説明

交換機及び交換機システム

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数の構内交換機(PBX)を専用回線で接続して構成される構内交換網に関し、特に、呼接続処理後に着信端末から回線の保留要求があった場合に発信端末に対して送出する保留音を切替制御する方式に関する。
【0002】着信に対して応答した後に通話相手の交替や他の内線への転送等のため、通話路(回線)を保留することがある。この場合には、発信者に保留中であることを認識させるために、着信端末を収容している交換機において発信端末に対して保留音を送出するのが一般的である。
【0003】そして、近時においては、サービスの多様化等に伴い、この保留音を単なる信号音のみならず、メロディーやメッセージとし、保留中の発信者の待ち時間を有効に利用するサービスが行われており、さらに、自交換網内の内線からの呼と公衆網(外線)からの呼に対して送出する保留音の種類を異ならせて、発信者の種類(例えば、社員、顧客等)にそれぞれ適合した保留音とするサービスも行われるようになってきている。
【0004】
【従来の技術】上述したようなサービスを具現化するために、従来は以下のような方式を採用していた。
【0005】即ち、交換機に内線又は外線からの着信があったときに、当該着信回線の物理的な収容位置に基づき、該着信が内線からのものか、又は外線からのものかを検出しておき、呼接続後に着信端末から保留要求があったときに、該検出した回線種別に基づき、それぞれに対応した種類の保留音を、発信電話端末に対して送出するものである。
【0006】ところで、近時においては、構内交換網も大規模化の傾向にあり、また、公衆回線との相互接続に関する法的な制約も緩和される傾向にある。これに伴い、複数の構内交換機を専用回線で接続して構成される構内交換網において、公衆回線から一の構内交換機に着信した呼を、専用回線を介して他の構内交換機に自動転送する等のサービスが一般に行われるようになっている。
【0007】この場合に、内線又は外線から呼が最初に着信した構内交換機においては外線からの着信か、あるいは内線からの着信かを認識できることは上記説明のとおりであるが、これを転送された他の構内交換機においては、この呼は専用回線を介して送られるので、専用回線からの着信と認識することはできるものの、外線からの着信か、内線からの着信かを認識することはできない。
【0008】従って、従来は専用回線からの着信の場合は、内線又は外線に対応する保留音のいずれかを、あるいは、専用回線に対応する保留音を発信端末に対して送出するようにしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、構内交換網内の複数の交換機を経由して転送された呼については、着信端末を収容した交換機において、外線からのものか、内線からのものかを判断することはできず、外線又は内線に対応した適切な保留音の送出ができないという問題がある。
【0010】この問題を解決するため、外線からの呼を転送するための専用回線と、内線からの呼を転送するための専用回線とを物理的に独立したものとし、転送先の交換機において、これを認識することにより、それぞれに対応する保留音を送出するようにした方式が公知であるが、この方式では専用回線の効率的な運用を図ることができないという問題がある。
【0011】本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、他の構内交換機を経由して転送されてきた呼が、第1の回線種別(内線からのものか、第2の回線種別(外線からのものかを、専用回線の効率的運用を阻害することなく認識し、それぞれに対応する保留音を発信端末に対して選択的に送出することを可能にすることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理構成図である。
【0013】内線、外線又はこれらの双方を含む複数の回線を収容し、他の交換機との間で発信端末情報(発信端末の電話番号、その他の必要な発信端末に関する情報)を送受信する機能を備えた複数の交換機を専用回線で接続して構成される電話交換網において、各交換機を以下のように構成する。
【0014】即ち、呼が着信した回線の種類を示す回線種別を、該回線の物理的収容位置に基づき検出する回線種別検出部1と、回線種別に対応して保留音種別が予めデータとして格納された保留音種別記憶部2と、起動された時に、入力された回線種別に基づき保留音種別記憶部2から対応する保留音種別を抽出し、該保留音種別に基づき発信端末3に対して送出する保留音を切替・制御する保留音制御部4と、起動された時に、他の交換機からの発信端末情報から回線種別を抽出し、該回線種別を保留音制御部4に出力するとともに、該保留音制御部4を起動する回線種別抽出部5と、起動された時に、回線種別検出部1により検出された回線種別を他の交換機への発信端末情報に設定する回線種別設定部6とを備えて構成する。
【0015】そして、前記保留音制御部4、回線種別抽出部5又は回線種別設定部6を場合に応じて選択的に起動する起動制御部7を備えて構成する。起動制御部7は、着信した呼が他の交換機に転送すべきものであって、前記回線種別検出部1により検出された回線種別が専用線でない場合には前記回線種別設定部6を起動し、専用線である場合には前記回線種別設定部6を起動しない。一方、該呼が自交換機の内線に着信させるべきものである場合には次のように処理する。即ち、自交換機の内線端末3に着信させた後、該着信端末3から保留要求があったときに、前記回線種別検出部1により検出された回線種別が専用線でない場合には該検出された回線種別を前記保留音制御部4に出力するとともに、該保留音制御部4を起動し、専用線である場合には前記回線種別抽出部5を起動する。
【0016】
【作用】複数の交換機を経由して呼接続処理を行う場合において、内線又は外線から最初に着信した交換機を転送元交換機とし、着信させるべき内線を収容した交換機を転送先交換機とし、転送元交換機から転送先交換機へ至る経路内に他の交換機が存在する場合には当該他の交換機を中継交換機として説明する。
【0017】まず、転送元交換機において着信が検出されると、回線種別検出部1により該着信回線の回線種別が検出される。この場合は内線又は外線であり、また、この呼は他の交換機へ転送すべきものであるから、起動制御部7により回線種別設定部6が起動され、回線種別設定部6により、発信端末情報に該検出された回線種別(内線又は外線)が設定され、呼接続要求とともに該当する他の交換機(この場合は中継交換機)に転送される。
【0018】これを受信した中継交換機において、上記と同様に回線種別が検出される。この場合の回線種別は専用線であり、また、この呼は他の交換機へ転送すべきものであるから、回線種別設定部6による発信端末情報への回線種別の設定は行われずに、そのまま他の交換機(この場合は転送先交換機)に呼接続要求とともに転送される。
【0019】これを受信した転送先交換機において、上記と同様に回線種別が検出される(この場合の回線種別は専用線である)。この呼は自交換機の内線に着信させるべきものであるから、呼出音の発生その他の呼接続処理が実施される。そして、通話中に着信端末から保留要求があったならば、検出されている回線種別は専用線であるから、起動制御部7により回線種別抽出部5が起動され、転送されてきた発信端末情報から回線種別が抽出される。この回線種別は保留音制御部4に入力され、保留音制御部4はこの回線種別に基づき保留音種別記憶部2から対応する保留音種別を抽出し、この保留音種別に基づき発信端末3に対して該当する保留音を送出する。
【0020】尚、上記転送元交換機と転送先交換機が一致する場合、即ち、回線種別検出部1により検出された回線種別が内線又は外線の場合において、自交換機の内線に着信させた後に保留要求があった場合には、回線種別抽出部5は起動されずに、該検出された回線種別が保留音制御部4に入力され、これに基づき発信端末3に対して該当する保留音が送出せしめられる。
【0021】このように、本発明を適用した交換機により電話交換網を構成することにより、複数の交換機を経由して呼接続が行われた場合においても、外線からの着信と内線からの着信とで送出する保留音を異ならせることができる。尚、従来技術の如く、各交換機間を接続する専用回線を、外線からの呼を転送するための専用回線と内線からの呼を転送するための専用回線とに分離して構成するものと異なり、専用回線の運用効率を低下させることはない。
【0022】
【実施例】以下、本発明をNo.7共通線信号方式のテレホンユーザパート(TUP)を使用した交換機間接続処理を例にとって図面に基づいて説明する。
【0023】図2は本発明が適用された構内交換機(PBX)により構成された構内交換網の概略構成を示す図である。この構内交換網は、No.7共通線信号方式が適用されて構成されている。
【0024】同図において、11,12が構内交換機であり、これらの交換機11,12はそれぞれ複数の内線13及び公衆網との接続回線である外線14を収容している。そして、交換機11と交換機12はNo.7共通線信号方式により制御される通話回線15及び信号回線16で相互に接続されており、各交換機11,12は保留時に発信端末に対して信号音、メロディー、メッセージ等の保留音を送出する複数の保留音送出装置17を収容している。
【0025】図3は上記の交換機11又は12のハード的な構成を示すブロック図であり、同図において、21は通話路部(NW)、22は通話路制御部(CM)、23は中央処理部(CC)、24は記憶部(MM)、25は共通線信号制御部(CSE)、26はデータ通信制御部(DCC)、27は保守端末(MC)、28は共通バスである。29は内線加入者制御回路30を制御する加入者回路制御部(RSM/SSM)である。
【0026】図4は上記記憶部24の一部(図1における保留音種別記憶部2に相当する)に設定される保留音種別に関するデータの一例を示す図である。即ち、この実施例においては、回線種別「内線」については保留音種別「SHST」が、回線種別「外線」については保留音種別「CHST」が、回線種別「専用線」については保留音種別「PHST」が予め設定保持されている。尚、このデータは後述するように保守端末27を用いて任意に変更が可能である。
【0027】図5は交換機11又は12による着信時及び保留要求受信時における処理を示すフローチャートである。尚、各ステップについて付してあるかっこ付きの番号は図1の各部の番号に対応している。
【0028】交換機に呼接続要求が着信すると、交換機は所定の着信処理を実施する(ステップ「以下STと略す」1)。即ち、交換機は各回線の状態等を管理しており、着信を検出した後、着信端末電番を含む着信端末情報及び呼接続要求に発信端末電番を含む発信端末情報が付加されている場合にはこの情報を記憶部24に一時的に格納し、あるいは発信端末情報を新たに生成する等の処理を実施する。
【0029】この着信処理の途中で、あるいはこの処理の後に、当該着信が内線からのものであるか、外線からのものであるか、あるいは専用線からのものであるかが、当該回線の物理的収容位置に基づいて検出される(ST2)。
【0030】次いで、記憶部24に格納されている着信端末情報の着信端末電番に基づき、自交換機に収容されている内線に着信させるべき呼か、あるいは他の交換機に転送すべき呼かを判断する(ST3)。
【0031】他の交換機に転送すべき呼である場合には、検出された回線種別を判断し(ST4)、内線又は外線である場合には、他の交換機へ呼接続要求とともに転送するべき発信端末情報に当該検出された回線種別(内線又は外線)を付加し(ST5)、所定の呼転送処理を実施する(ST6)。ST4において、検出された回線種別が専用線であると判断した場合には、ST5を実行しないでST6に進む。
【0032】ST3において、自交換機に収容されている内線に着信させるべき呼であると判断した場合には、着信端末において呼出音を発生する等の処理を含む通常の通話のための処理が実施される(ST7)。着信端末からの応答があった後、該着信端末から保留要求を受信した場合には(ST8)、検出された回線種別を判断し(ST9)、内線又は外線である場合には、当該検出された回線種別に基づき記憶部24内の保留音種別に関するデータを検索し、当該回線種別に対応する保留音種別を抽出する(ST10)。当該検出された回線種別が内線である場合には保留音種別「SHST」が、外線である場合には保留音種別「CHST」が抽出されることになる。
【0033】ST9において、検出された回線種別が専用線であると判断した場合には、記憶部24に格納されている該当する発信端末情報に回線種別が設定されているか否かを判断し(ST11)、設定されていない場合にはST10に進む。この場合の回線種別は専用線であるので、ST10においては、保留音種別「PHST」が抽出されることになる。
【0034】ST11において、該当する発信端末情報に回線種別が設定されている場合には、該発信端末情報から回線種別を抽出し(ST12)、当該抽出された回線種別に基づき、ST10と同様に記憶部24内の保留音種別に関するデータから対応する保留音種別を抽出する(ST13)。
【0035】次いで、ST10又はST13において抽出された保留音種別に対応する保留音送出装置17が捕捉され、該保留音送出装置17が起動されることにより(ST14)、発信端末に対して該当する保留音が送出される。その後、着信端末から保留解除要求を受信したならば(ST15)、保留音送出装置17を停止し(ST16)、ST7へ戻る。
【0036】この実施例における各構内交換機11,12は、図6に示すようなデータ変更・表示処理部を備えており、付属する保守端末27から所定のコマンド等を入力することにより、記憶部24内の保留音種別に関するデータの設定内容を任意に変更し、又は確認のために設定内容を表示することができる。図7はデータ変更処理の具体例を示す図であり、図6及び図7を参照して、データ変更・表示処理について説明する。
【0037】保守端末27からデータ変更に対応するコマンド、変更すべき回線種別(この場合は外線とする)及び変更後の保留音種別(この場合は「CHST」から「PHST」に変更するものとする)が入力されると、変更要求受付部31がこれを受け付け、要求内容分析部32により入力されたコマンドの内容が分析され、内容変更部33により記憶部24の該当する回線種別に対応する保留音種別が、図7に示す如く書き換えられる。正常に書き換えが行われたならば、変更完了通知部34により保守端末27のCRTにその旨が表示される。
【0038】一方、保守端末27からデータ表示に対応するコマンドが入力されると、表示要求受付部35がこれを受け付け、要求内容分析部36により入力されたコマンドの内容が分析され、内容読出部37により記憶部24内の保留音種別に関するデータが全て読み出され、内容出力部38により保守端末27のCRTに、読み出された保留音種別に関するデータが表示される。
【0039】尚、上記実施例においては、各交換機11,12は内線、外線、専用線のみを収容しているものとして説明しているが、その他の種類の回線、例えば中継台との接続回線等を収容している場合についても本発明を適用可能なことは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】本発明は以上詳述したように、発信内線を収容し、又は公衆回線から呼接続要求を最初に受信した交換機において、回線種別(内線からのものか、公衆回線からのものかを示す種別)を発信端末情報に付加し、着信端末を収容した交換機において、専用線からの着信と認識した場合に、該発信端末情報から回線種別を抽出して、これに基づいて発信端末に対して送出する保留音を切替・制御するように構成したから、複数の交換機を経由して呼接続が行われる場合であっても、専用回線の効率的運用を阻害することなく、発信端末に対して送出する保留音を、自交換網内の内線に対するものと公衆回線に対するものとで異ならせることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理構成を示すブロック図である。
【図2】本発明実施例における構内交換網の概略構成を示す図である。
【図3】本発明実施例における構内交換機の構成を示す図である。
【図4】本発明実施例における保留音種別に関するデータの一例を示す図である。
【図5】本発明実施例における着信時及び保留要求受信時における処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明実施例におけるデータ変更・表示処理部の構成を示す図である。
【図7】本発明実施例におけるデータ変更処理の具体例を示す図である。
【符号の説明】
1 回線種別検出部
2 保留音種別記憶部
3 発信端末
4 保留音制御部
5 回線種別抽出部
6 回線種別設定部
7 起動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数種別の回線を収容し、他の交換機との間で発信端末情報を送受信する機能を備えた交換機において、呼が着信した回線の種類を示す回線種別を検出する回線種別検出部と、前記他の交換機からの発信端末情報から前記回線種別を抽出し、該抽出した結果に基づく回線種別を出力する線種別抽出部と、前記回線種別に対応して保留音種別が予めデータとして格納された保留音種別記憶部と、前記回線種別検出部または前記回線種別抽出部のいずれかより出力される回線種別に基づき、前記保留音種別記憶部から対応する保留音種別を抽出し、該保留音種別に基づき保留音を切換・制御する保留音制御部と、を備えたことを特徴とする交換機。
【請求項2】 複数種別の回線を収容し、他の交換機との間で発信端末情報を送受信する機能を備えた交換機において、呼が着信した回線の種類を示す回線種別を、該回線の物理的収容位置により検出する回線種別検出部と、前記呼が他の交換機へ転送すべき場合、前記回線種別検出部にて検出された回線種別が第1又は第2の回線種別であるときには、該第1又は第2の回線種別を発信端末情報に設定して他の交換機へ転送し、前記回線種別検出部にて検出された回線種別が第3の回線種別であるときには、受信した第1又は第2の回線種別を含む発信端末情報を他の交換機へ転送する回線種別設定部と、を備えたことを特徴とする交換機。
【請求項3】 複数種別の回線を収容し、他の交換機との間で発信端末情報を送受信する機能を備えた交換機システムにおいて、呼が着信した回線の種類を示す回線種別を検出する回線種別検出部と、所定の条件に応じて、前記回線種別検出部にて検出された回線種別を他の交換機への発信端末情報に設定する線種別設定部と、前記他の交換機からの発信端末情報から前記回線種別を抽出し、該抽出した結果に基づく回線種別を出力する線種別抽出部と、前記回線種別に対応して保留音種別が予めデータとして格納された保留音種別記憶部と、前記回線種別検出部または前記回線種別抽出部のいずれかより出力される回線種別に基づき、前記保留音種別記憶部から対応する保留音種別を抽出し、該保留音種別に基づき保留音を切換・制御する保留音制御部と、を備えたことを特徴とする交換機システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【特許番号】特許第3183903号(P3183903)
【登録日】平成13年4月27日(2001.4.27)
【発行日】平成13年7月9日(2001.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−134875
【出願日】平成3年6月6日(1991.6.6)
【公開番号】特開平4−360358
【公開日】平成4年12月14日(1992.12.14)
【審査請求日】平成10年5月12日(1998.5.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−52550(JP,A)
【文献】特開 平2−135960(JP,A)
【文献】特開 平2−231852(JP,A)
【文献】特開 平3−6995(JP,A)
【文献】特開 平2−166997(JP,A)
【文献】特開 昭62−250793(JP,A)
【文献】特開 昭58−146165(JP,A)
【文献】実開 昭64−37191(JP,U)