説明

二酸化炭素の循環利用方法及びそのシステム

【課題】処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させて、異物を処理用二酸化炭素から確実に分離し、再利用される処理用二酸化炭素の精製効率を高める。
【解決手段】先ず処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物に含まれる異物を処理用二酸化炭素に吸収させ被処理物を処理する。次いで異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて気体状態等の処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させ気体状態等の処理用二酸化炭素11を精製する。次に精製された処理用二酸化炭素11を被処理物の処理工程に戻し、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液を異物13と液体状態の処理用二酸化炭素11と吸収液14とに分離する。更に分離された処理用二酸化炭素11を被処理物の処理工程に戻し、分離された吸収液14を処理用二酸化炭素の精製工程に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体、液体又は超臨界流体のいずれかの状態の二酸化炭素、具体的には、高圧気体、亜臨界液体、亜臨界以外の液体又は超臨界流体のいずれかの状態の二酸化炭素を利用する分野に、上記二酸化炭素を利用した後の使用済みの二酸化炭素を回収して精製し再利用する循環利用方法とそのシステムに関する。更に詳しくは、被処理物に含まれる不純物の抽出や被処理物に付着した汚染物質の除去などに上記二酸化炭素を利用した後に、使用済みの二酸化炭素を回収して精製し再利用する循環利用方法とそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済みの二酸化炭素を回収して精製し再利用するシステムとして、貯槽がポンプ及び加熱器を介して供給槽に接続され、この供給槽がバルブを介して洗浄槽に接続され、洗浄槽の下部の滞留部がフラッシュ槽に接続され、更にフラッシュ槽の下端が有機物回収槽に接続されるとともに、フラッシュ槽の上端が冷却器に接続された洗浄システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
このように構成された洗浄システムでは、先ず有機物の付着している被洗浄物を洗浄槽内の洗浄容器に収容し、貯槽からポンプ及び加熱器を介して供給槽に二酸化炭素を供給する。ここで、供給槽内及び洗浄槽内の温度条件及び圧力条件は、超臨界状態となる温度31℃以上かつ圧力7MPa以上に維持する。次に供給槽からバルブを介して洗浄槽に超臨界二酸化炭素を導入し、洗浄槽内で被洗浄物を洗浄して有機物を被洗浄物から分離する。被洗浄物の洗浄終了後、有機物を含む二酸化炭素を減圧バルブにより減圧してフラッシュ槽で二酸化炭素と有機物とを分離する。更に分離した二酸化炭素は冷却器を通して貯槽に送ってリサイクルし、汚染物は有機物回収槽に送るようになっている。
【0003】
一方、先ず表面が高分子有機物で汚染された被処理物を洗浄槽に入れた後にこの洗浄槽を密閉し、次に洗浄槽に液体二酸化炭素又は二酸化炭素ガスとオゾンを供給し洗浄槽内の圧力又は温度を上昇させて液体二酸化炭素等を超臨界二酸化炭素に状態変化させて、有機物をオゾンにより分解した後に、低分子化した有機物を超臨界二酸化炭素により抽出する超臨界二酸化炭素とオゾンによる洗浄方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この洗浄方法では、洗浄槽内で低分子有機物を抽出した超臨界二酸化炭素を減圧分離槽に供給して減圧し、超臨界二酸化炭素を液体二酸化炭素又は二酸化炭素ガスに状態変化させる。これにより超臨界二酸化炭素に溶解していた低分子有機物を二酸化炭素ガスから分離し、洗浄槽におけるオゾンによる高分子有機物の低分子化により発生した水は低分子有機物ととともに回収される。上記低分子有機物を分離した二酸化炭素ガスには、僅かに低分子有機物が含まれ、またオゾンが残存しているため、40〜200℃に加熱することにより、低分子有機物のオゾンによる分解が促進され、上記僅かな低分子有機物の多くは二酸化炭素と水に分解される。この二酸化炭素ガスは冷却・圧縮して供給槽に再び貯留されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−117504号公報(段落[0026]、段落[0033]〜段落[0035]、図3)
【特許文献2】特開2005−138063号公報(請求項1、段落[0011]、段落[0012]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の特許文献1に示された洗浄システムや特許文献2に示された洗浄方法では、洗浄槽から排出された有機物を含む二酸化炭素中の成分の大部分が二酸化炭素であるため、有機物の分圧が非常に低い。これにより減圧した後に有機物の分圧が更に低くなり、低い分圧下での有機物の沸点が低くなるため、多くの有機物が気化して二酸化炭素ガスに同伴してしまい、有機物の二酸化炭素からの分離性が低下し、再利用される二酸化炭素を十分に精製できない不具合があった。特に、不純物である有機物の沸点が相対的に低い場合、大気圧近くまで減圧すると、有機物が揮発し易くなって二酸化炭素ガスに同伴する有機物の量が増えてしまい、有機物の二酸化炭素からの分離性が更に低下する問題点があった。
また、上記従来の特許文献1に示された洗浄システムでは、被洗浄物の洗浄終了後、有機物を含む二酸化炭素を減圧バルブにより減圧してフラッシュ槽で二酸化炭素と有機物とを分離しており、また上記従来の特許文献2に示された洗浄方法では、洗浄槽内で低分子有機物を抽出した超臨界二酸化炭素を減圧分離槽に供給して減圧し、超臨界二酸化炭素を液体二酸化炭素又は二酸化炭素ガスに状態変化させているため、有機物が分離された二酸化炭素を再び利用するためには、二酸化炭素を圧縮して超臨界状態にしなければならず、多くのエネルギを必要とする不具合があった。
【0005】
本発明の第1の目的は、処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させることにより、異物を処理用二酸化炭素から確実に分離でき、被処理物の処理に再利用される処理用二酸化炭素の精製効率を高めることができる、二酸化炭素の循環利用方法及びそのシステムを提供することにある。
本発明の第2の目的は、異物を吸収した吸収液から異物を確実に分離でき、二酸化炭素の精製に再利用される吸収液の精製効率を高めることができる、二酸化炭素の循環利用方法及びそのシステムを提供することにある。
本発明の第3の目的は、異物を含む処理用二酸化炭素を高圧ガス、液体又は超臨界流体の状態で精製することにより、精製後の処理用二酸化炭素を圧縮するためのエネルギを低減できる、二酸化炭素の循環利用方法及びそのシステムを提供することにある。
本発明の第4の目的は、異物を含む処理用二酸化炭素を高圧の液体状態で精製しかつ液体状態のまま被処理物の処理工程又は処理手段に戻すことにより、処理用二酸化炭素の循環動力を低減できる、二酸化炭素の循環利用方法及びそのシステムを提供することにある。
本発明の第5の目的は、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液から処理用二酸化炭素を分離し、この処理用二酸化炭素を液体状態になるように調整して被処理物の処理工程又は処理手段に戻すことにより、処理用二酸化炭素の循環動力を低減できる、二酸化炭素の循環利用方法及びそのシステムを提供することにある。
本発明の第6の目的は、異物が有機物であり、異物を含む処理用二酸化炭素が液体状態である場合、吸収液への有機物の吸収率(溶解度)が液体状態の処理用二酸化炭素への有機物の吸収率(溶解度)より大きいため、有機物を液体状態の処理用二酸化炭素から効率良く分離できる、二酸化炭素の循環利用方法及びそのシステムを提供することにある。
本発明の第7の目的は、イオン性液体を主成分とする吸収液を用いた場合、精製された高圧ガス状態の処理用二酸化炭素に吸収液が全く含まれず、処理用二酸化炭素の精製効率を更に高めることができ、精製後の二酸化炭素の純度を更に向上できる、二酸化炭素の循環利用方法及びそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、気体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させ被処理物を処理する工程と、異物を含む処理用二酸化炭素を気体状態又は超臨界状態で回収した後にこの異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させ気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素11を精製する工程と、この精製された処理用二酸化炭素11を被処理物の処理工程に戻す工程と、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液を回収した後にこの吸収液を異物13と液体状態の処理用二酸化炭素11と吸収液14とに分離する工程と、この分離された処理用二酸化炭素11を被処理物の処理工程に戻す工程と、上記分離された吸収液14を処理用二酸化炭素の精製工程に戻す工程とを含む二酸化炭素の循環利用方法である。
この請求項1に記載された二酸化炭素の循環利用方法では、処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させた後に、この異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させる。これにより処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させることができるので、異物を処理用二酸化炭素11から確実に分離できる。
【0007】
請求項2に係る発明は、図2に示すように、気体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させ被処理物を処理する工程と、異物を含む処理用二酸化炭素を気体状態又は超臨界状態になるように調整して回収した後にこの異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させ気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素11を精製する工程と、この精製された処理用二酸化炭素11を被処理物の処理工程に戻す工程と、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液を回収した後にこの吸収液を液体状態の処理用二酸化炭素11と上記異物を吸収した吸収液87とに分離する第1の分離工程と、この分離された処理用二酸化炭素11を被処理物の処理工程に戻す工程と、異物を吸収した吸収液87を回収した後にこの吸収液87を異物と吸収液14とに分離する第2の分離工程と、この分離された吸収液14を処理用二酸化炭素の精製工程に戻す工程とを含む二酸化炭素の循環利用方法である。
この請求項2に記載された二酸化炭素の循環利用方法では、処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させることができるので、異物を処理用二酸化炭素から確実に分離できるとともに、第1の分離工程で異物と吸収液とを分相できなくても、第2の分離工程で異物と吸収液14を確実に分離できるので、処理用二酸化炭素11の精製に再利用される吸収液14の精製効率を高めることができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、図3に示すように、液体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させ被処理物を処理する工程と、異物を含む処理用二酸化炭素を液体状態になるように調整して回収した後にこの異物を含む液体状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて液体状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を吸収液に吸収させ液体状態の処理用二酸化炭素11を精製する工程と、この精製された液体状態の処理用二酸化炭素11を被処理物の処理工程に戻す工程と、異物を吸収した吸収液127を回収した後にこの異物を吸収した吸収液127を異物と吸収液124とに分離する工程と、この分離された吸収液124を処理用二酸化炭素の精製工程に戻す工程とを含む二酸化炭素の循環利用方法である。
この請求項3に記載された二酸化炭素の循環利用方法では、異物を含む処理用二酸化炭素を高圧の液体状態で精製し、液体状態のままで被処理物の処理工程に戻すので、処理用二酸化炭素11の循環動力を低減できる。また液体状態の二酸化炭素と吸収液との相互溶解度が非常に小さいため、液体状態の処理用二酸化炭素11と、異物を吸収した吸収液127とが精製工程で速やかに分相(相分離)する。更に異物が有機物であれば、吸収液への有機物の吸収率(溶解度)が液体状態の処理用二酸化炭素11への有機物の吸収率(溶解度)より大きいため、有機物を液体状態の処理用二酸化炭素11から効率良く分離できる。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、更に図1に示すように、分離工程で分離された一部の処理用二酸化炭素11を液体状態になるように調整して回収することを特徴とする。
この請求項4に記載された二酸化炭素の循環利用方法では、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液から分離工程で処理用二酸化炭素を液体状態で分離し、この処理用二酸化炭素11を液体状態のままで処理工程に戻すので、気体状態の処理用二酸化炭素11を処理工程に戻す場合より、処理用二酸化炭素11の循環動力を低減できる。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1に示すように、精製工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ1〜35MPa及び10〜150℃であり、分離工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ3〜25MPa及び0〜100℃であることを特徴とする。
この請求項5に記載された二酸化炭素の循環利用方法では、上記温度条件及び圧力条件の精製工程で、異物を含む処理用二酸化炭素を高圧ガス又は超臨界流体の状態で精製するので、精製後の処理用二酸化炭素11を圧縮するためのエネルギを低減できる。また上記温度条件及び圧力条件の分離工程で、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液から分離工程で処理用二酸化炭素11を液体状態で分離し、この処理用二酸化炭素11を液体状態のままで処理工程に戻すので、分離後の処理用二酸化炭素11を圧縮するためのエネルギを低減できる。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項2に係る発明であって、更に図2に示すように、精製工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ1〜35MPa及び10〜150℃であり、第1分離工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ3〜25MPa及び0〜100℃であり、第2分離工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ0.1〜10MPa及び30〜300℃であることを特徴とする。
この請求項6に記載された二酸化炭素の循環利用方法では、上記温度条件及び圧力条件の精製工程で、異物を含む処理用二酸化炭素を高圧ガス又は超臨界流体の状態で精製するので、精製後の処理用二酸化炭素11を圧縮するためのエネルギを低減できる。また上記温度条件及び圧力条件の第1分離工程で、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液から処理用二酸化炭素11を分離し、この処理用二酸化炭素11を液体状態のままで処理工程に戻すので、分離後の処理用二酸化炭素11を圧縮するためのエネルギを低減できる。更に上記温度条件及び圧力条件の第2分離工程で、異物を吸収した吸収液87から異物を分離し、この異物87の分離除去された吸収液14を処理用二酸化炭素の精製工程に戻すので、吸収液14の精製効率を向上できる。
【0011】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし4いずれか1項に係る発明であって、更に吸収液が、イオン性液体を主成分とする組成物であることを特徴とする。
この請求項7に記載された二酸化炭素の循環利用方法では、吸収液がイオン性液体であるので、異物である有機物の吸収液への吸収率(溶解度)が、二酸化炭素の吸収液への吸収率(溶解度)より桁違いに大きく、また異物である有機物の吸収液への吸収速度(溶解速度)も、二酸化炭素の吸収液への吸収速度(溶解速度)より速い。このため吸収時(溶解時)の温度、圧力及び時間を調整することにより、処理用二酸化炭素の吸収液への吸収率(溶解度)が異物の吸収液への吸収率(溶解度)と比べて非常に小さくなる。また吸収液であるイオン性液体は蒸気圧が略ゼロである。この結果、精製された処理用二酸化炭素に吸収液が殆ど含まれなくなり、処理用二酸化炭素の精製効率を高めることができる。更に吸収液であるイオン性液体は蒸気圧が略ゼロであるので、分離手段は多段の複雑な構造の蒸留塔等を用いずに、1段の簡単な構造の蒸発器又は加熱器を用いるだけで済む。
請求項9に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に係る発明であって、更に吸収液が水又は高分子有機物であることを特徴とする。
この請求項9に記載された二酸化炭素の循環利用方法では、吸収液が水であれば、吸収液の液体状態の処理用二酸化炭素との相互溶解度が小さいので、精製後の処理用二酸化炭素に吸収液が殆ど含まれず、吸収液が液体状態の異物と相互溶解しないので、分離後の吸収液に異物が含まれない。また吸収液が高分子有機物であれば、吸収液の沸点が高く、吸収液の蒸気圧が低く、吸収液の密度が大きく、更に吸収液の液体状態の処理用二酸化炭素との相互溶解度が小さいので、精製後の処理用二酸化炭素に吸収液が殆ど含まれず、また吸収液と液体状態の異物との沸点差が大きいので、加熱によって吸収液と異物とを分離できる。
請求項11に係る発明は、請求項7、8又は10いずれか1項に係る発明であって、更に水、アルコール類、エーテル類及びフェノール類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加剤を、吸収液100重量%に対して1〜50重量%添加することを特徴とする。
この請求項11に記載された二酸化炭素の循環利用方法では、上記添加剤を吸収液に添加することにより、吸収液の粘性を低下させることができる。この添加剤を含む吸収液を処理用二酸化炭素の精製工程に供給すると、添加剤を含む吸収液が異物を吸収する能力を殆ど低下させずにスムーズに流れて異物を速やかに吸収できるとともに、添加剤を含む吸収液の取扱いが容易になる。
【0012】
請求項12に係る発明は、図1に示すように、気体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とが供給され処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させ被処理物を処理する処理手段12と、処理手段12から気体状態又は超臨界状態で排出されかつ異物を含む処理用二酸化炭素と吸収液とが供給され上記異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と上記吸収液とを接触させて気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させ気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素を精製する精製手段16と、精製手段16から排出された気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素をそのまま或いは液体状態にして処理手段12に供給する第1供給手段71と、精製手段16から排出されかつ異物及び処理用二酸化炭素を吸収した吸収液を異物13と液体状態の処理用二酸化炭素11と吸収液14とにそれぞれ分離する分離手段18と、分離手段18から排出された液体状態の処理用二酸化炭素11を処理手段12に供給する第2供給手段72と、分離手段18から排出された吸収液14を精製手段16に供給する第3供給手段73とを備えた二酸化炭素の循環利用システムである。
この請求項12に記載された二酸化炭素の循環利用システムでは、処理手段12で処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させた後に、異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを精製手段で接触させて異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させる。これにより処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させることができるので、異物13を処理用二酸化炭素から確実に分離できる。
【0013】
請求項13に係る発明は、図2に示すように、気体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とが供給され処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させ被処理物を処理する処理手段12と、処理手段12から気体状態又は超臨界状態で排出されかつ異物を含む処理用二酸化炭素と吸収液とが供給され上記異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させ気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素を精製する精製手段16と、精製手段16から排出された気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素をそのままの状態或いは液体状態にして処理手段12に供給する第1供給手段71と、精製手段16から排出されかつ異物及び処理用二酸化炭素を吸収した吸収液を液体状態の処理用二酸化炭素11と異物を吸収した吸収液87とにそれぞれ分離する第1分離手段81と、第1分離手段81から排出された液体状態の処理用二酸化炭素11を処理手段12に供給する第2供給手段72と、第1分離手段81から排出されかつ異物を吸収した吸収液87を異物と吸収液14とにそれぞれ分離する第2分離手段82と、第2分離手段82から排出された吸収液14を精製手段16に供給する第3供給手段73とを備えた二酸化炭素の循環利用システムである。
この請求項13に記載された二酸化炭素の循環利用システムでは、精製手段16で処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させることができるので、異物を処理用二酸化炭素から確実に分離できるとともに、第1分離手段81での異物と吸収液とを分相できなくても、第2分離手段82で異物と吸収液14を確実に分離できるので、処理用二酸化炭素11の精製に再利用される吸収液14の精製効率を高めることができる。
【0014】
請求項14に係る発明は、図3に示すように、液体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とが供給され処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させ被処理物を処理する処理手段12と、処理手段12から液体状態になるように調整して排出されかつ異物を含む処理用二酸化炭素と吸収液とが供給され上記異物を含む液体状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて液体状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を吸収液に吸収させ液体状態の処理用二酸化炭素11を精製する精製手段106と、精製手段106から排出された液体状態の処理用二酸化炭素11を処理手段12に供給する第1供給手段141と、精製手段106から排出されかつ異物を吸収した吸収液127を異物と吸収液124とにそれぞれ分離する分離手段108と、分離手段108から排出された吸収液124を精製手段106に供給する第2供給手段142とを備えた二酸化炭素の循環利用システムである。
この請求項14に記載された二酸化炭素の循環利用システムでは、精製手段106で異物を含む処理用二酸化炭素を高圧の液体状態で精製し、高圧の液体状態のままで処理手段12に戻すので、処理用二酸化炭素11の循環動力を低減できる。また液体状態の二酸化炭素と吸収液との相互溶解度が非常に小さいため、液体状態の処理用二酸化炭素11と、異物を吸収した吸収液127とが精製手段106で速やかに分相(相分離)する。更に異物が有機物であれば、吸収液への有機物の吸収率(溶解度)が液体状態の処理用二酸化炭素11への有機物の吸収率(溶解度)より大きいため、有機物を液体状態の処理用二酸化炭素11から効率良く分離できる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させた後に、この異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させるので、処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させることができる。この結果、異物を処理用二酸化炭素から確実に分離できるので、被処理物の処理に再利用される処理用二酸化炭素の精製効率を高めることができる。
また処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させた後に、この異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させ、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液を第1の分離工程で液体状態の処理用二酸化炭素と上記異物を吸収した吸収液とに分離し、更に異物を吸収した吸収液を第2の分離工程で異物と吸収液とに分離すれば、処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させることができるので、異物を処理用二酸化炭素から確実に分離できるとともに、第1の分離工程での異物と吸収液とを分相できなくても、第2の分離工程で異物と吸収液を確実に分離できるので、二酸化炭素の精製に再利用される吸収液の精製効率を高めることができる。
また処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させた後に、この異物を含む液体状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて液体状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を吸収液に吸収させ、異物を吸収した吸収液を異物と吸収液とに分離すれば、異物を含む処理用二酸化炭素を高圧の液体状態で精製し、液体状態のままで被処理物の処理工程に戻すので、処理用二酸化炭素の循環動力を低減できる。また液体状態の二酸化炭素と吸収液との相互溶解度が非常に小さいため、液体状態の処理用二酸化炭素と、異物を吸収した吸収液とを精製工程で速やかに分相できる。また異物が有機物であれば、吸収液への有機物の吸収率が液体状態の処理用二酸化炭素への有機物の吸収率より大きいため、有機物を液体状態の処理用二酸化炭素から効率良く分離できる。
【0016】
また分離工程で分離された処理用二酸化炭素を液体状態で回収すれば、気体状態の処理用二酸化炭素を処理工程に戻す場合より、処理用二酸化炭素の循環動力を低減できる。
また精製工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ1〜35MPa及び10〜150℃であれば、異物を含む処理用二酸化炭素を高圧ガス又は超臨界流体の状態で精製するので、精製後の処理用二酸化炭素を圧縮するためのエネルギを低減でき、分離工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ3〜25MPa及び0〜100℃であれば、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液から分離工程で処理用二酸化炭素を液体状態で分離し、この処理用二酸化炭素を液体状態のままで処理工程に戻すので、分離後の処理用二酸化炭素を圧縮するためのエネルギを低減できる。
また精製工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ1〜35MPa及び10〜150℃であれば、上記と同様に異物を含む処理用二酸化炭素を高圧ガス又は超臨界流体の状態で精製するので、精製後の処理用二酸化炭素を圧縮するためのエネルギを低減でき、第1分離工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ3〜25MPa及び0〜100℃であれば、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液から第1分離工程で処理用二酸化炭素を液体状態で分離し、この処理用二酸化炭素を液体状態のままで被処理物の処理工程に戻すので、分離後の処理用二酸化炭素を圧縮するためのエネルギを低減でき、更に第2分離工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ0.1〜10MPa及び30〜300℃であれば、異物を吸収した吸収液から異物を第2分離工程で分離し、この異物の分離除去された吸収液を処理用二酸化炭素の精製工程に戻すので、吸収液の精製効率を向上できる。
【0017】
また吸収液が、イオン性液体を主成分とする組成物であれば、異物である有機物の吸収液への吸収率が、二酸化炭素の吸収液への吸収率より桁違いに大きく、また異物である有機物の吸収液への吸収速度も、二酸化炭素の吸収液への吸収速度より速いため、吸収時の温度、圧力及び時間を調整することにより、処理用二酸化炭素の吸収液への吸収率が異物の吸収液への吸収率(溶解度)と比べて非常に小さくなり、更に吸収液であるイオン性液体の蒸気圧が略ゼロである。この結果、精製された処理用二酸化炭素に吸収液が殆ど含まれなくなり、処理用二酸化炭素の精製効率を高めることができる。また吸収液であるイオン性液体は蒸気圧が略ゼロであるので、分離手段は多段の複雑な構造の蒸留塔等を用いずに、1段の簡単な構造の蒸発器又は加熱器を用いるだけで済む。
また吸収液が水であれば、吸収液のが液体状態の処理用二酸化炭素との相互溶解度が小さいので、精製後の処理用二酸化炭素に吸収液が殆ど含まれず、吸収液が高分子有機物であれば、吸収液の沸点が高く、吸収液の蒸気圧が低く、吸収液の密度が大きく、更に吸収液の液体状態の処理用二酸化炭素との相互溶解度が小さいので、精製後の処理用二酸化炭素に吸収液が殆ど含まれず、また吸収液と液体状態の異物との沸点差が大きいので、加熱によって吸収液と異物とを分離できる。
また水、アルコール類、エーテル類及びフェノール類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加剤を、吸収液100重量%に対して1〜50重量%添加すれば、吸収液の粘性を低下させることができる。この結果、添加剤を含む吸収液を処理用二酸化炭素の精製工程に供給すると、添加剤を含む吸収液が異物を吸収する能力を殆ど低下させずにスムーズに流れて異物を速やかに吸収できるとともに、添加剤を含む吸収液の取扱いが容易になる。
【0018】
また処理手段で気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させた後に、異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを精製手段で接触させて異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させれば、処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させることができるので、異物を処理用二酸化炭素から確実に分離できる。
また処理手段で気体又は超臨界の状態の処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させた後に、異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを精製手段で接触させて異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させ、異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液を第1分離手段で液体状態の処理用二酸化炭素と上記異物を吸収した吸収液とに分離し、更に異物を吸収した吸収液を第2分離手段で異物と吸収液とに分離すれば、精製手段で処理用二酸化炭素に含まれる殆ど全ての異物を吸収液に吸収させることができる。即ち、異物を処理用二酸化炭素から確実に分離できるとともに、第1分離手段での異物と吸収液とを分相できなくても、第2分離手段で異物と吸収液を確実に分離できる。この結果、二酸化炭素の精製に再利用される吸収液の精製効率を高めることができる。
更に処理手段で被処理物又は液体状態若しくは超臨界状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物をこの処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させ、精製手段で液体状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を吸収液に吸収させ、精製された液体状態の処理用二酸化炭素を第1供給手段により処理手段に供給し、異物を吸収した吸収液を分離手段で異物と吸収液とにそれぞれ分離し、分離された吸収液を第2供給手段により精製手段に供給すれば、精製手段で異物を含む処理用二酸化炭素を高圧の液体状態で精製し、高圧の液体状態のままで処理手段に戻すので、処理用二酸化炭素の循環動力を低減できる。上記液体状態の二酸化炭素と吸収液との相互溶解度が非常に小さいため、液体状態の処理用二酸化炭素と、異物を吸収した吸収液とが精製手段で速やかに分相し、また異物が有機物であれば、吸収液への有機物の吸収率が液体状態の処理用二酸化炭素への有機物の吸収率より大きいため、有機物を液体状態の処理用二酸化炭素から効率良く分離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態>
図1に示すように、二酸化炭素の循環利用システムは、処理用二酸化炭素と被処理物とが供給される処理手段12と、処理手段12から排出された異物を含む処理用二酸化炭素と吸収液とが供給される精製手段16と、精製手段16から排出された気体状態の処理用二酸化炭素を液体状態になるように調整して貯留するタンク17と、タンク17に貯留された処理用二酸化炭素11を処理手段12に供給する第1供給手段21と、精製手段16から排出されかつ異物13及び処理用二酸化炭素11を吸収した吸収液14を異物13と処理用二酸化炭素11と吸収液14とにそれぞれ分離する分離手段18と、分離手段18から排出された液体状態の処理用二酸化炭素11をタンク17に供給する第2供給手段22と、分離手段18から排出された吸収液14を精製手段16に供給する第3供給手段23とを備える。処理手段12に供給される処理用二酸化炭素の状態は、気体又は超臨界流体のいずれかの状態であり、処理用二酸化炭素は、圧力1〜35MPaかつ温度10〜150℃の高圧ガス状態であることが好ましい。
【0020】
一方、上記処理手段12で行われる処理工程、即ち処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させ被処理物を処理する工程には、次の(1)〜(8)で示すような工程がある。
(1) 添加剤等の異物を含む樹脂成形体等の被処理物を処理用二酸化炭素に接触させることにより、被処理物から処理用二酸化炭素にて異物を抽出する工程。
(2) 表面に有機物等の異物(汚染物質)が付着した繊維、半導体基板等の被処理物を処理用二酸化炭素に接触させることにより、被処理物の内部又は表面から異物を処理用二酸化炭素にて除去(洗浄)する工程。
(3) 樹脂成形体、繊維等の被処理物を、着色剤又は機能性剤のいずれか一方又は双方を溶解した処理用二酸化炭素に接触させることにより、処理用二酸化炭素に溶解している着色剤等の異物を被処理物の内部又は表層に付与(染色)する工程。
(4) 添加剤等の異物を含む処理用二酸化炭素を樹脂等の被処理物に接触させることにより、被処理物を処理用二酸化炭素にて発泡させる工程。
(5) 担体等の被処理物を、担持金属又は金属化合物等の異物の溶解した処理用二酸化炭素に接触させることにより、処理用二酸化炭素に溶解している担持金属又は金属化合物等の異物を被処理物に担持する工程。
(6) 高分子等の被処理物を、強度増強剤等の異物の溶解した処理用二酸化炭素に接触させることにより、処理用二酸化炭素に溶解している強度増強剤等の異物を被処理物に組込んで高分子等の被処理物を改質する工程。
(7) モノマー等の第1被処理物とモノマー等の第2被処理物とを混合した後に、この混合物を処理用二酸化炭素に接触させることにより、未反応モノマー等の異物を処理用二酸化炭素に吸収して第1及び第2被処理物を重合する工程。
(8) 低分子等の第1被処理物と低分子等の第2被処理物とを、処理用二酸化炭素の雰囲気中で反応させ、反応物、生成物或いは副生物等の異物を処理用二酸化炭素に吸収して第1及び第2被処理物から新しい化合物を合成する工程。
【0021】
処理手段12の上面は第1排出管31により精製手段16の側面下部に接続され、この第1排出管31には熱交換器19が設けられる。この精製手段16は、高圧ガス状態の処理用二酸化炭素と吸収液との接触を効率良く行わせる複数の棚段で構成される棚段塔、又は容器内に複数の固体を充填してこれらの固体の隙間に上記高圧ガス状態の処理用二酸化炭素及び吸収液を流通させる充填塔であることが好ましい。また精製手段16の上面は第2排出管32によりタンク17の上面に接続され、タンク17の側面下部は第1供給管21により処理手段12の下面に接続される。第2排出管32には、精製手段16からタンク17に向って順に、3方切換弁26及び第1冷却器41が設けられ、第1供給管21には、タンク17から処理手段12に向って順に、第1開閉弁51、第1ポンプ61、加熱器27及び3方切換弁28が設けられる。第2供給管22、第1開閉弁51、第1ポンプ61、加熱器27及び3方切換弁28により第1供給手段71が構成される。また精製手段16の下面は第3排出管33により分離手段18の側面上部に接続され、分離手段18の側面上部は第2供給管22によりタンク17の側面下部に接続される。第3排出管33には第2冷却器42が設けられ、第2供給管22には第2開閉弁52が設けられる。第2供給管22及び第2開閉弁52により第2供給手段72が構成される。また分離手段18は35MPa程度の圧力に耐える耐圧液槽である。更に分離手段18の下面は第3供給管23により精製手段16の側面上部に接続され、分離手段18の側面中央部には第4排出管34が接続される。第3供給管23には、分離手段18から精製手段16に向って順に、第3開閉弁53及び第2ポンプ62が設けられ、第4排出管34には第4開閉弁54が設けられる。第3供給管23、第3開閉弁53及び第2ポンプ62により第3供給手段73が構成される。なお、図1中の符号24は3方切換弁26と3方切換弁28とを接続する第4供給管である。この第4供給管24は、精製手段16で精製された処理用二酸化炭素11を、タンク17を通さずに処理手段12に直接供給する場合に用いられる。
【0022】
一方、吸収液14は、イオン性液体(低温溶融有機塩)又はこれをを主成分とする組成物であることが好ましい。このイオン性液体はカチオン及びアニオンを有する。カチオンは、[R,R’−N233]+(N,N’-ジアルキルイミダゾリウム)、[NRX4-X]+(アルキルアンモニウム)、[R−NC55]+(N-アルキルピリジニウム)、[R−NC48]+(N-アルキルピロリジニウム)及び[PRX4-X]+(アルキルフォスフォニウム)からなる群より選ばれた1種又は2種以上のカチオンであることが好ましく、[R,R’−N233]+(N,N’-ジアルキルイミダゾリウム)又は[R−NC55]+(N-アルキルピリジニウム)のいずれか一方又は双方からなるカチオンであることが更に好ましい。アニオンは、PF6-、BF4-、NO3-、EtSO4-、AlCl4-及びAlBr4-からなる群より選ばれた1種又は2種以上のアニオンであることが好ましく、PF6-又はBF4-のいずれか一方又は双方からなるアニオンであることが更に好ましい。上記カチオン中のR及びR’は炭素数1〜18のアルキル基又は水素であり、カチオン中のXは1〜3である。また吸収液は水又は高分子有機物であることができる。高分子有機物からなる吸収液は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリエーテル(polyether)、ポリエステル(polyester)、ポリアルカン(polyalkane)及びポリオレフィン(polyolefine)からなる群より選ばれた1種又は2種以上のポリマーであることが好ましい。なお、吸収液がイオン性液体からなる組成物、イオン性液体を主成分とする組成物、或いは高分子有機物である場合には、吸収液に、水、アルコール類、エーテル類及びフェノール類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加剤を添加することが好ましい。この添加剤は吸収液100重量%に対して1〜50重量%、好ましくは5〜10重量%添加される。ここで、添加剤を1〜50重量%の範囲に限定したのは、1重量%未満では吸収液の粘性を低減する効果があまり得られず、50重量%を越えると吸収液による異物の吸収性能に悪影響を及ぼすからである。
【0023】
このように構成された二酸化炭素の循環利用システムを用いて二酸化炭素の循環利用方法を説明する。
処理手段12で処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させた後に、異物を含む気体状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを精製手段16で接触させて異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収液に吸収させる。処理手段12の上面から排出されかつ異物を含む処理用二酸化炭素は、熱交換器19により、圧力及び温度がそれぞれ処理手段12内の圧力及び温度と同じか或いはそれより低い値に調整されて、即ち、好ましくは1〜35MPaの圧力かつ10〜150℃の温度、更に好ましくは5〜10MPaの圧力かつ20〜50℃の温度の高圧ガス状態に調整されて、精製手段16に供給される。これにより精製手段16内の雰囲気の圧力及び温度はそれぞれ上記圧力及び温度の範囲内となる。ここで、処理手段12の上面から排出されかつ異物を含む処理用二酸化炭素を、熱交換器19により、圧力1〜35MPaかつ温度10〜150℃の範囲に調整したのは、圧力及び温度を下げることによって精製手段16の設備費を低減できるけれども、圧力及び温度をこれらの範囲より下げてしまうと、処理用二酸化炭素を処理工程に戻すときに大幅に加圧及び昇温する必要が生じ、エネルギ消費や設備コストが高くなるためである。上記雰囲気下の精製手段16で、異物を含む処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させると、処理用二酸化炭素に含まれる異物が吸収液に吸収され、処理用二酸化炭素が精製される。この精製された高圧ガス状態の処理用二酸化炭素は第2排出管32を通り、第1冷却器41で0〜30℃、好ましくは15〜20℃に冷却し液体状態になるように調整してタンク17に貯留される。これにより精製後の処理用二酸化炭素を圧縮するためのエネルギを低減できる。
【0024】
吸収液14として、イオン性液体からなる組成物又はイオン性液体を主成分とする組成物を用い、精製手段16内の圧力及び温度をそれぞれ1〜35MPa及び10〜150℃に調整した状態で、異物(有機物)を含む処理用二酸化炭素を吸収液に接触させると、有機物の吸収液への吸収率(溶解度)が、二酸化炭素の吸収液への吸収率(溶解度)より桁違いに大きく、また異物である有機物の吸収液への吸収速度(溶解速度)も、二酸化炭素の吸収液への吸収速度(溶解速度)より速いため、吸収時(溶解時)の温度、圧力及び時間を調整することにより、処理用二酸化炭素の吸収液への吸収率(溶解度)が異物の吸収液への吸収率(溶解度)と比べて非常に小さくなる。また吸収液であるイオン性液体は蒸気圧が略ゼロである。この結果、精製された処理用二酸化炭素に吸収液が殆ど含まれなくなるので、処理用二酸化炭素の精製効率を高めることができる。更に吸収液であるイオン性液体は蒸気圧が略ゼロであるので、分離手段は多段の複雑な構造の蒸留塔等を用いずに、1段の簡単な構造の蒸発器又は加熱器を用いるだけで済む。
また水、アルコール類、エーテル類及びフェノール類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加剤を、吸収液100重量%に対して1〜50重量%添加すると、吸収液の粘性を低下させることができる。この添加剤を含む吸収液を処理用二酸化炭素の精製手段16に供給すると、添加剤を含む吸収液が異物を吸収する能力を殆ど低下させずにスムーズに流れて異物を速やかに吸収できるとともに、添加剤を含む吸収液の取扱いが容易になる。
【0025】
一方、タンク17に貯留された液体状態の処理用二酸化炭素11は第1供給管21を通って第1ポンプ61により所定の圧力まで昇圧されて処理手段12に供給される。このとき処理用二酸化炭素11は加熱器27により加熱され、処理手段12内の被処理物に最適な圧力条件及び温度条件、例えば圧力5〜15MPaかつ温度20〜100℃の気体、液体又は超臨界流体のいずれかの状態になるように調整して供給される。また精製手段16で異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液は第3排出管33を通り、第2冷却器42で冷却されて分離手段18に供給される。分離手段18に供給される上記吸収液の圧力及び温度、即ち分離工程における分離手段18内の雰囲気の圧力及び温度は、それぞれ3〜25MPaかつ0〜100℃であることが好ましく、それぞれ5〜10MPaかつ10〜30℃であることが更に好ましい。ここで、分離手段18内の雰囲気の圧力及び温度をそれぞれ3〜25MPa及び温度0〜100℃の範囲に限定したのは、分離手段18内で処理用二酸化炭素11を液化でき、異物13と液体状態の処理用二酸化炭素11と吸収液14とをこれらの相互不溶解性及び比重差で分離し易くするためである。異物13がパラフィン系炭化水素等の液体であると、吸収液14の比重が1.3〜1.6と最も大きく、異物13の比重が0.8〜1.0とその次に大きく、液体状態の処理用二酸化炭素11の比重が0.7程度と最も小さいため、分離手段18内では下から上に向かって順に、吸収液14、異物13及び液体状態の処理用二酸化炭素11の3つの相に分離(分相)される。上相(最も上の相)の液体状態の処理用二酸化炭素11は第2供給管22を通ってタンク17に貯留される。このとき分離手段18で分離された処理用二酸化炭素11が液体状態であるため、この液体状態の処理用二酸化炭素11を処理手段12に戻すための圧縮に必要なエネルギは、気体状態の処理用二酸化炭素11を処理手段12に戻すための圧縮に必要なエネルギと比べ、桁違いに少なくて済む。また下相(最も下の相)の吸収液14は第3供給管23を通って第2ポンプ62により精製手段16に供給され、中相(液体状態の処理用二酸化炭素11と吸収液14との間の相)の異物13(液体)は第4排出管34を通って異物回収槽(図示せず)に回収される。
なお、この実施の形態では、タンクに処理用二酸化炭素を液体状態になるように調整して貯留したが、高圧ガス又は超臨界流体の状態になるように調整して貯留してもよい。
【0026】
<第2の実施の形態>
図2は本発明の第2の実施の形態を示す。図2において図1と同一符号は同一部品を示す。
この実施の形態では、第1の実施の形態の分離手段に替えて、第1及び第2分離手段81,82が用いられる。精製手段16の下面は第3排出管33により第1分離手段81の上面に接続され、第1分離手段81の側面上部は第2供給管22によりタンク17に接続される。また第1分離手段81の側面下部は連結管83により第2分離手段82の側面中央部に接続され、第2分離手段82の下面は第3供給管23により精製手段16の側面上部に接続される。連結管83には、第1分離手段81から第2分離手段82に向って順に、第5開閉弁85及び加熱器86が設けられる。更に第2分離手段82の側面上部には第4排出管34が接続される。なお、上記第1分離手段81は35MPa程度の圧力に耐える耐圧液槽であり、上記第2分離手段82は低圧下で操作する蒸発器或いは蒸留塔である。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0027】
このように構成された二酸化炭素の循環利用システムを用いて二酸化炭素の循環利用方法を説明する。
処理手段12での被処理物の処理と、精製手段16での処理用二酸化炭素の精製は、上記第1の実施の形態と同様に行われるので、繰返しの説明を省略する。精製手段16で異物を処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液は第3排出管33を通り、第2冷却器42で冷却されて第1分離手段81に供給される。第1分離手段81に供給される上記吸収液の圧力及び温度、即ち第1分離工程における第1分離手段81内の雰囲気の圧力及び温度は、それぞれ3〜25MPaかつ0〜100℃であることが好ましく、それぞれ5〜10MPaかつ10〜30℃であることが更に好ましい。ここで、第1分離手段81内の雰囲気の圧力及び温度をそれぞれ3〜25MPa及び温度0〜100℃の範囲に限定したのは、第1分離手段81内で処理用二酸化炭素11を液化でき、液体状態の処理用二酸化炭素11と異物を吸収した吸収液87とをこれらの相互不溶解性及び比重差で分離し易くするためである。異物が芳香族系炭化水素等の液体であると、上記圧力及び温度範囲で異物の比重と吸収液が相互溶解して分相できず、異物を含む吸収液87(比重:0.8〜1.5)と液体状態の処理用二酸化炭素11(比重:約0.7)に分離される。即ち、第1分離手段81段内では下から上に向かって順に、異物を含む吸収液87と液体状態の処理用二酸化炭素11の2つの相に分離(分相)される。上相(上側の相)の液体状態の処理用二酸化炭素11は第2供給管22を通ってタンク17に貯留される。このとき第1分離手段81で分離された処理用二酸化炭素11が液体状態であるため、この液体状態の処理用二酸化炭素11を処理手段12に戻すための圧縮に必要なエネルギは、気体状態の処理用二酸化炭素11を処理手段12に戻すための圧縮に必要なエネルギと比べ、桁違いに少なくて済む。
【0028】
また下相(下側の相)の異物を吸収した吸収液87は連結管83を通り、加熱器86により加熱されて第2分離手段82に供給される。第2分離手段82に供給される上記異物を吸収した吸収液87の圧力及び温度、即ち第2分離工程における第2分離手段82内の雰囲気の圧力及び温度は、異物の沸点にもよるけれども、それぞれ0.1〜10MPaかつ30〜300℃であることが好ましく、それぞれ0.1〜1MPaかつ100〜200℃であることが更に好ましい。ここで、第2分離手段82内の雰囲気の圧力及び温度をそれぞれ0.1〜10MPa及び温度30〜300℃の範囲に限定したのは、第2分離手段82内で異物13と吸収液14とをこれらの沸点差で蒸発し易く、即ち蒸留分離し易くするためである。第2分離手段82内の液体状態の吸収液14は第2分離手段82の下面から第3供給管23を通って第2ポンプ62により精製手段16に供給され、第2分離手段82内の気体状態の異物13は第2分離手段82の上面から第4排出管34を通って異物回収槽(図示せず)に回収される。このように、第1分離手段81で異物と吸収液とを分相できなくても、第2分離手段82で異物13と吸収液14を確実に分離できるので、処理用二酸化炭素11の精製に再利用される吸収液14の精製効率を高めることができる。
【0029】
<第3の実施の形態>
図3は本発明の第3の実施の形態を示す。図3において図1と同一符号は同一部品を示す。
この実施の形態では、処理手段12の上面が第1排出管101により精製手段106の側面下部に接続され、精製手段106の側面上部が第2排出管102によりタンク17の側面下部に接続される。第1排出管101には冷却器107が設けられ、第2排出管102には第1開閉弁111が設けられる。またタンク17の側面下部は第1供給管131により処理手段12の下面に接続される。第1供給管131には、タンク17から処理手段12に向って順に、第2開開弁112、第1ポンプ61及び第1加熱器121が設けられる。第1供給管131、第2開閉弁112、第1ポンプ61及び第1加熱器121により第1供給手段141が構成される。精製手段106の下面は第3排出管103により分離手段108の側面中央部に接続され、分離手段108の下面は第2供給管132により精製手段106の側面中央部に接続される。この分離手段108は第2の実施の形態の第2分離手段82と同一に構成される。第3排出管103には、精製手段106から分離手段108に向って順に、第3開閉弁113及び第2加熱器122が設けられ、第2供給管132には、分離手段108から精製手段106に向って順に、第4開閉弁114及び第2ポンプ62が設けられる。第2供給管132、第4開閉弁114及び第2ポンプ62により第2供給手段142が構成される。また分離手段108の側面上部には第4排出管104が接続され、この第4排出管104には第4開閉弁114が設けられる。上記精製手段106及び分離手段108はそれぞれ35MPa程度の圧力に耐える耐圧液槽である。更に吸収液124として、イオン性液体、水又は高分子有機物を用いることが好ましい。高分子有機物としては、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリエーテル(polyether)、ポリエステル(polyester)、ポリアルカン(polyalkane)及びポリオレフィン(polyolefine)からなる群より選ばれた1種又は2種以上のポリマーを挙げることができる。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0030】
このように構成された二酸化炭素の循環利用システムを用いて二酸化炭素の循環利用方法を説明する。
処理手段12で液体又は超臨界流体の状態の処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて被処理物又は処理用二酸化炭素に含まれる異物を処理用二酸化炭素又は被処理物に吸収させた後に、異物を含む液体状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを精製手段で接触させて異物を吸収液に吸収させる。処理手段12の上面から排出されかつ異物を含む処理用二酸化炭素が液体状態である場合には、そのまま精製手段106に供給される。また処理手段12の上面から排出されかつ異物を含む処理用二酸化炭素が超臨界流体状態である場合には、冷却器107により、圧力及び温度がそれぞれ、好ましくは4〜10MPaかつ0〜30℃、更に好ましくは6〜8MPaかつ10〜20℃の液体状態に調整されて、精製手段106に供給される。これにより精製手段106内の雰囲気の圧力及び温度はそれぞれ上記圧力及び温度の範囲内となる。ここで、処理手段12の上面から排出されかつ異物を含む処理用二酸化炭素を、冷却器107により、圧力4〜10MPaかつ温度0〜30℃の範囲に調整したのは、上記異物を含む処理用二酸化炭素を液体状態にするためである。上記雰囲気下の精製手段106で、異物を含む処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させると、処理用二酸化炭素に含まれる異物が吸収液に吸収されるとともに、異物の除去された処理用二酸化炭素11の比重が約0.7と小さく、異物を吸収した吸収液127の比重が1〜1.5と大きく、かつ液体状態の処理用二酸化炭素と吸収液とが相互に不溶解であるため、精製手段106内では下から上に向かって順に、異物を吸収した吸収液127と精製された処理用二酸化炭素11との2つの相に分離(分相)される。下相(下側の相)の異物を吸収した吸収液127は第3排出管103を通って分離手段108に供給され、上相(上側の相)の処理用二酸化炭素11は第2排出管102を通ってタンク17に供給される。精製手段106で処理用二酸化炭素に含まれる殆どの異物を吸収液に吸収させることができるので、異物を処理用二酸化炭素から確実に分離できるとともに、精製された処理用二酸化炭素11は液体状態になるように調整してタンク17に貯留されるので、精製後の処理用二酸化炭素11を処理手段12に戻すために必要な圧縮エネルギを大幅に削減できる。
【0031】
なお、吸収液124はイオン性液体、水又は高分子有機物であることが好ましい。吸収液が水である場合、上記圧力及び温度条件で吸収液が液体状態の処理用二酸化炭素と相互溶解しないので、精製後の処理用二酸化炭素には吸収液が殆ど含まれない。また吸収液が高分子有機物である場合、吸収液の密度が大きく、また上記圧力及び温度条件で吸収液が液体状態の処理用二酸化炭素と殆ど相互溶解しないので、精製後の処理用二酸化炭素に吸収液は殆ど含まれない。また吸収液がイオン性液体又は高分子有機物である場合、水、アルコール類、エーテル類及びフェノール類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加剤を、吸収液100重量%に対して1〜50重量%添加すると、吸収液の粘性を低下させることができる。この添加剤を含む吸収液を処理用二酸化炭素の精製手段に供給すると、添加剤を含む吸収液が異物を吸収する能力を殆ど低下させずにスムーズに流れて異物を速やかに吸収できるとともに、添加剤を含む吸収液の取扱いが容易になる。更に異物が有機物であれば、吸収液への有機物の吸収率(溶解度)が液体状態の処理用二酸化炭素への有機物の吸収率(溶解度)より大きいため、有機物を液体状態の処理用二酸化炭素から効率良く分離できる。
【0032】
一方、タンク17に貯留された液体状態の処理用二酸化炭素11は第1供給管131を通って第1ポンプ61により処理手段12に供給される。このとき処理用二酸化炭素11は第1加熱器121により加熱され、処理手段12内の被処理物に最適な圧力条件及び温度条件、例えば圧力5〜10MPaかつ温度20〜50℃の液体又は超臨界流体の状態になるように調整して供給される。また精製手段106で異物を吸収した吸収液127は第3排出管103を通り、第2加熱器122で加熱されて分離手段108に供給される。分離手段108に供給される上記異物を吸収した吸収液127の圧力及び温度、即ち分離工程における分離手段108内の雰囲気の圧力及び温度は、異物の沸点にもよるけれども、それぞれ0.1〜10MPaかつ30〜300℃であることが好ましく、それぞれ0.1〜1MPaかつ100〜200℃であることが更に好ましい。ここで、分離手段108内の雰囲気の圧力及び温度をそれぞれ0.1〜10MPa及び温度30〜300℃の範囲に限定したのは、分離手段108内で異物13と吸収液124とをこれらの沸点差で分離し易く、即ち蒸留分離し易くするためである。分離手段108内の液体状態の吸収液124は分離手段108の下面から第2供給管132を通って第2ポンプ62により精製手段106に供給され、分離手段108内の気体状態の異物13は分離手段108の上面から第4排出管104を通って異物回収槽(図示せず)に回収される。上述のように、異物を含む処理用二酸化炭素を高圧の液体状態で精製し、液体又は超臨界流体の状態になるように調整して被処理物の処理工程に戻すので、処理用二酸化炭素の循環動力を低減できる。
【実施例】
【0033】
次に本発明の実施例を詳しく説明する。
<実施例1>
図4に示すように、先ず精製手段156として圧力容器を用い、この圧力容器156にイオン性液体(1-butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate,[BMIM][PF6])を貯留した。次に上記イオン性液体を貯留した圧力容器内の温度及び圧力をそれぞれ50℃及び10MPaに維持した状態で、圧縮機151を用いて混合ガスを圧力容器156にその下面から導入した。この混合ガスは、98重量%の二酸化炭素と、1重量%のベンゼン(Benzene)と、1重量%のトルエン(Toluene)とを混合したガスであった。更に開閉弁152を開いて圧力容器156の上面からガスを減圧して排出した。圧力容器156から排出されたガスの成分をガスクロマトグラフ(GC)を用いて分析した。その結果、圧力容器156に導入する前の混合ガス中には、1重量%のベンゼンと1重量%のトルエンが含まれていたのに対し、圧力容器156から排出されたガス中のベンゼン及びトルエンの濃度は72ppm及び56ppmにそれぞれ減少した。即ち、原料の混合ガス中の大部分のベンゼン及トルエンが除去されたことが分かった。なお、圧力容器156から排出されたガス中にはイオン性液体は全く検出されなかった。
<実施例2>
圧力容器にイオン性液体(1-decyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate),[DMIM][PF6])を貯留し、圧力容器に導入する前の混合ガスが、98重量%の二酸化炭素と、1重量%のデカン(Decane)と、1重量%のドデカン(Dodecane)とを混合したガスであったこと以外は、実施例1と同様に混合ガスを圧力容器にその下面から導入した後に、バルブを開いて圧力容器の上面からガスを減圧して排出した。圧力容器から排出されたガスの成分をガスクロマトグラフ(GC)を用いてそれぞれ分析した。その結果、圧力容器に導入する前の混合ガス中には、1重量%のデカンと1重量%のドデカンが含まれていたのに対し、圧力容器から排出されたガス中のデカン及びドデカンの濃度は124ppm及び107ppmにそれぞれ減少した。即ち、原料の混合ガス中の大部分のデカン及ドデカンが除去されたことが分かった。なお、圧力容器から排出されたガス中にはイオン性液体は全く検出されなかった。
<実施例3>
圧力容器に水を貯留し、圧力容器に導入する前の混合ガスが、95重量%の二酸化炭素と、3重量%のプロパノール(Propanol)と、1重量%のエタノール(Ethanol)とを混合したガスであったこと以外は、実施例1と同様に混合ガスを圧力容器にその下面から導入した後に、バルブを開いて圧力容器の上面からガスを減圧して排出した。圧力容器から排出されたガスの成分をガスクロマトグラフ(GC)を用いてそれぞれ分析した。その結果、圧力容器に導入する前の混合ガス中には、3重量%のプロパノールと1重量%のエタノールが含まれていたのに対し、圧力容器から排出されたガス中のプロパノール、エタノール及び水の濃度は300ppm、100ppm及び1700ppmにそれぞれ減少した。即ち、原料の混合ガス中の大部分のプロパノール及びエタノールが除去されたことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態の二酸化炭素の循環利用システムを示す構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態の二酸化炭素の循環利用システムを示す構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態の二酸化炭素の循環利用システムを示す構成図である。
【図4】実施例の精製手段の構成図である。
【符号の説明】
【0035】
11 処理用二酸化炭素
12 処理手段
13 異物
14,124 吸収液
16,106 精製手段
17 タンク
18,108 分離手段
71,141 第1供給手段
72,142 第2供給手段
73 第3供給手段
81 第1分離手段
82 第2分離手段
87,127 異物を吸収した吸収液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて前記被処理物又は前記処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素又は前記被処理物に吸収させ前記被処理物を処理する工程と、
前記異物を含む処理用二酸化炭素を気体状態又は超臨界状態で回収した後にこの異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて前記気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素の一部とともに前記吸収液に吸収させ前記気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素を精製する工程と、
前記精製された処理用二酸化炭素(11)を前記被処理物の処理工程に戻す工程と、
前記異物を前記処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液を回収した後にこの吸収液を前記異物(13)と液体状態の処理用二酸化炭素(11)と前記吸収液(14)とに分離する工程と、
前記分離された処理用二酸化炭素(11)を前記被処理物の処理工程に戻す工程と、
前記分離された吸収液(14)を前記処理用二酸化炭素の精製工程に戻す工程と
を含む二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項2】
気体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて前記被処理物又は前記処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素又は前記被処理物に吸収させ前記被処理物を処理する工程と、
前記異物を含む処理用二酸化炭素を気体状態又は超臨界状態になるように調整して回収した後にこの異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて前記気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素の一部とともに前記吸収液に吸収させ前記気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素を精製する工程と、
前記精製された処理用二酸化炭素(11)を前記被処理物の処理工程に戻す工程と、
前記異物を前記処理用二酸化炭素の一部とともに吸収した吸収液を回収した後にこの吸収液を液体状態の処理用二酸化炭素(11)と前記異物を吸収した吸収液(87)とに分離する第1の分離工程と、
前記分離された処理用二酸化炭素(11)を前記被処理物の処理工程に戻す工程と、
前記異物を吸収した吸収液(87)を回収した後にこの吸収液(87)を異物と吸収液(14)とに分離する第2の分離工程と、
前記分離された吸収液(14)を前記処理用二酸化炭素の精製工程に戻す工程と
を含む二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項3】
液体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とを接触させて前記被処理物又は前記処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素又は前記被処理物に吸収させ前記被処理物を処理する工程と、
前記異物を含む処理用二酸化炭素を液体状態になるように調整して回収した後にこの異物を含む液体状態の処理用二酸化炭素と吸収液とを接触させて前記液体状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記吸収液に吸収させ前記液体状態の処理用二酸化炭素(11)を精製する工程と、
前記精製された液体状態の処理用二酸化炭素(11)を前記被処理物の処理工程に戻す工程と、
前記異物を吸収した吸収液(127)を回収した後にこの異物を吸収した吸収液(127)を異物と吸収液(124)とに分離する工程と、
前記分離された吸収液(124)を前記処理用二酸化炭素の精製工程に戻す工程と
を含む二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項4】
分離工程で分離された一部の処理用二酸化炭素(11)を液体状態になるように調整して回収する請求項1又は2記載の二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項5】
精製工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ1〜35MPa及び10〜150℃であり、分離工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ3〜25MPa及び0〜100℃である請求項1記載の二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項6】
精製工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ1〜35MPa及び10〜150℃であり、第1分離工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ3〜25MPa及び0〜100℃であり、第2分離工程における雰囲気の圧力及び温度がそれぞれ0.1〜10MPa及び30〜300℃である請求項2記載の二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項7】
吸収液が、イオン性液体を主成分とする組成物である請求項1ないし4いずれか1項に記載の二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項8】
イオン性液体がカチオン及びアニオンを有し、
前記カチオンが、[R,R’−N233]+(N,N’-ジアルキルイミダゾリウム)、[NRX4-X]+(アルキルアンモニウム)、[R−NC55]+(N-アルキルピリジニウム)、[R−NC48]+(N-アルキルピロリジニウム)及び[PRX4-X]+(アルキルフォスフォニウム)からなる群より選ばれた1種又は2種以上のカチオンであり、
前記アニオンが、PF6-、BF4-、NO3-、EtSO4-、AlCl4-及びAlBr4-からなる群より選ばれた1種又は2種以上のアニオンであり、
前記カチオン中のR及びR’が炭素数1〜18のアルキル基又は水素であり、
前記カチオン中のXが1〜3である請求項7記載の二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項9】
吸収液が水又は高分子有機物である請求項1ないし3いずれか1項に記載の二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項10】
高分子有機物が、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリエーテル(polyether)、ポリエステル(polyester)、ポリアルカン(polyalkane)及びポリオレフィン(polyolefine)からなる群より選ばれた1種又は2種以上のポリマーである請求項9記載の二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項11】
水、アルコール類、エーテル類及びフェノール類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加剤を、吸収液100重量%に対して1〜50重量%添加する請求項7、8又は10いずれか1項に記載の二酸化炭素の循環利用方法。
【請求項12】
気体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とが供給され前記処理用二酸化炭素と前記被処理物とを接触させて前記被処理物又は前記処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素又は前記被処理物に吸収させ前記被処理物を処理する処理手段(12)と、
前記処理手段(12)から気体状態又は超臨界状態で排出されかつ前記異物を含む処理用二酸化炭素と吸収液とが供給され前記異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と前記吸収液とを接触させて前記気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素の一部とともに前記吸収液に吸収させ前記気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素を精製する精製手段(16)と、
前記精製手段(16)から排出された気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素をそのままの状態で或いは液体状態にして前記処理手段(12)に供給する第1供給手段(71)と、
前記精製手段(16)から排出されかつ前記異物及び処理用二酸化炭素を吸収した吸収液を前記異物(13)と液体状態の処理用二酸化炭素(11)と前記吸収液(14)とにそれぞれ分離する分離手段(18)と、
前記分離手段(18)から排出された前記液体状態の処理用二酸化炭素(11)を前記処理手段(12)に供給する第2供給手段(72)と、
前記分離手段(18)から排出された吸収液(14)を前記精製手段(16)に供給する第3供給手段(73)と
を備えた二酸化炭素の循環利用システム。
【請求項13】
気体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とが供給され前記処理用二酸化炭素と前記被処理物とを接触させて前記被処理物又は前記処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素又は前記被処理物に吸収させ前記被処理物を処理する処理手段(12)と、
前記処理手段(12)から気体状態又は超臨界状態で排出されかつ前記異物を含む処理用二酸化炭素と吸収液とが供給され前記異物を含む気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素と前記吸収液とを接触させて前記気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素の一部とともに前記吸収液に吸収させ前記気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素(11)を精製する精製手段(16)と、
前記精製手段(16)から排出された気体状態又は超臨界状態の処理用二酸化炭素をそのまま或いは液体状態にして前記処理手段(12)に供給する第1供給手段(71)と、
前記精製手段(16)から排出されかつ前記異物及び処理用二酸化炭素を吸収した吸収液を液体状態の処理用二酸化炭素(11)と前記異物を吸収した吸収液(87)とにそれぞれ分離する第1分離手段(81)と、
前記第1分離手段(81)から排出された液体状態の処理用二酸化炭素(11)を前記処理手段(12)に供給する第2供給手段(72)と、
前記第1分離手段(81)から排出されかつ前記異物を吸収した吸収液(87)を前記異物と前記吸収液(14)とにそれぞれ分離する第2分離手段(82)と、
前記第2分離手段(82)から排出された吸収液(14)を前記精製手段(16)に供給する第3供給手段(73)と
を備えた二酸化炭素の循環利用システム。
【請求項14】
液体又は超臨界流体のいずれかの状態の処理用二酸化炭素と被処理物とが供給され前記処理用二酸化炭素と前記被処理物とを接触させて前記被処理物又は前記処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記処理用二酸化炭素又は前記被処理物に吸収させ前記被処理物を処理する処理手段(12)と、
前記処理手段(12)から液体状態になるように調整して排出されかつ前記異物を含む処理用二酸化炭素と吸収液とが供給され前記異物を含む液体状態の処理用二酸化炭素と前記吸収液とを接触させて前記液体状態の処理用二酸化炭素に含まれる異物を前記吸収液に吸収させ前記液体状態の処理用二酸化炭素(11)を精製する精製手段(106)と、
前記精製手段(106)から排出された液体状態の処理用二酸化炭素(11)を前記処理手段(12)に供給する第1供給手段(141)と、
前記精製手段(106)から排出されかつ前記異物を吸収した吸収液(127)を前記異物と前記吸収液(124)とにそれぞれ分離する分離手段(108)と、
前記分離手段(108)から排出された吸収液(124)を前記精製手段(106)に供給する第2供給手段(142)と
を備えた二酸化炭素の循環利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−203192(P2007−203192A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25170(P2006−25170)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】