説明

二輪車等のフロントフォーク装置

【課題】 二輪車等のシングルディスクタイプのフロントフォーク装置において、ブレーキング時のヨレ感を低減することのできるフロントフォーク装置を提供すること。
【解決手段】 前輪の左右両側に、摺動自在に嵌合する車体側チューブ13、13’と車輪側チューブ14、14’からなる左右のフロントフォーク11、12を備え、左右一側のフロントフォーク12にのみブレーキ装置25を装着した二輪車等のフロントフォーク装置10において、ブレーキ装置25を装着した一側のフロントフォーク12の車輪側チューブ14’の肉厚を、他側のフロントフォーク11の車輪側チューブ14の肉厚より厚くしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二輪車等のフロントフォーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車等のフロントフォーク装置には、前輪の左右一側のフロントフォークにのみディスクプレートを装着したシングルディスクタイプのものがある。このようなフロントフォーク装置では、ブレーキング時にフロントフォークが左右の一側によれる、つまりハンドルを一側に取られるというヨレ感をライダーが感じる。
【0003】
特許文献1には、左右のフロントフォークのうち、一側(左側)のフロントフォークにのみ懸架スプリングを設け、懸架スプリングを設けない他側(右側)のフロントフォークのインナチューブの肉厚を、懸架スプリングを設けた一側(左側)のフロントフォークのインナチューブの肉厚より厚くした自動二輪車等の倒立型のフロントフォーク装置が開示されている。
【0004】
このようなフロントフォーク装置では、ブレーキング時にフロントフォーク装置が圧縮すると、懸架スプリングの反力により、フロントフォーク装置は懸架スプリングを設けていない右側フロントフォークの方へ前輪の接地点回りに回転モーメントを発生する。
【0005】
一方、ブレーキング時には前輪と路面との摩擦力により左右のフロントフォーク、特に車輪側チューブの下端部が進行方向の後方へ撓む。インナチューブの肉厚を厚くした右側フロントフォークは肉厚の薄い左側フロントフォークより撓み量が小さいので、フロントフォーク装置は肉厚の薄い左側フロントフォークの側(懸架スプリングを設けた側)への回転モーメントを前輪の接地点回りに発生する。
【0006】
その結果、ブレーキング時に発生する2つのモーメント、即ち、懸架スプリングの有無に因る懸架スプリングを設けていない右側方向へのモーメントと、肉厚の違いに因る肉厚の薄い左側方向へのモーメントを相殺して、ブレーキング時における前輪のヨレ感を低減している。
【0007】
しかしながら、前輪の片側にのみブレーキ装置を設けたシングルディスクタイプのフロントフォーク装置においては、懸架スプリングを片側のフロントフォークにのみ設けたか否かに関係なく、左右両側のフロントフォークに懸架スプリングを設けたものでも、ヨレ感を感じる。
【特許文献1】特開2004-224137
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
二輪車等のシングルディスクタイプのフロントフォーク装置において、ブレーキング時のヨレ感を低減することのできるフロントフォーク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、摺動自在に嵌合する車体側チューブと車輪側チューブからなるフロントフォークを前輪の左右両側に備え、左右一側のフロントフォークにのみブレーキ装置を装着した二輪車等のフロントフォーク装置において、前記ブレーキ装置を装着した一側のフロントフォークの車輪側チューブの肉厚を、他側のフロントフォークの車輪側チューブの肉厚より厚くしたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記ブレーキ装置が前輪の左右一側に設けたディスクプレートを跨いで設けたブレーキキャリパからなり、前記左右一側のフロントフォークの車輪側チューブの下端の車軸部より上方に偏芯した位置に、車両の前後方向の後方に延出するアームを備えたブレーキブラケット部を一体に形成し、該ブレーキブラケット部のアームの先端部に前記ブレーキキャリパを取付けたものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記左右のフロントフォークの車輪側チューブがインナチューブであり、前記車体側チューブがアウタチューブである倒立型のフロントフォークからなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1、2)
(a)ブレーキング時には、ブレーキキャリパがディクスプレートの回転方向(図3に矢印Aで示す)へ引っ張られるので、ブレーキキャリパを取付ける車輪側チューブのブレーキブラケットの取付部を支点として、進行方向の後方へ車輪側チューブの車軸部を撓ませる曲げモーメント(図3に矢印Bで示す)が作用する。
【0013】
しかしながら、本発明ではブレーキキャリパを取付けた一側(右側)のフロントフォークの車輪側チューブの肉厚を、ブレーキキャリパを装着しない他側(左側)のフロントフォークの車輪側チューブの肉厚より厚くしたので、ブレーキング時における一側(右側)のフロントフォークの車軸部の後方への撓みが小さくなり、前輪がブレーキ装置を設けた一側(右側)のフロントフォーク側へよれることを阻止する。
【0014】
(請求項3)
(b)倒立型フロントフォークの場合、車輪側に取付けられるインナチューブは、車体側に取付けられるアウタチューブより直径が小さいこと、また、曲げ応力を受ける部分の長さが長いので、インナチューブの曲げ応力はアウタチューブより大きい。従って、倒立型フロントフォークのインナチューブの肉厚を厚くした場合における前輪のヨレ感の低減効果が大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1はフロントフォーク装置を最圧縮状態において示す全体断面図、図2は図1の左側フロントフォークを示す半断面図、図3はブレーキ装置を装着した右側フロントフォークにおける曲げモーメントの発生原理を示す模式図である。
【実施例】
【0016】
図1に示す如く、フロントフォーク装置10は、ライダーから見て、左側フロントフォーク11と右側フロントフォーク12からなる。左右のフロントフォーク11、12はアウタチューブ13、13’とインナチューブ14、14’からなる。
【0017】
左右のアウタチューブ13、13’はアッパブラケット15とアンダーブラケット16を介して車体側の図示しないステアリングシャフトに連結される。ステアリングシャフトは車体フレームの先端の図示しないヘッドパイプ内に左右揺動自在に設けられる。左右のインナチューブ14、14’の下端部にそれぞれ車軸ブラケット17、17’が螺合固定される。左右の車軸ブラケット17、17’にはそれぞれ図3に示す車軸23を挿通する車軸孔18、18’を備えた車軸部17a、17’aが形成される。左側フロントフォーク11の車軸孔18には軸方向の摺り割り19が形成されているが、右側の車軸孔18’には摺り割り19が形成されていない。これらの車軸孔18、18’に車軸23を挿入し、左側フロントフォーク11の車軸部17aの締め付け孔20に、図示しないボルトを締め付けて車軸23を固定する。車軸23には図3に示す前輪27が回転自在に設けられる。
【0018】
左右の車軸ブラケット17、17’の前部には、それぞれフェンダー取付け用のステー17b、17’bが一体に形成される。右側フロントフォーク11の車軸ブラケット17’の後部には、図3に示すブレーキキャリパ25(ブレーキ装置)を取付けるブレーキブラケット部17’cが一体に形成される。しかし、左側フロントフォーク11の車軸ブラケット17には、ブレーキブラケット部17’cが形成されない。
【0019】
以上の如く、右側フロントフォーク12がブレーキキャリパ25を取付けるブレーキブラケット部17’cを形成した点及び車軸部17a、17’aの形状が異なる点を除き、左右フロントフォーク11、12は同一の構造である。
【0020】
次に、左右フロントフォーク11、12の内部の構造を説明する。左右フロントフォーク11、12の内部の構造は同一なので、左側フロントフォーク11についてのみ説明する。
【0021】
図2に示すように、車体側のアウタチューブ13と車輪側のインナチューブ14は、アウタチューブ13の下端部の内周に嵌着されたブッシュ30とインナチューブ14の上端部の外周に嵌着されたスライドブッシュ31を介して摺動する。アウタチューブ13の先端部の内周は拡径され、この拡径された先端部の内周に環状のワッシャ32、オイルシール33、ストッパリング34、ダストシール35が順に設けられる。
【0022】
インナチューブ14の下端部の外周に車軸ブラケット17が螺合されて固定される。車軸ブラケット17の底部に、ダンパ36のダンパシリンダ46の下端部がカップ状部材41の底部を挟んでボトムボルト42により固定されている。
【0023】
アウタチューブ13の上端部には有底のキャップ43が螺着されている。中空ピストンロッド44の上端部に筒状ハウジング44aが螺着されロックナット44bにより固定されている。筒状ハウジング44aはキャップ43の底部に螺着固定されている。
【0024】
ピストンロッド44をダンパシリンダ46の上端開口部に設けたロッドガイド組立体80の内周に摺接案内させてダンパシリンダ46の内部に挿入し、ピストンロッド44の下端部にピストンバルブ装置57(伸側減衰力発生装置)を備える。ピストンバルブ装置57は、ピストンロッド44の先端部に固定したピストン58により、ダンパシリンダ46の内部をピストン側油室S1とロッド側油室S2に区画する。ピストン58はピストン側油室S1とロッド側油室S2を連絡可能にする伸側流路58aと図示しない圧側流路を備え、伸側流路58aに伸側ディスクバルブ47を、圧側流路に圧側チェックバルブ48を備える。
【0025】
中空ピストンロッド44内に減衰力調整装置45が設けられる。減衰力調整装置45は筒状ハウジング44a内に回動自在に設けられた減衰力調整アジャスタ45aと、この減衰力調整アジャスタ45aの下端部に固定された中空ロッド45bと、中空ロッド45bの先端部に固定されたニードル弁45cとからなる。
【0026】
筒状ハウジング44aの外周にばね荷重調整アジャスタ50が螺着され、ばね荷重調整アジャスタ50の下端面に押動ピン組立体51が設けられる。押動ピン組立体51は、有底のキャップ43の底部に挿通された3本の押動ピン51aと3本の押動ピン51aの上端部を一体にモールド成形した環状体51bからなる。押動ピン組立体51の下部には、スペーサ52を介して、スプリングカラー53の上端部に嵌着されたジョイントカラー53aが設けられる。
【0027】
スプリングカラー53の下端部には上ばね受けを兼ねる筒状のオイルロックカラー54が嵌着されている。車軸ブラケット17の下端部の内周に下ばね受け55が設けられ、下ばね受け55とオイルロックカラー54の下端部との間に懸架スプリング56が介装される。ばね荷重調整アジャスタ50の回動操作により、押動ピン組立体51が上下に進退し、次いで、スプリングカラー53、オイルロックカラー54が上下動し、懸架スプリング56の初期荷重が調整される。
【0028】
アウタチューブ13とインナチューブ14の内部で、ダンパシリンダ46の外周部に油溜室R1と気体室R2が設けられる。油溜室R1の作動油はブッシュ30、スライドブッシュ31、オイルシール33の潤滑に寄与する。懸架スプリング56と気体室R2の気体ばねが路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0029】
ダンパシリンダ46の底部にベースバルブ装置(圧側減衰力発生装置)60を備える。ベースバルブ装置60はダンパシリンダ46を前述の如くにボトムボルト42により車軸ブラケット17の底部に固定するボトムホルダ61を有する。ボトムホルダ61の先端部にボルト62が螺合され、ボルト62の外周にボトムピストン63が固定される。ボトムピストン63はピストン側油室S1の下方にボトムバルブ室S3を区画形成する。ボトムピストン63はピストン側油室S1とボトムバルブ室S3を連絡可能にする圧側流路63aと図示しない伸側流路を備え、圧側流路63aに圧側ディスクバルブ67を、伸側流路63aに伸側ディスクバルブ69を備える。ボトムバルブ室S3はダンパシリンダ46に設けた油孔64により油溜室R1に連通している。
【0030】
また、ピストン側油室S1と油溜室R1を連通するバイパス路65が、ベースバルブ装置60のボルト62、ボトムホルダ61、ボトムボルト42、及び、車軸ブラケット17の底部に設けられている。そして、このバイパス路65の流路面積を調整するニードル弁66aを備えた減衰力調整装置66が車軸ブラケット17の下端部の後部に設けられている。
【0031】
ダンパ36は、ピストンバルブ装置57とベースバルブ装置60が発生する減衰力により、懸架スプリング56と気体ばねによる衝撃力の吸収に伴なうアウタチューブ13とインナチューブ14の伸縮振動を制振する。
従って、フロントフォーク11は以下の如くに減衰作用を行なう。
【0032】
(圧縮時)
フロンフォーク11の圧縮時には、ベースバルブ装置60において、圧側流路63aの圧側ディスクバルブ67或いはニードル弁66aを流れる油により圧側減衰力を生じ、ピストンバルブ装置57では殆ど減衰力を生じないか補助的に減衰力を生じる。
【0033】
(伸張時)
フロントフォーク11の伸張時には、ピストンバルブ装置57において、伸側流路58aの伸側ディスクバルブ47或いはニードル弁45cを流れる油により伸側減衰力を生じ、ベースバルブ装置60では殆ど減衰力を生じない。
【0034】
尚、フロントフォーク11の最圧縮時には、ダンパシリンダ46の外側で、スプリングカラー53の下端部に嵌着したオイルロックカラー54がダンパシリンダ46の上端部の外周に微小隙間を介して嵌合し、オイルロックカラー54の下端部に油を閉じ込めることで最圧縮時の緩衝を行なう。
【0035】
また、フロントフォーク10の最伸張時には、ダンパシリンダ46の上端内周部に配置したリバウンドスプリング70を、ピストンロッド44の先端部に設けたピストン58の側のスプリングストッパ71に衝合し、最伸張時の緩衝をなす。
【0036】
次に、図1、3に示すように、右側フロントフォーク12の車軸ブラケット17’の後部には車軸23を挿通する車軸部17’aより上方に偏芯した位置にブレーキブラケット部17’cが一体に形成される。ブレーキブラケット部17’cは上下のアーム21a、21bを備え、上下のアーム21a、21bの先端部にブレーキキャリパ(ブレーキ装置)25をそれぞれボルト22a、22bにて固定している。
【0037】
前輪27の右側にのみ、ディスクプレート73が前輪27のリムに固定した6本のボルト74にてフローティング支持されている。ブレーキキャリパ(ブレーキ装置)25はディスクプレート73の半径方向の内周側に位置し、ディスクプレート73の内周部を跨いでディスクプレート73の両側に図示しないブレーキパッドを備える。また、ブレーキキャリパ25はブレーキパッドを押圧する図示しないピストンを備え、ブレーキ操作時にピストンがブレーキパッドを押圧して、ディスクプレート73にブレーキパッドを摺接させる。
【0038】
ところで、本課題の解決にあたり、左右フロントフォーク11、12のインナチューブの前側の車軸ブラケット17、17’の真上とアウタチューブ13、13’のアンダーブラケット16の前側の真上のそれぞれに軸方向と径方向に歪ゲージを貼付して応力測定を行った。
【0039】
その結果、インナチューブ14、14’の前側の車軸ブラケット17、17’の真上に軸方向に貼付した歪ゲージが大きな応力差を発生しており、ディスクプレート73を取付けた右側フロントフォーク11は、取付けていない左側フロントフォーク11に比較して最大でインナチューブ14、14’で10倍、アウタチューブ13、13’で5倍の応力差を発生していることが確認された。左右フロントフォーク11、12での時間的な移相差は無いが歪量に前述の差異を生じており、ライダーが左右フロントフォーク11、12の前後方向の撓み量の違いを感じ取り、これがヨレ感の主要因となっていると考えられる。
【0040】
特に、コーナー進入時のフルブレーキングの前に、瞬時のブレーキングをかけた場合、左右フロントフォーク11、12はストロークせず、図3に示すように、右側フロントフォーク13’のブレーキブラケット部17’cがディスクプレート73に瞬間的に引っ張られる(図3に矢印Aで示す)ような形でインナチューブ14’に大きな歪が発生する。
【0041】
このような歪はブレーキング時に右側フロントフォーク12のブレーキブラケット部17’cに取り付けたブレーキキャリパ25がディスクプレート73の回転方向に引っ張られる(矢印A)と、その反力としてブレーキブラケット部17’cの車軸ブラケット17’への取付部17dを中心とする回転モーメント(矢印B)が車軸ブラケット17’の車軸部17’aに発生し、ブレーキキャリパ25を取付けた側のインナチューブ14’に大きな歪が発生すると考えられる。また、ブレーキブラケット部17’cのアーム21a、21bが長いほど、また、ブレーキブラケット部17’cの取付部17dの位置が車軸23を挿通する車軸部17’aから上方へ偏心していればいるほど車軸部17’aの回転モーメント(矢印B)は大きい。
【0042】
そこで、インナチューブ14’の直径を大きくすることで応力値を低減することが考えられるが、左右差は依然として存在する。
【0043】
上記の考察からブレーキ装置を装着した右側フロントフォーク11の剛性を上げなければ大幅な改善は望めないことが判明した。
【0044】
そこで、ブレーキキャリパ25を取付けた右側フロントフォーク12のインナチューブ14’の肉厚を、ブレーキキャリパ25を取付けていない左側のインナチューブ11の肉厚より厚くすることにより、右側フロントフォーク12の剛性を上げヨレ感を低減した。具体的には、左右フロントフォーク11、12の外径を同一としたまま右側フロントフォーク12のインナチューブ14’の内径を小径に形成することにより、右側フロントフォーク12のインナチューブ14’の肉厚のアップを図った。
【0045】
本実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(請求項1、2)
(a)ブレーキング時には、ブレーキキャリパ25がディクスプレート73の回転方向(図3に矢印Aで示す)へ引っ張られるので、ブレーキキャリパ25を取付ける車軸ブラケット17’のブレーキブラケット部17’cの取付部17dを支点として、進行方向の後方へ車軸ブラケット17’の車軸部17’aを撓ませる曲げモーメント(図3に矢印Bで示す)が作用する。
【0046】
しかしながら、本実施の形態ではブレーキキャリパを取付けた一側(右側)のフロントフォーク12のインナチューブ14’の肉厚を、ブレーキキャリパ25を取付けない他側(左側)のフロントフォーク11のインナチューブ14の肉厚より厚くしたので、ブレーキング時における一側(右側)のフロントフォーク12の車軸部17’aの後方への撓みが小さくなり、前輪27がブレーキ装置を設けた一側(右側)のフロントフォーク12側へよれることを阻止する。
【0047】
(請求項3)
(b)倒立型フロントフォークの場合には、車輪側のインナチューブ14’は車体側のアウタチューブ13’より直径が小さいこと、また、曲げ応力を受ける部分の長さが長いので、インナチューブ14’の曲げ応力はアウタチューブ13’より大きい。従って、倒立型フロントフォークのインナチューブ14’の肉厚を厚くした場合における前輪27のヨレ感の低減効果が大である。
【0048】
尚、本実施例ではアウタチューブが車体側に取付けられ、インナチューブが車輪側に取り付けられる倒立型のフロントフォークであるが、アウタチューブが車軸側に取付けられ、インナチューブが車体側に取付けられる正立方のフロントフォークであっても良い。
【0049】
また、本実施例ではブレーキ装置はディスクプレートを挟むブレーキキャリパ装置からなるものであるが、ブレーキ装置が前輪に設けたブレーキドラムの内周に摺接するブレーキシュー装置からなり、ブレーキ反力を受けるストッパ部を左右一側のフロントフォークの車輪側チューブにのみ設け、このストッパ部をフロントフォークの車軸部より上方に偏芯した位置に設けたものであっても良い。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1はフロントフォーク装置の全体を示し、右側フロントフォークは側面図で、左側フロントフォークは半断面図である。
【図2】図2は図1の左側フロントフォークを拡大して示す半断面図である。
【図3】図3は本フロントフォーク装置を装着した自動二輪車の前輪の右側部分を示す模式図である。
【符号の説明】
【0052】
10 フロントフォーク装置
11 左側フロントフォーク
12 右側フロントフォーク
13、13’ アウタチューブ(車体側チューブ)
14、14’ インナチューブ(車輪側チューブ)
17’ 車軸ブラケット
17’a 車軸部
17’c ブレーキブラケット部
21a、21b アーム
23 車軸
25 ブレーキキャリパ(ブレーキ装置)
73 ディスクプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動自在に嵌合する車体側チューブと車輪側チューブからなるフロントフォークを前輪の左右両側に備え、左右一側のフロントフォークにのみブレーキ装置を装着した二輪車等のフロントフォーク装置において、
前記ブレーキ装置を装着した一側のフロントフォークの車輪側チューブの肉厚を、他側のフロントフォークの車輪側チューブの肉厚より厚くしたことを特徴とする二輪車等のフロントフォーク装置。
【請求項2】
前記ブレーキ装置が前輪の左右一側に設けたディスクプレートを跨いで設けたブレーキキャリパからなり、前記左右一側のフロントフォークの車輪側チューブの下端の車軸部より上方に偏芯した位置に、車両の前後方向の後方に延出するアームを備えたブレーキブラケット部を一体に形成し、該ブレーキブラケット部のアームの先端部に前記ブレーキキャリパを取付けたものである請求項1に記載の二輪車等のフロントフォーク装置。
【請求項3】
前記左右のフロントフォークの車輪側チューブがインナチューブであり、前記車体側チューブがアウタチューブである倒立型のフロントフォークからなる請求項1又は2に記載の二輪車等のフロントフォーク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−182183(P2006−182183A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377756(P2004−377756)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】