説明

二輪車両用駐車スタンド

【課題】長さの調節が容易な車両駐車スタンドを提供すること。
【解決手段】この駐車スタンドは、第1の部材および第2の部材を具備している。第1の部材は、第1の部材軸と、軸方向に傾斜した第1の係合縁部とを有している。第2の部材は、第1の部材軸を中心に回転可能であり、同じ軸方向に傾斜した第2の係合縁部を有している。この第2の係合縁部が、第1の係合縁部に当接係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車両用駐車スタンド、より詳細には、伸長式駐車スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車やオートバイなどの二輪車両では、停める際にその車両を支持する手段として駐車スタンド、すなわちキックスタンドをよく使用する。こうした既知の駐車スタンドは通常、一端が車両フレームに回動自在に装着された細長い部材を含む。この細長い部材は通常、車両を停めるときに地面に接触させる自由端を有する。車両に乗っている間、その駐車スタンドは通常、車両の走行を邪魔しないように、またその車両が自転車の場合にはペダルの回転を邪魔しないように、車両フレームと平行に固定される。車両を停める際は、駐車スタンドの自由端を駐車位置方向に下向きに回動させ、地面に係合させる。その自由端は、駐車位置にくると、通常、車両フレームから間隔をおいて位置し、これにより、駐車スタンドとフレームとの間に十分な方向角度をとって、車両の重量を支持すると同時に、自転車の転倒を防止するようになっている。
【0003】
自転車に乗る際、駐車スタンドを駐車位置にしたままで自転車を前後に押したい状況がよくある。駐車位置のままにしておくには、駐車スタンドが、駐車位置にあってもペダルの回転軌道を邪魔することが決してないようにすることが望ましい。そうでなければ、車輪が回転するとペダルも回転するため、一方のペダルが駐車スタンドに当たり、乗り手が自転車をそれ以上進ませられなくなってしまう。
【特許文献1】特開2004−338641号公報
【特許文献2】特開2004−284502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の駐車スタンドの多くは、長さが固定されている。しかし、その駐車スタンドの長さは、車両を停める際に車両の支持に必要であっても、車両を走行する間は長すぎる場合がある。これまで伸長式駐車スタンドも開発されてきたが、そのスタンド長さを乗り手が手で調節しなければならないものが多かった。こうした伸長式は、乗り手が調節している間、車両を乗り手が支えなければならに場合に特に、調節が難しくなりかねない。したがって、こうした課題に対処する駐車スタンドが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の第1の態様によれば、駐車スタンドが得られる。この駐車スタンドは、第1の部材軸を有する第1の部材と、第1の部材に操作接続され第1の部材軸を中心に回転可能である非ネジ式第2の部材とを備え、第2の部材を第1の部材軸を中心に回転させると、第2の部材が、第1の部材に対して軸方向に移動する。好適な一実施形態において、第2の部材は、第1の部材から間隔をおいて、第1の部材軸から突出して位置する支持部分を具備する。別の好適な実施形態において、第2の部材は、第1の部材に対してその軸方向に付勢される。
【0006】
本発明の別の態様によれば、第1の部材軸を含む駐車スタンドが得られる。この第1の部材は、その軸方向に傾斜した第1の係合縁部を有する。この駐車スタンドはさらに、その軸方向に傾斜した第2の係合縁部を有する。第2の部材は、第1の部材軸を中心に回転可能であり、第2の係合縁部は、第1の係合縁部と当接係合する。
【0007】
好適な一実施形態において、第1の係合縁部は第2の係合縁部に当接係合し、これにより、第2の部材が第1の部材軸を中心に回転すると、第2の部材が第1の部材に対して軸方向に移動するようになっている。別の好適な実施形態において、第1の部材および第2の部材のうち一方がボスを有し、第1の部材および第2の部材のうち他方が、軸方向に傾斜するスロットを有し、このボスがスロットに係合する。他の好適な実施形態において、駐車スタンドに折畳み位置と伸長位置とがあり、スロットが、その折畳み位置を決定する第1の端部と、伸長位置を決定する第2の端部とを有する。
【0008】
別の好適な実施形態において、第1の部材および第2の部材はそれぞれ、内面と外面とを有し、第1の部材および第2の部材のうち一方が有する外面からボスが突出し、第1の部材および第2の部材のうち他方が有する内面内にスロットが形成されている。
【0009】
さらに別の好適な実施形態において、第2の部材は、第1の部材から間隔をおいて位置する支持部分を有し、この支持部分は、第1の部材軸から外向きに突出している。さらに別の好適な実施形態では、第2の部材が回転すると、ボスがスロットに沿って移動する。
【0010】
他の好適な実施形態において、ボスを有する部材がさらに、外面および口部を有し、そのボスが、外面から離れる方向に口部を介して付勢される。別の好適な実施形態では、スロットの第1の端部に第1の端部口部が設けられており、折畳み位置において、この第1の端部口部を介してボスが突出する。別の好適な実施形態では、スロットの第2の端部に第2の端部口部が設けられており、伸長位置において、この第2の端部口部を介してボスが突出する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、第1の部材および第2の部材を含む駐車スタンドが得られる。第1の部材および第2の部材のうち一方が、その他方に対して回転自在となっている。この第1の部材は、第1の部材軸を有し、さらに、その軸方向に傾斜する第1の部材スロットを有する。第2の部材は、第2の部材ボスを有する。この第2の部材ボスが第1の部材スロットに係合され、これにより、第1の部材および第2の部材のうち一方が第1の部材軸を中心に回転すると、その回転した部材が、第1の部材および第2の部材のうち他方に対して軸方向に移動する。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明では、その長さが調節可能な駐車スタンドが得られる。また、そのスタンド長さを乗り手が手で調節する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1を参照すると、本発明の第1の好適な実施形態を例示するため、駐車スタンドを備えたフレーム10を有する自転車が図示されている。フレーム10は、ペダル(図示せず)を伴うクランク12を具備している。乗り手は、クランク12を、クランク軸14を中心に回転させてこの自転車を走行させる。クランク12が回転すると、チェーンおよびスプロケットアセンブリ(図示せず)または他の既知の手段を介して、自転車の後輪が回転する。
【0014】
この自転車の駐車および保管を容易にするため、駐車スタンド20が設けられている。図1に示す駐車スタンドは、さまざまな種類の車両に使用可能であり、自転車やオートバイなどの二輪車両での使用に特に適している。
【0015】
駐車スタンド20は、好ましくは、アルミニウムまたはスチールなどの既知の材料で製造されている。また、駐車スタンド20は、好ましくは、ピボット式装着に適する他の既知であるデバイスにより、第1の端部45にてピボットブラケット24に回動自在に装着され、ピボットブラケット24はフレーム10に固定されている。図1は、乗車位置140および駐車位置160の2種類の位置にある駐車スタンド20を示している。乗車位置140では、駐車スタンド20は、フレーム10および隣接フレーム部材11に実質的に平行となり、地面係合面69aを備えた自由端を地面から離して位置付けられる。これに対して駐車位置160では、駐車スタンド20は、隣接フレーム部材11に対して実質的に垂直となる。駐車スタンド20を乗車位置140から駐車位置160に動かすには、乗り手が、駐車スタンドがピボット軸26を中心に回動するだけの十分な時計回り(図1に示す自転車側部から駐車スタンドを見て時計回り)方向の回転力を駐車スタンド20に与える。
【0016】
駐車スタンド20は、折畳み位置100および伸長位置120を有するように設計されている。この実施形態によると、駐車スタンド20は2種類のスタンド長に調節可能であり、短いほうのスタンド長が折畳み位置100であり、長いほうのスタンド長が伸長位置120である。以下でさらに説明するように、この実施形態の駐車スタンド20は、駐車スタンド20の一部を回転式調節により、折畳み位置100と伸長位置120との間で調節できるようになっている。
【0017】
図1を参照すると、駐車スタンド20は、細長い円筒部分23と、横方向に突出した部分67とを有する。駐車スタンド20はさらに、ピボットブラケット24に向けて近位に位置する近位部材40と、ピボットブラケット24から遠位に位置する遠位部材60とを含む。
【0018】
図1に示すように、近位部材40は、長手方向軸43を有し、細長く、一部が円筒形となった部材である。また、近位部材40は、軸方向に傾斜する縁部42を有しており、この縁部42は、第1の端部45から距離をおいて位置している。第1の端部45から最長距離にある縁部部分が地点42aであり、第1の端部45から最短距離にある縁部部分が地点42bである。
【0019】
遠位部材60の第1の端部61は、円筒部分63上に位置する。近位部材40は、中空で、かつ遠位部材60の一部分63a(図2に透視図として図示)を収容できる寸法の内側スペース41を有している。より好ましくは、内側スペース41内に配置された遠位部材60の一部分63aを近位部材40と同軸とし、遠位部材60の一部分63aの長手方向軸を、近位部分40と同じ長手方向軸43とする。内側スペース41内に、好ましくは付勢バネ22が配置されている。バネ22の第1の端部22aは、内側スペース41内にて近位部材40の第1の端部45に装着されている。また、バネ22の第2の端部22bは、遠位部材60が有する第1の端部61の外面に装着されており、遠位部材60は近位部材40に接続されている。そして、バネ22により遠位部材60は近位部材40に向けて付勢されている。バネ22を近位部材40および遠位部材60に装着するのは、当技術分野に既知である適した手段であればいずれを用いてもよい。好ましくは、近位部材軸43に対する遠位部材60の回転付勢を最小限に抑えるように、バネ22を選択し、装着する。
【0020】
この実施形態の近位部材40と同様に、遠位部材60も、その第1の端部61から長手方向に沿って形成されて近位部材40に向いている軸方向傾斜縁部62を有する。縁部62は、好ましくは遠位部材60と一体形成され、軸43に対して傾斜している。これにより、第1の端部61から最短距離にある縁部62が地点62aとなり、第1の端部61から最長距離にある縁部62が地点62bとなる。
【0021】
上述したように、図1における近位部材40を好ましくは中空にし、遠位部材60をその中に部分的に配置する。これにより、係合縁部62が、遠位部材60の第1の端部61から間隔をおいて位置する。しかし、当業者には明らかなように、近位部材40および遠位部材60の構造を逆にして、近位部材40を遠位部材60内に部分的に配置することも可能である。
【0022】
この実施形態によると、遠位部材60は、軸43を中心に回転可能であり、近位部材40に対して回転自在である。遠位部材60が軸43を中心に回転すると、遠位部材60は、軸43に沿って近位部材40から離れる方向に移動する。
【0023】
上述したように、この好適な実施形態の近位部材40および遠位部材60はそれぞれ、互いに当接係合する係合縁部42および62を有する。この実施形態によると、近位部材40は、軸43を中心に回転可能ではない。近位部材40が回転可能ではないため、遠位部材60が軸43を中心に回転すると、遠位部材の係合縁部62が近位部材の係合縁部42に沿って移動し始める。係合縁部42および62が軸43に対して軸方向に傾斜しているため、遠位部材60が回転するにつれて、その係合縁部62は、近位部材40に沿ったさまざまな軸方向位置にて係合縁部42に当接係合する。こうしてさまざまな軸方向位置にて係合することにより、遠位部材60は近位部材40に対して軸方向に移動することができる。例えば、駐車スタンド20が折畳み位置100にあると、遠位部材60の係合縁部62が含む地点62aは、近位部材40の係合縁部42が含む地点42bに係合した状態となる。遠位部材60が軸43を中心に回転するにつれて、地点62aは、近位部材40の第1の端部45から次第に遠ざかる係合縁部42に沿った地点で近位部材40に接触していく。地点62aおよび42aが互いに当接係合した時点で、遠位部材60の軸方向移動は最大となる。この地点から遠位部材60を逆向きに回転させると、遠位部材60は近位部材40に向けて軸方向に近寄って移動していく。
【0024】
図1に示すように、遠位部材60および近位部材40を好ましくは、非ネジ式とする。これにより、この実施形態による駐車スタンド20では、遠位部材60を近位部材40にネジ係合させることなく、その長さを回転させながら調節することができる。
【0025】
図1の実施形態において、近位部材の地点42aおよび地点62aを、駐車スタンド20を折畳み位置100に戻そうとするまで伸長位置120に保持できる形状にすると特に好ましい。図8に示す一実施形態において、この機能を持たせるため、下方ピーク42aにノッチを設けて、遠位部材の係合縁部62が含む上方ピーク62aに係合させる。別法として、ピーク42aおよび62aを比較的平坦にして、駐車スタンド20が伸長位置120に配置されたときに、互いに安定に当接させることも可能である。
【0026】
図1の実施形態において、係合縁部42は、単一下方ピーク42aを有し係合端部62は、単一上方ピーク62aを有する。しかし、軸方向に傾斜した係合縁部を複数ずつ備える別のプロファイルを用いることも可能である。例えば、図8の好適な実施形態では、近位部材40は、2つの軸方向傾斜縁部42および95を有し、それぞれに下方ピーク42aおよび上方ピーク42bと、下方ピーク95aおよび上方ピーク95bとが設けられている。さらに、近位部材40は、垂直方向に直線状である、2つの係合縁部47および49を有する。遠位部材60は、2つの軸方向傾斜縁部62および65(図示せず)を有し、この縁部はそれぞれ、近位部材40の対応係合縁部42および95と当接係合する。遠位部材60も同様に、垂直方向に直線状である、2つの対応係合縁部61aおよび61b(図示せず)を具備する。図8の実施形態において、駐車スタンド20が折畳み位置100に配置されると、遠位部材は軸43を中心に、図8の矢印で示す方向(すなわち、上から見て時計回り方向)にのみ回転できるようになる。直線状の縁部61aと47とを当接係合し、直線状縁部61bと49とを当接係合することにより、遠位部材60が、折畳み位置100から回転し始める際に反対方向に回転できないようになっている。
【0027】
[第2実施形態]
図2を参照すると、本発明の第2の好適な実施形態による駐車スタンド20が図示されている。上述した実施形態と同様、図2の駐車スタンド20も、折畳み状態100および伸長状態120と、乗車位置140および駐車位置160とを有する。近位部材40は部分的に円筒形であり、近位部材軸43に対して傾斜する係合縁部42を具備している。付勢バネ22(図2では図示せず)も、好ましくは具備し、図1について記載したように装着して、遠位部材60および近位部材40を付勢させる。この実施形態でも、遠位部材60は、円筒部分63と、第1の端部61から離れて位置する、軸方向傾斜縁部62とを具備している。
【0028】
さらに容易に遠位部材60を回転させて近位部材40に係合させられるよう、近位部材40はスロット46(透視図で図示)を具備している。好ましくは、図2に示すように、スロット46を近位部材40の内面に一体に形成し、軸方向に傾斜させる。近位部材40に、スロット46の両端部に位置する2つの開口または貫通孔48および50を具備すると、特に好ましい。遠位部材60に好ましくは、円筒部分63上で係合縁部62の上方に、ボス64または他の突出部を設ける。ボス64およびスロット46を、互いに係合してボス64がスロットに沿って摺動式に移動できる寸法とする。
【0029】
図2(b)で最もよくわかるように、遠位部材60に好ましくは、口部70を設け、そこからボス64を突出させる。さらに好ましくは、ボス付勢バネ72を設けて、ボス64を、口部70を通して遠位部材60の外面から遠ざかる方向に付勢させる。
【0030】
図2の駐車スタンド20を組み立てて折畳み状態100にすると、ボス付勢バネ72の付勢動作によりボス64が近位部材40の内面に設けられた口部48から突出するため、駐車スタンド20はその折畳み状態100に剥離可能に係止される。遠位部材60が回転するにつれて、ボス64は近位部材40の内面により口部内側へ押し入れられる。すると、ボス64がスロット46に沿ってスロット端部50に向けて移動を始める。ボス64が軸方向傾斜スロット46に係合し、係合縁部42も係合縁部62に係合していることから、遠位部材60は近位部材40から離れて軸43の方向へと移動する。ボス64が口部50に到達すると、回転は完了し、ボス付勢バネ72の付勢動作によりボス64は口部50から突出するため、駐車スタンド20はその伸長位置120に離脱可能に係止される。
【0031】
係合縁部および/またはスロット・ボスについて、幾つもの異なる構造を、本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく使用することが可能であり、本明細書に記載する実施形態は、好適な例にすぎない。しかし、遠位部材60および近位部材40を、近位部材40または遠位部材60の一方を軸43を中心に回転させることにより駐車スタンドをその折畳み状態100からその伸長状態120へと調節することができるように構成することが特に好適である。
【0032】
[第3実施形態]
図3を参照すると、本発明の第3の好適な実施形態による駐車スタンドが図示されている。この図には示していないが、この実施形態でも、図1および図2について記載したように付勢バネ22を具備し、装着する。図1および図2の実施形態とは異なり、係合縁部42および62は軸43に対して傾斜していない。しかし、図2の実施形態と同様、近位部材40は、その内面に、軸方向に傾斜したスロット46を有しており、遠位部材60は、その外面から外向きに突出したボスを具備している。円筒部分63が、ボス64がスロット46に係合するように、近位部材40の内側スペース41内に挿入されている。したがって、遠位部材60が軸43を中心に回転すると、ボス64はスロット46に沿って移動する。スロット46が軸方向に傾斜しているため、遠位部材60は近位部材40をさまざまな軸方向位置にて係合し、これにより遠位部材60が軸方向に移動できるようになっている。図2の実施形態と同様、駐車スタンド20は、ボス64が口部48に係合していると折畳み位置100となり、ボス64が口部50に係合していると伸長位置120となる。
【0033】
[第4実施形態]
図4を参照すると、本発明の第4の好適な実施形態による駐車スタンドが図示されている。この実施形態によると、近位部材40は軸方向に傾斜した係合縁部42を、遠位部材60は軸方向に傾斜した係合縁部62をそれぞれ具備している。さらに、軸方向に傾斜したスロット46が、近位部材40の内面に形成され、ボス64を中に係合するように設計されている。図3の実施形態と異なり、スロット46に口部は設けられていないが、その代わりに、ボス64の移動範囲を制限するスロット端部52および54が設けられている。スロット端部52および54は、スロットを構成する近位部材40の内面に形成された凹部または溝の終点となっている。スロット端部52および54の軸43に対する傾斜をゼロにして、ボス64がスロット端部52またはスロット端部54に係合した際に遠位部材60の近位部材40から軸方向への移動を抑えやすくすると、特に好ましい。付勢バネ22(図示せず)を、好ましくは、図1に示すように具備し、装着する。付勢バネ22は、遠位部材60を近位部材40に向けて付勢する引張バネにしても、遠位部材60を近位部材40から遠ざかる方向に付勢する圧縮バネにしてもよいが、引張バネが好適である。
【0034】
[第5実施形態]
本発明の第5の好適な実施形態による駐車スタンドが、図5に示されている。この実施形態によると、駐車スタンド20は、係合縁部42を具備する近位部材40と、係合縁部62を具備する遠位部材60とを有する。図5の実施形態における係合縁部42および62は軸方向に傾斜していないが、所望に応じて、軸方向に傾斜させることも可能である。ボス46が、近位部材係合縁部42に近接する近位部材40の内面上に形成され、その内面から内向きに突出している。この実施形態では、ボス付勢バネは設けられていない。遠位部材60に含まれる円筒部分63の外面に、軸方向に傾斜したスロット66が形成されており、円筒部分63が近位部材40の内側スペース41内に挿入されるとボス46を中に係合できる寸法となっている。スロット66に好ましくは、伸長位置120を決めるスロット端部74と、折畳み位置100を決めるスロット端部76とを具備する。スロット端部74および76の軸方向傾斜は実質的にゼロであり、これにより遠位部材60を近位部材40に保持しやすくしている。
【0035】
ボス46が近位部材40に形成されているため、近位部材40は軸43を中心に回転しない。しかし、遠位部材60が回転すればスロット66は回転する。その結果、ボス46は遠位部材60上のさまざまな軸方向位置でスロット66に係合するため、遠位部材60は近位部材40に対して軸方向に移動することになる。
【0036】
図1および図6で最もよくわかるように、本発明の好適な実施形態において、駐車スタンド20は、支持部分67を具備する。支持部分67は、ピボット軸26および遠位部材の第1の端部61から離れたほうの駐車スタンド20の一端に配置されている。また、支持部分67は軸43から突出している。また、支持部分67は、遠位部材60と共に回転させられるように、遠位部材60と一体形成するのが好ましい。
【0037】
図6(b)で最もよくわかるように、支持部分67は突出部分68を有し、突出部分68は上縁部68aおよび底縁部68bを有している。図6(b)に示すように、好ましくは、軸43に対する上縁部68aの傾斜を底縁部68bの傾斜より大きくする。
【0038】
また、支持部分67は、軸43から離れて位置する、垂直方向下垂部分69を有している。垂直方向下垂部分69は軸43にほぼ平行であり、駐車スタンド20が駐車位置160に配置されると地面に当接する地面接触面69aを具備している。図6(a)で最もよくわかるように、地面接触面69aは円形である。
【0039】
図1および図6(a)を参照すると、駐車スタンド20が乗車位置140および折畳み位置100にあると、支持部分67の突出部分68は、フレーム10に実質的に平行となる。図6(a)に、支持部分67の底面図を示す。この図において、駐車スタンド20は乗車位置140および折畳み位置100にある。この図に示すように、支持部分67を好ましくは、隣接するフレーム部材11の周囲を部分的に取り巻くように構成する。この形状にすると、突出部分68を自転車フレーム10に近接させ、かつこれにほぼ平行に保ったまま、駐車スタンド20を隣接フレーム部材11の底部に装着することができる。図6(a)に示すように、駐車スタンド20が乗車位置140および折畳み位置100にあると、駐車スタンド20はクランク12から十分に離れて位置するため、駐車スタンド20が乗り手の脚や足首にぶつかる、またはこれ以外に乗り手に自転車をこげなくさせる事態を最小限に抑える、またはなくすことができる。
【0040】
図6(b)は、この実施形態の駐車スタンド20が駐車位置160にある状態を示している。駐車位置160にくると、支持部分67はフレーム10から突出する。支持部分67を実質的にフレーム10に垂直にすると、特に好ましい。地面係合面69aを、好ましくは円形にし、車両を支持できるように地面と当接係合させる。
【0041】
有利なことに、この実施形態の駐車スタンド20では、駐車スタンド20が駐車位置160にあっても、クランク12を回転させることができる。支持部分67で支えられるため、駐車スタンド20は、数多くの既知の駐車スタンドで必要な程にフレーム10から角度をつけずとも、車両を十分に支えることができる。図7で最もよくわかるように、フレーム10が長手方向の平面180を構成している。図7の駐車スタンド20と長手方向平面180との間の角度θを好ましくは、既知の装置の場合(この図で破線で示した角度)に比較して小さくする。図1を参照すると、クランク12の長さは、クランク軸14とピボット軸11との間の距離よりも長い。したがって、クランク12の回転軌道は、駐車スタンド20の回転軌道に重なっている。しかし、この実施形態の駐車スタンドを用いると、駐車スタンド20とクランク12との間に横方向の隙間182があくため(図7参照)、クランク12と駐車スタンド20の回転軌道が重なっても、駐車スタンド20が駐車位置160にある間もクランク12を回転させることができる。これにより、駐車スタンド20を乗車位置140にしなくても、乗り手は自転車を前または後ろに押して歩くことができ、使い勝手がさらに高まる。
【0042】
ここで、本発明による駐車スタンドを用いる方法の一好適な実施形態を説明する。駐車スタンド20を設置した車両に乗る際には、好ましくは、駐車スタンド20を図1および図6に示す乗車位置140にしておく。車両を走行させる間は、図1にさらに示すように、駐車スタンド20を好ましくは、折畳み位置100にしておく。乗り手が車両を停めたくなったら、好ましくは、遠位部材60に時計回りの力をかける。この力により駐車スタンド20はピボット軸26を中心に回動し、駐車位置160へと移動する。乗り手が所定範囲を超えて駐車スタンド20を回動できないようにする当たりをピボットブラケット26に具備するなどして、好ましくは、ピボットブラケット24を、図1に示す駐車位置160を越える時計回りの回動範囲を制限する構成にする。
【0043】
上述した回転力をかけている間に、乗り手が、軸43を中心とする方向の回転力も遠位部材60に与えると、特に好適である。図1および図6に示した具体的実施形態では、この回転力は、駐車スタンド20を車両の裏側から見て、すなわち、支持部分67の底部を見て、近位部材軸43に対する反時計回りにかけられる。軸方向に傾斜した係合縁部42と62とが係合しているため、この回転力により、駐車スタンド20を折畳み位置100から伸長位置120へと調節することができる。
【0044】
上記方法は、図1の駐車スタンドについての記載であるが、図8の駐車スタンド20にも、この実施形態による方法を用いることができる。ただし、上述したように、図8の駐車スタンドの場合、乗り手は、遠位部材60を折畳み位置100からは1方向にしか回転させられない。また、図2〜図4の駐車スタンド20に用いる場合、軸43を中心とする回転力によりボス64がスロット46に沿って移動する。ボスが軸方向に傾斜したスロット46に沿って移動することにより、遠位部材60は上述したように近位部材40から遠ざかって軸方向に移動する。同様に、図5の駐車スタンド20に用いる場合、軸43を中心とする回転力によりスロット66がボス44に対して移動し、これにより、4上述したように遠位部材60が軸方向に偏移する。
【0045】
この実施形態による方法を実行する際は、好ましくは、乗り手が自分の脚を使って上述した回転力を遠位部材60の支持部分67にかける。図6の実施形態において、垂直方向下垂部分69は、隣接するフレーム部材11の上方に位置付けられている。したがって、乗り手は、垂直方向下垂部分69に下向きの力を加えることにより、駐車スタンド20を駐車位置160に回動させることができる。同様に、垂直方向下垂部分69を隣接フレーム部材11の上方に位置付けるには、乗り手は自分の脚を使って反時計回りの回転力を支持部67にかけることができる。
【0046】
特に好適な実施形態において、乗り手は脚を一度動かすだけで支持部分67に回転力をかけることができるため、駐車スタンド20を、その乗車位置140および折畳み位置100から駐車位置160および伸長位置120へと同時に調節することができる。図6で最もよくわかるように、駐車スタンド20がその折畳み位置100および乗車位置140にあると、垂直方向下垂部69は、フレーム10を離れる方向に近位部材軸43からややずれて位置する。このため、垂直方向下垂部69に下向きの力Fをかけると、ピボット軸26および軸43の双方を中心とするトルクが発生し、これにより、脚の一回の動作で駐車スタンド20を同時に回転させることができる。
【0047】
上述してきた実施形態は、本発明の代表的な実施形態である。当業者であれば、本明細書内に開示した発明概念から逸脱することなく、上述した実施形態をさまざまに利用でき、またこれをさまざまに発展させることが可能である。したがって、本発明は、請求の範囲によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の好適な実施形態による駐車スタンドがその駐車位置および乗車位置にある状態で備えられた自転車フレームを示す部分側面図である。また、駐車スタンドを示す詳細図である。
【図2】(a)は本発明の第2の好適な実施形態による駐車スタンドを示す組立分解図である。(b)は(a)の線分x−xで切取った断面から見た断面図である。
【図3】本発明の第3の好適な実施形態による駐車スタンドを示す組立分解図である。
【図4】本発明の第4の好適な実施形態による駐車スタンドを示す組立分解図である。
【図5】本発明の第5の好適な実施形態による駐車スタンドを示す組立分解図である。
【図6】(a)は自転車の裏側から見た、乗車位置にある図1の駐車スタンドを示す底面図である。(b)は駐車位置にある図1および図6の駐車スタンドの一部を示す側面図である。
【図7】自転車クランクおよび図1の駐車スタンドの一部を示す側面図である。
【図8】本発明の第6の好適な実施形態による駐車スタンドを示す組立分解図である。
【符号の説明】
【0049】
20 駐車スタンド
22 付勢バネ
22a、45、61 第1の端部
22b 第2の端部
44、64 ボス
46 スロット
48、50 貫通孔
52、54 スロット端部
60 遠位部材
61a、61b 係合縁部
67 支持部分
68 突出部分
68a 上縁部
68b 底縁部
72 ボス付勢バネ
74、76 スロット端部
100 折畳み位置
120 伸長位置
140 乗車位置
160 駐車位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材軸を有する第1の部材と、
前記第1の部材に操作接続され、前記第1の部材軸を中心に回転可能である非ネジ式第2の部材と、
を備え、
前記第2の部材が前記第1の部材軸を中心に回転することにより、前記第2の部材が前記第1の部材に対して前記軸方向に移動する、
駐車スタンド。
【請求項2】
前記第2の部材が、前記第1の部材から間隔をおいて、前記第1の部材軸から突出して位置する支持部分をさらに含む、請求項1に記載の駐車スタンド。
【請求項3】
前記第2の部材が、前記第1の部材に対して前記軸方向に付勢される、請求項1に記載の駐車スタンド。
【請求項4】
前記第2の部材が、前記第1の部材から遠ざかる方向に付勢される、請求項3に記載の駐車スタンド。
【請求項5】
前記第2の部材が、前記第1の部材に向けて付勢される、請求項3に記載の駐車スタンド。
【請求項6】
第1の部材軸を有し、前記第1の部材軸の方向に傾斜した第1の係合縁部を有する第1の部材と、
前記軸方向に傾斜した第2の係合縁部を有し、前記第1の部材軸を中心に回転可能である第2の部材と、
を備え、
前記第2の係合縁部が前記第1の係合縁部に当接係合する、
駐車スタンド。
【請求項7】
前記第2の部材が前記第1の部材軸を中心に回転すると、前記第2の部材が前記第1の部材に対して前記軸方向に移動するように、前記第1の係合縁部が前記第2の係合縁部に当接係合する、請求項6に記載の駐車スタンド。
【請求項8】
前記第1の部材および第2の部材のうち一方がボスを有し、前記第1の部材および第2の部材のうち他方が前記軸方向に傾斜したスロットを有し、前記ボスが前記スロットに係合する、請求項6に記載の駐車スタンド。
【請求項9】
前記駐車スタンドが折畳み位置および伸長位置を有し、前記スロットが、前記折畳み位置を決定する第1の端部と、前記伸長位置を決定する第2の端部とを有する、請求項8に記載の駐車スタンド。
【請求項10】
前記第2の部材が前記ボスを有し、前記第1の部材が前記スロットを有する、請求項8に記載の駐車スタンド。
【請求項11】
前記第1の部材が前記ボスを有し、前記第2の部材が前記スロットを有する、請求項8に記載の駐車スタンド。
【請求項12】
前記第1の部材および前記第2の部材がそれぞれ、内面および外面を有し、前記ボスが、前記第1の部材および第2の部材のうち一方の前記外面から突出し、前記スロットが、前記第1の部材および第2の部材のうち他方の前記内面内に形成されている、請求項8に記載の駐車スタンド。
【請求項13】
前記第2の部材が、前記第1の部材に対して前記軸方向に付勢される、請求項6に記載の駐車スタンド。
【請求項14】
前記第2の部材が、前記第1の部材に向けて付勢される、請求項13に記載の駐車スタンド。
【請求項15】
前記第2の部材が、前記第1の部材から遠ざかる方向に付勢される、請求項13に記載の駐車スタンド。
【請求項16】
前記第2の部材が、前記第1の部材から間隔をおいて、前記第1の部材軸から突出して位置する支持部分を有する、請求項6に記載の駐車スタンド。
【請求項17】
前記第2の部材が回転すると、前記ボスが前記スロットに沿って移動する、請求項8に記載の駐車スタンド。
【請求項18】
前記第1の部材および第2の部材のうちボスを有する一方が、外面および口部を有し、前記ボスが、前記口部を介して前記外面から遠ざかる方向に付勢される、請求項8に記載の駐車スタンド。
【請求項19】
前記スロットの前記第1の端部が第1の端部口部を有し、前記折畳み位置において、前記ボスが前記第1の端部口部を介して突出する、請求項9に記載の駐車スタンド。
【請求項20】
前記スロットの前記第2の端部が第2の端部口部を有し、前記伸長位置において、前記ボスが前記第2の端部口部を介して突出する、請求項19に記載の駐車スタンド。
【請求項21】
第1の部材軸、および前記第1の部材の軸方向に傾斜した第1の部材スロットを有する第1の部材と、第2の部材ボスを有する第2の部材とを有し、前記部材の一方が前記部材の他方に対して回転可能である駐車スタンドであって、
前記第2の部材ボスが前記第1の部材スロットに係合され、前記第1の部材および第2の部材のうち一方が前記第1の部材軸を中心に回転すると、前記回転した部材が、前記第1の部材および第2の部材のうち他方に対して前記軸方向に移動する、
駐車スタンド。
【請求項22】
前記第1の部材が前記第2の部材に対して回転可能である、請求項21に記載の駐車スタンド。
【請求項23】
前記第2の部材が前記第1の部材に対して回転可能である、請求項21に記載の駐車スタンド。
【請求項24】
前記駐車スタンドが折畳み位置および伸長位置を有し、前記スロットが、前記折畳み位置を決定する第1の端部と、前記伸長位置を決定する第2の端部とを有する、請求項21に記載の駐車スタンド。
【請求項25】
前記第1の部材が、前記軸方向に傾斜した第1の部材縁部を有し、前記第2の部材が、前記軸方向に傾斜した第2の部材縁部を有し、前記第1の部材縁部が前記第2の部材縁部に当接係合する、請求項21に記載の駐車スタンド。
【請求項26】
前記第1の部材および第2の部材のうち一方が回転することにより、前記ボスが前記スロットに沿って移動する、請求項21に記載の駐車スタンド。
【請求項27】
前記第2の部材が、前記第1の部材に対して前記軸方向に付勢される、請求項21に記載の駐車スタンド。
【請求項28】
前記第2の部材が、前記第1の部材に向けて付勢される、請求項27に記載の駐車スタンド。
【請求項29】
前記第2の部材が、前記第1の部材から遠ざかる方向に付勢される、請求項27に記載の駐車スタンド。
【請求項30】
前記第1の部材および第2の部材のうち一方が、前記第1の部材および第2の部材の他方から間隔をおいて、前記第1の部材軸から突出して位置する支持部分を有する、請求項21に記載の駐車スタンド。
【請求項31】
前記第1の部材が内面を有し、前記第2の部材が外面を有し、前記ボスが前記第2の部材の前記外面から外向きに突出し、前記スロットが前記第1の部材の前記内面内に形成されている、請求項21に記載の駐車スタンド。
【請求項32】
前記第1の部材が外面を有し、前記第2の部材が内面を有し、前記ボスが前記第2の部材の前記内面から内向きに突出し、前記スロットが前記第1の部材の前記外面内に形成されている、請求項21に記載の駐車スタンド。
【請求項33】
前記第2の部材が外面および口部を有し、前記ボスが、前記第2の部材が外面から遠ざかる方向に前記口部を介して付勢される、請求項21に記載の駐車スタンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−137411(P2006−137411A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313315(P2005−313315)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)