説明

二酸化鉛電極及びその製造方法

【課題】 電着層の密着強度を高めるとともに電気分解反応をより活性化し安定させることが可能な二酸化鉛電極を提供する。
【解決手段】 チタン等の不溶性金属からなる基材22と、基材22を穿孔して形成されるテーパー状の複数の皿孔21と、皿孔21が形成された基材22の表面に二酸化鉛を電着してなる二酸化鉛層23とを備え、皿孔21は、基材22の両面からそれぞれ内方向へ穿孔されて皿孔21同士が連通していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解法による水処理に用いられる二酸化鉛電極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造工場等において、鋳造工程等で発生する臭気成分を含むガスを無臭化する方策として、例えば、臭気物質を液中に溶解させて電気分解することにより臭気物質を分解して除去する電気分解による脱臭方法が提案されている(特許文献1参照。)。電気分解による脱臭方法は、水にプラスとマイナスの電極を浸漬して通電することで水の分解を行い、分解による副生成物で水中に溶解した有機成分等を分解除去して浄化脱臭するものである。
【0003】
電気分解法による水処理における陽極の基材としては、不溶性金属(主にチタン)が一般的に使用されている。
【0004】
電解質の種類や成分量に応じて基材へのコーティング層材質が選定されており、例えば、電解質が塩化ナトリウムであればコーティング材質は酸化イリジウムが一般的である。一方、電解質として硫酸ナトリウムや炭酸カルシウムなどを使用して電気分解反応により電解質からオゾンを発生させて汚染物質を分解する場合には二酸化鉛がコーティング材質として選定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−154231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、二酸化鉛のコーティング技術手段は、電気分解による電着法のみであり、電着法ではコーティング層の基材への密着強度がメッキや溶射などの他のコーティング手段と比較して低く、短期間のうちにコーティング層に亀裂が入ったり剥離したりして陽極寿命が短いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、電着層の密着強度を高めるとともに電気分解反応をより活性化し安定させることが可能な二酸化鉛電極およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る二酸化鉛電極は、不溶性金属からなる電極基材と、前記電極基材を穿孔して形成されるテーパー状の複数の皿孔と、前記皿孔が形成された電極基材の表面に二酸化鉛を電着してなる二酸化鉛層とを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、複数の皿孔が電極を幾何学的表面とするので、電着層の密着強度を高めるとともに、皿孔がテーパー状となっていることで電極表面積を大きくなるので、電気分解反応をより活性化し安定させることができる二酸化鉛電極が実現される。
【0010】
ここで、前記皿孔は、前記電極基材の両面からそれぞれ内方向へ穿孔されて皿孔同士が連通しているとしてもよく、また、前記皿孔は、前記電極基材の両面からそれぞれ反対側の面方向へ交互に穿孔されているとしてもよい。
【0011】
これにより、さらに電極表面積を大きくすることができ、電気分解反応の活性化および安定化に資する二酸化鉛電極となる。
【0012】
また、前記電極基材の表面に絶縁体からなる絶縁層を備え、前記絶縁層が前記電極基材を小面積に区分けするとするのが好ましい。
【0013】
これにより、電着反応による電着層の残留応力を分散させて減ずることができるので、電着層の剥離や亀裂の発生を抑えることができ、耐久性に優れた二酸化鉛電極が実現される。
【0014】
さらに、本発明は、不溶性金属からなる電極基材にテーパー状の複数の皿孔を穿孔して形成し、皿孔が形成された電極基材の表面に二酸化鉛を電着して二酸化鉛層を形成することを特徴とする二酸化鉛電極の製造方法として実現することも可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る二酸化鉛電極によれば、電極基材にテーパー状の皿孔を複数穿孔してから二酸化鉛を電着して二酸化鉛のコーティング層を形成しているので、複数の皿孔によって電極の表面が幾何学的表面となって電着層の密着強度を向上させることができる。また、皿孔がテーパー状となっている分、電極表面積が大きくなるので、電気分解反応をより活性化し安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る二酸化鉛電極の平面図である。
【図2】図1のA−A線における一部断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る二酸化鉛電極の平面図である。
【図4】図3のB−B線における一部断面図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る二酸化鉛電極の平面図である。
【図6】図5のC−C線における一部断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る二酸化鉛電極の平面図であり、図2はA−A線における一部断面図である。
【0019】
本実施の形態に係る二酸化鉛電極1は、電気分解法による水処理で陽極として使用される板状の電極である。
【0020】
二酸化鉛電極1は、チタン等の不溶性金属で構成される基材12に、一方の面から他方の面に向かうテーパー状の皿孔11を複数形成して、皿孔11が形成された基材12の表面に二酸化鉛を500〜1000μm厚で電着コーティングさせて二酸化鉛層13を形成することにより構成されている。
【0021】
二酸化鉛電極1の寸法を300mm×250mmとした場合には、大きい方の径が21mmφ、裏側となる小さい方の径が4mmφ、テーパー角が120°として、120個程度の皿孔11を形成することが可能である。
【0022】
このように、基材12に皿孔11を複数形成してから二酸化鉛を電着して二酸化鉛層13を形成することにより、複数の皿孔11によって電極の表面が幾何学的表面となり、電着層の密着強度を高めることができるとともに、電極表面積がテーパー状にした分大きくなり、電気分解反応をより活性化し安定させることが可能となる。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態2に係る二酸化鉛電極の平面図であり、図4はB−B線における一部断面図である。
【0024】
本実施の形態2に係る二酸化鉛電極2は、皿孔21の形状と絶縁層20を備えている点で、上記実施形態の二酸化鉛電極1と異なる。
【0025】
二酸化鉛電極2における皿孔21は、基材22の両面からそれぞれ内方向に向かうテーパー状で、皿孔21同士が連通するように形成されている。このように皿孔21を穿孔することで、より電極表面積を大きくすることができ、電気分解反応をさらに活性化させることができる。
【0026】
また、基材22の表面を複数の小面積に区分けし、区分けとなる線に絶縁体からなる絶縁層20を設けることにより、電着反応による電着層の残留応力を分散させて減ずることができ、電着層の剥離や亀裂の発生を抑えることを可能にしている。なお、絶縁層20は、電着コーティング前に、コーティング面にマスキングを施して、アルミナセラミック等を溶射等により略々500μmの厚さで接着することによって形成される。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態3に係る二酸化鉛電極の平面図であり、図6はC−C線における一部断面図である。
【0028】
本実施の形態3に係る二酸化鉛電極3は、皿孔31の形状と絶縁層30を備えている点で上記実施形態の二酸化鉛電極1と異なり、皿孔31の形状の点で上記実施形態2の二酸化鉛電極2と異なる。なお、絶縁層30の形成方法は上記実施の形態2と同様である。
【0029】
この二酸化鉛電極3では、基材32の両面からそれぞれ反対側の面に向かうテーパー状の皿孔31が交互に削孔されて形成されている。このように皿孔31を構成することによっても、より電極表面積を大きくすることができ、電気分解反応のさらなる活性化を実現することができる。
【0030】
以上、本発明に係る二酸化鉛電極について、各実施の形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る二酸化鉛電極は、電気分解法による水処理の陽極として好適である。
【符号の説明】
【0032】
1、2、3 二酸化鉛電極
11、21、31 皿孔
12、22、32 基材
13、23、33 二酸化鉛層
20、30 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性金属からなる電極基材と、
前記電極基材を穿孔して形成されるテーパー状の複数の皿孔と、
前記皿孔が形成された電極基材の表面に二酸化鉛を電着してなる二酸化鉛層とを備える
ことを特徴とする二酸化鉛電極。
【請求項2】
前記皿孔は、前記電極基材の両面からそれぞれ内方向へ穿孔されて皿孔同士が連通している
ことを特徴とする請求項1記載の二酸化鉛電極。
【請求項3】
前記皿孔は、前記電極基材の両面からそれぞれ反対側の面方向へ交互に穿孔されている
ことを特徴とする請求項1記載の二酸化鉛電極。
【請求項4】
前記電極基材の表面に絶縁体からなる絶縁層を備え、
前記絶縁層が前記電極基材を小面積に区分けする
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二酸化鉛電極。
【請求項5】
不溶性金属からなる電極基材にテーパー状の複数の皿孔を穿孔して形成し、皿孔が形成された電極基材の表面に二酸化鉛を電着して二酸化鉛層を形成する
ことを特徴とする二酸化鉛の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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