説明

二色性色素組成物

【課題】液晶性を有し、高い二色性を有する色素組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるアゾ色素の少なくとも一種を含有し、液晶性を有する、二色性色素組成物。


(式中、R1、R2、R3、R4、X1およびX2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A1は置換基を有していてもよい、フェニル基、ナフチル基または芳香族複素環基を表し、B1は置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基または2価の芳香族複素環基を表し、nは1〜5の整数を表す。ただし、B1の少なくとも1つはアルキル基を有するフェニレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色性色素組成物に関する。また、本発明は、該組成物を用いた光吸収異方性膜、偏光素子および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光や自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能、遮光機能等が必要となった際には、従来は、それぞれの機能毎に異なった原理によって作動する装置を充当していた。それ故に、それら機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。
例えば、LCD(液晶素子)では表示における旋光性や複屈折性を制御するために直線偏光板や円偏光板が用いられている。OLED(有機エレクトロルミネッセンス素子)においても外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。従来、これらの偏光板(偏光素子)にはヨウ素が二色性物質として広く使用されてきた。しかしながら、ヨウ素は昇華性が大きいために偏光素子に使用した場合、その耐熱性や耐光性が十分ではなかった。また、その消光色が深い青になり、全可視スペクトル領域にわたって理想的な無彩色偏光素子とは言えなかった。
【0003】
そのため、有機系の色素を二色性物質に使用する偏光素子が検討されている。しかし、これら有機系の色素においてはヨウ素に比べると二色性がかなり劣る程度の偏光素子しか得られないなどの問題点があった。特に、光の旋光性や複屈折性を表示原理に用いているLCDにおいて偏光素子は重要な構成要素であり、近年、表示性能などの向上を目的に新たな偏光素子の開発が進められている。
【0004】
その一つの方法として、ヨウ素を含む偏光素子と同様に、二色性を有する有機色素(二色性色素)をポリビニルアルコールのような高分子材料に溶解または吸着させ、その膜を一方向にフィルム状に延伸して二色性色素を配向させる方法が挙げられている。しかしながら、該方法では延伸処理等のプロセスに手間がかかる等の問題点があった。
そこで、最近では他の方法が着目されるようになってきた。この方法として、非特許文献1では、ガラスや透明フィルムなどの基板上に有機色素分子の分子間相互作用などを利用して二色性色素を配向させ、偏光膜(異方性色素膜)を形成している。しかしながら、該文献に記載の方法では、耐熱性の問題があることが知られていた。
【0005】
また、上記ガラスや透明フィルムなどの基板上に有機色素分子の分子間相互作用などを利用して二色性色素を配向させることは湿式成膜法により達成される。このような湿式成膜法で異方性色素膜が作製される場合、この色素膜に使用される色素には、色素分子の高い二色性の他に、湿式成膜法のプロセスに適した色素であることが要求される。湿式成膜法におけるプロセスとしては、色素を基板上に堆積、配向させる方法やその配向を制御する方法などが挙げられる。従って、従来の上記延伸処理を経る偏光素子に使用され得る色素であっても、湿式成膜法には適していないことが多くある。特許文献1〜3では、上記プロセスに適した材料が提案されているが、これらの材料では該プロセスに適してはいても、高い二色性を示すことができないという問題点があった。
【0006】
また、該プロセスに適した材料として、特許文献4では、(クロモゲン)(SOM)nで表される色素が提案されている。しかしながら、該文献では、数種類の二色性色素を組み合わせて無彩色を表しているが、この様に数種類の二色性色素を組み合わせて異方性色素膜を得た場合、異なる分子を混合するため分子配向が乱れてしまい、高い二色性を得ることは困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dreyer,J.F.,Journal de Physique,1969,4,114.,”Light Polarization From Films of Lyotropic Nematic Liquid Crystals”
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−180052号公報
【特許文献2】特表2002−528758号公報
【特許文献3】特開2002−338838号公報
【特許文献4】特表平8−511109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、液晶性を有し、高い二色性を有する色素組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、該組成物を用いた光吸収異方性膜、偏光素子および液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題の解決は下記の手段により達成された。
<1>下記一般式(I)で表されるアゾ色素の少なくとも一種を含有し、液晶性を有する、二色性色素組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1、R2、R3、R4、X1およびX2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A1は置換基を有していてもよい、フェニル基、ナフチル基または芳香族複素環基を表し、B1は置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基または2価の芳香族複素環基を表し、nは1〜5の整数を表す。ただし、B1の少なくとも1つはアルキル基を有するフェニレン基を表す。)
<2>前記一般式(I)で表されるアゾ色素において、Aが置換基を有していてもよいフェニル基を表し、B1が置換基を有していてもよい2価のフェニレン基を表し、nが2〜4の整数を表すことを特徴とする、前記<1>項記載の二色性色素組成物。
<3>前記一般式(I)で表されるアゾ色素が、下記一般式(II)で表されることを特徴とする、前記<1>または<2>項記載の二色性色素組成物。
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R5、R6およびR7はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R8、R9、R10およびR11はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、またはウレイド基を表し、mは1〜3の整数を表す。)
<4>前記二色性色素組成物が、下記一般式(III)で表されるフルオロ脂肪族基含有化合物、又は、一般式(IV)もしくは一般式(V)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位及び一般式(VI)で表されるアミド基含有モノマーの重合単位を少なくとも一種含むポリマー、の少なくとも一種を含むことを特徴とする、前記<1>〜<3>のいずれか1項記載の二色性色素組成物。
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、R11、R22及びR33は各々独立に、末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基を表し、X11、X22及びX33は各々独立に、−NH−、−O−又は−S−を表し、m11、m22及びm33は各々独立に、1〜3の整数を表す。]
【0017】
【化4】

【0018】
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、L1は2価の連結基を表し、m1は1以上18以下の整数を表す。]
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、R2は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、L2は2価の連結基を表し、n1は1以上18以下の整数を表す。]
【0021】
【化6】

【0022】
[式中、R3は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基又は炭素数1〜20のヘテロ環基を表す。また、R10とR11は互いに連結して複素環を形成してもよい。]
<5>前記<1>〜<4>のいずれか1項記載の二色性色素組成物から形成された光吸収異方性膜。
<6>前記アゾ色素が、チルト角が0〜5°で配向していることを特徴とする、前記<5>項記載の光吸収異方性膜。
<7>支持体上に、配向膜と前記<5>又は<6>項記載の光吸収異方性膜を有する偏光素子。
<8>前記<5>又は<6>記載の光吸収異方性膜または前記<7>項記載の偏光素子を有する液晶表示装置。
<9>(1)支持体、または該支持体上に形成された配向膜をラビング処理する工程と、(2)ラビング処理した支持体または配向膜上に、有機溶媒に溶解した前記<1>〜<4>のいずれか1項記載の二色性色素組成物を塗布する工程と、(3)前記有機溶媒を蒸発させることにより前記二色性色素組成物を配向させる工程を含む前記<7>項記載の偏光素子の製造方法。
なお、上記<6>で規定する本発明の光吸収異方性膜におけるアゾ色素のチルト角は、支持体(基板)平面とアゾ色素分子長軸のなす角度であって、支持体もしくは配向膜側での角度である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、液晶性を有し、高い二色性を有する色素組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該組成物を用いた光吸収異方性膜、偏光素子および液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の二色性色素組成物は、液晶性を有しており、下記一般式(I)で表されるアゾ色素の少なくとも一種を含有することを特徴とする。本発明において、「二色性色素」とは、方向によって吸収波長が異なる色素を意味する。また、「二色性」は、二色性色素組成物を光吸収異方性膜としたときの、偏光軸方向の偏光の吸光度に対する、吸収軸方向の偏光の吸光度の比で計算される。
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、R1〜R4、X1およびX2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A1は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、B1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基または2価の芳香族複素環基を表し、nは1〜5の整数を表す。ただし、B1の少なくとも一つはアルキル基を有するフェニレン基を表す。)
【0027】
以下、一般式(I)で表されるアゾ色素について詳細に説明する。
上記一般式(I)において、R1〜R4、X1およびX2で表される置換基としては以下の基を挙げることができる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,5−ジトリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0028】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは2〜6であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは2〜6であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0029】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0030】
1〜R4で表される基としては、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子である。XおよびXで表される基としては、特に好ましくは水素原子、アルキル基であり、最も好ましくはアルキル基である。
【0031】
1は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
該フェニル基または該ナフチル基が有していてもよい置換基としては、アゾ化合物の溶解性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基、または配向を固定化するために導入される重合性基を有する基が好ましく、具体的には、前記R〜R、XおよびXで表される置換基が挙げられる。好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0032】
アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12である。該アルキル基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0033】
該アルキル基に置換していてもよい基としては、重合性基であることも好ましい。重合性基としては特に限定されないが、重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、重合性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な重合性基であることが好ましい。
以下に重合性基の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0034】
【化8】

【0035】
重合性基としては、ラジカル重合またはカチオン重合する重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、(メタ)アクリレート基が好ましい。カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。なかでも脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましい。
【0036】
アルケニル基は、好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12である。該アルケニル基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0037】
アルキニル基は、好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12である。該アルキニル基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0038】
アリール基は、好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12である。該アリール基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0039】
アルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12である。該アルコキシ基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0040】
アルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12である。該アルコキシカルボニル基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0041】
アシルオキシ基は、好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12である。該アシルオキシ基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0042】
アミノ基は、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは1〜12である。該アミノ基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0043】
アシルアミノ基は、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは1〜12である。該アシルアミノ基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0044】
アルコキシカルボニルアミノ基は、好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12である。該アルコキシカルボニルアミノ基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0045】
スルホニルアミノ基は、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12である。該スルホニルアミノ基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0046】
スルファモイル基は、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12である。該スルファモイル基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0047】
カルバモイル基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0048】
アルキルチオ基は、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12である。該アルキルチオ基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0049】
スルホニル基は、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12である。該スルホニル基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0050】
ウレイド基は、好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12である。該ウレイド基に置換していてもよい基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0051】
該フェニル基または該ナフチル基は、これら置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは1〜2個有していることである。
【0052】
芳香族複素環基としては、単環または二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノロニル基、ナフタルイミドイル基、下式の複素環由来の基などが挙げられる。
【0053】
【化9】

【0054】
式中、R12〜R16は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該置換基としては、前記アルキル基に置換していてもよい基としてあげた基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0055】
芳香族複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、またはフタルイミドイル基が好ましい。
【0056】
1は、特に好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0057】
1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基または2価の芳香族複素環基を表す。ただし、n個のBの少なくとも一つはアルキル基を有するフェニレン基を表す。ここでいう、アルキル基とは好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。特に好ましくはメチル基、エチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0058】
1で表される芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基が好ましい。該芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、およびシアノ基等が挙げられる。なお、該置換基を有していてもよいアルキル基、該置換基を有していてもよいアルコキシ基、該置換基を有していてもよいアミノ基、および該置換基を有していてもよいアシルアミノ基の好ましい炭素数、有していてもよい置換基の例は、前記Aがフェニル基またはナフチル基の場合に記載したものと同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0059】
1で表される芳香族複素環基としては、単環または二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられるが、窒素原子が特に好ましい。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジンジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、ベンゾチアジアゾールジイル基、フタルイミドジイル基等が挙げられる。中でも、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基が好ましい。
該芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、無置換あるいはメチルアミノ基等のアミノ基、アセチルアミノ基、アシルアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0060】
1は、特に好ましくは、置換基を有していてもよい2価のフェニレン基である。
【0061】
nは、1〜5の整数を表し、好ましくは2〜4の整数を表す。
【0062】
前記一般式(I)で表されるアゾ色素のうち、特に好ましいものは、下記一般式(II)で表されるアゾ色素である。
以下、一般式(II)で表されるアゾ色素について説明する。
【0063】
【化10】

【0064】
式中、R5〜R7は、それぞれ独立にアルキル基を表し、R8〜R11は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Y1は置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、またはウレイド基を表し、mは1〜3の整数を表す。
【0065】
5〜R7で表されるアルキル基は、前記一般式(I)におけるX1およびX2として説明したアルキル基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。R5〜R7で表されるアルキル基は、特に好ましくはメチル基、エチル基である。Rで表されるアルキル基は、最も好ましくはメチル基である。
【0066】
8〜R11で表される置換基は、前記一般式(I)におけるB1で表される基の置換基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0067】
前記一般式(II)において、最も好ましくは、R5、R6はメチル基又はエチル基であり、R7はメチル基であり、R8〜R11は水素原子であり、Y1は炭素数1〜8のアルキル基であり、mは1である。
【0068】
1で表される置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、またはウレイド基は、前記一般式(I)におけるA1で表される基の置換基であるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、またはウレイド基に同義であり、その好ましい範囲も同一である。Yは、好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、またはスルホニル基であり、特に好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、またはアルキルチオ基であり、最も好ましくは、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基である。
【0069】
以下に一般式(I)で表されるアゾ色素の具体例を挙げるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0070】
【化11】

【0071】
【化12】

【0072】
【化13】

【0073】
【化14】

【0074】
【化15】

【0075】
【化16】

【0076】
【化17】

【0077】
【化18】

【0078】
【化19】

【0079】
本発明における前記一般式(I)または(II)で表されるアゾ色素は、Journal of Materials Chemistry(1999),9(11),2755−2763等に記載の方法に準じて容易に合成することができる。
【0080】
前記一般式(I)または(II)で表されるアゾ色素は、その分子構造から明らかなように、分子形状が平板で直線性がよく、剛直なコア部分と柔軟な側鎖部分を有しており、且つアゾ色素の分子長軸末端に極性なアミノ基を有するため、液晶性、特にネマチック液晶性を発現しやすい性質を有している。さらに、分子の平面性が高いため強い分子間相互作用が働き、分子同士が会合状態を形成しやすい性質も有している。
【0081】
本発明に係る前記一般式(I)または(II)で表されるアゾ色素を含有する二色性色素組成物は、会合形成により可視の広い波長領域において高い吸光度を表すということだけでなく、この色素を含有した組成物がネマチック液晶性を有するため、例えば、ラビングした配向膜表面への塗布などの積層プロセスを経ることによって、高次の分子配向状態を実現できる。したがって、本発明に係る前記一般式(I)または(II)で表されるアゾ色素を含有する二色性色素組成物を光吸収異方性膜として使用すれば、偏光特性の高い偏光素子を作製することができる。
【0082】
本発明において、前記一般式(I)または(II)で表されるアゾ色素は単独で用いても良いし、或いは二種以上を併用しても良い。或いはまた本発明に係わるアゾ色素とこれら以外の色素化合物と併用しても良い。これらの例としては、本発明で使用される以外のアゾ系色素、シアニン系色素、アゾ金属錯体、フタロシアニン系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、スクワリリウム系色素、ナフトキノン系色素、トリフェニルメタン系色素、及びトリアリルメタン系色素等を挙げることが出来る。
【0083】
本発明の光吸収異方性膜は、二色性色素を主成分として形成されており、本発明の二色性色素組成物における、二色性色素の含有量は70質量%以上であり、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上が最も好ましい。
また、前記一般式(I)または(II)で表されるアゾ色素の含有量は、前記二色性色素の50質量%以上が好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
さらに、本発明の二色性色素組成物における前記一般式(I)または(II)で表されるアゾ色素の含有量は特に制限されないが、70質量%以上が好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
【0084】
[光吸収異方性膜の添加剤]
本発明の二色性色素組成物には、前記の二色性色素の他に、任意の添加剤を併用することができる。添加剤の例としては、風ムラ防止剤、ハジキ防止剤、配向膜のチルト角(光吸収異方性膜/配向膜界面での二色性色素の傾斜角)を制御するための添加剤、空気界面のチルト角(光吸収異方性膜/空気界面での二色性色素の傾斜角)を制御するための添加剤、重合開始剤、配向温度を低下させる添加剤(可塑剤)、重合性モノマー、有機イオン、無機イオン(多価金属塩)、糖類、防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤等である。本発明を、後述するIn-Cell型偏光子に適用する場合、高い電圧保持率を得るために、イオンを含有しないことが好ましい。以下、各添加剤について説明する。
【0085】
[風ムラ防止剤]
二色性色素とともに使用して、塗布時の風ムラを防止するための材料としては、一般にフッ素系ポリマーを好適に用いることができる。使用するフッ素系ポリマーとしては、二色性色素のチルト角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。風ムラ防止剤として使用可能なフッ素ポリマーの例としては、特開2004−198511号公報、特開2004−333852号公報、特開2005−179636号公報、特開2005−206638号公報に記載がある。二色性色素とフッ素系ポリマーとを併用することによって、ムラを生じることなく表示品位の高い画像を表示することができる。さらに、ハジキなどの塗布性も改善される。二色性色素の配向を阻害しないように、風ムラ防止目的で使用されるフッ素系ポリマーの添加量は、二色性色素に対して一般に0.1〜2質量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜1質量%の範囲にあるのがより好ましく、0.4〜1質量%の範囲にあるのがさらに好ましい。
【0086】
[ハジキ防止剤]
二色性色素の塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。使用するポリマーとしては、二色性色素と相溶性を有し、二色性色素のチルト角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。ハジキ防止剤として使用可能なポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。二色性色素の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、二色性色素組成物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあるのがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあるのがさらに好ましい。
【0087】
[配向膜チルト角制御剤]
配向膜のチルト角を制御する添加剤として、分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物を添加することができる。分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物としては、PO−OH、PO−COOH、PO−O−PO、PO−NH、PO−NH−PO、PO−SH、PO−S−PO、PO−CO−PO、PO−COO−PO、PO−CONH−PO、PO−CONHCO−PO、PO−SOH、PO−SO−PO、PO−SONH−PO、PO−SONHSO−PO、PO−C=N−PO、HO−P(−OPO、(HO−)PO−OPO、P(−OPO、HO−PO(−OPO、(HO−)PO−OPO、PO(−OPO、PO−NOおよびPO−CNならびにこれらの有機塩が好ましい例として挙げられる。ここで、有機塩としては、上記化合物の有機塩(例えば、アンモニウム塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等)の他、ピリジニウム塩等も好ましく採用することができる。前記分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物の中でも、PO−OH、PO−COOH、PO−O−PO、PO−NH、PO−SOH、HO−PO(−OPO、(HO−)PO−OPO、PO(−OPOもしくはこれらの有機塩が好ましい。ここで、上記各POは非極性基を表し、POが複数ある場合は、それぞれのPOは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0088】
Oとしては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキニル基)、アリール基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基)が例として挙げられる。これらの非極性基はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が好ましい例として挙げられる。
【0089】
本発明では、二色性色素組成物塗布液等に配向膜チルト制御剤を添加し、配向膜チルト制御剤の存在下で二色性色素を配向させることで、配向膜側界面における二色性色素のチルト角を調整することができる。配向膜チルト角制御剤の添加量は、一般的には、二色性色素の質量に対して0.0001質量%〜30質量%であるのが好ましく、0.001質量%〜20質量%であるのがより好ましく、0.005質量%〜10質量%であるのがさらに好ましい。本発明では、特開2006−58801号公報に記載の配向膜チルト制御剤を使用することができる。
【0090】
[重合開始剤]
二色性色素の配向状態を固定して光吸収異方性膜を形成するのが好ましく、重合反応を利用して二色性色素を固定するのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例、光重合開始剤の使用量、および重合のための光照射エネルギーの値の各々は特開2001−91741号公報の段落[0050]〜[0051]の記載が本発明に適用できる。
【0091】
[重合性モノマー]
二色性色素とともに重合性モノマーを使用してもよい。本発明に使用可能な重合性モノマーとしては、二色性色素と相溶性を有し、二色性色素のチルト角変化や配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、二色性色素に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0092】
[多価金属塩]
欠陥や剥離の観点からは以下に記載の無機イオン(多価金属塩)を入れても差し支えないが、入れない方が電圧保持率の観点からは好ましい。
多価金属塩としては、水溶性の塩であれば制限されない。例としては、塩化塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機塩、シュウ酸塩、酢酸塩等の有機塩が挙げられ、対金属としては、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マンガン、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛等が挙げられる。中でも、塩化塩、硫酸塩等が好ましく、対金属としては銅、カルシウムが好ましい。これらの塩は、水和物等により水分を含んでいても良い。好ましい塩としては、対金属の安全性(毒性)などから、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化鉄、硫酸鉄、塩化銅、硫酸銅、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化カルシウム、硫化カルシウムなどが挙げられ、更に好ましくは、塩化バリウム、塩化銅、塩化ストロンチウム、塩化鉄、塩化カルシウム、硫化カルシウムが挙げられる。
【0093】
これらの多価金属塩は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の組成物中における、色素に対する多価金属塩の含有量は、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0094】
なお、多価金属塩を二種以上選択する場合には、上述の好ましい多価金属塩の中でも、銅塩とカルシウム塩とを選択することが好ましい。
【0095】
またこのとき、銅塩に対するカルシウム塩の配合割合は、通常10質量%以上、好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。カルシウム塩の配合割合が高すぎると塗布膜表面のみが不溶化する可能性があり、低すぎると塗布膜がひび割れしやすくなる可能性があるためである。
【0096】
[糖類]
本発明の組成物に糖類を添加してもよい。糖類を添加することで色素会合体の会合度を向上させ、その結果として色素の分子配向を高めることができる。
【0097】
糖類としては、単糖、二糖、多糖、及び糖アルコール類などの糖の誘導体が挙げられる。糖類の中でも、本発明の効果を奏するにあたり、分子会合性の点から、水酸基が通常2以上、好ましくは3以上で、好ましくは18以下、更に好ましくは12以下であるものが良い。水酸基が多過ぎると色素との相互作用が強すぎて析出して色素膜の配向性を損ねてしまうので好ましくなく、少な過ぎると色素との相互作用が不十分であり配向性を向上させることができないので好ましくない。
【0098】
糖類の分子量としては、1,000以下が好ましく、更に好ましくは700以下である。糖類の分子量が大きすぎると色素と相分離してしまい、色素膜の配向性を損ねてしまうおそれがあり好ましくない。
【0099】
糖類の炭素数としては、通常36以下、好ましくは24以下である。糖類の炭素数が多過ぎると、糖類の分子量が大きくなることにより、色素と相分離してしまい、色素膜の配向性を損ねてしまうおそれがあり好ましくない。
【0100】
本発明において用いる糖類は、中でも、単糖、オリゴ糖、単糖アルコールが、前述の最適な水酸基数、分子量範囲を満たすので好ましい。
【0101】
単糖としては、例えばキシロース、リボース、グルコース、フルクトース、マンノース、ソルボース、ガラクトースなどが挙げられる。
【0102】
オリゴ糖としては、例えばトレハロース、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、スクロース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノース、パノース、イソパノース、セロトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオース、メレジトース、プランテオース、ゲンチアノース、ウンベリフェロース、ラフィノース、スタキオースなどが挙げられる。
【0103】
糖アルコールとしては、例えばトレイトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトールなど前述の単糖及びオリゴ糖を還元した化合物が挙げられる。
【0104】
糖類としては、特に好ましくはキシロース、マンノース、マルトース、マルトトリオース、アラビトールが挙げられる。
【0105】
なお、これらの糖類、糖アルコール類は各々光学異性体が存在するが、本発明の組成物中にはそれぞれを単独で用いても良く、両方を含んでいても良い。また、糖類は、本発明の組成物中に、1種が単独で用いられていても良く、2種以上が組み合せて用いられていても良い。
【0106】
本発明の組成物中における、色素に対する糖類の含有量は、質量比で0.1以上、1以下の範囲であることが好ましい。更に好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.6以下である。糖類の含有量がこの上限を超えると、会合体の配向度が低下するおそれがあり好ましくなく、下限を下回ると、色素会合体の会合度を上げるには不十分であるおそれがあり好ましくない。
【0107】
[防黴剤、抗菌剤及び殺菌剤]
本発明の組成物に防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤を添加してもよい。これらの添加剤を添加することにより、組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0108】
本発明で言う防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤とは、カビの発生・生育・増殖を抑制する防黴能、微生物を死滅される殺菌能、微生物の発生・生育・増殖を抑制する抗菌能の少なくともいずれかの機能を有する薬剤であればいずれでもよく、公知の防黴剤、殺菌剤、抗菌剤が使用できる。ただし、本発明の組成物を用いて作成した異方性膜の光学特性を低下させないものであることが好ましい。本発明に用いられる防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤としては、例えば、従来の2,4,4′−トリクロロ−2′−ヒドロキシジフェニルなどのフェノール系、二酸化塩素などの塩素系、ヨウ素などのヨウ素系、塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム塩系等が挙げられる。
【0109】
また、1,2−benzisothiazoline−3−oneを有効成分とするものとして、Proxel BDN、Proxel BD20、Proxel GXL、Proxel LV、Proxel XL、Proxel XL2、Proxel Ultra10(以上、Avecia社製、商品名)、polyhexametylene biguanide hydrochlorideを有効成分とするものとして、Proxel IB、(Avecia社製、商品名)、Dithio−2,2’−bis(benzmethylamide)を有効成分とするものとしてDensil P(Avecia社製、商品名)等も挙げられる。
また、下記式(11)で表される化合物も有効であり、特に極微量で抗菌効果を示すことから特に好ましい。
【0110】
【化20】

【0111】
(式中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を表す。R121およびR122は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。)
Xで示されるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、該アルキル基は置換基を有するアルキル基であるのが好ましい。該アルキル基の置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、フェニルアミノ基、ハロフェニルアミノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、モルフォリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、カルバモイルオキシ基、もしくはイソチアゾロニル基が挙げられる。又、該ハロゲン原子及び該ハロフェニル基におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が、該アルコキシ基及び該アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜6の直鎖状あるいは分岐鎖状のアルコキシ基が、アリールオキシ基のアリール基としては、フェニル基あるいはメチル基、エチル基等の低級アルキル基で置換されたフェニル基が、夫々好ましい。
Xで示されるシクロアルキル基としては、炭素数5〜7のシクロアルキル基が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基が好ましい。又、シクロアルキル基の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
Xで示される芳香族炭化水素環基としては、フェニル基が好ましく、芳香族炭化水素環基は置換基を有するのが好ましい。芳香族炭化水素環基の置換基としては、ニトロ基、アルキル基またはアルコキシカルボニル基が好ましい。該アルキル基としては、低級アルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基が特に好ましい。又、該アルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基が好ましい。
【0112】
Xで示される基は、上記の中でも、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基又はモルフォリノ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基;又はハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基で置換された芳香族炭化水素環基であることが好ましい。
【0113】
121およびR122は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表すが、ハロゲン原子としては塩素原子又は臭素原子が好ましく、アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。中でも、R121は、水素原子またはハロゲン原子であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。又、R122は、ハロゲン原子であることが好ましい。
【0114】
尚、本発明においては、置換基を有していてもよいとは、置換基を1以上有していてもよいことを意味する。又、アルキル基及び置換基のアルキル基に相当する部分の炭素数が3以上の場合、直鎖状あるいは分岐鎖状のいずれでも良い。
前記式(11)で表される化合物の代表的具体例を以下に示す。
【0115】
No. 化合物名
1. 2−クロロメチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
2. 2−シアノメチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
3. 2−ヒドロキシメチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
4. 2−(3−メチルシクロヘキシル)−3−イソチアゾロン
5. 2−(4−クロロフェニル)−4,5−ジクロロ−3−イソチアゾロン
6. 2−(4−エチルフェニル)−3−イソチアゾロン
7. 2−(4−ニトロフェニル)−5−クロロ−3−イソチアゾロン
8. 2−クロロメチル−3−イソチアゾロン
9. 2−メトキシフェニル−4−メチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
10. 2−モルフォリノメチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
これらの化合物は、例えば特開平2−278号公報等を参考に合成することが可能であるが、商品名:トリバクトラン(ヘキスト社製)等の市販品を利用することも可能である。
【0116】
また、本発明の防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤は、これを単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤の二色性色素組成物中の含有量は特に限定されないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.001質量%以上であり、一方、通常0.5質量%以下、好ましくは0.3質量%以下である。防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤の含有量が少なすぎると、二色性色素組成物が充分な防黴、抗菌または殺菌効果を有さず、含有量が多すぎると二色性色素組成物中で薬剤が析出したり、異方性色素膜を成膜した際に相分離が生じる恐れがあるため、点欠陥や光散乱などの光学的欠陥を生じさせる恐れがある。
【0117】
本発明の光吸収異方性膜が高い二色比を有するために、本発明の二色性色素組成物に電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物及び電子リッチである(Electron-Rich)化合物を含有させることが好ましい。本発明において、電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物及び電子リッチである(Electron-Rich)化合物としては、例えば、特開2006−323377号公報に記載のものを用いることができる。
【0118】
本発明の組成物における電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物の割合は、組成物全体を100質量部とした場合に、通常0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、また、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下の範囲である。前記化合物の割合が少なすぎると、電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物の使用による効果が得られないおそれがあり、多すぎると、組成物の溶液としての粘度が高くなってしまい、扱いにくくなるおそれがあるので好ましくない。
【0119】
本発明の組成物における電子リッチである(Electron-Rich)化合物の割合は、組成物全体を100質量部とした場合に、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下の範囲である。多すぎると、得られる組成物の溶液の粘度が高くなってしまい、扱いにくくなるおそれがあるので好ましくない。
【0120】
また、電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物と電子リッチである(Electron-Rich)化合物との質量分率は、通常10/90〜90/10の範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物又は電子リッチである(Electron-Rich)化合物の使用による効果が得られないおそれがあるため好ましくない。
【0121】
[塗布溶剤]
本発明の光吸収異方性膜は、本発明の二色性色素組成物の塗布液を用いて形成するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0122】
[塗布方式]
二色性色素組成物塗布液の配向膜表面への塗布は、通常の方法(例えば、ワイヤバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法)により実施できる。また、二色性色素組成物塗布液における二色性色素組成物の含有量は1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0123】
本発明の光吸収異方性膜は、湿式成膜法により形成することが好ましい。本発明における光吸収異方性膜の作製には、本発明の二色性色素組成物を調製後、ガラス板などの各種基材に塗布し、色素を配向、積層して得る方法など公知の方法が採用される。
具体的に、湿式成膜法としては、原崎勇次著「コーティング工学」株式会社朝倉書店、1971年3月20日発行、253頁から277頁や市村國宏監修「分子協調材料の創製と応用」株式会社シーエムシー出版、1998年3月3日発行、118頁から149頁などに記載の公知の方法や、例えば、あらかじめ配向処理を施した基材上に、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、フリースパンコート法、ダイコート法、インクジェット法などで塗布することが挙げられる。
【0124】
塗布時の温度は、好ましくは0℃以上、80℃以下、湿度は好ましくは10%RH以上、80%RH以下程度である。
【0125】
このような方法で製造された光吸収異方性膜は機械的強度が低い場合もあるので、必要に応じ、保護層を設けて使用する。この保護層は、例えば、トリアセテート、アクリル、ポリエステル、ポリイミド、トリアセチルセルロース又はウレタン系のフィルム等の透明な高分子膜によりラミネーションして形成され、実用に供する。
【0126】
また、本発明の光吸収異方性膜をLCDやOLEDなどの各種の表示素子に偏光フィルター等として用いる場合には、これらの表示素子を構成する電極基板などに直接色素膜を形成したり、色素膜を形成した基材をこれら表示素子の構成部材に用いることができる。
【0127】
本発明において、一方向に配向処理された基材上に、前記基材上の配向処理方向に対して平行でない角度で本発明の二色性色素組成物を塗布して、光吸収性異方性膜を形成することができる。さらに、基材の縦または横方向と略一致する方向に本発明の二色性色素組成物を塗布することがより好ましい。これにより、光学的な欠陥がなく高い二色比を持つ光吸収異方性膜を提供することもできる。また、二色性色素組成物の塗布後、必要な偏光角度を持たせるために基材を切り出す必要がなく、生産性が高い。
前記の、本発明の二色性色素組成物の好ましい塗布方法については、例えば、特開2007−127897号公報等に記載されている。
【0128】
本発明において、二色性色素組成物塗布液を配向膜表面へ塗布して光吸収異方性膜を形成した後、該異方性膜を減圧処理して有機溶媒を蒸発させ、乾燥させることができる。これにより、高い二色比を持つ光吸収異方性膜を提供することができる。
【0129】
ここでいう減圧処理とは、光吸収異方性膜を減圧条件下におくことを言う。このとき、光吸収異方性膜を有する基材は高部から底部に流れないよう、水平にしておくことが好ましい。
塗布後、光吸収異方性膜の減圧処理を始めるまでの時間は、短ければ短いほどよく、好ましくは1秒以上30秒以内である。
減圧処理の方法としては、例えば以下の様な方法が挙げられる。塗布液を基材上に塗布し得られた光吸収異方性膜を、減圧処理装置に入れて減圧処理する。例えば特開2006−201759号公報の図9や図10のような減圧処理装置を使用することができる。減圧処理装置の詳細については、特開2004−169975号公報に記載されている。
【0130】
減圧処理の条件としては、色素膜の存在する系内の圧力が、好ましくは2×10Pa以下、さらに好ましくは1×10Pa以下、特に好ましくは1×10Pa以下である。また、好ましくは1Pa以上、更に好ましくは1×10Pa以上である。通常、系内が最終的に到達する圧力が前記の通りであることが好ましい。高すぎると乾燥できず配向が乱れる恐れがあり、低すぎると乾燥が急速過ぎて欠陥が発生する恐れがある。
また、減圧処理時間は、好ましくは5秒以上180秒以内である。長すぎると配向緩和前に急速に色素膜を乾燥できず配向が乱れる恐れがあり、短すぎると乾燥できず配向が乱れる恐れがある。
【0131】
また、減圧処理する際の系内の温度は、好ましくは10℃以上60℃以下である。高すぎると乾燥時に対流が起こり塗布膜に不均一性の発生の恐れがあり、低すぎると乾燥できず配向が乱れる恐れがある。
また、湿式製膜法で色素膜を塗布するときには、基材を加温してもよいし冷却してもよい。このときの基材の温度は、好ましくは10℃以上60℃以下である。高すぎると減圧乾燥を行う前に配向が乱れて乾燥する恐れがあり、低すぎると基材表面に水滴が付き塗布の障害になる恐れがある。湿式製膜法により塗布した色素膜を減圧乾燥するときに基材の加温を行ってもよい。このときの基材の温度は、好ましくは60℃以下である。高すぎると減圧乾燥を行う前に配向が乱れて乾燥する恐れがある。
【0132】
[光吸収異方性膜の特性]
光吸収異方性膜の厚さは、0.01〜2μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましく、0.05〜0.5μmであることが最も好ましい。
【0133】
本発明の二色性色素組成物塗布液を配向膜上に適用すると、二色性色素は配向膜との界面では配向膜のチルト角で配向し、空気との界面では空気界面のチルト角で配向する。本発明の二色性色素組成物塗布液を配向膜の表面に塗布後、二色性色素を均一配向(モノドメイン配向)させることで、水平配向を実現することができる。
二色性色素を水平配向させ、且つその配向状態に固定することによって形成された光吸収異方性膜は、偏光素子として利用することができる。
【0134】
本発明に用いられる水平配向剤は、好ましくは、(1)下記一般式(III)で表されるフルオロ脂肪族基含有化合物;又は、(2)一般式(IV)もしくは一般式(V)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位及び一般式(VI)で表されるアミド基含有モノマーの重合単位からなる群から選択される少なくとも一種の重合単位を含むポリマー;である。
【0135】
【化21】

【0136】
[式中、R11、R22及びR33は各々独立に、末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基を表し、X11、X22及びX33は各々独立に、−NH−、−O−又は−S−を表し、m11、m22及びm33は各々独立に、1〜3の整数を表す。]
【0137】
【化22】

【0138】
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、L1は2価の連結基を表し、m1は1以上18以下の整数を表す。]
【0139】
【化23】

【0140】
[式中、R2は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、L2は2価の連結基を表し、n1は1以上18以下の整数を表す。]
【0141】
【化24】

【0142】
[式中、R3は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基又は炭素数1〜20のヘテロ環基を表す。また、R10とR11は互いに連結して複素環を形成してもよい。]
【0143】
まず、一般式(III)にて表される化合物について説明する。
11、R22及びR33で各々表される置換基は、末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数4〜20であり、さらに好ましくは炭素数4〜16であり、特に好ましくは6〜16である。前記末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基は、アルコキシ基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルコキシ基である。アルコキシ基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。以下に、R11、R22及びR33で表される末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基の例を示す。
【0144】
R1:n−C817−O−
R2:n−C613−O−
R3:n−C49−O−
R4:n−C817−(CH22−O−(CH22−O−
R5:n−C613−(CH22−O−(CH22−O−
R6:n−C49−(CH22−O−(CH22−O−
R7:n−C817−(CH23−O−
R8:n−C613−(CH23−O−
R9:n−C49−(CH23−O−
R10:H−(CF28−O−
R11:H−(CF26−O−
R12:H−(CF24−O−
R13:H−(CF28−(CH2)−O−
R14:H−(CF26−(CH2)−O−
R15:H−(CF24−(CH2)−O−
R16:H−(CF28−(CH2)−O−(CH22−O−
R17:H−(CF26−(CH2)−O−(CH22−O−
R18:H−(CF24−(CH2)−O−(CH22−O−
【0145】
一般式(III)中、X11、X22及びX33はそれぞれ、好ましくは−NH−又は−O−を表し、最も好ましくは−NH−を表す。m11、m22及びm33はそれぞれ、好ましくは2である。
【0146】
前記一般式(III)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0147】
【化25】

【0148】
次に、一般式(IV)又は一般式(V)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位について説明する。
【0149】
【化26】

【0150】
【化27】

【0151】
前記一般式(IV)中、R1は、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子又はメチル基がより好ましい。L1は2価の連結基を表し、m1は1以上18以下の整数を表し、2〜12がより好ましく、4〜8が更に好ましく、4又は6であることが最も好ましい。
【0152】
前記一般式(V)中、R2は、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子又はメチル基がより好ましい。L2は2価の連結基を表し、n1は1以上18以下の整数を表し、2〜12がより好ましく、4〜8が更に好ましく、4又は6であることが最も好ましい。
【0153】
次に2価の連結基を表すL1及びL2について説明する。L1及びL2はそれぞれ独立に2価の置換基であれば限定はないが、下記一般式(VII)で表される構造であることがより好ましい。ここで(a)は二重結合側に結合する位置、(b)はフルオロ脂肪族基側に結合する位置を各々示す。
【0154】
一般式(VII)
(a)−X10−R20−(b)
一般式(VII)中、X10は単結合、又は*−COO−**、*−COS−**、*−OCO−**、*−CON(R21)−**、*−O−**で示される2価の連結基を表す。ここで*は二重結合側に結合する位置、**はR20に結合する位置を各々示す。
20は、置換基を有していてもよいポリメチレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基など)、置換基を有していてもよいフェニレン基(例えばo−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基など)、及びそれらの任意の組み合わせにより形成できる基を表す。中ではポリメチレン基がより好ましく、ポリメチレン基の中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、及びテトラメチレン基が好ましく、メチレン基及びエチレン基が更に好ましい。
21は、水素原子又は炭素数1〜8の置換基を有してもよいアルキル基、あるは炭素数6〜20の置換基を有してもよいアリール基を表し、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。
【0155】
前記一般式(IV)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーは、下記一般式(VIII)で表されるモノマーであることがより好ましい。
【0156】
【化28】

【0157】
一般式(VIII)中、X1は−O−、−S−又は−N(R222)−で表される二価基を表し、pは1〜8の整数を表す。X1は−O−又は−N(R222)−であることがより好ましく、−O−であることが最も好ましい。pは1〜6がより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。R1及びm1は、前記一般式(IV)で説明したそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R222は水素原子又は炭素数1〜8の置換基を有してもよいアルキル基、又は炭素数6〜20の置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0158】
前記一般式(V)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの中でも、下記一般式(IX)で表されるモノマーが好ましい。
【0159】
【化29】

【0160】
一般式(IX)中、X2は−O−、−S−又は−N(R222)−で表される置換基を表し、qは1〜8の整数を表す。X2は−O−又は−N(R222)−であることがより好ましく、−O−であることが最も好ましい。pは1〜6がより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。R2及びn1は、前記一般式(V)で説明したそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R222は一般式(VIII)で説明したものと同義である。
次に、一般式(VI)で表されるアミド基含有モノマーの重合単位について説明する。
【0161】
【化30】

【0162】
一般式(VI)中、R3は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子又はメチル基がより好ましい。R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基又は炭素数1〜20のヘテロ環基を表し、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。また、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜15の芳香族基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12の芳香族基であることがさらに好ましい。また、R10とR11が互いに連結して複素環を形成してもよく、形成されるヘテロ環の種類としては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などが挙げられる。
【0163】
本発明の水平配向剤に用いるポリマーは、フルオロ脂肪族基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれかを重合単位として含んでいればよいが、好ましくは、フルオロ脂肪族基含有モノマー及びアミド基含有モノマーの両方を重合単位として含むものである。該ポリマーにはそれぞれのモノマーは重合単位として2種以上含まれていてもよく、また、それ以外に共重合可能な他のモノマーを一種以上重合単位として含む共重合体であってもよい。このような共重合可能な他の種類のモノマーとしては、Polymer Handbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience(1975)Chapter 2 Page1〜483記載のものを用いることができる。例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0164】
本発明に用いられるポリマーの好ましい質量平均分子量は、2000〜100,000であり、より好ましくは3000〜80,000であり、さらに好ましくは4,000〜60,000である。ここで、質量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0165】
以下、本発明に使用可能なポリマーの具体的な構造の例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。なお式中の数字は各モノマー成分の質量比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0166】
【化31】

【0167】
【化32】

【0168】
【化33】

【0169】
【化34】

【0170】
【化35】

【0171】
【化36】

【0172】
【化37】

【0173】
そのほか、特開2005−99248号公報、特開2005−134884号公報、特開2006−126768号公報、特開2006−267183号公報記載の水平配向剤を選択してもよい。
【0174】
本発明においては、前記水平配向剤を1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。前記水平配向剤の添加量は、二色性色素の添加量に対して0.01質量%〜2質量%であるのが好ましく、0.05質量%〜1質量%であることがさらに好ましく、0.1質量%〜1質量%であることが特に好ましい。
【0175】
[チルト角]
本発明では、チルト角とは、二色性色素の分子の長軸方向と界面(配向膜界面あるいは空気界面)のなす角度を指す。配向膜側のチルト角を有る程度小さくし水平配向させることにより偏光素子として好ましい光学性能がより効果的に得られる。したがって、偏光性能の観点から、好ましい配向膜側のチルト角は0°〜10°、さらに好ましくは0°〜5°、特に好ましいのは0°〜2°、最も好ましくは0°〜1°である。また、好ましい空気界面側のチルト角は0°〜10°、さらに好ましくは0〜5°、特に好ましいのは0〜2°である。
本発明において二色性色素組成物が、一般式(III)で表されるフルオロ脂肪族基含有化合物、又は、一般式(IV)もしくは一般式(V)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位及び一般式(VI)で表されるアミド基含有モノマーの重合単位を少なくとも一種含むポリマー、の少なくとも一種を含むことにより、これを用いた光吸収異方性膜における配向膜側のチルト角を、例えば、2°以下に抑えることができる。
【0176】
[配向膜]
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。配向膜上に設けられる光吸収異方性膜の二色性色素に所望の配向を付与できるのであれば、配向膜としてはどのような層でもよいが、本発明においては、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点から、特にポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができるが、特に本発明では「液晶便覧」(丸善(株))に記載されている方法により行うことが好ましい。
配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
配向膜に用いられるポリマーは、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明における配向膜ではポリビニルアルコール及びその誘導体が好ましく用いられる。特に好ましくは、疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向膜についてはWO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行の記載を参照することができる。
なお、本発明において配向膜は支持体と同一であってもよい。
【0177】
[配向膜のラビング密度]
配向膜のラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善(株))に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
【0178】
式(A) L=Nl(1+2πrn/60v)
【0179】
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
【0180】
二色性色素の配向層としては、上記のラビングや光配向を行った膜だけでなく、小さな凸凹をつけた膜を用いることもできる。
【0181】
凹部形成領域には、様々な構造を採用することができる。例えば、凹部形成領域には、複数の溝を幅方向に等間隔で平行に並べた構造を採用することができる。
【0182】
これら溝は、互いに平行でなくてもよいが、これらの溝が平行に近いほど、液晶分子又はそれらのメソゲン基の長軸が揃い易くなる。これらの溝が為す角度は、例えば5°以下とし、典型的には3°以下とする。
【0183】
これら溝は、縦横に並べてもよい。また、溝の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。また、長さ方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。さらに、幅方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。また、凹部形成領域の各々には、互いに長さが等しい溝を縦横に並べてもよい。或いは、様々な長さの溝をランダムに並べてもよい。
【0184】
溝を略平行とし且つピッチを適宜設定することなどにより、これら溝で回折格子を構成することができる。
【0185】
凹部形成層は、例えば、感光性樹脂材料に、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法や、電子ビームによってパターンを描画する方法により形成することができる。或いは、表面レリーフ型ホログラムの製造で行われているように、微細な線状の凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、凹部形成層は、基材上に形成された熱可塑性樹脂層に、線状の凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、凹部形成層は、基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0186】
これらの方法によれば、1つの面内に溝の長さ方向が異なる複数の凹部形成領域を形成することができる。また、これらの方法によると、1つの面内に溝の深さ、幅、及び/又は溝などが異なる複数の凹部形成領域を形成することもできる。
【0187】
先の原版は、例えば、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法、電子ビームによってパターンを描画する方法、又はバイトによって切削する方法により得られた母型の電鋳を行うことにより得られる。凹部形成層に上記のような多様性をもたせない場合は、ラビング加工により溝を形成してもよい。
【0188】
これら溝の深さは、例えば、0.05μm乃至1μmの範囲とする。また、溝の長さは、例えば、0.5μm以上とする。溝のピッチは、例えば0.1μm以上であり、典型的には0.75μm以上である。又、溝のピッチは、例えば10μm以下であり、典型的には2μm以下である。液晶分子又はそのメソゲン基を高い秩序度で配向させるには、溝のピッチは小さいことが有利である。
【0189】
[支持体]
本発明に使用する支持体は透明であっても、着色等により不透明化した支持体であってもよいが、透明な支持体(透明支持体)であるのが好ましく、光透過率が80%以上であるのが好ましい。光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例および好ましい態様は、特開2002−22942号公報の段落番号[0013]の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開WO00/26705号公報に記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0190】
ポリマーフィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。特に酢化度が57.0〜62.0%であることが好ましい。酢化度、およびその範囲、並びにセルロースアセテートの化学構造は、特開2002−196146号公報の段落番号[0021]の記載を適用できる。セルロースアシレートフィルムを、非塩素系溶媒を用いて製造することについて、発明協会公開技報2001−1745号に詳しく記載されており、そこに記載されたセルロースアシレートフィルムも本発明に好ましく用いることができる。
【0191】
透明支持体として用いるセルロースエステルフィルムの厚み方向のレターデーション値、および複屈折率の範囲は、特開2002−139621号公報の段落番号[0018]〜[0019]の記載を適用できる。
【0192】
透明支持体として用いるポリマーフィルム、特にセルロースアシレートフィルムのレターデーションを調整するために、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することもできる。芳香族化合物の好ましい範囲、および使用量は、特開2002−139621号公報の段落番号[0021]〜[0023]の記載を適用できる。このようなレターデーション上昇剤については国際公開WO01/88574A1号公報、国際公開WO00/2619A1号公報、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、特開2002−363343号公報等に記載されている。
【0193】
セルロースアシレートフィルムは、調製されたセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。ドープには、前記のレターデーション上昇剤を添加することが好ましい。調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて、ドープの2層以上流延によるフィルム化もできる。フィルムの形成は、特開2002−139621号公報の段落番号[0038]〜[0040]の記載を適用できる。
【0194】
セルロースアシレートフィルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3〜100%の範囲にあることが好ましい。前記セルロースアシレートフィルムを延伸する場合には、テンター延伸が好ましく使用され、遅相軸を高精度に制御するために、左右のテンタークリップ速度、離脱タイミング等の差をできる限り小さくすることが好ましい。
【0195】
セルロースエステルフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するため、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特開2002−139621号公報の段落番号[0043]の態様、および好ましい範囲が本発明に適用できる。
【0196】
セルロースエステルフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開2002−139621号公報の段落番号[0044]の記載を適用できる。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0197】
セルロースアシレートフィルムの表面処理、および固体の表面エネルギーについては、特開2002−196146号公報の段落番号[0051]〜[0052]の記載を適用できる。
【0198】
セルロースアシレートフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲であり、さらに20〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範囲が特に好ましい。
【0199】
[光吸収異方性膜の用途]
本発明の光吸収異方性膜は、光吸収の異方性を利用し直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光膜として機能する他、膜形成プロセスと基材や色素を含有する組成物の選択により、屈折異方性や伝導異方性などの各種異方性膜として機能化が可能となり、様々な種類の、多様な用途に使用可能な偏光素子とすることができる。
本発明の偏光素子は、(1)支持体、または該支持体上に形成された配向膜をラビングする工程、(2)ラビング処理した支持体または配向膜上に、有機溶媒に溶解した本発明の二色性色素組成物を塗布する工程、および(3)前記有機溶媒を蒸発させることにより前記二色性色素組成物を配向させる工程、により製造することができる。前記(1)〜(3)の工程の詳細については、前述の通りである。
【0200】
本発明の光吸収異方性膜を基材上に形成し偏光素子として使用する場合、形成された光吸収異方性膜そのものを使用してもよく、また上記の様な保護層のほか、粘着層或いは反射防止層、配向膜、位相差フィルムとしての機能、輝度向上フィルムとしての機能、反射フィルムとしての機能、半透過反射フィルムとしての機能、拡散フィルムとしての機能、光学補償フィルムとしての機能などの光学機能をもつ層など、様々な機能をもつ層を湿式成膜法などにより積層形成し、積層体として使用してもよい。
これら光学機能を有する層は、例えば以下の様な方法により形成することが出来る。
【0201】
位相差フィルムとしての機能を有する層は、例えば、特許第2841377号公報、特許第3094113号公報などに記載の延伸処理を施したり、特許第3168850号公報などに記載された処理を施したりすることによって形成することができる。
【0202】
また、輝度向上フィルムとしての機能を有する層は、例えば特開2002−169025号公報や特開2003−29030号公報に記載されているような方法で微細孔を形成すること、或いは、選択反射の中心波長が異なる2層以上のコレステリック液晶層を重畳することにより形成することができる。
【0203】
反射フィルム又は半透過反射フィルムとしての機能を有する層は、蒸着やスパッタリングなどで得られた金属薄膜を用いて形成することができる。
拡散フィルムとしての機能を有する層は、上記の保護層に微粒子を含む樹脂溶液をコーティングすることにより、形成することができる。
また、位相差フィルムや光学補償フィルムとしての機能を有する層は、ディスコティック液晶性化合物などの液晶性化合物をコーティングして配向させることにより形成することができる。
【0204】
本発明の二色性色素組成物を塗布して形成することにより、In-Cell型偏光子を製造することができる。この場合、二色性色素組成物の電気伝導度及び/またはナトリウムイオン濃度の値を一定値以下に抑えることにより、アクティブ駆動に適した高い電圧保持率(電荷保持特性)を有するIn-Cell型偏光子を得ることができ、ひいては駆動性能、表示性能に優れた前記In-Cell型偏光子を用いた液晶素子を得ることができる。
【0205】
本発明において、二色性色素組成物の電気伝導度は25mS/cm以下が好ましく、10mS/cm以下がより好ましく、1mS/cm以下が更に好ましい。このような範囲とすることで、電圧保持率の高いIn-Cell型偏光子を得ることが可能となる。なお、通常0.2mS/cm以上である。上限を越えると極性不純物の溶解性が高くなり好ましくない。
【0206】
In-Cell型偏光子用組成物の電気伝導度は、2電極法(セル)又は4電極法(セル)による電導度メーターなどにより求められる。具体的には、日本工業規格(JIS)のK0101:1998「工業用水試験方法」で規定されている電気伝導率の測定方法に準じた各種方法により測定することが可能であるが、ガード電極による測定精度の向上の観点から2電極法(セル)よりも4電極法(セル)が、印加電圧(電極間に発生する電位差)により偏在すると予想されるキャリアー(イオンなど)の電極近傍での諸現象を排除する観点から直流(DC)印加よりも交流(AC)印加による測定が好ましい。
【0207】
本発明の二色性色素組成物は、上述のように、色素と、溶剤と、必要に応じて用いられる界面活性剤などの各種添加剤からなる混合物(溶液)である。この混合物を構成する各成分の化学種及び各成分に由来する不純物、特に極性成分やイオン性成分が、組成物の電気伝導度に寄与すると考えられ、これらの含有量を低減させることにより、電気伝導度を低減することが可能となると考えられる。
本発明の二色性色素組成物の電気伝導度を低減させる手法としては、例えば、特開2006−309185号公報に記載されており、本発明に適用することができる。
【0208】
本発明において、二色性色素組成物のナトリウムイオン濃度は2500ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。なお、その下限は通常10ppm以上である。高すぎると、液晶素子(液晶層)への溶出、更には電気特性への悪影響があり好ましくない。ナトリウムイオン濃度を上記範囲内にするための手法としては、例えば、不純物を低減させる手法として上に例示した各種の手法を用いることができる。
【0209】
二色性色素組成物のナトリウムイオン濃度は、組成物中に存在する特定イオンの濃度に応答して電極電位が変化するイオン選択性電極と比較電極とを併用することにより求めることができる。具体的には、日本工業規格(JIS)のK0101:1998「工業用水試験方法」で規定されているナトリウム(イオン)の測定方法に準じたフレーム光度法、フレーム原子吸光法、イオンクロマト法等各種方法により測定することが可能であるが、比較的高濃度のナトリウムイオン量を直接的に測定可能であることから、日本工業規格(JIS)のK0122:1998「イオン電極測定方法通則」で規定されている測定方法に準じたイオン電極測定法が好ましい。更に、バッファー液によるpHの調整が不要なイオン選択性電極を用いたイオンメーターを使用する方が、pHによる解離状態の変化を抑止することができるため好ましい。
【0210】
前記光学異方性膜は、塗布法によって、例えば、偏光板用保護フィルム等の表面に、直接形成してもよい。また、以下に説明する転写材料を用い転写して形成してもよい。即ち、本発明の液晶表示装置の製造方法の一例として、前記光学異方性膜からなる光学異方性層を、転写材料から転写して形成することを含む方法が挙げられる。転写材料を用いて光学異方性層を形成することにより、工程数を軽減して、簡易な方法で良好な表示特性の液晶表示装置を作製することができる。
【0211】
以下、前記光学異方性層を、液晶表示装置内に形成するのに有用な転写材料について説明する。
[転写材料]
本発明に使用可能な転写材料は、例えば、特開2007−279705公報の図3(a)に示されるように、支持体と、光学異方性層とを少なくとも有する。前記公報の図3(b)に示されるように、さらに、少なくとも一層の転写用接着層を有しているのが好ましい。転写用接着層としては、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感光性樹脂層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が好ましい。感光性樹脂層は、パターニング等の工程を経ない場合であっても、光学異方性層の転写を容易にし、有用である。また、例えば、前記公報の図3(c)に示す様に、支持体と光学異方性層との間には、転写時に相手基板側の凹凸を吸収するためのクッション性のような力学特性コントロールあるいは凹凸追従性付与のための層を有していてもよいし、また、前記公報の図3(d)に示す様に、光学異方性層中の二色性色素の配向を制御するための配向層として機能する層が配置されてもよいし、さらに前記公報の図3(e)に示す様に双方の層を有していてもよい。また、前記公報の図3(f)に示す様に、転写用接着層の表面保護などの目的から、最表面に剥離可能な保護層を設けてもよい。
【0212】
[支持体]
上記の転写材料に用いられる支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリスルホンが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステル及びノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0213】
[光学異方性層]
転写材料が有する光学異方性層は、偏光性能に充分な光学特性を満足している必要はなく、例えば、転写される過程において実施される露光工程を通じて、偏光性能が発現又は変化して、最終的に偏光フィルムに必要な偏光性能を示すものであってもよい。
【0214】
[転写用接着層]
転写材料は転写接着層を有することが好ましい。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、下記の感光性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板等に用いられる場合に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が好ましい。
【0215】
粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0216】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0217】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0218】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0219】
[感光性樹脂層]
前記転写材料は、感光性樹脂層を有しているのが好ましい。前記感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、前記感光性樹脂層は、少なくとも(1)アルカリ可溶性樹脂と、(2)モノマー又はオリゴマーと、(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系と、を含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。
【0220】
(1)アルカリ可溶性樹脂
前記アルカリ可溶性樹脂(以下、単に「バインダ」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は20〜50質量%が一般的であり、25〜45質量%が好ましい。
【0221】
(2)モノマー又はオリゴマー
前記感光性樹脂層に使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0222】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよく、感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0223】
(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系
前記感光性樹脂層に使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0224】
[その他の層]
転写材料の、支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために熱可塑性樹脂層を形成することが好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル及びそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0225】
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、及び塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜を用いることが好ましく、この場合、露光時感度がアップし、露光機の時間負荷が減り、生産性が向上する。該酸素遮断膜としては、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものが好ましく、公知のものの中から適宜選択することができる。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせである。
【0226】
前記熱可塑性樹脂層や前記中間層を、前記配向層と兼用することもできる。特に前記中間層に好ましく用いられるポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンは配向層としても有効であり、中間層と配向層を1層にすることが好ましい。
【0227】
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護する為に薄い保護フィルムを設けることが好ましい。保護フィルムは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、樹脂層から容易に分離されねばならない。保護フィルム材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0228】
光学異方性層及び感光性樹脂層、及び所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層及び中間層の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0229】
[転写材料を用いた光学異方性層の形成方法]
本発明でいう転写材料を基板上に転写する方法については特に制限されず、基板上に上記光学異方性層及び感光性樹脂層を同時に転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した本発明でいう転写材料を、感光性樹脂層面を基板表面側にして、ラミネータを用いて加熱及び/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータ及びラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。その後、支持体は剥離してもよく、剥離によって露出した光学異方性層表面に、他の層、例えば電極層等を形成してもよい。
【0230】
転写材料を転写する被転写材料である基板については、特に制限されない。例えば、透明基板が用いられ、表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、或いは、プラスチックフィルム等を挙げることができる。被転写材料はまた透明支持体上にベタの光学異方性層等の層が設けられたものであってもよい。また、被転写材料は、予めカップリング処理を施しておくことにより、感光性樹脂層との密着を良好にすることができる。該カップリング処理としては、特開2000−39033号公報記載の方法が好適に用いられる。尚、特に限定されるわけではないが、基板の膜厚としては、700〜1200μmが一般的に好ましい。
光学異方性層の上に粘着層を設けるのではなく、被転写材料の上に粘着層を設けておいてもよい。
【実施例】
【0231】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下の実施例中、光吸収異方性膜の光学特性に関する測定は下記の通り実施した。
【0232】
<二色比>
二色比は、ヨウ素系偏光素子を入射光学系に配した分光光度計で光吸収異方性膜の吸光度を測定した後、次式により計算した。
二色比(D)=Az/Ay
Az:光吸収異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay:光吸収異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
【0233】
(実施例1)
クロロホルム98質量部にアゾ色素No.(A−16)を2質量部加え、撹拌溶解後濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。次に、ガラス基板上に形成しラビングした配向膜上に、前記塗布液を塗布し、この後、室温でクロロホルム自然乾燥した。配向膜としては、ポリイミド(日産化学社製SE−150)を使用した。
【0234】
得られた光吸収異方性膜における色素膜面内の吸収軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Az)、および色素膜面内の偏光軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Ay)とから求めた二色比(D)、極大吸収波長(λmax)、および相転移温度を表1に示す。組成物は、ネマチック液晶性を有しており、且つ偏光膜として充分機能し得る高い二色比(光吸収異方性)を有していた。
【0235】
(実施例2)
アゾ色素をNo.(A−38)、(A−46)、(A−52)、(A−53)、(A−55)に変更した以外、実施例1と同様に光吸収異方性膜を作製した。
得られた光吸収異方性膜の二色比(D)、極大吸収波長(λmax)、および相転移温度を表1に示す。組成物は、ネマチック液晶性を有しており、且つ偏光膜として充分機能し得る高い二色比(光吸収異方性)を有していた。(例えばA−53のサンプルについて、二色比が4.0であれば配向秩序度は0.5であり、通常のネマチック液晶と同等の秩序度を有している。)
【0236】
(実施例3)
クロロホルム97.84質量部にアゾ色素No.(A−38)を2質量部および重合開始剤としてIragacure OXE−01(Ciba Speciality Chemicals 社製)を0.16質量部加え、撹拌溶解後濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。このものを実施例1と同様の条件で塗布し、自然乾燥した後、2Jの紫外線を照射して配向状態を固定化した。得られた光吸収異方性膜の二色比(D)、極大吸収波長(λmax)、および相転移温度を表1に示す。組成物は、ネマチック液晶性を有しており、得られた異方性色素膜は偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有する異方性色素膜であった。
【0237】
(比較例1)
アゾ色素を特開平11−305036号公報記載のアゾ色素No.(6)に変更した以外、実施例1と同様に光吸収異方性膜を作製した。
得られた光吸収異方性膜の二色比(D)、極大吸収波長(λmax)、および相転移温度を表1に示す。組成物は、ネマチック液晶性を有していたが、配向膜上で結晶化がおこり、異方性を示さなかった。
【0238】
【表1】

【0239】
【化38】

【0240】
(実施例4)
アゾ色素をNo.(A−47)、(A−57)に変更した以外、実施例1と同様に光吸収異方性膜を作製した。得られた光吸収異方性膜の二色比(D)、極大吸収波長(λmax)、相転移温度、およびチルト角(β)を表2に示す。なお、チルト角(β)は分子長軸と基板平面との成す角であり、AxoScan(商品名、Axometrics社製)において、波長λnmの光をフィルム等のサンプルに入射させて測定される。βは、AxoScanにより判断される面内の遅相軸及び進相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して法線方向から両側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させておのおのの回転軸ごとに11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にAxoScanが算出する。本明細書において特に記載が無い場合はβは波長644nmの光を用いて測定したものである。
【0241】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、液晶データベースLiqCryst(LCI Publisher GmbH)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。
また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。
【0242】
(実施例5)
クロロホルム97.988質量部にアゾ色素No.(A−47)を2質量部および水平配向剤No.(I−6)を0.012質量部加え、撹拌溶解後濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。このものを実施例1と同様の条件で塗布し、乾燥した。得られた光吸収異方性膜の二色比(D)、極大吸収波長(λmax)、相転移温度、およびチルト角(β)を表2に示す。
実施例4及び実施例5の結果から、組成物は、ネマチック液晶性を有しており、且つ偏光膜として充分機能し得る高い二色比(光吸収異方性)を有していることが判る。さらに、二色性色素と、前記一般式(III)で表されるフルオロ脂肪族基含有化合物を含有する組成物から形成された光吸収異方性膜は、二色性色素が実質的に水平配向しているため、二色比が大きい偏光膜を実現できる。
【0243】
(実施例6)
アゾ色素をNo.(A−57)、水平配向剤をNo.(P−13)に変更した以外、実施例5と同様に光吸収異方性膜を作製した。得られた光吸収異方性膜の二色比(D)、極大吸収波長(λmax)、相転移温度、およびチルト角(β)を表2に示す。
実施例4及び実施例6の結果から、組成物は、ネマチック液晶性を有しており、且つ偏光膜として充分機能し得る高い二色比(光吸収異方性)を有していることが判る。さらに、二色性色素と、前記一般式(V)及び(VI)で表わされるモノマーの重合単位を含むポリマーを含有する組成物から形成された光吸収異方性膜は、二色性色素が実質的に水平配向しているため、二色比が大きい偏光膜を実現できる。
【0244】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるアゾ色素の少なくとも一種を含有し、液晶性を有する、二色性色素組成物。
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4、X1およびXはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A1は置換基を有していてもよい、フェニル基、ナフチル基または芳香族複素環基を表し、B1は置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基または2価の芳香族複素環基を表し、nは1〜5の整数を表す。ただし、B1の少なくとも1つはアルキル基を有するフェニレン基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表されるアゾ色素において、A1が置換基を有していてもよいフェニル基を表し、B1が置換基を有していてもよい2価のフェニレン基を表し、nが2〜4の整数を表すことを特徴とする、請求項1記載の二色性色素組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)で表されるアゾ色素が、下記一般式(II)で表されることを特徴とする、請求項1または2記載の二色性色素組成物。
【化2】

(式中、R5、R6およびR7はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R8、R9、R10およびR11はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Y1は置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、またはウレイド基を表し、mは1〜3の整数を表す。)
【請求項4】
前記二色性色素組成物が、下記一般式(III)で表されるフルオロ脂肪族基含有化合物、又は、一般式(IV)もしくは一般式(V)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位及び一般式(VI)で表されるアミド基含有モノマーの重合単位を少なくとも一種含むポリマー、の少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二色性色素組成物。
【化3】

[式中、R11、R22及びR33は各々独立に、末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基を表し、X11、X22及びX33は各々独立に、−NH−、−O−又は−S−を表し、m11、m22及びm33は各々独立に、1〜3の整数を表す。]
【化4】

[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、L1は2価の連結基を表し、m1は1以上18以下の整数を表す。]
【化5】

[式中、R2は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、L2は2価の連結基を表し、n1は1以上18以下の整数を表す。]
【化6】

[式中、R3は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R10及びR11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基又は炭素数1〜20のヘテロ環基を表す。また、R10とR11は互いに連結して複素環を形成してもよい。]
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の二色性色素組成物から形成された光吸収異方性膜。
【請求項6】
前記アゾ色素が、チルト角が0〜5°で配向していることを特徴とする、請求項5記載の光吸収異方性膜。
【請求項7】
支持体上に、配向膜と請求項5又は6記載の光吸収異方性膜を有する偏光素子。
【請求項8】
請求項5又は6記載の光吸収異方性膜または請求項7記載の偏光素子を有する液晶表示装置。
【請求項9】
(1)支持体、または該支持体上に形成された配向膜をラビング処理する工程と、(2)ラビング処理した支持体または配向膜上に、有機溶媒に溶解した請求項1〜4のいずれか記載の二色性色素組成物を塗布する工程と、(3)前記有機溶媒を蒸発させることにより前記二色性色素組成物を配向させる工程を含む請求項7に記載の偏光素子の製造方法。

【公開番号】特開2009−263649(P2009−263649A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79838(P2009−79838)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】