説明

二軸押出機の脱水方法及び装置

【目的】 本発明は、押出機の脱水方法及び装置に関し、特に、スクリュウにより搬送される含水原料の物性の違いに拘わらず、脱水を容易にかつ効率良く行うことを特徴とする。
【構成】 本発明による押出機の脱水方法及び装置においては、シリンダー(1)のニーディングディスク(6)下流部に作動自在に設けられた調整バルブ(12)にてシリンダー(1)内の内部圧力を調整して脱水スリット(4)から排水する構成である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、二軸押出機の脱水方法及び装置に関し、特に、スクリュウにより搬送される含水原料の物性の違いに拘わらず、脱水を容易にかつ効率良く行うための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、用いられていたこの種の押出機の脱水装置としては、一般に、図3で示す構成が採用されている。すなわち、図3において符号1で示されるものは筒型をなし複数のバレル2を直列接続すると共に脱水スリット4をその胴1cに有するシリンダーであり、このシリンダー1内の内腔1aには、輸送部スクリュウ5、混練部スクリュウとしてのニーディングディスク6及びシールリング7等からなるスクリュウ10が回転自在に設けられている。このシールリング7は、その円形外周により含水原料の流動断面積を他のスクリュウ部より小さくしている。
【0003】従って、前述の構成において、上流側から輸送された含水原料(図示せず)は、シールリング7によりせきとめられ、内部圧力を高めることにより含有水分が絞り出され、シリンダー1の脱水スリット4から排水していた。また、1台の押出機の複数個所で同様の脱水を行っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の押出機の脱水装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、脱水処理する含水原料は、その物性の違いにより脱水効果が異なるので、効率良く脱水するためには物性の変化に対応してシールリングの形状すなわちシリンダ内腔壁とシールリング外周とのすき間(流動断面積)の大きさを変更する必要がある。従って、前述の従来構成においては、所定形状のシールリングがスクリュウセグメントに組込み固定されているため、シールリングを交換しようとする場合、スクリュウセグメントを分解して交換をしなければならず、その作業に要する手間と時間は極めて多大であり、この種の二軸押出機の造粒作業において最大の課題となっていた。
【0005】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、スクリュウにより搬送される含水原料の脱水を容易かつ効率良く行うようにした二軸押出機の脱水方法及び装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による二軸押出機の脱水方法は、脱水スリットを備えたシリンダー内に設けた輸送部スクリュウ及びニーディングディスクを有するスクリュウを介して含水原料を搬送・混練し、前記脱水スリットにて脱水するようにした二軸押出機の脱水方法において、前記シリンダーのニーディングディスク下流部に作動自在に設けられた調整バルブにて含水原料の流動断面積を調整する方法である。
【0007】本発明による二軸押出機の脱水装置は、一箇所又は複数箇所に脱水スリットを備えたシリンダー内に設けた一組又は複数組の輸送部スクリュウ及びニーディングディスクを有するスクリュウを介して含水原料を搬送・混練し、前記脱水スリットにて脱水するようにした二軸押出機において、前記シリンダーの一箇所又は複数箇所のニーディングディスク下流部に断面が円形の円形スクリュウ部を設け、この円形スクリュウ部に一対のゲート板を有する調整バルブを設けた構成である。
【0008】さらに詳細には、前記シリンダーに調整ねじを有する支持体を備え、前記調整ねじにて前記調整バルブの開度を調整する構成である。
【0009】
【作用】本発明による二軸押出機の脱水方法及び装置においては、シリンダーに設けられた調整バルブの開度を、あらかじめ得られたデータに基づいて含水原料の物性に合わせて他のスクリュウ部より小さい流動断面積に調整する。すなわちスクリュウとバレル間の流動断面積を最適なものに調整することができる。シリンダー内を搬送・混練されながら流動する含水原料は、調整バルブにより流動抵抗が大きくなって部分的にせき止められ、内部圧力を高めることにより含有水分が絞り出され、絞り出された水分が脱水スリットから排出される。また、次に、前回と異なる物性の含水原料を脱水する場合、その物性に合わせた開度に調整バルブを再調整するだけで、従来のようにスクリュウセグメントを分解して交換することなく、シリンダーの内部圧力を調整して自在に最適な脱水を達成することができる。
【0010】
【実施例】以下、図面と共に本発明による二軸押出機の脱水方法及び装置の好適な実施例について詳細に説明する。なお、従来例と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。図1及び図2は、本発明による二軸押出機の脱水装置を示すもので、図1は断面図、図2は図1の要部の横断面図である。
【0011】図1において符号1で示されるものは筒型をなし複数のバレル2を直列接続すると共に脱水スリット4をその胴1cに有するシリンダーであり、このシリンダー1内の内腔1aには、輸送部スクリュウ5及びその下流の混練部スクリュウとしてのニーディングディスク6を構成の一部とする一対のスクリュウ10(図面では一本のみ示す)が水平方向に平行して回転自在に設けられている。
【0012】前記スクリュウ10のニーディングディスク6の下流側には、前記輸送部スクリュウ5の外径よりも小径に構成されたスペーサリングからなる円形スクリュウ部11が設けられており、この円形スクリュウ部11に対応する位置のシリンダー1には、図2で示す構成の調整バルブ12が設けられている。
【0013】前記調整バルブ12に設けられた一対のゲート板20、21はシリンダー1の溝1bを介して上下方向Aに移動自在に設けられ、これらのゲート板20,21は、前記シリンダー1に設けられたコの字型をなす一対の枠体14に回転自在に設けられた調整ねじ15の先端がこれらの各ゲート板20,21に当接していることにより、前述の上下方向Aに沿って移動できるように構成されている。
【0014】前記各ゲート板20,21には、前記円形スクリュウ部11の外周に対応して半円部12a,13aが形成され、この円形スクリュウ部11と各半円部12a,13a間の開度は、前記各調整ねじ15を矢印B,Cの方向に回転することにより自在に調整できるように構成されている。
【0015】次に、前述の構成において、上流側から含水原料(図示せず)が搬送されると、輸送部スクリュウ5およびニーディングディスク6とこのニーディングディスク6後の調整バルブ12とが一組となってシリンダー1内における内部圧力を高めることにより含有水分が絞り出され、絞り出された水分が脱水スリット4から排水される。なお、脱水スリット4、調整バルブ12におよび輸送部スクリュウ5、ニーディングディスク6、円形スクリュウ部11からなるスクリュウを複数個所設け、前述の脱水動作を複数回繰返すような構造とすることも可能である。
【0016】また、前記シリンダー1で脱水される含水原料の種類が変更された場合、その含水原料の物性に合致するあらかじめ得られたデータに基づいて、調整バルブ12の各ゲート板20,21の開度を調整ねじ15により調整することにより、従来のようにスクリュウセグメントの交換をすることなく、シリンダー1内の内部圧力の調整を自在に行うことができ、脱水スリット4を介して脱水を効果的に行うことができる。更には、運転中に脱水状態を観察しながらゲート板20,21の開度を調整することも可能である。
【0017】
【発明の効果】本発明による押出機の脱水方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、開度を自在に調整できる調整バルブがシリンダーに設けられているため、脱水処理する含水原料の物性に応じてシリンダーの内部圧力を自在に調整することができ、従来のスクリュウセグメントの交換作業に比べると、その作業は比較できないほど単純化され、押出作業の作業時間を大幅に短縮化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による押出機の脱水装置を示す断面図である。
【図2】図1の要部の横断面図である。
【図3】従来の押出機の脱水装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダー
4 脱水スリット
5 輸送部スクリュウ
6 ニーディングディスク
10 スクリュウ
11 円形スクリュウ部
12 調整バルブ
14 支持体
15 調整ねじ
20,21 ゲート板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 脱水スリット(4)を備えたシリンダー(1)内に設けた輸送部スクリュウ(5)及びニーディングディスク(6)を有するスクリュウ(10)を介して含水原料を搬送・混練し、前記脱水スリット(4)にて脱水するようにした二軸押出機の脱水方法において、前記シリンダー(1)のニーディングディスク(6)下流部に作動自在に設けられた調整バルブ(12)にて含水原料の流動断面積を調整することを特徴とする二軸押出機の脱水方法。
【請求項2】 一箇所又は複数箇所に脱水スリット(4)を備えたシリンダー(1)内に設けた一組又は複数組の輸送部スクリュウ(5)及びニーディングディスク(6)を有するスクリュウ(10)を介して含水原料を搬送・混練し、前記脱水スリット(4)にて脱水するようにした二軸押出機において、前記シリンダー(1)の一箇所又は複数箇所のニーディングディスク(6)下流部に断面が円形の円形スクリュウ部(11)を設け、この円形スクリュウ部(11)に一対のゲート板(20,21)を有する調整バルブ(12)を設けたことを特徴とする二軸押出機の脱水装置。
【請求項3】前記シリンダー(1)に調整ねじ(15)を有する支持体(14)を備え、前記調整ねじ(15)にて前記調整バルブ(12)の開度を調整する構成であることを特徴とする請求項2記載の二軸押出機の脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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