説明

井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法と、井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置

【課題】井戸の掘削施工と井戸水の汲み上げ作業を、重機を使わずに、容易且つ迅速に行うことができ、また、地下水層の深さや、その水量の如何に拘わらず、効率良く地下水層の水を汲み上げることができる、井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法と、井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法は、先端部にノズルを有すると共に、先端部側の周壁に複数の取水孔を有する外管内に、内管の先端部を外管のノズルに宛がうように固定する組立工程と、内管の基端部側に掘削用水圧ポンプを接続し、内管に水を送り込んで外管のノズルから水を噴出させながら外管を地中において進行させる掘削工程と、外管の先端部側が地下水層に到達した後、外管から内管を取り外し、外管の基端部側に吸水ポンプを接続し、外管を介して水を汲み上げる水の汲み上げ工程と、から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的に小口径である深い井戸を容易に設けることができる、井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法と、井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法は、先ず、図8(a)に示すように、掘削用パイプ100の基端部に掘削用水圧ポンプ101を接続し、掘削用パイプ100の先端部に設けている噴出ノズル100aから高圧水を勢い良く噴出させ、掘削穴Hを造りながら掘削用パイプ100を地中において進行させて、掘削用パイプ100の先端部側が地下水層Wに到達するまで掘削を行っていた。
【0003】
そして、掘削用パイプ100が、地下水層Wに到達したか否かの判断は、掘削用パイプ100の外周面と掘削穴Hとの間の隙間を通って地上に溢れ出る、汚泥水の状態を観察して行っていた。この汚泥水は、掘削用パイプ100から噴出した水と、土や砂等が混じったものである。
【0004】
この汚泥水の状態から、掘削用パイプ100の先端部側が地下水層Wに到達したと判断した時には、掘削用パイプ100を掘削穴Hから抜き出し、図8(b)に示すように、外パイプ102を掘削穴Hに挿入する。外パイプ102は、先端部側の周壁に複数の取水孔102aを有している。この外パイプ102の取水孔102aが地下水層Wに入り込むようにして、掘削穴Hに外パイプ102を配置するのである。
【0005】
次に、図8(c)に示すように、外パイプ102内に吸水用パイプ103を配置し、吸水用パイプ103の基端部に吸水ポンプ104を接続する。
【0006】
最後に、図9に示すように、吸水ポンプ104を作動させ、吸水用パイプ103を介して、地下水層Wの水を汲み上げるのである。
【0007】
この他、従来における井戸の他の掘削方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、ロータリーパーカッションドリルを用いて施工する手法がある。このロータリーパーカッションドリルは、装置本体に起倒自在に設けられているガイドセルと、このガイドセルに上下動自在に設けられているドリルヘッドと、ドリルヘッドに取り付けられている二重管等で構成されている。
【0008】
この二重管は、内管と外管で構成され、その最先端には、それぞれビットが設けられている。二重管は、ドリルヘッドに取り付けられ、このドリルヘッドにより二重管は打撃、回転及び給進することとなり、短管を順次継ぎ足しながら、地下水層Wまで掘削するようになっている。この場合、内管又は内外管の隙間の何れかに切削水を供給して、循環させながら掘削している。
【0009】
次に、内管を抜管し、外管のみを残すようにして保護管を外管内に所定の深さまで挿入する。保護管の下端側には、外周面に複数の開口であるスリットが穿設され、その外周には、円筒形の保護管用フィルターが取り付けられている。
【0010】
次に、外管を抜管し、保護管の外周に沿って上部からシールリングを孔内上部の所定の深さまで挿入して、孔内壁と保護管外周との間をシールする。そして、セメントモルタル等の固化材がシールリング上に地表まで充填され、保護管上端が地盤と固定される。
【0011】
最後に、下端にストレーナを有する揚水パイプが所定の深さ(井戸水面以下)に挿入され、その上端が地上の井戸ポンプに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−291779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図8に示す従来における井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法においては、掘削用パイプ100により掘削する工程と、掘削穴Hから掘削用パイプ100を抜き出す工程と、掘削穴Hに外パイプ102を挿入する工程と、外パイプ102内に吸水用パイプ103を配置して井戸水を汲み上げる工程のそれぞれが個別に行われ、多工程となることから、一連の作業が非常に面倒であり、全体の作業時間も長くなっていた。
【0014】
また、掘削施工時に、掘削用パイプ100の外周面と掘削穴Hとの間の隙間を介して、掘削用パイプ100から噴出した水と、土や砂等が混じった汚泥水を地上に溢れ出させていることから、例えば、地中の100m以上もの深さまで掘削する場合には、掘削穴Hが溢水による浸食で崩れ易くなる。
【0015】
この掘削穴Hが崩れ易い状態で掘削用パイプ100を抜き出し、掘削穴Hに外パイプ102を挿入する場合に、掘削穴Hが崩壊してしまう虞がある。
【0016】
このため、掘削穴Hの深さは、せいぜい約4mから5m程度が限界となり、掘削作業の効率が非常に悪くなっていた。
【0017】
加えて、従来における井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法においては、掘削用パイプ100の先端部側が地下水層Wまで到達したか否の判断を、掘削用パイプ100の外周面と掘削穴Hとの間の隙間を介して地上に溢れ出る、汚泥水の状態を観察して行っていたことから、熟練した職人による感に頼らざるを得ず、掘削用パイプ100が実際に地下水層Wまで到達しているかどうかを正確に理解することができなかった。
【0018】
その為、井戸を設けたときに、充分な量の水を汲み上げることができない事態が頻繁に生じていた。
【0019】
また、従来における井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法においては、図9に示すように、外パイプ102内に吸水用パイプ103を配置して地下水層Wの水を汲み上げるのであるが、外パイプ102内の所定の高さに達するまで地下水層Wの水が外パイプ102内に入り込んでいないと、現実的に吸水用パイプ103により地下水層Wの水を汲み上げることができなかった。
【0020】
要するに、従来の方法において地下水層Wの水を汲み上げるためには、外パイプ102内に入り込んでいる、地下水層Wの水の水位Sが高くなければならなかったのである。
【0021】
一方、特許文献1に示す井戸の掘削方法の場合、重機に取り付けられたロータリーパーカッションドリルを使用して掘削施工が行われるので、掘削作業が非常に大掛かりなものとなり、多額の費用を要する問題点を有していた。
【0022】
また、特許文献1に示す井戸の掘削方法の場合、長細い筒状の外管内に所定の深さまで保護管が挿入されることに加えて、保護管用フィルターは、保護管の下端側に突設された複数の開口であるスリットに外挿され、外径が外管の内径と略等しい不織布で形成された所定の厚さの円筒形の繊維が重ねられ、この不織布は内側では目が密で外側に向って次第に目が粗くなっている構成によることから、地下水層Wの水が少なくなると汲み上げ効率が悪くなり易いという問題点を有していた。
【0023】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、井戸の掘削施工と井戸水の汲み上げ作業を、重機を使わずに、容易且つ迅速に行うことができ、また、地下水層の深さや、その水量の如何に拘わらず、効率良く地下水層の水を汲み上げることができる、井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法と、井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法は、先端部にノズルを有すると共に、先端部側の周壁に複数の取水孔を有する外管内に、内管の先端部を外管のノズルに宛がうように固定する組立工程と、内管の基端部側に掘削用水圧ポンプを接続し、内管に水を送り込んで外管のノズルから水を噴出させながら外管を地中において進行させる掘削工程と、外管の先端部側が地下水層に到達した後、外管から内管を取り外し、外管の基端部側に吸水ポンプを接続し、外管を介して水を汲み上げる水の汲み上げ工程と、から成ることで、上述した課題を解決した。
【0025】
また、水の汲み上げ工程は、吸水ポンプにより外管内を真空状態にして水を吸い上げることで、同じく上述した課題を解決した。
【0026】
さらに、本発明に係る井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置は、先端部にノズルを有すると共に、先端部側の周壁に複数の取水孔を有する外管と、先端部を外管のノズルに宛がうように固定する内管から構成され、内管の基端部側には掘削用水圧ポンプを接続可能であり、内管を取り外した外管の基端部側には吸水ポンプを接続可能であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0027】
また、外管のノズルには、内周面に雌ネジ部を設ける一方、内管の先端部の外周面に雄ネジ部を設け、内管の雄ネジ部を外管のノズルの雌ネジ部に螺合させて、外管内に内管を固定することで、同じく上述した課題を解決した。
【0028】
加えて、外管は、複数の取水孔を有する先端部側に、砂止め用の不織ネットを備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0029】
また、外管と内管の径の比率は、およそ2:1であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0030】
この他、外管における取水孔を有する部分の長さは、およそ50cm〜1mであることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法は、先端部にノズルを有すると共に、先端部側の周壁に複数の取水孔を有する外管内に、内管の先端部を外管のノズルに宛がうように固定する組立工程と、内管の基端部側に掘削用水圧ポンプを接続し、内管に水を送り込んで外管のノズルから水を噴出させながら外管を地中において進行させる掘削工程と、外管の先端部側が地下水層に到達した後、外管から内管を取り外し、外管の基端部側に吸水ポンプを接続し、外管を介して水を汲み上げる水の汲み上げ工程と、から成ることから、井戸の掘削施工と井戸水の汲み上げ作業を、重機を使わずに、容易且つ迅速に行うことができる。
【0032】
また、本発明によれば、水を噴出させながら外管を地中において進行させ、外管の先端部側が地下水層に到達した時は、外管を掘削穴にそのまま残した状態でで、外管から内管を取り外して外管の基端部側に吸水ポンプを接続し、外管を介して地下水層の水を汲み上げることができる。
【0033】
すなわち、外管は、井戸の掘削施工時と、井戸水の汲み上げ作業時のいずれにも活用されるのである。その為、従来における井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法のように、掘削用パイプを用いて掘削した後、掘削穴から掘削用パイプを抜き出してから、掘削穴に外パイプを再度挿入する等の工程を省略して、全体の作業時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
さらに、水の汲み上げ工程は、吸水ポンプにより外管内を真空状態にして水を吸い上げることから、地下水層の深さや、その水量の如何に拘わらず、充分な量の水を長期間に渡り効率良く汲み上げることができる。
【0035】
具体的には、例えば、外管自体が比較的に長い場合であっても、外管の先端部側が地下水層に到達している限り、地下水層の水を確実に汲み上げることができる。
【0036】
また、外管の先端部側が地下水層に到達していれば、吸水ポンプにより外管内を真空状態にして水を確実に吸い上げることができ、従来における井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法のように、通常の状態で外管内に入り込む水の水位等の影響を受けることが全くない。
【0037】
一方、本発明に係る井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置は、先端部にノズルを有すると共に、先端部側の周壁に複数の取水孔を有する外管と、先端部を外管のノズルに宛がうように固定する内管から構成され、内管の基端部側には掘削用水圧ポンプを接続可能であり、内管を取り外した外管の基端部側には吸水ポンプを接続可能であることから、井戸の掘削施工と井戸水の汲み上げ作業を、重機を使わずに、容易且つ迅速に行うことができる。
【0038】
また、このような井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置を比較的にシンプルに構成して、装置の製作費用を安くすることができる。
【0039】
さらに、外管のノズルには、内周面に雌ネジ部を設ける一方、内管の先端部の外周面に雄ネジ部を設け、内管の雄ネジ部を外管のノズルの雌ネジ部に螺合させて、外管内に内管を固定することから、井戸の掘削施工の際には、外管内に内管を挿入して、簡単に固定することができる。
【0040】
そして、内管の基端部側に掘削用水圧ポンプを接続し、内管に水を送り込んで外管のノズルから水を噴出させながら外管を地中において進行させることで、地下水層が存在する、例えば、100m以上の深さまで容易に掘削することができる。
【0041】
このとき、ノズルから噴出した水の一部は、土や砂等が混じった汚泥水となり、外管の外周面と掘削穴との間の隙間を通って地上に溢れ出るが、外管を掘削穴にそのまま残した状態を維持することから、掘削穴が崩壊してしまう虞はない。
【0042】
また、井戸水の汲み上げ作業の際には、外管内から内管を抜き出し、外管の基端部側に吸水ポンプを接続し、外管を介して水を汲み上げることで、地下水層の水を容易に汲み上げることができる。
【0043】
しかも、外管は、井戸の掘削施工時と井戸水の汲み上げ作業時のいずれにも活用される為、従来における井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法のように、掘削用パイプを用いて掘削した後、掘削穴から掘削用パイプを抜き出し、掘削穴に外パイプを再度挿入する等の工程を省略して、全体の作業時間を大幅に短縮することができる。
【0044】
また、外管は、複数の取水孔を有する先端部側に、砂止め用の不織ネットを備えていることから、外管内に砂が入り込んでしまう事態の発生を阻止しながら、外管内に地下水層の水を取り入れることができる。
【0045】
この他、外管と内管の径の比率は、およそ2:1であり、井戸水の汲み上げ作業において、取り外される内管の径よりも外管自体の径が大きいことから、吸水ポンプを接続した外管による汲み上げ水量を増大させることができる。
【0046】
加えて、外管内に内管を固定している井戸の掘削施工時には、外管の内周壁と内管の外周壁の間に所定の空間が存在することとなる。その為、外管の先端部側が地下水層に到達すると、外管の取水孔から外管内に水が急速に入り込み、外管の内周壁と内管の外周壁の間を通って上方に移動し、地上に溢れ出ることとなる。
【0047】
その結果、外管の先端部側が地下水層に到達したことを、誰もが簡単に理解でき、その後の作業を円滑に行うことができる。
【0048】
また、外管における取水孔を有する部分の長さは、およそ50cm〜1mであることから、外管の先端部側が地下水層に到達した時には、これらの取水孔を介して、充分な量の水を外管内に取り入れて汲み上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】外管の構成を示す側面図である。
【図2】外管の取水孔部分の構成を示す斜視図である。
【図3】外管内に内管を挿入し、外管のノズル内に内管の先端を宛がって固定している状態を示す斜視図である。
【図4】井戸の掘削施工の状態を示す断面図である。
【図5】井戸の掘削施工において、外管の先端部側が地下水層に到達した状態を示す断面図である。
【図6】先端部側が地下水層に到達している外管内から、内管を抜き出した状態を示す断面図である。
【図7】先端部側が地下水層に到達している外管に吸水ポンプを接続して、地下水層の水を汲み上げている状態を示す断面図である。
【図8】従来における井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法を示すもので、(a)は掘削用パイプで井戸の掘削施工を行っている状態の断面図、(b)は掘削穴から掘削用パイプを抜き出し、掘削穴に外パイプを挿入した状態の断面図、(c)は外パイプ内に吸水用パイプを配置した状態の断面図である。
【図9】従来における井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法を示すもので、外パイプ内に吸水用パイプを配置し、吸水用パイプの基端部に吸水ポンプを接続して井戸水を汲み上げる状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0051】
本発明に係る井戸の掘削装置及び井戸水の汲み上げ装置は、図3・図4に示すように、外管1と、外管1内に配置される内管2により構成されている。
【0052】
外管1は、図1・図2に示すように、先端部にノズル3を設けている。また、外管1は、先端部側の周壁に複数の取水孔4を設けている。
【0053】
内管2は、図3に示すように、その先端部を外管1のノズル3に宛がうようにして、外管1内に着脱自在に固定されるものである。これらの外管1と内管2の径の比率は、およそ2:1に設定されている。
【0054】
そして、図4・図5に示すように、内管2の基端部側に掘削用水圧ポンプ11を接続することで、高圧水を内管2に送り込み、外管1の先端部に設けているノズル3から勢い良く水を噴出できるように形成されている。
【0055】
また、図7に示すように、外管1の基端部側には、エルボー管9を介して吸水ポンプ10を接続することで、外管1の先端部側に設けているノズル3と取水孔4から地下水層Wの水を吸い上げるように形成されている。このとき、内管2は、外管1内から取り外されている。
【0056】
外管1は、長さが約8m〜10m、内径が約30mm程度の、鋼製またはポリエチレン製等の円筒材によって形成されている。この外管1の先端部には、図1・図2に示すように、円錐状に縮径したテーパ部5を介して、内径が約15mm程度のノズル3が設けられている。このノズル3の内周面には、雌ネジ部6が設けられている。
【0057】
尚、ノズル3の先端の開口縁部には、内側から雌ネジ部6にねじ込まれる内管2の先端部を係止するために、ストッパー部12が設けられている。このストッパー部12は、円錐状に縮径したテーパ状に形成されている。
【0058】
また、外管1のテーパ部5の上方に位置している外管1の先端部側の周壁には、およそ50cm〜1mの長さに渡って、直径約6mm程度の複数の取水孔4を設けている。さらに、この取水孔4を覆うようにして、外管1の先端部側の周壁には、砂止め用の不織ネット8が巻装されている。この砂止め用の不織ネット8は、例えば、銅線等を用いて外管1に固定されている。
【0059】
一方、内管2は、長さが外管1と略同じである約8m〜10m、内径が外管1のおよそ半分の約15mm程度の鋼製またはポリエチレン製等の円筒材によって形成され、その先端部の外周面には、図3に示すように、雄ネジ部7を設けている。
【0060】
井戸の掘削施工時には、図3に示すように、外管1内に内管2を挿入し、内管2の先端部に設けている雄ネジ部7を、外管1の先端部に設けているノズル3の雌ネジ部6に内側から捩じ込んで、外管1内に内管2を固定する。
【0061】
そして、図4に示すように、内管2の基端部側に掘削用水圧ポンプ11を接続し、内管2に高圧水を送り込んで、外管1の先端部に設けているノズル3から勢い良く水を噴出させて、地中の掘削を行うようにしている。
【0062】
一方、井戸水の汲み上げ作業時には、図6に示すように、外管1の先端部に設けているノズル3の雌ネジ部6から、内管2の先端部に設けている雄ネジ部7を外して、外管1内から内管2を取り外す。
【0063】
その後、図7に示すように、外管1の基端部側にエルボー管9を介して吸水ポンプ10を接続し、この吸水ポンプ10により外管1内を真空状態にすることで、外管1の先端部側に設けているノズル3と取水孔4から地下水層Wの水を吸い上げるようにしている。
【0064】
以下に、井戸の掘削装置及び井戸水の汲み上げ装置を用いた、井戸の掘削方法及び井戸水の汲み上げ方法を詳述する。
【0065】
(先端部にノズルを有すると共に、先端部周壁に複数の取水孔を有する外管内に、内管の先端部を外管のノズルに宛がうように固定する組立工程)
【0066】
先ず、図3に示すように、外管1内に内管2を挿入し、この内管2の先端部に設けている雄ネジ部7を、外管1の先端部に設けているノズル3の雌ネジ部6に内側から捩じ込んで、外管1内に内管2を固定する。
【0067】
(内管の基端部側に掘削用水圧ポンプを接続し、内管に水を送り込んで外管のノズルから水を噴出させながら外管を地中において進行させる掘削工程)
【0068】
次に、図4に示すように、内管2の基端部側に掘削用水圧ポンプ11を接続し、内管2に高圧水を送り込んで外管1のノズル3からを勢い良く水を噴出させ、掘削穴Hを造りながら外管1を地中において進行させる。
【0069】
このとき、外管1のノズル3から勢い良く噴出した水の一部は、土や砂等が混じった汚泥水となり、外管1の外周面と掘削穴Hとの間の隙間を通って地上に溢れ出る。
【0070】
尚、地中を深く掘削する場合には、複数の外管1・内管2を長手方向に適宜接続して、その掘削を行う。
【0071】
(外管の先端部側が水層に到達した後、外管から内管を取り外し、外管の基端部側に吸水ポンプを接続し、外管を介して水を汲み上げる水の汲み上げ工程)
【0072】
外管1の先端部側が地下水層Wまで到達すると、図5に示すように、外管1の取水孔4から外管1内に地下水層Wの水が急速に入り込み、外管1の内周壁と内管2の外周壁の間を通って水が勢いよく上方に移動して、地上に溢れ出ることとなる。
【0073】
その結果、外管1の先端部側が地下水層Wまで到達したことを、誰もが簡単に理解することができる。
【0074】
外管1の先端部側が地下水層Wに到達したときには、図6に示すように、外管1の先端部に設けているノズル3の雌ネジ部6から、内管2の先端部に設けている雄ネジ部7を外して、外管1内から内管2を抜き出す。
【0075】
そして、図7に示すように、外管1の基端部側にエルボー管9を介して吸水ポンプ10を接続し、外管1の先端部側に設けているノズル3と取水孔4から地下水層Wの水を吸い上げる。
【0076】
このとき、吸水ポンプ10により、外管1内を真空状態にして地下水層Wの水を吸い上げるのである。
【0077】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良・変形等は、本発明に全て包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、比較的に小口径である深い井戸を設けるために使用する他に、例えば、熱交換用の井戸を設けたり、また、地盤のトンネル工事における水抜き工事を行う場合等のように、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
H…掘削穴
W…地下水層
S…水位

1…外管
2…内管
3…ノズル
4…取水孔
5…テーパ部
6…雌ネジ部
7…雄ネジ部
8…砂止め用の不織ネット
9…エルボー管
10…吸水ポンプ
11…掘削用水圧ポンプ
12…ストッパー部

100…掘削用パイプ
100a…噴出ノズル
101…掘削用水圧ポンプ
102…外パイプ
102a…取水孔
103…吸水用パイプ
104…吸水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にノズルを有すると共に、先端部側の周壁に複数の取水孔を有する外管内に、内管の先端部を外管のノズルに宛がうように固定する組立工程と、
内管の基端部側に掘削用水圧ポンプを接続し、内管に水を送り込んで外管のノズルから水を噴出させながら外管を地中において進行させる掘削工程と、
外管の先端部側が地下水層に到達した後、外管から内管を取り外し、外管の基端部側に吸水ポンプを接続し、外管を介して水を汲み上げる水の汲み上げ工程と、から成ることを特徴とする井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法。
【請求項2】
水の汲み上げ工程は、吸水ポンプにより外管内を真空状態にして水を吸い上げる請求項1に記載の井戸の掘削・井戸水の汲み上げ方法。
【請求項3】
先端部にノズルを有すると共に、先端部側の周壁に複数の取水孔を有する外管と、先端部を外管のノズルに宛がうように固定する内管から構成され、内管の基端部側には掘削用水圧ポンプを接続可能であり、内管を取り外した外管の基端部側には吸水ポンプを接続可能であることを特徴とする井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置。
【請求項4】
外管のノズルには、内周面に雌ネジ部を設ける一方、内管の先端部の外周面に雄ネジ部を設け、内管の雄ネジ部を外管のノズルの雌ネジ部に螺合させて、外管内に内管を固定する請求項3に記載の井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置。
【請求項5】
外管は、複数の取水孔を有する先端部側に、砂止め用の不織ネットを備えている請求項3または4に記載の井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置。
【請求項6】
外管と内管の径の比率は、およそ2:1である請求項3乃至5のいずれかに記載の井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置。
【請求項7】
外管における取水孔を有する部分の長さは、およそ50cm〜1mである請求項3乃至6のいずれかに記載の井戸の掘削・井戸水の汲み上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−32715(P2011−32715A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179575(P2009−179575)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(592128456)有限会社一角 (5)