説明

二酸化チタンの製造方法

本発明は、少なくとも2の段階における管型反応器中での四塩化チタンと予備加熱した酸素との反応による二酸化チタンの製造方法であって、四塩化チタンが液状の形態のみで使用される製造方法に関する。この全体の使用される液状TiCl4はこの場合に量的に分割され、この結果第1の段階では、液相の使用にもかかわらずこの燃焼を開始するために少量のTiCl4のみが計量供給される。この必要とされる活性化エネルギーは第1の段階では予備加熱した酸素を介してのみ提供される。他の全ての工程において、活性化エネルギーは、予備加熱された酸素と、前接続した工程に放出される、TiCl4の酸化の反応エンタルピーとにより提供される。本発明による方法は、公知方法に対してエネルギー的節約を生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、四塩化チタンの酸化による二酸化チタンの製造であって、液状の四塩化チタンが使用される製造に関する。
【0002】
本発明の技術的背景
二酸化チタン顔料粒子の商業的に適用される製造方法、いわゆるクロリド法においては、四塩化チタン(TiCl4)を酸化性ガス、例えば酸素、空気その他並びに特定の添加剤と共に、管型反応器中で二酸化チタン及び塩素ガスへと反応させる:
TiCl4+O2→TiO2+2Cl2
【0003】
TiO2粒子は引き続き塩素ガスから分離される。添加剤としてAlCl3がルチル化剤として並びに水蒸気又はアルカリ金属塩が核形成剤として公知である。TiCl4の酸化の高い活性化エネルギーのためにこの出発材料は強力に加熱されなくてはならず、この結果この出発材料の断熱性の(adiabat)混合温度が開始される反応の前に約800℃に達し、これにより反応が完全に進行する。この酸化反応は強力に発熱性であり、この結果完全な、断熱性の変換後に、この生成物流の温度は約900℃だけこの出発材料の温度よりもより高い。フィルターを用いたガス状の反応生成物からのTiO2粒子の分離のためまでに、この混合物は冷却区間において、フィルターへの損傷を回避するために顕著に冷却されなくてはならない。
【0004】
US 3,615,202によれば、酸素及びTiCl4は予備加熱され、引き続き管型反応器中で反応させられる。出発材料の全量はそれぞれ管型反応器の1部位で計量供給されるので、一工程方法ということになる。EP 0 427 878 B1も、酸素が約1500℃〜1650℃に加熱され、約450℃の熱いTiCl4−AlCl3蒸気と混合される一工程方法を開示する。このプロセスの実施はこの両方の場合にエネルギー的に不満足なものであり、というのは、出発材料の加熱のための100%のエネルギー供給に対して引き続き約160%の熱的な反応エネルギーが自由になるからである。この後でこの熱い生成物流からは約210%の熱エネルギーが冷却区間において排出されなくてはならない。これにより、少なからぬ反応エンタルピーが反応の活性化のためには利用されず、冷却水系に伝えられる。
【0005】
GB 696,618による一工程方法においては、TiCl4が同軸に、そして熱い酸素含有ガスが接線方向に反応器中に導入される。TiCl4はガス状又は液状の形態で供給されることができる。
【0006】
EP 0 583 063 B1においては、エネルギー的最適化の目的で、TiCl4の反応器中への二工程の導入が記載される。TiCl4は第1の入口点で少なくとも450℃の温度を有して、AlCl3と混合され、かつ、更なる入口点で350〜400℃の温度を有して、そしてAlCl3無しに熱い酸素流中に導入される。
【0007】
EP 0 852 568 B1による方法は、TiCl4の他に酸素も二工程で計量供給することを予定する。しかしながらこの方法の目的の設定は、平均TiO2粒径、ひいてはTiO2顔料基体の色調(Farbstich)の有効な制御である。ここでは、約950℃の加熱した酸素流中にまず約400℃の加熱したTiCl4蒸気を導入する。後続の反応区域中ではTiO2粒子が形成され、この粒子成長が起こる。第2の入口点では、より低温に加熱されたTiCl4蒸気(約180℃)が供給される。酸素は第2の入口点では25〜1040℃の温度でもって導入され、その際この混合物の温度はこの反応を引き起こすのに十分である。
【0008】
US 6,387,347による多工程方法は、更に、アグロメレート形成を減少するものである。このために、既に加熱したTiCl4流を反応器中へのこの計量供給前に2つの部分流に分割する。1の部分流は反応器の第1の段階で酸化される。第2の部分流は、液状のTiCl4の吹付けにより冷却され(De-Superheating)、引き続き反応器中に計量供給される。このDe-Superheatingは反応器の外側で起こり、その際この全部の流の凝縮温度を下回らない。
【0009】
US 2007/0172414 A1は、TiCl4及びO2の反応のための多工程方法を開示し、その際、この第1の工程においてガス状のTiCl4が、第2の工程において液状のTiCl4が反応器中に導入される。この方法は、エネルギーの節約及び粒径スペクトルの改善を可能にする。
【0010】
本発明の課題設定及び要約
本発明の課題は、技術水準から公知の方法に対して更なるエネルギー節約を可能にする四塩化チタンの酸化による二酸化チタンの製造方法を作成することである。
【0011】
この課題の解決は、管型反応器中での四塩化チタンと酸素含有ガスとの反応による二酸化チタン粒子の製造方法において、四塩化チタンが少なくとも2の段階で、液状の形態でのみ反応器中に導入されることを特徴とする製造方法並びにこの方法により製造された二酸化チタンにある。
【0012】
本発明の更に有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0013】
図面の説明
以下の図1〜6は、本発明のより良好な理解及び有利な実施形態に用いられる。
図1:反応器の中心軸に対して垂直方向にある平面に対して並行に調整されている、一成分ノズル(Einstoffduese)を有する管型反応器の図示。
図2:図1中の反応器の側面図。
図3:中空円錐型クラスターノズル(Hohlkegelbuendelduese)を有する管型反応器の図示。
図4:図3中のノズルの拡大図。
図5:管型反応器の周に半径方向に、かつ、反応器の中心軸に対して垂直方向にある平面に対して並行に調整されている、3つの一成分ノズルを有する管型反応器の図示。
図6:管型反応器の周に接線方向に、かつ、反応器の中心軸に対して垂直方向にある平面に対して並行に調整されている、3つの一成分ノズルを有する管型反応器の図示。
【0014】
本発明の記載
本発明による方法は、技術水準からの二酸化チタンの製造のための前述の一工程又は多工程のクロリド方法とは、TiCl4が少なくとも2の段階で、かつ、酸化反応器中に液状の形態でのみ導入される点で相違する。
【0015】
この全体として使用される液状TiCl4はこの場合に量的に複数の段階において分割され、この結果第1の段階では、液相の使用にもかかわらずこの燃焼を開始するために少量のみが計量供給される。この必要とされる活性化エネルギーは第1の段階では予備加熱した酸素を介してのみ提供される。他の全ての工程において、活性化エネルギーは、予備加熱された酸素と、前接続した工程に放出される、TiCl4の酸化の反応エンタルピーとにより提供される。
【0016】
この方法の実施態様では、反応が前記段階の1中への大量の液状TiCl4の噴霧により消し止められないことが問題である。この反応が自発的に進行するか又は消滅するかどうかの有効な手がかりを、反応開始前にそれぞれの段階における全ての出発材料の算出された断熱性の混合温度が提供する。経験により、この反応が約740℃の断熱性の混合温度から完全に進行することが示される。この根拠に基づいて当業者は容易に必要とされる段階の数と、この段階でのTiCl4の分割を確認することができる。
【0017】
意外なことに、本発明によるクロリド方法は、TiCl4の純粋な液状計量供給を用いて、約1600℃に予備加熱された酸素の使用の場合によってのみ実施されるのではなく、約740〜1000℃の範囲内の温度に予備加熱された酸素の使用の場合にも実施されることができる。後者の場合には、補助火炎、例えばトルエンを用いた付加的な酸素加熱の必要性が省略される。第2の変形の更なる有利な利点は、より少ない塩素消費であり、これはさもなければトルエン燃焼の経過においてHClの形成により生じる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、反応器の中心軸に対して垂直方向にある平面に対して並行に調整されている、一成分ノズルを有する管型反応器を示す図である。
【図2】図2は、図1中の反応器の側面図を示す図である。
【図3】図3は、中空円錐型クラスターノズルを有する管型反応器を示す図である。
【図4】図4は、図3中のノズルの拡大図を示す図である。
【図5】図5は、管型反応器の周に半径方向に、かつ、反応器の中心軸に対して垂直方向にある平面に対して並行に調整されている、3つの一成分ノズルを有する管型反応器を示す図である。
【図6】図6は、管型反応器の周に接線方向に、かつ、反応器の中心軸に対して垂直方向にある平面に対して並行に調整されている、3つの一成分ノズルを有する管型反応器を示す図である。
【0019】
本発明による方法は、以下の実施例1及び2の条件下で実施されることができ、この場合に、この列記と本発明の限定とは結びつかない。この比較実施例は、技術水準(EP 0 427 878 B1)によるガス状のTiCl4の一段階の計量供給を包含する。
【0020】
【表1】

【0021】
本発明による方法は、ガス状TiCl4の計量供給に対して複数の利点を提供する:
・TiCl4の蒸発のためのエネルギー的及び装置的な消費が省略される。
・液状の計量供給の際に、TiCl4が噴霧導入される液滴の高いインパルスのためにより良好に分割され、したがってより均質な反応条件が作成されることができる。
・多工程の方法様式では、比較的低温の出発材料との混合により第2の及びこの後続の燃焼段階において断熱性の反応温度が減少し、この結果焼結プロセス、即ち、粒子成長がより迅速に終了する。これにより顔料中の粗な粒子の割合が減少される。
【0022】
図1〜6は、本発明の例示的な態様を示す。図1及び図2は、管型反応器(10)を示す。液状TiCl4の管型反応器(10)中への導入は例えば、環状に、反応器(10)の周囲に配置されているノズル(12)を通じて行われる。この液状TiCl4(14)はノズル(12)を用いて小液滴に噴霧され(16)、これは反応器(10)中で反応器(10)の壁に衝突することなく蒸発する。図2は、反応器(10)中のガス流の方向(18)を示す。このノズル(12)は有利には保護ガス(20)により有効に取り囲まれ、これは更に、固形材料の堆積及びノズル(12)の熱的損傷を回避するために反応器(10)中に導入される。図1は、反応器(10)の中心軸に対して垂直方向にある平面に対して並行なノズル(12)の配向を示す。
【0023】
図3及び図4は、本発明の有利な実施態様を示し、ここでは中空円錐型クラスターノズル(22)が使用され、これは導入された液状TiCl4(14)を一成分ノズル(12)に比較してより小さい液滴に噴霧する(24)。本発明の他の一変形において、一成分ノズルの代わりに、例えば(12)及び(22)二成分ノズルが使用され、ここでは同時に液体、例えばTiCl4及び推進ガス(Treibgas)(推進媒体)が反応器(10)中に導入されることができる。推進媒体としては、例えば、窒素、アルゴン、塩素ガス及び酸素の群からのガス1種又はこの混合物が使用されることができる。
【0024】
図5は、本発明の一実施態様を示し、ここではノズル(12)は、管型反応器(10)の周に対して半径方向に配置され、かつ、反応器(10)の中心軸に対して垂直方向にある平面に対して並行に調整されている。液状TiCl4(14)は、ノズル(12)により反応器(10)中に導入され、噴霧される(26)。
【0025】
図6は、本発明の更なる一実施態様を示し、ここではノズル(12)は、管型反応器(10)の周に対して接線方向に配置され、かつ、反応器(10)の中心軸に対して垂直方向にある平面に対して並行に調整されている。液状TiCl4(14)は、ノズル(12)により反応器(10)中に導入され、噴霧される(28)。ノズル(12)の接線方向の配置により反応器(10)中の流は回転する。これにより、技術水準によれば反応器(10)中に導入される研磨粒子は、内壁の清浄化のために反応器(10)中でより良好に分散する。
【0026】
この記載の実施形態は、本発明の可能性のある変形を提示するだけであり、本発明の限定であると理解すべきでない。例えば、本発明による方法は選択的に、反応区域中への、ルチル化(例えばAlCl3)のための及び核形成のための(例えばアルカリ金属塩)助剤の当業者に公知の計量供給も含む。更に、本発明による方法は、酸素が多段階で計量供給される実施態様も含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管型反応器中での四塩化チタンと酸素含有ガスとの反応による二酸化チタン粒子の製造方法において、四塩化チタンを少なくとも2の段階で、液状の形態でのみ反応器中に導入することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
四塩化チタンを一成分ノズルを用いて、特に中空円錐型クラスターノズルを用いて導入することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
四塩化チタンを二成分ノズルを用いて導入することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
窒素、アルゴン、塩素ガス又はこれらの混合物のガスの群からの推進媒体を使用することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
ノズルが保護ガスにより取り囲まれていることを特徴とする請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ノズルが、反応器の中心軸に対して垂直方向にある平面に並行に調整されていることを特徴とする請求項2から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ノズルが反応器の周に対して接線方向に配置されていることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
酸素が約1600℃までの温度、有利には約740〜1000℃の範囲内の温度に予備加熱されることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により製造された二酸化チタン粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−500483(P2011−500483A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528305(P2010−528305)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008431
【国際公開番号】WO2009/049787
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(592039299)クローノス インターナショナル インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】KRONOS INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】Peschstrasse 5, D−51373 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】