説明

井戸装置

【課題】井戸穴の内壁面の補強を図りながら集水孔の開口率100%を維持し、集水能力の増大と集水効率の向上を図ることを課題とする。
【解決手段】内部空間に連通する集水孔3が上・下面に穿設された複数個の中空円盤状集水盤4と、この集水盤の中心を貫通して固着され該集水盤の内部と通孔5を通じて連通する集水汲上げ管6と、最上位の集水盤の上部にあって前記汲上げ管に固着された円盤状の防御板7と、この防御板の下端外周から最下位の集水盤の外周にかけてこれらを覆うように張設された網体8とからなる集水ユニット2を具備し、この集水ユニット2を帯水地層の地表から掘削された井戸穴1の内壁との間に砂利13等の裏込め材を充填するようにしたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集水用の井戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水の利用を図る手段として、帯水地層中に竪穴(以下井戸穴という)を掘削し、その内壁面を通じ井戸穴内に地下水を浸出させて集水し、その水を汲上げ管を通じて地上へ揚水する構造の井戸が古来から用いられている。
【0003】
この種の井戸は、地下水が自然の状態で自由に井戸穴内に流入するので、水理学的には理想の形態ではあるが、上記のように竪穴を掘削して構成する井戸では経年によりその内壁が次第に崩落し、井戸寿命を早期に失なうことになるという欠点を有している。
【0004】
このようなことから、井戸穴の内壁面を石積みや孔あきのケーシングを建込むなどして補強するようになされているが、これらによると井戸穴の内壁面の開口率が大幅に減少(35%程度)して集水効率が著しく低下するという問題がある。
【0005】
そこで本件発明者は、先きに特許文献1に示される井戸装置を開発した。
【0006】
この井戸装置は、井戸穴内に自然流入した地下水を偏平中空円盤状の水平集水管の上下面に穿設された集水孔から該集水管を通じて汲上げ管に集め、この汲上げ管を通じて地上へ揚水するようにしたものである。
【0007】
しかるに上記文献に示される井戸装置では、汲上げ管および水平集水管を井戸穴内に建て込んだのち井戸穴の内壁との間に裏込め材として砂利を充填して内壁の保護を図るとき、その砂利が水平集水管の上面にまでぎっしりと堆積され、中でも小さい砂利が水平集水管の上面の集水孔に詰って塞いでしまい、集水孔の開口率が減少して集水効率を著しく低下させるという問題点があった。
【0008】
また上記文献に見られるように、水平集水管の個々に短い汲上げ管を固着し、この汲上げ管を順次嵌合させて接続するようにしたものでは、前述のように水平集水管の上面に砂利が偏って積層された場合、それに伴う偏荷重により水平集水管が傾いてしまい、これにより中央の汲上げ管も屈曲して良好な集水や汲上げに支障をきたすという問題があった。
【特許文献1】特公昭63−29053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水平集水管による集水機能はそのままに、井戸穴の内壁の保護を全うしながら集水孔の目詰りを全くなくして開口率100%の維持を可能とする井戸装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する手段として本発明は、内部空間に連通する集水孔が上・下面に穿設された複数個の中空円盤状集水盤と、この集水盤の中心を貫通して固着され該集水盤の内部と通孔を通じて連通する集水汲上げ管と、最上位の集水盤の上部にあって前記集水汲上げ管に固着された円錐状の防御板と、この防御板の下端外周から最下位の集水盤の外周にかけてこれらを覆うように張設された網体とからなる集水ユニットを具備し、この集水ユニットを帯水地層の地表から掘削された井戸穴内に挿入設置してこの集水ユニットと井戸穴の内壁との間に砂利等の裏込め材を充填するようにしたことにある。
【0011】
上記集水盤は、中心部位が厚く、周辺に至るにつれて次第に薄くなる断面形状に形成することが好ましい。
【0012】
前記集水盤の集水孔は、半径方向に延びる多数のスリット群、または円形小孔群により構成することができる。
【0013】
また前記集水孔は、前記集水汲上げ管に近い部位では粗に、集水汲上げ管から離間するにつれて密に穿設することが好ましい。
【0014】
前記防御板の外周面は、中心軸に対し40〜50°の傾斜面とされ、さらに好ましくは45°とされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、集水ユニットと井戸穴の内壁面との間に裏込め材としての砂利を充填して井戸穴の内壁の保護を図るときその砂利は集水ユニットの網体によって集水盤の上面へは進入することがないので集水盤の上面の集水孔が砂利で塞がれることがなく、開口率100%を維持することができ、集水能力を大幅に高め、集水効率を著しく向上させることができる。
【0016】
そして集水盤の上面に砂利が存在しないので、集水盤に偏荷重が加わることがなく、これにより集水盤の中央に貫通して固着される汲上げ管に曲がりを生じることがなく、汲上げ不良を起こすこともない。
【0017】
上記集水盤を用いた集水ユニットの集水機能は、前出の特許文献1に記載の井戸装置によるものと同様に、平面的に存在する地下水の流入方向が垂直方向となるので仮に流入流速が高まっても帯水地層内での地下水の流れは全く起きず、集水孔に土砂の流入が生じないし、井戸周辺の帯水層の圧密を生じることがなく、井戸寿命を著しく長くすることができる。
【0018】
井戸穴内に集水ユニットを建て込んだのち集水ユニットと井戸穴の内壁面との間に砂利を投入して充填するとき、砂利は防御板の周面に当ってその下端から周囲に分散して充填されるので、砂利が集水盤に当ることがなく、集水盤を損傷させることがない。
【0019】
また防御板はその外周面が円錐状をなしているので、投入される砂利を四周に万遍なく分散して充填することができ、これにより砂利の偏りが生じず、均等に充填することができる。
【0020】
前記集水盤の断面形状を、中央部では厚く、周辺に至るにつれて薄くなるように形成すれば、中央部の汲上げ管への固着強度を高めることができるとともに、集水盤の断面積が中央方向に漸増するので、周辺部から流入した地下水の流速が中央方向へ向け次第に遅くなり、これにより土砂類の引き込みが防がれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明による井戸装置の一実施形態の全体の略示断面図を示しており、帯水地層の地表からオーガー等により掘削された井戸穴1内に集水ユニット2が建て込まれて本発明の井戸装置が構成される。
【0022】
本発明における集水ユニット2は、図2にその主要部の設置状態の断面図を、図3に一部を断面とした斜視図を示しているように、内部空間に連通する集水孔3、3・・・が上下面に穿設され中心部位が厚く、周辺に至るにつれて次第に薄くなる断面形状、すなわち外形が偏平算盤玉形状の複数個の中空円盤状集水盤4、4・・・と、これら集水盤4、4・・・の中央部が挿通されて積層状に集積され通孔5、5・・・を通じて集水盤4の内部と連通する集水汲上げ管6と、最上位の集水盤4の上部にあって前記集水汲上げ管6に固着された円錐形状の防御板7と、この防御板7の下端外周から最下位の集水盤4の外周にかけてこれらを覆うように張装された網体8とで構成されている。
【0023】
前記集水盤4の上面および下面に穿設される集水孔3、3・・・は、半径方向に延びる複数のスリットで構成されている。またこの集水孔3、3・・・は、前記集水汲上げ管6に近い部位では粗に、離間するにつれて密に穿設されている。
【0024】
なおこの集水孔3、3・・・はスリットによるものに限らず、円形の小孔等であってもよい。
【0025】
図において符号9は、集水盤4の上面板と下面板との間に介装された補強用リブ、10は上下の集水盤4、4間に介装された補強用ピンであり、これは必要に応じて取り付けられる。
【0026】
前記防御板7は、その外周面が中心軸に対し40°〜50°の範囲の裾広がりの傾斜面とされており、好ましくは45°の傾斜面とされる。図中符号11は集水汲上げ管6に固着されて防御板7の内面から支える補強柱である。
【0027】
前記集水汲上げ管6の下端外周には、該汲上げ管6を安定設置するための設置調整板12、12が半径方向に突設されている。
【0028】
前記防御板7の下端から最下位の集水盤4の外周にかけて網体8が張装され、この網体8により防御板7と最上位の集水盤4との間から各集水盤4、4・・・の間にわたって覆われている。この網体8のメッシュは、裏込め材として使用される砂利の粒径より小さい寸法のものが選択される。
【0029】
したがって上記集水ユニット2を井戸穴1内に挿入して井戸穴1の中心位置に調整し、位置決めしたのち井戸穴1の上部から砂利13を投入すると、その砂利13は防御板7の外周面に当ってその周辺に分散して落下する。
【0030】
防御板7の外周面を滑り落ちた砂利13は、網体8と井戸穴1の内壁面1aとの間を通って最下位の集水盤4の下に進入し、この空間域に充満したのち前記の網体8と井戸穴1の内壁面1aとの間に充満し、さらに防御板7の外周面上からそれより上方の井戸穴1内に充満する。
【0031】
これにより井戸穴1の内壁面1aの全域が砂利13の堆積によって補強されるが、集水ユニット2の集水盤4、4間に入ろうとする砂利13は網体8の存在によって進入が阻止されるので、各集水盤4、4・・・の上下間には空間が確保された状態におかれる。
【0032】
したがって井戸穴1の内壁面1aから浸出し、砂利13間の間隙を通過して流入する地下水は網体8の網目を透過して集水盤4、4・・・間に図2に矢印Aで示すように流れ込み、集水盤4、4・・・の集水孔3、3・・・を通じて集水盤4、4内に入り、通孔5、5・・・を通じて集水汲上げ管6内に流入する。
【0033】
集水汲上げ管6に入った地下水は、図示しない揚水ポンプにより揚水されて所定の場所へ送水される。
【0034】
上記において、最上位の集水盤4の上面域、集水盤4、4・・・間のいずれにも砂利13が全く存在しないので、これら集水盤4、4・・・の集水孔3、3・・・の開口率は100%に維持され、集水能力の高い井戸となる。
【0035】
そして集水盤4の断面形状を、中央部では厚く、周辺に至るにつれて薄くなる形状とすることにより、周辺部から流入する地下水の流速が中央方向へ向け次第に遅くなり、これにより土砂類の引き込みが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による井戸装置の一実施形態を示す断面図。
【図2】同、下方部の拡大図。
【図3】図1における集水ユニットの下方部の一部を断面とした斜視図。
【図4】本発明における集水盤の上面図。
【図5】同、下面図。
【図6】同、拡大断面図。
【符号の説明】
【0037】
1 井戸穴
2 集水ユニット
3 集水孔
4 集水盤
5 通孔
6 集水汲上げ管
7 防御板
8 網体
9 補強用リブ
10 補強用ピン
11 補強柱
12 位置調整板
13 砂利

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に連通する集水孔が上・下面に穿設された複数個の中空円盤集水盤と、この集水盤の中心を貫通して固着され該集水盤の内部と通孔を通じて連通する集水汲上げ管と、最上位の集水盤の上部にあって前記集水汲上げ管に固着された円錐状の防御板と、この防御板の下端外周から最下位の集水盤の外周にかけてこれらを覆うように張設された網体とからなる集水ユニットを具備し、この集水ユニットを帯水地層の地表から掘削された井戸穴内に挿入設置してこの集水ユニットと井戸穴の内壁との間に砂利等の裏込め材を充填するようにしたことを特徴とする井戸装置。
【請求項2】
前記集水盤は、中心部位が厚く、周辺に至るにつれて次第に薄くなる断面形状に形成されている請求項1記載の井戸装置。
【請求項3】
前記集水盤の集水孔は、半径方向に延びる多数のスリット群により構成されている請求項1または2記載の井戸装置。
【請求項4】
前記集水盤の集水孔は、多数の円形小孔群により構成されている請求項1または2記載の井戸装置。
【請求項5】
前記集水盤の集水孔は、前記集水汲上げ管に近い部位では粗に、集水汲上げ管から離間するにつれて密に穿設されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の井戸装置。
【請求項6】
前記防御板の外周面は、中心軸に対し40〜50°の傾斜面とされている請求項1〜5のいずれか1項記載の井戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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