説明

交差路構造及び跳ね橋

【課題】高架下を掘り下げて資材搬送用の通路を形成しながら、資材搬送用の通路と交差する一般道の通行を可能とする。
【解決手段】高架橋10の桁下に溝状通路5を高架橋10の長さ方向に延設することで、建設中の高架橋10の桁下に足場を組んだ場合でも、高架橋10の下の溝状通路5から足場までの高さを資材搬送用車両が通行するのに充分な高さとすることができる。また、溝状通路5の道路3との交差部に跳ね橋20を架設することで、道路3を人や一般車両が通過するときは跳ね橋20を下ろすことで跳ね橋20上を一般車両が通行可能とする一方、溝状通路5を資材搬送用車両が通過するときは跳ね橋20を上げて資材搬送用車両の通行の妨げとならないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架橋の下部に形成する作業用通路と、作業用通路と交差する一般道との交差路構造、及び作業用通路に架設される跳ね橋に関する。
【背景技術】
【0002】
踏み切りによる交通渋滞を緩和させるべく、鉄道を高架化し、踏切を立体交差化することが各地で計画され、立体交差化するための技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−55912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、工事占有帯を小さくするために、建築中の高架の下に、資材搬送用の通路を形成することが行われる。
しかし、建設中の高架橋の桁下には足場が組まれることが多く、足場の下に充分な高さをとることができない。このため、コンクリートポンプ車等の資材搬送用車両が通行するのに必要な高さが得られないという問題がある。
【0004】
一方、例えば図8に示すように、高架橋10の橋桁12の下に足場を設けた場合には、資材搬送用車両が通行するのに充分な高さを足場の下にとるために高架下橋脚11,11間のバラストを溝状に掘り下げて資材搬送用の通路5を形成することも考えられる。しかし、線路と交差する一般道路面は線路の高さに形成されているため、道路面と溝状の通路との間に段差が形成され、人や一般車両の通行を妨げることになる。
【0005】
本発明の課題は、高架下を掘り下げて資材搬送用の通路を形成しながら、資材搬送用の通路と交差する一般道の通行を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、建設中の高架橋とその下を通過する道路との交差部において、高架橋の桁下に溝状通路を高架橋の長さ方向に延設するとともに、溝状通路の道路との交差部に、跳ね橋を架設したことを特徴とする交差路構造である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、線路に沿って建設中の高架橋とその下を通過し線路と交差する道路との交差部において、高架橋下に溝状通路を高架橋の長さ方向に延設するとともに、溝状通路の道路との交差部に、跳ね橋を架設したことを特徴とする交差路構造である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、溝状通路の底部に配置される底部フレームと、底部フレームにより接続され、溝状通路の両側壁に沿って設けられる壁フレームと、各壁フレームの上端部に揺動可能に設けられる揺動桁と、各揺動桁を各壁フレームに対して揺動させる揺動機構と、を備え、前記揺動機構は、各揺動桁の先端が一致する状態と、各揺動桁の先端が溝状通路の幅まで離れた状態との間で揺動桁を揺動させることを特徴とする跳ね橋である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高架橋の桁下に溝状通路を高架橋の長さ方向に延設することで、建設中の高架橋の桁下に足場を組んだ場合でも、高架橋下の溝状通路から足場までの高さを資材搬送用車両が通行するのに充分な高さとすることができる。また、溝状通路の道路との交差部に跳ね橋を架設することで、道路を人や一般車両が通過するときは跳ね橋を下ろすことで跳ね橋上を一般車両が通行可能とする一方、溝状通路を資材搬送用車両が通過するときは跳ね橋を上げて資材搬送用車両の通行の妨げとならないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
〔1〕交差路構造
図1は本発明が適用される鉄道高架橋10と一般道路3との交差部を示す立面図である。なお、図1の左右方向に一般道路3が設けられ、図1の紙面と垂直な方向に3線の線路2が敷設されており、線路2と平行に建設中の鉄道高架橋10が設けられている。
線路2が一般道路3を分断する両側部には、遮断機4が設けられている。
【0012】
鉄道高架橋10は、幅方向(図1の左右方向)に離間して設けられた一対の橋脚11が長さ方向(図1の紙面と垂直な方向)に間隔を空けて設けられており、その径間に橋桁12が架設されている。なお、図1では、建設中の高架橋10の桁下に組まれる足場13を省略している。
【0013】
各対の橋脚11の間には、地盤面1を掘り下げて高架橋10の長さ方向に溝状道路5が形成される。なお、溝状道路5の左右側部には図示しない土止め壁が設けられる。そして、溝状道路5の底部には、溝状道路5を平坦にする舗装6が敷設される。この溝状道路5は、鉄道高架橋10を建設するための資材搬送用車両等の大型工事車両が通行するための作業用道路として用いられる。
溝状道路5には、一般道路3との交差部において、跳ね橋20が設けられる。以下、跳ね橋20について詳細に説明する。
【0014】
〔2〕跳ね橋20の構成
図2は跳ね橋20が閉じた状態を溝状道路5の長さ方向から見た立面図であり、図3は跳ね橋20が閉じた状態の平面図、図4は跳ね橋20が閉じた状態を一般道路3の長さ方向から見た側面図である。また、図5は跳ね橋20が開いた状態を溝状道路5の長さ方向から見た立面図である。
跳ね橋20は、底部フレーム21と、壁フレーム22と、揺動桁23と、油圧シリンダ31と、第一リンク32と、第二リンク33とからなる。
【0015】
底部フレーム21は溝状道路5の底部に沿って設けられ、左右の壁フレーム22を接続する。底部フレーム21は溝状道路5の底部に配置され、底部フレーム21の上部には、溝状道路5を平坦にする舗装6が敷設される。
【0016】
壁フレーム22の下端部は底部フレーム21の両端部に直角に設けられている。壁フレーム22の下端部には、軸41が設けられている。軸41には油圧シリンダ31が揺動可能に取り付けられる。
壁フレーム22の上端部には軸42が設けられており、軸42には揺動桁23が揺動可能に取り付けられる。また、壁フレーム22の高さ方向の中間部には、軸43が設けられている。軸43には壁フレーム22に対して第一リンク32が揺動可能に取り付けられる。
壁フレーム22は左右の土止め壁に沿って配置される。
【0017】
揺動桁23は、土止め壁側の端部が軸42に取り付けられ、壁フレーム22に対して揺動可能とされている。また、揺動桁23の軸42から離間した位置には、軸44が設けられている。軸44には第二リンク33が揺動可能に取り付けられる。跳ね橋20が閉じた状態(図2)では、揺動桁23の上面の高さは一般道路3の路面の高さにほぼ等しく、溝状道路5により分断された一般道路3が跳ね橋20により接続される。
また、揺動桁23の両側辺には、跳ね橋20の上を通行する人や車両が溝状道路5に落下すること防止する手摺24が設けられている。
【0018】
また、跳ね橋20の近傍には、油圧シリンダ31を伸縮動作させるための油圧ユニット34と、油圧ユニット34を制御する制御盤35と、制御盤35を操作する操作盤36とが設けられている。
【0019】
〔3〕リンク機構の構成
ここで、油圧シリンダ31、第一リンク32、第二リンク33によるリンク機構の構成について説明する。図6はリンク機構を溝状道路5の長さ方向から見た立面図であり、図6(a)は油圧シリンダ31が収縮した状態、図6(b)は油圧シリンダ31が伸張した状態である。また、図7は油圧シリンダ31が収縮した状態のリンク機構を一般道路3の長さ方向から見た側面図である。
【0020】
図6,図7に示すように、油圧シリンダ31の一端は軸41に対して揺動可能に取り付けられ、他端は軸45に対して揺動可能に取り付けられる。
また、第二リンク33の一端は軸44に揺動可能に取り付けられ、他端は軸46に揺動可能に取り付けられる。
【0021】
第一リンク32は同形の三角形状の2枚の板状部材を備え、板状部材の3つの角部にはそれぞれ軸43、軸45、軸46が配置される。第一リンク32は、軸43により壁フレーム22に対して揺動可能とされ、軸45により油圧シリンダ31に対して揺動可能とされ、軸46により第二リンク33に対して揺動可能とされる。
【0022】
〔4〕リンク機構の動作
油圧シリンダ31が収縮した状態では、図6(a)に示すように、軸43と軸44の高さがほぼ同じであり、跳ね橋20が閉じた状態である。
油圧シリンダ31を伸長させると、軸45が軸43に対して回転するとともに、第一リンク32が軸43に対して揺動することにより軸46が軸43に対して回転する。なお、軸45と軸43の距離よりも、軸46と軸43の距離のほうが大きいため、軸46の変位量は、第一リンク32により、油圧シリンダ31による軸45の変位量に対して増幅される。
【0023】
そして、第二リンク33により軸46と接続された軸44が連動して軸42に対して回転することで図6(b)に示すように揺動桁23が揺動し、図5に示すように、揺動桁23がほぼ垂直な状態となった状態、すなわち跳ね橋20が開いた状態となる。
【0024】
油圧シリンダ31を収縮させるときは、軸45、軸46、軸44が逆方向に回転することで揺動桁23が逆方向に揺動し、図2に示すように、各揺動桁23が連続した状態、すなわち跳ね橋20が閉じた状態となる。
【0025】
〔5〕跳ね橋20の動作
次に、跳ね橋20の動作について説明する。
溝状道路5を大型工事車両が通行しないときは、図2に示すように、跳ね橋20が閉じた状態であり、大型工事車両よりも低い一般車両や人が通行可能とされている。
【0026】
溝状道路5の跳ね橋20の部分を大型車両が通行するときは、作業者が操作盤36により制御盤35を制御し、制御盤35により油圧ユニット34を制御して油圧シリンダ31を伸張させる。油圧シリンダ31を伸長させると、リンク機構の動作により揺動桁23が回転し、跳ね橋20が開いた状態になる。この状態では、揺動桁23が溝状通路5を通行する大型車両の邪魔にならない。また、ほぼ垂直になった揺動桁23が一般道路3を塞ぐため、一般車両や人が溝状通路に落下することを防ぐことができる。
【0027】
跳ね橋20の部分を大型車両が通行した後は、作業者が操作盤36により制御盤35を制御し、制御盤35により油圧ユニット34を制御して油圧シリンダ31を収縮させる。油圧シリンダ31を収縮させると、リンク機構の動作により揺動桁23が回転し、跳ね橋20が閉じた状態になる。
【0028】
このように、本実施の形態によれば、建設中の高架橋10の桁下に設ける作業用道路を一般道路3よりも掘り下げた溝状道路5とすることで、大型工事車両が通行するのに充分な高さを確保することができる。また、溝状道路5の一般道路3との交差部に跳ね橋20を架設することで、溝状道路5を工事用車両が通過しないときは跳ね橋20を閉じた状態にすることで一般道路3を一般車両が通行することを妨げず、溝状道路5を工事用車両が通過するときのみ跳ね橋20を開いて工事用車両を通行させることができる。
【0029】
なお、以上の実施形態においては、鉄道高架橋10において説明したが、本発明はこれに限らず、道路等の高架橋10において実施してもよい。
また、本実施の形態では、桁下に足場を設ける場合について説明したが、本発明はこれに限らず、もともとの桁下高さが低く、工事用車両が通過するのに充分な高さが得られない場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明が適用される鉄道高架橋10と一般道路3との交差部を示す立面図である。
【図2】図1の跳ね橋20が閉じた状態を溝状道路5の長さ方向から見た立面図である。
【図3】跳ね橋20が閉じた状態の平面図である。
【図4】跳ね橋20が閉じた状態を一般道路3の長さ方向から見た側面図である。
【図5】跳ね橋20が開いた状態を溝状道路5の長さ方向から見た立面図である。
【図6】跳ね橋20のリンク機構を溝状道路5の長さ方向から見た立面図であり、(a)は油圧シリンダ31が収縮した状態、(b)は油圧シリンダ31が伸張した状態である。
【図7】油圧シリンダ31が収縮した状態のリンク機構を一般道路3の長さ方向から見た側面図である。
【図8】高架下を溝状に掘り下げて溝状道路5を形成した状態を示す立面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 地盤面
2 線路
3 一般道路
4 遮断機
5 溝状通路
6 舗装
10 高架橋
11 橋脚
12 橋桁
13 足場
20 跳ね橋
21 底部フレーム
22 壁フレーム
23 揺動桁
24 手摺
31 油圧シリンダ
32 第一リンク
33 第二リンク
34 油圧ユニット
35 制御盤
36 操作盤
41、42,43,44,45,46 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設中の高架橋とその下を通過する道路との交差部において、
高架橋の桁下に溝状通路を高架橋の長さ方向に延設するとともに、
溝状通路の道路との交差部に、跳ね橋を架設したことを特徴とする交差路構造。
【請求項2】
線路に沿って建設中の高架橋とその下を通過し線路と交差する道路との交差部において、
高架橋下に溝状通路を高架橋の長さ方向に延設するとともに、
溝状通路の道路との交差部に、跳ね橋を架設したことを特徴とする交差路構造。
【請求項3】
溝状通路の底部に配置される底部フレームと、
底部フレームにより接続され、溝状通路の両側壁に沿って設けられる壁フレームと、
各壁フレームの上端部に揺動可能に設けられる揺動桁と、
各揺動桁を各壁フレームに対して揺動させる揺動機構と、を備え、
前記揺動機構は、各揺動桁の先端が一致する状態と、各揺動桁の先端が溝状通路の幅まで離れた状態との間で揺動桁を揺動させることを特徴とする跳ね橋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−255066(P2007−255066A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81086(P2006−81086)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】