説明

亜鉛含有表面用の化成層

本発明は、処理されるべき表面を、少なくとも1種のクロム(III)イオン源の他に、弱酸性若しくは酸性の溶液中で亜鉛に対して酸化剤として作用する少なくとも1種の有機化合物を含有する水性処理液と接触させる、腐食保護被覆層を製造する方法に関する。この場合、この表面の装飾的特性及び機能的特性が保たれるか又は改善される。更に、クロム(VI)含有化合物の使用の際の公知の問題は回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の、特に化成層を備えている金属材料の腐食防止に関する。
【0002】
発明の背景
金属材料表面を腐食性の環境の影響から保護するために、先行技術において多様な方法が用いられている。保護されるべき金属ワークピースを他の金属からなるコーティングで被覆することは、この場合、この技術分野において広く普及されかつ確立された方法である。この被覆金属は、腐食性媒体中で、この場合、材料基本金属単独よりも電気化学的により貴であるか又は卑であることができる。この被覆金属がより卑に挙動する場合、この被覆金属は、腐食媒体中でカソード腐食保護の意味でベース金属に対して犠牲アノードとして機能する。被覆金属の腐食生成物の形成と関連するこの保護機能は、従って、確かに望ましいが、この被覆の腐食生成物はしばしばそれ自体望ましくない装飾的障害を引き起こし、かつワークピースの機能的障害を引き起こすこともまれではない。被覆金属の腐食を低減させ、できる限り長く阻止するために、特にカソード保護する卑な被覆金属、例えば亜鉛並びにその合金の上にいわゆる化成層がしばしば使用される。これは水性媒体中で広いpH領域で不溶性の、卑な被覆金属と反応溶液との反応生成物である。このいわゆる化成層の例は、例えばいわゆるリン酸塩化成処理被膜及びクロメート化成処理被膜である。リン酸塩被膜化成処理の場合、保護すべき層はリン酸イオンを含む酸性溶液中に浸漬される。この酸性媒体は、この被覆からの亜鉛の部分的溶解を引き起こす。原理的に、遊離したZn2+カチオンが、反応溶液のリン酸イオンと共に、表面上で難溶性のリン酸亜鉛層を形成する。リン酸亜鉛層自体は比較的悪い腐食保護を形成するだけであるが、その上に設けられる塗料及びペイントのために優れた付着下地であるため、この適用の重点は、塗装及び塗膜用の下地としての機能にある。
【0003】
クロメート皮膜化成処理の場合には、処理すべき表面を、クロム(VI)イオンを含有する酸性の溶液中に浸漬する。例えば亜鉛表面が問題となる場合、亜鉛の一部が溶解する。この場合に生じている還元性の条件下で、クロム(VI)はクロム(III)に還元され、これは水素発生により、よりアルカリ性の表面被膜が、特に水酸化クロム(III)として、又は難溶性μ−オキソ−又はμ−ヒドロキソ−架橋クロム(III)錯体として析出される。並行して、難溶性のクロム酸亜鉛(VI)が形成される。全体として、緻密に閉鎖された、電解質による腐食攻撃に対して極めて良好に保護された化成皮膜が亜鉛表面に生じる。
【0004】
クロム(VI)化合物は、その急性の毒性の他に、その高い発ガン性を特徴とし、この化合物を伴う方法の代替が必要である。六価クロム化合物を用いるクロメート皮膜化成処理方法の代替として、その間に、三価クロム化合物の多様な錯体を使用する多数の方法が確立された。この析出の進行において重要な工程は、溶液に対する亜鉛表面又は亜鉛含有表面の界面でpH値が、化成層の析出が行われる程度に上昇する反応である。
【0005】
クロム(III)は上記の意味範囲で亜鉛に対する酸化剤として適していない。クロム(II)への還元は、酸化還元電位に基づいて可能であるが、この界面でのpH値の上昇を引き起こさない。従って、クロム(III)イオンの酸性水溶液から化成層を形成させるために、更に、亜鉛−又は亜鉛合金−溶液の界面で亜鉛イオンの濃度を高め、同様にpH値を高めて、溶液内部でのpH値で可溶性の化成層の成分を金属表面上で難溶性の加水分解物に移行させる適切な酸化剤を添加する必要がある。
【0006】
クロム(VI)フリーの処理溶液を実現するために、ペルオキシド、例えば過酸化水素又はペルオキソ二硫酸塩が酸化剤として提案されている(US 4,384,902, US 4,349,392)。過酸化水素は、酸性pH値の場合に、クロム(III)をクロム(VI)に酸化させるほど十分に強い酸化剤ではない。
【0007】
広範囲な使用のために、亜鉛を酸化し、pH値の上昇に貢献しかつかつ処理溶液の条件下でクロム(III)を酸化しない酸化剤として硝酸塩が見出された(EP 0 907 762 B1, EP 1 318 214 A1, WO 2004/072325 A1)。
【0008】
硝酸塩は、処理溶液の通常の反応条件下でまず亜硝酸塩に還元され、
【化1】

又は、こうして生成された亜硝酸塩はより活性な酸化剤として更に
【化2】

に従って一酸化窒素になる。
【化3】

【0009】
更に、亜硝酸塩は、pH値が通常ではpH1〜pH3.5の間にあるこの処理溶液の酸性の環境中で安定ではなく、硝酸塩と一酸化窒素とに不均化する傾向がある:
【化4】

【0010】
亜硝酸塩の還元も、酸性溶液中での亜硝酸塩の不均化も、従って、一酸化窒素の放出を引き起こす。窒素酸化物は毒性ガスであり、溶液表面の上方で絶対に吸い取らなければならない。
【0011】
特許公報EP 1 816 234 A1は水性反応溶液及び亜鉛及び亜鉛合金を不動態化する方法を記載している。この反応溶液は、ニコチン酸、その塩又はその誘導体を含有する。この種の反応溶液から、亜鉛及び亜鉛合金上に有色の不動態化層が作成される。
【0012】
ニコチン酸は、酸化剤としてクロム(III)含有処理溶液中で亜鉛含有表面上に化成層を作成するために適していない。
【0013】
特許公報EP 1 970 470 Aは、亜鉛含有表面のためのクロム(VI)フリーの黒色不動態化を記載していて、これは錯形成剤としてピリジンのカルボン酸誘導体を含有することができる。ピリジンのこの種のカルボン酸誘導体は、このような溶液中で酸化剤として作用することはできない。
【0014】
特許公報EP 1 005 578 B1及びGB 715,607は、リン酸塩化成層の製造方法を記載している。促進剤として、ここでは有機ニトロ化合物及び有機N−オキシドが使用される。ここに記載されたリン酸塩化成層は多孔性であり、従って腐食保護を提供しない。
【0015】
本発明の記載
本発明の課題は、亜鉛の酸化、オキソニウムイオン消費及びクロム(III)に対する反応性に関して上述の基準を満たすが、毒性ガスの形成を引き起こさない酸化剤を提供することである。この基準は、脂肪族ニトロ化合物、芳香族ニトロ化合物、N−オキシド及びキノンから選択される本発明による有機酸化剤により満たされる。硝酸塩を、水溶性の有機酸化剤に置き換えることにより、ガス状の毒性の反応生成物は生じない。
【0016】
低い濃度で、硝酸イオンは、この不利な特性は問題とならずに、この溶液中に存在することができる。しかしながらこの溶液は硝酸塩を含有しないのが好ましい。
【0017】
前記課題は、主にクロム(VI)フリーの黒色化成層を、亜鉛層又は亜鉛合金層上に製造するための、特に次の成分を含有する水性処理溶液により解決される:
− 少なくとも1種のCr3+イオン源と、
− 次の化合物を有するグループから選択される少なくとも1種の有機化合物:
【化5】

式中、R1〜R5は、相互に無関係に、
a) 水素原子又は1〜10個の炭素原子を有する線状鎖又は分枝鎖のアルキル基、又は
b) −NR2、−NO2、−COOR、−OR、−SO3R基、その際、R=−H又は1〜5個の炭素原子を有する線状鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を表し、その際、メチル、エチル、n−プロピル及びイソプロピルが特に好ましい、
但し、0〜2個の基R1〜R5は、グループb)から選択される。
【0018】
有利な有機化合物は、一般式I.、III.、IV.及びV.による化合物からなるグループから選択され、その際、R1〜R5は、相互に無関係に、
a) 水素原子又は1〜10個の炭素原子を有する線状鎖又は分枝鎖のアルキル基、又は
b) −NR2、−NO2、−COOR、−OR、−SO3R基、その際、R=−H又は1〜5個の炭素原子を有する線状鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を表し、その際、メチル、エチル、n−プロピル及びイソプロピルが特に好ましい、
但し、0〜2個の基R1〜R5は、グループb)から選択される。
【0019】
特に有利な有機化合物は、式I.の化合物からなるグループから選択され、その際、R1〜R5は、相互に無関係に、
a) 水素原子又は1〜10個の炭素原子を有する線状鎖又は分枝鎖のアルキル基、又は
b) −NR2、−NO2、−COOR、−OR、−SO3R基、その際、R=−H又は1〜5個の炭素原子を有する線状鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を表し、その際、メチル、エチル、n−プロピル及びイソプロピルが特に好ましい、
但し、0〜2個の基R1〜R5は、グループb)から選択される。
【0020】
適切な種類の化合物の例は、例えば、ニトロ安息香酸、ニトロサリチル酸、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、ニトロプロピオン酸、ピリジン−N−オキシド、モルホリン−N−オキシド並びにベンゾキノンである。本発明の範囲内で適切な化合物は、従って、例えばm−ニトロ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロサリチル酸、2,4−ジニトロフェノール、m−ニトロ安息香酸、N−メチル−モルホリン−N−オキシド、ピリジン−N−オキシド並びにp−ベンゾキノンである。
【0021】
意外にも、更に、有機酸化剤、例えばキノン、N−オキシド並びに芳香族ニトロ化合物、例えばニトロ安息香酸、ニトロフェノール、特にニトロベンゼンスルホン酸、例えばm−ニトロベンゼンスルホン酸の使用の際に、この作成された化成層の腐食保護は、相応する硝酸塩含有不動態化により達成することができる腐食保護を明らかに上回ることが判明した。これは、鉄、コバルト若しくはニッケルの金属粒子又は上述の金属の化合物の黒色若しくは黒色化金属化合物の粒子の組込により、黒色又は暗色の顔料添加されている化成層に通用する。
【0022】
ほぼ間違いなく、このことは、亜鉛の酸化及びそれによる化成層成長の他の反応速度論の他に、この不動態化層中に一緒に析出若しくは吸着された、それ自体良好な還元剤であるこの有機酸化剤の還元生成物の防食性の特性に起因する。可能な還元反応の例は、反応式1に示されている。
【0023】
反応式1. 酸性の環境中での適切な有機酸化剤の還元反応の例
【化6】

【0024】
本発明による成分の他の利点は、この成分が遊離硝酸塩を有しておらず、従って、化成層を作製するために、アミノ基を有する着色剤を含有する溶液中で使用できることにある。先行技術で公知の、化成層を製造するための硝酸イオンの使用の欠点は、硝酸塩を亜硝酸塩に還元することにある。この亜硝酸塩は、化成層を作成するための強酸性の溶液中でアミノ含有着色剤とジアゾ化反応を生じることができ、このジアゾ化反応は明確でない着色剤生成物に反応し、この生成物はもはや化成層の所望の表面色を生じさせない。式I.〜III.による有機結合NO基はこのような反応をしない。
【0025】
本発明による水性処理溶液は、クロム(III)0.2g/l〜20g/l、有利にクロム(III)イオン0.5g/l〜15g/l、特に有利にクロム(III)イオン1g/l〜5g/lを含有する。この溶液にCr(VI)塩は添加されない。アニオンとして、例えばメタンスルホン酸アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、ホウ酸アニオン、並びに酸性ホウ酸エステルのアニオン、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン、リン酸二水素アニオン、硝酸アニオン、亜硝酸アニオン、塩化物アニオン、ヨウ化物アニオン、フッ化物アニオン、ヘキサフルオロケイ酸アニオン、ヘキサフルオロチタン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン、リン酸二水素アニオン又はリン酸のエステルの相応するアニオンを含むことができる。クロム(III)は、溶液に、クロム(III)塩、例えば塩基性の硫酸クロム(III)、水酸化クロム(III)、リン酸二水素クロム(III)、塩化クロム(III)、硫酸カリウムクロム(III)又は有機酸のクロム(III)塩、例えばメタンスルホン酸クロム(III)、クエン酸クロム(III)の形で添加することができる。
【0026】
その他に、錯生成剤、例えばポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、アミノカルボン酸又はヒドロキシホスホン酸を使用することができる。可能なカルボン酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、エチレンジニトロ四酢酸、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、マレイン酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレンジアミン五酢酸、ニトロ三酢酸、乳酸、アジピン酸、4−アミノ馬尿酸、4−アミノ安息香酸、5−アミノイソフタル酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、アラニン、ベータ−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アラニン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−グリシン、L−システイン、L−シスチン、グルタチオン、グリシン、グリシルグリシン、L−ヒスチジン、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リシン、L−メチオニン、L−オルニチン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、L−トリプトファン、L−トレオニン、L−バリン、N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]−グリシン、L−シトルリン、N−アセチル−L−システイン、N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸、1,2−シクロヘキセイレン−ジニトロ四酢酸、D(+)−ビオチン、L−ノルロイシン、5−アミノレブリン酸、DL−メチオニン、3−アミノ安息香酸、6−アミノヘキサン酸、アセチレンジカルボン酸、ピリジン−2,3−ジカルボン酸、(−)−キナ酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2−カルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、ピラジン−2−カルボン酸、ピリジン−4−カルボン酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、セバシン酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、フラン−2−カルボン酸、メチレンコハク酸、DL−マンデル酸、DL−アルファ−アミノフェニル酢酸、DL−トロパ酸、2,2′−チオ二酢酸、3,3′−チオジプロピオン酸、3−(2−フリル)−アクリル酸、ピペリジン−4−カルボン酸、4−グアニジノ安息香酸、L−ホモセリン、トランス−プロペン−1,2,3−トリカルボン酸、(R)−(−)−シトラマル酸、(3−ヒドロキシフェニル)−酢酸、4−ヒドロキシキノリン−2−カルボン酸、N−アセチル−L−グルタミン酸、N−アセチル−DL−バリン、4−アミノ馬尿酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、4−(ジメチルアミノ)−安息香酸、グルクロン酸、シトラジン酸、インドール−3−カルボン酸、インドール−5−カルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、DL−ロイシン、2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−プロピオン酸、シンリン(Chinlin)−2,4−ジカルボン酸、2−アミノピリジン−3−カルボン酸、5−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、3,5−ジアミノ安息香酸、4,8−ジヒドロキシキノリン−2−カルボン酸、3,3−ジメチルグルタル酸、トランス,トランス−2,4−ヘキサジエン酸、3−ヒドロキシ酪酸、o−ヒドロキシ馬尿酸、(4−ヒドロキシフェニル)−酢酸、イミダゾール−4−アクリル酸、インドール−2−カルボン酸、インドール−3−プロピオン酸、メルカプトコハク酸、3−オキソグルタル酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、2−メチルアラニン、2−スルホ安息香酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、グルコン酸、4−アミノ安息香酸、(−)−シキミン酸、キナルジン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、ピラゾール−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸、1,2−ジアミノプロパン−テトラ酢酸、2−ピリジル酢酸,D−ノルバリン、2−メチルグルタル酸、2,3−ジブロモコハク酸、3−メチルグルタル酸、(2−ヒドロキシフェニル)酢酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、ジグリコール酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2,3−ジメチルアミノプロピオン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、フェニルコハク酸、N−フェニルグリシン、1−アミノシクロヘキサンカルボン酸、サルコシン、トロパ酸、アゼライン酸、焦性粘液酸、並びに粘液酸である。これらの酸の他に、全ての無水物、塩、ニトリル、特に酸性環境でこれらのカルボン酸のための供給源として機能することができる化合物を使用することもできる。キラル化合物の例は、記載された配置に限定されず;ジアステレオマー、エナンチオマー又は記載された化合物のラセミ体も使用することができる。
【0027】
可能な錯生成剤のこの列挙は、適切な化合物のための単なる例を提供し、本発明により使用可能な物質のグループは、挙げられた物質に限定されない。処理溶液中での錯生成剤の濃度は、0.05g/l〜この錯生成剤の溶解限度であることができる。
【0028】
この処理溶液は、更に、1つ又は複数の表面活性物質、例えばオキソアルコールエトキシラート(例えば、Lugalvan ON110, BASF)、脂肪アルコールエトキシラート(例えば、Ethylan CPG 660, Julius Hoesch GmbH)、又はフッ素化された基を有する界面活性剤(例えば、Novec FC-4432, 3M)及び0.01g/l〜10g/lの間の他の金属イオン又はメタロイドイオン、例えばSc、Y、Ti、Zr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、B、AI、Si、Pを含むことができる。
【0029】
実施例
一般的な試験手法
Cr3+ 3.0g/l(塩化クロム(III)六水和物から)、Co2+ 2g/l(硫酸コバルト七水和物から)並びにPO43+ 8g/l(オルトリン酸から)及びFe2+ 2.5g/l(硫酸鉄(III)七水和物から)並びに表1による本発明による化合物又は比較例の硝酸塩を含有する水性処理溶液を製造する。この処理溶液を、硝酸/水酸化ナトリウムで、1.6のpH値に調節する。アルカリ性亜鉛メッキ法(Protolux 3000, Atotech Deutschland GmbH)で、低合金鋼からなるプレートを亜鉛10μmで被覆する。このプレートを0.3質量%の硝酸中で10秒間活性化させ、脱イオン水で3回洗浄し、上記の処理溶液中に60秒間浸漬させる。この溶液は、この場合、撹拌される。このプレートを取り出した後に、これを脱イオン水で3回洗浄し、80℃で10分間空気循環炉中で乾燥させる。この黒色のプレートは、DIN EN ISO 9227による中性塩水噴霧試験で、6時間後に亜鉛腐食の最初の兆候を示す。同様に製造されたプレートは、有機シリケート封孔(例えば、Corrosil Plus 501 , Atotech Deutschland GmbH)により処理し、空気循環炉中で80℃で10分間乾燥させる。このプレートを、DIN EN ISO 9227による中性塩水噴霧試験で試験する。亜鉛腐食の最初の兆候が確認可能となるまでのhで示す時間を、表1中に記載する。
【0030】
表1:化成層を用いた試験
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛層又は亜鉛合金層上に主にクロム(VI)フリーの化成層を製造するための水性処理溶液であって、前記溶液は:
− 少なくとも1種のCr3+イオン源と、
− 次の:
【化1】

[式中、R1〜R5は、相互に無関係に、
a) 水素原子又は1〜10個の炭素原子を有する線状鎖又は分枝鎖のアルキル基、又は
b) −NR2、−NO2、−COOR、−OR、−SO3R基、その際、R=−H又は1〜5個の炭素原子を有する線状鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を表し、
但し、0〜2個の基R1〜R5は、グループb)から選択される]を有するグループから選択される少なくとも1種の有機化合物
を含有する、水性処理溶液。
【請求項2】
前記有機化合物は、
【化2】

[式中、R1〜R5は、相互に無関係に、
a) 水素原子又は1〜10個の炭素原子を有する線状鎖又は分枝鎖のアルキル基、又は
b) −NR2、−NO2、−COOR、−OR、−SO3R基、その際、R=−H又は1〜5個の炭素原子を有する線状鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を表し、
但し、0〜2個の基R1〜R5は、グループb)から選択される]を有するグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水性処理溶液。
【請求項3】
前記有機化合物は、
【化3】

[式中、R1〜R5は、相互に無関係に、
a) 水素原子又は1〜10個の炭素原子を有する線状鎖又は分枝鎖のアルキル基、又は
b) −NR2、−NO2、−COOR、−OR、−SO3R基、その際、R=−H又は1〜5個の炭素原子を有する線状鎖若しくは分枝鎖のアルキル基を表し、
但し、0〜2個の基R1〜R5は、グループb)から選択される]を有するグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水性処理溶液。
【請求項4】
前記有機化合物は、m−ニトロ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロサリチル酸、2,4−ジニトロフェノール、m−ニトロベンゼンスルホン酸、N−メチルモルホリン−N−オキシド、ピリジン−N−オキシド、及びp−ベンゾキノンを有するグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水性処理溶液。
【請求項5】
前記有機化合物I.〜V.の濃度は、この物質30mg/l〜30g/lであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性処理溶液。
【請求項6】
前記処理溶液はクロム(III)イオン0.2g/l〜20g/lを含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性処理溶液。
【請求項7】
前記処理溶液は、メタンスルホン酸アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、ホウ酸アニオン、酸性ホウ酸エステルアニオン、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン、リン酸二水素アニオン、塩化物アニオン、ヨウ化物アニオン、フッ化物アニオン、硝酸アニオン、ヘキサフルオロケイ酸アニオン、ヘキサフルオロチタン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン、リン酸二水素アニオン及びリン酸のエステルのアニオンを有するグループから選択される少なくとも1種のアニオンを含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性処理溶液。
【請求項8】
前記処理溶液は、更に、Sc、Y、Ti、Zr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、B、Al、Si、Pを有するグループから選択される少なくとも1種の金属又はメタロイドを、0.01〜10g/lの濃度で含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性処理溶液。
【請求項9】
前記処理溶液は、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシポリカルボン酸、アミノカルボン酸又はヒドロキシホスホン酸を有するグループから選択される少なくとも1種の錯生成剤0.05g/l〜20g/lを含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性処理溶液。
【請求項10】
前記処理溶液は、pH0.1〜pH7のpH値を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の水性処理溶液。
【請求項11】
処理されるべき表面を、請求項1から10までのいずれか1項に記載の処理溶液中に浸漬することを特徴とする、化成層を有する表面の処理方法。
【請求項12】
前記処理溶液中での処理時間は、0.5s〜180sであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理溶液は10℃〜90℃の温度を有することを特徴とする、請求項11及び12記載の方法。

【公表番号】特表2012−509994(P2012−509994A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537953(P2011−537953)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065646
【国際公開番号】WO2010/060883
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(300081877)アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (13)
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D−10553 Berlin, Germany
【Fターム(参考)】