説明

交通システム

【課題】既設プラント設備に隣接して増設プラント設備の工事を行う際、既設プラント設備の運用コスト及び増設プラント設備の建設コストの増加を抑制して、交通安全を図る。
【解決手段】交通システムは、プラントにおいて既設プラント設備11に隣接して増設プラント設備12の工事を行う場合に用いられ、プラント内を通過する第1の道路13と、第1の道路の上を跨いで設けられた立体交差部15と、立体交差部に接続する第2の道路14とを有し、増設プラント設備の工事に用いられる工事用車両は第1の道路又は第2の道路のいずれか一方のみの通過が許される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場における交通システムに関し、特に、発電所等のプラント設備の増設工事現場で用いられる交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電所、火力発電所、又は化学プラント等の各種プラントにおいては、プラント設備の増設工事などが行われることが多く、既設のプラント設備に隣接して、プラント設備を増設する際には、既設プラント設備に出入する一般車両などが存在するばかりでなく、増設プラント設備の工事現場に出入する工事車両が存在することになる。
【0003】
ところで、プラント等の超大型設備で増設工事などを行う際には、工事車両として巨大なダンプカー(例えば、45トンダンプカー)等の車両が用いられることが多く、このような巨大な工事車両と一般車両とが混在すると極めて危険である。
【0004】
このため、従来、工事車両が既設プラント設備の領域を通過する必要がある場合又は一般車両が増設プラント設備の領域を通過する場合には、交通量の増加及び大型工事車両の通過に対する安全対策として、信号機及び交通誘導員の配置を行って、交通整理及び車両誘導を行うようにしている。
【0005】
一方、傾斜地等における歩行者、車両、及び物資などのための交通システムが知られており、この交通システムでは、傾斜地付近の道路に接してターミナルを設け、一般用駐車場及び業務用駐車場を設置するようしている。
【0006】
そして、この交通システムでは、ターミナルを起点に縦動線として乗客用斜行エレベーター及び車両・物資運搬用ケーブルを架空に設け、それぞれを一般用駐車場、業務用駐車場に動線的に接続し、横動線として等高線に沿うように歩行者及び車両用道路を架空又は地盤上に設けて、縦動線と立体交差させ、それぞれを乗客用斜行エレベーター、車両・物資運搬用ケーブルに動線的に接続するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−120299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、既設プラント設備に隣接して増設プラント設備を増設する際に、この増設プラント設備の工事現場を含めて、つまり、既設プラント設備と工事現場とを関連付けて、信号機及び交通誘導員の配置によって車両の誘導を行おうとすると、不可避的に増設プラント設備の建設工事に伴って交通制約が生じ、従前と同様に既設プラント設備の運用を行おうとすると、この交通制約によって、既設プラント設備の運用コストが増加してしまうという課題がある。
【0009】
さらに、事故防止のため、信号機及び交通誘導員を配置しなければならず、新規にプラント設備を建設する場合に比べて既設プラント設備への一般車両の出入があるから、不可避的に建設工事に掛かるコストが増加してしまう。そして、信号機及び交通誘導員を配置したとしても、大型工事車両と一般車両とが混在する結果、交通安全の面で不安が残るという課題がある。
【0010】
従って、本発明は、既設プラント設備の運用コスト及び増設プラント設備の建設コストの増加を抑制して、交通安全を図ることのできる交通システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明は、プラントにおいて既設プラント設備に隣接して増設プラント設備の工事を行う際に用いられる交通システムであって、前記プラントの敷地内を通過する第1の道路と、前記第1の道路の上を跨いで設けられた立体交差部と、前記立体交差部に接続する第2の道路とを有し、前記増設プラント設備の工事に用いられる工事用車両は前記第1の道路又は前記第2の道路のいずれか一方のみの通行が許されていることを特徴とするものである。
【0012】
(1)に記載の交通システムでは、プラント内を通過する第1の道路に対して、第2の道路を、立体交差部を介して立体交差させるようにして、工事用車両を、第1の道路又は第2の道路のいずれか一方のみの通行を許すようにしたので、一般車両が主に第2の道路を通行するようにすれば、工事用車両、特に、大型工事用車両と一般車両とが混在することが少なく、その結果、既設プラント設備の運用コスト及び増設プラント設備の建設コストの増加を抑制して、交通安全を図ることができる。
【0013】
(2) 本発明は、(1)に記載の交通システムにおいて、前記既設プラント設備は前記第1の道路の両側に位置付けられており、前記第2の道路は前記立体交差部を介して前記既設プラント設備を互いに繋ぐように設けられており、前記工事用車両は前記第1の道路のみの通行が許されていることを特徴とするものである。
【0014】
(2)に記載の交通システムでは、既設プラント設備が第1の道路の両側に位置付けられている場合に、第2の道路を立体交差部を介して既設プラント設備同士を繋ぐように設けて、工事用車両を第1の道路のみの通行を許すようにしたので、工事用車両が一般車両と混在することが少なく、しかも、工事用車両が立体交差部を通行することがないから、立体交差部が構造上の安全面も確保できる。
【0015】
(3) 本発明は、(2)に記載の交通システムにおいて、前記既設プラント設備に出入りする一般車両は前記第2の道路及び前記立体交差部を通って前記既設プラント設備の間を移動することを特徴とするものである。
【0016】
(3)に記載の交通システムでは、既設プラント設備に出入りする一般車両が第2の道路及び立体交差部を通って既設プラント設備の間を移動するようにしたので、工事用車両と一般車両とを確実に分離して、工事用車両と一般車両との混在を防止できる。
【0017】
(4) 本発明は、(3)に記載の交通システムにおいて、前記一般車両が前記第1の道路を通行する際には、前記一般車両に目印が設けられることを特徴とするものである。
【0018】
(4)に記載の交通システムでは、一般車両が第1の道路を通行する際には、一般車両に目印を設けるようにしたので、工事用車両、特に、大型工事用車両の運転手が一般車両を見落とすことがなく、交通安全を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、プラント内を通過する第1の道路に対して、第2の道路を、立体交差部を介して立体交差させるようにし、工事用車両が第1の道路又は前記第2の道路のいずれか一方のみの通行するようにしたので、工事用車両と一般車両とが混在することが少なく、その結果、既設プラント設備の運用コスト及び増設プラント設備の建設コストの増加を抑制して、交通安全を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態による交通システムが用いられるプラント設備を上空から示す図である。
【図2】図1のプラント設備の主要部を上空から示す図である。
【図3】図1のプラント設備で用いられる立体交差を示す斜視図である。
【図4】図1に示すプラント設備を走行する車両の種類の一例を示す図であり、(a)は45tダンプカーの一例を示す正面図、(b)は10tダンプカーの一例を示す正面図、(c)は4tトラックの一例を示す正面図、(d)は普通乗用車の一例を示す正面図である。
【図5】主幹線道路を走行中の工事用車両を、立体交差を走行中の車両とともに示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態による交通システムの一例を、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態による交通システムが用いられるプラント設備を上空から示す図である。図2は、図1のプラント設備の主要部を上空から示す図である。図3は、図1のプラント設備で用いられる立体交差を示す斜視図である。図4は、図1に示すプラント設備を走行する車両の種類の一例を示す図である。図5は、主幹線道路を走行中の工事用車両を、立体交差を走行中の車両とともに示す斜視図である。
【0023】
図1において、図示のプラントは、例えば、発電システム(発電所)であり、このプラントは、地上に建設された複数の建屋等のプラント設備(以下このプラント設備を既設プラント設備という)11を有している。一方、プラントでは、既設プラント設備11に隣接して、別の建屋等のプラント設備(以下このプラント設備を増設プラント設備という)12が増設されることがある。
【0024】
そして、既設プラント設備11に隣接して、増設プラント設備12を増設する際には、既設プラント設備に出入する一般車両等が存在するばかりでなく、増設プラント設備の工事現場に出入する工事車両が存在することになり、工事現場に出入りする工事車両には、前述した45tダンプカーのような大型車両が存在する。
【0025】
図1に示すプラントにおいては、既設プラント設備11及び増設プラント設備12(工事現場)に沿って主幹線道路(第1の道路)13が敷設されており、この主幹線道路13に対して、既設プラント設備11に出入する副道路(第2の道路)14が設けられている。そして、これら副道路14は、主幹線道路13を跨ぐ立体交差部15によって互いに連結されている(繋がっている)。
【0026】
図2及び図3を参照すると、既設プラント設備11の建屋の周囲等には、駐車場16が設けられており、工事車両を除く一般車両は、これら駐車場16を利用して駐車をする。つまり、既設プラント設備11に出入りする一般車両はこれら駐車場16を利用することになる。そして、既設プラント設備11において、一般車両が、主幹線道路13の一方側に位置する建屋から、主幹線道路13の他方側に位置する建屋に移動する際には、副道路14、立体交差部15、及び副道路14を通って移動することになる。つまり、一般車両は主幹線道路13を実際に横切ることなく、立体交差部15を通過して移動することになる。
【0027】
図3に示すように、副道路14は傾斜面を形成する傾斜部14a上に形成されている。立体交差部15は橋脚15aによって主幹線道路13を跨いでおり、立体交差部15によって複数の副道路14が互いに連絡されている。つまり、立体交差部15によって副道路14は主幹線道路13の上側を通過することになる。
【0028】
図4を参照すると、図4(a)は、45トン(45t)ダンプカー21の一例を示す図であり、このダンプカー21は、高さ4.4m、幅5.1mの大きさであって、増設プラント設備の工事専用に用いられる工事車両であり、図3に示す主幹線道路13のみの通過を許され、副道路14及び立体交差部15の通過は禁止される。
【0029】
図4(b)は、10tダンプカー22の一例を示す図であり、このダンプカー22は、高さ3.1m、幅3.0mの大きさであって、増設プラント設備の工事にも用いられるが、ここでは一般車両に含まれる。従って、ダンプカー22は、図3に示す主幹線道路13ばかりでなく、副道路14及び立体交差部15の通過も許可される。
【0030】
図4(c)は、4tトラック23の一例を示す図であり、このトラック23は、高さ2.5m、幅2.2mの大きさであって、主に副道路14及び立体交差部15の通過が許可される一般車両に含まれる。また、図4(d)は普通乗用車24の一例を示す図であり、この普通乗用車24は、高さ1.4m、幅1.7mの大きさであって、主に副道路14及び立体交差部15の通過が許可される一般車両に含まれる。
【0031】
トラック23又は普通乗用車24においても、増設プラント設備の増設工事に関係して(例えば、工事の立会い等)、一時的に工事現場に出入りする必要がある。つまり、主幹線道路13を通過する必要がある。
【0032】
この様な場合には、45tダンプカー21の運転席からは、一般車両が視認しづらいため、例えば、図4(d)に示すように、普通乗用車24の屋根にフラグ24aを取り付け、目印とする。フラグ24aを取り付けた際には、普通乗用車24の高さは、3.0mとなる。同様に、4tトラック23が工事現場に出入りする際にも、目印としてフラグ23aを屋根に取り付ける。
【0033】
上述のように、既設プラント設備11に隣接して増設プラント設備12の工事を行う際に、立体交差部15によって一般車両と工事用車両との通行を分離することによって、工事用車両は主幹線道路13を通って工事現場に出入りし、一般車両は副道路14及び立体交差部15を通って主幹線道路13の両側に位置する既設プラント設備間を移動することになる。
【0034】
例えば、図5に示すように、45tダンプカー21は主幹線道路13を通過して工事現場に向かい、10tダンプカー22及び普通乗用車24は、既設プラント設備11間を移動する際には(既設プラント設備に出入りする際には)、副道路14及び立体交差部15を通って移動することになり、同一平面において、45tダンプカー21と普通乗用車24等とが遭遇することがなく、45tダンプカー21の運転手及び普通乗用車24等の運転手は安心して道路を走行することができる。
【0035】
このように、本実施の形態による交通システムでは、既設プラント設備11に隣接して増設プラント設備12を増設工事する際に、既設プラント設備と工事現場とを関連付けて、信号機及び交通誘導員の配置によって車両の誘導を行う必要がない。その結果、増設プラント設備12の増設工事に伴って交通制約が生じることがなく、既設プラント設備11の運用コストが増加してしまうことがない。
【0036】
そして、既設プラント設備への一般車両の出入りがあっても、一般車両と工事用車両とが分離されているから、大型工事車両と一般車両とが混在することがなく、交通安全の面での不安が解消される。つまり、本発明の実施の形態によれば、既設プラント設備11の運用コスト及び増設プラント設備12の建設コストの増加を抑制して、交通安全を図ることができる。
【0037】
また、上述の実施の形態では、45tダンプカー21等の大型工事車両は、立体交差部15を通過することがないので、橋脚15a等に過度の負荷が掛かることがなく、立体交差部15の構造上の安全を確保することができる。
【符号の説明】
【0038】
11 既設プラント設備
12 増設プラント設備
13 主幹線道路(第1の道路)
14 副道路(第2の道路)
15 立体交差部
16 駐車場
21 45tダンプカー
22 10tダンプカー
23 4tトラック
24 普通乗用車
23a,24a フラグ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントにおいて既設プラント設備に隣接して増設プラント設備の工事を行う際に用いられる交通システムであって、
前記プラントの敷地内を通過する第1の道路と、
前記第1の道路の上を跨いで設けられた立体交差部と、
前記立体交差部に接続する第2の道路とを有し、
前記増設プラント設備の工事に用いられる工事用車両は前記第1の道路又は前記第2の道路のいずれか一方のみの通行が許されていることを特徴とする交通システム。
【請求項2】
前記既設プラント設備は前記第1の道路の両側に位置付けられており、
前記第2の道路は前記立体交差部を介して前記既設プラント設備を互いに繋ぐように設けられており、
前記工事用車両は前記第1の道路のみの通行が許されていることを特徴とする請求項1記載の交通システム。
【請求項3】
前記既設プラント設備に出入りする一般車両は前記第2の道路及び前記立体交差部を通って前記既設プラント設備の間を移動することを特徴とする請求項2記載の交通システム。
【請求項4】
前記一般車両が前記第1の道路を通行する際には、前記一般車両に目印が設けられることを特徴とする請求項3記載の交通システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−285752(P2010−285752A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138182(P2009−138182)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)