説明

交流直流変換器

【課題】回路を流れる電流の経路にある半導体素子の数を減らすことにより、導通損失を低減する交流直流変換器を提供する。
【解決手段】
本発明に係る交流直流変換器は、交流電源から出力された交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換器であって、前記交流電圧を整流して前記直流電圧を出力する整流手段と、リアクトルと、キャパシタと、前記交流電源に接続されたスイッチング整流手段とを備え、前記スイッチング整流手段のスイッチングにより、前記キャパシタの端子間に直流電圧を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源から出力された交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の交流直流変換器を開示する。従来の交流直流変換器では、整流降圧チョッパ回路と昇圧チョッパ回路とを直列配置しており、このように構成された力率改善コンバータによって力率改善を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−295248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で開示の交流直流変換器では、回路に流れる電流が、まず降圧回路に流れ、次に昇圧回路に流れる。従って、電流の流通経路にある半導体素子の数が多く、導通損失が大きくなる。例えば逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタに電流が流れ、スイッチング素子がオフ導通の場合、電流の流通経路にある半導体素子は逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタとダイオードおよびダイオードの計3つになる。
【0005】
本発明は、回路を流れる電流の経路にある半導体素子の数を減らすことにより、導通損失を低減する交流直流変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る交流直流変換器は、交流電源から出力された交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換器であって、前記交流電圧を整流して前記直流電圧を出力する整流手段と、リアクトルと、キャパシタと、前記交流電源に接続されたスイッチング整流手段とを備え、前記スイッチング整流手段のスイッチングにより、前記キャパシタの端子間に直流電圧を出力する。
【0007】
本発明によれば、前記スイッチング整流手段がオン状態で前記交流電源により前記リアクトルにエネルギーが蓄積され、前記スイッチング整流手段がオフ状態で前記リアクトルからエネルギーが放出され、前記交流電圧が昇圧され前記キャパシタの端子間に昇圧電圧が出力され得る。
【0008】
本発明によれば、前記整流手段は、前記交流電源と前記リアクトルとの間に設けられた第1整流手段と、前記交流電源と前記キャパシタとの間に設けられた第2整流手段とを備え、前記スイッチング整流手段がオン状態の場合には、前記スイッチング整流手段と前記第1整流手段とが、前記リアクトルにエネルギーを蓄積する回路を構成し、前記スイッチング整流手段がオフ状態の場合には、前記第1整流手段と前記第2整流手段とが、前記リアクトルから前記キャパシタにエネルギーを放出する回路を構成することがあり得る。
【0009】
本発明によれば、前記第2整流手段は、スイッチング素子を含み得る。
【0010】
本発明によれば、前記第1整流手段が前記整流手段の直流出力の負極側を構成し、前記第2整流手段が前記整流手段の直流出力の正極側を構成することがあり得る。
【0011】
本発明によれば、前記第1整流手段が前記整流手段の直流出力の正極側を構成し、前記第2整流手段が前記整流手段の直流出力の負極側を構成することがあり得る。
【0012】
本発明によれば、前記整流手段は、第1整流素子と第2整流素子と、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを含み、前記第1スイッチング素子と前記第1整流素子とは第1共通接続点で接続されており、第2スイッチング素子と第2整流素子とは第2共通接続点で接続されており、前記スイッチング整流手段は、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子とを含み得る。
【0013】
本発明によれば、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の各々は、逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタを含み得る。
【0014】
本発明によれば、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の各々は、整流素子と逆阻止機能を有さないスイッチング素子との直列接続体を含み得る。
【0015】
本発明によれば、前記整流手段はスイッチング機能を有さない整流素子のみから構成されることがあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の交流直流変換器を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る交流直流変換器を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る交流直流変換器における電流の流れを示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る交流直流変換器を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る交流直流変換器における電流の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図5を参照して、本発明の交流直流変換器に係る実施形態を説明する。本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、当該構成と均等な構成も含む。
【0018】
[本発明の原理]
図1は、本発明の交流直流変換器100を示す模式図である。交流直流変換器100は、交流電源Aから出力された交流電圧(Vac)を直流電圧(Vdc)に変換する。交流直流変換器100は、交流電圧を整流して直流を出力する整流手段150と、リアクトル120と、キャパシタ160と、交流電源Aに接続されたスイッチング整流手段110とを含む。スイッチング整流手段110のスイッチングにより、キャパシタ160の端子間に直流電圧を出力することができる。交流直流変換器100は、交流キャパシタBと交流リアクトルDとを含む。交流電源Aから交流キャパシタBと交流リアクトルDとで構成された低周波フィルタ回路を通して、交流直流変換器100に電力が供給される。
【0019】
交流直流変換器100は、制御回路Eを更に備える。制御回路Eは、交流電源Aの電圧と直流電圧とを比較し、比較結果に基づいて、スイッチング整流手段110のオン状態とオフ状態とを制御する。
【0020】
例えば、スイッチング整流手段110は、オン状態とオフ状態とに切り替えられ得る。また、リアクトル120は整流手段150の出力に接続されている。リアクトル120はスイッチング整流手段110のオン状態とオフ状態との切り替えに応じて交流電圧を昇圧する。例えば、整流手段150は、交流電源Aとリアクトル120との間に設けられた第1整流手段130と、交流電源Aと直流キャパシタとの間に設けられた第2整流手段140とを含む。例えば、キャパシタ160は、直流キャパシタである。なお、第1整流手段130と第2整流手段140とは、図2以降に図示する。
【0021】
交流直流変換器100において、第1整流手段130が整流手段150の直流出力の正極側を構成し、第2整流手段140が整流手段150の直流出力の負極側を構成し得る。さらに、交流直流変換器100において、第1整流手段130が整流手段150の直流出力の負極側を構成し、第2整流手段140が整流手段150の直流出力の正極側を構成し得る。
【0022】
制御回路Eの制御によってスイッチング整流手段110がオン状態の場合には、スイッチング整流手段110と整流手段150とが、リアクトル120にエネルギーを蓄積する回路を構成する。制御回路Eの制御によってスイッチング整流手段110がオフ状態の場合には、整流手段150が、リアクトル120からエネルギーをキャパシタ160に放出する回路を構成する。その結果、交流電圧が昇圧され、キャパシタ160の端子間に昇圧電圧が出力される。例えば具体例の1つとしては、制御回路Eの制御によってスイッチング整流手段110がオン状態である場合には、スイッチング整流手段110と第1整流手段130とが、リアクトル120にエネルギーを蓄積する回路を構成する。制御回路Eの制御によってスイッチング整流手段110がオフ状態である場合には、第1整流手段130と第2整流手段140とが、リアクトル120からエネルギーをキャパシタ160に放出する回路を構成する。
【0023】
なお、リアクトル120はスイッチング整流手段110のオン状態とオフ状態との切り替えに応じて交流電圧を昇圧するが、制御回路Eによるスイッチング整流手段110及び整流手段150に対する制御によって、交流直流変換器100は、昇圧回路としての機能以外に、降圧回路としての機能をも有し得る。具体的には、実施形態1及び実施形態2において、図2から図5を参照して詳細に説明する。
【0024】
交流直流変換器100によれば、スイッチング整流手段110をオン状態にした場合には、スイッチング整流手段110と第1整流手段130とが整流回路を構成し、スイッチング整流手段110をオフ状態にした場合には、第1整流手段130と第2整流手段140とが整流回路を構成する。従って、スイッチング整流手段110をオン状態にした場合でもオフ状態にした場合でも、電流の流通経路にある半導体素子はスイッチング整流手段110と第1整流手段130、又は第1整流手段130と第2整流手段140の計2つになる。その結果、交流直流変換器100によれば、電流の流通経路にある半導体素子が計3つである従来の交流直流変換器と比較して、電流の流通経路にある半導体素子の数が少なくなり、導通損失を低減することができる。
【0025】
[実施形態1]
図2は、本発明の実施形態1に係る交流直流変換器200を示す模式図である。交流直流変換器200は、交流電源Aから出力された交流電圧(Vac)を直流電圧(Vdc)に変換する。交流直流変換器200は、スイッチング整流手段110と、リアクトル120と、キャパシタ160と、第1整流手段130と、第2整流手段140とを含む。交流直流変換器200は、交流キャパシタBと交流リアクトルDとを含む。交流直流変換器200は、制御回路Eを更に備える。制御回路Eは、交流電圧Vacを検出する検出回路からの出力を取得し、さらに、出力する直流電圧を指令する直流電圧指令値Vdc−refを外部の指令器(図示せず)等から取得する。尚、この直流電圧指令値Vdc−refを制御回路Eの内部に設定するように構成してもよい。
【0026】
交流電源Aは端子A1と端子A2とを含む。実施形態1において、「Vac=端子A1の電位−端子A2の電位」と定義する。即ちVac≧0は端子A1の電位が端子A2の電位以上であることを示し、Vac<0は端子A1の電位が端子A2の電位より低いことを示す。
【0027】
交流直流変換器200は、交流直流変換器100の一例の詳細を示す。交流直流変換器200において、交流直流変換器100と同様の機能を有する構成には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0028】
交流直流変換器200では、スイッチング整流手段110がオン状態の場合にリアクトル120を流れる電流が整流手段150の出力の負極側を流れるように、リアクトル120とスイッチング整流手段110とが構成され得る。具体的には図2に示すように、第1整流手段130が整流手段150の直流出力の負極側を構成し、第2整流手段140が整流手段150の直流出力の正極側を構成する。スイッチング整流手段110がオン状態の場合にリアクトル120を流れる電流が第1整流手段130を流れるように、リアクトル120と第1整流手段130とスイッチング整流手段110とが接続されている。
【0029】
第1整流手段130は、第1整流素子131と第2整流素子132とを含み、第2整流手段140は、第1スイッチング素子141と第2スイッチング素子142とを含む。第1スイッチング素子141と第2整流素子132とは第1共通接続点P1で接続されており、第2スイッチング素子142と第1整流素子131とは第2共通接続点P2で接続されている。スイッチング整流手段110は、第3スイッチング素子111と第4スイッチング素子112とを含む。
【0030】
第1スイッチング素子141と第2スイッチング素子142と第3スイッチング素子111と第4スイッチング素子112とは、逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)である。
【0031】
図3は、本発明の実施形態1に係る交流直流変換器200における電流の流れを示す模式図である。図3(a)は、スイッチング整流手段110がオン状態である交流直流変換器200における電流の流れを示す。図3(b)は、スイッチング整流手段110がオフ状態である交流直流変換器200における電流の流れを示す。
【0032】
Vac≧0の場合でスイッチング整流手段110のパルス駆動に伴う電流経路の切り替わりについて、図3を参照して説明する。
【0033】
以下、交流直流変換器200における昇圧チョッパ動作を説明する。制御回路Eは、交流電圧Vacの検出値からその絶対値|Vac|を演算する。交流直流変換器200が昇圧チョッパ動作を行うのは、交流電源電圧の絶対値|Vac|と直流電圧指令値Vdc−refとの間に|Vac|≦Vdc−refが成り立つときである。制御回路Eは、第2整流手段140に含まれる第1スイッチング素子141(逆阻止IGBT141)と第2スイッチング素子142(逆阻止IGBT142)とが常にオン状態になるように、逆阻止IGBT141と逆阻止IGBT142とにゲート駆動信号を発信する。さらに、制御回路Eはスイッチング整流手段110に含まれる第3スイッチング素子111(逆阻止IGBT111)と第4スイッチング素子112(逆阻止IGBT112)とを同時にパルス駆動して昇圧チョッパ動作させる。このパルス駆動においては、スイッチング整流手段110がオン状態にある時間とオフ状態にある時間との比が、|Vac|とVdc−refとの比に等しくなるように、制御回路Eが第3スイッチング素子111と第4スイッチング素子112にゲート駆動信号を発信し、第3スイッチング素子111と第4スイッチング素子112とをオンオフ駆動する。
【0034】
図3(a)を参照して、交流直流変換器200における電流の流れを説明する。スイッチング整流手段110がオン状態の場合には、交流電源Aから流れた電流は、逆阻止IGBT111、リアクトル120及び第1整流素子131の順に流れる。スイッチング整流手段110と第1整流手段130とが、リアクトル120にエネルギーを蓄積する回路を構成する。
【0035】
図3(b)を参照して、交流直流変換器200における電流の流れを説明する。スイッチング整流手段110がオフ状態の場合には、交流電源Aから流れた電流は、逆阻止IGBT141、キャパシタ160、リアクトル120及び第1整流素子131の順に流れる。第1整流手段130と第2整流手段140とが、リアクトル120からエネルギーを放出する回路を構成する。
【0036】
以上、図3を参照して、Vac≧0の場合でスイッチング整流手段110のパルス駆動に伴う電流経路の切り替わりを説明した。
【0037】
以下、Vac<0の場合でスイッチング整流手段110のパルス駆動に伴う電流経路の切り替わりを説明する。スイッチング整流手段110がオン状態の場合には、交流電源Aから流れた電流は、逆阻止IGBT112、リアクトル120及び第2整流素子132の順に流れる。スイッチング整流手段110と第1整流手段130とが、リアクトル120にエネルギーを蓄積する回路を構成する。また、スイッチング整流手段110がオフ状態の場合には、交流電源Aから流れた電流は、逆阻止IGBT142、キャパシタ160、リアクトル120及び第2整流素子132の順に流れる。第1整流手段130と第2整流手段140とが、リアクトル120からエネルギーを放出する回路を構成する。
【0038】
スイッチング整流手段110のパルス駆動において、逆阻止IGBT111と逆阻止IGBT112との双方をパルス駆動する必要はない。Vac≧0の場合は、逆阻止IGBT111と逆阻止IGBT112とのうち逆阻止IGBT111のみをパルス駆動し、逆阻止IGBT112は常にオフ状態とすれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。Vac<0の場合は、逆阻止IGBT112をパルス駆動し、逆阻止IGBT111は常にオフ状態とすれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。
【0039】
さらに、交流電圧の極性に応じて、第2整流手段140に含まれる逆阻止IGBT141と逆阻止IGBT142とのどちらか一方を選択して駆動すれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。Vac≧0の場合は、逆阻止IGBT141を常時オン状態とし、逆阻止IGBT142を常時オフ状態とすれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。Vac<0の場合は、逆に逆阻止IGBT142を常時オン状態とし、逆阻止IGBT141を常時オフ状態とすれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。
【0040】
以下、交流直流変換器200における降圧チョッパ動作を説明する。交流直流変換器200が降圧チョッパ動作を行うのは、交流電源電圧の絶対値|Vac|と直流電圧指令値Vdc−refとの間に|Vac|>Vdc−refが成り立つときである。制御回路Eは、スイッチング整流手段110に含まれる逆阻止IGBT111と逆阻止IGBT112とを常時オフ状態とする。さらに制御回路Eは、Vac≧0の場合は逆阻止IGBT142をオン状態とし、逆阻止IGBT141をパルス駆動して降圧チョッパ動作させる。このパルス駆動においては、逆阻止IGBT141がオン状態にある時間と、オン状態にある時間及びオフ状態にある時間の合計値との比が、Vdc−refと|Vac|との比に等しくなるように、逆阻止IGBT141のゲートが制御回路Eによってオンオフされる。このとき、逆阻止IGBT141がスイッチング素子として機能し、逆阻止IGBT142が環流ダイオードとして機能する。
【0041】
さらに、制御回路Eは、Vac<0の場合は逆阻止IGBT141をオン状態とし、逆阻止IGBT142をパルス駆動して降圧チョッパ動作させる。このとき、逆阻止IGBT142がスイッチング素子として機能し、逆阻止IGBT141が環流ダイオードとして機能する。
【0042】
以上、図3を参照して、本発明の実施形態1に係る交流直流変換器200における電流の流れを説明した。制御回路Eはリアクトル120の電流Idcを検出して、Idcの波形とVacの全波整流波形である|Vac|の波形が相対的に一致する(位相が一致する)ようにパルス駆動し、入力の力率を1に制御することも可能である。さらに、制御回路EはIdcの波形のピーク値を変化させて、直流電圧Vdcが直流電圧指令値Vdc−refと一致するよう制御することも可能である。
【0043】
直流電圧指令値Vdc−refは負荷の状況に応じて、零から|Vac|のピーク電圧以上まで可変されるが、図2及び図3を参照して説明したように交流直流変換器200によれば、降圧回路としての機能を有する回路と昇圧回路としての機能を有する回路とを切り替えて構成できるので、交流電圧Vacを検出することで、交流電圧Vacの瞬時値によらず直流電圧指令値Vdc−refに追従できる。
【0044】
交流直流変換器200によれば、スイッチング整流手段110をオン状態にしたとき、スイッチング整流手段110と第1整流手段130とが整流回路を構成し、スイッチング整流手段110をオフ状態にしたとき、第1整流手段130と第2整流手段140とが整流回路を構成する。従って、スイッチング整流手段110をオン状態にした場合でもオフ状態にした場合でも、電流の流通経路にある半導体素子はスイッチング整流手段110と第1整流手段130、又は第1整流手段130と第2整流手段140の計2つになる。その結果、交流直流変換器200によれば、電流の流通経路にある半導体素子が計3つである従来の交流直流変換器と比較して、電流の流通経路にある半導体素子の数が少なくなり、導通損失を低減することができる。
【0045】
[実施形態2]
図4は、本発明の実施形態2に係る交流直流変換器300を示す模式図である。交流直流変換器300は、交流電源Aから出力された交流電圧(Vac)を直流電圧(Vdc)に変換する。交流直流変換器300は、スイッチング整流手段110と、リアクトル120と、第1整流手段130と、第2整流手段140とを含む。交流直流変換器300は、交流キャパシタBとキャパシタ160と交流リアクトルDとを含む。交流直流変換器300は、実施形態1と同じく、制御回路Eを更に備え、交流電圧Vacの検出値および直流電圧指令値Vdc−refを取得する。
【0046】
実施形態2においても実施形態1と同様に、交流電源Aは端子A1と端子A2とを含む。実施形態2において、「Vac=端子A1の電位−端子A2の電位」と定義する。即ちVac≧0は端子A1の電位が端子A2の電位以上であることを示し、Vac<0は端子A1の電位が端子A2の電位より低いことを示す。
【0047】
交流直流変換器300は、交流直流変換器100の一例の詳細を示す。交流直流変換器300において、交流直流変換器100と同様の機能を有する構成には同一番号を付し、その説明を省略する。本発明の実施形態1に係る交流直流変換器200との違いは、リアクトル120を整流回路の正極側へ配置変更したことに伴って、逆阻止IGBTと整流素子の配置を変更したものである。
【0048】
交流直流変換器300では、スイッチング整流手段110がオン状態の場合にリアクトル120を流れる電流が整流手段150の出力の正極側を流れるように、リアクトル120とスイッチング整流手段110とが構成され得る。具体的には図4に示すように、第1整流手段130が整流手段150の直流出力の正極側を構成し、第2整流手段140が整流手段150の直流出力の負極側を構成する。スイッチング整流手段110がオン状態の場合にリアクトル120を流れる電流が第1整流手段130を流れるように、リアクトル120と第1整流手段130とスイッチング整流手段110とが設けられている。
【0049】
第1整流手段130は、第1整流素子131と第2整流素子132とを含み、第2整流手段140は、第1スイッチング素子141と第2スイッチング素子142とを含む。第1スイッチング素子141と第2整流素子132とは第1共通接続点P1で接続されており、第2スイッチング素子142と第1整流素子131とは第2共通接続点P2で接続されている。スイッチング整流手段110は、第3スイッチング素子111と第4スイッチング素子112とを含む。
【0050】
第1スイッチング素子141と第2スイッチング素子142と第3スイッチング素子111と第4スイッチング素子112とは、逆阻止IGBTである。
【0051】
図5は、本発明の実施形態2に係る交流直流変換器300における電流の流れを示す模式図である。図5(a)は、スイッチング整流手段110がオン状態である交流直流変換器300における電流の流れを示す。図5(b)は、スイッチング整流手段110がオフ状態である交流直流変換器300における電流の流れを示す。
【0052】
Vac≧0の場合でスイッチング整流手段110のパルス駆動に伴う電流経路の切り替わりについて、図5を参照して説明する。
【0053】
以下、交流直流変換器300における昇圧チョッパ動作を説明する。制御回路Eは実施形態1と同じく、交流電圧Vacの絶対値の検出値|Vac|と直流電圧指令値Vdc−refとの間に|Vac|≦Vdc−refが成り立つときに、昇圧チョッパ動作を行う。制御回路Eは、第2整流手段140に含まれる第1スイッチング素子141(逆阻止IGBT141)と第2スイッチング素子142(逆阻止IGBT142)とが常にオン状態になるように、逆阻止IGBT141と逆阻止IGBT142とにゲート駆動信号を発信する。さらに、制御回路Eはスイッチング整流手段110に含まれる第3スイッチング素子111(逆阻止IGBT111)と第4スイッチング素子112(逆阻止IGBT112)とを同時にパルス駆動して昇圧チョッパ動作させる。スイッチング整流手段110がオン状態にある時間とオフ状態にある時間は実施形態1と同じ方法で決定する。
【0054】
図5(a)を参照して、交流直流変換器300における電流の流れを説明する。スイッチング整流手段110がオン状態の場合には、交流電源Aから流れた電流は、第2整流素子132、リアクトル120及び逆阻止IGBT112の順に流れる。スイッチング整流手段110と第1整流手段130とが、リアクトル120にエネルギーを蓄積する回路を構成する。
【0055】
図5(b)を参照して、交流直流変換器300における電流の流れを説明する。スイッチング整流手段110がオフ状態の場合には、交流電源Aから流れた電流は、第2整流素子132、リアクトル120、キャパシタ160及び逆阻止IGBT142の順に流れる。第1整流手段130と第2整流手段140とが、リアクトル120からエネルギーを放出する回路を構成する。
【0056】
以上、図5を参照して、Vac≧0の場合でスイッチング整流手段110のパルス駆動に伴う電流経路の切り替わりを説明した。
【0057】
以下、Vac<0の場合でスイッチング整流手段110のパルス駆動に伴う電流経路の切り替わりを説明する。スイッチング整流手段110がオン状態の場合には、交流電源Aから流れた電流は、第1整流素子131、リアクトル120及び逆阻止IGBT111の順に流れる。スイッチング整流手段110と第1整流手段130とが、リアクトル120にエネルギーを蓄積する回路を構成する。また、スイッチング整流手段110がオフ状態の場合には、交流電源Aから流れた電流は、第1整流素子131、リアクトル120、キャパシタ160及び逆阻止IGBT141の順に流れる。第1整流手段130と第2整流手段140とが、リアクトル120からエネルギーを放出する回路を構成する。
【0058】
スイッチング整流手段110のパルス駆動において、逆阻止IGBT111と逆阻止IGBT112との双方をパルス駆動する必要はない。Vac≧0の場合は、逆阻止IGBT112のみをパルス駆動し、逆阻止IGBT111を常にオフ状態とすれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。Vac<0の場合は、逆阻止IGBT111のみをパルス駆動し、逆阻止IGBT112を常にオフ常態とすれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。
【0059】
さらに、交流電圧の極性に応じて、第2整流手段140に含まれる逆阻止IGBT141と逆阻止IGBT142とのどちらか一方を選択して駆動すれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。Vac≧0の場合は、逆阻止IGBT142を常時オン状態とし、逆阻止IGBT141を常時オフ状態とすれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。Vac<0の場合は、逆に逆阻止IGBT141を常時オン状態とし、逆阻止IGBT142を常時オフ状態とすれば、IGBT駆動のためにゲートドライブ回路に供給する電力を低減できる。
【0060】
以下、交流直流変換器300における降圧チョッパ動作を説明する。交流直流変換器300が降圧チョッパ動作を行うのは、交流電圧の絶対値|Vac|と直流電圧指令値Vdc−refとの間に|Vac|>Vdc−refが成り立つときである。制御回路Eは、スイッチング整流手段110に含まれる逆阻止IGBT111と逆阻止IGBT112とを常時オフ状態とする。さらに制御回路Eは、Vac≧0の場合は逆阻止IGBT141を常にオン状態とし、逆阻止IGBT142をパルス駆動して降圧チョッパ動作させる。このパルス駆動においては、逆阻止IGBT142がオン状態にある時間と、オン状態にある時間及びオフ状態にある時間の合計値との比が、Vdc−refと|Vac|との比に等しくなるように、逆阻止IGBT142のゲートが制御回路Eによってオンオフされる。このとき、逆阻止IGBT142がスイッチング素子として機能し、逆阻止IGBT141が環流ダイオードとして機能する。
【0061】
さらに、制御回路Eは、Vac<0の場合は逆阻止IGBT142をオン状態とし、逆阻止IGBT141をパルス駆動して降圧チョッパ動作させる。このとき、逆阻止IGBT141がスイッチング素子として機能し、逆阻止IGBT142が環流ダイオードとして機能する。
【0062】
以上、図5を参照して、本発明の実施形態2に係る交流直流変換器300における電流の流れを説明した。実施例1と同じく、制御回路Eはリアクトル120の電流Idcを検出して、Idcの波形とVacの全波整流波形である|Vac|の波形が相対的に一致する(位相が一致する)ようにパルス駆動し、入力の力率を1に制御し、さらに、制御回路EはIdcの波形のピーク値を変化させて、直流電圧Vdcが直流電圧指令値Vdc−refと一致するよう制御することも可能である。
【0063】
直流電圧指令値Vdc−refは負荷の状況に応じて、零から|Vac|のピーク電圧以上まで可変されるが、実施形態1と同じく、交流電圧Vacを検出することで、交流電圧Vacの瞬時値によらず直流電圧指令値Vdc−refに追従できる。
【0064】
交流直流変換器300によれば、スイッチング整流手段110をオン状態にしたとき、スイッチング整流手段110と第1整流手段130とが整流回路を構成し、スイッチング整流手段110をオフ状態にしたとき、第1整流手段130と第2整流手段140とが整流回路を構成する。従って、スイッチング整流手段110をオン状態にした場合でもオフ状態にした場合でも、電流の流通経路にある半導体素子はスイッチング整流手段110と第1整流手段130、又は第1整流手段130と第2整流手段140の計2つになる。その結果、交流直流変換器300によれば、電流の流通経路にある半導体素子が計3つである従来の交流直流変換器と比較して、電流の流通経路にある半導体素子の数が少なくなり、導通損失を低減することができる。
【0065】
以上、図1から図5を参照して、本発明の交流直流変換器に係る実施形態を説明した。本発明は、以上に説明した実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、当該構成と均等な構成も含む。
【0066】
さらに、整流手段150は、整流素子のみから構成され得る。また、第1整流手段130と第2整流手段140との各々もまた、整流素子のみから構成されてもよい。これらの場合、本発明の交流直流変換器は、全波整流機能を有さず、半波整流機能のみを有し、さらに昇圧機能のみを有するものとして構成される。
【0067】
なお、第1スイッチング素子141、第2スイッチング素子142、第3スイッチング素子111及び第4スイッチング素子112の各々が、逆阻止IGBTのみを含む場合に限定されない。第1スイッチング素子141、第2スイッチング素子142、第3スイッチング素子111及び第4スイッチング素子112の各々は、逆阻止IGBTに替えて、整流素子と逆阻止機能を有さないスイッチング素子(例えば、MOSFETや逆阻止機能を有さないIGBT)との直列接続体を含み得る。逆阻止機能を有さないスイッチング素子としてMOSFETを使用できるので、逆阻止IGBTを使用する場合よりもスイッチング周波数の高周波化が可能となり、リアクトル120のリアクトル値及び形状を小さくできる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、交流電源から出力された交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換器として利用し得る。
【符号の説明】
【0069】
A 交流電源
B 交流キャパシタ
D 交流リアクトル
E 制御回路
100 交流直流変換器
110 スイッチング整流手段
120 リアクトル
130 第1整流手段
131 第2整流素子
132 第1整流素子
140 第2整流手段
141 第1スイッチング素子
142 第2スイッチング素子
150 整流手段
160 キャパシタ
200 交流直流変換器
300 交流直流変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から出力された交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換器であって、
前記交流電圧を整流して前記直流電圧を出力する整流手段と、
リアクトルと、
キャパシタと、
前記交流電源に接続されたスイッチング整流手段と
を備え、
前記スイッチング整流手段のスイッチングにより、前記キャパシタの端子間に直流電圧を出力する、交流直流変換器。
【請求項2】
前記スイッチング整流手段がオン状態で前記交流電源により前記リアクトルにエネルギーが蓄積され、前記スイッチング整流手段がオフ状態で前記リアクトルからエネルギーが放出され、
前記交流電圧が昇圧され前記キャパシタの端子間に昇圧電圧が出力される、請求項1に記載の交流直流変換器。
【請求項3】
前記整流手段は、
前記交流電源と前記リアクトルとの間に設けられた第1整流手段と、
前記交流電源と前記キャパシタとの間に設けられた第2整流手段と
を備え、
前記スイッチング整流手段がオン状態の場合には、前記スイッチング整流手段と前記第1整流手段とが、前記リアクトルにエネルギーを蓄積する回路を構成し、
前記スイッチング整流手段がオフ状態の場合には、前記第1整流手段と前記第2整流手段とが、前記リアクトルから前記キャパシタにエネルギーを放出する回路を構成する、請求項1又は請求項2に記載の交流直流変換器。
【請求項4】
前記第2整流手段は、スイッチング素子を含む、請求項3に記載の交流直流変換器。
【請求項5】
前記第1整流手段が前記整流手段の直流出力の負極側を構成し、前記第2整流手段が前記整流手段の直流出力の正極側を構成する、請求項3又は請求項4に記載の交流直流変換器。
【請求項6】
前記第1整流手段が前記整流手段の直流出力の正極側を構成し、前記第2整流手段が前記整流手段の直流出力の負極側を構成する、請求項3又は請求項4に記載の交流直流変換器。
【請求項7】
前記整流手段は、第1整流素子と第2整流素子と、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを含み、
前記第1スイッチング素子と前記第1整流素子とは第1共通接続点で接続されており、第2スイッチング素子と第2整流素子とは第2共通接続点で接続されており、
前記スイッチング整流手段は、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子とを含む、請求項1〜請求項6のうちの一項に記載の交流直流変換器。
【請求項8】
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の各々は、逆阻止絶縁ゲートバイポーラトランジスタを含む、請求項7に記載の交流直流変換器。
【請求項9】
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の各々は、整流素子と逆阻止機能を有さないスイッチング素子との直列接続体を含む、請求項7に記載の交流直流変換器。
【請求項10】
前記整流手段はスイッチング機能を有さない整流素子のみから構成される、請求項1に記載の交流直流変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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