説明

二重管継手構造

【課題】二重管同士の接続時に内管および外管によって形成される通路がシール材によって狭められることのないようにする。
【解決手段】外管11,21と、内管12,22と、これらを同心状態に支えている支柱13,23とを備えた第1の二重管10および第2の二重管20は、外管11,21の加工のために開口端より奥にある内管12,22同士の接続を接続継手部14,24で行う。この接続継手部14,24は、内管12,22とは直接結合し、相互の嵌合は内管12,22の内径より外側で行うにして内管の通路を狭めないようにする。内管12,22の接続部分に対応する外管11,21の接続部分も、その内径より外側にずらして、外管と内管との間に形成される通路を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重管継手構造に関し、特に自動車用空調装置の冷凍サイクルにて高圧の冷媒と低圧の冷媒とを同時に循環させる二重管を二重管構造のまま接続することができる二重管継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置では、一般に、エンジンルーム内に圧縮機、凝縮器およびレシーバドライヤが設置され、車室内に蒸発器が設置され、膨張弁は、車室とエンジンルームとを区画している隔壁または車室内に設置されている。冷凍サイクルは、基本的に、圧縮機、凝縮器、レシーバドライヤ、膨張弁および蒸発器がこの順序で冷媒が流れるよう配管され、蒸発器を出た冷媒は圧縮機へ戻るよう構成されている。このような冷凍サイクルにおいて、膨張弁に導入される高温・高圧の冷媒と圧縮機に吸入される低温・低圧の冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器が知られている。
【0003】
内部熱交換器は、膨張弁に導入される高温・高圧の冷媒を圧縮機に吸入される低温・低圧の冷媒によって冷却するとともに、圧縮機に吸入される低温・低圧の冷媒を膨張弁に導入される高温・高圧の冷媒によって過熱するので、冷凍サイクルの効率を上げることができるという機能を有している。
【0004】
このような内部熱交換器としては、専用の熱交換器を備えることなしに、膨張弁の入口側配管と蒸発器の出口側配管とを二重管にし、その内管と内管および外管の間の環状通路とに、高温・高圧の冷媒および低温・低圧の冷媒を流すように配管することによって構成することが可能である。しかし、二重管による内部熱交換器は、熱交換器としては性能が劣るので、熱交換の不足分は二重管の長さを長くすることによって賄うことが考えられている。車両によっては、車室をエンジンルームから隔てている隔壁と膨張弁との間の配管距離が短い場合には、二重管を隔壁を介してエンジンルーム内まで延長する必要がある。配管の車両への組み付け作業の都合上、車室内の二重管とエンジンルーム内の二重管とは、別々に配管され、その後、隔壁のところでそれらの二重管を互いに接続している。
【0005】
この二重管の接続は、二重管の先端に、高温・高圧用配管と低温・低圧用配管とに分岐する分岐部およびブロック状の雌型継手または雄型継手をろう付けにより取り付け、隔壁の位置にて、雌型継手と雄型継手とを嵌合し、互いにボルト締めすることにより行っている。
【0006】
このような二重管の接続方法は、二重管の先端に取り付けられる継手部材が高価であることから、二重管を二重管構造のまま接続することができる二重管継手構造が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この二重管継手構造によれば、二重管の内管については、両端の外周にそれぞれOリングを嵌めた別部品の連結用内管で接続し、外管については、それらの先端部分を互いに嵌合するような加工をし、その嵌合された部分を外側から締結部材で固定することによって、二重管同士を接続している。外管同士の嵌合部分は、Oリングでシールしている。
【特許文献1】特開2004−270928号公報(図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の二重管継手構造では、2つの二重管の接続側の内管に連結用内管の両端をそれぞれ挿入して内管同士を接続し、それら接続部分のシールはOリングにより行っている。Oリングは、連結用内管の先端に形成された嵌合溝に嵌め込まれて内管の内壁との間でシールしている。そのOリング用の嵌合溝は、連結用内管を内側に全周に亘って凹ますことにより形成しているため、連結用内管の内部通路が細くなって絞り部ができてしまうという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、二重管同士の接続部位において絞り部ができてしまうことのないような二重管継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上記問題を解決するために、同軸の内管および外管をそれぞれ備えた第1の二重管および第2の二重管が接続される二重管継手構造において、前記第1の二重管および前記第2の二重管は、前記外管の接続部分が、前記内管よりも軸方向外側に突出されている筒状加工領域を前記外管の内径より外側の位置にて互いに嵌合可能な形状に加工することによって形成され、前記内管の接続部分が、前記外管の接続部分の領域内であって前記内管の内径より外側の位置にて互いに嵌合可能な形状を持った筒状の接続継手部を前記内管の先端にそれぞれ結合することによって構成されていることを特徴とする二重管継手構造が提供される。
【0010】
このような二重管継手構造によれば、第1の二重管および第2の二重管の内管にはそれぞれ筒状の接続継手部を直接結合しており、これによって内管の通路を狭めてしまう要因を排除している。また、外管の接続部分がその内径より外側の位置にて互いに嵌合可能な形状に加工され、内管に結合される接続継手部も内管の内径より外側の位置にて互いに嵌合可能な形状に加工されることで、外管と内管との間に形成される通路を狭めることがない。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の二重管継手構造は、外管の中で内管を繋ぐ接続継手部は、内管に対してはシールリングを介さずに直接結合して内管の通路が狭くならないようにし、互いの接続に関しては内管の内径より外側の位置にて互いに嵌合し、かつ、外管の接続部分もその内径より外側の位置にて互いに嵌合する構成にすることで、外管と内管との間の通路もできるだけ狭くならないようにできるという利点がある。
【0012】
また、内管の接続継手部の先端が外管の端面よりも外側に突出しているので、外管同士を接続するときは勿論であるが、その前に、内管の接続継手部を互いに嵌合するときにおいてもその嵌合状態を目視によって直接確認することが可能になり、組み付け時の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、自動車用空調装置の冷凍サイクルにて内部熱交換器として機能する二重管の接続部に適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
図1は二重管の接続側端部構造を示す断面図、図2は二重管の断面を示す図、図3は二重管継手構造を示す断面図である。
【0014】
本実施の形態では、自動車用空調装置の冷凍サイクルにてエンジンルーム内のレシーバドライヤから車室内の膨張弁まで配管される高温・高圧配管および車室内の蒸発器からエンジンルーム内の圧縮機へ向けて配管される低温・低圧配管の一部を二重管構造とし、かつ、エンジンルーム内に配管される第1の二重管10および車室内に配管される第2の二重管20がエンジンルームと車室との間の隔壁にて接続されているとする。
【0015】
第1の二重管10および第2の二重管20は、図2に示したように、それぞれ外管11,21と、内管12,22と、これらを支えている支柱13,23とを備え、同軸二重管構造を有している。なお、この例では、外管11,21と内管12,22との間にて周方向に3つの支柱13,23を均等配置しているが、これに限定されるものではなく、外管11,21と内管12,22とが同心状態を維持できていて、外管11,21と内管12,22との間に冷媒を流す通路が確保されているものであればよい。このような第1の二重管10および第2の二重管20は、好ましくは、中空押し出し成形によって一体に形成された中空押し出し成形材から作られている。
【0016】
第1の二重管10は、そのような中空押し出し成形材の端部を加工し、内管12に接続継手部14が接合されて雄型継手構造にしている。すなわち、中空押し出し成形材は、まず、その端面側から外管11の加工に必要な領域まで加工の妨げとなる内管12および支柱13が除去されて筒状加工領域を形成し、さらに、接続継手部14を結合する領域を確保するために支柱13が除去される。その後、その筒状加工領域がプレスなどにより加工されて拡管部15、第2の二重管20との繋止用のビード部16およびシール材装着部17が形成される。このようにして、外管接続に必要な拡管部15、ビード部16およびシール材装着部17は、冷媒通路を妨げないよう筒状加工領域を拡管して外管11の内径よりも外側にオフセットして形成される。そして、筒状の接続継手部14が内管12の先端に外嵌されることで結合されている。この接続継手部14は、内管12に結合された状態で、先端が加工後の外管11の端面よりも外側に延出されるような長さを有しており、先端近傍には、シール材装着溝18が周設されている。
【0017】
接続継手部14と内管12との嵌合部には、ねじの緩み止めに用いられているねじロック材のような接着剤が塗布され、これによって接続継手部14と内管12とが気密に固着される。または、内管12が接続継手部14に圧入されるような形で接続継手部14を内管12の先端に嵌着することによっても、接続継手部14を内管12に気密に結合することができる。
【0018】
第2の二重管20は、第1の二重管10の場合と同様にして、中空押し出し成形材の端部を加工し、内管22に接続継手部24が接合されて雌型継手構造にしている。すなわち、中空押し出し成形材は、まず、その端面側から外管21の加工に必要な領域まで内管22および支柱23が除去され、さらに、接続継手部24の結合領域を確保するために支柱23が除去される。その後、外管21の先端部がプレスなどにより加工されて拡管部25,26が形成される。拡管部25は、第1の二重管10の外管11の先端に形成されたシール材装着部17の進入を可能にするような内径を有し、拡管部26は、第1の二重管10の外管11に形成されたビード部16と同じ外径を有している。なお、拡管部25と拡管部26との境界の段差部27は、第1の二重管10との繋止用に使用される。そして、接続継手部24が内管22の先端に結合される。この接続継手部24は、内管22に結合された状態で、先端が加工後の外管21の端面よりも軸方向外側に延出されるような長さを有しており、先端側は拡管されていて、第1の二重管10の接続継手部14の進入を可能にするような内径を有する拡管部28になっている。この接続継手部24の拡管部28は、第1の二重管10の外管11の端面よりも先端が突出した接続継手部14を受け入れるために、外管21の先端部の拡管部26よりも軸方向の長さが長く形成されていて、接続時に、先に接続継手部14が接続継手部24に挿入した後においても、外管11が外管21に挿入完了するまで、接続継手部24が接続継手部14をガイドできる長さを有している。
【0019】
接続継手部24と内管22との嵌合部は、接着剤によって気密に固着されるか、または、圧入によって接続継手部24が内管22に嵌着される。
以上のように形成された雄側の第1の二重管10は、雌側の第2の二重管20と隔壁の嵌通孔近傍にて接続される。そのとき、図3に示したように、第1の二重管10は、その外管11のシール材装着部17にOリング31を装着し、接続継手部14のシール材装着溝18にOリング32を装着してから、第2の二重管20との接続が開始される。
【0020】
まず、接続する第1の二重管10の接続継手部14および接続される第2の二重管20の接続継手部24は、いずれも、外管11,21の端面より軸方向外側へ突出しているので、第1の二重管10の接続継手部14を第2の二重管20の接続継手部24に挿入するとき、目視により確認しながら行うことが可能になる。その後、第1の二重管10の外管11を第2の二重管20の外管21に挿入するが、これら外管11,21は、接続継手部14,24の外側にあるので、外管11,21の接続作業についても、当然ながら目視により確認しながら行うことができるのである。
【0021】
接続継手部24の拡管部28は、外管11が外管21へ挿入される距離よりも長く形成されているので、先に接続継手部14が挿入されてから外管11が外管21へ挿入され終わるまでの間、目視による確認ができなくなるが、Oリング32によるシールは確実に継続されていることになる。Oリング31については、外管11の外管21への挿入距離が短いので、シール状態を確認しながらの接続作業が可能である。以上のようにして第1の二重管10が第2の二重管20に挿入した後は、第1の二重管10および第2の二重管20は、パイプクランプ40によって繋止される。
【0022】
図4はパイプクランプの一例を示す斜視図である。
第1の二重管10と第2の二重管20とを繋ぎ止めるパイプクランプ40は、それぞれ略半円弧形状の第1の繋止部材41および第2の繋止部材42と、固定ピン43とを備えている。第1の繋止部材41および第2の繋止部材42は、周方向の一端にヒンジ部を有していてその回動軸を中心に揺動可能に連結されている。
【0023】
第1の繋止部材41の内側には、第1の二重管10の外管11に形成されたビード部16および第2の二重管20の外管21に形成された段差部27を嵌め込んで軸方向に動かないよう拘止する溝部44が設けられている。第1の繋止部材41の周方向の他端には、一部が庇状に張り出して外設された固定片45を備えている。固定片45は、その略中央部にこのパイプクランプ40の軸線と平行な方向に形成された貫通孔46と頂部に凹設された案内溝47とを有している。
【0024】
第2の繋止部材42は、その内側に第1の二重管10のビード部16および第2の二重管20の段差部27を拘止する溝部48と、周方向の他端に一部が庇状に張り出して外設された2つの固定片49とを備えている。これらの固定片49は、第1の繋止部材41および第2の繋止部材42が合わさったときに、第1の繋止部材41の固定片45の両側に位置し、貫通孔50は、固定片45に形成された貫通孔46と同軸をなし、案内溝51も、固定片45に形成された案内溝47と互いに整合するようになっている。
【0025】
固定ピン43は、固定片45,49の貫通孔46,50に挿入することができる太さを有し、ばね性を持った丸棒を略U字状に屈曲加工し、一方のアームには抜け防止の機能を有するように先端部が他方のアームに接近するように形成されている。
【0026】
以上の構成のパイプクランプ40は、第1の繋止部材41および第2の繋止部材42の溝部44,48に第1の二重管10のビード部16および第2の二重管20の段差部27を嵌合させながら、第1の繋止部材41および第2の繋止部材42を合わせることによってビード部16および段差部27の全周を拘束する。これにより、固定片45,49の貫通孔46,50および案内溝47,51が整合されるので、その貫通孔46,50および案内溝47,51に固定ピン43を配置することによって固定片45,49が固定され、第1の二重管10および第2の二重管20が緊密に繋止されることになる。
【0027】
パイプクランプ40により繋止された第1の二重管10および第2の二重管20は、自動車用空調装置の冷凍サイクルでは、内部熱交換器として機能する。この場合、図3に冷媒の流れ方向を矢印で示したように、たとえば、第1の二重管10および第2の二重管20の内管12、接続継手部14,24および内管22は、レシーバドライヤから膨張弁へ高温・高圧の冷媒を供給する高温・高圧冷媒通路を構成し、外管11,21とその高温・高圧冷媒通路との間の空間は、蒸発器から圧縮機へ低温・低圧の冷媒を流す低温・低圧冷媒通路を構成し、高温・高圧の冷媒と低温・低圧冷媒とは、内管12,22、接続継手部14,24および支柱13,23を介して熱交換されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】二重管の接続側端部構造を示す断面図である。
【図2】二重管の断面を示す図である。
【図3】二重管継手構造を示す断面図である。
【図4】パイプクランプの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10 第1の二重管
11 外管
12 内管
13 支柱
14 接続継手部
15 拡管部
16 ビード部
17 シール材装着部
18 シール材装着溝
20 第2の二重管
21 外管
22 内管
23 支柱
24 接続継手部
25,26 拡管部
27 段差部
28 拡管部
31,32 Oリング
40 パイプクランプ
41 第1の繋止部材
42 第2の繋止部材
43 固定ピン
44 溝部
45 固定片
46 貫通孔
47 案内溝
48 溝部
49 固定片
50 貫通孔
51 案内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸の内管および外管をそれぞれ備えた第1の二重管および第2の二重管が接続される二重管継手構造において、
前記第1の二重管および前記第2の二重管は、前記外管の接続部分が、前記内管よりも軸方向外側に突出されている筒状加工領域を前記外管の内径より外側の位置にて互いに嵌合可能な形状に加工することによって形成され、前記内管の接続部分が、前記外管の接続部分の領域内であって前記内管の内径より外側の位置にて互いに嵌合可能な形状を持った筒状の接続継手部を前記内管の先端にそれぞれ結合することによって構成されていることを特徴とする二重管継手構造。
【請求項2】
前記接続継手部は、前記内管の先端に嵌合され、その嵌合部に接着剤を塗布して気密に固着されることで結合される請求項1記載の二重管継手構造。
【請求項3】
前記接続継手部は、前記内管の先端に嵌着することにより結合されている請求項1記載の二重管継手構造。
【請求項4】
前記第1の二重管および前記第2の二重管は、前記外管と、前記内管と、これらを同心状態に支えている支柱とが中空押し出し成形によって一体に形成された中空押し出し成形材であり、前記外管の前記筒状加工領域は、前記中空押し出し成形材の端部の側から前記内管および前記支柱を除去することによって形成され、前記接続継手部が結合される前記内管の先端は、前記中空押し出し成形材の端部の側から前記支柱を除去することによって形成されている請求項1記載の二重管継手構造。
【請求項5】
前記第1の二重管および前記第2の二重管は、それぞれ、前記接続継手部の先端が前記外管の端面より軸方向外側へ突出している請求項1記載の二重管継手構造。
【請求項6】
前記外管の接続部分の嵌合部および前記接続継手部の嵌合部は、それぞれシールリングによりシールされている請求項1記載の二重管継手構造。
【請求項7】
前記第1の二重管および前記第2の二重管は、互いに嵌合された前記外管の接続部分の全周をパイプクランプで互いに拘束することによって繋止されている請求項1記載の二重管継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−168127(P2009−168127A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6439(P2008−6439)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】