した合成完全培地上にプレーティングすることによって再生した。マーカーの除去を、5−FOAプレートからのコロニーをSD−URA培地上にパッチすることによって確認し、成長がないことを検証した。得られた同定株「NYLA67」は、遺伝子型:BY4700pdc6::GPM1p−sadB−ADH1t pdc1::PDC1p−ilvD−FBA1tを有する。
【0174】
HIS3の欠失
内因性HIS3コード領域を欠失させるため、his3::URA3r2カセットをURA3r2鋳型DNA(配列番号84)からPCR増幅した。URA3r2は、インビボでの相同組換えおよびURA3マーカーの除去を可能にする、500bpの相同リピート配列によって隣接されたpRS426(ATCC番号77107)由来のURA3マーカーを有する。PCRを、Phusion DNAポリメラーゼとプライマー114117−45Aおよび114117−45B(配列番号85および86)を使用して行い、約2.3kbのPCR産物を生成した。各プライマーのHIS3部分は、URA3r2マーカーの組込みがHIS3コード領域の置換をもたらすように、HIS3プロモーターの上流の5’領域およびコード領域の下流の3’領域から得られた。標準の遺伝子技術(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、201−202頁)を用いてPCR産物をNYLA67に形質転換し、かつ、形質転換体は、2%グルコースを30℃で補充したウラシル欠損合成完全培地上で選択した。形質転換体は、スクリーニングし、形質転換体の2%グルコースを30℃で補充したヒスチジン欠損合成完全培地上へのレプリカプレーティングによって正確な組込みを検証した。URA3rマーカーを、標準プロトコルに従い、2%グルコースおよび5−FOAを30℃で補充した合成完全培地上でのプレーティングによって再利用した。マーカーの除去を、5−FOAプレートからのコロニーをSD−URA培地上にパッチすることによって確認し、成長がないことを検証した。得られた同定株「NYLA73」は、遺伝子型:BY4700 pdc6::GPM1p−sadB−ADH1t pdc1::PDC1p−ilvD−FBA1t Δhis3を有する。
【0175】
pdc5::kanMX組込みカセットの作成およびPDC5の欠失:
pdc5::kanMX4カセットを、Phusion DNAポリメラーゼとプライマーPDC5::KanMXFおよびPDC5::KanMXR(配列番号80および81)を使用し、YLR134W染色体DNA株(ATCC番号4034091)からPCR増幅し、約2.2kbのPCR産物を生成した。各プライマーのPDC5部分は、kanMX4マーカーの組込みがPDC5コード領域の置換をもたらすように、PDC5プロモーターの上流の5’領域およびコード領域の下流の3’領域から得られた。標準の遺伝子技術(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、201−202頁)を用いてPCR産物をNYLA73に形質転換し、かつ、形質転換体は、1%エタノールおよびジェネティシン(geneticin)(200μg/ml)を30℃で補充したYP培地上で選択した。形質転換体は、PCRによってスクリーニングし、プライマーPDC5koforおよびN175(配列番号82および83)を使用したPDC5コード領域の置換により、PDC遺伝子座での正確な組込みを検証した。同定された正確な形質転換体は、遺伝子型:BY4700 pdc6::GPM1p−sadB−ADH1t pdc1::PDC1p−ilvD−FBA1t Δhis3 pdc5::kanMX4を有する。
【0176】
プラスミドベクターpLH468およびpLH475−Z4B8を、標準の遺伝子技術(Methods in Yeast Genetics、2005年、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)を用いて、BY4700 pdc6::GPM1p−sadB−ADH1t pdc1::PDC1p−ilvD−FBA1t Δhis3 pdc5::kanMX4株に同時に形質転換し、1%エタノールを30℃で補充したヒスチジンおよびウラシル欠損合成完全培地上で維持した。
【0177】
イソブタノールを測定するためのGC法
次のGC法を用いて、下記の実施例1〜7における水相および有機相中でのイソブタノールの量を測定した。GC法では、Agilent Technologies(Santa Clara,CA)製のHP−InnoWaxカラム(30m×0.32mm ID、0.25μmのフィルム)を使用した。キャリアガスは、一定の上部圧力、150℃での測定された1mL/分の流速のヘリウムであり、インジェクタスプリット比は200℃で1:10であり、オーブン温度は45℃で1分間、10℃/分で45℃〜230℃、および230℃で30秒間であった。フレームイオン化検出を、40mL/分のヘリウム補給気体(makeup gas)を使用して260℃で用いた。培養液試料を、注入前に、0.2μmの回転フィルタを通して濾過した。所望される分析感度に依存し、0.1μLまたは0.5μLのいずれかの注入容量を使用した。較正標準曲線を、次の化合物、すなわちエタノール、イソブタノール、アセトイン、メソ−2,3−ブタンジオール、および(2S,3S)−2,3−ブタンジオールについて生成した。また、分析標準を使用し、イソブチルアルデヒド、イソ酪酸、およびイソアミルアルコールにおける保持時間を同定した。これらの条件下で、イソブタノール保持時間は、約5.33分であった。
【0178】
水相中でのグルコースおよびイソブタノールを測定するためのHPLC法
実施例7および8においては、有機相中のイソブタノールは、上記のGC法を用いて測定した。実施例7および8においては、水相中のイソブタノールおよびグルコース濃度は、溶離剤としてアイソクラティック(isocratic)な0.01Nの水性硫酸を使用する、8.0mm×300mmのShodex sugar SH1011カラム(昭和電工株式会社(神奈川、日本)(Thompson Instruments(Clear Brook,VA)仲介)を使用するHPLC(Waters Alliance Model(Milford,MA)またはAgilent 1100 Series(Santa Clara,CA))によって測定した。試料を、0.2μmのシリンジフィルター(PALL GHP膜)を通過させてHPLCバイアルに入れた。HPLC実行条件は次の通りであった。
注入容量:10μL
流速:0.80mL/分
実行時間:32分
カラム温度:50℃
検出器:屈折率
検出器温度:40℃
UV検出:210nm、4nmの帯域幅
【0179】
実行後、試料中の濃度を、各化合物について標準曲線から測定した。保持時間は、イソブタノールおよびグルコースに対して27.0分および8.7分であった。
【実施例】
【0180】
実施例1
溶媒のスクリーニング
本実施例の目的は、さまざまな有機溶媒を、ブタノールの抽出発酵での使用についてスクリーニングすることであった。検討した溶媒特性は、溶媒と水相の間でのイソブタノールの分配、二相系における溶媒のエマルジョン形成傾向、および溶媒の野生型サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株との生体適合性であった。
【0181】
水と次の溶媒、すなわちオレイン酸(CAS番号112−80−1)、オレイルアルコール(CAS番号143−28−2)、オクタン酸(CAS番号124−07−2)、1−ノナノール(CAS番号28473−21−4)、1−ドデカノール(CAS番号112−53−8)、1−ノナナール(CAS番号124−19−6)、および1−デカノール(CAS番号112−30−1)との間のイソブタノールの分配について検討した。イソブタノールを水に加え、10、30、50、および70g/Lの最終イソブタノール濃度を有する水溶液を得た。これらの水性ブタノール溶液(12mL)を試験管に加え、試験対象の4mLの溶媒を加えた。各溶媒を、各イソブタノール濃度で2通りに試験した。試験管を、30℃で混合しながら3時間インキュベートした。その時間後、水相および溶媒相を、遠心分離によって各試験管から分離し、本明細書中の上の一般的方法の項に記載のGC法を用いてイソブタノールについて分析した。各溶媒相と水相の間のイソブタノールにおける分配係数(すなわちすなわちKp=[イソブタノール]Org/[イソブタノール]Aq)を計算した。結果を表2にまとめる。
【0182】
【表2】

【0183】
表中のデータからわかるように、試験されるすべての溶媒は、イソブタノールにおける好ましい分配係数を有した。
【0184】
各溶媒の生体適合性を、ATCCから得たサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)BY4741での振とうフラスコ試験を用いて判定した。700mLの酵母抽出物/ペプトン/デキストロース(YPD)培地を含有するシード振とうフラスコに200μLのS.セレビシアエ(S.cerevisiae)BY4741接種材料を接種し、OD600が約0.5に達するまで、250rpmで振とうしながら、30℃で一晩インキュベートした。試料を、分光光度計を使用するOD600およびHPLCを使用するグルコース濃度の測定のため、培養物から回収した。
【0185】
得られたシード培養物を、以下のように8つの125mLのフラスコに分けた。対照としての役割を果たす1つのフラスコに、100mLのシード培養物を加えた。残りの7つのフラスコに、試験対象の75mLのシード培養物および25mLの溶媒を加えた。フラスコを、卓上シェーカー(Innova 4230,New Brunswick Scientific(Edison,NJ))において250rpmで振とうしながら、30℃でインキュベートし、試料を、さまざまな時間に各フラスコから回収し、OD600およびグルコース濃度を測定した。結果を表3および4にまとめる。
【0186】
【表3】

【0187】
【表4】

【0188】
表3および4中の結果からわかるように、オレイン酸、オレイルアルコール、および1−ドデカノールの存在下で成長したS.セレビシアエ(S.cerevisiae)は、溶媒を伴わない対照とほぼ同じレベルのグルコース利用および成長を示し、これは、これらの溶媒が試験されるS.セレビシアエ(S.cerevisiae)株と生体適合性があることを示す。溶媒のオクタン酸、1−ノナナール、1−デカノール、およびノナノールのすべてが、S.セレビシアエ(S.cerevisiae)株の成長およびグルコース利用を阻害した。
【0189】
実施例2および実施例3(比較)
イソブタノールおよびオレイルアルコールの存在下でのサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の成長
これら実施例の目的は、オレイルアルコールがイソブタノールの毒性をサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に対して弱めることを示すことであった。野生型サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)BY4741株のグルコース消費速度および成長速度を、オレイルアルコールの存在下(実施例2)およびオレイルアルコールの不在下(実施例3、比較)で、高濃度のイソブタノールを含有する振とうフラスコの培養物中で測定した。
【0190】
600mLのYPD培地を含有する3つのシード振とうフラスコに、100、300、および1000μLのサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)BY4741接種材料をそれぞれ接種した。フラスコを、OD600が約0.1に達するまで、250rpmで振とうしながら、30℃で一晩インキュベートした。試料を各培養物から回収し、OD600およびグルコース濃度を上記のように測定した。
【0191】
125mLのフラスコに、300μLの接種材料に由来する100mLの培養物を加えた(実施例3、比較)。別の125mLのフラスコに、75mLの培養物および25mLのオレイルアルコール(すなわち25vol%)を加えた(実施例2)。フラスコを、100rpmで振とうしながら、30℃でインキュベートした。試料を、OD600およびグルコースの測定のために回収した。OD600が約0.4に達したとき、イソブタノールを、両方のフラスコに、最終濃度が水相の30g/Lになるまで加えた。75mLの培養物および25vol%のオレイルアルコールを含有するが、イソブタノールが全く添加されていない第3のフラスコは、陽性対照としての役割を果たした。試料を、OD600およびグルコース濃度の測定のため、さまざまな時間にすべてのフラスコから回収した。光学密度結果およびグルコース結果を、表5および6にそれぞれ示す。
【0192】
【表5】

【0193】
【表6】

【0194】
表5および6中のデータからわかるように、オレイルアルコールの不在下、30g/Lの濃度でのイソブタノール(実施例3、比較)は、グルコース利用およびバイオマス成長をほぼ完全に阻害した。しかし、オレイルアルコールを培養物に加えたとき、培養物は、成長し、イソブタノールの存在下、30g/Lの濃度で、グルコースを利用することができた。イソブタノールおよびオレイルアルコールを含有する培養物の成長およびグルコース利用速度は、オレイルアルコールのみを含有する対照のそれらに匹敵した。これらの結果は、オレイルアルコールが、イソブタノールの毒性を試験されるサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の株に対して弱めることを示す。オレイルアルコールを使用し、他のブタノール同様、イソブタノールの毒性が、組換え株を含むサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の他の株に対して弱められると予想する場合、それは理にかなうこととなる。
【0195】
実施例4および実施例5(比較)
イソブタノールおよびオレイルアルコールの存在下でのラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)の成長
これらの実施例の目的は、オレイルアルコールがイソブタノールの毒性をラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)に対して弱めることを示すことであった。ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)株PN0512のグルコース消費速度および成長速度を、オレイルアルコールの存在下(実施例4)およびオレイルアルコールの不在下(実施例5、比較)で、高濃度のイソブタノールを含有する振とうフラスコの培養物中で測定した。
【0196】
50mLのde Man−Rogosa−Sharpe(MRS)培地を含有する3つのシード振とうフラスコに、200、500、および1000μLのラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)株PN0512接種材料(ATCC:PTA−7727、米国特許出願第11/761497号明細書において2006年7月12日に行われた生物学的寄託物)をそれぞれ接種した。フラスコを、OD600が2〜5の間になるまで、250rpmで振とうしながら、30℃で一晩インキュベートした。600mLのMRS培地を含有する1Lのフラスコに、初期OD600=0.1に対してOD600=3を有する上記シードフラスコの1つから接種し、それを180rpmで振とうしながら30℃で培養した。培養の4〜5時間後、OD600は0.5〜1.0の間であった。試料を各培養物から回収し、OD600およびグルコース濃度を上記のように測定した。
【0197】
125mLのフラスコに、上記の1Lのフラスコからの100mLの培養物を加えた(実施例3、比較)。別の125mLのフラスコに、75mLの培養物および25mLのオレイルアルコール(すなわち25vol%)を加えた(実施例2)。フラスコを、100rpmで振とうしながら、30℃でインキュベートした。試料を、OD600およびグルコース測定のため、回収した。OD600が約1.5に達したとき、イソブタノールを、最終濃度が水相の30g/Lになるまで両方のフラスコに加えた。75mLの培養物および25vol%のオレイルアルコールを含有するが、イソブタノールを全く加えない第3のフラスコは、陽性対照としての役割を果たした。試料を、OD600およびグルコース濃度の測定のため、さまざまな時間にすべてのフラスコから回収した。光学密度結果およびグルコース結果を、それぞれ表7および8に示す。
【0198】
【表7】

【0199】
【表8】

【0200】
表7および8中のデータからわかるように、オレイルアルコールの不在下、30g/Lの濃度でのイソブタノール(実施例3、比較)は、乳酸桿菌(Lactobacillus)株のグルコース利用およびバイオマス成長をほぼ完全に阻害した。しかし、オレイルアルコールを培養物に加えたとき、培養物は、イソブタノールの存在下、30g/Lの濃度で、成長し、グルコースを利用することができた。イソブタノールおよびオレイルアルコールを含有する培養物の成長およびグルコース利用速度は、オレイルアルコールのみを含有する対照のそれらに匹敵した。これらの結果は、オレイルアルコールがイソブタノールの毒性を試験されるラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)の株に対して弱めることを示す。オレイルアルコールを使用し、イソブタノールおよび他のブタノールの毒性を、組換え株を含むラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)の他の株に対して弱められると予想する場合、それは理にかなうこととなる。
【0201】
実施例6
抽出発酵を使用する組換え大腸菌(Escherichia coli)によるイソブタノールの生成
本実施例の目的は、大腸菌(Escherichia coli)の組換え株によるイソブタノールの生成が、水不混和性の有機抽出剤としてのオレイルアルコールでの抽出発酵を使用するイソブタノール生合成経路を有することを示すことであった。
【0202】
使用した株は、本明細書中の上記の一般的方法の項で記載のように作成した大腸菌(Escherichia coli)株NGCI−031であった。接種材料の調製におけるすべてのシード培養物を、選択抗生物質としてアンピシリン(100mg/L)を含むLuria−Bertani(LB)培地中で成長させた。発酵培地は半合成培地であり、その組成物を表9に示す。
【0203】
【表9】

【0204】
【表10】

【0205】
表9からの成分1〜10を、所定濃度で水に加え、発酵槽内での最終容量を1.5Lにした。発酵槽の内容物をオートクレーブによって滅菌した。オートクレーブ培地を冷却した上で、成分11〜13を、混合し、濾過滅菌し、次いで発酵槽に加えた。発酵培地(水相)の全最終容量は約1.6Lであった。
【0206】
2.0Lの作動容量を有するBiostat−B DCU−3発酵槽(Braun Biotech International(Melesungen,Germany))を使用して、発酵を行った。全発酵の間、温度を30℃で維持し、水酸化アンモニウムを使用してpHを6.8に維持した。シード培養物(2〜10vol%)を無菌発酵培地に接種後、発酵槽を、撹拌速度(rpm)の自動制御により、0.5vvmの気流を伴う30%の溶解酸素(DO)の設定点で好気的に作動させた。一旦、所望される光学密度(OD600)に達すると(すなわちOD600=10)、培養物を0.4〜0.5mMのIPTGの添加によって誘導し、イソブタノール生合成経路を過剰発現させた。誘導の4時間後、発酵条件を、撹拌器速度を200rpmに低下させることにより、微好気的条件に変更した。微好気的条件への変更により、バイオマス生成用の炭素の量を最小化しながらイソブタノールの生成が開始され、それによりバイオマスの形成とイソブタノールの生成が脱共役された。オレイルアルコール(約780mL)をイソブタノール生成段階中に加え、水相中でのイソブタノールの形成に起因する阻害の問題を緩和した。グルコースを発酵槽にボーラス(50wt%のストック溶液)として加え、グルコースのレベルを30g/L〜2g/Lの間で保持した。
【0207】
イソブタノールの効率的生成には、生合成経路内でのレドックス均衡を可能にする微好気的条件が要求されることから、空気を発酵槽に0.5vvmで連続的に供給した。連続的吸気により、発酵槽の水相からのイソブタノールの有意なストリッピングが生じた。ストリッピングに起因するイソブタノールの損失を定量するため、発酵槽からの排気を冷却(6.5℃)水トラップを通してスパージし、イソブタノールを濃縮し、次いでそれを、本明細書中の上記の一般的方法の項に記載のように、GC法を用いて定量した。あるいは、発酵槽から流出される気流を、質量分析計(Prima dB質量分析計、Thermo Electron Corp.(Madison,WI))に直接送り、気流中のイソブタノールの量を定量した。74または42の質量対電荷比でのイソブタノールのピークを、連続的に監視し、気流中のイソブタノールの量を定量した。
【0208】
イソブタノールの生成においては、有効力価、有効速度、および有効収率(いずれもストリッピングに起因するイソブタノールの損失に対して補正された)は、それぞれ37g/L、0.40g/L/h、および0.33g/gであった。これらの結果を抽出剤としてのオレイルアルコールを使用しない場合に得られる結果と比較してわかるように(実施例7(下記の比較)において示される)、イソブタノール生成における抽出発酵においてオレイルアルコールを使用する結果、有意に高い有効力価、有効速度、および有効収率が得られる。細菌宿主に対して有害なイソブタノール生成物を、オレイルアルコール相に連続的に抽出し、水相中のその濃度が低下し、それにより微生物に対する毒性が低下する。さらに、オレイルアルコールは、イソブタノール生成に対して別の予想外の有益な効果を有するように見られる。これはまた、実施例7(比較)との比較によって認められうる。その実施例では、ガスストリッピング単独でイソブタノールが発酵培地から連続的に除去され、発酵培地中のイソブタノール濃度が、最大で約8〜10g/L(すなわちオレイルアルコールでの抽出とガスストリッピングを併用して認められるレベルに匹敵するレベル)に制限された(図1参照)。両方の実施例では、イソブタノール濃度は、発酵の大部分において阻害レベル未満であった。しかし、オレイルアルコール抽出発酵とガスストリッピングの併用の場合(実施例6)、ガスストリッピング単独の場合(実施例7)より有意に高いイソブタノール有効力価、有効速度、および有効収率が得られたが、これはオレイルアルコールがイソブタノールの生成に対して別の予想外の有益な効果を有することを示唆する。
【0209】
実施例7(比較)
抽出剤の添加を伴わない発酵を用いる、組換え大腸菌(Escherichia coli)によるイソブタノールの生成
本比較実施例の目的は、オレイルアルコールの添加を伴わない場合、イソブタノールの生成が生成物の毒性によって阻害されることを示すことであった。
【0210】
発酵を、オレイルアルコールをイソブタノールの生成段階中に発酵培地に加えない点を除き、実施例6に記載のように行った。さらに、次の変更を行った。OD600が6に達した時、培養物をIPTGに添加によって誘導し、誘導の3時間後、微好気的条件への変更を行った。ストリッピングによるイソブタノールの損失の量を定量するため、発酵槽からの排気を質量分析計(Prima dB、Thermo Electron Corp.(Madison,WI))に直接送った。74または42の質量対電荷比でのイソブタノールのピークを、連続的に監視し、ストリッピングに起因するイソブタノールの損失を定量した。
【0211】
イソブタノールの生成においては、有効力価、有効速度、および有効収率(いずれもストリッピングに起因するイソブタノールの損失に対して補正された)は、それぞれ13g/L、0.21g/L/h、および0.22g/gであった。イソブタノールがガスストリッピングによって発酵培地から連続的に除去されたことから、発酵中での水相中のイソブタノール濃度は最大で8〜10g/Lに制限され、発酵の大部分において実際には阻害レベル未満であった(図1参照)。
【0212】
実施例8
抽出発酵を用いる、組換えサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)によるイソブタノールの生成
本実施例の目的は、水不混和性有機抽出剤としてオレイルアルコールを伴う抽出発酵を用いる、イソブタノール生合成経路を有するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の組換え株によるイソブタノールの生成について示すことであった。
【0213】
使用した株は、本明細書中の上記の一般的方法の項に記載のように作成したサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株NGCI−049であった。接種材料の調製のためのすべてのシード培養物を、アミノ酸ドロップアウト混合物(amino acid dropout mix)(1.4g/L)、ロイシン(100mg/L)およびトリプトファン(20mg/L)を補充した、アミノ酸培地を有しない酵母窒素塩基(YNB)(6.7g/L)中で成長させた。1%(v/v)でのエタノールを、すべてのシード培養物のための唯一の炭素源として使用した。発酵培地は半合成培地であり、その組成物を表11に示す。
【0214】
【表11】

【0215】
表11からの成分1〜4を所定の濃度で水に加え、発酵槽内の最終容量を0.54Lにした。発酵槽の内容物を、オートクレーブによって滅菌した。オートクレーブ培地を冷却した後、成分5および6を、混合し、濾過滅菌し、発酵槽に加えた。発酵培地(水相)の全最終容量は約0.54Lであった。
【0216】
作動容量が900mLの1Lのオートクレーブ可能なバイオリアクターBio Console ADI 1025(Applikon,Inc(Holland))を使用して、発酵を行った。温度を、全発酵の間、30℃で維持し、水酸化ナトリウムを使用してpHを5.5で維持した。無菌発酵培地へのシード培養物(10vol%)の接種後、発酵槽を、撹拌速度(rpm)の自動制御により、0.3vvmの気流を伴う30%の溶解酸素(DO)の設定点で好気的に作動させた。一旦、バッチされた2g/Lの初期グルコースが消費されると、グルコースを、発酵槽内でグルコースの蓄積が決して0.2g/Lを超えない程度の指数的速度でポンプを使用して供給した。一旦、所望される光学密度(OD600)に達すると(すなわちOD600=6)、培養物を、過剰なグルコース(>2g/L)が発酵中、常時維持されるようにグルコースを供給することにより、イソブタノール生成段階に誘導した。グルコース過剰の2時間後、60mLの濾過滅菌した10×Yeast Extract Peptoneストック溶液(10×YEP=100g/Lの酵母抽出物および200g/Lのペプトン)を加えた。YEP添加の2時間後、オレイルアルコール(約300mL)を、イソブタノール生成段階中に加え、水相中でのイソブタノールおよび他の副生成物の形成に起因する阻害の問題を緩和した。グルコースを発酵槽に加え(50wt%のストック溶液)、グルコースのレベルを2g/L超で保持した。
【0217】
イソブタノールの効率的生成には、生合成経路内でのレドックス均衡を可能にする微好気的条件が要求されることから、空気を発酵槽に0.5vvmで連続的に供給した。連続的吸気により、発酵槽の水相からのイソブタノールの有意なストリッピングが生じた。ストリッピングに起因するイソブタノールの損失を定量するため、発酵槽からの排気を、質量分析計(Prima dB質量分析計、Thermo Electron Corp.(Madison,WI))に直接送り、気流中のイソブタノールの量を定量した。74または42の質量対電荷比でのイソブタノールのピークを、連続的に監視し、気流中のイソブタノールの量を定量した。
【0218】
水相中のグルコースおよび有機酸を、発酵の間、HPLCを用いて監視した。グルコースについても、グルコース分析器(YSI,Inc.(Yellow Springs,OH))を使用して迅速に監視した。2つの相を発酵槽から定期的に除去し、遠心分離によって分離した後、水相中のイソブタノールをHPLCによって定量し、オレイルアルコール相中のイソブタノールを、本明細書中の上記の一般的方法の項に記載のGC法を用いて監視した。発酵中の水相中のイソブタノールの濃度を図2に示し、ここでは黒四角(■)は、有機抽出剤としてのオレイルアルコールとガスストリッピングを併用する発酵である実施例8の濃度を示し、黒丸(●)は、ガスストリッピング単独を用いる発酵である実施例9(比較)の濃度を示す。
【0219】
イソブタノールの生成においては、有効力価、有効速度、および有効収率(いずれもストリッピングに起因するイソブタノールの損失に対して補正された)は、それぞれ5g/L、0.06g/L/h、および0.16g/gであった。これらの結果を抽出剤としてのオレイルアルコールを使用しない場合に得られる結果と比較してわかるように(実施例9(下記の比較)において示される)、イソブタノール生成における抽出発酵においてオレイルアルコールを使用する結果、有意に高い有効力価、有効速度、および有効収率が得られる。宿主に対して有害なイソブタノール生成物を、オレイルアルコール相に連続的に抽出し、水相中のその濃度が低下し、それにより微生物に対する毒性が低下する。さらに、オレイルアルコールは、イソブタノール生成に対して別の予想外の有益な効果を有するように見られる。これはまた、実施例9(比較)との比較によって認められうる。その実施例では、ガスストリッピング単独でイソブタノールが発酵培地から連続的に除去され、発酵培地中のイソブタノール濃度が、最大で約4g/L(すなわちオレイルアルコールでの抽出とガスストリッピングを併用して認められるレベルに匹敵するレベル)に制限された(図2参照)。両方の実施例では、イソブタノール濃度は、発酵の大部分において阻害レベル未満であった。しかし、オレイルアルコール抽出発酵とガスストリッピングの併用の場合(実施例8)、ガスストリッピング単独の場合(実施例9)より有意に高いイソブタノール有効力価、有効速度、および有効収率が得られたが、これはオレイルアルコールがイソブタノールの生成に対して別の予想外の有益な効果を有することを示唆する。
【0220】
実施例9(比較)
抽出剤の添加を伴わない発酵を用いる、組換えサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)によるイソブタノールの生成
本比較実施例の目的は、オレイルアルコールの添加を伴わない場合、イソブタノールの生成が生成物の毒性によって阻害されることを示すことであった。
【0221】
発酵を、オレイルアルコールをイソブタノールの生成段階中に発酵培地に加えない点を除き、実施例8に記載のように行った。ストリッピングによるイソブタノールの損失の量を定量するため、発酵槽からの排気を質量分析計(Prima dB、Thermo Electron Corp.(Madison,WI))に直接送った。74または42の質量対電荷比でのイソブタノールのピークを、連続的に監視し、ストリッピングに起因するイソブタノールの損失を定量した。
【0222】
イソブタノールの生成においては、有効力価、有効速度、および有効収率(いずれもストリッピングに起因するイソブタノールの損失に対して補正された)は、それぞれ3g/L、0.04g/L/h、および0.16g/gであった。イソブタノールがガスストリッピングによって発酵培地から連続的に除去されたことから、発酵中での水相中のイソブタノール濃度は、最大で2〜3g/Lに制限され、発酵の大部分において実際には阻害レベル未満であった(図2参照)。
【0223】
実施例10
2Lの発酵槽を使用して、バッチされた初期オレイルアルコールの一部が除去され、新しいオレイルアルコールと交換される点以外では実施例8と同様の、イソブタノールを生成する組換え酵母を使用して発酵を行ってもよい。このプロセスは、発酵槽内のオレイルアルコールの量が全発酵プロセスの間に一定を保たれるように、新しいオレイルアルコールが徐々に漏れ、使用済みオレイルアルコールが吐出される場合、連続モードで実行してもよい。発酵からの生成物および副生成物のかかる連続抽出により、有効速度、力価および収率が増加しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵培地からブタノールを回収するための方法であって、
a)ブタノール、水、および少なくとも1つの発酵性炭素源を含む発酵培地からブタノールを生産する遺伝子組換え微生物を含む発酵培地を備えるステップと、
b)発酵培地を、i)C12〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪アルデヒドおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1の水不混和性有機抽出剤、および場合により(ii)C12〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪アルデヒドおよびそれらの混合物からなる群から選択される第2の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成させるステップと、
c)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
d)ブタノールをブタノール含有有機相から回収して回収ブタノールを生産するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ブタノールはイソブタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機抽出剤は、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、1−ウンデカノール、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、ウンデカナール、ラウリンアルデヒド、2−メチルウンデカナールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
有機抽出剤は、オレイルアルコールを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ブタノールの一部は、
a)ブタノールを、発酵培地から気体と共にストリッピングし、ブタノール含有気相を形成させるステップと、
b)ブタノールをブタノール含有気相から回収するステップと、
を含むプロセスにより、発酵培地から同時に取り出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
回収ブタノールは、発酵培地の少なくとも約37g/Lの有効力価を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
発酵培地はエタノールをさらに含有し、かつブタノール含有有機相はエタノールを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ブタノールを生産するための方法であって、
a)少なくとも1つの発酵性炭素源を含む発酵培地からブタノールを生産する遺伝子組換え微生物を備えるステップと、
b)微生物を、水相と、C12〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪アルデヒド、およびそれらの混合物からなる群から選択される水不混和性有機抽出剤とを含む二相発酵培地中で増殖させるステップであって、ここで該二相発酵培地は、ブタノールの有機抽出剤への抽出を可能にしてブタノール含有有機相を形成させるのに十分な時間、前記水不混和性有機抽出剤の約3容量%〜約60容量%を含む、上記ステップと、
c)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
d)ブタノールをブタノール含有有機相から回収し、回収ブタノールを生産するステップと、
を含む、上記方法。
【請求項9】
ブタノールは、イソブタノールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
有機抽出剤は、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、1−ウンデカノール、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、ウンデカナール、ラウリンアルデヒド、2−メチルウンデカナールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
有機抽出剤は、オレイルアルコールを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ブタノールの一部は
a)ブタノールを、発酵培地から気体と共にストリッピングし、それによりブタノール含有気相を形成させるステップと、
b)ブタノールをブタノール含有気相から回収するステップと、
を含むプロセスにより、発酵培地から同時に取り出される、
請求項8に記載の方法。
【請求項13】
回収ブタノールは、水相の少なくとも約37g/Lの有効力価を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
発酵培地はエタノールをさらに含有し、かつブタノール含有有機相はエタノールを含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
ブタノールを生産するための方法であって、
a)少なくとも1つの発酵性炭素源を含む発酵培地からブタノールを生産する遺伝子組換え微生物を備えるステップと、
b)微生物を発酵培地中で増殖させるステップであって、ここで微生物は、ブタノールを発酵培地中に生産して、ブタノール含有発酵培地を生産する、上記ステップと、
c)ブタノール含有発酵培地を、i)C12〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪アルデヒドおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1の水不混和性有機抽出剤、および場合により(ii)C12〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪アルデヒドおよびそれらの混合物からなる群から選択される第2の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成させるステップと、
d)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
e)ブタノールをブタノール含有有機相から回収するステップと、
を含む、上記方法。
【請求項16】
ブタノールは、イソブタノールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ブタノールを生産するための方法であって、
a)少なくとも1つの発酵性炭素源を含む発酵培地からブタノールを生産する遺伝子組換え微生物を備えるステップと、
b)微生物を、好気的条件下で、予め選択された増殖レベルに達するのに十分な期間、発酵培地中で増殖させるステップと、
c)微好気的または嫌気的条件に切り替えて、発酵培地へのブタノール生産を刺激して、ブタノール含有発酵培地を形成させるステップと、
d)ブタノール含有発酵培地を、i)C12〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪アルデヒドおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1の水不混和性有機抽出剤、および場合により(ii)C12〜C22脂肪族アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪族アルデヒドおよびそれらの混合物からなる群から選択される第2の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成させるステップと、
e)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
f)ブタノールをブタノール含有有機相から回収するステップと、
を含む、上記方法。
【請求項18】
ブタノールは、イソブタノールである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ブタノールを生産するための方法であって、
a)ブタノール、水、および少なくとも1つの発酵性炭素源を含む発酵培地からブタノールを生産する遺伝子組換え微生物を含む発酵培地を備えるステップと、
b)発酵培地を、並流または向流の抽出剤流れを介して、i)C12〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪アルデヒドおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1の水不混和性有機抽出剤、および場合により(ii)C12〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪酸のエステル、C12〜C22脂肪アルデヒドおよびそれらの混合物からなる群から選択される第2の水不混和性有機抽出剤と接触させ、水相およびブタノール含有有機相を含む二相混合物を形成させるステップと、
c)ブタノール含有有機相を水相から分離するステップと、
d)ブタノールをブタノール含有有機相から回収し、回収ブタノールを生産するステップと、
を含む、上記方法。
【請求項20】
ブタノールは、イソブタノールである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
遺伝子組換え微生物は、細菌、シアノバクテリア、糸状真菌および酵母からなる群から選択される、請求項1、8、15、17および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
細菌は、ザイモモナス、エシェリキア、サルモネラ、ロドコッカス、シュードモナス、バチルス、乳酸桿菌、腸球菌、ペディオコッカス、アルカリゲネス、クレブシエラ、パエニバチルス、アルスロバクター、コリネバクテリウムおよびブレビバクテリウムからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
酵母は、ピキア、カンジダ、ハンゼヌラおよびサッカロミセスからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−522543(P2011−522543A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512654(P2011−512654)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/046278
【国際公開番号】WO2009/149270
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(310011310)ビュータマックス・アドバンスド・バイオフューエルズ・エルエルシー (24)
【Fターム(参考)】