説明

交流ネットワークに正弦波電流を供給するためのインバータ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、正弦波電流を交流ネットワーク又は公共の電力供給ネットワークに供給するためのインバータに関する。
【0002】
【従来の技術】そのようなインバータの場合には、電力スイッチは、ほとんど独占的に、図1に図示された3相交流ブリッジの構成で存在する。そのようなインバータは、直流/電圧の供給源から、位相U,V及びWの多相の交流を生成する。図1に図示された適当な複数のダイオードを有する電力スイッチT1乃至T6の逆並列接続の長所によって、動作の4象限モードが可能であり、従って、そのようなインバータ回路は、高度に汎用性のある方法で用いることもできる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そのようなインバータ回路に対する欠点は、2つのスイッチ、例えばT1及びT2の時間的に交差する短絡の場合に極めて高いエネルギーの流れが発生することであり、このことは通常インバータの全体の破壊を引き起こし、あるいは炎を噴出させることがあり、従って、ついには装置に接続された全ての部品の破壊に至る。別の欠点は、直流電圧の増大に対して、各部品は常に増大する性能を持たねばならないことであり、このことは、複数の非常に高価な部品を用いるときのみ可能である。
【0004】本発明の目的は、インバータの短絡への耐久能力を改善し、それと同時に上記の欠点を取り除き、特に、高価な個別部品に対する必要を可能な限り取り除くことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、上記目的は、請求項1乃至3のうちの1つに記載の特徴を有するインバータによって達成される。有利な複数の展開が従属する複数の請求項において示される。
【0006】本発明は、正弦波発振の半波発振を生成するために用いるものとするただ単一の回路又はスイッチユニットを実現することに基づいている。ゆえに、正弦波発振の正の半波発振を生成するために、正弦波電流の負の部分を生成するためのものとは裏返しの構成の回路又はスイッチユニットが用いられる。この結果、正弦波電流の正の半波発振と、また負の半波発振とを生成するための複数のスイッチユニットは、互いに分離され、かつ、共通の電流タッピングのみを介して互いに接続され、そのとき、各スイッチ部は電流タッピング経路におけるスイッチによって他のものに対して保護されているため、あるスイッチ部における電流の生成は、他のスイッチ部において間接的影響を引き起こすことがない。
【0007】インバータの正弦波形出力電流を正と負の半波発振に分割することは、負と正の半波発振のための2つのスイッチ部への直流電圧供給を分配する可能性を与える。ゆえに、複数のインバータの正の半波発振を生成する部分は、例えばUd1=660ボルトの直流電圧によって操作でき、また、正弦波直流の負の半波発振を生成する複数のインバータのスイッチ部は、例えばUd2=660ボルトの直流電圧によって操作できる。従って、そのとき、全体の直流電圧は、個別の直流電圧の2倍、すなわち、1320ボルトである。そのことは結果的に、660Vの直流電圧のためだけに設計された部品を使っているときに、インバータ全体の出力パワーを倍にする。
【0008】また、インバータの個別のスイッチユニットの出力インダクタンスは、例えば、部分的な直流電圧Ud1のみを有し、直流電圧Ud1及びUd2全体を持たない正の電流成分のときに動作する。また、このことは結果的に、材料とコストに関して節約をもたらす。単一のスイッチユニットによって正弦波電流の半波発振を生成することの利点によって、異なる半波発振のための複数のスイッチユニットは、空間に関して互いに遠く離して配置することもでき、このことは、全体的に、インバータとスイッチユニットの全ての部品との安全性及び信頼性を改善し、また、必要とする空間に関して、それを配置することを非常に簡易化する。本発明に係るインバータの構成に特有の利点は、出力チョークのインダクタンスと、従って、その目的のために必要とされる部品のコストとを半分にできることである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、図面に図示された実施例を参照し、以下により詳細に記述される。
【0010】図2は、直流電圧Uから、交流又は3相交流のネットワーク電流の正の成分を生成するための、横方向に分岐する回路又はスイッチユニット1を図示する。スイッチユニット1は、例えばIGBT(isolated gate bipolar transistor;絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)又はGTO(gate turn off thyristor;ゲートターンオフサイリスタ)である第1のスイッチとしてのパワートランジスタT1と、直流電圧端子に対して電力スイッチT1と直列に接続されているダイオードD1とを備える。出力電流のための電流タッピングは、電力スイッチT1とダイオードD1との間に設けられる。それに代わって、出力インダクタL1と直列に接続されている第2のスイッチS1が、電流タッピングに配置される。図3は、図2に図示された回路と相反する構造を有する、交流又は3相交流のネットワーク電流の負の成分を生成するためのスイッチユニットの回路図を、必要とされる基本原理に関して図示する。
【0011】図4は、図2及び図3に図示されたスイッチユニット1及び2に関する正弦波出力電流のタイミングチャートである。そこにはさらに、時間に関して電力スイッチT1及びT2のスイッチをオンにする動作又は経過と、同じく、電流タッピングに配置されたスイッチS1及びS2のオン/オフの動作又は経過とが図示されている。正弦波電流の正の半波形の間は(図4の上左)、電力スイッチT1のみが、指示された周期的なモードでオン及びオフに切り換えられ、その間、電力スイッチT2はその相においてオフにされている。正弦波電流の正の半波形の生成の間は、電流タッピングに配置されたスイッチS1はオンにされ(閉じられ)、同じ時間の間、負の半波形のための電流タッピングにおける他のスイッチS2はオフにされている(開かれている)。「鋸歯波」正弦波電流は、電力スイッチT1のスイッチング状態をオン及びオフにすることに関する周期的操作と、ダイオードD1の影響とによって生成される。正弦波電流の負の半波形の生成の間は、状態は、正弦波電流の正の半波形の生成に対して正確に逆である。負の半波形の生成においてスイッチS1はオフにされ、その間、電力スイッチT2が操作の指示された周期的なモードにおいてオン及びオフに切り換えられ、スイッチS2は常にオンにされている。正弦波波形の電流が最大値である領域において、電力スイッチT1及びT2はそれぞれ、より低い電流レベルの領域、特にゼロを通過する領域よりも、より長い時間だけオンに切り換えられている。
【0012】図5及び図6は、図2及び図3に図示された複数のスイッチユニットの相互接続を示し、3相交流を生成するための本発明に係るインバータを構成する。上記図示された回路の間の違いは、図6において、出力電流の負の半波発振を生成するための複数のスイッチ部が、出力電流の正の半波発振のための複数のスイッチ部から分離して配置されたことである。また、この点で、分離した配置は、複数のスイッチ部が、互いに異なる空間にあることと、それらの共通の電流タッピングのみを介して接続されることとを意味することができる。正の半波形を生成するための複数のスイッチユニットは、直流電圧端子+Ud1及び−Ud1に接続されている。正弦波電流の負の半波形を生成するための複数のスイッチ部は、直流電圧端子+Ud2及び−Ud2に接続されている。
【0013】図1は、ダイオードを有する複数の電力スイッチの逆並列接続の利点によって、動作の4象限モードを可能にし、従って、スイッチ手段として高度に汎用性のある方法で用いることができる公知のインバータの回路図であるが、しかしながら、T1及びT2のような2つのスイッチが時間的に交差する短絡の場合には、結果的にインバータ全体の破壊をもたらすことがあり、また、あるいは発火の原因となることがあり、結果的にそこに接続された装置の全ての部品の完全な破壊をもたらす、堅固な短絡が発生する非常に高い危険性を伴う。出力電流の正の半波形を生成するために、公知のインバータは、スイッチT1及びT2が連続的にオン及びオフに切り換えられることを準備する。半波形に対して、このことは、半波形の時間中にT1及びT2が連続的に複数回だけオン及びオフに切り換えられることを意味し、このことは、すでに、統計的な観点から、図5及び図6にそれぞれ図示された本発明に係る構造と比較して、短絡の確率を著しく増大させる。
【0014】図7は、3つの位相のうちの1つに対する、出力電流の正の半波発振のためのスイッチ部と、出力電流の負の半波発振のためのスイッチ部との相互接続を図示する。
【0015】堅固な短絡は、原理的に、電流の複数に分離された分岐、すなわち個別のスイッチユニットの相互接続における − 図5乃至図7を参照 − 正及び負の交差した分岐 − 図2乃至図7を参照 − の利点によって防がれる。それにも関わらず、異なるスイッチ部における複数の電力スイッチの不完全なスイッチ動作が発生するならば、それらは相互に減結合され、かつ、インダクタL1’乃至L6’,L1乃至L6を介して保護されるだけでなく、電流タッピングに配置されたスイッチS1乃至S6が、1つの分岐が他方において間接的影響を有することを、それらが逆の関係でオン及びオフに切り換えられることによって防ぐという事実の利点によって、短絡は最終的に不可能にされる。図2乃至図7に図示された、説明されたインバータの構成は、非常に高レベルのパワーを伴うインバータを構成することを可能にする。2つの相互結合されたスイッチユニットの電流タッピングの間の減結合チョークL1’乃至L6’は、同時に、高周波チョークとして、また、dU/dtを減少させるためのフィルタとして用いることができる。それによって、スプリアス発射は電力スイッチT1乃至T6の直後で、すでに抜本的に減少されている。
【0016】
【発明の効果】以上に記述されたインバータは、特に、風力エネルギー変換器か、又は電気的な直流電流を生成する他の発電所(例えば太陽熱発電所)に好適である。風力エネルギー変換器の場合は、発電所は通常は直流電流を生成するか、又は、発電所は交流を生成するが、しかしながら、次にそれを上述のインバータを介してネットワークの電流/電圧に変換できるように、上記交流は整流されなければならない。それぞれゼロを通過するときにおける(正の半波形に関する)電力スイッチT1及び(負の半波形に関する)T2がオン/オフに切り換えられる頻度が、電流が最大である領域におけるよりも非常に高いならば、出力電流に関して正確な正弦波の波形を提供することは有利である。電流が最大である頻度において、電力スイッチT1及びT2それぞれがオン/オフに切り換えられる頻度は、数百Hz(例えば、100乃至600Hzの範囲)である。ゼロを通過する領域において、複数の電力スイッチがオン/オフに切り換えられる頻度は、数kHz(例えば、5乃至18kHz)である。
[図面の簡単な説明]
【図1】 公知のインバータの基本原理を示す図である。
【図2】 正弦波出力電流の正の半波発振のためのスイッチ部を示す図である。
【図3】 正弦波出力電流の負の半波発振のためのスイッチ部を示す図である。
【図4】 図2及び図3に図示されたスイッチT1,S1,T2,S2に関する正弦波出力電流のタイミングチャートである。
【図5】 本発明に係る3相交流インバータの回路図である。
【図6】 3相交流を生成するための、図2及び図3に図示された複数のスイッチ部の相互接続の基本原理を図示する回路図である。
【図7】 単相のためのインバータの回路図である。
【符号の説明】
1,2…スイッチユニット、D1乃至D6…ダイオード、L1乃至L6,L1’乃至L6’…インダクタ、S1乃至S6…スイッチ、T1乃至T6…電力スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 交流ネットワークに正弦波電流を供給するためのインバータにおいて、(a)直列接続された第1のスイッチと第1のダイオードを有し、上記第1のスイッチと上記第1のダイオードとの間に第1の電流タッピングを有し、ネットワーク電流の正の部分を生成する第1のスイッチユニットと、(b)上記第1の電流タッピングに接続され、ネットワーク電流の正の部分の生成の時間中に閉じられる第2のスイッチと、(c)上記第2のスイッチと直列接続された第1の減結合インダクタと、(d)上記第1のスイッチユニットと並列接続され、直列接続された第3のスイッチと第2のダイオードを有し、上記第3のスイッチと上記第2のダイオードとの間に第2の電流タッピングを有し、ネットワーク電流の負の部分を生成する第2のスイッチユニットと、(e)上記第2の電流タッピングに接続され、ネットワーク電流の負の部分の生成の時間中に閉じられる第4のスイッチと、(f)上記第4のスイッチと直列接続された第2の減結合インダクタと、(g)ネットワーク電流の正の部分の生成の時間中に上記第2のスイッチを閉じかつ上記第4のスイッチを開き、ネットワーク電流の負の部分の生成の時間中に上記第4のスイッチを閉じかつ上記第2のスイッチを開く制御手段とを備え、上記正弦波電流のゼロ通過領域の近傍における上記第1及び第3のスイッチのそれぞれのスイッチングオン/オフ周波数は、上記正弦波電流の電流最大領域の近傍におけるそれよりも高く設定されたことを特徴とする交流ネットワークに正弦波電流を供給するためのインバータ。
【請求項2】 3相電流を生成するために、それぞれ互いに接続された少なくとも3つの第1のスイッチユニット及び3つの第2のスイッチユニットを備えたことを特徴とする請求項1記載のインバータ。
【請求項3】 3相電流ネットワークの単相(U,V,W)の電流を供給するために、複数の第1及び第2のスイッチユニットは、それらの電流タッピングを介して互いに接続されたことを特徴とする請求項1又は2記載のインバータ。
【請求項4】 請求項1乃至3のうちの1つに記載のインバータを有し、電気的な直流電流を生成する、風力エネルギー変換器、又は他の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3408522号(P3408522)
【登録日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【発行日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−571551(P2000−571551)
【出願日】平成11年9月7日(1999.9.7)
【公表番号】特表2002−526022(P2002−526022A)
【公表日】平成14年8月13日(2002.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP99/06565
【国際公開番号】WO00/017995
【国際公開日】平成12年3月30日(2000.3.30)
【審査請求日】平成13年6月4日(2001.6.4)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【参考文献】
【文献】特開 平8−294285(JP,A)
【文献】特開 平9−215199(JP,A)
【文献】特開 昭61−39865(JP,A)
【文献】米国特許5459655(US,A)
【文献】欧州特許出願公開430044(EP,A2)