説明

二酸化塩素の投与のための方法、システムおよび機器

二酸化塩素の組織への非細胞毒性給送のための機器、組成物、システムおよび方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
二酸化塩素(ClO2)は、+IV酸化状態の天然塩素化合物である。それは酸化により消毒するが、塩素処理はしない。それは比較的小さく、揮発性で、かつ高エネルギーの分子であり、希釈水溶液中であっても遊離基である。二酸化塩素は、亜塩素酸イオン(ClO2-)に還元されるその特有の一電子伝達機構に起因して、高選択性酸化剤として機能する。亜塩素酸イオン/亜塩素酸の平衡に対するpKaは極めて低い(pH1.8)。これは、中性付近で見出される次亜塩素酸/次亜塩素酸系イオン対の平衡とは顕著に異なり、かつ、亜塩素酸イオンが飲料水中にて優占種として存在することになることを示す。
【0002】
二酸化塩素の最も重要な物理特性のうち1つは、水中、具体的には冷水中における、その高い可溶性である。水中の塩素気体の加水分解に対比して、水中の二酸化塩素はいかなる相当程度にも加水分解しないが、溶液中に溶解気体として残存する。
【0003】
二酸化塩素を調製するための従来の方法は、塩素気体(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)、または塩酸(HCl)と、亜塩素酸ナトリウムを反応させることを伴う。当該反応は、
2NaClO2+Cl2(g)→2ClO2(g)+2NaCl [1a]
2NaClO2+HOCl→2ClO2(g)+NaCl+NaOH [1b]
5NaClO2+4HCl→4ClO2(g)+5NaCl+2H2O [1c]
である。
反応[1a]および[1b]は酸性触媒中で遥かに大きい速度で進み、従って、実質的に全ての従来の二酸化塩素の生成化学は3.5未満のpHを有する酸性生成物溶液を結果的にもたらす。また、二酸化塩素生成の反応速度論は塩素アニオン濃度において高次であり、二酸化塩素生成は高濃度(1,000ppm超過)で一般的に行われ、これを利用のための使用濃度に希釈しなければならない。
【0004】
酸性化、または酸性化と還元の組み合わせの何れか一方により、二酸化塩素を塩素酸アニオンから調製することもできる。このような反応の例としては、
2NaClO3+4HCl→2ClO2+Cl2+2H2O+2NaCl [2a]
2HClO3+H2C24→2ClO2+2CO2+2H2O [2b]
2NaClO3+H2SO4+SO2→2ClO2+2NaHSO4 [2c]
が挙げられる。
周囲条件においては、全ての反応が強酸性条件(最も一般的には7〜9Nの範囲内)を必要とする。試薬のより高い温度への加熱と、二酸化塩素の生成物溶液からの連続的除去とにより、必要な酸性度を1N未満に減らすことができる。
【0005】
その場で二酸化塩素を調製する方法は、「安定化二酸化塩素」と呼ばれる溶液を用いる。安定化二酸化塩素溶液は二酸化塩素をほとんどまたは全く含有しないが、むしろ、中性またはわずかにアルカリ性のpHで実質的に亜塩素酸ナトリウムから成る。亜塩素酸ナトリウム溶液への酸の添加は亜塩素酸ナトリウムを活性化し、二酸化塩素は当該溶液中でその場で生成される。結果として得られる溶液は酸性である。典型的には、亜塩素酸ナトリウムの二酸化塩素への変換程度は低く、相当量の亜塩素酸ナトリウムが当該溶液中に残存する。
【0006】
国際公開第2007/079287号は、その一部において、二酸化塩素溶液にアルカリ金属塩を混入すると水性二酸化塩素溶液の分解が促進されることを記述している。それは、貯蔵安定性のある水性二酸化塩素溶液を調製する方法も開示しており、当該溶液は約2,500ppm以下のアルカリ金属塩不純物を含有する。開示されているアルカリ金属塩不純物は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよび硫酸ナトリウムである。
【0007】
二酸化塩素は消毒剤、ならびに強力な酸化剤であると知られている。二酸化塩素の殺菌特性、殺藻特性、殺真菌特性、漂白特性、および脱臭特性も十分に知られている。二酸化塩素の治療用途および化粧用途が知られている。
【0008】
例えば、米国特許第6,287,551号は、ヘルペスウイルス感染症の治療のための安定化二酸化塩素溶液の用途を記載している。米国特許第5,281,412号は、歯に染みを付けることなく歯石防止および抗歯肉炎の便益を提供する、亜塩素酸塩および二酸化塩素の組成物を記載している。
【0009】
米国特許第6,479,037号は、歯白化するための二酸化塩素組成物を調製することを開示しており、当該組成物は、二酸化塩素前駆体(CDP)部分を酸味料(ACD)部分と混合することにより調製される。CDP部分は、7より大きいpHの亜塩素酸金属の溶液である。ACDは酸性であり、好ましくは3.0から4.5のpHを有する。CDPは歯面に塗布される。ACDはその後CDP上に塗布され、亜塩素酸金属を活性化して二酸化塩素を生成する。接触界面におけるpHは、好ましくは6未満であり、最も好ましくは約3.0から4.5の範囲内にある。それ故、歯面上に結果として得られる二酸化塩素組成物は酸性である。加えて、この方法は、口腔粘膜を晒して高酸性試薬(ACD)に接触させる可能性がある。
【0010】
しかしながら、以上で要約された最新文献は、二酸化塩素組成物の使用と、歯のエナメル質および象牙質等の軟組織および硬組織を含む生物組織に損傷を与えている方法とを記載している。必要とされるものは、生物組織が損傷されない二酸化塩素を用いるためのシステムおよび方法である。
【発明の概要】
【0011】
以下の実施形態はこうした必要性を満たしかつ対処する。以下の概要は実施形態の広範な概説ではない。それは、様々な実施形態の主要または重大な要素を特定することも、それらの範囲を明記することも目的としていない。
【0012】
1つの態様では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するための機器が提供される。当該機器は、随意の下地層と、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源層と、二酸化塩素源層と組織との間に挿入される障壁層とを備え、障壁層は、オキシ塩素アニオンのそこを通じる通過を実質的に妨げ、かつ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物のそこを通じる通過を許す。一実施形態では、二酸化塩素源層は二酸化塩素の粒子状前駆体を含む。当該障壁は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される薄膜であり得る。
【0013】
別の態様では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するためのシステムが提供される。当該システムは、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源と、二酸化塩素源と組織との間に挿入されるオキシ塩素アニオン障壁層とを備え、オキシ塩素アニオン障壁層は、オキシ塩素アニオンのそこを通じる通過を実質的に妨げ、かつ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物のそこを通じる通過を許し、それにより、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の組織への給送を可能にする。一実施形態では、二酸化塩素源は二酸化塩素の粒子状前駆体を含む。一実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は、二酸化塩素源と組織との間に挿入される層を備える。
【0014】
オキシ塩素アニオン障壁は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される薄膜であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は二酸化塩素源が分散される基質を備える。蝋、ポリエチレン、ペトロラタム、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、エチレン‐酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン、およびそれらの混合物から成る群から当該基質を選択することができる。
【0016】
別の態様では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するための機器が提供される。当該機器は、下地層と、下地層に取り付けられる基質(マトリックス)とを備え、当該基質は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源と、オキシ塩素アニオンのそこを通じる通過を実質的に妨げ、かつ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物のそこを通じる通過を許す障壁物質とを含む。一実施形態では、二酸化塩素源は二酸化塩素の粒子状前駆体を含む。ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、酸化ポリエチレン、ポリアクリル酸塩類、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、およびそれらの組み合わせから成る群から当該障壁物質を選択することができる。
【0017】
別の態様では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するための組成物が提供される。当該組成物は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源と、オキシ塩素アニオンのそこを通じる通過を実質的に妨げ、かつ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物のそこを通じる通過を許す障壁物質とを含む基質を含み、それにより、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の組織への給送を可能にする。一実施形態では、二酸化塩素源は二酸化塩素の粒子状前駆体を含む。ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、酸化ポリエチレン、ポリアクリル酸塩類、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、およびそれらの組み合わせから成る群から当該障壁物質を選択することができる。
【0018】
さらに提供されるのは、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するための方法である。当該方法は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源を供給することと、オキシ塩素アニオンのそこを通じる通過を実質的に妨げ、かつ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物のそこを通じる通過を許すオキシ塩素アニオン障壁を供給することと、オキシ塩素アニオン障壁を二酸化塩素源と組織との間に挿入する際に二酸化塩素源を組織に塗布することとを含み、それにより、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の組織への給送を可能にする。
【0019】
当該方法のいくつかの実施形態では、二酸化塩素源は二酸化塩素の粒子状前駆体である。一実施形態では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物は、1平方メートル当たり約400ミリグラム(mg/m2)未満のオキシ塩素アニオンを含む。一実施形態では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物は、少なくとも約2.5mg/m2の二酸化塩素を含む。
【0020】
当該方法のいくつかの実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は二酸化塩素源と組織との間に挿入される層を備える。当該層は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される薄膜であり得る。他の実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は二酸化塩素源が分散される基質を備える。
【0021】
当該方法のいくつかの実施形態では、組織は軟組織である。当該組織は、皮膚、粘膜、創傷組織、または硬歯組織であり得る。いくつかの実施形態では、創傷組織は慢性創傷である。慢性創傷は、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、または褥瘡であり得る。
【0022】
図面内には特定の実施形態が描写されている。しかしながら、組成物、方法、システム、および機器は、図面内で描写されている実施形態の厳密な配置および手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本明細書に記載される組成物の様々な実施形態の概略図面である。
【図2】本明細書に記載される機器の様々な実施形態の概略図面である。
【図3】本明細書に記載される機器の様々な実施形態の概略図面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の記載は、実施形態の特定の例解的な態様および実施を詳しく説明している。しかしながら、これらは様々な組成物および機器の原理を使用することができる様々な方法のうちほんのいくつかを示している。組成物、機器、システム、および方法の他の目的、利点、および新規の特徴が、以下の詳細な記載から明白になるだろう。
【0025】
二酸化塩素は、その消毒特性、殺菌特性、殺藻特性、殺真菌特性、漂白特性、および脱臭特性の結果として、生体系内での様々な用途において大変有用であり得る。しかしながら、二酸化塩素組成物は生体組織に有害であると判定されてきた。1つの態様は、二酸化塩素組成物中の細胞毒性成分が二酸化塩素自体ではないという、本発明者の判定に部分的に起因する。その代わりに、二酸化塩素組成物中に存在するオキシ塩素アニオンが細胞毒性成分であると判定されている。この問題に対する1つの解決法は、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性の二酸化塩素溶液および二酸化塩素組成物を調製することである。このような組成物および方法は、同時係属米国出願第61/150,685号に記載されている。別の手法は、二酸化塩素組成物の細胞毒性成分を分離または隔離する一方で、二酸化塩素自体の生物組織への給送を可能にする、システム、組成物および機器を設計することである。従って、様々な態様としては、このような組成物の細胞毒性成分に起因する組織損傷および/または組織刺激を阻害または阻止するように、二酸化塩素を生物組織へ給送する一方で、細胞毒性のオキシ塩素アニオンとのそうした組織の接触を実質的に妨げるための方法、システム、組成物、および機器が挙げられる。
【0026】
当該方法、システム、組成物、および機器は、歯白化剤、経口用、粘膜用および皮膚用の消毒剤、経口用、粘膜用および皮膚用の脱臭剤、および殺生物剤または抗菌剤を含むが、それらに限定されない、治療用途および化粧用途における作用剤として有用である。
【0027】
定義
他に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての専門用語および科学用語は、当該技術分野において通常の技術を有する者により一般に理解されるものと同じ意味を概して有する。概して、本明細書で用いられる術語と、細胞変性性分析、微生物分析、有機化学および無機化学、および歯科臨床研究における実験手順とは、当該技術分野において十分に知られかつ一般に使用されるものである。
【0028】
本明細書で用いられる際に、以下の用語のそれぞれは当該用語と関連する意味を有する。
【0029】
冠詞「一/一つの」は、本明細書にて当該冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つ超過(すなわち、少なくとも1つ)を指すために用いられる。例として、「一要素」は1つの要素または1つ超過の要素を意味する。
【0030】
本明細書で記述されている任意の範囲の間における、ありとあらゆる全部または一部の整数が本発明に含まれることを理解されたい。
【0031】
用語「約」は、当該技術分野において通常の技術を有する者により理解され、かつ、用いられる文脈上である程度変化するだろう。概して、「約」は、参照値のおよそプラスマイナス10%の範囲の値を包含する。例えば、「約25%」は、およそ22.5%からおよそ27.5%までの値を包含する。
【0032】
本明細書で用いられる際に、「殺生物性(の)」は、細菌、藻類、ウイルス類、および真菌類等の病原体を不活性化または死滅させる(例えば、抗菌、抗藻、抗ウイルスおよび抗真菌)特性を指す。
【0033】
用語「二酸化塩素生成成分」は、少なくともオキシ塩素アニオン源および二酸化塩素発生の活性剤を指す。いくつかの実施形態では、活性剤は酸源である。これらの実施形態では、当該成分は遊離ハロゲン源を随意にさらに含む。遊離ハロゲン源は、塩素等の陽イオン性ハロゲン源であってよい。他の実施形態では、活性剤はエネルギー活性化可能な触媒である。さらに他の実施形態では、活性剤は乾燥した極性物質または無水の極性物質である。
【0034】
本明細書で用いられる際の用語「極性物質」は、その分子構造の結果として、分子規模で電気双極子モーメントを有する物質を指す。最も一般的には、極性物質は、異なる電気陰性度を有する化学元素を含む有機物質である。有機物質中において極性を誘起することができる元素としては、酸素、窒素、硫黄、ハロゲン類、および金属類が挙げられる。物質中の極性にはさまざまな度合いがあり得る。物質は、その分子双極子モーメントが大きい場合にはより極性が高く、また、その分子双極子モーメントが小さい場合にはより極性が低いと考えられる。例えば、短い2炭素鎖にわたってヒドロキシルの電気陰性度を支持するエタノールは、6炭素鎖にわたって同程度の電気陰性度を支持するヘキサノール(C613OH)に比べて比較的より極性が高いと考えることができる。物質の誘電定数は、物質の極性の便利な評価基準である。適切な極性物質は、約18〜25℃で測定される場合、2.5より大きい誘電定数を有する。用語「極性物質」は、水または水性物質を除外する。極性物質は、固体、液体、または気体であってよい。
【0035】
本明細書で用いられる際の用語「乾燥(した)」は、非常に少ない遊離水、吸着水、または結晶水を含有する物質を意味する。
【0036】
本明細書で用いられる際の用語「無水(の)」は、遊離水、吸着水、または結晶水を含有しない物質を意味する。以上で定義されているように、無水物質は乾燥もしている。しかしながら、本明細書で定義されているように、乾燥物質は必ずしも無水でない。
【0037】
「有効量」の作用剤は、所望の殺生効果、所望の化粧効果、および/または所望の治療生物学的効果を結果的にもたらすことになる、あらゆる量の作用剤を意味することを目的としている。例えば、歯白化に用いられる作用剤の有効量は、1回以上の処理で歯の白化を結果的にもたらすことになる量である。
【0038】
「性能効率」とは、使用中性能を再現または模擬することを目的とする特定の試験における、酸化剤から成る組成物の性能を意味している。例えば、殺菌のインビトロ研究を、硬面消毒剤としての使用を目的とする組成物の性能を模擬するために用いることができる。同様に、抜歯されたヒトの歯の漂白の程度のインビトロ研究を、歯白化を目的とする組成物の歯白化性能を模擬するために用いることができる。
【0039】
「細胞毒性(の)」とは、致死損傷または亜致死損傷を哺乳類細胞の構造または機能に引き起こす特性を意味している。医薬品有効成分(API)が有効量で存在する際に、組成物が、米国薬局方(USP)<87>の「インビトロにおける生物学的反応性(Biological Reactivity, in vitro)」(2007年承認の現行実施要綱)の寒天拡散試験におけるUSPの生物学的反応性限界を満たす場合、当該組成物は「実質的に非細胞毒性」つまり「実質的に細胞毒性でない」と見なされる。
【0040】
本明細書で用いられる際に、「刺激性(の)」は、即時の、長期の、または繰り返しの接触により、発赤、腫脹、掻痒、熱感、または水疱形成等の局所炎症反応を引き起こす特性を指す。例えば、哺乳類における歯肉組織の炎症は、その組織への刺激の兆候である。組成物が皮膚刺激または粘膜刺激性を評価するための任意の標準方法を用いてわずかに刺激性または刺激性でないと判断される場合、当該組成物は「実質的に非刺激性」つまり「実質的に刺激性でない」と見なされる。皮膚刺激性を評価するのに有用な方法の限定されない例としては、ヒト皮膚組織モデル(例えば、チャタジーら、2006年、毒物学短報167:85〜94ページ(Chatterjee et al, 2006, Toxicol Letters 167: 85-94)を参照されたい)であるEpiDerm(商標)(MatTek Corp.、マサチューセッツ州、アシュランド)等の、または生体外の真皮標本である、組織工学によって作製された皮膚組織を用いるインビトロ試験の使用が挙げられる。粘膜刺激に有用な方法の限定されない例としては、HET‐CAM(雌鶏の卵試験‐絨毛尿膜)、ナメクジの粘膜刺激性試験、および、組織工学で作られた口腔粘膜または膣‐子宮膣部の組織を用いるインビトロ試験が含まれる。刺激性測定の他の有用な方法としては、ラットまたはウサギの皮膚の皮膚刺激性等のインビボ法(例えば、ドレイズ皮膚試験(OECD、2002年、試験指針404(Test Guidelines 404)、急性皮膚刺激性/腐食性(Acute Dermal Irritation/Corrosion))、および、EPA健康影響試験指針404;OPPTS 870.2500 急性の皮膚刺激性(EPA Health Effects Testing Guidelines; OPPTS 870.2500 Acute Dermal Irritation)が挙げられる。当業者は、皮膚刺激性または粘膜刺激性を評価する当該技術分野で承認された方法に精通している。
【0041】
「オキシ塩素アニオン」とは、亜塩素酸アニオン(ClO2-)および/または塩素酸アニオン(ClO3-)を意味している。
【0042】
「実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物」とは、全て上文で定義されているように、有効量の二酸化塩素と非細胞毒性濃度および/または非刺激性濃度のオキシ塩素アニオンとを含有する組成物を意味している。当該組成物は他の成分を含有する場合があり、あるいは、オキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素から実質的に成る場合がある。当該組成物は、二酸化塩素を含むか、実質的にそれから成る気体または蒸気である場合があるが、溶液または高粘度の流体を含む、任意の種類の流体であってよい。当該組成物は水性流体でも非水性流体でもよい。
【0043】
「安定性(の)」とは、二酸化塩素を生成するために用いられる成分、すなわち、二酸化塩素生成原料が直ちに互いに反応して二酸化塩素を生成しないことを意味している。ClO2の生成が予定されている時間まで混合物が安定である限り、連続的および/または同時などのように、任意の方法で当該成分を混合することができることを理解されたい。
【0044】
「非反応性(の)」とは、用いられる成分または原料が、存在する他の成分または原料と直ちに許容不可能な程度まで反応して二酸化塩素を生成することもなく、あるいは、処方における必要なタイミングで任意の成分または原料が役割を果たすため能力を損なっていることもない、ということを意味している。当業者が認識することができるように、非反応性に対する許容可能な時間枠は、処方物をどのように処方および貯蔵するか、どの位長く貯蔵するか、および、処方物をどのように用いるかを含む、いくつかの要因に依存することになる。したがって、「直ちに反応しない」は、1分以上から1時間以上までにも、1週間以上までにも変動する。
【0045】
語句「高粘度流体組成物」は、印加せん断応力下で流れることができ、かつ、同じ濃度の対応する水性二酸化塩素溶液の粘度よりも大きな、流動時の見掛け粘度を有する組成物を包含する。これは、(せん断速度のせん断応力に対する比率が一定であり、かつ、せん断応力に非依存的である)ニュートン流動を示す流体と、(流動の前に最小降伏応力を克服する必要があり、かつ持続せん断を伴うせん断細線化も示す)揺変性流体と、(流動の前に最小降伏応力を克服する必要がある)擬塑性流体および塑性流体と、(せん断速度の増加に伴って見掛け粘度が増加する)膨張性流体組成物と、印加降伏応力下で流れることができる他の物質とを含む、高粘度流体組成物の全範囲を包含する。
【0046】
「増粘剤成分」は、それが添加される溶液または混合物を増粘する特性を有する成分を指す。「増粘剤成分」は、本項および以上に記載されているように、「高粘度流体組成物」を作るために用いられる。
【0047】
「見掛け粘度」とは、流動をもたらす任意の一連のせん断条件における、せん断応力のせん断速度に対する比率を意味している。見掛け粘度は、ニュートン流体についてはせん断応力に非依存であり、非ニュートン流体組成物についてはせん断速度により変化する。
【0048】
有機重合体に関して用いられる際の用語「疎水性(の)」または「不水溶性(の)」は、25℃で100グラムの水当たり約1グラム未満の水溶性を有する有機重合体を指す。
【0049】
「酸源」とは、それ自体が酸性であるか、あるいは、液体水または固体オキシ塩素アニオンと接触して酸性環境を生み出す物質、通常は粒子状固体物質を意味している。
【0050】
用語「粒子状(の)/粒子状物質」は、全ての固体物質を意味するように定義される。限定されない例としては、粒子状物質を互いに散在させ、何らかの方法で互いに接触させることができる。これらの固体物質は、大きい粒子、小さい粒子、または大きい粒子と小さい粒子との両方の組み合わせを含む粒子を含む。
【0051】
「遊離ハロゲンの源」および「遊離ハロゲン源」とは、水との反応の際にハロゲンを放出する一つの化合物または複数の化合物の混合物を意味している。
【0052】
「遊離ハロゲン」とは、遊離ハロゲン源により放出されるようなハロゲンを意味している。
【0053】
「二酸化塩素の粒子状前駆体」とは、粒子状である二酸化塩素生成反応物の混合物を意味している。ASEPTROL(BASF、ニュージャージー州、フローラムパーク)の顆粒は、例示的な二酸化塩素の粒子状前駆体である。
【0054】
「固形物」とは、固体形、好ましくは多孔質の固体形、または、粒子原料の大きさが固形物の大きさより実質的に小さい、顆粒状粒子原料の混合物を含む錠剤を意味しており、「実質的により小さい」とは、粒子のうち少なくとも50%が、固形物の大きさに比べて、少なくとも1桁小さい、好ましくは少なくとも2桁小さいことを意味している。
【0055】
「酸化剤」とは、電子を引き付け、それにより別の原子または分子を酸化し、それにより還元を受ける任意の物質を意味している。例示的な酸化剤としては、二酸化塩素および過酸化水素等の過酸化物類が挙げられる。
【0056】
本明細書で用いられる「基質」とは、二酸化塩素生成成分の保護担体として機能する物質である。基質は典型的に、二酸化塩素を生成する反応に関与することができる、懸濁されるかそうでなければ含有される物質中において、連続的な固相または液相である。基質は物理的形状を物質に与えることができる。十分に疎水性である場合、基質はその内部の物質を湿気との接触から保護することができる。十分に剛性である場合、基質は構造部材に成形することができる。十分に流動性である場合、基質は基質内の物質を輸送する媒介物として機能することができる。十分に粘着性である場合、基質は、傾斜面、垂直面、あるいは水平な下向きの面に物質を粘着させる手段を提供することができる。流動性基質は、せん断応力の印加の際に直ちに流れる液体でもよく、または、流動を引き起こすために降伏応力閾値を超えることが必要である場合がある。いくつかの実施形態では、(例えば、二酸化塩素を生成する反応を開始するために)他の成分を基質とともに、または、基質内に混合させることができるように、基質は流体であるか、あるいは(例えば、加熱により)流動性になる能力があるものかの何れか一方である。他の実施形態では、基質は連続固体であり、例えば、水または水蒸気の浸透により、あるいは、エネルギー活性化可能な触媒の光活性化により、二酸化塩素の生成を開始することができる。
【0057】
「薄膜」とは、第3の寸法より実質的に大きい2つの寸法を有する物質の層を意味している。薄膜は液体物質でも固体物質でもよい。いくつかの物質に関しては、例えば、蒸発、加熱、乾燥、および/または架橋結合等によって硬化することにより、液体薄膜を固体薄膜に変換することができる。
【0058】
他に示されていないか文脈から明白でない限り、上記および本明細書で示されている定義は、本明細書で検討されている実施形態の全体に当てはまる。
【0059】
二酸化塩素含有組成物の細胞毒性は、オキシ塩素アニオンの存在に圧倒的に起因し、二酸化塩素の分解の生成物であり得る塩素の存在には起因しない。したがって、二酸化塩素含有組成物中に存在するオキシ塩素アニオンが、硬歯組織、軟組織、創傷組織、または他の治療標的の組織を含む細胞および組織に接触することを実質的に阻止または阻害することにより、組織損傷をある程度減少または最小化することができる。
【0060】
従って、一つの態様は、二酸化塩素は有効量が標的組織に到達するが、オキシ塩素アニオンは標的組織または治療標的ではない周囲組織を刺激することを実質的に阻害される様式で、二酸化塩素およびオキシ塩素アニオンを含む組成物を給送するための方法を提供する。当該方法は、二酸化塩素自体または二酸化塩素生成成分の何れか一方を含み、かつ細胞毒性を組織に引き起こすオキシ塩素アニオンをさらに含む二酸化塩素源を供給することと、オキシ塩素アニオンのオキシ塩素アニオン障壁を通じる通過を実質的に妨げ、かつ、二酸化塩素のオキシ塩素アニオン障壁を通じる通過を許すオキシ塩素アニオン障壁をさらに供給することとを含む。二酸化塩素源は、オキシ塩素アニオン障壁が二酸化塩素源と組織との間に挿入される際に組織に塗布され、それ故に、オキシ塩素アニオンが組織に到達することを阻止または実質的に最小化し、それにより、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の組織への給送を可能にする。
【0061】
二酸化塩素源は、その場で二酸化塩素を生成する能力のある任意の二酸化塩素含有の組成物または原料を含む場合がある。(同時係属米国出願第61/150,685号に記載されている二酸化塩素源等の)既に実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素源を利用することができるが、本方法は、組織に接触することを阻止する必要がある細胞毒性量のオキシ塩素アニオンを含有するか貯蔵または使用の際に生成する二酸化塩素源が、より適切であることが想定される。二酸化塩素源中に存在する原料は、好ましくは、当該方法の実行中に、ならびに原料が障壁と接触している任意の前使用期間の最中に、オキシ塩素アニオン障壁と相溶性である。「相溶性」とは、原料が、二酸化塩素源中における二酸化塩素の濃度、オキシ塩素アニオンの通過の阻害、または障壁により許可される二酸化塩素の通過に、許容不可能な程度まで悪影響を及ぼさないことを意味している。
【0062】
当該障壁は、二酸化塩素源と組織との間にある層の形態にある場合がある。1つの態様では、二酸化塩素源を有しないオキシ塩素障壁は、最初に組織に塗布される。その後、二酸化塩素源が障壁層に塗布される。他の実施形態では、二酸化塩素源が最初に障壁に塗布され、その後、その組み合わせが組織に塗布され、そこで障壁層が組織に接触する。二酸化塩素源が二酸化塩素生成成分を含む実施形態では、(二酸化塩素源を有するか、または有しない)障壁の組織への塗布前、塗布中、および/または塗布後に、二酸化塩素の生成を活性化することができる。
【0063】
別の実施形態では、実質的に非細胞毒性かつ実質的に非刺激性である量のオキシ塩素アニオンを含有する二酸化塩素源と組織を接触させることができ、その一方で、第2の二酸化塩素源からのさらなる二酸化塩素が障壁を通じて組織に接触することができるが、当該第2の源中のオキシ塩素アニオンの障壁を通じる通過は阻害されるように、当該第2の源を組織の反対側の障壁の側面上に位置付けることができる。
【0064】
別の実施形態では、オキシ塩素アニオンが組織から離れて隔離され、その一方で、二酸化塩素が、必要であれば障壁物質を、そして基質を通過して組織に接触するように、1つ以上の障壁物質を含む基質中に二酸化塩素源を分散させることができる。この実施形態では、当該基質は組織に直接、あるいは随意の介在組織接触層に塗布される。1つの態様では、基質それ自体が障壁物質である。障壁として機能することもできる例示的な基質物質としては、パラフィン蝋等の蝋、ポリエチレン、ペトロラタム、ポリシロキサン類、ポリビニルアルコール、エチレン‐酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン類、それらの混合物、および同様のものが挙げられる。別の態様では、二酸化塩素源は障壁物質により被覆または被包される。例示的な障壁物質としては、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、酸化ポリエチレン、ポリアクリル酸塩類、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。例示的な障壁物質は、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物が組織に給送されるように、高親和性でオキシ塩素アニオンに結合し、かつアニオンの移動または拡散を妨げるか止める化合物も含む。当該化合物はオキシ塩素アニオンを有する不溶な沈殿物を形成してよく、それにより拡散を妨げるか止めることができる。代替的には、当該化合物は物質または素材の上に固定され、それにより拡散または移動を妨げる。アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウムおよびスルホニウム、ならびに基質の一部であり得る他の陽電荷の化合物のように、当該化合物は陽イオン性であり得る。随意的には、オキシ塩素アニオン障壁物質上に、基質に、または随意の下地層上に、当該化合物を固定することができる。
【0065】
様々な物質および膜をオキシ塩素アニオン障壁として用いることができる。当該障壁は任意の形態にあってよく、典型的には流体または固体である。
【0066】
他の実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁はペトロラタム等の流体である。この実施形態では、当該流体を最初に組織に、または介在組織接触層に塗布して、障壁を層として形成することができ、その後、二酸化塩素源を流体障壁層に引き続き塗布することができる。二酸化塩素源を粒子状物質として塗布することができるか、あるいは薄膜を形成する物質中に包含することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は非多孔性膜である。当該膜が二酸化塩素に透過性のままであり、かつオキシ塩素アニオンに非透過性のままである条件で、当該膜は任意の厚さであってよく、かつ単一層でも複数層でもよい。一つの例示的な非多孔性物質はポリウレタン膜である。いくつかの実施形態では、ポリウレタン膜は、例えば約38ミクロン厚から約76ミクロン厚のように、約30ミクロンから約100ミクロンである。市販の例示的なポリウレタン膜としては、CoTran(商標) 9701(3M(商標) Drug Delivery Systems、ミネソタ州、セントポール)およびELASTOLLAN(BASF Corp.、ミシガン州、ワイアンドット)が挙げられる。ELASTOLLANの製品はポリエーテル系の熱可塑性ポリウレタンである。ELASTOLLANの具体的な一例は、ELASTOLLAN 1185A10である。
【0068】
いくつかの実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は、二酸化塩素に対して透過性で、かつオキシ塩素アニオンに対して実質的に非透過性の微細孔性膜である。当該膜が二酸化塩素に対して透過性のままであり、かつオキシ塩素アニオンに対して実質的に非透過性のままである条件で、当該膜は任意の厚さであってよく、かつ単一層でも複数層でもよい。1つの例では、微細孔性膜は、熱機械的に膨張したポリテトラフルオロエチレン(例えば、Goretex(登録商標))または二フッ化ポリビニリデン(PVDF)を含み得る。例えば、米国特許第4,683,039号を参照されたい。膨張したポリテトラフルオロエチレンの生成のための手順は、米国特許第3,953,566号に記載されている。一つの例示的なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、ポリジメチルシロキサンおよびPTFEの相互浸透重合体網目(IPN)は、米国特許第4,832,009号、第4,945,125号、および第5,980,923号に記載されている。この種類の市販製品、Silon‐IPN(Bio Med Sciences Inc.、ペンシルベニア州、アレンタウン)は単一層であり、かつ10ミクロンから750ミクロンの間の厚さで入手可能である。1つの実施形態では、微細孔性膜は、約16ミクロンの厚さを有するシリコーンおよびPTFEのIPNである。別の例では、当該膜は微細孔性のポリプロピレン薄膜である。一つの例示的な微細孔性のポリプロピレン薄膜は、CHEMPLEX Industries(フロリダ州、パームシティ)より市販されている素材であり、これは約25ミクロン厚の単一層膜であり、55%の間隙率および約0.21ミクロン×0.05ミクロンの細孔径を有する。
【0069】
微細孔性の膜物質は支持物質合成物として形成されることができ、使用に必要とされる構造強度を実現する。いくつかの実施形態では、当該膜は疎水性であり、そこで、当該膜の疎水性質は、水性反応媒体および水性受容媒体の両方が当該膜を通過することを防ぎ、その一方で、二酸化塩素の分子拡散を可能にする。このような障壁に用いられる物質に関して考慮する特徴としては、微細孔性物質の疎水性、細孔径、厚さ、および、二酸化塩素、塩素、亜塩素酸塩、塩素酸塩、塩化物、酸、および塩基の攻撃に対する化学安定性が挙げられる。
【0070】
様々な他の物質および膜を用いて障壁を形成することができる。例えば、当該障壁は、微穿孔処理したポリオレフィン膜、二酸化塩素に対して実質的に透過性であり、かつ当該組成物のイオン性成分に対して実質的に非透過性であるポリスチレン薄膜、比較的目の粗い重合体構造を有する重合体物質から形成された浸透気化膜、酢酸セルロースの薄膜合成物と、ポリシロキサンまたはポリウレタンの素材、または蝋を含み得る。当然ながら、軟組織との接触のために、微細孔性障壁は、特に当該機器および組成物の典型的な使用の時間尺度内において、実質的に非刺激性かつ実質的に非細胞毒性であるべきである。
【0071】
当該障壁内の細孔径は、障壁を通じる二酸化塩素の所望の流動速度に依存して、広範に変化する場合がある。細孔はそこを通じる二酸化塩素の気体流を阻止するほど小さくあるべきでないが、液体流が許されるほど大きくあるべきでもない。1つの実施形態では、細孔径は約0.21ミクロン×0.05ミクロンである。障壁の細孔の数量および大きさは、適用温度、障壁物質の疎水性、障壁物質の厚さに依存して、また、障壁を通じる二酸化塩素の所望の流動速度に依存して、広範に変化する場合がある。高温になると二酸化塩素源からの二酸化塩素の蒸気圧が高くなるため、一定の二酸化塩素の流動速度を実現するためには、低温の場合に比べて高温の場合の方が、より少なくより小さい細孔が必要となる。水性二酸化塩素源は低疎水性障壁の細孔を通るよりも高疎水性障壁の細孔を通って流れる傾向があるため、ポリウレタン等の低疎水性物質と比べると、PTFE等の高疎水性障壁物質における方が、より多くより大きい細孔を用いる場合がある。障壁強度の考慮は選択される間隙率にも影響する。概して、障壁の間隙率は、約1%から約98%、約25%から約98%、または約50%から約98%に変化する。
【0072】
同様に当該方法を実行するのに有用なシステム、組成物、および機器が提供される。
【0073】
1つの態様では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素を組織に給送するためのシステムが提供される。典型的なシステムは、第1システム構成部としての二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素源およびオキシ塩素アニオンと、第2システム構成部としてのオキシ塩素アニオン障壁とを備え、その障壁は二酸化塩素源と組織との間に挿入され、オキシ塩素アニオンの通過を実質的に妨げ、かつ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許し、それにより、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素の組織への給送を可能にする。
【0074】
以上に記載されている方法およびシステムを実施するための組成物および機器も提供される。それ故、1つの態様は、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織へ給送するための組成物を特色とする。図1Aで例解されるように、当該組成物は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分、ならびにオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源10と、オキシ塩素アニオンの通過を実質的に妨げるが、二酸化塩素の通過を許す少なくとも1つの障壁物質14とを含み、それにより、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素の組織への給送を可能にするような、基質12を含む。1つの実施形態では、基質は水性基質でも、ペトロラタム等の疎水性基質または無水基質でもよい。いくつかの実施形態では、基質自体が障壁物質である。例えば、基質は、オキシ塩素アニオンの拡散を阻害し、その一方で二酸化塩素の拡散を許すために、無極性でも弱極性でもよい。図1Bで例解されるように、二酸化塩素源10は基質12内で分散され、そこで基質は障壁物質である。
【0075】
基質の大部分が障壁物質であってよいか、あるいは、基質は、二酸化塩素の組織への選択的給送を実行するのに十分な量の障壁物質を含み得る。例えば、基質は、その中に二酸化塩素の生成のための反応物または前駆体が埋め込まれるか分散される重合体物質を含み、そこで、重合体物質は二酸化塩素に対して透過性であるが、オキシ塩素アニオンに対して実質的に不透過性である。例えば、光波への暴露により、より具体的には紫外線放射への暴露により活性化されて二酸化塩素を生成する、ポリエチレン中に埋め込まれた反応物または前駆体およびエネルギー活性化可能な触媒を含む組成物を記載している、米国特許第7,273,567号を参照されたい。
【0076】
いくつかの実施形態では、基質は粘着性重合体基質等の粘着性基質である。このような粘着性基質中で有用な重合体は二酸化塩素に対して実質的に透過性であり、好ましくは、重合体の見込まれる分解および見込まれる必然の粘着性変化を制限するように、二酸化塩素による酸化に対して比較的耐性がある。粘着性重合体は当該技術分野で知られている。例えば、米国特許第7,384,650号を参照されたい。
【0077】
例えば、組織上に広げるかまたはその他の方法で組織に塗布することにより、あるいは、以下に記載されているように給送機器に組み込むことにより、当該組成物を組織に塗布することができる。
【0078】
有効量の二酸化塩素が標的組織に接触し、その一方で、オキシ塩素アニオンが組織に接触することを実質的に阻害または阻止されるように、二酸化塩素およびオキシ塩素アニオンを含む組成物を標的組織に給送するための様々な機器が想定される。十分な阻害は、標的組織および任意の周囲または周辺の組織に対する損傷または刺激を減らし、最小化し、または排除する。
【0079】
当該機器は、典型的には、接触する組織に対して遠位の層と、接触する組織に対して近位の層とを備える方向に向いている。遠位層は本明細書で下地層とも呼ばれる。当該機器は、組織接触層に貼りつけられており、機器を組織に適用する前に取り外される、取り外しライナーをさらに備えてもよい。図2Aで例解される1つの実施形態では、機器18は、二酸化塩素源を含む層20と、障壁層22とを備える。図2Bで例解される別の実施形態では、機器24は、(1)下地層26と、(2)二酸化塩素源を含む層20と、(3)障壁層22とを備える。障壁層を組織に接触するように適合することができるか、あるいは、別の層が障壁層と組織との間に存在する場合がある。後者の実施形態が図2Cで例解されており、そこで、機器28は、(1)下地層26と、(2)二酸化塩素源を含む層20と、(3)障壁層22と、(4)組織接触層30とを備える。障壁層22または追加の組織接触層30は粘着性であり得る。随意の追加の組織接触層30は、二酸化塩素に対して実質的に透過性でもある。いくつかの実施形態では、熱機械的に膨張したポリテトラフルオロエチレン薄膜から障壁層22を作ることができる。いくつかの実施形態では、層20中の二酸化塩素源は、ASEPTROLの顆粒等の、二酸化塩素の粒子状前駆体である。
【0080】
概して、下地層は、二酸化塩素および二酸化塩素源の他の成分に対して実質的に不透過性である、任意の適切な物質でできていてよい。下地層は、基質層のための保護被覆としての役割を果たすことができ、かつ支持機能を提供することもできる。下地層用の例示的な素材としては、高密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレン、二塩化ポリビニリデン(PVDC)、二フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン、ポリウレタン、金属箔、および同様のものから成る薄膜が挙げられる。
【0081】
随意の組織接触層は、二酸化塩素に対して実質的に透過性である任意の素材であってよい。随意の組織接触層は吸収性素材であってよい。この層に関する限定されない例としては、綿あるいは他の天然繊維または合成繊維の織物または編物、発泡体およびマットが挙げられる。
【0082】
図3Aで例解される別の実施形態では、機器32は以上で記載されているように下地層26および基質12を備え、基質中には二酸化塩素源10が分散され、かつ基質は少なくとも1つの障壁物質14を備える。基質を組織に接触させるように適合することができるか、あるいは、追加の組織接触層が存在する場合がある。この実施形態は図3Bで例解されており、下地層26と、基質12と、組織接触層30とを備える機器38を描写する。基質または追加の組織接触層の何れか一方が粘着性であり得る。典型的には、基質が調製され、その後下地層上に被覆される。
【0083】
同様に意図されるのは、オキシ塩素アニオンを含有する二酸化塩素溶液を、局所病変等の特定の組織に、連続的および/または断続的に供給するための機器である。当該機器は、同一出願人による米国出願第61/149,784号に記載されている潅注機器の修正物である。その修正は、オキシ塩素アニオン障壁の追加である。具体的には、本発明で意図される機器はオキシ塩素アニオン障壁を備える室を備え、そこで、当該機器は、二酸化塩素溶液を当該室内に供給するための入口部と、二酸化塩素溶液を除去するための出口部と、オキシ塩素アニオン障壁により被覆される開口部とを有する。当該室は、組織が創傷または局所病変を包囲している状態で、堅固で実質的な漏れ防止の封止体を形成するように設計され、そこで、開口部は創傷または局所病変に対して近位である。オキシ塩素アニオンは、創傷または局所病変と室開口部との間に挿入される。オキシ塩素アニオンを含有する二酸化塩素溶液は当該室内に導入され、二酸化塩素は開口部を被覆するオキシ塩素アニオン障壁を通過し、それにより創傷または局所病変に接触し、その一方で、障壁を通じるオキシ塩素アニオンの通過は、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性の水準に制限される。この機器は、本明細書に記載されている他のもののように、高濃縮二酸化塩素溶液(例えば、約700ppmより遥かに大きい)の使用を可能にし、その一方で、このような溶液中で典型的にみられるオキシ塩素アニオンの細胞毒性を最小化または除去する。
【0084】
二酸化塩素を調製するための当該技術分野における任意の方法を、二酸化塩素を作る二酸化塩素源として用いることができる。例えば、水中で亜塩素酸イオンを反応させ、水中に溶解した二酸化塩素気体を生成することにより、二酸化塩素を調製する方法がいくつかある。二酸化塩素を調製するための従来の方法は、塩素気体(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)、または塩酸(HCl)と、亜塩素酸ナトリウムを反応させることを伴う。しかしながら、二酸化塩素生成の反応速度論は亜塩素酸アニオン濃度において高次であるため、二酸化塩素生成は高濃度(1,000ppm超過)で一般的に行われ、結果的に得られた二酸化塩素含有溶液を所定用途の使用濃度に希釈しなければならない。酸性化、または酸性化と還元の組み合わせの何れか一方により、二酸化塩素を塩素酸アニオンから調製することもできる。亜塩素酸イオンを有機酸無水物と反応させることにより、二酸化塩素を生成することもできる。
【0085】
水蒸気との接触の際に二酸化塩素気体を生成する物質から成る二酸化塩素生成組成物が、当該技術分野で知られている。例えば、同一出願人による米国特許第6,077,495号、第6,294,108号、および第7,220,367号を参照されたい。米国特許第6,046,243号は、親水性物質中に溶解した亜塩素酸塩と、疎水性物質中にある酸放出剤との合成物を開示している。当該合成物は、湿気への曝露の際に二酸化塩素を生成する。同一出願人による米国特許公開第2006/0024369号は、有機基質に組み込まれた、二酸化塩素生成物質を含む二酸化塩素生成合成物を開示している。当該合成物が水蒸気または電磁エネルギーに曝露される際に、二酸化塩素が生成される。乾燥極性物質を用いた活性化による、乾燥または無水の二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素生成が、同一出願人による同時係属出願第61/153,847号に開示されている。米国特許第7,273,567号は、亜塩素酸アニオン源およびエネルギー活性化可能な触媒を含む組成物から二酸化塩素を調製する方法を記載している。当該組成物の適切な電磁エネルギーへの曝露は、触媒を活性化し、その結果、その触媒は二酸化塩素気体の生成を触媒する。
【0086】
二酸化塩素溶液は、粉末、顆粒、ならびに、錠剤およびブリケット等の固体成形体を含む固体混合物からも生成することができ、これらの固体混合物は液体水と接触すると二酸化塩素気体を生成する成分から成る。例えば、同一出願人による米国特許第6,432,322号、第6,699,404号、および第7,182,883号、ならびに米国特許公開第2006/0169949号および第2007/0172412号を参照されたい。好適な実施形態では、二酸化塩素は、二酸化塩素の粒子状前駆体を含む組成物から生成される。それ故、二酸化塩素源は、二酸化塩素の粒子状前駆体を含むか、あるいは二酸化塩素の粒子状前駆体から実質的に成る。使用される粒子状前駆体は、ASEPTROL S‐Tab2およびASEPTROL S‐Tab10等のASEPTROL製品であってよい。ASEPTROL S‐Tab2は、以下の化学組成(重量(%))を有する:NaClO2(7%)、NaHSO4(12%)、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物(NaDCC)(1%)、NaCl(40%)、MgCl2(40%)。米国特許第6,432,322号の実施例4は、S‐Tab2の錠剤の例示的な製造工程を記載している。ASEPTROL S‐Tab10は、以下の化学組成(重量(%))を有する:NaClO2(26%)、NaHSO4(26%)、NaDCC(7%)、NaCl(20%)、MgCl2(21%)。米国特許第6,432,322号の実施例5は、S‐Tab10の錠剤の例示的な製造工程を記載している。
【0087】
オキシ塩素アニオン源は、一般的に亜塩素酸塩類および塩素酸塩類を含む。オキシ塩素アニオン源は、亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸アルカリ土類金属塩、塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸アルカリ土類金属塩およびこのような塩の組み合わせであってよい。亜塩素酸金属類が好適である。好適な亜塩素酸金属類は、亜塩素酸ナトリウムおよび亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属類である。亜塩素酸アルカリ土類金属類も使用することができる。亜塩素酸アルカリ土類金属類の例としては、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸カルシウム、および亜塩素酸マグネシウムが挙げられる。一つの例示的亜塩素酸金属は亜塩素酸ナトリウムである。
【0088】
酸源により活性化される二酸化塩素生成に関して、酸源は、無機酸塩類と、強酸類のアニオンおよび弱塩基の陽イオンを含む塩と、水と接触される際に陽子を溶液内に遊離させることができる酸と、有機酸と、無機酸と、それらの混合物とを含む場合がある。いくつかの態様では、酸源は、乾燥貯蔵の最中に亜塩素酸金属と実質的に反応しないが、水性媒体の存在下にある場合に亜塩素酸金属と反応して二酸化塩素を生成する粒子状固体物質である。酸源は、水溶性か、水中で実質的に不溶性か、またはそれら2つの中間であってよい。例示的な酸源は、約7未満のpH、より好ましくは約5未満のpHを生じさせるものである。
【0089】
例示的な実質的に水溶性の酸源形成成分としては、ホウ酸、クエン酸、酒石酸等の水溶性固体酸、マレイン酸無水物等の水溶性有機酸無水物、および、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、硫酸水素カリウム(KHSO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)等の水溶性酸塩、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。例示的な酸源形成成分は、硫酸水素ナトリウム(重硫酸ナトリウム)である。追加の水溶性の酸源形成成分は、当業者に知られるだろう。
【0090】
二酸化塩素生成成分は遊離ハロゲンの源を随意に含む。1つの実施形態では、遊離ハロゲン源は遊離塩素源であり、遊離ハロゲンは遊離塩素である。無水組成物中で用いられる遊離ハロゲン源の適切な例としては、NaDCCA、トリクロロシアヌル酸等のジクロロイソシアヌル酸およびその塩、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、および次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸の塩、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジブロモジメチルヒダントイン、および同様のものが挙げられる。一つの例示的な遊離ハロゲンの源はNaDCCAである。
【0091】
エネルギー活性化可能な触媒により活性化される二酸化塩素生成に関して、エネルギー活性化可能な触媒は、酸化金属、硫化金属、およびリン化金属から成る群から選択される。例示的なエネルギー活性化可能な触媒としては、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化ルテニウム(RuO2)、二酸化イリジウム(IrO2)、二酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化タンタル(Ta25)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、酸化鉄(III)(Fe23)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化ニオブ(NbO5)、三酸化インジウム(In23)、酸化カドミウム(CdO)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化銅(Cu2O)、五酸化バナジウム(V25)、三酸化クロム(CrO3)、三酸化イットリウム(YO3)、酸化銀(Ag2O)、TixZr1-x2(式中、xは0と1との間である)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される酸化金属類が挙げられる。酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、およびそれらの組み合わせから成る群から、エネルギー活性化可能な触媒を選択することができる。
【0092】
二酸化塩素生成成分は随意に基質中に存在する場合がある。このような基質は、同一出願人による米国特許公開第2006/0024369号に記載されているもののような有機基質である場合がある。こうした基質中では、当該合成物が水蒸気または電磁エネルギーに曝露される際に二酸化塩素が生成される。基質は含水ゲルでも無水ゲルでもよい。疎水性基質を使用することもできる。疎水性基質物質としては、疎水性蝋等の防水性固体成分、疎水性油等の防水性流体、および疎水性固体と疎水性流体の混合物が挙げられる。疎水性基質を用いる実施形態では、同時係属米国出願第61/153,847号に記載されているように、二酸化塩素の活性剤は乾燥した極性物質または無水の極性物質である場合がある。
【0093】
組織に給送されるべき二酸化塩素の量(すなわち、有効量)は、二酸化塩素の組織への塗布から意図される結果に関係することになる。当業者は、所定の用途に有効な二酸化塩素の適切な量または量範囲を容易に決定することができる。概して、有用な量は、例えば、少なくとも約5ppmの二酸化塩素、少なくとも約20ppm、および少なくとも約30ppmを含む。典型的には、二酸化塩素の量は、約1,000ppmに、約700ppmまでに、約500ppmまでに、および約200ppmまでに及ぶ場合がある。特定の実施形態では、二酸化塩素の濃度は、約5ppmから約700ppmに、好ましくは約20ppmから約500ppmに、最も好ましくは約30ppmから約200ppmの二酸化塩素に及ぶ。1つの実施形態では、当該組成物は約30ppmから約40ppmの二酸化塩素を含む。1つの実施形態では、当該組成物は約30ppmを含む。別の実施形態では、当該組成物は約40ppmを含む。いくつかの実施形態では、有用な用量範囲は、接触面積(平方メートル)当たり約2.5mgの二酸化塩素から、約500mg/m2の二酸化塩素であり得る。少なくとも約10mg/m2の用量、少なくとも約15mg/m2の用量、および少なくとも約20mg/m2の用量が有用である場合もある。
【0094】
組織と接触する二酸化塩素は、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない。1つの実施形態では、組織に接触する実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、1グラム当たり0ミリグラム(mg)のオキシ塩素アニオンから1グラム当たりわずか約0.25mgのオキシ塩素アニオン、あるいは1グラムの組成物当たり0mgから0.24mg、0.23mg、0.22mg、0.21mg、または0.20mgのオキシ塩素アニオン、あるいは1グラムの組成物当たり0mgから0.19mg、0.18mg、0.17mg、0.16mg、0.15mg、0.14mg、0.13mg、0.12mg、0.11mg、または0.10mgのオキシ塩素アニオン、あるいは1グラムの組成物当たり0mgから0.09mg、0.08mg、0.07mg、0.06mg、0.05mgまたは0.04mgのオキシ塩素アニオンを、細胞毒性に寄与する他の構成要素を伴わない状態で含み、それ故に実質的に非細胞毒性である。いくつかの実施形態では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、1平方メートルの接触面積当たり約400ミリグラム未満、約375mg/m2未満、約350mg/m2未満、約325mg/m2未満、または約300mg/m2未満のオキシ塩素アニオンを含む。いくつかの実施形態では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、0mg/m2から約200mg/m2未満のオキシ塩素アニオンを含む。他の実施形態では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、0mg/m2から約100mg/m2未満のオキシ塩素アニオンを含む。
【0095】
EPA試験法300(EPA test method 300)(プファッフ、1993年、「方法300 イオンクロマトグラフィーによる無機アニオンの測定」、改訂2.1、米国環境保護庁(Pfaff, 1993, "Method 300.0 Determination of Inorganic Anions by Ion Chromatography," Rev. 2.1, US Environmental Protection Agency))の基本手順に従うイオンクロマトグラフィー、または、電流測定法に基づく滴定法(イートン他編「水および廃水の検査のための標準方法」第19版、米国公衆衛生協会、ワシントンDC、1995年、の電流測定法II(Amperometric Method II in Eaton et al, ed., "Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater" 19th edition, American Public Health Association, Washington DC, 1995))を含む、当業者に知られている任意の方法を用いて、二酸化塩素の溶液または組成物中でオキシ塩素アニオンを測定することができる。代替的には、電流測定法と同等な、しかしヨウ化物のヨウ素への酸化の後に電流滴定の代わりにデンプン終点へのチオ硫酸ナトリウムの滴定とを用いる滴定技術により、オキシ塩素アニオンを測定することができ、この方法は本明細書で「pH7緩衝滴定」と呼ばれる。純粋な亜塩素酸ナトリウムを約80重量%含むと一般的に想定される工業用固体亜塩素酸ナトリウムから、亜塩素酸塩の分析標準物を調製することができる。
【0096】
任意の生物組織または任意の生物物質で当該方法を実行することができる。本明細書で用いられる際に、「生物組織」は、任意の生きた細胞または組織、あるいは任意の生体の一部を形成する組織または細胞を指す。具体的には、当該用語は、粘膜組織、表皮組織、および皮下組織(真皮組織とも呼ばれる)のうち1つ以上を含む動物の組織、好ましくは哺乳類の組織を指す。粘膜組織としては、頬粘膜、他の口腔粘膜(例えば、軟口蓋粘膜、口粘膜の底部、および舌下の粘膜)、膣粘膜および肛門粘膜が挙げられる。これらの粘膜組織は、本明細書で集合的に「軟組織」と呼ばれる。生物組織は無傷である場合があるか、あるいは、1つ以上の切創、裂傷、または他の組織貫通開口部を有する場合がある。「生物物質」としては、動物、例えば、哺乳類で見つかる、歯のエナメル質、象牙質、手指爪、足指爪、硬角化組織および同様のものが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、当該方法は軟組織の慢性創傷上で実行される。典型的な創傷治癒は、4つの重複する段階:止血段階、炎症段階、増殖段階、および再構成段階にて起こる。慢性創傷は、規則的な一連の段階内および予測可能な時間量内で治癒しないものである。慢性創傷の例としては、静脈性潰瘍、褥瘡、虚血性潰瘍および糖尿病性潰瘍、例えば、糖尿病性足部潰瘍が挙げられる。本明細書で開示されている機器および方法は、二酸化塩素の殺生物効果の結果、慢性創傷の治療において有用であるだろうと考えられる。特に、二酸化塩素は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および緑膿菌(P.aeruginosa)の両方に対して効果的であることが示されている。同一出願人による米国出願第61/150,685号を参照されたい。MRSAおよびP.aeruginosaは両方とも抗生物質に耐性があり、病院関連の(院内の)感染において特に著しい危険をもたらす。
【0097】
二酸化塩素含有組成物が用いられる任意の用途において、具体的には、生物組織との接触または接触可能性が含まれる用途において、当該方法を実行することができる。一般的に、殺菌処方および消毒処方を含む、抗菌工程、脱臭工程、および、抗ウイルス工程において、二酸化塩素含有組成物を有利に用いることができる。二酸化塩素生成組成物は、多種多様の微生物を破壊し、無能にし、または無害にするのに効果的である。このような微生物としては、細菌類、真菌類、胞子類、酵母類、カビ類、うどん粉菌類、原生動物、およびウイルス類が挙げられる。
【0098】
従って、ヒトおよび動物の皮膚上、表面上または対象上、液体中および気体中、あるいは医療設備に関与するなどの微生物またはウイルスの個体群を減らすために、本明細書に記載されている方法を実行することができる。二酸化塩素は臭気を減らす際にも有用である。食品産業、接客業、医療産業などに関連する清浄用途および衛生化用途において、二酸化塩素含有組成物を利用することができる。
【0099】
乳頭浸漬液、ローション、またはペースト、皮膚用の消毒剤およびスクラブ剤、口用治療製品、毛蹄イボ病のための治療等の足または蹄用の治療製品、耳および目の疾患用の治療製品、手術後または手術前用スクラブ剤、消毒剤などを含む哺乳類の皮膚上における使用のための獣医学製品において、二酸化塩素含有組成物を使用することができる。動物の囲い地、動物の獣医診療所、および動物手術領域内の微生物および臭気を減らすために、および、動物および卵等の畜産物において、ヒトまたは動物の病原性の(または日和見性の)微生物およびウイルスを減らすために、二酸化塩素含有組成物を用いることもできる。様々な食品および植物種における微生物個体群を減らすこのような品目の処理のために、このような種を取り扱う製造場所または加工場所の処理のために、二酸化塩素含有組成物を用いることができる。他の実施形態では、創傷治療、口腔治療、足指爪/手指爪の抗真菌治療を含む足指爪/手指爪の治療、歯周病治療、齲蝕予防、歯白化、および毛髪漂白を含む化粧用途および/または治療用途において、当該方法を用いることができる。
【0100】
組織刺激は、高反応性酸素種、ならびに酸性と塩基性の両極端のpHによって生じる場合がある。当該方法で用いられる二酸化塩素源の軟組織への刺激を最小化することにより、pHは少なくとも3.0になる。起こり得る硬表面の浸食を最小化するために、pHは少なくとも約4.5であり、より好ましくは少なくとも約5または約6より大きい。別の態様では、オキシ塩素アニオン障壁は、陽子のそこを通じる通過を実質的に阻害することもできる。
【実施例】
【0101】
当該組成物、機器および方法は、以下の実験例に対する参照によりさらに詳述される。これらの実施例は例解の目的のためにのみ与えられ、他に指定されない限り限定することを意図されない。従って、当該組成物、機器および方法が以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ本明細書で与えられている教示の結果として明白となるありとあらゆる変化形を包含すると解釈するべきである。
【0102】
様々な重合体薄膜の障壁特性を試験するために、以下の実験を実施した。手短に述べると、細胞毒性であると知られている亜塩素酸ナトリウムのゲル組成物を調製した。そのゲルの試料を正方形の各薄膜に塗布した。その後、細胞毒性のゲルを保持する各薄膜を、USP<87>の方法に従って細胞毒性に関して試験した。
【0103】
(2.83重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む)0.04重量%の亜塩素酸ナトリウムゲルを以下のように調製した。291.2999グラムの脱イオン水に0.2010グラムの工業用(純度80%)亜塩素酸ナトリウムを添加し、亜塩素酸ナトリウムが溶解するまで水を撹拌した。15分にわたって、8.5グラムのカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na‐CMC)を亜塩素酸ナトリウム溶液に添加した。Na‐CMCを添加する間、溶液を激しく撹拌した。Na‐CMCの全てが分散するまで溶液を撹拌した。Na‐CMCが完全に水和するように、結果として得られたゲルを室温で一晩放置した。用いる前にゲルを激しく撹拌し、任意の残りの塊を分散させて実質的に均質な組成物を得た。
【0104】
本実験で試験した重合体薄膜を表1に要約する。
【0105】
【表1】

【0106】
USP<87>の方法は、寒天拡散試験を用いて、局所ゲル生成物との接触後における哺乳類細胞培養物の生物学的反応性を決定することを伴う。本試験での細胞は、血清添加MEM(最小必須培地)内で培養したL929哺乳類(マウス)線維芽細胞である。80%超が集密的な細胞単層を37℃で加湿培養器内にて24時間以上の間培養し、その後寒天で覆う。寒天層は細胞を機械的損傷から保護する「クッション」としての役割を果たし、その一方で、浸出性化学物質の試験片からの拡散を可能にする。試験するべき物質を一片の濾紙に塗布し、その後これを寒天上に置く。
【0107】
具体的には、紙円盤を無菌食塩水中に浸し、円盤を飽和させる。過剰な食塩水を振り払う。吸収された食塩水の量を決定する(分析秤を用いて湿潤させる前および後に円盤を秤量する)。各薄膜に関しては、1cm×1cmの正方形を湿潤した円盤の表面上に置いて秤量する。湿潤した円盤に接触する正方形の表面から、全ての剥離紙を除去する。細胞毒性ゲルを伴わない実験に関しては、もし存在する場合、正方形の反対側にある剥離紙を正方形上に残した。細胞毒性ゲルを用いた実験に関しては、0.1ccの一定分量のゲルを薄膜の正方形上に分注し、存在する場合に全ての剥離紙を除去する。分注したゲルの最後の部分は、注射器の縁から薄膜の表面上に拭きとる。一定分量を薄膜の正方形の境界内に保持するが、正方形の全体にわたって広げない。ゲルのみの対照に関しては、0.1ccの一定分量のゲルを湿潤した円盤上に分注する。分注したゲルの最後の部分を、注射器の縁から円盤の表面上に拭きとり、ゲルの一定分量を全て湿潤した円盤上に置くが、円盤にわたって広げない。その後、円盤を再び秤量し、試料上のゲルの量を評価する。その後、円盤を寒天重層の上面に置く。細胞毒性の証拠に関して培養物を周期的に時間をかけて評価し、表2に要約しているように、0(細胞毒性の兆候なし)から4(重度の細胞毒性)の尺度で等級分けする。48時間の試験後に、試料に曝露された細胞培養物の何れも軽度の細胞毒性(等級2)より顕著であることを示さない場合、試料は試験の要件を満たすものと見なされる。48時間中に等級3または4の反応性を示す試料は、細胞毒性であると見なされる。
【0108】
【表2】

【0109】
3つの重合体薄膜の細胞毒性を細胞毒性ゲルの非存在下で試験し、それらの固有の細胞毒性を評価した(実施例1〜3)。4つの異なる重合体薄膜を細胞毒性ゲルで試験した(実施例5〜8)。対照として、細胞毒性ゲルを重合体薄膜の非存在下で試験した(実施例4)。
【0110】
結果を表3に示す。
【0111】
【表3】

【0112】
予想した通り、ゲル単体(実施例4)はUSP<87>で不合格であり、細胞毒性であると見なす。実施例1〜3に関する結果は、これらの薄膜が本質的に細胞毒性でないことを証明している。実施例5、6および8に関する結果は2つのこと:1)これらの薄膜は本質的に細胞毒性でないことと、2)これらの物質は、USP<87>の方法で使用される湿潤した円盤を通じて、細胞毒性量のオキシ塩素アニオンが哺乳類の細胞に接触することを防ぐこと、とを示している。従って、これらの薄膜は、本明細書に記載されている機器および方法におけるオキシ塩素アニオン障壁として適切であると予想される。実施例7に関しては、この薄膜はオキシ塩素アニオン障壁として有用であり得ないと思われる。その不合格は、細胞毒性量のオキシ塩素アニオンの湿潤した円盤ひいては哺乳類の細胞への移動を許す、ポリウレタンの単量体のその薄さまたは化学的性質の何れか一方または両方に起因し得る。より厚くかつ異なる単量体から調製される実施例6のポリウレタン薄膜が、試験にやはり合格したことに留意されたい。
【0113】
本明細書で引用されているありとあらゆる特許、特許出願、および刊行物は、本明細書にて参照により全体として本明細書により組み込まれる。
【0114】
記載されている方法、機器、組成物、およびシステムが明確な実施形態を参照して開示されてきたが、当該方法、機器、組成物、およびシステムの真髄および範囲から逸脱することなく、他の当業者が他の実施形態および変化形を考案することができることは明白である。添付の請求の範囲は、全てのこのような実施形態および同等の変化形を含むと解釈されることを目的としている。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するための機器であって、前記機器は、
随意の下地層と、
二酸化塩素または二酸化塩素発生成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源層と、
前記二酸化塩素源層と前記組織との間に配置された障壁層であって、前記オキシ塩素アニオンの当該障壁層の通過を実質的に妨げ、かつ、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の当該障壁層の通過を許す、障壁層と、
を備える、機器。
【請求項2】
前記二酸化塩素源層が二酸化塩素の粒子状前駆体を含む、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記障壁層が、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される薄膜である、請求項1に記載の機器。
【請求項4】
実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するためのシステムであって、前記システムは、
二酸化塩素または二酸化塩素発生成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源と、
前記二酸化塩素源と前記組織との間に配置されたオキシ塩素アニオン障壁であって、前記オキシ塩素アニオンの当該障壁の通過を実質的に妨げ、かつ、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の当該障壁の通過を許す、オキシ塩素アニオン障壁と、
を備え、これにより、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の前記組織への供給を可能にする、システム。
【請求項5】
前記二酸化塩素源が二酸化塩素の粒子状前駆体を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記オキシ塩素アニオン障壁が、前記二酸化塩素源と前記組織との間に配置された層を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記オキシ塩素アニオン障壁が、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される薄膜である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記オキシ塩素アニオン障壁が、前記二酸化塩素源が分散した基質を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
前記基質が、蝋、ポリエチレン、ペトロラタム、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、エチレン‐酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン、およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するための機器であって、前記機器は、下地層と、前記下地層の取り付けられる基質とを備え、前記基質は、
二酸化塩素または二酸化塩素発生成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源と、
前記オキシ塩素アニオンの通過を実質的に妨げ、かつ、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許す障壁物質と、
を含む、機器。
【請求項11】
前記二酸化塩素源が二酸化塩素の粒子状前駆体を含む、請求項10に記載の機器。
【請求項12】
前記障壁物質が、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、酸化ポリエチレン、ポリアクリル酸塩類、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項10に記載の機器。
【請求項13】
実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するための組成物であって、前記組成物は、
二酸化塩素または二酸化塩素発生成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源と、
前記オキシ塩素アニオンの通過を実質的に妨げ、かつ、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許す障壁物質とを含み、これにより、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の前記組織への給送を可能にする、組成物。
【請求項14】
前記二酸化塩素源が二酸化塩素の粒子状前駆体を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記障壁物質が、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、酸化ポリエチレン、ポリアクリル酸塩類、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に給送するための方法であって、前記方法は、
二酸化塩素または二酸化塩素発生成分、およびオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源を供給する工程と、
前記オキシ塩素アニオンの通過を実質的に妨げ、かつ、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許すオキシ塩素アニオン障壁を供給する工程と、
前記オキシ塩素アニオン障壁を前記二酸化塩素源と前記組織との間に配置する際に前記二酸化塩素源を前記組織に塗布する工程と、
を含み、これにより、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の前記組織への給送を可能にする、方法。
【請求項17】
前記二酸化塩素源が二酸化塩素の粒子状前駆体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物が、1平方メートル当たり約400ミリグラム(mg/m)未満のオキシ塩素アニオンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物が、少なくとも約2.5mg/mの二酸化塩素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記オキシ塩素アニオン障壁が、前記二酸化塩素源と前記組織との間に配置された層を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記層が、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、二塩化ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される薄膜である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記オキシ塩素アニオン障壁が、前記二酸化塩素源が分散した基質を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記組織が軟組織である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記組織が皮膚または粘膜である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組織が創傷組織である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組織が硬歯組織である、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記創傷組織が慢性創傷である、請求項10に記載の方法。
【請求項28】
前記慢性創傷が、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、および褥瘡から成る群から選択される、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2011−528361(P2011−528361A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518844(P2011−518844)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/050559
【国際公開番号】WO2010/009140
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(507276151)ビーエーエスエフ、カタリスツ、エルエルシー (47)
【氏名又は名称原語表記】BASF Catalysts LLC
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, NJ 07932, USA
【Fターム(参考)】