説明

交流スイッチ

【課題】消弧の際に悪影響を与えるような波形の電圧を負荷に供給することがなく、消弧回路に多数の素子を必要としたり複雑な制御をしたりする必要のない、サイリスタを使用した交流スイッチを提供する。
【解決手段】主電流を開閉する逆並列接続された2個1組のサイリスタ1と並列に、コンデンサ2とリアクトル3と変圧器4の二次コイル5とを直列に接続した直列共振回路を接続し、主電流を遮断するとき変圧器4の一次コイル11に直列共振回路の共振周波数と同期した交番電圧を印加する駆動回路を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイリスタを使用した交流スイッチに関し、特に無停電電源装置の商用電源と負荷との間に設けられる交流スイッチとして好適な、速やかに電流を遮断することのできる交流スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種機器にCPUが使用されることが一般的になり、落雷などによる商用電源の瞬間的な電圧低下や停電による障害が大きな問題となっている。そうした障害を避けるために無停電電源装置が使用されており、本願出願人等は特許文献1に示されるような電源装置を考案して出願中である。この電源装置は、常用電源入力部と非常用電源入力部にそれぞれ第一の開閉器と第二の開閉器を接続したうえ相互に接続し、その接続した点と出力部の間に半導体開閉器を設け、出力部には双方向性の変換器の交流側を接続するとともに該変換器の直流側に二次電池を接続して構成したものであり、常用電源と非常用電源の切り替え時にも負荷に電力を連続して供給することができる機能を有するものである。
【0003】
この電源装置では常用電源である商用電源あるいは非常用電源と負荷の間に交流スイッチである半導体開閉器が設けられており、商用電源が健全な定常時は交流スイッチを介して商用電源から負荷に電力が供給され、商用電源の電圧低下や停電等の異常時は交流スイッチが遮断されてインバータから負荷に電力が供給される。そして、非常用電源が立ち上がった後は交流スイッチを介して非常用電源から負荷に電力が供給される。また、従来知られる多くの無停電電源装置でも商用電源と負荷の間に交流スイッチが設けられており、定常時は交流スイッチを介して商用電源から負荷に電力が供給され、商用電源の異常時は交流スイッチが遮断されてインバータから負荷に電力が供給されるようになっている。
【0004】
商用電源の異常時にインバータから負荷に電力を供給する際には、インバータから商用電源側への逆流を避けるため交流スイッチを速やかに遮断する必要がある。そのため、特許文献1に示される電源装置では、自己消弧形素子であるIGBTで交流スイッチを構成し、速やかに遮断できるようにしている。ところが、交流スイッチをIGBTのような自己消弧形の素子で構成した場合、遮断する際の制御が容易である反面オン状態での損失が大きく、特に容量が大きい場合には高コストになるという問題もあり、サイリスタを使用することが好ましいことからサイリスタを高速で遮断する方法が課題となっていた。
【0005】
無停電電源装置に使用されるサイリスタを使用した交流スイッチとしては、例えば特許文献2や特許文献3に示されるように、導通状態にあるサイリスタに対して逆バイアスになるような電圧を変換器すなわちインバータに発生させてサイリスタを消弧するものが提案されている。また、例えば特許文献4に示されるようなLC共振回路と2個の消弧電流用サイリスタを逆並列に接続した四群の消弧用サイリスタスイッチ部とからなる消弧回路を設けたものが提案されている。この特許文献4に示されるものでは、主サイリスタを消弧するとき主サイリスタに流れる電流の向きに応じて四群の消弧電流用サイリスタスイッチ部の中から適切な消弧用サイリスタスイッチ部の組み合わせを選択し、主サイリスタ素子に対して消弧動作に必要な電流を流すものである。
【0006】
ところが、特許文献2や特許文献3に示されるものでは、導通状態にあるサイリスタに対して逆バイアスになるような電圧をインバータに発生させるものであるため、負荷に供給される電圧の波形は望ましい電源電圧波形から外れたものになることとなる。また、特許文献4に示されるものでは、消弧回路がLC共振回路と4組の逆並列接続された2個の消弧電流用サイリスタとから構成されており、主サイリスタに流れる電流の向きに応じて適切な消弧電流用サイリスタを選択して主サイリスタ素子に対して消弧動作に必要な電流を流す制御手段が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−182775号公報
【特許文献2】特開2003−87999号公報
【特許文献3】特開2008−271650号公報
【特許文献4】特開2011−23320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上述べたように、導通状態にあるサイリスタに対して逆バイアスになるような電圧をインバータに発生させることでサイリスタを消弧させるようにした交流スイッチでは、負荷に望ましい電源電圧波形から外れた波形の電圧を供給することになって負荷に悪影響を与えるという問題があった。また、消弧回路がLC共振回路と4組の逆並列接続された2個の消弧電流用サイリスタとで構成された交流スイッチでは、消弧回路に多くの素子が必要で複雑になり、主サイリスタに流れる電流の向きに応じて適切な消弧電流用サイリスタを選択する制御手段も複雑になるという問題があった。
【0009】
本発明は上記の問題点を解決しようとするものであり、消弧の際に悪影響を与えるような波形の電圧を負荷に供給することがなく、消弧回路に多数の素子を必要としたり複雑な制御をしたりする必要のない、サイリスタを使用した交流スイッチを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は上記目的を達成するために、主電流を開閉する逆並列接続された2個1組のサイリスタと並列に、コンデンサとリアクトルと変圧器の二次コイルとを直列に接続してなる直列共振回路を接続し、主電流を遮断するとき直列共振回路の共振周波数と同期した交番電圧を変圧器の一次コイルに印加する駆動回路を設けたものである。ここにおいて、サイリスタが消弧したとき駆動回路の動作を停止して変圧器の一次コイルに交番電圧を印加するのを止める制御手段を設けることが好ましく、コンデンサとリアクトルと変圧器の二次コイルとからなる直列共振回路の共振周波数を商用電源周波数の100倍以上とすることが好ましい。
【0011】
上記の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、通電中のサイリスタを消弧するときは、変圧器の一次コイルに直列共振回路の共振周波数と同期した交番電圧を印加するので、直列共振回路には共振によりピーク電流の絶対値が徐々に大きくなる振動電流が流れることになる。サイリスタには商用電源の電流に直列共振回路の徐々に大きくなる振動電流が重畳した電流が流れるので、サイリスタに流れる商用電源の電流の流れる方向とは関係なくその合成された電流が零になるとサイリスタの電流が遮断される。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたたように、本発明の交流スイッチによれば、サイリスタはサイリスタに流れる商用電源の電流の流れる方向とは関係なく遮断されるので、サイリスタに流れる電流の方向に応じて制御の変更をする必要はなく、サイリスタの電流が大きく変化しても確実に消弧することができる利点がある。振動電流は共振により大きくなっていくので変圧器の二次コイルの電圧を低く抑えることができ、交番電圧は変圧器の一次コイルに印加するのでそのための駆動回路は小型の電流容量の小さい素子で構成することができる。また、変圧器で絶縁されるので、多相回路に使用する場合には変圧器の一次コイルに交番電圧を印加するための駆動回路の直流電源を共通のものとすることができ、無停電電源装置ではインバータの直流電源から供給することができる利点がある。さらに、直列共振回路の共振周波数を商用電源周波数の100倍以上とした場合には、構成するコンデンサ、リアクトル、変圧器等が小型のものとすることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の交流スイッチの1相分を示す結線図である。
【図2】交流スイッチ遮断時の要部の波形図である。
【図3】本発明の交流スイッチを特許文献1に示される電源装置に応用した状態を示す主回路の結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図において1は主電流を開閉する逆並列接続されたサイリスタであって、該サイリスタ1にはコンデンサ2、リアクトル3、変圧器4の二次コイル5からなる直列回路が並列に接続されている。このコンデンサ2、リアクトル3、二次コイル5は直列共振回路を形成するものであり、共振周波数は商用周波数の100倍以上の例えば10kHz程度とすることが好ましい。6は二次電池等の直流電源であって、該直流電源6のプラス極には半導体スイッチ7、8のプラス極が接続されており、半導体スイッチ7、8のマイナス極にはそれぞれマイナス極を直流電源6のマイナス極に接続された半導体スイッチ9、10のプラス極が接続されている。半導体スイッチ7、8、9、10としては自己消弧形で高速なMOS−FET、IGBT等とすることが好ましい。
【0016】
半導体スイッチ7、9の接続点と半導体スイッチ8、10の接続点との間には変圧器4の一次コイル11が接続されており、一次コイル11の電流を検出するセンサー12が設けられている。前記サイリスタ1にはその電流を検出するセンサー13が設けられており、センサー12及び13の検出信号は制御装置14に入力されている。制御装置14は外部から与えられる通電指令信号、遮断指令信号とセンサー12及び13の検出信号に応じてサイリスタ1、半導体スイッチ7、8、9、10に個別にオン指令信号を与えるものであり、次に示すような動作をするように構成されている。
【0017】
通電指令信号が与えられるとサイリスタ1にオン指令信号を与え、遮断指令信号が与えられるとサイリスタ1にオン指令信号を与えるのを止めるとともに半導体スイッチ7と10の組にオン指令信号を与える。一次コイル11に流れる電流の方向が反転するのをセンサー12が検出すると半導体スイッチ7と10の組にオン指令信号を与えるのを止めて半導体スイッチ8と9の組にオン指令信号を与え、次に一次コイル11に流れる電流の方向が反転するのをセンサー12が検出すると半導体スイッチ8と9の組にオン指令信号を与えるのを止めて半導体スイッチ7と10の組にオン指令信号を与える。
【0018】
ここでは一次コイル11に流れる電流の方向が反転するのをセンサー12が検出するとしているが、実際には一次コイル11に流れる電流の絶対値が零近くまで減少したのを検出することで一次コイル11に流れる電流の方向が反転するのを検出したものとすることができる。以後一次コイル11に流れる電流の方向が反転するのをセンサー12が検出する毎に半導体スイッチ8と9の組と半導体スイッチ7と10の組とに交互にオン指令信号を与え、センサー13がサイリスタ1に流れる電流が零になったことを検知すると半導体スイッチ7、8、9、10に与えるオン指令信号を停止する。
【0019】
以下このように構成された交流スイッチの動作について説明する。外部から制御装置14に通電指令信号が与えられると、制御装置14はサイリスタ1にオン指令信号を与えサイリスタ1は順方向になっている側のサイリスタがオンになって交流スイッチが閉路する。このサイリスタ1に与えるオン指令信号をパルス列とすると、順方向になっている側のサイリスタがオンになり、主回路の位相を考慮する必要がない利点がある。サイリスタ1がオンになり、交流スイッチが閉路している状態で外部から制御装置14に遮断指令信号が与えられると、制御装置14はサイリスタ1に与えるオン指令信号を停止する。このままであれば、オンになっているサイリスタ1は電流が零になるまでオンの状態を継続することになる。
【0020】
図2は制御装置14に遮断指令信号が与えられたときの要部の波形を示すもので、Aは半導体スイッチ7と10の組に与えられるオン指令信号、Bは半導体スイッチ8と9の組に与えられるオン指令信号、Cはコンデンサ2、リアクトル3、二次コイル5からなる直列共振回路の電流、Dはサイリスタ1に流れる電流である。t1の時点で遮断指令信号が与えられると、制御装置14はAで示すように半導体スイッチ7と10の組にオン指令信号を与える。半導体スイッチ7と10がオンになり、一次コイル11に直流電源6の電圧が加えられると二次コイル5に電圧が誘起され、その電圧によりサイリスタ1、コンデンサ2、リアクトル3、二次コイル5の回路に図2のCに示すような電流が流れる。
【0021】
この電流は共振周波数の半サイクル分の振動電流であり、一旦増加して減少に転じ、零になった後電流の方向が反転するのであるが、一次コイル11の電流も同様の変化をするので、一次コイル11に流れる電流の方向が反転するのをセンサー12が検出すると制御装置14は半導体スイッチ7と10の組にオン指令信号を与えるのを止めて半導体スイッチ8と9の組にオン指令信号を与える。半導体スイッチ8と9がオンになり、一次コイル11に直流電源6の電圧が逆極性で加えられると、二次コイル5に誘起される逆極性の電圧によりサイリスタ1、コンデンサ2、リアクトル3、二次コイル5の回路に逆方向の半サイクル分の振動電流が流れる。
【0022】
以後これを繰り返し、一次コイル11にはコンデンサ2、リアクトル3、二次コイル5からなる直列共振回路の共振周波数と同期した交番電圧が加わるので、振動電流のピーク値の絶対値は徐々に大きくなっていくことになる。図2のDはサイリスタ1の電流を示しており、商用電源の電流に直列共振回路の振動電流が重畳して流れるので、合成された電流が零になるとサイリスタ1の電流が遮断されることになる。サイリスタ1の電流が遮断されるとサイリスタ1に流れていた電流によりコンデンサ2が充電され、その充電が完了すると交流スイッチに流れる電流が遮断される。
【0023】
サイリスタ1に電流が流れなくなるとそれがセンサー13により検出され、制御装置14は半導体スイッチ7、8、9、10にオン指令信号を与えるのを停止して交流スイッチの開路動作が完了する。直列共振回路のピーク電流は比較的短時間で大きくなり、サイリスタ1に流れていた電流を上回るに到るので、サイリスタ1は共振周波数の数サイクル分といった短時間で遮断されることになる。共振周波数を商用周波数の100倍以上の例えば10kHzとした場合、図2に示すように2サイクル強の時間で振動電流がサイリスタの商用電源成分の電流を上回れば、0.2m秒強の短時間でサイリスタが遮断されることになる。
【0024】
なお、前記ではサイリスタ1に電流が流れなくなったことをセンサー13により検出するものとしているが、サイリスタ1が遮断されると直列共振回路に電流が流れなくなり、一次コイル11の電流にも変化が現れるので、センサー12によって検出することも可能である。また、一次コイル11に与える電圧は、センサー12により検出した電流により極性を切り替えるので、確実に共振周波数と同期させることができ、コンデンサ2やリアクトル3を調整して共振周波数を合わせ込む必要はない。直列共振回路の共振周波数を高くすると、サイリスタ1が消弧されるまでの時間が短くなり、構成するコンデンサ、リアクトル、変圧器等が小型のものとすることができる利点があるが、過度に高くすることは半導体スイッチ7、8、9、10の損失が増えるということがあって好ましくない。
【0025】
図3は本発明の交流スイッチを特許文献1に示される停電補償機能を備えた電源装置の半導体開閉器に使用した状態を示すものであって、半導体開閉器15の内2線に本発明の交流スイッチが使用されており、残り1線は逆並列接続されたサイリスタ21となっている。このような三相回路の場合、残り1線は接続したままとしてもよいが、このように逆並列接続されたサイリスタ21としておくことが好ましい。半導体開閉器15の一方の端子は出力端子16に接続され、半導体開閉器15の他方の端子は第一の開閉器17及び第二の開閉器18の一極に接続されている。第一の開閉器17及び第二の開閉器18の半導体開閉器15に接続されない他極はそれぞれ商用電源入力端子19及び非常用電源入力端子20に接続されている。
【0026】
出力端子16にはリアクトル22を介して変換器23の交流側が接続されている。変換器23はコンバータとしてもインバータとしても動作する双方向性のものであって、コンバータとして動作するときには交流側に入力される交流電力を直流に変換して直流側に供給し、インバータとして動作するときは直流側から供給される直流電力を交流に変換して交流側に供給する。変換器23はIGBT等の半導体素子をブリッジ接続して構成されるもので、その主回路は従来から知られる変換器のものと同様である。
【0027】
変換器23の直流側にはコンデンサ24とチョッパ25とが接続されており、またチョッパ25には二次電池26が接続されている。チョッパ25は双方向性のものであって、降圧チョッパとして動作するときには変換器23から供給される直流電力を降圧して二次電池26に直流電力を蓄積し、昇圧チョッパとして動作するときには二次電池26に蓄積された直流電力を昇圧して変換器23に供給する。図中27は半導体開閉器15と並列に接続される第三の開閉器であり、28はチョッパ25と二次電池26の間に挿入されたリアクトルである。なお、この二次電池26は電気二重層キャパシタその他のエネルギー蓄積素子で代替することができるのは言うまでもなく、前記直流電源6として使用することができる。
【0028】
これらの第一の開閉器17、第二の開閉器18、第三の開閉器27の開閉、半導体開閉器15の開閉はそれぞれ図示しない制御装置により行なわれる。また、変換器23およびチョッパ25の制御も同じく図示しない制御装置により行なわれる。それにより変換器23はコンバータとして動作するとき直流側を一定電圧に保持するとともに交流回路の高調波成分を補償するように制御され、インバータとして動作するとき自立運転する自立運転モードと周波数、位相、電圧を同期させる同期モードとのいずれかで制御される。また、チョッパ25は降圧チョッパとして動作するとき二次電池26の充電電流、充電電圧が適正になるように制御され、昇圧チョッパとして動作するときインバータとして動作する変換器23に適正な電圧を供給できるように制御される。
【0029】
図3に示すように構成された停電補償機能を備えた電源装置では、商用電源入力端子19に商用電源が、非常用電源入力端子20にディーゼルエンジンで駆動される発電機等が接続される。商用電源が健全なときは第一の開閉器17と半導体開閉器15が閉路されて商用電源から負荷に電力が供給される。これが定常運転状態であり、このとき変換器23はコンバータとして動作し、直流側のコンデンサ24を充電するとともにチョッパ25に一定電圧の直流電力を供給するように制御される。チョッパ25は変換器23から供給される直流電力を降圧し、二次電池26を充電する。
【0030】
商用電源の停電あるいは電圧低下が生じるとコンバータとして動作していた変換器23は直ちにインバータとして動作し、自立運転するように制御される。また、降圧チョッパとして動作していたチョッパ25は昇圧チョッパとして二次電池26の電力を変換器23に供給するように制御される。同時に半導体開閉器15は開とされるが、前記のようにサイリスタ1が速やかに遮断されるので商用電源側への逆流が防止される。その後第一の開閉器17が開路される。変換器23はそれまで商用電源と同期して動作しており、数ミリ秒というような極めて短時間の内にインバータとして自立運転する状態に移行することができる。それにより負荷への電力供給が中断することは殆どない。
【0031】
この状態では二次電池26に蓄積された直流電力が変換器23により交流電力に変換されて負荷に供給されることになるが、経済的な観点から二次電池26の容量をあまり大きくするのは得策ではなく、停電が一定時間以上継続する場合には非常用電源から負荷に電力を供給することが好ましい。そこで非常用電源を起動し、非常用電源が立ち上がった後自立運転モードで制御されていた変換器23を同期モードで制御し変換器23の出力の周波数、位相、電圧を非常用電源に合わせたうえ第二の開閉器18を閉路し、変換器23を停止すると同時に半導体開閉器15を閉路すると負荷には非常用電源から電力が供給される。
【0032】
非常用電源に予期しない停電が発生することはないので、非常用電源から電力が負荷に供給されている間に変換器23からの供給に切り替える必要はない。そこで、第三の開閉器27を閉路すれば半導体開閉器15バイパスして損失を低減することができる。変換器23は再度コンバータとして起動され、チョッパ25を介して二次電池26に直流電力が蓄積される。このようにして非常用電源から負荷に電力が供給されて運転する間に商用電源が復旧すると、まず第三の開閉器27が開路され、非常用電源から第二の開閉器18と半導体開閉器15を通して電力が負荷に供給されるようになる。次にコンバータとして動作していた変換器23がインバータとして自立運転モードで動作し、降圧チョッパとして動作していたチョッパ25が昇圧チョッパとして二次電池26の電力を変換器23に供給するように制御される。同時に半導体開閉器15は開とされ、非常用電源側への逆流が防止される。その後第二の開閉器18が開路され、非常用電源が停止させられる。
【0033】
変換器23が一定時間自立運転モードで運転された後同期モードで制御され、変換器23の出力の周波数、位相、電圧を商用電源に合わせた後第一の開閉器17が閉路される。商用電源と変換器23の出力との同期が所定の範囲内で合致すると、変換器23が停止されると同時に半導体開閉器15が閉路され、負荷には商用電源から電力が供給される。その後変換器23は再度コンバータとして起動され、チョッパ25を介して二次電池26に直流電力が蓄積される定常運転状態に復帰する。
【0034】
以上説明したように、本発明の交流スイッチを半導体開閉器に使用した停電補償機能を備えた電源装置では、定常運転時は商用電源から半導体開閉器15を介して負荷に電力が供給される。商用電源の停電、電源電圧低下等が生ずると非常用電源が起動され、非常用電源が立ち上がるまでの間変換器23から負荷に電力が供給される。このとき、変換器23から商用電源に電力が逆流しないように半導体開閉器15が遮断される。非常用電源が立ち上がると半導体開閉器15を介して非常用電源から負荷に電力が供給される。商用電源が復旧すると、半導体開閉器15が遮断されて変換器23から負荷に電力が供給され、その後商用電源から半導体開閉器15を介して負荷に電力が供給される。
【0035】
こうした一連の動作の中で、半導体開閉器15に本発明の交流スイッチが使用されているので、速やかに半導体開閉器15を遮断することができ、変換器23から商用電源あるいは非常用電源への逆流を防ぐことができる。本発明の交流スイッチは、サイリスタ1に並列に直列共振回路が接続されており、また、必要に応じスナバーが接続されるので、サイリスタ1がオフの状態でも電流が若干流れることになる。前記の停電補償機能を備えた電源装置では、第一の開閉器17、第二の開閉器18が開路されるのでこれが問題になることはないが、無視できないような用途に使用する場合には、直列共振回路とスナバーに別途開閉器を設けてこれを遮断することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 サイリスタ
2 コンデンサ
3 リアクトル
4 変圧器
5 二次コイル
6 直流電源
7、8、9、10 半導体スイッチ
11 一次コイル
12、13 センサー
14 制御装置
15 交流スイッチ
16 出力端子
17 第一の開閉器
18 第二の開閉器
19 商用電源入力端子
20 非常用電源入力端子
21 サイリスタ
22 リアクトル
23 変換器
24 コンデンサ
25 チョッパ
26 二次電池
27 第三の開閉器
28 リアクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電流を開閉する逆並列接続された2個1組のサイリスタと並列に、コンデンサとリアクトルと変圧器の二次コイルとを直列に接続してなる直列共振回路を接続し、主電流を遮断するとき直列共振回路の共振周波数と同期した交番電圧を変圧器の一次コイルに印加する駆動回路を設けたことを特徴とする交流スイッチ。
【請求項2】
サイリスタが消弧したとき駆動回路の動作を停止して変圧器の一次コイルに交番電圧を印加するのを止める制御手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の交流スイッチ。
【請求項3】
コンデンサとリアクトルと変圧器の二次コイルとからなる直列共振回路の共振周波数を商用電源周波数の100倍以上としたことを特徴とする請求項1または2に記載の交流スイッチ。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−41674(P2013−41674A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176014(P2011−176014)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000150202)株式会社中央製作所 (35)
【Fターム(参考)】