説明

亜鉛めっき液および亜鉛めっき方法

【課題】既設のめっき対象に対しても容易に亜鉛めっきが施せ、また、隙間などにも亜鉛めっきが施せるようにする。
【解決手段】亜鉛めっき液102は、亜鉛イオンと、亜鉛イオンを還元する微生物とを含む水溶液から構成されている。亜鉛イオンを還元する微生物は、微生物が生命を維持するために行う代謝の過程で、亜鉛イオンを亜鉛に還元する微生物である。亜鉛めっき液102を鋼材111の所望とする箇所に付着させ、設定された時間の経過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき対象物に亜鉛めっきを形成するための亜鉛めっき液および亜鉛めっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、屋外で使用される鉄鋼には、腐食防止などのために亜鉛めっきを施すことが行われている。このような亜鉛めっきには、主に、溶融亜鉛めっき法および電気亜鉛めっき法がある。溶融亜鉛めっき法では、高温にして溶解した亜鉛融液(溶融亜鉛)にめっき対象とする鋼材を浸漬することで行われている(非特許文献1参照)。また、電気亜鉛めっき法では、亜鉛イオンを含む亜鉛めっき液に対象とする鋼材を浸漬し、この鋼材の電位を亜鉛の還元電位以下として鋼材表面に亜鉛を析出させることで行われている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−288276号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.aen-mekki.or.jp/mekki/mekki_01.html
【非特許文献2】http://www.wakodenka.co.jp/koutei_denki.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した亜鉛めっき方法では、建築物の一部に用いられている既設の鋼材などのめっき対象に対し、亜鉛めっきを施すことが容易ではないという問題がある。既設のめっき対象に対し、高温にした溶融亜鉛を用意すること、および電気めっきのために電位を印加することなどは、現実的ではない。また、上述しためっき方法では、隙間部分などにめっきを施すことが容易ではないという問題がある。まず、溶融亜鉛めっき法では、溶融亜鉛の鋼材に対する濡れ性のため、隙間に溶融亜鉛が入り込みにくく、隙間部分にめっきを施すことが容易ではない。また、電気亜鉛めっき法では、よく知られているように、電気化学的な電位分布により影響を受けて、隙間部分にめっきを施すことが容易ではない。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、既設のめっき対象に対しても容易に亜鉛めっきが施せ、また、隙間などにも亜鉛めっきが施せるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る亜鉛めっき液は、亜鉛イオンと、亜鉛イオンを還元する微生物とを含む水溶液から構成されている。
【0008】
また、本発明に係る亜鉛めっき方法は、亜鉛イオンおよび亜鉛イオンを還元する微生物を含む水溶液から構成された亜鉛めっき液を、めっき対象の表面に接触させる工程と、亜鉛めっき液を接触させためっき対象の表面に亜鉛のめっき膜を形成する工程とを少なくとも備える。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、亜鉛めっき液を、亜鉛イオンと、亜鉛イオンを還元する微生物とを含む水溶液から構成したので、既設のめっき対象に対しても容易に亜鉛めっきが施せ、また、隙間などにも亜鉛めっきが施せるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明の実施の形態における亜鉛めっき方法を説明するための説明図である。
【図1B】本発明の実施の形態における亜鉛めっき方法を説明するための説明図である。
【図1C】本発明の実施の形態における亜鉛めっき方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。以下、亜鉛めっき方法の説明とともに亜鉛めっき液について説明する。
【0012】
まず、図1Aに示すように、容器101の中に亜鉛めっき液102を用意する。亜鉛めっき液102は、亜鉛イオン103と、亜鉛イオン103を還元する微生物104とを含む水溶液から構成されている。亜鉛イオンを還元する微生物104は、生命を維持するために行う代謝の過程で、亜鉛イオンを亜鉛に還元する微生物であり、例えば、アルコールデハイドロゲナーゼ活性化酵素を有する酵母菌などが挙げられる(特許文献1参照)。
【0013】
次に、図1Bに示すように、例えば、鋼材(めっき対象)111の所望とする箇所に、用意した亜鉛めっき液102を付着(接触)させる。なお、鋼材111のめっき箇所に付着する油分などの汚れがある場合、洗浄などにより除去しておくとよい。この後、設定された時間の経過後、付着している亜鉛めっき液102を除去すれば、図1Cに示すように、鋼材111の所望とする箇所に、亜鉛のめっき膜112が形成できる。
【0014】
上述した本実施の形態によれば、亜鉛めっき液102を付着させれば、付着した箇所に亜鉛のめっき膜111が形成できるので、まず、既設のめっき対象に対しても容易に亜鉛めっきが施せるようになる。例えば、既設の建築物を構成している柱の鋼材に、亜鉛めっきを施すことができる。また、本実施の形態では、亜鉛めっき液102は水溶液であるので、隙間に対して亜鉛めっき液102を濡れさせることが容易であり、微生物104が入り込める隙間であれば、亜鉛のめっきが可能である。また、めっきにおいては電位を印加する必要がないので、隙間において電位の影響を受けることもない。この結果、本実施の形態によれは、隙間などにも亜鉛めっきが施せるようになる。
【0015】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、上述ではめっき対象を鋼材としたが、これに限るものではなく、亜鉛より卑である金属であれば、亜鉛のめっきが可能である。また、上述では、めっき対象に亜鉛めっき液を付着させるようにしたが、これに限るものではなく、亜鉛めっき液にめっき対象を浸漬してもよい。
【符号の説明】
【0016】
101…容器、102…亜鉛めっき液、103…亜鉛イオン、104…微生物、111…鋼材(めっき対象)、112…めっき膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛イオンと、
亜鉛イオンを還元する微生物と
を含む水溶液から構成されたことを特徴とする亜鉛めっき液。
【請求項2】
亜鉛イオンおよび亜鉛イオンを還元する微生物を含む水溶液から構成された亜鉛めっき液を、めっき対象の表面に接触させる工程と、
前記亜鉛めっき液を接触させた前記めっき対象の表面に亜鉛のめっき膜を形成する工程と
を少なくとも備えることを特徴とする亜鉛めっき方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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